(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576281
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】ポスト
(51)【国際特許分類】
A47G 29/126 20060101AFI20190909BHJP
A47G 29/12 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
A47G29/126
A47G29/12 B
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-61123(P2016-61123)
(22)【出願日】2016年3月25日
(65)【公開番号】特開2017-169955(P2017-169955A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久野 聖太
【審査官】
片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−201697(JP,A)
【文献】
特開2008−188438(JP,A)
【文献】
特開2013−212194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 29/126
A47G 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に前方開口を有したポスト本体と、前記前方開口を開閉するように前記ポスト本体に支持させた前扉とを備えたポストであって、
前記ポスト本体は、前記前方開口の上縁となる部位に前方に向けて突出した上縁壁部を有し、
前記前扉は、前記上縁壁部の上方に位置する部位に前記上縁壁部に対向するように延在した上部カバー壁部を有するとともに、前記上部カバー壁部の後縁部から下方に向けて突出した垂下壁部を有したものであり、
前記上縁壁部の上面において前記垂下壁部よりも前方に位置する部位に、上方に突出するとともに、前記前方開口の幅方向に延在する複数の止水壁を前後に並設したことを特徴とするポスト。
【請求項2】
前記止水壁は、前記上縁壁部において前記垂下壁部に近接する部位に設けた第1の止水壁と、前記上縁壁部において前記第1の止水壁よりも前方となる部位に設けた第2の止水壁とを有したものであり、前記第1の止水壁と前記ポスト本体の前端部分との間に端部が開放した第1の樋部を構成するとともに、前記第1の止水壁と前記第2の止水壁との間に端部が開放した第2の樋部を構成したことを特徴とする請求項1に記載のポスト。
【請求項3】
前記第1の樋部及び前記第2の樋部の内底面は、それぞれ開放した端部に向けて漸次低くなるように傾斜したことを特徴とする請求項2に記載のポスト。
【請求項4】
前記ポスト本体は、上方に開口する上方開口を有するとともに、前記上方開口を開閉するための上蓋を備えたものであり、
前記上蓋は、前端から垂下する前壁部を有し、前記前壁部が前記垂下壁部に対向するように前記ポスト本体に支持させたものであり、
前記前壁部の下縁部に前方に向けて突出する突起を設けたことを特徴とする請求項1に記載のポスト。
【請求項5】
前記ポスト本体において前記前壁部の下端に対向する部位に、前方に向けて漸次下方となるように傾斜する傾斜部を設けたことを特徴とする請求項4に記載のポスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポスト本体の前面に前方開口を有したポストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポスト本体の前面に取り出し用の開口を有したポストには、前扉によって取り出し用開口を閉じた際に前扉がポスト本体の前面全域を覆うように構成したものがある。この種のポストでは、前扉が上下に連続するため、外観品質上好ましいものとなる。しかしながら、前扉とポスト本体との境界が上方に開口する隙間となって現れることになり、ポスト本体の内部に対する止水性を十分に考慮する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のものでは、ポスト本体において取り出し用開口の上縁となる部分から前方に向けて上縁壁部が設けられているとともに、上縁壁部の前縁部に止水壁が設けられている。また、前扉の上縁部には、止水壁を越えて上縁壁部に対向するように上部カバー壁部が設けられている。こうしたポストによれば、ポスト本体と前扉と隙間がクランク状となるため、上方から雨水等の水が滴下した場合にも、ポスト本体の内部に直接浸入するおそれがなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−212194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のポストにあっても、前扉の上部カバー壁部に付着した水が上部カバー壁部の裏面を伝って浸入し、前扉とポスト本体の上縁壁部との隙間からポスト本体の内部に滴下して投函物を汚損するおそれがある。また、豪雨等のように降雨量が増大した場合には、上縁壁部の水が止水壁を超えた時点で直ちにポスト本体の内部に水が浸入するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、止水性を損なうことなく、外観品質の向上を図ることのできるポストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るポストは、前面に前方開口を有したポスト本体と、前記前方開口を開閉するように前記ポスト本体に支持させた前扉とを備えたポストであって、前記ポスト本体は、前記前方開口の上縁となる部位に前方に向けて突出した上縁壁部を有し、前記前扉は、前記上縁壁部の上方に位置する部位に前記上縁壁部に対向するように延在した上部カバー壁部を有するとともに、前記上部カバー壁部の後縁部から下方に向けて突出した垂下壁部を有したものであり、前記上縁壁部の上面において前記垂下壁部よりも前方に位置する部位に、上方に突出するとともに、前記前方開口の幅方向に延在する複数の止水壁を前後に並設したことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、上部カバー壁部の後縁部に垂下壁部を設けるようにしているため、上部カバー壁部に付着した水が上部カバー壁部を伝って浸入するおそれがなくなる。しかも、上縁壁部の上面において垂下壁部よりも前方に位置する部位に止水壁を複数並設しているため、降雨量が増えて上縁壁部の水が止水壁を超えたとしても、次の止水壁によって浸入が妨げられることになる。これらの結果、前扉によってポスト本体の前面全域を覆うように構成して外観品質を向上させた場合にも、ポスト本体の内部への止水性を十分に確保することができるようになる。
【0009】
また本発明は、上述したポストにおいて、前記止水壁は、前記上縁壁部において前記垂下壁部に近接する部位に設けた第1の止水壁と、前記上縁壁部において前記第1の止水壁よりも前方となる部位に設けた第2の止水壁とを有したものであり、前記第1の止水壁と前記ポスト本体の前端部分との間に端部が開放した第1の樋部を構成するとともに、前記第1の止水壁と前記第2の止水壁との間に端部が開放した第2の樋部を構成したことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、第1の樋部の水が端部から排出され、第2の樋部の水が端部から排出されることになる。
【0011】
また本発明は、上述したポストにおいて、前記第1の樋部及び前記第2の樋部の内底面は、それぞれ開放した端部に向けて漸次低くなるように傾斜したことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、第1の樋部の水及び第2の樋部の水は傾斜作用によって端部から順次排出されるため、上縁壁部の上面に停滞している時間が短くなり、ポスト本体の内部に浸入するリスクも減少する。
【0013】
また本発明は、上述したポストにおいて、前記ポスト本体は、上方に開口する上方開口を有するとともに、前記上方開口を開閉するための上蓋を備えたものであり、前記上蓋は、前端から垂下する前壁部を有し、前記前壁部が前記垂下壁部に対向するように前記ポスト本体に支持させたものであり、前記前壁部の下縁部に前方に向けて突出する突起を設けたことを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、前壁部を伝った水が突起によって前方に案内され、前壁部の下端とポスト本体との隙間に水が浸入する事態を防止することができる。
【0015】
また本発明は、上述したポストにおいて、前記ポスト本体において前記前壁部の下端に対向する部位に、前方に向けて漸次下方となるように傾斜する傾斜部を設けたことを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、前壁部の下端とポスト本体との隙間に水が滞留する事態を防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上部カバー壁部の後縁部に垂下壁部を設けるようにしているため、上部カバー壁部に付着した水が上部カバー壁部を伝って浸入するおそれがなくなる。しかも、上縁壁部の上面において垂下壁部よりも前方に位置する部位に止水壁を複数並設しているため、降雨量が増えて上縁壁部の水が止水壁を超えたとしても、次の止水壁によって浸入が妨げられることになる。これらの結果、前扉によってポスト本体の前面全域を覆うように構成して外観品質を向上させた場合にも、ポスト本体の内部への止水性を十分に確保することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態であるポストの斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したポストを側方から見たもので、(a)は上蓋を閉じた状態の側面図、(b)は上蓋を開けた状態の側面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示したポストを上方から見たもので、(a)は前扉を閉じた状態の平面図、(b)は前扉を開けた状態の平面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示したポストの
図2の(a)におけるX−X線要部拡大断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示したポストにおいて軸受部の相互間を切断した要部拡大縦断面図である。
【
図6】
図6は、
図5において上蓋を開けた状態の要部拡大縦断面図である。
【
図7】
図7は、
図1に示したポストにおいて軸受部を切断した要部拡大縦断面図である。
【
図8】
図8は、
図7において上蓋を開けた状態の要部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係るポストの好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1〜
図3は、本発明の実施の形態であるポストを示したものである。ここで例示するポストは、屋外に設置されることを前提としたもので、直方体状を成すポスト本体10の前面に取出口(前方開口)11を有し、かつポスト本体10の上方部に上方に開口する投函口(上方開口)12を有している。
【0020】
取出口11は、ポスト本体10の前面ほぼ全域に開口する大きさを有したものである。ポスト本体10において取出口11の開口周縁となる部分には、上縁壁部13a、下縁壁部13b及び左右の側縁壁部13cが設けてある。上縁壁部13a、下縁壁部13b及び左右の側縁壁部13cは、それぞれ薄板状を成すもので、取出口11の開口周縁部に矩形状の前方周壁13を構成している。図中の符号14は、上縁壁部13aの前端及び左右の側縁壁部13cの前端に配設したクッション材である。
【0021】
図5及び
図7に示すように、このポスト本体10では、ポスト本体10の上面を構成する上壁部10aと上縁壁部13aとの間に上下方向に延在する前端壁部10bが設けてあり、上縁壁部13aがポスト本体10よりも一段低くなるように構成してある。上壁部10aと前端壁部10bとの間には、前方に向けて漸次下方に傾斜する傾斜部10cが設けてある。
【0022】
図1、
図5及び
図7に示すように、上縁壁部13aの上面には、2つの止水壁15,16が前後に並んで配設してある。止水壁15,16は、それぞれ上縁壁部13aから上方に向けて突出した薄板状部材であり、上縁壁部13aの幅方向に沿った全長にわたる部位に設けてある。図からも明らかなように、個々の止水壁15,16は、ポスト本体10の上面10dよりも上方に突出しており、ポスト本体10の前端壁部10bとの間に第1の樋部17を構成し、かつ互いの間に第2の樋部18を構成している。
図4に示すように、それぞれの樋部17,18の内底面17a,18aは、中央部分が最も高い位置となり、両側の開放端に向けて漸次低くなるように傾斜している。なお、2つの止水壁15,16を区別する場合には、上縁壁部13aの後方側に設けたものを第1の止水壁15と称し、前方側に設けたものを第2の止水壁16と称することとする。
【0023】
投函口12は、
図5及び
図7に示すように、ポスト本体10の上面10dに設けた台状部19の上端に開口するように形成したものである。台状部19は、左右寸法及び前後寸法がそれぞれポスト本体10の横断面よりも小さくなるように構成したもので、周囲にそれぞれポスト本体10の上面10dを確保した状態でポスト本体10の上面10dから上方に突出するように設けてある。台状部19の後面19aからポスト本体10の後端縁10eまでの寸法は、台状部19の前面19bからポスト本体10の前端縁までの寸法及び台状部19の側面19cからポスト本体10の側端縁までの寸法よりも大きく設定してある。
【0024】
図1、
図5及び
図7に示すように、台状部19には、両側となる部位にそれぞれ支持台部19dが設けてあり、かつこれら支持台部19dの相互間となる部位に前方傾斜面19e及び後方傾斜面19fが設けてある。支持台部19dは、厚板の平板状を成すもので、台状部19の両側部分から互いに平行となる状態で上方に突出している。支持台部19dの上面は、ポスト本体10の上面10dとほぼ平行となるように延在している。支持台部19dの上面において前方側に位置する部分には、それぞれクッション材20が配設してある。前方傾斜面19eは、前方に向けて漸次下方となるように傾斜したものであり、後方傾斜面19fは、後方に向けて漸次下方となるように傾斜したものである。本実施の形態では、台状部19の後方側に大きく偏った部分において左右方向に延在する稜線19gを境界として前方傾斜面19eと後方傾斜面19fとが隣接するように構成してある。上述した投函口12は、前方傾斜面19eにおいて上方に開口するように形成してある。前方傾斜面19eと後方傾斜面19fとの隣接境界となる稜線19gの高さは、支持台部19dの上面よりも低い位置となるように設定してある。図からも明らかなように、投函口12の周囲全周となる部分には、上方に向けて突出するように開口周壁部12aが設けてある。
【0025】
ポスト本体10の上面10dにおいて台状部19の後面19aからポスト本体10の後端縁10eまでの間に位置する部位には、2つの軸受部21が設けてある。軸受部21は、
図1及び
図7に示すように、それぞれポスト本体10の上面10dから上方に突出した部分であり、個々の上端部に軸挿通孔21aを有している。軸挿通孔21aは、ポスト本体10の左右方向に沿って貫通したもので、互いに同一の軸芯となる位置にほぼ水平となるように設けてある。図からも明らかなように、軸受部21の上端部は、軸挿通孔21aの軸芯を中心とした円柱状の曲面となるように形成してあり、その頂部に止水リブ22を有している。止水リブ22は、幅の細い突条であり、軸挿通孔21aの軸芯を通過する仮想の鉛直面に沿って延在している。
【0026】
上述のポスト本体10には、前扉30及び上蓋40が設けてある。前扉30はポスト本体10の取出口11を開閉するためのものであり、上蓋40はポスト本体10の投函口12を開閉するためのものである。
【0027】
前扉30は、
図1に示すように、ポスト本体10の前面において前方周壁13及び止水壁15,16を覆うことのできる大きさを有した矩形状を成す前扉本体31と、前扉本体31の四周からそれぞれ同一方向に屈曲した上部カバー壁部32、下部カバー壁部33及び左右の側部カバー壁部34とを有したものである。この前扉30は、ポスト本体10の一方の側縁壁部13cとの間に設けたヒンジ35により、上下方向に沿った軸芯を中心として回転可能に配設してある。本実施の形態では、正面から見た場合に右側となる部分にヒンジ35が設けてあり、
図3に示すように、前扉30を右側に開くことが可能である。前扉30を閉じた状態においては、上部カバー壁部32、下部カバー壁部33及び左右の側部カバー壁部34によって囲まれる空間にポスト本体10の前方周壁13及び上縁壁部13aに設けた2つの止水壁15,16が配置されることになる。
【0028】
図5及び
図7に示すように、前扉30の上部カバー壁部32は、前扉30を閉じた場合に2つの止水壁15,16を越えて後方に延在し、その後端縁が第1の樋部17の上方域に達する寸法に形成してある。この上部カバー壁部32には、垂下壁部36が設けてある。垂下壁部36は、上部カバー壁部32の後縁部から下方に向けてほぼ直角となるように突出したものである。図からも明らかなように、この垂下壁部36は、止水壁15,16の上端よりも上方となる位置に下端が位置しており、前扉30の開閉の際に止水壁15,16と干渉することはない。
【0029】
上蓋40は、ポスト本体10の上面10dにおいて台状部19を覆うことのできる大きさを有した上蓋本体41と、上蓋本体41の四周から内表面側に向けて延在した前壁部42、後壁部43及び左右の側壁部44とを有したものである。前壁部42には、延在端の縁部に突起45が設けてある。突起45は、前壁部42の延在端に向けて漸次前方に向けて突出するように形成したもので、前壁部42においてポスト本体10の傾斜部10cに対向する部位の全長にわたって設けてある。
【0030】
この上蓋40には、
図1に示すように、上蓋本体41の内表面41aにおいて後壁部43に近接した部分に対を成す支持ヒレ部46が2カ所にそれぞれ設けてある。支持ヒレ部46は、上蓋本体41の内表面41aから突出したもので、個々の突出端部に軸挿通孔46aを有している。それぞれ対を成す支持ヒレ部46は、互いの間にポスト本体10の軸受部21を挿通した状態で、それぞれの軸挿通孔21a,46aにヒンジ軸47を貫通保持させることにより、
図2に示すように、ヒンジ軸47を軸芯として上蓋40をポスト本体10に対して回転可能に支持するものである。
【0031】
図5及び
図7に示すように、上蓋40の後端縁40aは、ポスト本体10の後面よりも前方となる位置において終端している。
図6に示すように、上蓋40の後壁部43は、上蓋40を開けた場合にポスト本体10の上面10dとの干渉を避けるため、前壁部42及び側壁部44に比べて突出寸法が短く設定してある。特に、支持ヒレ部46に対応する部位の後壁部43は、
図8に示すように、軸受部21との干渉を避けるために他の部分の後壁部43よりも突出寸法がさらに短く設定してある。
【0032】
図5及び
図7に示すように、上蓋40を閉じた状態においては、支持台部19dのクッション材20が上蓋本体41の内表面41aに当接し、投函口12の上方部が覆われることになる。このとき、このポストでは、上蓋本体41の板厚、軸受部21の高さ、支持ヒレ部46の突出寸法、支持台部19dの突出高さ及びクッション材20の板厚を適宜調整し、上蓋40の上部外表面41bが後方に向けて漸次低くなるように設定してある。上蓋40において最も上方となる前壁部42の上縁の高さは、前扉30の上部カバー壁部32を越えない位置となるように調整してある。また、上蓋40を閉じた状態では、軸受部21に設けた止水リブ22の頂面部が上蓋本体41の内表面41aにほぼ接触した位置となるように設定してある。
【0033】
上蓋40の前壁部42は、台状部19の前面19bと前扉30の垂下壁部36との間において下方に垂下し、ポスト本体10の上壁部10aと前端壁部10bとの間に設けた傾斜部10cの上方で終端している。前壁部42は、上端部が前扉30の垂下壁部36に対向し、下端の突起45が前扉30の垂下壁部36よりも下方において第1の止水壁15に対向した状態にある。
【0034】
また、上蓋40には、上蓋本体41の内表面41aにおいて支持ヒレ部46の前縁となる部位に隔壁部48が設けてある。隔壁部48は、上蓋40を閉じた場合にポスト本体10の上面10dに向けてほぼ鉛直に延在するように突出したヒレ状部分である。
図5に示すように、対を成す支持ヒレ部46の外側に設けた隔壁部48は、上蓋40を閉じた状態において台状部19の後面19a上端と対向する位置まで延在している。対を成す支持ヒレ部46の間に設けた隔壁部48′は、
図7及び
図8に示すように、軸受部21に設けた止水リブ22との干渉を避けるため、上蓋40を閉じた状態において台状部19の後面19aよりもわずかに上方となる位置で終端している。
【0035】
上記のように構成したポストは、家屋の壁面等のように鉛直方向に沿った取付面Wにポスト本体10の後面を当接させた状態で設置される。この設置状態においては、前方に位置する前扉30がポスト本体10の前面及び閉じた状態の上蓋40を覆い隠すことになるため、前扉30が上端から下端にわたって連続するように現れることになり、外観品質が向上する。また、上蓋40の後端縁40aをポスト本体10の後面よりも前方となる位置に配置し、かつ後壁部43の突出寸法を前壁部42及び側壁部44に比べて短く設定し、さらに支持ヒレ部46に対応する部位の後壁部43についてはさらに突出寸法を短く設定しているため、上蓋40が取付面Wやポスト本体10の上面10d及び軸受部21に干渉することがなく、上蓋40に良好な開閉操作性を確保することができる。
【0036】
ここで、前扉30においては、上部カバー壁部32の後縁部に垂下壁部36を設けるようにしている。このため、降雨等によって上部カバー壁部32に水が付着したとしても、付着した水は垂下壁部36の下端において第1の樋部17に滴下することになり、上部カバー壁部32の裏面を伝って取出口11の開口側へ浸入するおそれがなくなる。さらに、上縁壁部13aの上面において垂下壁部36よりも前方に位置する部位に2つの止水壁15,16を前後に並設しているため、降雨量が増えて第1の樋部17に貯留された水が第1の止水壁15を超えたとしても、第2の止水壁16によって取出口11への浸入が妨げられることになる。しかも、それぞれの樋部17,18においては、内底面17a,18aが両端に向けて下方に傾斜しているため、順次両端から直ちに排出されて水が長い時間貯留することがない。これにより、取出口11からポスト本体10の内部に水が浸入するリスクも減少する。従って、前扉30によってポスト本体10の前面全域を覆うように構成した結果、前扉30とポスト本体10との境界が上方に開口する隙間となって現れることになっても、当該隙間を要因として取出口11からポスト本体10の内部に水が浸入する事態を確実に防止することができるようになる。
【0037】
一方、上蓋40の前端部においては、閉じた状態において上部外表面41bを後方に向けて低くなるように傾斜させているため、上蓋40の上部外表面41bに水が貯留される事態や、上蓋40に滴下した水が第1の樋部17や第2の樋部18に流れ落ちる事態を大幅に減少することができる。また、上蓋40の前壁部42に設けた突起45は、前壁部42を伝ってきた水を前方側に案内し、第1の樋部17に滴下させるように機能する。さらに、ポスト本体10の前端壁部10bに設けた傾斜部10cは、水を第1の樋部17に排出するように機能し、上蓋40の前壁部42との間に水が貯留する事態を防止する。従って、上蓋40を開く際に前壁部42の下面に水が付着している状況を未然に防止することができ、上蓋40から投函口12を介してポスト本体10の内部に水が滴下する事態がほとんどなくなる。
【0038】
また、上蓋40の後端部においては、上蓋本体41の内表面41aに隔壁部48を設けるようにしているため、さらには、軸受部21の上端部に止水リブ22を設けるようにしているため、ポスト本体10の上面10dで降雨等の水が勢い良く跳ね返ったとしても、これら隔壁部48及び止水リブ22が水の浸入を妨げ、上蓋本体41の内表面41aに水が付着する事態を防止することができる。しかも、投函口12の周囲となる部位には、開口周壁部12aが設けてあるため、さらに、投函口12の周囲となる台状部19の上面を前方傾斜面19e及び後方傾斜面19fで構成しているため、仮に台状部19の上面に水が到達したとしても投函口12からポスト本体10の内部に浸入することなく周囲に流れ落ちることになる。従って、上蓋40の開閉操作性を確保すべく、上蓋40をポスト本体10の上面10dよりも小さく構成し、かつ後壁部43の突出寸法を短く設定したものにあっても、ポスト本体10の内部への止水性を向上させることが可能となる。
【0039】
なお、上述した実施の形態では、上蓋40を備えたポストを例示しているが、必ずしも上蓋を備えている必要はない。上蓋40を設ける場合に上述した実施の形態では、後縁がヒンジとなるようにポスト本体10に支持させているが、ヒンジの位置は上蓋の後縁である必要はない。また、上下方向に沿った軸芯を中心として前扉30を開閉可能に支持させるようにしているが、水平方向に沿った軸芯を中心として開閉するように支持させても良い。さらに、止水壁15,16を2つ並設するようにしているが、3以上並設するようにしても構わない。またさらに、樋部17,18の内底面17a,18aを両側に向けて低くなるように傾斜させているが、樋部の内底面は一方側から他方側に向けて低くなるように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 ポスト本体、10c 傾斜部、11 取出口、12 投函口、13a 上縁壁部、15,16 止水壁、17 第1の樋部、17a,18a 内底面、18 第2の樋部、30 前扉、32 上部カバー壁部、36 垂下壁部、40 上蓋、42 前壁部、45 突起