特許第6576354号(P6576354)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6576354ボード本体の製造のためのシステムと方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576354
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】ボード本体の製造のためのシステムと方法
(51)【国際特許分類】
   A63C 17/01 20060101AFI20190909BHJP
   A63C 5/03 20060101ALI20190909BHJP
   A63C 5/12 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   A63C17/01
   A63C5/03
   A63C5/12 A
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-548237(P2016-548237)
(86)(22)【出願日】2015年1月22日
(65)【公表番号】特表2017-506093(P2017-506093A)
(43)【公表日】2017年3月2日
(86)【国際出願番号】SE2015050059
(87)【国際公開番号】WO2015112078
(87)【国際公開日】20150730
【審査請求日】2018年1月17日
(31)【優先権主張番号】1450063-1
(32)【優先日】2014年1月23日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】516219484
【氏名又は名称】パフォーマンス エスケー8 ホールディング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202577
【弁理士】
【氏名又は名称】林 浩
(72)【発明者】
【氏名】コロン ベケット
【審査官】 松下 公一
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第10116575(DE,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02095922(EP,A2)
【文献】 特表2002−529211(JP,A)
【文献】 特表2012−501017(JP,A)
【文献】 特開2009−265023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63C 17/00 − A63C 17/28
A63C 5/00 − A63C 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理ロボット(50)によって不定形状の実質的に矩形の三次元に窪んだ形状を有するブランク(20)を荷積領域(40)から収集(100)する工程と、
前記ブランク(20)をスキャン領域(46)へ移動(200)する工程と、
視覚システム(47)によって前記ブランク(20)の実質的に矩形の三次元に窪んだ形状を三次元でスキャン(300)し、前記ブランク(20)の仮想画像を主記憶装置へ保存する工程と、
前記ブランク(20)の前記仮想画像に基づいて、前記ブランク(20)をボード本体(10)へ切削加工するための三次元切削経路を計算(400)する工程と、
前記処理ロボット(50)によって前記ブランク(20)を機械加工領域(48)へ移動(500)する工程と、
切削機械加工作業を行うように構成されたマシニングロボット(70)によって前記ブランク(20)を前記ボード本体(10)へ切削加工(600)する工程と、
を含む、不定形状の実質的に矩形の三次元に窪んだ形状を有するブランク(20)からスケートボードのようなボード本体(10)を製造する方法。
【請求項2】
前記マシニングロボット(70)によって、嵌合部材(14)を収容するように調整された凹部(12)を、本体の前部及び/又は後部において前記ボード本体(10)の中へ、それぞれ、切削加工(600)する工程、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記仮想画像を用いて前記ブランク(20)の表面法線を特定(700)する工程と、
印刷ロボット(60)の印刷ヘッドを前記特定された表面法線に基づいて配置し、それにより、印刷している間は、前記印刷ヘッドを前記ブランク(20)の表面に平行に移動させることにより、前記印刷ロボット(60)によって、前記ブランク(20)の上に画像を印刷(800)する工程と、
を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記視覚システム(47)によって前記ボード本体(10)の形状を三次元でスキャン(900)し、前記ボード本体(10)の仮想画像を主記憶装置に保存する工程と、
前記仮想画像を用いて前記ボード本体(10)の表面法線を特定(700)する工程と、
印刷ロボット(60)の印刷ヘッドを前記特定された表面法線に基づいて配置し、それによって、印刷している間は、前記印刷ヘッドを前記ボード本体(10)の表面に平行に移動させることにより、前記印刷ロボット(60)によって、前記ボード本体(10)の上に画像を印刷(800)する工程と、
を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記ブランクに独自の識別印を刻印(150)すること、
を更に含む、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
荷積領域(40)と、処理ロボット(50)と、スキャン領域(46)と、視覚システム(47)と、機械加工領域(48)と、切削機械加工作業を行うように構成されたマシニングロボット(70)を含み、
前記処理ロボット(50)によって不定形状の実質的に矩形の三次元に窪んだ形状を有するブランク(20)を荷積領域(40)から収集し、
前記ブランクをスキャン領域(46)に移動し、
前記視覚システム(47)によって、前記ブランク(20)の実質的に矩形の三次元に窪んだ形状を三次元でスキャンして、前記ブランク(20)の仮想画像を主記憶装置に保存し、
前記ブランク(20)の前記仮想画像に基づいて前記ブランク(20)をボード本体(10)に切削加工するための三次元の切削経路を計算し、
前記処理ロボット(50)によって前記ブランク(20)を前記機械加工領域(48)に移動し、そして、
前記マシニングロボット(70)によって前記ブランク(20)を前記ボード本体(10)に切削加工する、
ように構成された、不定形状の実質的に矩形の三次元に窪んだ形状を有するブランク(20)からスケートボードのようなボード本体(10)を製造するためのシステム。
【請求項7】
前記マシニングロボット(70)によって、嵌合部材(14)を収容するように調整された凹部(12)を、本体の前部及び/又は後部において前記ボード本体(10)の中へ、それぞれ、切削加工する、
ように更に構成された請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
印刷ロボット(60)を更に含み、
前記仮想画像を用いて前記ブランク(20)の表面法線を特定し、
前記印刷ロボット(60)の印刷ヘッドを前記特定した表面法線に基づいて配置させ、それによって、印刷しているときは、前記印刷ヘッドを前記ブランク(20)の表面に平行に移動させることにより、前記印刷ロボット(60)によって、前記ブランク(20)の上に画像を印刷する、
ように更に構成された請求項6又は請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
印刷ロボット(60)を更に含み、
前記視覚システム(47)によって、前記ボード本体(10)の形状を三次元でスキャンし、前記ボード本体(10)の仮想画像を主記憶装置に保存し、
前記仮想画像を用いて前記ボード本体(10)の表面法線を特定し、
前記印刷ロボット(60)の印刷ヘッドを前記特定された表面法線に基づいて配置し、それにより、印刷しているときは、前記印刷ヘッドを前記ボード本体(10)の表面に平行に移動させ、前記印刷ロボット(60)によって、前記ボード本体(10)の上に画像を印刷する、
ように更に構成された請求項6又は請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記処理ロボット(50)の上に配置されるレーザー発振器を更に含み、前記ブランクに独自の識別印を刻印する、
ように構成された請求項6〜請求項9のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不定形状のブランクからボード本体を製造するためのシステムと方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スケートボード、ウェークボード、スノーボード、スキムボード、スノースケート、サーフボード等のような様々なタイプのボード本体を製造するときは、垂直に積層されたコア又は交差して積層されたベニヤの形態の木材から始めるが、これらの木材は圧力がかけられ実質的に矩形の三次元に窪んだ形状に形成される。この形状は、切断前のブランク又は以後、ブランクと呼ぶ。ブランクは、木製素材で製造され、複数のブランクが同じ型の中で同時に圧力がかけられることもあることから、ブランクの形状は、ブランクが型のどの位置にあるかによって大きく依存するであろう。更には、ブランクの形状は、圧力をかけた後に、温度及び湿度といった周辺の条件によって変化する可能性がある。ボード本体を製造するとき、始めの材料は不定形状を有するので、形状の変化は1つの難点であろう。
【0003】
スケートボードを1つの例にとると、スケートボードを製造するのに用いられる材料は柔らかいメイプル又はその他の木材であって、それらは上述のように温度と湿度の影響を受けるであろう。このことは、スケートボードを製造しようとしているそれぞれのブランクは、独特の又は不定形の形状を有するであろうということを意味する。したがって、今日のスケートボードはハンドメイドであり、ブランクの変化が考慮されている。しかしながら、それでもハンドメイドのスケートボードは、必ずしも精度についての高い要求を満足する訳ではない。
【0004】
スケートボードに関して、最近の2、3年間で、後部及び前部端に嵌合部材を備えたスケートボードも市場に投入された。そのような嵌合部材は、嵌合部材の切削加工に非常に高い製造精度が要求されることから、ボードの製造を複雑にする。
【0005】
首部及び尾部に嵌合部材やこれに類するものを装備したスケートボードを製造するためには、スケートボードの首部及び尾部に凹部が設けられ、嵌合部材をスケートボードの上に搭載したときに、嵌合部材がスケートボードのその他の踏面と面一になるようにされる。嵌合部材の中に嵌めこまれる要素は、スケートボードの他の部分に比べてより小さい機械的ダンピング容量及びより高い弾性係数を有する材料で製作される。そのようなスケートボードは、特許文献1に詳細に記載されている。嵌合部材は、交換可能であり、また摩耗したときには交換してもよい。このため、嵌合部材はスケートボードの機能寿命を延長する。スケートボードの特性を劣化させないためには、スケートボードの本体またはブランク全部を交換する代わりに、嵌合部材を交換すれば足りる。スケートボードの類似の特許は、特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許EP1156858B1号
【特許文献2】米国特許US3481619号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
嵌合部材の使用は、スキムボードとスケートボードの寿命を明らかに変えるのみならず、最新のスケートボーディングの妙技の中でも必須の演技、すなわちオーリーを実演するとき、より予知し易いポップによって、スケートボードに改良された性能を与えた。しかしながら、従来の、嵌合部材の無いスケートボードの製造に比べて、これらの新しいスケートボードの製造はより複雑である。この理由は、嵌合部材を嵌合する凹部は、高い精度の切削加工を要するであろう、とういうことによる。
【0008】
このため、スケートボード、ウェークボード、スノーボード、スキムボード、スノースケート、等のような様々なタイプのボードを高い精度で、また高い効率で製造するための方法、そしてまたシステムに対する要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
目的は本発明の実施形態によって、製作精度と効率を高めることが可能となる方法とシステムを提供することである。
【0010】
本発明の第1実施形態によると、スケートボードのようなボード本体を不定形の形状を有するブランクから製造する方法によって、目的が達せられる可能性がある。前記方法は、処理ロボットによる、荷積領域からの不定形状を有するブランクの収集と、ブランクのスキャン領域への移動と、視覚システムによるブランク形状の三次元でのスキャン及び前記ブランクの仮想画像の主記憶装置への保存と、前記ブランクの仮想画像に基づいて前記ブランクを前記ボード本体に切削加工するための三次元切削経路の計算と、処理ロボットによる前記ブランクの機械加工領域への移動及びマシニングロボットによる前記ブランクのボード本体への切削加工と、を含む。
【0011】
本発明の好ましい実施形態において前記切削工程は、マシニングロボットによって、ボード本体の前部及び/又は後部の前記本体に、凹部を切削加工する切削加工工程を更に含む。それぞれの凹部は、嵌合部材を収納するよう調整される。
【0012】
本発明のもう1つの好ましい実施形態において、ボード本体には独特の画像も印刷される。この目的を達成するため、仮想画像を用いてブランクの表面法線を特定する工程と、特定した表面法線に基づいて、印刷ロボットの印刷ヘッドを配置することによって、印刷している間は、前記印刷ヘッドをブランクの表面に平行に運搬し、印刷ロボットによってブランクへ画像を印刷する工程、を更に含む方法が提供される。この印刷工程は、通常の実施形態にしたがって、切削加工工程の前に行ってよい。
【0013】
更にもう1つの本発明の好ましい実施形態において、印刷は切削加工作業の後に行われる。そのような場合、前記方法は、視覚システムによるボード本体の形状の三次元でのスキャン及び前記ボード本体の仮想画像の主記憶装置への保存と、仮想画像を使ったボード本体の表面法線の特定と、前記特定した表面法線を基に印刷ロボットの印刷ヘッドを配置することによって、印刷している間は、前記印刷ヘッドをボード本体の表面に平行に運搬し、印刷ロボットによってボード本体へ画像を印刷すること、を更に含む。
【0014】
更にもう1つの好ましい実施形態において、方法は、ブランクに独自の識別印を刻印することを更に含む。
【0015】
本発明のもう1つの実施形態によると、不定形状を有するブランクからスケートボードのようなボード本体を製造するためのシステムによって、目的が達成される可能性がある。システムは、荷積領域と、処理ロボットと、スキャン領域と、視覚システムと、機械加工領域及びマシニングロボットとを含み、上記の第1実施形態による方法を実行するように構成される。
【0016】
好ましい実施形態において、システムは画像をブランクやボード本体に印刷する印刷ロボットを更に含んでもよい。ブランクが切削加工された後に印刷ロボットが画像を印刷すると、システムは、印刷ロボットのために新たな仮想画像を作るため、ボード本体の新たな形状の、新たなスキャンを実行するように、更に構成されている。
【0017】
システムは、処理ロボット上にレーザー発振器を更に配置してブランクに独特な識別印を刻印するように構成されてもよい。
【0018】
切削加工作業の前にブランクの正確な形状を決定することによって、ボード本体の製造精度及び効率の両方を向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本開示の実施形態のこれらの及びその他の態様、特徴及び利点は、種々の実施形態についての以下の明細書、以下の添付図面の参照から明らかになり、解明されるであろう。
【0020】
図1図1は、様々なタイプのスケートボードの模式図である。
図2図2は、スケートボードのためのブランクの斜視図である。
図3】図は、キックテールコンケーブスケートボードに典型的な形状の斜視図である。
図4】図は、スケートボード用嵌合部材の背面図及びスケートボードの部分図である。
図5】図は、スケートボードを製造するためのシステムの模式図である。
図6】図は、本発明の方法と、点線で明示されたオプションの工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の明細書においては、例示的な実施形態が十分理解されるように、説明の目的及び限定しない方針で、特定の構成部品、要素、技術、等の特定の詳細が記載されている。しかしながら、例示的な実施形態は、これらの特定の詳細説明とは外れた他のやり方で実施してもよいということは、当業者には明らかであろう。他の場合に周知の方法及び要素についての詳細な詳述は、実施形態の記載を不明瞭にしないように省略されている。本明細書で使用されている用語は、実施形態の例を記載する目的のためであり、ここで開示した実施形態を限定する意図はない。
【0022】
本発明によるボード本体の製造のための方法及びシステムをより詳細に説明する前に、様々なタイプのスケートボードを短く概観する。本発明を説明するために様々なタイプのスケートボードが使用されるであろう。しかしながら、スケートボード、ウェークボード、スノーボード、スキムボード、スノースケート、サーフボード等の、どのようなタイプのボード本体も本発明による方法及びシステムによって製造してよいことを理解されたい。実施例に記載したスケートボードのタイプ、すなわち、スケートボードの部及び/又は後部に凹部を有するスケートボードは、製造するのが最も複雑であり、したがって、全てのタイプのボードの実例となると考えられる。
【0023】
そこで、図1には、本発明の方法とシステムで製作することが可能な様々なタイプのスケートボードを示す。参照番号2はストリートスケートボードを示し、参照番号4はパークスケートボード又はトランジッションスケートボード、参照番号6はロングボード及び参照番号8はドロップスルーロングボードを示す。スケートボードの寸法は、幅が15から30cmで長さが70から150cmの間で変化してよい。本発明は、基本形状が図に示される、キックテールコンケーブスケートボード10に特に有用である。このことは、スケートボードは、上方に傾斜した端部と凹んだ踏部を有していることを意味する。図において、スケートボード10は嵌合部材14も備えている。上述のように、背景において、嵌合部材14はオーリーを実演するときにスケートボードの前部及び後部を保護するために使用される。図にスケートボードの後部端の拡大図を示す。嵌合部材14は取り外された状態で表されており、嵌合部材を挿入する対応する凹部12も明確に表されている。そのような凹部12は、嵌合部材の形状に応じて、スケートボードの上部及び下部側の両方に設けられてもよい。そのような場合、嵌合部材は、数種類の嵌合部材を開示している特許文献1に示されているような、よりU型形状になるであろう。嵌合部材を取外し可能な様式でスケートボードの上に固定するために、凹部12には穴16が設けられている。この穴16を用いて、嵌合部材をスケートボードの凹部12に螺入してもよい。
【0024】
ここで図を参照して、本発明によるシステムについて詳述する。システムは、荷積領域40と、処理ロボット50と、第1印刷室43と、第2印刷室45と、2つの印刷ロボット60と、視覚システム47と、スキャン領域46と、機械加工領域48と、マシニングロボット70と、工具保管領域80、そして完成品領域44と、を含む。システムの中の全てのロボットはコンピューターによって制御され、本発明による方法手順を実行するために多くの異なった方法でプログラミングをすることが可能であることを理解されたい。本開示に記載された事項に照らしてそのようなプログラミングをすることは、当業者の能力範囲内であると考えられる。
【0025】
システムに要求される生産能力によっては、1又は2以上の荷積領域40があってよい。荷積領域40においては、ブランク20を載せたパレットが製造室に搬入される。製造室の主な領域は点線で表される。パレットは、様々なタイプのスケートボードを生産するための様々なタイプのブランクを積載した8つのパレットの搬送容量がある円形コンベアに配置してもよい。円形コンベアは、ブランク20、すなわちスケートボードデッキを製造しようとしているブランク20のタイプの正しいパレットが到着するまで、円を描いて回転するであろう。
【0026】
処理ロボット50は6軸ロボットでよく、ブランク20を製造室の中の異なる領域、すなわち、荷積領域、第1及び第2印刷領域43及び45、スキャン領域46、機械加工領域48、及び完成品領域44の間を、行ったり来たり移動させるために用いられる。本発明の幾つかの実施形態においては、処理ロボット50は、次のスケートボード10を製造するために使用すべきブランクを識別するために、切断前のスケートボードブランクのパレットをスキャンするためのレーザー発振視覚システム47を備えてもよい。視覚システム47は、前記ブランクの三次元仮想画像を創るためにも使用してよい。ブランクの仮想画像は後に、ブランクの切断、印刷及び/又は切削加工に使用されるであろう。もう1つの実施形態において、視覚システム47は、代りにスキャン領域46に設置され、処理ロボット50は、ブランク20や可能ならばスケートボード本体10を、スキャン領域46に行ったり来たり運搬するのに用いられる。本発明に関しては、ブランク20は未加工の部品であり、スケートボード本体やボード本体はブランクに切削加工、穴あけ、表面粗みがき、仕上げ等の全ての機械加工工程が施された後のブランクである。
【0027】
第1及び第2印刷領域、それぞれ43及び45は、それぞれ、ブランク20又はスケートボード本体10を収容するための12の空間を有する2つの領域に、それぞれ分割してもよい。印刷領域43及び45は、以下に述べる印刷工程の間にブランク20やスケートボード本体10を受け取って把持するように調整された、取付け具42を備えている。印刷領域43及び45には、それぞれ印刷ロボット60が稼働している。
【0028】
マシニングロボット70も6軸ロボットであって、ブランク20に機械加工を施してスケートボード本体10にするために用いられる。機械加工は、機械加工領域48の中で行われる。マシニングロボット70は、穴あけ、切削加工、表面粗みがき、仕上げ等の様々な機械加工作業を行う様に形成されているので、工具保管領域80は、マシニングロボット70の届く範囲に設けられる。工具保管領域80は、様々な工具82〜88を保管する。
【0029】
上述のように、システムは、完成したスケートボード本体10を最終消費者へ更に出荷する前に一時保管する完成品領域44も含む。このように、本発明のシステムが記載される。システムの様々な機能をより理解するために、スケートボード本体10を製造するための方法を図5と共に述べることにする。
【0030】
は、本発明の方法を示すフローチャートである。選択的な工程は点線で明示した。本発明は、不定形状を有するブランクからボード本体10を製造することに向けられていることがわかる。好ましい実施形態においては、ボード本体は、前記本体の前部及び/又は後部に凹部12を有するスケートボード本体でよい。それぞれの凹部12は、上述のような嵌合部材14を収容するように調整される。
【0031】
前記方法は、工程100から始まる。工程100では、処理ロボット50が荷積領域40からブランク20を収集する。上述のように、それぞれのブランクは、独特で独自の形状を有しているので、これらはブランク20をスケートボード本体に適切に機械加工するために、システムによって認知されなくてはならない。上述のように、処理ロボット50は、次に生産されるボード本体10に相当するブランクを識別するために、視覚システム47を備えてもよい。処理ロボット50が視覚システム47を備えていない場合には、処理ロボット50は、その代り、工程200において、ブランク20をスキャン領域46に移動させ、このスキャン領域46に設置されている視覚システム47を使用してもよい。工程300においては、ブランク20の三次元仮想画像を創るために、ブランク20の形状は視覚システム47を用いて三次元でスキャンされる。仮想画像がどのように創られたかということには無関係に、それは、処理ロボット50に配置された視覚システム47やスキャン領域46の視覚システム47によって行われ、画像は後で使用するために保存される。本発明に関連して、視覚システムが処理ロボット50上に備えられているのであれば、ブランクがスキャンされるスキャン領域46は、処理ロボット50を取り囲む領域でもよいことがわかる。
【0032】
荷積領域40からブランク20を収集後、ブランク20が第1又は第2印刷領域43及び45、スキャン領域46又は機械加工領域48の何れかの取付け具42に確実に固定されたときは、処理ロボット50は、工程150において、ブランク20に独自の識別印及び他の情報を刻印する。そのような情報は、例えば、スケートボードを発注した顧客名、積層構造、形状番号、表面番号、長さ、幅、ホイールベース、首部長さ、尾部長さ、首部TIP番号、尾部TIP番号、製造日付及び時間でよい。工程150はオプションの工程である。
【0033】
三次元仮想画像を保存した後は、このデータは、工程400において、ブランク20をスケートボード本体に切削加工するための三次元切削経路の計算に使用されるであろう。工程500において、処理ロボット50は、ブランク20を機械加工領域48に移動し、機械加工領域48において、マシニングロボット70は、工程600で、ブランク20を、前記少なくとも1つの凹部12を含むボード本体に切削加工する。マシニングロボット70が工具82〜88を変更したり、摩耗した工具を交換したりする必要が有る場合には、マシニングロボット70は、工具保管領域80に移動して工具を交換する。したがって、工程100〜600を実施することによって、高い精度と効率で、スケートボード本体10をブランク20から製造することが可能である。これは、ブランクのそれぞれの独自の形状が認識されて、スケートボード本体を生産するときにそれが考慮されるという事実による。更に、本発明のシステムを使用することによって、エンドユーザ、すなわち、すべてのボードのライダーは、自分のボードを発注するときに異なったパラメータを選択することでこれらをボード本体にカスタマイズすることを可能にする、非常に柔軟な製造システムを創ることも可能である。このすべては、それぞれのボードの生産のためにマシニングロボット70の再プログラミングをすることなしに行ってよい。マシニングロボット70は、視覚システム47からの入力、すなわち、ブランク20の形状の使用が可能な同じコンピューター支援製造(CAM)のファイルと、マシニングロボット70の三次元切削経路を計算する際にユーザが選択したパラメータとを使用してよい。以下に説明するが、本発明の好ましい実施形態によるとボード本体に個別の画像を印刷することも可能である。
【0034】
上述のように、システムは、ボード本体に画像を印刷するためのオプションも備えてよい。印刷は、第1又は第2印刷領域、43と45の何れかにおいて行われる。この例示的実施形態において2つの印刷領域が使用される理由は、製造容量を増加するであろうということによる。1つの印刷領域が印刷ロボット60によるブランク又はボード本体の印刷で占有されているとき、他の印刷領域には荷積されていない可能性があり、その場合に処理ロボット50によって新しい素材を荷積できる可能性がある。システムの所要容量によって、1又は2以上の印刷領域を使用することも勿論可能である。印刷作業は、ブランク20が機械加工される前か又はブランクがボード本体に機械加工された後の何れかにおいて実施してよい。前者の場合、印刷作業は、工程700において、保存されている仮想画像を用いてブランク20の表面法線を特定することから始める。そして、その後、工程800において、印刷ロボット60によってブランクに画像を印刷する。これは、特定された表面法線に基づいて、印刷ロボット60の印刷ヘッドを配置し、前記印刷ヘッドを、画像印刷の印刷をしている間に、ブランク20の表面に平行に移動させることによって行われる。
【0035】
画像がボード本体に印刷してある場合、すなわち、ブランク20がボード本体に機械加工された後は、保存された、ブランクの仮想画像はもう使用することができないので、更なる工程が必要である。保存されている仮想画像はブランクに関するものであり、ボード本体には関係しない。したがって、工程900において、視覚システム47を用いてスケートボード本体10の形状を三次元でスキャンを行い、前記ボード本体10の仮想画像は、主記憶装置に保存される。その後、ブランク20の印刷に対して上記と同じ工程が実施される。それによって、工程700において、新たな仮想画像を用いてボード本体の表面法線が特定され、その後、ブランクに対するものに相当する方法で画像が印刷される。
【0036】
以上により、様々な実施形態が図解と明細書の目的に対して十分記述されたと考える。しかしながら、前述の明細書は、開示されたそのものの形態が実施形態の全てであることを意図するものではなく又これに限定する意図もない。このため、修正と変形は、上述の教示に照らして可能であるか又は提供された実施形態に対する様々な代替の実施から得られてもよい。ここで論述した例は、原則並びに様々な例示的実施形態の性質を説明し、当業者が、その実際の適用に際し、特定の意図する使用に適したような様々な方法並びに様々な修正により、例示的な実施形態を利用できるようにするために、選択され記載されたものである。ここで記述した実施形態の特徴は、方法、装置、モジュール、システム及びコンピュータープログラム製品のすべての可能な組合せで結合してよい。ここに示した例示的実施形態をどれでも、互いに一緒に又はすべての組合せで使用してもよいことを認識していただきたい。
【0037】
また、文言「含む」は、必ずしも他の要素又はリストされた工程以外の工程を除外するものではなく、要素の前の「ひとつの」はそのような要素の複数の存在を除外しないことに注意していただきたい。更に、何れの参照符号も例示的実施形態の範囲を制限しない。例示的実施形態は、少なくとも一部はハードウエアとソフトウエアの両方の手段を用いてよく、幾つかの「手段」、「ユニット」又は「装置」は、ハードウエアの同じ項目によって表されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6