特許第6576275号(P6576275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジヤトコ株式会社の特許一覧 ▶ 日産自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6576275-自動変速機の制御装置 図000002
  • 特許6576275-自動変速機の制御装置 図000003
  • 特許6576275-自動変速機の制御装置 図000004
  • 特許6576275-自動変速機の制御装置 図000005
  • 特許6576275-自動変速機の制御装置 図000006
  • 特許6576275-自動変速機の制御装置 図000007
  • 特許6576275-自動変速機の制御装置 図000008
  • 特許6576275-自動変速機の制御装置 図000009
  • 特許6576275-自動変速機の制御装置 図000010
  • 特許6576275-自動変速機の制御装置 図000011
  • 特許6576275-自動変速機の制御装置 図000012
  • 特許6576275-自動変速機の制御装置 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576275
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】自動変速機の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/04 20060101AFI20190909BHJP
   B60W 10/11 20120101ALI20190909BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20190909BHJP
   F16H 61/68 20060101ALI20190909BHJP
   F16H 63/50 20060101ALI20190909BHJP
   F16H 61/66 20060101ALI20190909BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20190909BHJP
   B60W 10/115 20120101ALI20190909BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   B60W10/00 108
   F16H61/02
   F16H61/68
   F16H63/50
   F16H61/66
   B60W10/06
   B60W10/115
   F02D29/00 C
【請求項の数】7
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-44978(P2016-44978)
(22)【出願日】2016年3月8日
(65)【公開番号】特開2017-159758(P2017-159758A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2018年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 真美子
(72)【発明者】
【氏名】喜田川 誠也
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/060051(WO,A1)
【文献】 特開2001−248466(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0021682(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 − 50/16
F02D 29/00
F16H 61/00 − 63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行駆動源と駆動輪との間に配され、複数の締結要素の締結及び解放によって複数の変速段を切り替え可能な有段変速機構を有する自動変速機と、変速要求時に前記走行駆動源の出力トルクを制御する駆動源トルク制御手段と、を備えた自動変速機の制御装置において、
前記駆動源トルク制御手段は、前記走行駆動源の出力トルクの最大出力値から、前記有段変速機構がシフト前変速段からシフト後変速段への変速にて発生する前記自動変速機の出力トルクの低下変動分を差し引いたトルクに対応する駆動源トルク閾値を設定し、
前記有段変速機構が前記シフト前変速段であって、且つ前記走行駆動源に対する負荷トルクが前記駆動源トルク閾値よりも高い場合、前記走行駆動源の出力トルクを前記負荷トルクよりも低下させるトルクダウンを行い、
前記トルクダウン中に、前記有段変速機構が前記シフト前変速段から前記シフト後変速段への変速を行う際、前記変速中に前記トルクダウンを解除して、前記走行駆動源の出力トルクを前記負荷トルクに向けて増大する
ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された自動変速機の制御装置において、
前記駆動源トルク制御手段は、前記トルクダウン中の前記走行駆動源の出力トルクを前記駆動源トルク閾値以下に設定する
ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された自動変速機の制御装置において、
前記有段変速機構の前記シフト前変速段から前記シフト後変速段への変速をダウンシフトとし、
前記駆動源トルク制御手段は、前記ダウンシフトのイナーシャフェーズの開始時点で、前記走行駆動源の出力トルクが、前記駆動源トルク閾値以下になるように前記トルクダウンを行う
ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載された自動変速機の制御装置において、
前記駆動源トルク制御手段は、前記有段変速機構のダウンシフトのイナーシャフェーズが開始したとき、前記トルクダウンを解除して前記走行駆動源の出力トルクを前記負荷トルクに向けて増大させ始めると共に、前記走行駆動源の出力トルクの増大変化速度を前記イナーシャフェーズの進行に応じて演算し、前記イナーシャフェーズの終了時点で前記走行駆動源の出力トルクを前記負荷トルクに一致させる
ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載された自動変速機の制御装置において、
前記自動変速機は、前記有段変速機構に直列配置され、変速比を無段階に変更可能であって、前記有段変速機構の変速中のイナーシャフェーズ時に変速する無段変速機構を有し、
前記駆動源トルク制御手段は、前記有段変速機構がダウンシフトする際、前記トルクダウン中の前記走行駆動源の出力トルクを、前記有段変速機構のダウンシフト中の前記無段変速機構の変速によって生じる前記自動変速機の出力トルクの変動分に基づいて補正する
ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載された自動変速機の制御装置において、
前記有段変速機構の前記シフト前変速段から前記シフト後変速段への変速をアップシフトとし、
前記駆動源トルク制御手段は、前記アップシフトのトルクフェーズの開始時点で、前記走行駆動源の出力トルクが、前記駆動源トルク閾値以下になるように前記トルクダウンを行う
ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載された自動変速機の制御装置において、
前記駆動源トルク制御手段は、前記有段変速機構のアップシフトのトルクフェーズが開始したとき、前記トルクダウンを解除して前記走行駆動源の出力トルクを前記負荷トルクに向けて増大させ始めると共に、前記走行駆動源の出力トルクの増大変化速度を前記トルクフェーズの進行に応じて演算し、前記トルクフェーズの終了時点で前記走行駆動源の出力トルクを前記負荷トルクに一致させる
ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の変速段を切り替え可能な有段変速機構を有する自動変速機の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の変速段から他の変速段へと変速する有段変速機において、クラッチの架け替え時に生じる変速ショックを低減するため、変速中にエンジン等の走行駆動源の出力トルクを増大するトルクアップを行う自動変速機の制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07-127490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、変速前の走行駆動源の出力トルク(以下、「駆動源トルク」という)がすでに高い状態であると、従来の制御装置では変速中に生じる変速ショックを十分に低減できない可能性がある。
つまり、駆動源トルクが高い状態とは、駆動源トルクの最大出力値との差分が小さい状態であり、変速中に増大可能なトルクアップ代が小さい。このような状態で変速が実施される場合、変速ショックを抑制するために必要な駆動源トルクのトルクアップ量に対し、上述したトルクアップ代が不足する場合がある。この場合では、変速ショックを十分に低減することができない。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、変速時のトルクアップ代を大きくし、変速ショックを低減することができる自動変速機の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の自動変速機の制御装置は、自動変速機と、駆動源トルク制御手段と、を備えている。
前記自動変速機は、走行駆動源と駆動輪との間に配され、複数の締結要素の締結及び解放によって複数の変速段を切り替え可能な有段変速機構を有する。前記駆動源トルク制御手段は、変速要求時に、走行駆動源の出力トルクを制御する。
さらに、この駆動源トルク制御手段は、走行駆動源の出力トルクの最大出力値から、有段変速機構がシフト前変速段からシフト後変速段への変速にて発生する自動変速機の出力トルクの低下変動分を差し引いたトルクに対応する駆動源トルク閾値を設定する。そして、有段変速機構がシフト前変速段であって走行駆動源に対する負荷トルクが駆動源トルク閾値よりも大きい場合、走行駆動源の出力トルクを負荷トルクよりも低下させるトルクダウンを行う。また、トルクダウン中に、有段変速機構がシフト前変速段からシフト後変速段への変速を行う際、この変速中にトルクダウンを解除して、走行駆動源の出力トルクを負荷トルクに向けて増大する。
【発明の効果】
【0007】
よって、本願発明では、有段変速機構の変速前に、走行駆動源の出力トルクが高い状態(駆動源トルク閾値よりも大きい状態)であればトルクダウンするため、現在の走行駆動源の出力トルクと最大出力値との差分が小さくなりすぎることを防止することができる。つまり、変速時に必要となる走行駆動源の出力トルクのトルクアップ代を大きくすることができる。
そして、有段変速機構の変速を行う際、この変速中にトルクダウンを解除し、走行駆動源の出力トルクを負荷トルクに向けて増大する。そのため、変速中に生じる自動変速機の出力トルクの低下変動を抑制し、変速ショックを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の制御装置が適用された自動変速機が搭載されたエンジン車を示す全体構成図である。
図2】実施例1の制御装置が適用された自動変速機の電子制御系を示すブロック図である。
図3】実施例1の統合コントローラの記憶装置に格納されている変速マップの一例を示す変速マップ図である。
図4】実施例1にて実行される変速時エンジントルク制御処理の流れを示すフローチャートである。
図5】2速段でのトルクダウン時のエンジントルク規制値の設定方法を示す説明図である。
図6】1速段でのトルクダウン時のエンジントルク規制値の設定方法を示す説明図である。
図7】比較例の自動変速機でのダウンシフト実施時のアクセル開度・エンジントルク・負荷トルク・スルー変速比・バリエータ変速比・副変速比・車両Gの各特性を示すタイムチャートである。
図8】実施例1の制御装置を適用した自動変速機でのダウンシフト実施時のアクセル開度・エンジントルク規制値・エンジントルク・負荷トルク・スルー変速比・バリエータ変速比・副変速比・車両Gの各特性を示すタイムチャートである。
図9】実施例1の制御装置を適用した自動変速機の副変速機でのアップシフト実施時のアクセル開度・エンジントルク規制値・エンジントルク・負荷トルク・スルー変速比・副変速比・バリエータ変速比・車両Gの各特性を示すタイムチャートである。
図10A】トルクダウン方法の他の第1例を示す説明図である。
図10B】トルクダウン方法の他の第2例を示す説明図である。
図10C】トルクダウン方法の他の第3例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の自動変速機の制御装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
実施例1における自動変速機の制御装置は、副変速機付き無段変速機が搭載されたエンジン車に適用したものである。以下、実施例1における自動変速機の制御装置の構成を、「全体システム構成」、「変速マップによる変速制御構成」、「変速時エンジントルク制御処理構成」に分けて説明する。
【0011】
[全体システム構成]
図1は実施例1の制御装置が適用された自動変速機が搭載されたエンジン車を示す全体構成を示し、図2は自動変速機の電子制御系を示す。以下、図1及び図2に基づいて、実施例1の制御装置の全体システム構成を説明する。
【0012】
実施例1の自動変速機4が搭載された車両は、走行駆動源としてエンジン1を備える。
エンジン1からの出力回転は、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータ2、第1ギヤ列3、自動変速機4、第2ギヤ列5、終減速装置6を介して駆動輪7へと伝達される。
第2ギヤ列5には、駐車時に自動変速機4の出力軸を機械的に回転不能にロックするパーキング機構8が設けられている。また、車両には、エンジン1の動力の一部を利用して駆動されるオイルポンプ10と、オイルポンプ10からの油圧を調圧して自動変速機4の各部位に供給する油圧制御回路11と、エンジン1に内蔵されたスロットルバルブアクチュエータ等へ指令を出力してエンジン動作点を制御するエンジンコントローラ12と、油圧制御回路11及びエンジンコントローラ12を制御する統合コントローラ13と、が設けられている。以下、各構成について説明する。
【0013】
前記自動変速機4は、バリエータ20(無段変速機構)と、バリエータ20に対して直列に設けられた副変速機30(有段変速機構)と、を備えていて、“副変速機付き無段変速機”と呼ばれるものである。
ここで、「直列に設けられる」とは、同一の動力伝達経路においてバリエータ20と副変速機30が直列に設けられるという意味である。副変速機30の入力軸は、実施例1のようにバリエータ20の出力軸に直接接続されていてもよいし、その他の変速ないし動力伝達機構(例えば、ギヤ列やクラッチ)を介して接続されていてもよい。また、副変速機30の出力軸にバリエータ20の入力軸が接続されていてもよい。
【0014】
前記バリエータ20は、プライマリプーリ21と、セカンダリプーリ22と、両プーリ21,22の間に掛け回されるVベルト23とを備えるベルト式無段変速機構である。プーリ21,22は、それぞれ固定円錐板と、この固定円錐板に対してシーブ面を対向させた状態で配置され固定円錐板との間にV溝を形成する可動円錐板と、この可動円錐板の背面に設けられて可動円錐板を軸方向に変位させる油圧シリンダ23a,23bとを備える。油圧シリンダ23a,23bに供給される油圧を調整すると、V溝の幅が変化してVベルト23と各プーリ21,22との接触半径が変化し、バリエータ20の変速比が無段階に変化する。
【0015】
前記副変速機30は、前進2段・後退1段による有段変速機構である。この副変速機30は、2つの遊星歯車のキャリアを連結したラビニョウ型遊星歯車機構31と、ラビニョウ型遊星歯車機構31を構成する複数の回転要素に接続され、それらの連係状態を変更する複数の摩擦締結要素を備える。摩擦締結要素としては、ローブレーキ32と、ハイクラッチ33と、リバースブレーキ34と、が設けられる。各摩擦締結要素32〜34への供給油圧を調整し、各摩擦締結要素32〜34の締結・解放状態を変更する架け替え変速を行うと副変速機30の変速段が変更される。
【0016】
即ち、ローブレーキ32を締結し、ハイクラッチ33及びリバースブレーキ34を解放すれば、副変速機30の変速段は1速段(発進変速段)となる。ハイクラッチ33を締結し、ローブレーキ32及びリバースブレーキ34を解放すれば、副変速機30の変速段は1速よりも変速比が小さな2速段(走行変速段)となる。また、リバースブレーキ34を締結し、ローブレーキ32及びハイクラッチ33を解放すれば、副変速機30の変速段は後退段となる。以下、副変速機30が1速段の状態を「低速モード」といい、副変速機30が2速段の状態を「高速モード」という。
【0017】
前記統合コントローラ13(駆動源トルク制御手段)は、車両全体の消費エネルギーを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、図2に示すように、CPU131と、RAM・ROMからなる記憶装置132と、入力インターフェース133と、出力インターフェース134と、これらを相互に接続するバス135とから構成される。
【0018】
前記入力インターフェース133には、アクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ41の出力信号、バリエータ20のプライマリ回転速度Npri(バリエータ20の入力回転速度)を検出するプライマリ回転速度センサ42の出力信号、副変速機30の出力回転速度Nout(自動変速機4の出力回転速度)を検出する変速機出力回転速度センサ43の出力信号、が入力される。さらに、この入力インターフェース133には、自動変速機4のATF油温を検出する油温センサ44の出力信号、セレクトレバーの位置を検出するインヒビタスイッチ45の出力信号、エンジン1の出力トルクの信号であるエンジントルク信号Te、が入力される。さらに、バリエータ20のセカンダリ回転速度Nsec(バリエータ20の出力回転速度)を検出するセカンダリ回転速度センサ46の出力信号、エンジン1のエンジン回転速度Neを検出するエンジン回転速度センサ47の出力信号、トルクコンバータ2のタービン回転速度Nt(自動変速機4の入力回転速度)を検出するタービン回転速度センサ48からの出力信号、等が入力される。
【0019】
前記記憶装置132には、自動変速機4の変速制御プログラムや、この変速制御プログラムで用いる変速マップ(図3参照)が格納されている。CPU131は、記憶装置132に格納されている変速制御プログラムを読み出して実行し、入力インターフェース133を介して入力される各種信号に対して各種演算処理を施して変速制御信号及び駆動力制御信号を生成し、生成した変速制御信号を、出力インターフェース134を介して油圧制御回路11に出力すると共に、生成した駆動力制御信号を、出力インターフェース134を介してエンジンコントローラ12に出力する。CPU131が演算処理で使用する各種値、その演算結果は記憶装置132に適宜格納される。
【0020】
前記油圧制御回路11は、複数の流路、複数の油圧制御弁を有している。油圧制御回路11は、統合コントローラ13からの変速制御信号に基づき、複数の油圧制御弁を制御して油圧の供給経路を切り換えるとともにオイルポンプ10で発生した油圧から必要な油圧を調製し、これを自動変速機4の各部位に供給する。これによりバリエータ20の変速比や副変速機30の変速段が変更され、自動変速機4の変速が行われる。
【0021】
前記エンジンコントローラ12は、統合コントローラ13からの駆動トルク制御信号に基づき、エンジン1の動作点(Ne,Te)を制御する指令を、エンジン1に内蔵されたスロットルバルブアクチュエータ等へ出力する。これにより、エンジン1の出力トルクが変更される。
【0022】
[変速マップによる変速制御構成]
図3は、統合コントローラの記憶装置に格納される変速マップの一例を示す。以下、図3に基づき、変速マップによる変速制御構成を説明する。
【0023】
前記自動変速機4の動作点は、図3に示す変速マップ上で車速VSPとプライマリ回転速度Npriに基づき決定される。なお、車速VSPは、副変速機30の出力回転速度Noutと第2ギヤ列5及び終減速装置6でのギヤ比から求められる。なお、車輪速センサからのセンサ信号により求めた車速情報を入力し、「車速VSP」として用いても良い。
この図3において、自動変速機4の動作点と変速マップ左下隅の零点を結ぶ線の傾きが自動変速機4の変速比(バリエータ20の変速比に副変速機30の変速比を掛けて得られるトータル変速比、つまり、バリエータ20及び副変速機30によって達成される自動変速機4の全体変速比。以下、「スルー変速比」という。)を表している。
この変速マップには、従来のベルト式無段変速機の変速マップと同様に、アクセル開度APO毎に変速線が設定されており、自動変速機4の変速はアクセル開度APOに応じて選択される変速線に従って行われる。
【0024】
即ち、統合コントローラ13は、変速マップを参照し、車速VSP及びアクセル開度APO(運転点)に対応するスルー変速比を、「到達スルー変速比」として設定する。
この「到達スルー変速比」は、当該運転状態でスルー変速比が最終的に到達すべき目標値である。そして、統合コントローラ13は、スルー変速比を所望の応答特性で到達スルー変速比に追従させるための過渡的な目標値である「目標スルー変速比」を設定し、バリエータ20及び副変速機30を制御して、実スルー変速比を目標スルー変速比に一致(追従)させる「協調変速」を実施する。
【0025】
なお、「協調変速」を実施する場合には、まず、副変速機30での目標副変速比を算出する。ここで、副変速機30が変速しない場合であれば、目標副変速比は、1速段で実現する変速比または2速段で実現する変速比となる。また、副変速機30が変速する場合であれば、当該変速の進行状態に応じて副変速機30の入力回転速度及び出力回転速度を演算し、その演算値から目標副変速比を算出する。
【0026】
そして、目標副変速比を算出したら、この算出した目標副変速比で目標スルー変速比を除算し、この除算値をバリエータ20の目標変速比(以下、「目標バリエータ変速比」という)に設定し、バリエータ20の変速比を目標バリエータ変速比に一致(追従)させるバリエータ20の変速制御を実施する。この結果、スルー変速比が目標値に追従するように、目標副変速比に応じて目標バリエータ変速比が制御される。
【0027】
また、図3には簡単のため、全負荷線(アクセル開度APO=8/8のときの変速線)、パーシャル線(アクセル開度APO=4/8のときの変速線)、コースト線(アクセル開度APO=0のときの変速線)のみを示している。
【0028】
そして、自動変速機4が低速モードのとき、この自動変速機4はバリエータ20の変速比を最大にして得られる低速モード最Low線と、バリエータ20の変速比を最小にして得られる低速モード最High線と、の間で変速することができる。このとき、自動変速機4の動作点はL領域及びM領域内を移動する。一方、自動変速機4が高速モードのとき、自動変速機4はバリエータ20の変速比を最大にして得られる高速モード最Low線と、バリエータ20の変速比を最小にして得られる高速モード最High線と、の間で変速することができる。このとき、自動変速機4の動作点はM領域及びH領域内を移動する。
【0029】
なお、「L領域」とは、低速モード最Low線と高速モード最Low線によって囲まれた領域である。「M領域」とは、高速モード最Low線と低速モード最High線によって囲まれた領域である。「H領域」とは、低速モード最High線と高速モード最High線によって囲まれた領域である。
【0030】
また、副変速機30の各変速段の変速比は、低速モード最High線に対応する変速比(低速モード最High変速比)が高速モード最Low線に対応する変速比(高速モード最Low変速比)よりも小さくなるように設定される。これにより、低速モードでとり得る自動変速機4のスルー変速比の範囲である低速モードレシオ範囲と、高速モードでとり得る自動変速機4のスルー変速比の範囲である高速モードレシオ範囲と、が部分的に重複する。自動変速機4の運転点が高速モード最Low線と低速モード最High線で挟まれるM領域(重複領域)にあるときは、自動変速機4は低速モード、高速モードのいずれのモードも選択可能になっている。
【0031】
さらに、変速マップ上には、副変速機30のアップ変速を行うモード切替アップ変速線(副変速機30の1→2アップ変速線)が、低速モード最High線よりLow側変速比(変速比大)となる位置に設定されている。また、変速マップ上には、副変速機30のダウン変速を行うモード切替ダウン変速線(副変速機30の2→1ダウン変速線)が、高速モード最Low線よりHigh側変速比(変速比小)となる位置に設定されている。
【0032】
そして、自動変速機4の動作点がモード切替アップ変速線、または、モード切替ダウン変速線を横切った場合、即ち、自動変速機4の目標スルー変速比がモード切替変速比を跨いで変化した場合やモード切替変速比と一致した場合には、統合コントローラ13はモード切替変速制御を行う。このモード切替変速制御時に「協調変速」を行う場合では、統合コントローラ13は、実スルー変速比が目標スルー変速比(目標値)に追従するように、副変速機30の目標変速比に応じてバリエータ20の変速比を制御する。具体的には、バリエータ20の変速比を、副変速機30の変速比で目標スルー変速比を除算した値に設定する。
【0033】
[変速時エンジントルク制御処理構成]
図4は実施例1にて実行される変速時エンジントルク制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、副変速機の変速実行時にエンジン1の出力トルクを制御する実施例1の変速時エンジントルク制御処理を表す図4の各ステップについて説明する。なお、図4に示すフローチャートは、エンジン1がON状態になると開始され、エンジン1が停止するまで繰り返される。
【0034】
ステップS1では、副変速機30の変速段が2速段であって、ドライブ走行状態であるか否かを判断する。YES(副変速機=2速ドライブ)の場合はステップS2へ進み、NO(副変速機≠2速ドライブ)の場合はステップS11へ進む。
ここで、「ドライブ走行」とは、エンジン1からトルクが出力されている状態での走行を指し、アクセルペダルが踏まれている(アクセル開度APO>0)ときドライブ走行であると判断する。また、2速段であるか否かの判断は、副変速機30での摩擦締結要素の締結・解放状態に基づいて判断する。
【0035】
ステップS2では、ステップS1での副変速機=2速ドライブとの判断に続き、エンジン1のアクセル開度APOが予め設定した第1所定値以上であるか否かを判断する。YES(APO≧第1所定値)の場合にはステップS3へ進み、NO(APO<第1所定値)の場合にはステップS10へ進む。
ここで、「アクセル開度APO」は、アクセル開度センサ41の出力信号から求められ、エンジン1に対する負荷トルクTeを示す。また、「第1所定値」は、エンジン1に対する負荷トルクTeが、後述する「第1駆動源トルク閾値T_th1」となるアクセル開度閾値である。この「第1駆動源トルク閾値T_th1」とは、エンジン1の出力トルク(以下「エンジントルクTe」という)の最大出力値Te_MAXから、副変速機30が2速段(シフト前変速段)から1速段(シフト後変速段)へのダウンシフト(変速)のイナーシャフェーズ中に発生する自動変速機4の出力トルクの低下変動分ΔT_AT_downを差し引いたトルクに対応する値である。つまり、アクセル開度APOが上記「第1所定値」以上になると、エンジン1に対する負荷トルクTeが第1駆動源トルク閾値T_th1よりも高い状態であると判断される。
なお、「副変速機30が2速段から1速段へのダウンシフトのイナーシャフェーズ中に発生する自動変速機4の出力トルクの低下変動分ΔT_AT_down」は、実験等により予め求めておく。
【0036】
ステップS3では、ステップS2でのAPO≧第1所定値との判断に続き、エンジン1に対する負荷トルクTeが第1駆動源トルク閾値T_th1よりも高いとして、トルクダウンを実施中に設定されるエンジントルク規制値(以下、「ダウン時規制値」という)を演算し、ステップS4へ進む。
ここで、「ダウン時規制値(=トルクダウンを実施中に設定されるエンジントルク規制値)」は、アクセル開度APOに現れるエンジン1に対する負荷トルクTeよりも小さい値である。このステップS3では、まず、エンジン回転速度NeとエンジントルクTeとの関係を規定したトルクマップを用いて、現在のエンジン回転速度Neから得られるエンジントルクTeの最大出力値Te_MAXを求める。そして、このエンジントルクTeの最大出力値Te_MAXから、副変速機30のダウンシフト時に実行するトルクアップに必要なトルクアップ代(ダウンシフト時に生じる減速による変速ショックを低減するために必要なトルクアップ代)を差し引いた値に設定する。
ここでは、エンジントルクTeの最大出力値Te_MAXから、副変速機30が2速段から1速段へのダウンシフトのイナーシャフェーズ中に発生する自動変速機4の出力トルクの低下変動分ΔT_AT_downを差し引いた値に対し、副変速機30の上記ダウンシフト中に行われるバリエータ20の変速によって生じる自動変速機4の出力トルクの変動分(ΔT_cvt_UP、ΔT_cvt_down)を加算又は減算した値に設定する。
つまり、ダウン時規制値は、第1駆動源トルク閾値T_th1に設定した上で、副変速機30の変速中に行われるバリエータ20の変速によって生じる自動変速機4の出力トルクの変動分(ΔT_cvt_UP、ΔT_cvt_down)に基づいて補正される。
【0037】
バリエータ20は、副変速機30の変速時、目標スルー変速比が目標値に追従するように目標副変速比に応じて変速制御されるが、アップシフトする場合には自動変速機4の出力トルクが低下し、ダウンシフトする場合には自動変速機4の出力トルクが増大する。
そのため、このバリエータ20の変速状況を推定し、副変速機30が2速段であってバリエータ20がアップシフトするときには、ダウン時規制値を、第1駆動源トルク閾値T_th1からバリエータアップシフトに伴う自動変速機4の出力トルク変動分ΔT_cvt_UPを差し引いた値に設定し、さらにトルクダウンを行う。また、副変速機30が2速段であってバリエータ20がダウンシフトするときには、ダウン時規制値を、第1駆動源トルク閾値T_th1に対しバリエータダウンシフトに伴う自動変速機4の出力トルク変動分ΔT_cvt_downを加算した値に設定し、トルクダウンを抑える。
なお、図5に、このステップS3におけるダウン時規制値の演算方法のイメージを表す説明図を示す。
【0038】
ステップS4では、ステップS3でのダウン時規制値の演算に続き、エンジントルク規制値を、このステップS3にて演算したダウン時規制値に設定し、ステップS5へ進む。
これにより、エンジン1の出力上限がエンジン1に対する負荷トルクTeよりも低い値に規制され、エンジントルクTeを負荷トルクTeよりも低下させるトルクダウンが実施される。
【0039】
ステップS5では、ステップS4でのトルクダウンの実施に続き、副変速機30に対して2速段から1速段への変速要求、つまりダウンシフト要求が生じたか否かを判断する。YES(2→1変速要求あり)の場合にはステップS6へ進み、NO(2→1変速要求なし)の場合にはステップS2へ戻る。
ここで、2速段から1速段への変速要求の有無は、図3に示す変速マップ上での自動変速機4の動作点に基づいて判断する。
【0040】
ステップS6では、ステップS5での2→1変速要求ありとの判断に続き、副変速機30のダウンシフトを実施し、このダウンシフトのイナーシャフェーズが開始したか否かを判断する。YES(イナーシャフェーズ開始)の場合にはステップS7へ進み、NO(イナーシャフェーズ開始前)の場合にはステップS6を繰り返す。
ここで、「ダウンシフトのイナーシャフェーズ」は、副変速機30の入出力回転から算出した副変速比(副変速機30の変速比)が、2速ギヤ比から1速ギヤ比へと変化するフェーズである。そのため、この「イナーシャフェーズ」は、副変速比が2速ギヤ比から上昇変化し始めたら開始したと判断する。
【0041】
ステップS7では、ステップS6でのイナーシャフェーズの開始との判断に続き、ステップS4にて実施したエンジン1のトルクダウンを解除すると共に、エンジントルク規制値の増大傾き(増大変化速度)を演算してステップS8へ進む。
ここで、「トルクダウンの解除」とは、負荷トルクTeよりも低下したエンジントルクTeを、負荷トルクTeに向けて一定の時間をかけて次第に増大させていくことである。具体的には、エンジントルク規制値をステップS4にて演算されたダウン時規制値から一定の時間をかけて増大させ、負荷トルクTeに一致させる。
また、「エンジントルク規制値の増大傾き」は、このステップS7では、エンジントルク規制値を、イナーシャフェーズ時間をかけて、ダウン時規制値から負荷トルクTeに一致する値に変化させる増大変化速度である。これにより、イナーシャフェーズが終了した時点で、エンジン1の出力上限が負荷トルクTeに一致し、エンジントルクTeが負荷トルクTeに一致する。
なお、この自動変速機4では、副変速機30の変速のイナーシャフェーズ中、スルー変速比が目標値に追従するように副変速比の変化に応じてバリエータ20が変速制御される。そのため、イナーシャフェーズ時間は、バリエータの変速時間に応じて決まる。つまり、ステップS7において、「エンジントルク規制値の増大傾き」は、イナーシャフェーズに伴って実行されるバリエータ20の変速時間に基づいて演算される。
【0042】
ステップS8では、ステップS7でのトルクダウンの解除及びエンジントルク規制値の増大傾きの演算に続き、このステップS7にて演算した増大傾きで、エンジントルク規制値を増大させていき、ステップS9へ進む。
ここで、エンジントルク規制値を増大させることで、エンジン1の出力上限が徐々に増大するので、実質的にエンジントルクTeが負荷トルクTeに向けて増大する。
【0043】
ステップS9では、ステップS8でのエンジントルクTeの増大に続き、副変速機30のダウンシフトのイナーシャフェーズが終了したか否かを判断する。YES(イナーシャフェーズ終了)の場合にはステップS10へ進み、NO(イナーシャフェーズ継続)の場合にはステップS8へ戻る。
ここで、「イナーシャフェーズ」は、副変速比が1速ギヤ比に達したら終了と判断する。
【0044】
ステップS10では、ステップS9でのイナーシャフェーズの終了との判断等に続き、トルクダウンを非実施状態にし、リターンへ進む。
ここで、「トルクダウンの非実施状態」とは、エンジン1の出力上限を規制するエンジントルク規制値を、エンジントルクTeの最大出力値Te_MAXよりも大きい所定値に設定することである。これにより、エンジントルクTeは実質的に制限されることがなくなり、負荷トルクTeに一致するように出力可能となる。
【0045】
ステップS11では、ステップS1での副変速機≠2速ドライブとの判断に続き、副変速機30の変速段が1速段であって、ドライブ走行状態であるか否かを判断する。YES(副変速機=1速ドライブ)の場合はステップS12へ進み、NO(副変速機≠1速ドライブ)の場合はリターンへ進む。
ここで、アクセルペダルが踏まれている(アクセル開度APO>0)のときドライブ走行であると判断する。また、1速段であるか否かの判断は、副変速機30での摩擦締結要素の締結・解放状態に基づいて判断する。
【0046】
ステップS12では、ステップS11での副変速機=1速ドライブとの判断に続き、エンジン1のアクセル開度APOが予め設定した第2所定値以上であるか否かを判断する。YES(APO≧第2所定値)の場合にはステップS13へ進み、NO(APO<第2所定値)の場合にはステップS10へ進む。
ここで、「アクセル開度APO」は、アクセル開度センサ41の出力信号から求められる。また、「第2所定値」は、エンジン1に対する負荷トルクTeが、後述する「第2駆動源トルク閾値T_th2」となるアクセル開度閾値である。この「第2駆動源トルク閾値T_th2」とは、エンジントルクTeの最大出力値Te_MAXから、副変速機30が1速段(シフト前変速段)から2速段(シフト後変速段)へのアップシフト(変速)のトルクフェーズ中に発生する自動変速機4の出力トルクの低下変動分ΔT_AT_upを差し引いたトルクに対応するトルク値である。つまり、アクセル開度APOが上記「第2所定値」以上になると、エンジン1に対する負荷トルクTeが第2駆動源トルク閾値T_th2よりも高い状態であると判断される。
なお、「副変速機30が1速段から2速段へのアップシフトのトルクフェーズ中に発生する自動変速機4の出力トルクの低下変動分ΔT_AT_up」は、実験等により予め求めておく。
【0047】
ステップS13では、ステップS12でのAPO≧第2所定値との判断に続き、エンジン1に対する負荷トルクTeが第2駆動源トルク閾値T_th2よりも高いとして、ダウン時規制値を演算し、ステップS14へ進む。
ここで、「ダウン時規制値」は、ステップS3と同様に、アクセル開度APOに現れるエンジン1に対する負荷トルクTeよりも小さい値である。このステップS13では、エンジントルクTeの最大出力値Te_MAXから、副変速機30が1速段から2速段へのアップシフトのトルクフェーズ中に発生する自動変速機4の出力トルクの低下変動分ΔT_AT_upを差し引いた値に設定する。つまり、副変速機30が1速段のときのダウン時規制値は、第2駆動源トルク閾値T_th2に設定される。
なお、副変速機30のアップシフトのトルクフェーズ中、バリエータ20はほぼ一定の変速比を維持する。そのため、副変速機30がアップシフトする際のダウン時規制値においては、バリエータ20の変速による補正を考慮する必要がない。
図6に、このステップS13におけるダウン時規制値の演算方法のイメージを表す説明図を示す。
【0048】
ステップS14では、ステップS13でのダウン時規制値の演算に続き、エンジントルク規制値を、このステップS13にて演算したダウン時規制値に設定し、ステップS15へ進む。
これにより、エンジン1の出力上限がエンジン1に対する負荷トルクTeよりも低い値に規制され、エンジントルクTeを負荷トルクTeよりも低下させるトルクダウンが実施される。
【0049】
ステップS15では、ステップS14でのトルクダウンの実施に続き、副変速機30に対して1速段から2速段への変速要求、つまりアップシフト要求が生じたか否かを判断する。YES(1→2変速要求あり)の場合にはステップS16へ進み、NO(1→2変速要求なし)の場合にはステップS12へ戻る。
ここで、1速段から2速段への変速要求の有無は、図3に示す変速マップ上での自動変速機4の動作点に基づいて判断する。
【0050】
ステップS16では、ステップS15での1→2変速要求ありとの判断に続き、副変速機30のアップシフトを実施し、このアップシフトのトルクフェーズが開始したか否かを判断する。YES(トルクフェーズ開始)の場合にはステップS17へ進み、NO(トルクフェーズ開始前)の場合にはステップS16を繰り返す。
ここで、「アップシフトのトルクフェーズ」は、開放側摩擦締結要素(ローブレーキ32)への供給油圧を低下させると共に、締結側摩擦締結要素(ハイクラッチ33)への供給油圧を上昇させ、トルクの伝達を受け持つ変速段が1速段から2速段に移行するフェーズである。このとき副変速比は変化しないため、この「トルクフェーズ」は、副変速機30のアップシフトの準備フェーズ(締結側摩擦締結要素であるハイクラッチ33への油圧のプリチャージを行い、このハイクラッチ33を締結直前の状態で待機させるフェーズ)が完了したら開始したと判断する。
【0051】
ステップS17では、ステップS16でのトルクフェーズの開始との判断に続き、ステップS14にて実施したエンジン1のトルクダウンを解除すると共に、エンジントルク規制値の増大傾き(増大変化速度)を演算してステップS18へ進む。
ここで、「トルクダウンの解除」とは、ステップS7と同様に、負荷トルクTeよりも低下したエンジントルクTeを、負荷トルクTeに向けて一定の時間をかけて次第に増大させていくことである。
また、「エンジントルク規制値の増大傾き」は、このステップS17では、エンジントルク規制値を、トルクフェーズ時間をかけて、ステップS13にて演算されたダウン時規制値から負荷トルクTeに一致する値に変化させる増大変化速度である。これにより、トルクフェーズが終了した時点で、エンジン1の出力上限が負荷トルクTeに一致し、エンジントルクTeが負荷トルクTeに一致する。
なお、この自動変速機4では、バリエータ20が変速制御されるのは、副変速機30の変速のイナーシャフェーズ中である。そのため、トルクフェーズ時間はバリエータの変速時間に拘らず、副変速機30の状態に応じて決まる。つまり、ステップS17において、「エンジントルク規制値の増大傾き」は、副変速機30のアップシフトのトルクフェーズ時間に基づいて演算される。
【0052】
ステップS18では、ステップS17でのトルクダウンの解除及びエンジントルク規制値の増大傾きの演算に続き、このステップS17にて演算した増大傾きで、エンジントルク規制値を増大させていき、ステップS19へ進む。
ここで、エンジントルク規制値を増大させることで、エンジン1の出力上限が徐々に増大するので、実質的にエンジントルクTeが負荷トルクTeに向けて増大する。
【0053】
ステップS19では、ステップS18でのエンジントルクTeの増大に続き、副変速機30のアップシフトのトルクフェーズが終了したか否かを判断する。YES(トルクフェーズ終了)の場合にはステップS10へ進み、NO(トルクフェーズ継続)の場合にはステップS18へ戻る。
ここで、「トルクフェーズ」は、イナーシャフェーズが開始したこと、つまり、副変速比が1速ギヤ比から低下変化し始めたら終了と判断する。
【0054】
次に、作用を説明する。
まず、「比較例の自動変速機の制御とその課題」について説明する。続いて、実施例1における作用を、「ダウンシフト時エンジントルク制御作用」、「アップシフト時エンジントルク制御作用」に分けて説明する。
【0055】
[比較例の自動変速機の制御とその課題]
図7は、比較例の自動変速機でのダウンシフト実施時のアクセル開度・エンジントルク・負荷トルク・スルー変速比・バリエータ変速比・副変速比・車両Gの各特性を示すタイムチャートである。以下、図7に基づき、比較例の自動変速機の制御とその課題を説明する。
【0056】
比較例の副変速機付き無段変速機は、アクセルペダルを踏み込んだことで、図3に示す変速マップ上での動作点が移動し、バリエータ20をダウンシフトした後、副変速機30をダウンシフトすることがある。
【0057】
すなわち、図7における時刻t時点でバリエータ20のダウンシフト要求が生じると、バリエータ20の油圧シリンダ23a,23bに供給される油圧を調整し、バリエータ変速比が大きくなるようにバリエータ20をダウンシフトする。これにより、スルー変速比も上昇を開始する。一方、アクセルペダルが踏み込まれたことでアクセル開度APOが上昇し、このアクセル開度APOに現れるエンジン1に対する負荷トルクTeが上昇する。そのため、この負荷トルクTeの上昇に応じてエンジントルクTeも上昇していく。この結果、バリエータ20に変速及びエンジントルクTeの上昇に合わせて車両に作用する加速度(車両G)が増加していく。
【0058】
時刻t時点で、副変速機30のダウンシフト要求が生じると、締結側摩擦締結要素であるローブレーキ32への油圧のプリチャージを行い、このローブレーキ32を締結直前の状態で待機させる準備フェーズを開始する。
【0059】
時刻t時点で、準備フェーズが完了したら、副変速比を2速ギヤ比から1速ギヤ比まで滑らかに変化させる。このとき、スルー変速比が目標値に追従するように副変速比の変化に応じてバリエータ20を変速する。ここでは、副変速比の増大に応じて同程度の変化速度でバリエータ20をアップシフトさせ、バリエータ変速比と副変速比を逆方向に制御することで、副変速機30のイナーシャフェーズ前後におけるスルー変速比の変化を抑制する。
【0060】
しかしながら、バリエータ20がアップシフトすることで、自動変速機4の出力トルクが低下し、車両に作用する加速度(車両G)が減少する。また、副変速機30においては、ハイクラッチ33からローブレーキ32への架け替えに伴うイナーシャトルクによって、車両に作用する加速度(車両G)が減少する。さらに、クラッチ架け替え時にエンジン回転数が吹き上がってしまうことを防止するため、ハイクラッチ33及びローブレーキ32の双方が締結するインターロックに近い状態にクラッチ容量を持たせると、さらに車両に作用する加速度(車両G)が減少する。
【0061】
これにより、運転者に加速意図があるにも拘らず車両が一時的に減速し(図7において破線Aで囲む部分)、減速による変速ショック(以下、「引きショック」と言う)が発生して、運転者に違和感を与えるおそれがある。
【0062】
一方、エンジントルクTeの出力を高めてエンジン1のトルクアップを行い、自動変速機4の出力トルクを盛り上げることで引きショックを低減することが考えられている。
しかしながら、図7に示す比較例のように、エンジン1に対する負荷トルクTeの上昇に応じてエンジントルクTeを上昇させた結果、副変速機30のダウンシフト前にエンジントルクTeが高い状態になってしまうと、引きショックが生じるタイミング(時刻t)で、エンジントルクTeとエンジントルクTeの最大出力値Te_MAXとの差分がほとんど残らないことになる。そのため、エンジントルクTeのトルクアップ代が少なくなり、エンジン1のトルクアップによる引きショックの低減を十分に図ることができない。
【0063】
[ダウンシフト時エンジントルク制御作用]
図8は、実施例1の制御装置を適用した自動変速機の副変速機でのダウンシフト実施時のアクセル開度・エンジントルク規制値・エンジントルク・負荷トルク・スルー変速比・バリエータ変速比・副変速比・車両Gの各特性を示すタイムチャートである。以下、図8に基づき、実施例1のダウンシフト時のエンジントルク制御作用を説明する。
【0064】
実施例1の車両において、自動変速機4の副変速機30が2速段でアクセルペダルを踏み込んだ状態(APO>0)で走行しているときには、図4に示すフローチャートでステップS1→ステップS2へと進む。図8に示す時刻t11以前では、アクセル開度APOが第1所定値以下であるので、ステップS10へと進み、エンジン1のトルクダウンの非実施状態となる。すなわち、エンジン1の出力上限を規制するエンジントルク規制値は、エンジントルクTeの最大出力値Te_MAXよりも大きい所定値に設定され、エンジントルクTeは実質的に制限されることがなくなり、負荷トルクTeに一致する。
【0065】
図8に示す時刻t11時点において、アクセルペダルの踏み込みによって図3に示す変速マップ上で動作点が移動し、バリエータ20に対してダウンシフト要求が出力されると、油圧シリンダ23a,23bに供給される油圧が調整され、バリエータ変速比が大きくなってバリエータ20がダウンシフトを開始する。これにより、スルー変速比も上昇を開始する。
【0066】
また、アクセルペダルが踏み込まれたことでアクセル開度APOが上昇し、このアクセル開度APOに現れるエンジン1に対する負荷トルクTeが上昇していく。このとき、アクセル開度APOは、予め設定した第1所定値未満であるので、ステップS1→ステップS2→ステップS10へと進み、エンジントルク規制値は、エンジントルクTeの最大出力値Te_MAXよりも大きい所定値に設定され続ける。
このため、エンジン1の出力上限は実質的に制限されておらず、負荷トルクTeの上昇に応じてエンジントルクTeも上昇していく。この結果、バリエータ20に変速及びエンジントルクTeの上昇に合わせて車両に作用する加速度(車両G)が増加していく。
【0067】
時刻t12時点において、アクセル開度APOが第1所定値に達すると、ステップS2→ステップS3→ステップS4へと進み、ダウン時規制値が演算され、エンジントルク規制値がこの演算されたダウン時規制値に設定される。
これにより、エンジン1の出力上限がエンジン1に対する負荷トルクTeよりも低い値に規制され、エンジントルクTeが負荷トルクTeよりも低下する。この結果、時刻t12以降では、エンジントルクTeと、このエンジントルクTeの最大出力値Te_MAXとの差分が小さくなりすぎることが防止される。
【0068】
なお、バリエータ20はダウンシフトを継続するため、このバリエータダウンシフトによって自動変速機4の出力トルクは上昇を続け、車両Gの上昇は継続する。しかしながら、エンジントルクTeが負荷トルクTeよりも低いことで、車両に作用する加速度(車両G)は、エンジントルクTeを負荷トルクTeに合わせて上昇させた場合(図8において破線で示す)よりも上昇速度が抑制され、車両Gの上昇傾きが緩やかになる。
【0069】
時刻t13時点において、アクセルペダルがゆっくりと踏み増されたことにより、変速マップ上の動作点が高速モード最Low線を跨ぎ、副変速機30のダウンシフト要求が生じると、締結側摩擦締結要素であるローブレーキ32への油圧のプリチャージを行い、このローブレーキ32を締結直前の状態で待機させる準備フェーズを開始する。
このとき、副変速機30のダウンシフト要求は出力されたものの、このダウンシフトのイナーシャフェーズは開始していないため、ステップS5→ステップS6と進み、このステップS6を繰り返す。
なお、この副変速機30のダウンシフト要求は、アクセルペダルの高開度状態で、踏み増されてはいないものの、登り坂に差し掛かるなどして車速が低下することで、変速マップ上の動作点が高速モード最Low線を跨いだときにも生じる。
【0070】
そして、時刻t14時点で準備フェーズが完了したら、副変速機30の変速比である副変速比が2速ギヤ比から上昇変化し始める。これにより、ダウンシフトのイナーシャフェーズが開始したとして、ステップS6→ステップS7→ステップS8へと進む。そして、エンジン1のトルクダウンを解除すると共に、エンジントルク規制値の増大傾き(増大変化速度)が演算され、エンジントルク規制値が、演算された傾きで増大していく。
すなわち、時刻t14時点からエンジン1の出力上限が徐々に増大していき、実質的にエンジントルクTeが負荷トルクTeに向けて増大していく。
【0071】
一方、副変速機30では、解放側摩擦締結要素であるハイクラッチ33から締結側摩擦締結要素であるローブレーキ32へとクラッチ架け替えに際して、回転変化に伴うイナーシャトルクによって、自動変速機4の出力トルクが低下する。また、副変速比の変化する際、スルー変速比が目標値に追従するようにこの副変速比の変化に応じてバリエータ20が変速されるが、ここでは、副変速比の増大に応じて同程度の変化速度でバリエータ20がアップシフトされる。このバリエータ20のアップシフトによっても、自動変速機4の出力トルクが低下する。
【0072】
このように、副変速機30のダウンシフトのイナーシャフェーズ時、副変速機30の回転変化や、バリエータ20のアップシフトによって自動変速機4の出力トルクは低下するものの、エンジントルクTeは負荷トルクTeに向けて増大していく。そのため、副変速機30のダウンシフト時に生じる自動変速機4の出力トルクの低下変動は、エンジントルクTeの増大によって緩和される。
また、時刻t12時点から、エンジン1のトルクダウンを実施しており、エンジントルクTeと、このエンジントルクTeの最大出力値Te_MAXとの差分が小さくなりすぎることを防止している。これにより、副変速機30の変速前に、エンジントルクTeのトルクアップ代を確保することができ、自動変速機4の出力トルクの低下変動に対して、エンジントルクTeを十分に増大させることができる。
この結果、副変速機30のダウンシフト時のトルクアップ代を比較例(図7参照)の場合よりも大きくし、車両に作用する加速度(車両G)の低下量ΔTは、エンジントルクTeを増大させない場合(図8において破線で示す)の低下量ΔTよりも小さくでき、引きショックを低減することができる。
【0073】
そして、時刻t15時点で、副変速比が1速ギヤ比に達したら、ダウンシフトのイナーシャフェーズが終了したと判断され、ステップS9→ステップS10へと進み、エンジン1のトルクダウンの非実施状態となる。つまり、エンジン1の出力上限を規制するエンジントルク規制値は、エンジントルクTeの最大出力値Te_MAXよりも大きい所定値に設定され、エンジントルクは実質的に制限されることがなくなり、負荷トルクTeに一致する。
【0074】
このように、実施例1の制御装置では、副変速機30が2速段でのドライブ走行中にアクセル開度APOが第1所定値以上になり、エンジン1に対する負荷トルクTeが駆動源トルク閾値よりも高くなったら、エンジントルク規制値をダウン時規制値に設定し、エンジントルクTeを低下させるトルクダウンを実施する。
そして、トルクダウン中に副変速機30のダウンシフト要求が発生したら、トルクダウンを解除して、エンジントルク規制値を増大させ、エンジントルクTeを負荷トルクTeに向けて増大する。
【0075】
これにより、副変速機30のダウンシフト前に、出力しているエンジントルクTeと、このエンジントルクTeの最大出力値Te_MAXとの差分が小さくなりすぎることを防止して、副変速機30のダウンシフト時のトルクアップ代を大きくすることができる。また、副変速機30のダウンシフト時には、エンジントルクTeを増大させて、ダウンシフト中に生じる自動変速機4の出力トルクの低下変動を抑制し、引きショックを低減することができる。
【0076】
また、この実施例1では、エンジン1のトルクダウンを実施中に設定されるエンジントルク規制値であるダウン時規制値が、エンジントルクTeの最大出力値Te_MAXから、副変速機30が2速段から1速段へのダウンシフトのイナーシャフェーズ中に発生する自動変速機4の出力トルクの低下変動分ΔT_AT_downと、副変速機30の上記ダウンシフト中に行われるバリエータ20の変速によって生じる自動変速機4の出力トルクの変動分と、を差し引いた値に設定される。
これにより、トルクダウン中のエンジントルクTeは、第1駆動源トルク閾値T_th1に設定された上、副変速機30の変速中に行われるバリエータ20の変速によって生じる自動変速機4の出力トルクの変動分に基づいて補正される。
【0077】
このため、副変速機30がダウンシフト前に、少なくとも、この副変速機30のダウンシフトに伴う自動変速機4の出力トルクの低下変動分ΔT_AT_downに対応するエンジントルクTeのトルクアップ代を確保しておくことができる。
これにより、副変速機30のダウンシフト時に行うエンジントルクTeのトルクアップ量を、引きショックを低減するために必要なトルクアップ量相当とすることができ、引きショックの発生を十分に低減することができる。
【0078】
しかも、トルクダウン中のエンジントルクTeを、副変速機30の変速中に行われるバリエータ20の変速によって生じる自動変速機4の出力トルクの変動分(ΔT_cvt_UP/ΔT_cvt_down)に基づいて補正することで、バリエータ20の変速によるトルク変動も抑制することができ、さらに副変速機30の変速中の引きショックを低減することができる。
【0079】
さらに、この実施例1では、アクセル開度APOが第1所定値以上となり、負荷トルクTeが第1駆動源トルク閾値T_th1を上回ったタイミングでトルクダウンを実施する。そして、副変速機30のダウンシフトのイナーシャフェーズの開始時点で、エンジントルクTeを、第1駆動源トルク閾値T_th1(エンジントルクの最大出力値Te_MAXから、イナーシャフェーズ中に発生する自動変速機4の出力トルクの低下変動分ΔT_AT_downを差し引いた値)の補正値にしている。
【0080】
これにより、副変速機30のダウンシフトのイナーシャフェーズの開始時点で、エンジントルクTeのトルクアップ代を確保しておくことができ、ダウンシフト中のエンジントルクTeのトルクアップを十分に行うことができて、ダウンシフトにて発生する引きショックを十分に低減することができる。
【0081】
さらに、この実施例1では、トルクダウンを解除したことでエンジントルクTeを負荷トルクTeに向けて増大する際、このエンジントルクTeの増大傾き(増大変化速度)を、副変速機30のダウンシフトのイナーシャフェーズの進行に応じて演算し、イナーシャフェーズの終了時点でエンジントルクTeを負荷トルクTeに一致させる。
【0082】
これにより、ダウンシフトのイナーシャフェーズ期間には、自動変速機4の出力トルクを常に増大させることができ、このイナーシャフェーズ期間に生じる駆動力の低下を適切に抑制することができる。このため、副変速機30のクラッチ架け替えに伴う引きショックをタイミングよく抑制することができる。
【0083】
[アップシフト時エンジントルク制御作用]
図9は、実施例1の制御装置を適用した自動変速機の副変速機でのアップシフト実施時のアクセル開度・エンジントルク規制値・エンジントルク・負荷トルク・スルー変速比・副変速比・バリエータ変速比・車両Gの各特性を示すタイムチャートである。以下、図9に基づき、実施例1のアップシフト時のエンジントルク制御作用を説明する。
【0084】
実施例1の車両において、自動変速機4の副変速機30が1速段でアクセルペダルを踏み込んだ状態(APO>0)での走行中では、図4に示すフローチャートでステップS1→ステップS11→ステップS12へと進む。図9に示す時刻t21以前では、アクセル開度APOが第2所定値以下であるので、ステップS10へと進み、エンジン1のトルクダウンの非実施状態となる。すなわち、エンジン1の出力上限を規制するエンジントルク規制値は、エンジントルクTeの最大出力値Te_MAXよりも大きい所定値に設定され、エンジントルクTeは実質的に制限されることがなくなり、負荷トルクTeに一致する。
【0085】
図9に示す時刻t21時点において、アクセルペダルの踏み込みによって図3に示す変速マップ上で動作点が移動し、バリエータ20に対してダウンシフト要求が出力されると、油圧シリンダ23a,23bに供給される油圧が調整され、バリエータ変速比が大きくなってバリエータ20がダウンシフトする。これにより、スルー変速比も上昇を開始する。
【0086】
また、アクセルペダルが踏み込まれたことでアクセル開度APOが上昇し、このアクセル開度APOに現れるエンジン1に対する負荷トルクTeが上昇していく。このとき、アクセル開度APOは、予め設定した第2閾値未満であるので、ステップS1→ステップS11→ステップS12→ステップS10へと進み、エンジントルク規制値は、エンジントルクTeの最大出力値Te_MAXよりも大きい所定値に設定され続ける。
このため、エンジン1の出力上限は実質的に制限されておらず、負荷トルクTeの上昇に応じてエンジントルクTeも上昇していく。この結果、バリエータ20に変速及びエンジントルクTeの上昇に合わせて車両に作用する加速度(車両G)が増加していく。
【0087】
時刻t22時点において、アクセル開度APOが第2閾値に達すると、ステップS12→ステップS13→ステップS14へと進み、ダウン時規制値が演算され、エンジントルク規制値がこの演算されたダウン時規制値に設定される。
これにより、エンジン1の出力上限がエンジン1に対する負荷トルクTeよりも低下するように規制され、エンジントルクTeが負荷トルクTeよりも低下する。この結果、時刻t22以降では、エンジントルクTeと、このエンジントルクTeの最大出力値Te_MAXとの差分が小さくなりすぎることが防止される。
【0088】
なお、バリエータ20はダウンシフトを継続するため、このバリエータダウンシフトによって自動変速機4の出力トルクは上昇し、車両Gの上昇は継続する。しかしながら、エンジントルクTeが負荷トルクTeよりも低いことで、車両に作用する加速度(車両G)は、エンジントルクTeを負荷トルクTeに合わせて上昇させた場合(図9において破線で示す)よりも上昇速度が抑制され、車両Gの上昇傾きが緩やかになる。
【0089】
時刻t23時点において、アクセルペダルの高開度状態で車速が増加することにより、変速マップ上の動作点が低速モード最High線を跨ぎ、副変速機30のアップシフト要求が生じると、締結側摩擦締結要素であるハイクラッチ33への油圧のプリチャージを行い、このハイクラッチ33を締結直前の状態で待機させる準備フェーズを開始する。
このとき、副変速機30のアップシフト要求は出力されたものの、このアップシフトのトルクフェーズは開始していないため、ステップS15→ステップS16と進み、このステップS16を繰り返す。
なお、この副変速機30のアップシフト要求は、アクセルペダルの高開度状態で、このアクセルペダルがゆっくり解放されることで、変速マップ上の動作点が低速モード最High線を跨いだときにも生じる。
【0090】
そして、時刻t24時点で準備フェーズが完了したら、トルクフェーズが開始するとしてステップS16→ステップS17→ステップS18へと進む。これにより、エンジン1のトルクダウンを解除すると共に、エンジントルク規制値の増大傾き(増大変化速度)が演算され、エンジントルク規制値が、演算された増大傾きで増大していく。すなわち、時刻t24時点からエンジン1の出力上限が徐々に増大していき、実質的にエンジントルクTeが負荷トルクTeに向けて増大していく。
一方、副変速機30では、解放側摩擦締結要素であるローブレーキ32から締結側摩擦締結要素であるハイクラッチ33へのアップシフトに伴って副変速機30からの出力トルクが低下するため、自動変速機4の出力トルクが低下する。
【0091】
しかしながら、この副変速機30のアップシフトのトルクフェーズ時、1速駆動力相当から2速駆動力相当へと自動変速機4の出力トルクは低下するものの、時刻t22時点から、エンジン1のトルクダウンを実施しており、エンジントルクTeの上昇が抑制されている。そのため、副変速機30のアップシフト時に生じる自動変速機4の出力トルクの低下変動幅を小さくすることができ、引きショックを抑制することができる。
さらに、このとき、エンジントルクTeは負荷トルクTeに向けて増大するため、自動変速機4の出力トルクの低下変動を、エンジントルクTeの増大によって緩和することができる。
この結果、車両に作用する加速度(車両G)の低下幅は、エンジントルクTeを増大させない場合(図9において破線で示す)の低下幅よりも小さくでき、引きショックを低減することができる。
【0092】
そして、時刻t25時点で、車両に作用する加速度(車両G)が1速駆動力相当に達し、副変速比が1速ギヤ比から低下変化し始めたらアップシフトのトルクフェーズが終了したと判断され、ステップS19→ステップS10へと進み、エンジン1のトルクダウンの非実施状態となる。つまり、エンジン1の出力上限を規制するエンジントルク規制値は、エンジントルクTeの最大出力値Te_MAXよりも大きい所定値に設定され、エンジントルクTeは実質的に制限されることがなくなり、負荷トルクTeに一致する。
【0093】
このように、実施例1の制御装置では、副変速機30が1速段でのドライブ走行中であっても、エンジン1に対する負荷トルクTeが駆動源トルク閾値よりも高くなったら、エンジントルク規制値をダウン時規制値に設定し、エンジントルクTeを低下させるトルクダウンを実施する。
そして、トルクダウン中に副変速機30のアップシフト要求が発生したら、トルクダウンを解除して、エンジントルク規制値を増大させ、エンジントルクTeを負荷トルクTeに向けて増大する。
【0094】
これにより、副変速機30のアップシフト前に、エンジントルクTeの上昇を抑制することができる。また、副変速機30のアップシフト時には、エンジントルクTeを増大させて、アップシフト中に生じる自動変速機4の出力トルクの低下変動を抑制し、引きショックを低減することができる。
【0095】
さらに、この実施例1では、アクセル開度APOが第2所定値以上となり、負荷トルクTeが第2駆動源トルク閾値T_th2を上回ったタイミングでトルクダウンを実施する。そして、副変速機30のアップシフトのトルクフェーズの開始時点で、エンジントルクTeを、第2駆動源トルク閾値T_th2(エンジントルクTeの最大出力値Te_MAXから、トルクフェーズ中に発生する自動変速機4の出力トルクの低下変動分ΔT_AT_upを差し引いた値)にしている。
【0096】
これにより、副変速機30のアップシフトのトルクフェーズ開始時点で、エンジントルクTeのトルクアップ代を確保しておくことができ、アップシフト中のエンジントルクTeのトルクアップを十分に行うことができて、アップシフトにて発生する引きショックを十分に低減することができる。
【0097】
さらに、この実施例1では、トルクダウンを解除したことでエンジントルクTeを負荷トルクTeに向けて増大する際、このエンジントルクの増大傾き(増大変化速度)を、副変速機30のアップシフトのトルクフェーズの進行に応じて演算し、トルクフェーズの終了時点でエンジントルクTeを負荷トルクTeに一致させる。
【0098】
これにより、トルクフェーズ期間に生じる駆動力の低下を適切に抑制することができる。このため、副変速機30のクラッチ架け替えに伴う引きショックをタイミングよく抑制することができる。
【0099】
次に、効果を説明する。
実施例1の自動変速機の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0100】
(1) 走行駆動源(エンジン1)と駆動輪7との間に配され、複数の締結要素(ローブレーキ32、ハイクラッチ33)の締結及び解放によって複数の変速段を切り替え可能な有段変速機構(副変速機30)を有する自動変速機4と、変速要求時に前記走行駆動源(エンジン1)の出力トルクを制御する駆動源トルク制御手段(統合コントローラ13)と、を備えた自動変速機の制御装置において、
前記駆動源トルク制御手段(統合コントローラ13)は、前記走行駆動源(エンジン1)の出力トルク(エンジントルクTe)の最大出力値Te_MAXから、前記有段変速機構(副変速機30)がシフト前変速段(2速段)からシフト後変速段(1速段)への変速(ダウンシフト)にて発生する前記自動変速機4の出力トルクの低下変動分ΔT_AT_downを差し引いたトルクに対応する駆動源トルク閾値(第1駆動源トルク閾値T_th1)設定し、
前記有段変速機構(副変速機30)が前記シフト前変速段(2速段)であって、且つ前記走行駆動源(エンジン1)に対する負荷トルクTeが前記駆動源トルク閾値(第1駆動源トルク閾値T_th1)よりも高い場合、前記走行駆動源(エンジン1)の出力トルク(エンジントルクTe)を前記負荷トルクTeよりも低下させるトルクダウンを行い、
前記トルクダウン中に、前記有段変速機構(副変速機30)が前記シフト前変速段(2速段)から前記シフト後変速段(1速段)への変速(ダウンシフト)を行う際、前記変速(ダウンシフト)中に前記トルクダウンを解除して、前記走行駆動源(エンジン1)の出力トルク(エンジントルクTe)を前記負荷トルクTeに向けて増大する構成とした。
これにより、変速時のトルクアップ代を大きくし、変速ショックを低減することができる。
【0101】
(2) 前記駆動源トルク制御手段(統合コントローラ13)は、前記トルクダウン中の前記走行駆動源(エンジン1)の出力トルク(エンジントルクTe)を前記駆動源トルク閾値(第1駆動源トルク閾値T_th1)以下に設定する構成とした。
これにより、(1)の効果に加え、副変速機30の変速(ダウンシフト)時に行うエンジン1のトルクアップ量を、引きショックを低減するために必要なトルクアップ量相当とすることができ、引きショックの発生を十分に低減することができる。
【0102】
(3) 前記有段変速機構(副変速機30)の前記シフト前変速段(2速段)から前記シフト後変速段(1速段)への変速をダウンシフトとし、
前記駆動源トルク制御手段(統合コントローラ13)は、前記ダウンシフトのイナーシャフェーズの開始時点で、前記走行駆動源(エンジン1)の出力トルク(エンジントルクTe)が、前記駆動源トルク閾値(第1駆動源トルク閾値T_th1)以下になるように前記トルクダウンを行う構成とした。
これにより、(1)又は(2)の効果に加え、イナーシャフェーズの開始時点で、エンジントルクTeのトルクアップ代を確保しておくことができ、ダウンシフト中のエンジン1のトルクアップを十分に行うことができて、ダウンシフトに伴う引きショックを十分に低減できる。
【0103】
(4) 前記駆動源トルク制御手段(統合コントローラ13)は、前記有段変速機構(副変速機30)のダウンシフトのイナーシャフェーズが開始したとき、前記トルクダウンを解除して前記走行駆動源(エンジン1)の出力トルク(エンジントルクTe)を前記負荷トルクTeに向けて増大させ始めると共に、前記走行駆動源(エンジン1)の出力トルク(エンジントルクTe)の増大変化速度を前記イナーシャフェーズの進行に応じて演算し、前記イナーシャフェーズの終了時点で前記走行駆動源(エンジン1)の出力トルク(エンジントルクTe)を前記負荷トルクTeに一致させる構成とした。
これにより、(3)の効果に加え、自動変速機4の出力トルクが低下するダウンシフトのイナーシャフェーズ期間中、自動変速機4の出力トルクを常に増大でき、イナーシャフェーズ期間に生じる駆動力の低下を抑制することができる。
【0104】
(5) 前記自動変速機4は、前記有段変速機構(副変速機30)に直列配置され、変速比を無段階に変更可能であって、前記有段変速機構(副変速機30)の変速中のイナーシャフェーズ時に変速する無段変速機構(バリエータ20)を有し、
前記駆動源トルク制御手段(統合コントローラ13)は、前記有段変速機構(副変速機30)がダウンシフトする際、前記トルクダウン中の前記走行駆動源(エンジン1)の出力トルク(エンジントルクTe)を、前記有段変速機構(副変速機30)のダウンシフト中の前記無段変速機構(バリエータ20)の変速によって生じる前記自動変速機4の出力トルクの変動分(ΔT_cvt_UP/ΔT_cvt_down)に基づいて補正する構成とした。
これにより、(3)又は(4)の効果に加え、バリエータ20の変速によるトルク変動も抑制することができ、さらに副変速機30の変速中の引きショックを低減することができる。
【0105】
(6) 前記有段変速機構(副変速機30)の前記シフト前変速段(1速段)から前記シフト後変速段(2速段)への変速をアップシフトとし、
前記駆動源トルク制御手段(統合コントローラ13)は、前記アップシフトのトルクフェーズの開始時点で、前記走行駆動源(エンジン1)の出力トルク(エンジントルクTe)が、前記駆動源トルク閾値(第2駆動源トルク閾値T_th2)以下になるように前記トルクダウンを行う構成とした。
これにより、(1)又は(2)の効果に加え、トルクフェーズの開始時点で、エンジントルクTeのトルクアップ代を確保しておくことができ、アップシフト中のエンジン1のトルクアップを十分に行うことができて、アップシフトに伴う引きショックを十分に低減できる。
【0106】
(7) 前記駆動源トルク制御手段(統合コントローラ13)は、前記有段変速機構(副変速機30)のアップシフトのトルクフェーズが開始したとき、前記トルクダウンを解除して前記走行駆動源(エンジン1)の出力トルク(エンジントルクTe)を前記負荷トルクTeに向けて増大させ始めると共に、前記走行駆動源(エンジン1)の出力トルク(エンジントルクTe)の増大変化速度を前記トルクフェーズの進行に応じて演算し、前記トルクフェーズの終了時点で前記走行駆動源(エンジン1)の出力トルク(エンジントルクTe)を前記負荷トルクTeに一致させる構成とした。
これにより、(6)の効果に加え、自動変速機4の出力トルクが低下するアップシフトのトルクフェーズ期間中、自動変速機4の出力トルクを常に増大でき、トルクフェーズ期間に生じる駆動力の低下を抑制することができる。
【0107】
以上、本発明の自動変速機の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0108】
実施例1では、副変速機30として、前進2段・後退1段の有段変速機構を適用した例を示した。しかしながら、副変速機としては、前進2段・後退1段の有段変速機構に限られることなく、前進3段以上の変速段を切り替えることができる有段変速機構であっても良い。
【0109】
また、この実施例1では、トルクダウン中のエンジントルクTeを、第1駆動源トルク閾値T_th1に設定した上、副変速機30の変速中に行われるバリエータ20の変速によって生じる自動変速機4の出力トルクの変動分(ΔT_cvt_UP/ΔT_cvt_down)に基づいて補正している。
しかしながら、これに限らず、例えばバリエータを備えない自動変速機や、副変速機の変速時にバリエータを変速させない場合等では、ダウン時規制値を、第1駆動源トルク閾値T_th1以下の値に設定し、補正しなくてもよい。この場合であっても、副変速機30がダウンシフト前に確保できるエンジントルクTeのトルクアップ代を、この副変速機30のダウンシフトに伴う自動変速機4の出力トルクの低下変動分ΔT_AT_downとすることができる。
そのため、副変速機30のダウンシフト時のトルクアップ量を、引きショックを低減するために必要なトルクアップ量相当とすることができ、引きショックの発生を低減することができる。
【0110】
さらに、実施例1では、アクセル開度APOが第1所定値以上となり、負荷トルクTeが第1駆動源トルク閾値T_th1を上回ったタイミングで、エンジントルク規制値を第1駆動源トルク閾値T_th1の補正値に設定している。
しかしながら、エンジントルクTeは、副変速機30のダウンシフトのイナーシャフェーズ開始時点で第1駆動源トルク閾値T_th1に設定されていればよい。つまり、図10Aに示すように、副変速機30のダウンシフトのイナーシャフェーズが開始するタイミングでエンジントルク規制値=第1駆動源トルク閾値T_th1としてもよい。
この場合では、副変速機30のダウンシフトのイナーシャフェーズ開始直前までは、実質的にエンジントルクTeが規制されないので、エンジントルクTeを負荷トルクTeに追従させることができて、運転者の駆動力要求との差分を小さくすることができる。
【0111】
また、図10Bに示すように、アクセル開度APOが第1所定値以上になったら、エンジントルク規制値を徐々に低下させ、副変速機30のダウンシフトのイナーシャフェーズが開始したタイミングでエンジントルク規制値=第1駆動源トルク閾値T_th1となるようにしてもよい。
この場合であっても、イナーシャフェーズの開始時点までのエンジントルクTeを比較的大きくすることができ、エンジントルクTeを負荷トルクTeに追従させることができて、運転者が感じる違和感を低減することができる。また、エンジントルク規制値が徐々に制限されるため、車両に作用する加速度(車両G)の低減幅を抑制することができる。
【0112】
さらに、実施例1では、トルクダウン中のエンジントルク規制値を、副変速機30のダウンシフトのイナーシャフェーズが開始するまで第1駆動源トルク閾値T_th1の補正値に維持している。しかしながら、これに限らず、図10Cに示すように、トルクダウン中のエンジントルク規制値を、例えば、負荷トルクTeを0.9倍した補正負荷トルクに合わせて増大してもよい。つまり、ダウン時規制値は、第1駆動源トルク閾値T_th1と、補正負荷トルクのセレクトLowで設定してもよい。
【0113】
そして、この実施例1では、副変速機30がダウンシフトを行う際には、このダウンシフトのイナーシャフェーズ期間にトルクダウンの解除(エンジントルクTeを負荷トルクに向けて増大すること)を行い、副変速機30がアップシフトを行う際には、このアップシフトのトルクフェーズ期間にトルクダウンの解除を行う例を示した。しかしながら、これに限らず、副変速機30が変速中における少なくとも一部期間にトルクダウンの解除を行えばよい。すなわち、副変速機30が変速を行っている期間(準備フェーズの開始から変速終了まで)の全てでトルクダウンの解除を行ったり、イナーシャフェーズやトルクフェーズの前後の一定期間にもトルクダウンの解除を行ったりしてもよい。
【0114】
また、実施例1では、アクセル開度APOを基準にして、エンジン1に対する負荷トルクTeが、第1,第2駆動源トルク閾値T_th1, T_th2よりも大きいか否かを判断する例を示した。しかしながら、これに限らず、例えばエンジン1のスロットル開度を基準にして判断してもよい。この場合であっても、アクセル操作に応じて設定されるスロットル開度が、第1,第2駆動源トルク閾値T_th1, T_th2に対応したスロットル開度閾値より大きくなったら、「負荷トルクTe≧第1,第2駆動源トルク閾値T_th1, T_th2」と判断する。
【0115】
また、実施例1では、走行駆動源としてエンジン1のみを備える車両に本制御手段を適用する例を示したが、これに限らない。例えば、走行駆動源としてエンジンと走行用モータを有するハイブリッド車両や、走行用モータのみを走行駆動源とする電気自動車であっても適用することができる。
【符号の説明】
【0116】
1 エンジン(走行駆動源)
4 自動変速機
7 駆動輪
13 統合コントローラ(駆動源トルク制御手段)
20 バリエータ(無段変速機構)
21 プライマリプーリ
22 セカンダリプーリ
23 Vベルト
30 副変速機(有段変速機構)
32 ローブレーキ(摩擦締結要素)
33 ハイクラッチ(摩擦締結要素)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C