特許第6576304号(P6576304)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576304
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】触媒プレコートろ布の再生方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/86 20060101AFI20190909BHJP
   B01D 53/90 20060101ALI20190909BHJP
   B01D 53/70 20060101ALI20190909BHJP
   B01D 53/50 20060101ALI20190909BHJP
   B01D 53/83 20060101ALI20190909BHJP
   B01J 38/00 20060101ALI20190909BHJP
   B01J 35/06 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   B01D53/86 222
   B01D53/90ZAB
   B01D53/70
   B01D53/50 100
   B01D53/83
   B01D53/86 270
   B01J38/00 Z
   B01J35/06 A
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-120060(P2016-120060)
(22)【出願日】2016年6月16日
(65)【公開番号】特開2017-221916(P2017-221916A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2018年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100097755
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】大上 雅晴
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 全一
【審査官】 菊地 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−137663(JP,A)
【文献】 特開平09−108535(JP,A)
【文献】 特開2001−259370(JP,A)
【文献】 特開2001−058121(JP,A)
【文献】 特開平09−155123(JP,A)
【文献】 特開2001−198438(JP,A)
【文献】 特開平06−015144(JP,A)
【文献】 特開平06−233916(JP,A)
【文献】 特開2003−080030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/86
B01J 35/00
B01J 38/00
F23J 15/00
B01D 46/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ布に触媒粉末を付着させてなる触媒プレコートろ布を備えるバグフィルタ装置を、ダスト、酸性ガスおよび有害物質を含んだ排ガスが流れる排ガス流路の途中に配設してその排ガス中の有害物質を前記触媒プレコートろ布で分解除去するようにした排ガス処理設備において、前記排ガス流路における前記バグフィルタ装置の上流側に、酸性ガスを除去するための酸性ガス除去薬剤が吹き込まれる前段集塵装置を配設して、前記バグフィルタ装置に導入される前の排ガスに含まれるダストおよび酸性ガスを前記前段集塵装置で予め除去するようにした排ガス処理設備における前記バグフィルタ装置に装備された前記触媒プレコートろ布の再生方法であって、
前記バグフィルタ装置を通過した後の排ガスの分析結果に基づいて、前記触媒プレコートろ布の劣化状況を判断し、前記触媒プレコートろ布が劣化していると判断したときに、前記触媒プレコートろ布におけるろ布上に付着している古い触媒粉末を払い落とし、その後、前記排ガス流路における前記バグフィルタ装置の上流側に新しい触媒粉末を吹き込むことにより、前記古い触媒粉末が払い落とされた後の前記バグフィルタ装置内のろ布にその新しい触媒粉末を付着させることを特徴とする触媒プレコートろ布の再生方法。
【請求項2】
ろ布に触媒粉末を付着させてなる触媒プレコートろ布を備えるバグフィルタ装置を、ダスト、酸性ガスおよび有害物質を含んだ排ガスが流れる排ガス流路の途中に配設してその排ガス中の有害物質を前記触媒プレコートろ布で分解除去するようにした排ガス処理設備において、前記排ガス流路における前記バグフィルタ装置の上流側に、酸性ガスを除去するための酸性ガス除去薬剤が吹き込まれる前段集塵装置を配設して、前記バグフィルタ装置に導入される前の排ガスに含まれるダストおよび酸性ガスを前記前段集塵装置で予め除去するようにした排ガス処理設備における前記バグフィルタ装置に装備された前記触媒プレコートろ布の再生方法であって、
前記排ガスは前記有害物質としてダイオキシン類を含み、前記触媒プレコートろ布はそのダイオキシン類のみを分解除去するものであり、該触媒プレコートろ布を通過する排ガス量の積算値に基づいてその触媒プレコートろ布におけるろ布上に付着している触媒粉末の寿命を予測し、予測した寿命に達したときに、前記触媒プレコートろ布におけるろ布上に付着している古い触媒粉末を払い落とし、その後、前記排ガス流路における前記バグフィルタ装置の上流側に新しい触媒粉末を吹き込むことにより、前記古い触媒粉末が払い落とされた後のろ布にその新しい触媒粉末を付着させることを特徴とする触媒プレコートろ布の再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばごみ焼却施設で発生した排ガスを処理する排ガス処理設備に関し、特に、触媒を担持またはプレコートしたろ布を備えるバグフィルタ装置を用いて排ガスに含まれる有害物質を分解除去するようにした排ガス処理設備、およびその排ガス処理設備におけるバグフィルタ装置で用いられる触媒担持ろ布の交換時期判定方法並びに触媒プレコートろ布の再生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図3に示されるようなごみ焼却処理施設101において、ごみが焼却炉102で燃焼されるに伴い発生した排ガスは、ボイラ103やエコノマイザ104へと送られて熱回収される。排ガスには、ダストや重金属類が含まれるとともに、SOx(硫黄酸化物)等の酸性ガス、ダイオキシン類やNOx(窒素酸化物)等の有害物質が含まれているため、熱回収後の排ガスは、排ガス処理設備105へと送られた後に、誘引ファン106により煙突107を介して外部へ排出される。
【0003】
排ガス処理設備105においては、ろ布に触媒が担持されてなる所定本数の触媒担持ろ布108を備えるバグフィルタ装置109が、排ガスの流路の途中に配設されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−204466号公報
【0005】
従来の排ガス処理設備105において、バグフィルタ装置109の上流側には、酸性ガスを除去するための例えば消石灰が消石灰供給装置110によって供給されるとともに、NOxを除去するためのアンモニアが注入される。そして、ダストや重金属類、酸性ガス、有害物質等を含んだ排ガスは、消石灰やアンモニアと共にバグフィルタ装置109の内部に導入され、バグフィルタ装置109の内部に配設された触媒担持ろ布108によって、ダストや重金属類、酸性ガスなどが排ガスから分離除去されるとともに、ダイオキシン類やNOxなどの有害物質が分解除去される。なお、バグフィルタ装置109によって排ガス中から分離除去されたダスト(飛灰)等は、飛灰処理装置111へと送られる。
【0006】
しかしながら、上記従来の排ガス処理設備105では、触媒担持ろ布108上にダストが堆積するとともに、触媒担持ろ布108上に重金属類や、酸性ガスから合成される硫安、酸性硫安などが付着するため、以下のような問題点がある。
(1)触媒担持ろ布108上の硫安や酸性硫安により、触媒担持ろ布108の触媒機能が劣化する。
(2)触媒担持ろ布108上の重金属類により、触媒担持ろ布108の触媒機能が劣化する。
(3)焼却炉102から飛来する多量のダストを触媒担持ろ布108上から払い落とすためには、逆洗回数が多くなり、逆洗によりダストとともに触媒が払い落とされて、触媒担持ろ布108の触媒機能がなくなる。触媒機能がなくなれば、たとえ触媒担持ろ布108のダスト除去機能が保持されていても、触媒担持ろ布108を交換する必要がある。
(4)逆洗回数が多いために、触媒担持ろ布108のろ布部分の寿命が短く、たとえ触媒機能が保持されていても、ろ布部分の寿命により、触媒担持ろ布108全体を交換する必要がある。
(5)焼却炉102から多量のダストが触媒担持ろ布108へと飛来し、バグフィルタ装置109での圧力損失が大きくなるため、ろ過速度を遅くする必要がある。そのため、バグフィルタ装置109に組み込まれるろ布本数が多くなり、装置が大きくなる。
なお、排ガス処理設備105において、バグフィルタ装置109が、触媒担持ろ布108に代えて、ろ布に触媒粉末を付着させてなる触媒プレコートろ布を備える構成のものであっても、上記と同様の問題点を有することは言うまでもない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、触媒機能付ろ布の触媒機能の劣化や寿命の低下を抑えることができるとともに、ろ過速度の向上を図ることができる排ガス処理設備、およびその排ガス処理設備におけるバグフィルタ装置で用いられる触媒担持ろ布の交換時期判定方法並びに触媒プレコートろ布の再生方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、第1発明による排ガス処理設備は、
ろ布に触媒が担持されてなる触媒担持ろ布を備えるバグフィルタ装置を、ダスト、酸性ガスおよび有害物質を含んだ排ガスが流れる排ガス流路の途中に配設してその排ガス中の有害物質を前記触媒担持ろ布で分解除去するようにした排ガス処理設備において、
前記排ガス流路における前記バグフィルタ装置の上流側に、酸性ガスを除去するための酸性ガス除去薬剤が吹き込まれる前段集塵装置を配設して、前記バグフィルタ装置に導入される前の排ガスに含まれるダストおよび酸性ガスを前記前段集塵装置で予め除去するようにしたことを特徴とするものである。
【0009】
次に、第2発明による排ガス処理設備は、
ろ布に触媒粉末を付着させてなる触媒プレコートろ布を備えるバグフィルタ装置を、ダスト、酸性ガスおよび有害物質を含んだ排ガスが流れる排ガス流路の途中に配設してその排ガス中の有害物質を前記触媒プレコートろ布で分解除去するようにした排ガス処理設備において、
前記排ガス流路における前記バグフィルタ装置の上流側に、酸性ガスを除去するための酸性ガス除去薬剤が吹き込まれる前段集塵装置を配設して、前記バグフィルタ装置に導入される前の排ガスに含まれるダストおよび酸性ガスを前記前段集塵装置で予め除去するようにしたことを特徴とするものである。
【0010】
第1発明または第2発明の排ガス処理設備において、前記排ガスは前記有害物質としてNOxを含み、前記前段集塵装置と前記バグフィルタ装置との間における前記排ガス流路を流れる排ガスに対してアンモニアを供給するアンモニア供給手段と、このアンモニア供給手段によるアンモニアの供給量を制御するアンモニア供給量制御手段と、前記前段集塵装置を通過した後で、かつ前記アンモニア供給手段によってアンモニアが供給される前の排ガスに含まれるNOxの濃度を計測するNOx計とを備え、前記アンモニア供給量制御手段は、前記NOx計の計測値に基づくフィードフォワード制御により前記アンモニア供給手段によるアンモニアの供給量を制御するようにすることができる(第3発明)。
【0011】
第1発明または第2発明の排ガス処理設備において、前記排ガスは前記有害物質としてNOxを含み、前記前段集塵装置と前記バグフィルタ装置との間における前記排ガス流路を流れる排ガスに対してアンモニアを供給するアンモニア供給手段と、このアンモニア供給手段によるアンモニアの供給量を制御するアンモニア供給量制御手段と、前記前段集塵装置を通過した後で、かつ前記アンモニア供給手段によってアンモニアが供給される前の排ガスに含まれるNOxの濃度を計測する上流側NOx計と、前記バグフィルタ装置を通過した後の排ガスに含まれるNOxの濃度を計測する下流側NOx計とを備え、前記アンモニア供給量制御手段は、前記上流側NOx計の計測値に基づくフィードフォワード制御と前記下流側NOx計の計測値に基づくフィードバック制御とにより前記アンモニア供給手段によるアンモニアの供給量を制御するようにすることができる(第4発明)。
【0012】
次に、第5発明による触媒担持ろ布の交換時期判定方法は、
第1発明に係る排ガス処理設備における前記バグフィルタ装置に装備された前記触媒担持ろ布の交換時期判定方法であって、
前記バグフィルタ装置を通過した後の排ガスの分析結果に基づいて、前記触媒担持ろ布の劣化状況を判断し、前記触媒担持ろ布が劣化していると判断した場合に前記触媒担持ろ布の交換時期であると判定することを特徴とするものである。
【0013】
また、第6発明による触媒プレコートろ布の再生方法は、
第2発明に係る排ガス処理設備における前記バグフィルタ装置に装備された前記触媒プレコートろ布の再生方法であって、
前記バグフィルタ装置を通過した後の排ガスの分析結果に基づいて、前記触媒プレコートろ布の劣化状況を判断し、前記触媒プレコートろ布が劣化していると判断したときに、前記触媒プレコートろ布におけるろ布上に付着している古い触媒粉末を払い落とし、その後、前記排ガス流路における前記バグフィルタ装置の上流側に新しい触媒粉末を吹き込むことにより、前記古い触媒粉末が払い落とされた後のろ布にその新しい触媒粉末を付着させることを特徴とするものである。
【0014】
また、第7発明による触媒プレコートろ布の再生方法は、
第2発明に係る排ガス処理設備における前記バグフィルタ装置に装備された前記触媒プレコートろ布の再生方法であって、
前記排ガスは前記有害物質としてダイオキシン類を含み、前記触媒プレコートろ布はそのダイオキシン類のみを分解除去するものであり、該触媒プレコートろ布を通過する排ガス量の積算値に基づいてその触媒プレコートろ布におけるろ布上に付着している触媒粉末の寿命を予測し、予測した寿命に達したときに、前記触媒プレコートろ布におけるろ布上に付着している古い触媒粉末を払い落とし、その後、前記排ガス流路における前記バグフィルタ装置の上流側に新しい触媒粉末を吹き込むことにより、前記古い触媒粉末が払い落とされた後のろ布にその新しい触媒粉末を付着させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
第1発明および第2発明の排ガス処理設備によれば、バグフィルタ装置に導入される前の排ガスに含まれるダストおよび酸性ガスが、酸性ガス除去薬剤が吹き込まれる前段集塵装置で予め除去されるので、ダストおよび酸性ガスが除去された後の排ガスがバグフィルタ装置に導入されることになり、触媒担持ろ布および触媒プレコートろ布上にダストが堆積するのを防ぐことができるとともに、酸性ガスから合成される例えば硫安や酸性硫安などが触媒担持ろ布および触媒プレコートろ布上に付着するのを防ぐことができる。したがって、逆洗の必要がなくなり、硫安、酸性硫安等による触媒の劣化が少なく、圧力損失も上昇しないので、触媒機能付ろ布の触媒機能の劣化や寿命の低下を抑えることができるとともに、ろ過速度の向上を図ることができる。
【0016】
ところで、バグフィルタ装置を通過した後の排ガスに含まれるNOxの濃度を計測し、その計測値に基づいてフィードバック制御により、バグフィルタ装置の上流側に供給するアンモニアの供給量を制御する場合、アンモニアの供給タイミングが遅れて、NOxの除去が遅れることがある。そこで、第3発明の構成を採用することにより、適切なタイミングで適量のアンモニアを供給することができ、NOxを確実に除去することができる。
【0017】
また、第4発明の構成を採用することにより、より適切なタイミングで最適量のアンモニアを供給することができ、NOxをより確実に除去することができる。
【0018】
また、第5発明の触媒担持ろ布の交換時期判定方法によれば、触媒担持ろ布の交換時期を正確に判定することができる。
【0019】
また、第6発明の触媒プレコートろ布の再生方法によれば、触媒プレコートろ布の再生が必要な時期を正確に判定することができて再生必要時期まで触媒プレコートろ布を有効に使用することができ、しかも触媒機能が劣化してもろ布自体は交換する必要がなく、触媒粉末のみの交換によって触媒機能を回復させることができるので、ランニングコストを低く抑えることができる。
【0020】
また、第7発明の触媒プレコートろ布の再生方法によれば、ダイオキシン類のみを分解除去する触媒プレコートろ布を触媒粉末が寿命に達するまで有効に使用することができ、しかも触媒粉末が寿命に達してもろ布自体は交換する必要がなく、触媒粉末のみの交換によって触媒機能を回復させることができるので、ランニングコストを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施形態に係る排ガス処理設備を備えるごみ焼却施設の概略システム構成図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る排ガス処理設備を備えるごみ焼却施設の概略システム構成図である。
図3】従来の排ガス処理設備を備えるごみ焼却施設の概略システム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明による排ガス処理設備および触媒担持ろ布の交換時期判定方法並びに触媒プレコートろ布の再生方法の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
〔第1の実施形態〕
図1には、本発明の第1の実施形態に係る排ガス処理設備を備えるごみ焼却施設の概略システム構成図が示されている。
【0024】
<ごみ焼却施設の説明>
図1に示されるようなごみ焼却処理施設1において、ごみが焼却炉2で燃焼されるに伴い発生した排ガスは、ボイラ3やエコノマイザ4へと送られて熱回収される。排ガスには、ダストや重金属類が含まれるとともに、SOx等の酸性ガス、ダイオキシン類やNOx等の有害物質が含まれているため、熱回収後の排ガスは、排ガス処理設備5Aへと送られた後に、誘引ファン6により煙突7を介して外部へ排出される。
【0025】
<排ガス処理設備の説明>
排ガス処理設備5Aは、主として、前段集塵装置11、バグフィルタ装置12A、消石灰供給装置13、活性炭供給装置14およびアンモニア供給装置15を備えて構成されている。ここで、前段集塵装置11およびバグフィルタ装置12Aは、エコノマイザ4と誘引ファン6との間において排ガスが流れる排ガス流路の途中に組み込まれ、前段集塵装置11が上流側に、バグフィルタ装置12Aが下流側にそれぞれ配設されている。
【0026】
エコノマイザ4と前段集塵装置11とは、両者間の排ガス流路を形成するダクト16によって接続されている。同様に、前段集塵装置11とバグフィルタ装置12Aとの間はダクト17によって、バグフィルタ装置12Aと誘引ファン6との間はダクト18によって、それぞれ接続されている。また、ダクト17には、上流側NOx計21が設置され、ダクト18には、下流側NOx計22が設置されるとともに、アンモニア計23が設置されている。上流側NOx計21は、前段集塵装置11を通過した後で、かつアンモニア供給装置15によってアンモニアが供給される前の排ガスに含まれるNOxの濃度を計測し、下流側NOx計22は、バグフィルタ装置12Aを通過した後の排ガスに含まれるNOxの濃度を計測し、アンモニア計23は、バグフィルタ装置12Aを通過した後の排ガスに含まれるアンモニアの濃度を計測する。
【0027】
前段集塵装置11としては、例えば、ろ過式集塵装置や電気集塵機、遠心力式集塵装置などが好適に用いられる。ここで、ろ過式集塵装置は、多数設置された、布または不織布製の袋状のフィルタにダストを含む排ガスを通してろ過する方式のものであり、電気集塵機は、排ガス中のダストをコロナ放電によって荷電させ、高圧電界による静電気の力を利用してダストを捕集する方式のものであり、遠心力式集塵装置は、排ガスに旋回運動を与え、ダストに作用する遠心力によって排ガス中からダストを分離捕集する方式のものである。
【0028】
<バグフィルタ装置の説明>
バグフィルタ装置12Aは、前述したろ過式集塵装置であって、ケーシング30の内部に、所要の触媒担持ろ布31が組み込まれてなるものである。なお、バグフィルタ装置12Aで捕集されたダスト、つまり飛灰は、図示されないスクリューコンベヤやロータリーバルブ等を介して順次排出されて飛灰処理設備20へと搬送される。
【0029】
ケーシング30の内部は、ケージプレート32によって上下に仕切られており、ケーシング30の内部には、ケージプレート32の下側にろ過処理前排ガス室33が、ケージプレート32の上側にろ過処理後排ガス室34が、それぞれ区画形成されている。ろ過処理前排ガス室33には、ダクト17と接続される排ガス導入口部35が形成される一方、ろ過処理後排ガス室34には、ダクト18と接続される排ガス導出口部36が形成されている。ケージプレート32には、触媒担持ろ布31の吊り下げ用の開口部が所要個数設けられており、各開口部からは、触媒担持ろ布31がろ過処理前排ガス室33内に配されるように吊り下げ支持されている。
【0030】
触媒担持ろ布31は、ダイオキシン類やNOx等の有害物質を分解する触媒をろ布に担持させてなるものである。ここで、触媒が担持されるろ布は、円筒状の袋体であり、閉鎖された一端側(下端側)がろ過処理前排ガス室33内に差し込まれる一方で、開放された他端側(上端側)がろ過処理後排ガス室34に臨ませて配され、該ろ布の内部には、その円筒形状を維持するための骨材(図示省略)が組み込まれている。なお、ろ布の構成材としては、例えば、ガラス繊維やPTFE繊維からなる二重織、綾織り、平織り等の織布またはフェルトなどが好適に用いられる。
【0031】
<消石灰供給装置、活性炭供給装置の説明>
消石灰供給装置13は、SOx等の酸性ガスを除去するための酸性ガス除去薬剤としての消石灰をダクト16内に供給するものであり、ダクト16内に供給された消石灰は、ダクト16内を流れる排ガスによって空気輸送されて前段集塵装置11の内部に吹き込まれる。
活性炭供給装置14は、ダイオキシン類等の有害物質を吸着するための有害物質吸着剤としての活性炭をダクト17内に供給するものであり、ダクト17内に供給された活性炭は、ダクト17内を流れる排ガスによって空気輸送されてバグフィルタ装置12Aの内部に吹き込まれる。
【0032】
<アンモニア供給装置の説明>
アンモニア供給装置15は、アンモニア供給手段41とアンモニア供給量制御手段42とにより構成されている。
【0033】
アンモニア供給手段41は、アンモニア供給源43と、このアンモニア供給源43とダクト17とを接続するアンモニア供給管44とを備えてなり、アンモニア供給源43からアンモニア供給管44を介してアンモニアをダクト17内へと送り、ダクト17内を流れる排ガスに対してアンモニアを供給することができるように構成されている。
【0034】
アンモニア供給量制御手段42は、アンモニア供給管44の途中に配されてダクト17内へと送られるアンモニアの流量を制御する制御弁45と、この制御弁45の弁動作を制御する制御器46とを備えてなり、制御器46から制御弁45に対し所定の制御信号を送信し制御弁45の弁動作を制御することで、アンモニアの流量を制御するように構成されている。このアンモニア供給量制御手段42において、制御器46は、上流側NOx計21の計測値に基づくフィードフォワード制御と下流側NOx計22の計測値に基づくフィードバック制御とを組み合わせた制御を実行するための演算処理を行って、その結果算出された所定の制御信号を制御弁45へと送信し、制御弁45はその所定の制御信号に従ってダクト17内へと送られるアンモニアの流量を制御する。
【0035】
以上に述べたように構成される排ガス処理設備5Aにおいては、ボイラ3やエコノマイザ4で熱回収された後の排ガスが前段集塵装置11の内部に導入されるとともに、消石灰供給装置13によってダクト16内に供給された消石灰がその排ガスによる空気輸送によって前段集塵装置11の内部に吹き込まれる。これにより、熱回収後の排ガスに含まれるダストや酸性ガス、重金属類等が除去される。
【0036】
前段集塵装置11によってダストや酸性ガス、重金属類等が除去された後の排ガスは、ダクト17を介してバグフィルタ装置12Aの内部に導入される。このとき、活性炭供給装置14によってダクト17内に供給された活性炭がその排ガスによる空気輸送によってバグフィルタ装置12Aの内部に吹き込まれる。
【0037】
バグフィルタ装置12Aの内部に導入された排ガスに含まれる有害物質は、その一部が活性炭によって吸着された後その活性炭が触媒担持ろ布31に捕捉されることで除去されるとともに、残部が触媒担持ろ布31に担持された触媒によって分解されて触媒担持ろ布31によって除去される。
【0038】
こうして、バグフィルタ装置12Aに導入される前の排ガスに含まれるダストや酸性ガス、重金属類を前段集塵装置11で予め除去することにより、ダストや酸性ガス、重金属類が除去された後の排ガスがバグフィルタ装置12Aに導入されることになり、触媒担持ろ布31上にダストが堆積するのを防ぐことができるとともに、酸性ガスから合成される硫安、酸性硫安や、重金属類などが触媒担持ろ布31上に付着するのを防ぐことができる。
また、前段の前段集塵装置11で除塵・脱硫が行われるため、重金属類や硫安、酸性硫安による触媒の劣化が少なく、触媒としての寿命が長くなる。
また、触媒担持ろ布31に向かってダストが飛来せず、触媒担持ろ布31上にダストが堆積しないため、逆洗の必要がなくなり、逆洗により触媒が払い落とされることがなく、触媒機能の低下を抑えることができる。
また、触媒担持ろ布31上にダストが堆積しないため、圧力損失が上昇しないので、ろ過速度を上げることができる。このことにより、ろ布本数が少なくなり、バグフィルタ装置12Aをコンパクトにすることができる。
【0039】
排ガス中に含まれるNOxを除去する場合には、バグフィルタ装置12Aの入口側にアンモニア供給装置15によってアンモニアが注入される。このとき、アンモニア供給量制御手段42において、制御器46は、上流側NOx計21の計測値に基づくフィードフォワード制御と下流側NOx計22の計測値に基づくフィードバック制御とを組み合わせた制御を実行するための演算処理を行って、その結果算出された所定の制御信号を制御弁45へと送信し、制御弁45はその所定の制御信号に従ってダクト17内へと送られるアンモニアの流量を制御して、バグフィルタ装置12Aへのアンモニアの供給量を制御する。これにより、より適切なタイミングで最適量のアンモニアをバグフィルタ装置12Aへと供給することができ、NOxをより確実に除去することができる。
【0040】
バグフィルタ装置12Aにおける触媒担持ろ布31は、その使用が進むに従って劣化する。そこで、下流側NOx計22やアンモニア計23の指示値、定期的なNOx、アンモニア、ダイオキシン類の手分析結果などによって、バグフィルタ装置12Aを通過した後の排ガスを分析する。この分析結果に基づいて、触媒担持ろ布31の劣化状況を判断する。そして、触媒担持ろ布31が劣化していると判断した場合には、触媒担持ろ布31の交換時期であると判定する。これにより、触媒担持ろ布31の交換時期を正確に判定することができる。
【0041】
〔第2の実施形態〕
図2には、本発明の第2の実施形態に係る排ガス処理設備を備えるごみ焼却施設の概略システム構成図が示されている。なお、第2の実施形態において、前述した第1の実施形態と同一または同様のものについては、図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略し、以下においては、第2の実施形態に特有の部分を中心に説明することとする。
【0042】
第2の実施形態においては、第1の実施形態における触媒担持ろ布31を備えてなるバグフィルタ装置12Aに代えて、触媒プレコートろ布51を備えてなるバグフィルタ装置12Bが採用されている。触媒プレコートろ布51は、ダイオキシン類やNOx等の有害物質を分解する触媒粉末を空気輸送で新品ろ布に付着させてなるものである。
また、第2の実施形態においては、ダイオキシン類等の有害物質を分解する触媒粉末をダクト17内に供給する触媒粉末供給装置52が設けられ、触媒粉末供給装置52によってダクト17内に供給された触媒粉末が、ダクト17内を流れる排ガスによって空気輸送されてバグフィルタ装置12Bの内部に吹き込まれるようになっている。
【0043】
第2の実施形態の排ガス処理設備5Bにおいても、ダストや酸性ガス、重金属類を前段集塵装置11で除去した後の排ガスがバグフィルタ装置12Bに導入されるので、触媒プレコートろ布51上にダストが堆積するのを防ぐことができるとともに、酸性ガスから合成される硫安、酸性硫安や、重金属類などが触媒プレコートろ布51上に付着するのを防ぐことができ、第1の実施形態の排ガス処理設備5Aと同様の作用効果を得ることができる。
【0044】
バグフィルタ装置12Bにおける触媒プレコートろ布51は、その使用が進むに従って劣化する。そこで、下流側NOx計22やアンモニア計23の指示値、定期的なNOx、アンモニア、ダイオキシン類の手分析結果などによって、バグフィルタ装置12Bを通過した後の排ガスを分析する。この分析結果に基づいて、触媒プレコートろ布51の劣化状況を判断する。そして、触媒プレコートろ布51が劣化していると判断した場合には、バグフィルタ装置12Bに装備される、高圧エアを用いた図示されない逆洗装置により、触媒プレコートろ布51におけるろ布上に付着している古い触媒粉末を払い落とし、その後、触媒粉末供給装置52によってダクト17内に触媒粉末を供給することでバグフィルタ装置12Bの上流側に新しい触媒粉末を吹き込むことにより、古い触媒粉末が払い落とされた後のろ布にその新しい触媒粉末を付着させて触媒プレコートろ布51を再生する。
【0045】
こうして、触媒プレコートろ布51の再生が必要な時期を正確に判定して再生必要時期まで触媒プレコートろ布51を有効に使用し、たとえ触媒機能が劣化してもろ布自体を交換せずに触媒粉末のみの交換によって触媒機能を回復させるようにしているので、ランニングコストを低く抑えることができる。
【0046】
なお、触媒プレコートろ布51がダイオキシン類のみを分解除去するものである場合、触媒プレコートろ布51を通過する排ガス量の積算値に基づいてその触媒プレコートろ布51におけるろ布上に付着している触媒粉末の寿命を予測し、予測した寿命に達したときに、上記と同様にして、触媒プレコートろ布51を再生するようにしてもよい。この場合でも、ダイオキシン類のみを分解除去する触媒プレコートろ布51を触媒粉末が寿命に達するまで有効に使用することができ、しかも触媒粉末が寿命に達してもろ布自体は交換する必要がなく、触媒粉末のみの交換によって触媒機能を回復させることができるので、ランニングコストを低く抑えることができる。
【0047】
以上、本発明の排ガス処理設備および触媒担持ろ布の交換時期判定方法並びに触媒プレコートろ布の再生方法について、複数の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、各実施形態に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の排ガス処理設備および触媒担持ろ布の交換時期判定方法並びに触媒プレコートろ布の再生方法は、触媒機能付ろ布の触媒機能の劣化や寿命の低下を抑えることができるとともに、ろ過速度の向上を図ることができるという特性を有していることから、例えばごみ焼却施設や発電所、各種工業炉等において発生する排ガスの無害化処理の用途に好適に用いることができ、産業上の利用可能性が大である。
【符号の説明】
【0049】
1 ごみ焼却施設
2 焼却炉
3 ボイラ
4 エコノマイザ
5A,5B 排ガス処理設備
11 前段集塵装置
12A,12B バグフィルタ装置
21 上流側NOx計
22 下流側NOx計
31 触媒担持ろ布
41 アンモニア供給手段
42 アンモニア供給量制御手段
51 触媒プレコートろ布

図1
図2
図3