(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576272
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】インターロッキングブロックの凍結融解試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/38 20060101AFI20190909BHJP
E01C 5/06 20060101ALI20190909BHJP
G01N 33/42 20060101ALI20190909BHJP
G01N 3/00 20060101ALN20190909BHJP
【FI】
G01N33/38
E01C5/06
G01N33/42
!G01N3/00 M
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-43232(P2016-43232)
(22)【出願日】2016年3月7日
(65)【公開番号】特開2017-161235(P2017-161235A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2018年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137970
【弁理士】
【氏名又は名称】三原 康央
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩章
(72)【発明者】
【氏名】上田 宣人
【審査官】
海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−015893(JP,A)
【文献】
国際公開第02/010715(WO,A1)
【文献】
中国実用新案第202512113(CN,U)
【文献】
特開2012−214355(JP,A)
【文献】
都築真之ほか,各種インターロッキングブロックの凍結融解試験方法の検討,コンクリート工学年次論文集,2011年 6月15日,Vol.33,No.1,PP.947-952
【文献】
服部健作ほか,実環境を考慮したコンクリートの凍結融解抵抗性の評価,コンクリート工学年次論文集,2009年 9月,第20巻第3号,PP.11-20
【文献】
野口博章ほか,凍結融解作用を受けるコンクリートの劣化深度評価に関する基礎的研究,土木学会論文集E,2006年 9月,Vol.62,No.3,PP.592-605
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/38
E01C 5/06
G01N 33/42
G01N 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロッキングブロック供試体の一部を水に浸漬しながら、所定サイクルの凍結及び融解を行った後の、当該インターロッキングブロック供試体の質量減少率を測定してインターロッキングブロックの凍結融解抵抗性を評価するインターロッキングブロックの凍結融解試験方法であって、
前記供試体の高さの10〜30%まで水に浸漬し、
−17±7℃で15〜17時間の凍結と5℃以上で7〜9時間の融解を1サイクルとする凍結及び融解を100〜200サイクル行う、
ことを特徴とするインターロッキングブロックの凍結融解試験方法。
【請求項2】
質量減少率が1質量%以下であれば凍結融解抵抗性を有すると評価する請求項1に記載のインターロッキングブロックの凍結融解試験方法。
【請求項3】
インターロッキングブロックが保水性インターロッキングブロックである請求項1又は請求項2に記載のインターロッキングブロックの凍結融解試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターロッキングブロックの凍結融解試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロッキングブロックの耐久性指標として凍結融解抵抗性が挙げられる。インターロッキングブロック舗装設計施工要領においては、寒冷地において供用年数10年以上経過したインターロッキングブロック舗装の凍結融解による破損実態について、製造会社に対してアンケート調査を実施し、その結果から、曲げ強度5.0MPa以上の普通インターロッキングブロックおよび曲げ強度3.0MPa以上の透水性インターロッキングブロックについて十分な凍結融解抵抗性を有する結論を得ている。
そして、これ以外のインターロッキングブロック(対象は曲げ強度3.0MPa以上の普通インターロッキングブロックおよび曲げ強度3.0MPa以上の保水性インターロッキングブロック)については、適切な試験やモニタリングなどで確認することが望ましいとされている。
【0003】
一般的なコンクリートを対象とした凍結融解試験であるJIS A 1148(A法:水中)は、インターロッキングブロックに適用したとき、非常に厳しい環境での評価基準となるためか、その供用実態を反映できず、暴露試験との整合がないので、インターロッキングブロックの評価試験方法としては不適切と判断される。
また、JIS A 1148(非特許文献1)以外に知られているインターロッキングブロックの凍結融解試験方法として、例えば、ASTM C 1645があるが、本公定法は、普通インターロッキングブロックや透水性インターロッキングブロックについては暴露試験と同様の結果が得られており、当該種類のインターロッキングブロックの凍結融解試験としては適切であるといえる。
ところが、保水性インターロッキングブロックに対しては、暴露試験結果との乖離が認められ適切な評価試験方法とは言い難い面がある。
【0004】
さらに、上述したJIS A 1148やASTM C 1645は、専用の試験装置を必要とするので、限られた機関でしか評価できない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本工業規格 JIS A 1148:2010 コンクリートの凍結融解試験方法
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、専用の試験装置を用いなくてもインターロッキングブロックの暴露試験結果と整合する凍結融解抵抗性を簡易に評価できるうえ、従来は評価が困難であった保水性インターロッキングブロックであっても評価可能なインターロッキングブロックの凍結融解試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために、特定の試験条件でインターロッキングブロックの凍結融解抵抗性を評価することを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、以下の[1]〜[3]を提供するものである。
【0008】
[1]インターロッキングブロック供試体の一部を水に浸漬しながら、所定サイクルの凍結及び融解を行った後の、当該インターロッキングブロック供試体の質量減少率を測定してインターロッキングブロックの凍結融解抵抗性を評価するインターロッキングブロックの凍結融解試験方法であって、
前記供試体の高さの10〜30%まで水に浸漬し、
−17±7℃で15〜17時間の凍結と5℃以上で7〜9時間の融解を1サイクルとする凍結及び融解を100〜200サイクル行う、
ことを特徴とするインターロッキングブロックの凍結融解試験方法、を提供する。
[2]質量減少率が1質量%以下であれば凍結融解抵抗性を有すると評価する[1]に記載のインターロッキングブロックの凍結融解試験方法、を提供する。
[3]インターロッキングブロックが保水性インターロッキングブロックである[1]又は[2]に記載のインターロッキングブロックの凍結融解試験方法、を提供する。
【0009】
本願について説明する。
図1は、本発明の試験方法の凍結時の概念図を示している。凍結に用いる冷凍庫11にはフォースターの市販冷凍庫を選定した。フォースター冷凍庫は、冷凍負荷温度が−18℃以下であり、容易に入手可能である。冷凍庫の底に水12をはり、底面から離間させる治具13のうえに、供試体20を載置した。
【0010】
本発明では、インターロッキングブロック供試体20の高さの10〜30%(好ましくは11〜25%、より好ましくは12〜20%)までを水13に浸漬しなから、凍結及び融解のサイクルを行う。水の浸漬高さが前記範囲外では、特に、保水性インターロッキングブロックの評価が暴露試験と乖離する虞がある。
【0011】
本発明では、凍結は−17±7℃(好ましくは−18±5℃)で15〜17時間行う。また、融解は、冷凍庫から取り出して、5℃以上(好ましくは7〜20℃、より好ましくは9〜16℃)で7〜9時間行う。凍結条件と融解条件が前記範囲外では、特に、保水性インターロッキングブロックの評価が暴露試験と乖離する虞がある。なお、前記温度は、測定環境の温度であり、公定法における供試体中心の温度ではない。
【0012】
本発明では、上記条件の凍結と融解を1サイクルとする凍結及び融解を100〜200サイクル(試験期間の短縮の観点から、好ましくは100〜120サイクル、より好ましくは100サイクル)行う。当該サイクル数が、前記範囲外では、特に、保水性インターロッキングブロックの評価が暴露試験と乖離する虞がある。
【0013】
本発明の凍結融解試験においては、凍結時に用いる冷凍庫として、JIC C 9607におけるスリースター室又はフォースター室を使用することができる。
【0014】
本発明において、インターロッキングブロック供試体の寸法は、評価精度等の観点から、実施工で使用するインターロッキングブロックと同じ寸法とすることが好ましい。例えば、縦20cm×横10cm×高さ6cmのインターロッキングブロックを施工する場合は、本発明におけるインターロッキングブロック供試体の寸法も縦20cm×横10cm×高さ6cmとすることが好ましい。
なお、実施工で使用するインターロッキングブロックが大型(縦横30cm以上)の場合は、供試体の冷凍庫への格納や取り出しにおけるハンドリング性の観点から、当該供試体として、実施工で使用するインターロッキングブロックよりも上下面の面積を小さくした供試体を使用してもよい(なお、供試体の高さは実施工で使用するインターロッキングブロックと同じとする)。例えば、縦50cm×横50cm×高さ8cmのインターロッキングブロックを施工する場合は、本発明におけるインターロッキングブロック供試体の寸法を、例えば、縦20cm×横10cm×高さ8cmとしてもよい。
【0015】
本発明では、凍結及び融解を100〜200サイクル行った後の質量減少率が1質量%以下であれば、当該インターロッキングブロックは凍結融解抵抗性を有すると評価する。なお、本発明では、同一のコンクリートで供試体を3個以上作成して試験を行い、その平均値で評価することが好ましい。
【0016】
本発明の凍結融解試験方法は、普通、透水性、及び保水性インターロッキングブロックの評価が可能である。特に、従来は評価が困難であった保水性インターロッキングブロックであっても暴露試験と同様の凍結融解抵抗性を評価することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、専用の試験装置を用いなくてもインターロッキングブロックの凍結融解抵抗性を評価できるうえ、従来は評価が困難であった保水性インターロッキングブロックであっても暴露試験と同様の凍結融解抵抗性を評価できるインターロッキングブロックの凍結融解試験方法を実現した。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本試験方法の凍結時の概念を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(1)使用材料
以下の材料を使用した。
セメント:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
細骨材 :山砂(静岡県掛川市産)
粗骨材 :砕石2005(茨城県桜川市産)
6号砕石(茨城県桜川市産)
7号砕石(茨城県桜川市産)
水 :水道水
メタカオリン:ブレーン比表面積10000cm
2/gパーライトBF粉(パーライトの製造工程で得られるバックフィーダー粉):平均粒径200μm以下、吸水率60質量%
ALC廃材:粒径1〜4mm、吸水率65質量%
ロックウール廃材:粒径5mm以下、吸水率70質量%
(2)コンクリートの配合
下記表1に各インターロッキングブロックの上記材料の組成配合(単位kg/m
3)を示す。表1中の「種別」は、インターロッキングブロックのタイプとその曲げ強度(単位MPa)を示す。「その他」中の括弧内は、使用した材料名である。
【0021】
(3)供試体の製造
コンクリートの混練はパン型ミキサを使用して、各材料を一括してミキサに投入して混練した。各コンクリートを使用して、縦20×横10cm×高さ6cmの供試体を作製した。なお、透水性インターロッキングブロックと保水性インターロッキングブロックは、それぞれ規格値を満足するものであった。
【0022】
(4)凍結融解試験(実施例)
各供試体の下部1cmを水に浸漬しながら、−18±5℃で15〜17時間の凍結と14±3℃で7〜9時間の融解を1サイクルとする凍結及び融解を100サイクル行った後、供試体の質量減少率を測定した。該質量減少率が1質量%以下であれば凍結融解抵抗性を有する(○)と評価した。評価は3個の供試体の平均値で行った。なお、凍結に用いる冷凍庫はフォースター室(市販品)を使用した。
【0023】
(5)暴露試験
各供試体を、北海道札幌市郊外で10年間屋外暴露後、当該供試体の相対動弾性係数(JIS A 1148に準拠)を測定した。該相対動弾性係数が60%以上であれば凍結融解抵抗性を有する(○)と評価した。評価は3個の供試体の平均値で行った。
【0024】
(6)比較例1
ASTM C 1645(水中)に準拠して各供試体を質量損失量で評価した。該質量損失量が、25サイクルで200g/m
2以下、50サイクルにおいて500g/m
2以下のどちらかを満足すれば凍結融解抵抗性を有する(○)と評価した。
【0025】
(7)比較例2
従来から提案されている簡易試験方法(コンクリート工学年次論文集,Vol.33,No.1の947−952頁参照)に準拠して評価した。具体的には、凍結条件−20℃で16時間、融解条件5℃で8時間を1サイクルとした。インターロッキングブロックは、水へ浸漬後、表乾状態にして、凍結融解を繰返した。融解中はブロックの水分が損失するので、ビニールフィルムで覆うことで水分の損失をとどめた。また、測定時には、多少の水分が損失する可能性があることから、同一条件下で評価を行うために、測定前に約30分、測定後に約10分水に浸漬させて表乾状態に再調整を行った。50サイクル後に相対動弾性係数が60%以上であれば凍結融解抵抗性を有する(○)と評価した。
【0026】
(8)比較例3
JIS A 1148(A法:水中)に準拠して各供試体を相対動弾性係数で評価した。300サイクル後に相対動弾性係数が60%以上であれば凍結融解抵抗性を有する(○)と評価した。
【0027】
(9)比較例4
JIS A 1148(B法:気中)に準拠して各供試体を相対動弾性係数で評価した。300サイクル後に相対動弾性係数が60%以上であれば凍結融解抵抗性を有する(○)と評価した。以上の諸結果を表2に纏めて示す。
【0029】
表2から、比較例1〜4の方法では、暴露試験の結果と異なる評価になることが示された。一方、本発明の凍結融解試験方法では、全てのインターロッキングブロックにおいて暴露試験と同様の評価が得られることがわかる。特に、従来は評価が困難であった保水性インターロッキングブロックであっても暴露試験と同様の凍結融解抵抗性を評価できる。
【0030】
(10)比較例5
表1のL又はPの配合の供試体を使用して、当該供試体の下部3cmを水に浸漬したこと以外は、上記実施例と同様にして凍結及び融解を行い、凍結融解抵抗性を評価した。その結果、L及びPの配合の供試体の両方とも、凍結融解抵抗性は×となり、暴露試験の結果と乖離した。
【0031】
(11)比較例6
表1のL又はPの配合の供試体を使用して、250サイクルの凍結及び融解を行ったこと以外は、上記実施例と同様にして凍結及び融解を行い、凍結融解抵抗性を評価した。その結果、L及びPの配合の供試体の両方とも、凍結融解抵抗性は×となり、暴露試験の結果と乖離した。
【符号の説明】
【0032】
11 冷凍庫
12 水
13 離間治具
20 供試体