(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
空調制御等においては、バルブにより熱交換機の冷温水流量を調整して温度を制御する方法が実用されている(特許文献1参照)。
図6の例では、空調機は、空調対象の部屋から戻る空気(還気)が流入する空気流入口200と、外気が流入する外気流入口201と、外気流入口201に設けられる外気ダンパ202と、還気および外気を冷却または加熱する熱交換機203と、熱交換機203によって冷却または加熱された空気(給気)を送り出すためのファン204と、熱交換機203によって冷却または加熱された給気を空調対象の部屋へ送り出すための流出口205と、熱交換機203の加熱・冷却能力を制御するPID制御演算部206と、外気ダンパ202の開度を制御するPID制御演算部207とから構成される。このような空調機においては、PID制御演算部206は、熱交換機203に設けられたバルブ(不図示)の開度を制御することにより、熱交換機203の冷温水流量を調整する。
【0003】
バルブは摺動部を備えるアクチュエータなので、PID制御演算部206の出力である操作量MV(バルブ開度指示値)が微動した場合でも常にバルブが追従して動作していると、バルブの寿命に悪影響が出る。そこで、不感帯(例えば開度指示値が現状の開度から3%以上離れるまでバルブを動作させないという帯域)を与えるのが一般的である。
【0004】
図7(A)、
図7(B)は従来の不感帯処理を説明する図であり、
図7(A)は冷房時の空調対象の部屋の温度(制御量PV)の変化を示す図、
図7(B)は冷房時にPID制御演算部が演算するバルブ開度指示値(操作量MV)およびバルブ開度の変化を示す図である。
図7(B)のVAはバルブ開度指示値MVに応じてバルブが決定するバルブ開度である。
【0005】
図7(A)、
図7(B)の例では、バルブ開度指示値MVが20%で、実際のバルブ開度VAが21%の初期状態から、徐々にバルブ開度指示値MVが上昇していくときにバルブ開度VAが変化する様子を示している。バルブ開度指示値MVとバルブ開度VAの差が3%未満のとき、バルブはバルブ開度VAの位置で停止していることになる。そして、バルブは、バルブ開度指示値MVとバルブ開度VAが3%以上離れると、バルブ開度VAがバルブ開度指示値MVに追従するように動作する。したがって、3%の帯域は感度ゼロを意味する不感帯ということになる。
【0006】
そして、このようなバルブの不連続な動作に伴い、
図7(A)に示すように、温度PVの変化も不連続になり、制御可能な温度PVの分解能が、実質的に低下する。
また、不感帯については、特許文献2において「冷凍機の安定化度が高いと判断したときには、冷凍機の安定化度が低いと判断したときに比べて、不感帯を大きく変更する」と説明されているように、制御の分解能の低下を促進する側で利用するのが、むしろ一般的な認識になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
制御演算の不感帯処理は、制御演算を実行するPID制御演算部から見れば特殊な動作であるため、制御性能を向上させるための調整作業を複雑にする要素になっている。したがって、制御装置の設計者にとって不感帯を扱い易いものにする改善が求められている。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、制御装置の設計者にとって不感帯を扱い易いものに改善することができる制御装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の制御装置は、制御の設定値SPと制御量PVに基づいて操作量MVを算出してアクチュエータに出力する制御演算手段と、前記アクチュエータに設定されている非整定時間帯の不感帯幅に基づく所定幅の範囲内で操作量MVが上下動する制御状態が継続している場合に、制御量PVが整定し易い時間帯と判定する整定性判定手段と、制御量PVが整定し易い時間帯と前記整定性判定手段が判定した場合に、整定時間帯と認定する整定時間帯検出手段と、この整定時間帯検出手段によって整定時間帯と認定された場合に、前記アクチュエータに設定されている非整定時間帯の不感帯幅を、この不感帯幅よりも小さい値の、整定時間帯の不感帯幅に変更する第1の不感帯調整手段と、前記整定時間帯検出手段によって整定時間帯と認定された後に、前記アクチュエータに設定されている整定時間帯の不感帯幅に基づく所定幅の範囲内で上下動する操作量MVに規定値以上の変化が生じた場合に、外乱が加わっている非整定時間帯と認定する非整定時間帯検出手段と、この非整定時間帯検出手段によって非整定時間帯と認定された場合に、前記アクチュエータに設定されている整定時間帯の不感帯幅を、この不感帯幅よりも大きい値の、前記非整定時間帯の不感帯幅に変更する第2の不感帯調整手段とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の制御装置の1構成例は、さらに、外部からの操作に応じて、制御対象に外乱が加わり難い時間帯であることを示す通知情報を発生させる低外乱状態通知手段を備え、前記整定時間帯検出手段は、制御量PVが整定し易い時間帯と前記整定性判定手段が判定した場合、または制御対象に外乱が加わり難い時間帯と前記低外乱状態通知手段から通知された場合に、整定時間帯と認定することを特徴とするものである。
また、本発明の制御装置の1構成例は、さらに、制御量PVが整定し易い時間帯と前記整定性判定手段が判定した場合に、制御量PVの上下動幅を検出する上下動幅検出手段と、制御量PVが整定し易い時間帯と前記整定性判定手段が判定した場合に、前記上下動幅検出手段が検出した制御量PVの上下動幅の大きさに応じて、前記整定時間帯の不感帯幅を決定する不感帯幅決定手段とを備えることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の制御方法は、制御の設定値SPと制御量PVに基づいて操作量MVを算出してアクチュエータに出力する制御演算ステップと、前記アクチュエータに設定されている非整定時間帯の不感帯幅に基づく所定幅の範囲内で操作量MVが上下動する制御状態が継続している場合に、制御量PVが整定し易い時間帯と判定する整定性判定ステップと、制御量PVが整定し易い時間帯と前記整定性判定ステップで判定した場合に、整定時間帯と認定する整定時間帯検出ステップと、この整定時間帯検出ステップで整定時間帯と認定した場合に、前記アクチュエータに設定されている非整定時間帯の不感帯幅を、この不感帯幅よりも小さい値の、整定時間帯の不感帯幅に変更する第1の不感帯調整ステップと、前記整定時間帯検出ステップで整定時間帯と認定した後に、前記アクチュエータに設定されている整定時間帯の不感帯幅に基づく所定幅の範囲内で上下動する操作量MVに規定値以上の変化が生じた場合に、外乱が加わっている非整定時間帯と認定する非整定時間帯検出ステップと、この非整定時間帯検出ステップで非整定時間帯と認定した場合に、前記アクチュエータに設定されている整定時間帯の不感帯幅を、この不感帯幅よりも大きい値の、前記非整定時間帯の不感帯幅に変更する第2の不感帯調整ステップとを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、整定性判定手段と整定時間帯検出手段と第1の不感帯調整手段と非整定時間帯検出手段と第2の不感帯調整手段とを設けることにより、整定時間帯と認定したときに不感帯幅を自動的に小さい値に変更することで、制御の整定動作への悪影響を低減することができる。また、本発明では、制御装置の制御パラメータの調整作業の複雑さを緩和することができる。その結果、本発明では、制御装置の設計者にとって不感帯を扱い易いものに改善することができる。
【0014】
また、本発明では、低外乱状態通知手段を設けることにより、例えばオペレータが制御演算手段の制御パラメータを調整しようとしている場合に不感帯幅を小さい値に変更することが可能になり、制御演算手段の調整作業への悪影響を低減することができる。
【0015】
また、本発明では、上下動幅検出手段と不感帯幅決定手段とを設けることにより、制御量PVの上下動幅を要求上下動幅の範囲内にするための必要最小限の不感帯操作を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[発明の原理1]
空調機の熱交換機の冷温水流量を調整するバルブの開度とこのバルブを通過する冷温水の流量には、一般的に強非線形関係がある。この強非線形系に3%の不感帯を単純に適用すると、以下のような特性になる。
【0018】
まず、高開度側では、3%のバルブ開度指示値の変化毎にバルブを動作させても、バルブを通過する冷温水流量の変化が少ないので、空調機による温度制御は高分解能になる。
一方、低開度側では、3%のバルブ開度指示値の変化毎のバルブの動作が大きな冷温水量の変化を与えるので、空調機による温度制御は低分解能になる。すなわち、高開度側では0.1℃レベルの温度制御ができたとしても、低開度側では1.0℃レベルで温度が上下動する粗い制御になる。このような性質が、バルブを制御する制御演算部の調整作業や整定動作を複雑にしている。
【0019】
ここで、発明者は、特許文献2に開示された技術のように、温度が整定し易い状態において不感帯を大きくすると、整定開度周辺でバルブ開度が上下動するので、バルブの摺動が寧ろ大きくなることに着眼した。
【0020】
そして、発明者は、例えば制御演算部の調整作業を行なう時間帯のように、制御対象に外乱が加わり難い時間帯(整定し易い時間帯)における不感帯幅を小さくすることで(特許文献2に開示された技術と真逆の処理)、制御演算部の調整作業や整定動作への悪影響を低減することができ、かつ整定し易い状況のために不感帯幅が小さくてもバルブの摺動が抑えられることに想到した。
制御対象に外乱が加わり難い時間帯については、自動検出する手法でもよいし、外部から時間帯を指定する手法でもよい。
【0021】
[発明の原理2]
温度(制御量PV)の計測における計測ノイズに伴うバルブ開度指示値(操作量MV)の微動が避けられない場合は、バルブの完全な整定状態(一切の微動もない安定状態)は期待できない。
したがって、不感帯幅を小さくする際は、一律にするのではなく、整定性判定時に発生している温度(制御量PV)の上下動幅を参照して決定してもよい。このような不感帯幅の決定は、目標とする温度整定性を得るための、必要最小限の不感帯操作になる。
【0022】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態は、上記発明の原理1に対応する例である。
【0023】
制御装置は、制御の設定値SPと制御量PVに基づいて操作量MVを算出する制御演算部1と、操作量MVをアクチュエータ10に出力する操作量出力部2と、アクチュエータ10に設定されている非整定時間帯の不感帯幅DBに基づく所定幅の範囲内で操作量MVが上下動する制御状態が継続している場合に、制御量PVが整定し易い時間帯と判定する整定性判定部3と、外部からの操作に応じて、制御対象に外乱が加わり難い時間帯であることを示す通知情報を発生させる低外乱状態通知部4と、制御量PVが整定し易い時間帯と整定性判定部3が判定した場合、または制御対象に外乱が加わり難い時間帯と低外乱状態通知部4から通知された場合に、整定時間帯と認定する整定時間帯検出部5と、整定時間帯検出部5によって整定時間帯と認定された場合に、アクチュエータ10に設定されている非整定時間帯の不感帯幅DBを、この不感帯幅DBよりも小さい値の、整定時間帯の不感帯幅DBに変更する不感帯調整部6と、整定時間帯検出部5によって整定時間帯と認定された後に、アクチュエータ10に設定されている整定時間帯の不感帯幅DBに基づく所定幅の範囲内で上下動する操作量MVに規定値以上の変化が生じた場合に、外乱が加わっている非整定時間帯と認定する非整定時間帯検出部7と、非整定時間帯検出部7によって非整定時間帯と認定された場合に、アクチュエータ10に設定されている整定時間帯の不感帯幅DBを、この不感帯幅DBよりも大きい値の、非整定時間帯の不感帯幅DBに変更する不感帯調整部8とを備えている。
【0024】
図2は本実施の形態の制御装置の動作を説明するフローチャートである。制御演算部1は、制御の設定値SP(例えば室内温度設定値)と制御量PV(例えば室内温度計測値)に基づいて操作量MV(例えばバルブ開度指示値)を算出する(
図2ステップS100)。周知のとおり、制御演算部1の制御アルゴリズムとしては例えばPIDがある。
操作量出力部2は、制御演算部1が算出した操作量MVをアクチュエータ10(例えばバルブ)に出力する(
図2ステップS101)。
【0025】
アクチュエータ10は、不感帯処理機能を有しており、制御装置から出力された操作量MVとアクチュエータ10の動作量(例えばバルブ開度)との差の絶対値(%)が不感帯幅DB未満のときは、動作量を変更せず、操作量MVと動作量との差の絶対値(%)が不感帯幅DB以上になると、動作量を操作量MVに追従させるように動作する。この不感帯幅DBの初期値は、非整定時間帯の不感帯幅DB(例えば3.0%)である。
【0026】
次に、整定性判定部3は、アクチュエータ10に設定されている不感帯幅DBに基づく所定幅の範囲内で操作量MVが上下動する制御状態が継続している場合に(
図2ステップS102においてYES)、現時点以降の時間帯を制御量PVが整定し易い時間帯と判定する(
図2ステップS103)。具体的には、整定性判定部3は、制御演算部1が算出した操作量MVの上下動幅が不感帯幅DBに所定値α(例えば0.5%)を加えた値の範囲内で、かつこの操作量MVの上下動が所定回数(例えば5回)以上継続している場合に、制御量PVが整定し易い時間帯と判定すればよい。
【0027】
後述のように、制御量PVが整定し易い制御状態が継続している場合、アクチュエータ10の動作量は非整定時間帯の不感帯幅DBの振幅で上下動し、操作量MVは非整定時間帯の不感帯幅DBよりも若干量大きい振幅で上下動する。所定値αは、このような若干量を見込んで予め設定された値である。
【0028】
なお、整定性判定部3は、非整定時間帯において制御量PVが整定し易い時間帯か否かを判定するものであり、整定時間帯においては判定しない。したがって、整定性判定部3が判定を行なうときにアクチュエータ10に設定されている不感帯幅DBは、非整定時間帯の不感帯幅DBである。また、本実施の形態の制御装置が制御動作を開始するときの初期状態では、非整定時間帯として動作が開始されることは言うまでもない。
整定性判定部3の以上のような動作は、上記の発明の原理1に記載した、外乱が加わり難い時間帯について自動検出する手法に相当する。
【0029】
一方、低外乱状態通知部4は、オペレータの操作に応じて、制御対象に外乱が加わり難い時間帯であることを示す通知情報を発生させ、現時点以降の時間帯が外乱が加わり難い時間帯であることを整定時間帯検出部5に通知する(
図2ステップS104においてYES)。例えば、オペレータが制御演算部1の制御パラメータ(例えばPIDパラメータ)を調整しようとしている場合、制御対象に外乱が加わり難い状態に維持されている必要がある。したがって、低外乱状態通知部4は、オペレータによる制御パラメータ変更操作に伴って通知情報を発生させるようにすればよい。
【0030】
低外乱状態通知部4の以上のような動作は、上記の発明の原理1に記載した、外乱が加わり難い時間帯について外部から指定する手法に相当する。整定性判定部3と低外乱状態通知部4を両方備えることは本発明の必須の構成要件ではなく、どちらか一方を備えていればよい。なお、PIDパラメータ調整が行われると、制御状態は結果的に整定状態に至ることは言うまでもない。
【0031】
次に、整定時間帯検出部5は、制御量PVが整定し易い時間帯と整定性判定部3が判定した場合、あるいは制御対象に外乱が加わり難い時間帯と低外乱状態通知部4から通知された場合、現時点以降の時間帯を制御量PVが整定するはずの整定時間帯として認定する(
図2ステップS105)。
【0032】
不感帯調整部6は、整定時間帯検出部5によって整定時間帯と認定された場合、アクチュエータ10に設定されている非整定時間帯の不感帯幅DB(例えば3.0%)を、この不感帯幅よりも小さい値の、整定時間帯の不感帯幅DB(例えば0.1%)に変更する(
図2ステップS106)。
【0033】
次に、非整定時間帯検出部7は、整定時間帯検出部5によって整定時間帯と認定された後に、この整定時間帯の不感帯幅DBで安定している操作量MVに規定値(例えば0.5%)以上の変化が生じた場合に(
図2ステップS107においてYES)、現時点以降の時間帯を制御量PVが整定し難い非整定時間帯として認定する(
図2ステップS108)。
【0034】
なお、整定時間帯の不感帯幅DBで安定している操作量MVとは、ステップS106の処理で不感帯幅DBを整定時間帯の不感帯幅DBに変更した時点からの経過時間が所定時間T以上であって、かつ操作量MVの上下動幅が整定時間帯の不感帯幅DBに所定値β(β<αで、例えば0.1%)を加えた値の整定時変動範囲内であるときの操作量MVのことを言う。所定時間Tは、不感帯幅DBを小さい値に変更した時点から操作量MV(制御量PV)が安定するまでの時間を見込んで予め設定された値である。また、制御量PVが整定している場合、操作量MVは整定時間帯の不感帯幅DBよりも若干量大きい振幅で上下動する。所定値βは、このような若干量を見込んで予め設定された値である。
【0035】
そして、非整定時間帯検出部7は、不感帯幅DBを整定時間帯の不感帯幅DBに変更した時点から所定時間T以上経過し、整定時間帯の不感帯幅DBで安定していた操作量MVの平均値MV_aveに整定時間帯の不感帯幅DB(0.1%)を加減算した値MV_ave±DBに対して、最新の操作量MVが規定値(例えば0.5%)以上変化した場合、現時点以降の時間帯を制御量PVが整定し難い非整定時間帯として認定する。
【0036】
不感帯調整部8は、非整定時間帯検出部7によって非整定時間帯と認定された場合、アクチュエータ10に設定されている整定時間帯の不感帯幅DB(例えば0.1%)を、この不感帯幅よりも大きい値の、非整定時間帯の不感帯幅DB(例えば3.0%)に戻す(
図2ステップS109)。
【0037】
制御装置は、以上のようなステップS100〜S109の処理を例えばオペレータの指示によって制御が終了するまで(
図2ステップS110においてYES)、制御周期毎に行なう。
【0038】
図3(A)、
図3(B)は本実施の形態の制御装置の動作例を示す図である。ここでは、アクチュエータ10が空調機の熱交換機の冷温水流量を調整するバルブであり、制御装置が空調対象の部屋の温度を制御する例について説明する。
図3(A)は冷房時の空調対象の部屋の温度(制御量PV)の変化を示す図、
図3(B)は冷房時に制御演算部1が算出するバルブ開度指示値(操作量MV)およびバルブ開度VAの変化を示す図である。
図3(A)におけるSPは温度設定値である。
【0039】
図3(A)、
図3(B)の例では、非整定時間帯における不感帯幅DBが3.0%で、安定した整定状態(平衡状態)になるためのバルブの動作量(バルブ開度VA)が25.0%であるときに、制御の過渡状態からの推移の途中でバルブ開度指示値MVが29.5%のときに実際のバルブ開度VAが29.5%で一致していたとする。整定状態に近づく際にバルブ開度指示値MVとして29.0%や28.5%という数値が制御演算部1によって算出されるが、バルブ開度指示値MVとバルブ開度VA=29.5%との差の絶対値が不感帯幅DB=3.0%に至らないので、バルブはバルブ開度VA=29.5%を維持する。
【0040】
その後、バルブ開度指示値MVが26.5%になると、バルブ開度指示値MVとバルブ開度VA=29.5%との差の絶対値が3.0%になるので、バルブは、バルブ開度VAがバルブ開度指示値MV=26.5%に追従するように動作する(
図3の時刻t1の動作)。さらに、バルブ開度指示値MVは制御演算部1の制御演算により25.0%へと更新されていくが、バルブ開度指示値MVとバルブ開度VA=26.5%との差の絶対値が不感帯幅DB=3.0%に至らないので、バルブはバルブ開度VA=26.5%を維持する。したがって、制御演算部1は、バルブ開度指示値MVをさらに更新し、やがて23.5%になる。
【0041】
バルブ開度指示値MVが23.5%になると、バルブ開度指示値MVとバルブ開度VA=26.5%との差の絶対値が3.0%になるので、バルブは、バルブ開度VAがバルブ開度指示値MV=23.5%に追従するように動作する(
図3の時刻t2の動作)。その後、制御演算部1は、バルブ開度指示値MVを25.0%へと上昇させるが、バルブ開度指示値MVとバルブ開度VA=23.5%との差の絶対値が不感帯幅DB=3.0%に至らないので、バルブはバルブ開度VA=23.5%を維持する。したがって、制御演算部1は、バルブ開度指示値MVをさらに更新し、やがてバルブ開度指示値MVが26.5%になる。
【0042】
バルブ開度指示値MVが26.5%になると、バルブ開度指示値MVとバルブ開度VA=23.5%との差の絶対値が3.0%になるので、バルブは、バルブ開度VAがバルブ開度指示値MV=26.5%に追従するように動作する(
図3の時刻t3の動作)。こうして、バルブ開度VAは不感帯幅DB=3.0%の振幅(26.5%−23.5%)で上下動する。このとき、バルブ開度指示値MVは不感帯幅DB=3.0%よりも若干量大きい振幅で上下動する。
【0043】
整定性判定部3は、このようにバルブ開度指示値MVの上下動幅が不感帯幅DBに所定値αを加えた値の範囲内で、かつこの操作量MVの上下動が例えば5回以上継続している場合に、制御量PVが整定し易い時間帯と判定する。なお、ここでは、バルブ開度指示値MV(操作量MV)が上昇したときと下降したときをそれぞれ1回ずつとして数える。こうして、時刻t4において、不感帯調整部6は、バルブに設定されている非整定時間帯の不感帯幅DB=3.0%を、整定時間帯の不感帯幅DB=0.1%に変更する。
【0044】
次に、非整定時間帯検出部7は、整定時間帯の不感帯幅DBで安定している操作量MVの平均値MV_aveに整定時間帯の不感帯幅DB=0.1%を加減算した値MV_ave±DBに対して、最新の操作量MVが規定値(例えば0.5%)以上変化した場合、現時点以降の時間帯を制御量PVが整定し難い非整定時間帯として認定する。例えばMV_ave=25.0%であったときに、不感帯幅DB=0.1%を加減算した値24.9%〜25.1%に対して最新の操作量MVが規定値以上変化した場合、すなわち最新の操作量MVが24.4%以下あるいは25.6%以上に至った場合に、非整定時間帯と認定する。
【0045】
以上の構成により、本実施の形態では、不感帯を扱いやすく改善することができる。頻繁に3.0%の変化幅でバルブが摺動するよりも、バルブ開度を25.0%にきっちり整定し続ける方が、バルブの累積摺動距離も少なくすることができる。また、本実施の形態によれば、PIDパラメータを調整する場合も、不適切な調整によりバルブ開度の3.0%の不安定化が起こっているのか、バルブ開度の上下動が不感帯による上下動なのかを容易に区別することができるので、PIDパラメータの調整作業の複雑さを緩和することができる。
【0046】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図4は本発明の第2の実施の形態に係る制御装置の構成を示すブロック図であり、
図1と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態は、上記発明の原理2に対応する例である。
【0047】
本実施の形態の制御装置は、制御演算部1と、操作量出力部2と、整定性判定部3と、低外乱状態通知部4と、整定時間帯検出部5と、不感帯調整部6aと、非整定時間帯検出部7と、不感帯調整部8と、制御量PVが整定し易い時間帯と整定性判定部3が判定した場合に、計測される制御量PVの上下動幅を検出する上下動幅検出部9と、制御量PVが整定し易い時間帯と整定性判定部3が判定した場合に、上下動幅検出部9が検出した制御量PVの上下動幅の大きさに応じて、整定時間帯の不感帯幅DBを決定する不感帯幅決定部11とを備えている。
【0048】
図5は本実施の形態の制御装置の動作を説明するフローチャートである。
図5のステップS200〜S203の処理は、
図2のS100〜S103と同じなので、説明は省略する。
上下動幅検出部9は、制御量PVが整定し易い時間帯と整定性判定部3が判定した場合に、図示しないセンサ(例えば室温センサ)によって計測される制御量PV(例えば温度)の上下動幅Wを検出する(
図5ステップS204)。
【0049】
不感帯幅決定部11は、制御量PVが整定し易い時間帯と整定性判定部3が判定した場合に上下動幅検出部9が検出した制御量PVの上下動幅Wの大きさに応じて、整定時間帯における不感帯幅DBを決定する(
図5ステップS205)。例えば、3.0%の不感帯幅DBがあることで、制御量PV(温度)の上下動幅Wが2.5℃であったとする。
【0050】
不感帯幅決定部11は、予め規定された制御量PVの要求上下動幅DWが0.5℃であれば、3.0%×(0.5℃/2.5℃)=0.6%というように、DW/Wという修正比率を非整定時間帯の不感帯幅DB=3.0%に乗算することで不感帯幅DBを修正し、整定時間帯における不感帯幅DB=0.6%を決定する。ただし、不感帯幅決定部11は、算出した修正比率DW/Wが1.0以上になる場合は、非整定時間帯における不感帯幅DBに乗算する修正比率を0.99とする。これにより、整定時間帯においては、非整定時間帯よりも不感帯幅DBを必ず小さく調整できる。
【0051】
図5のステップS206,S207の処理は、
図2のS104,S105と同じなので、説明は省略する。
不感帯調整部6aは、整定時間帯検出部5によって整定時間帯と認定された場合、アクチュエータ10に設定されている非整定時間帯の不感帯幅DBを、この不感帯幅よりも小さい値の、整定時間帯の不感帯幅DBに変更する(
図5ステップS208)。このとき、不感帯調整部6aは、直前の処理で不感帯幅決定部11が整定時間帯の不感帯幅DBの値を決定した場合には、不感帯幅決定部11が決定した最新の不感帯幅DBの値を、アクチュエータ10に設定する値とし、低外乱状態通知部4からの通知により整定時間帯と認定されたために不感帯幅決定部11による不感帯幅DBの決定が行われていない場合には、整定時間帯の不感帯幅DBの規定値(例えば0.1%)を、アクチュエータ10に設定する値とする。
【0052】
図5のステップS209〜S211の処理は、
図2のS107〜S109と同じなので、説明は省略する。
制御装置は、以上のようなステップS200〜S211の処理を例えばオペレータの指示によって制御が終了するまで(
図5ステップS212においてYES)、制御周期毎に行なう。
【0053】
以上の構成により、本実施の形態では、制御量PVの上下動幅を要求上下動幅の範囲内にするための必要最小限の不感帯操作を実現することができる。
【0054】
第1、第2の実施の形態で説明した制御装置は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1、第2の実施の形態で説明した処理を実行する。