特許第6576368号(P6576368)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6576368-ホップ抽出液の製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576368
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】ホップ抽出液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20190909BHJP
   A61K 36/185 20060101ALN20190909BHJP
   A61P 1/02 20060101ALN20190909BHJP
   A61P 3/06 20060101ALN20190909BHJP
   A61P 31/12 20060101ALN20190909BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20190909BHJP
   A61P 29/00 20060101ALN20190909BHJP
   A61P 9/00 20060101ALN20190909BHJP
   A61P 3/04 20060101ALN20190909BHJP
   A61P 19/06 20060101ALN20190909BHJP
   A61P 37/08 20060101ALN20190909BHJP
   A61P 1/00 20060101ALN20190909BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALN20190909BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALN20190909BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALN20190909BHJP
【FI】
   A23L33/105
   !A61K36/185
   !A61P1/02
   !A61P3/06
   !A61P31/12
   !A61P43/00 111
   !A61P29/00
   !A61P9/00
   !A61P3/04
   !A61P19/06
   !A61P37/08
   !A61P1/00
   !A61K8/9789
   !A61Q19/02
   !A61Q19/00
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-571514(P2016-571514)
(86)(22)【出願日】2015年1月26日
(86)【国際出願番号】JP2015051988
(87)【国際公開番号】WO2016120962
(87)【国際公開日】20160804
【審査請求日】2017年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】有田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】日高 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 勝司
【審査官】 上條 肇
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/133758(WO,A1)
【文献】 特表2004−537604(JP,A)
【文献】 特開2001−321152(JP,A)
【文献】 特開2007−230915(JP,A)
【文献】 特開平09−000227(JP,A)
【文献】 特開平09−002917(JP,A)
【文献】 特開2006−151945(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/046402(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/052898(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/105
A23L 5/40 − 5/49
C12C 1/00 − 13/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
日経テレコン
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
50℃以上のホップ含有水をろ過して、ホップ抽出液を得る工程を含む、ホップ抽出液の製造方法であって、ホップ含有水が95〜100℃で加熱して抽出処理されたものであり、ろ過がフィルタープレスを用いて行われる加圧ろ過であり、ホップ抽出液がポリフェノールを1000〜5000ppm含有する、製造方法。
【請求項2】
加熱時間が10〜90分間である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
ホップ含有水における水とホップ固形分との質量比(水/ホップ固形分)が500/66.6〜500/22.2である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
ホップ抽出液のBCOJビール分析法 8.15 苦味価の項に記載の方法に従って測定される苦味価が40〜600BUsである、請求項1〜いずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
用いるフィルターのメッシュ径が30〜400μmである、請求項1〜いずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
ホップ含有水の温度が60〜100℃である、請求項1〜いずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
ホップ含有水を50℃以上になるまで加熱して、次いで加圧ろ過を行う、請求項1〜いずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
ホップ含有水のろ過残渣の含水率が85重量%以下である、請求項1〜いずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
ホップ含有水の温度が80〜100℃である、請求項1〜いずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホップ抽出液の製造方法に関する。更に詳しくは、飲食品の原料に好適に用いられるホップ抽出液の製造方法、該製造方法により得られるホップ抽出液、及び該ホップ抽出液を用いた飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
ホップは、例えば、ビールテイスト飲料に苦味を付与するだけでなく、その爽やかなホップ香やコクも付与する成分を含有する。具体的には、苦味はホップ中のα酸など、ホップ香はテルペン類など、コクはポリフェノールなど、それぞれ種々の成分から付与されている。よって、ホップの選別や処理を行うことで、ホップを原料として用いる飲食品の品質を調整することが可能となる。
【0003】
例えば、特許文献1では、予め乾燥されプレスされたホップを、少なくとも2個のスクリューをもつ蒸煮−押出器の中において、50質量%以下の量の水と一緒に連続的に通過させることで、120℃より低い温度においてホップの蒸煮と押出しを行うホップの事前異性化方法が開示されている。このような異性化方法をとることで、異性化の収率が向上し、良品質なビール製品を得ることができる。
【0004】
また、特許文献2では、食品加工工場によって生じる排水中の水系残留物を細菌により代謝させて、動物飼料への使用に適切な成分に変換するための方法が開示されている。残留物としては、ホップが例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−196260号公報
【特許文献2】特表2011−502485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、ホップ加工品としては、ホップを乾燥しただけの「乾燥毬花」、乾燥毬花を粉砕しペレット状にした「Type90ホップペレット」、乾燥毬花を凍結して粉砕し、分画したルプリン画分を濃縮してペレット状にした「Type45ホップペレット」、Type90ホップペレットから苦味成分をCO抽出した「ホップエキス」が挙げられる。更に、精製度の高い加工品としては、香気付与には、ホップペレットから香気成分をエタノール抽出した「オイルリッチエキス」、コクの付与には、ホップエキス製造時に排出される副産物「ポリフェノールリッチペレット」や該ポリフェノールリッチペレットからポリフェノール画分のみを濃縮した「ポリフェノールリッチエキス」等を用いることができる。
【0007】
しかしながら、従来の処理方法により得られたホップ処理物では、所望とする成分の含有量が未だ充分に満足できるものではない。また、「オイルリッチエキス」や「ポリフェノールリッチエキス」等のエキスタイプの処理物は、精製度の高い加工品であるものの、費用が高額で、飲食品への適用には課題があった。
【0008】
本発明の課題は、ポリフェノール含有量が多いホップ抽出液を簡便に得られる製造方法、該製造方法により得られるホップ抽出液、及び該ホップ抽出液を用いた飲食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者らは、前記課題を解決する為に検討を重ねた結果、ホップの抽出操作を行った後、残渣の除去処理を行ってホップ抽出液を調製する際に、残渣の除去処理に供する処理液の温度を50℃以上にしてろ過することで、得られるホップ抽出液のポリフェノール含有量を多くすることが可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、下記〔1〕〜〔3〕に関する。
〔1〕 50℃以上のホップ含有水をろ過して、ホップ抽出液を得る工程を含む、ホップ抽出液の製造方法。
〔2〕 前記〔1〕記載の製造方法によって製造されたホップ抽出液。
〔3〕 前記〔1〕記載の製造方法によって得られたホップ抽出液を含有する、飲食品。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法により得られるホップ抽出液は、ポリフェノール含有量が高いという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、ろ過時のホップ含有水の温度とろ液中のT−PP濃度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のホップ抽出液の製造方法は、50℃以上のホップ含有水をろ過する工程を含むことに特徴を有する。即ち、本発明は、ホップと水を混合したものから残渣を除去して抽出液を得る際に、残渣を含む混合液の温度が50℃以上のものをろ過することで、得られる抽出液のポリフェノール含有量が多くなることを本発明者らが初めて見出したことである。その詳細なる理由は不明なるも、ホップ中のポリフェノールを含む溶出成分の溶解度の影響が考えられ、50℃以上のホップ含有水ではポリフェノールがホップ含有水中に溶解し、残渣として濾過で除去されないものと考えられる。また、ポリフェノールの残渣への付着度合いによる影響も考えられ、50℃以上のホップ含有水ではポリフェノールが溶出して残渣に付着し難くなり、残渣ごと除去されにくくなったものと考えられる。なお、これらの推測が外れたところで本発明の権利範囲には影響を与えない。従来、ポリフェノールの収率を高めるには、ホップ含有水中にポリフェノールが多く抽出されるような抽出条件上の工夫を行っていたが、抽出後のろ過についてはあまり検討されていなかった。本発明ではろ過の際における温度制御という非常に簡便な手法で、ホップ含有水中のポリフェノール収率を高めることに成功した。一般的には、ろ過の効率はろ剤の仕様や、ろ剤にかかる圧力、ろ過助剤(ろ過を効率的におこなえるようにするためにろ剤と共に使うもの)の仕様によって調整していたが、ろ過に供する液(残渣を含む混合液)の温度に着目する知見は意外なものであり、本発明者らがこの知見を得るまで知られるものではなかった。なお、本明細書において、ポリフェノールとは、総ポリフェノール(T−PP)を意味し、ビール酒造組合国際技術委員会(BCOJ)が定める「BCOJビール分析法(2004年11月1日改訂版) 7.11 総ポリフェノール」に記載されている方法に従って測定することができる。
【0014】
本発明の製造方法は、50℃以上のホップ含有水をろ過する工程を含む。
【0015】
本発明におけるホップ含有水とは、ホップと水を原材料として含有するもののことを言う。即ち、本発明におけるホップ含有水とは、ホップと水を単に混合してホップ中の成分が溶出したものだけでなく、ホップと水を混合した後に何らかの処理を行ったものも含み、なかでも、ホップと水を混合後に加熱して抽出操作を行ったものが好ましい。
【0016】
本発明で用いられるホップとしては、その毬花(未受精の雌花が成熟したもの)全体そのまま又は粉砕したものを、あるいは、ポリフェノール成分を多く含有する苞部分を選別して用いることができる。また、ホップを乾燥しただけの「乾燥毬花」や乾燥毬花を粉砕しペレット状にした「Type90ホップペレット」、ホップ毬花の外側の花びら状の組織の部分であるホップ苞を乾燥させたものや、ホップ苞を粉砕しペレット状にしたもの等のホップ加工品を用いることもできる。なお、ホップの種類は同一であっても異なるものであってもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。その形状も特に限定されない。
【0017】
また、本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲内で、水以外に、他の溶媒を用いることができる。他の溶媒としては、水性溶媒であればよく、含水アルコール等を用いることができる。水を含めた全溶媒における水の含有量としては、飲食品への配合を考慮すると、99.5質量%以上が好ましく、99.8質量%以上がより好ましく、99.9質量%以上が更に好ましい。なお、本明細書において、水と他の溶媒を含む全溶媒のことを総じて、単に抽出溶媒と記載することもある。
【0018】
抽出溶媒のpHは、特に限定されないが、好ましくは4.5〜9.5であり、より好ましくは5.0〜8.5である。
【0019】
抽出に供される水とホップ(ホップ固形分)の質量比(水/ホップ固形分)としては、高濃度の液を効率よく回収する観点から、500/66.6〜500/22.2が好ましく、500/60〜500/30がより好ましく、500/55〜500/35が更に好ましい。なお、ここでのホップ固形分とは、添加前のホップ乾燥重量のことを意味する。
【0020】
抽出溶媒での処理温度は、ホップからポリフェノールを抽出できる温度であれば特に限定はないが、高収率の観点から、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。また、100℃以下が好ましく、99.5℃以下がより好ましく、99℃以下が更に好ましい。
【0021】
抽出溶媒での処理時間は、処理温度により異なるが、例えば、95〜100℃の処理温度の場合は、10〜90分間が好適であり、60〜90分間がより好適である。
【0022】
得られたホップ含有水は抽出残渣を取り除くためにろ過処理に供するが、ろ過処理に供する処理液の温度が50℃以上となるのであれば、抽出処理後直ぐにろ過処理に供してもよく、あるいは、冷却したものを液温度が50℃以上になるまで再度加熱してから供してもよい。
【0023】
ろ過の方法としては、公知の方法を特に限定なく用いることができ、ホップ含有水を残渣から高収率で回収する観点から、ホップ含有水を加圧しながらフィルターろ過する加圧ろ過が好ましい。本発明においては、圧力の大きさを確保しつつ、均一な加圧を行う観点から、例えば、フィルタープレス又はスクリュープレス等のろ過機を用いて行う加圧ろ過方法が好ましい。
【0024】
用いるフィルターは、液温が50℃以上のものをろ過できるものであれば特に限定はなく、そのメッシュ径は、固形分である残渣を確実に除去する観点から、30μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。また、400μm以下が好ましく、350μm以下がより好ましく、300μm以下が更に好ましい。
【0025】
また、フィルターを通過する処理液の流速は、ろ過機の種類やフィルター面積、処理液量等によって一概には設定されず、公知技術に従って適宜調整することができる。加圧ろ過機を用いる場合も、加える圧力は適宜設定することができる。
【0026】
ろ過に供されるホップ含有水の温度は50℃以上であるが、ポリフェノールを高収率で回収する観点から、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。また、100℃以下が好ましく、99℃以下がより好ましく、98℃以下が更に好ましい。本発明の好適な点は、ホップ含有水の温度を制御することで、得られるろ液中のポリフェノールの含有量を制御できるところにある。一般的にはろ過の収率はろ剤の仕様や、ろ剤にかかる圧力、ろ過助剤(ろ過を効率的におこなえるようにするためにろ剤共に使うもの)の仕様によって調整していたが、本発明では、ホップ含有水の温度を制御するだけで、残渣の除去という基本的なろ過の機能は満たしつつ、得られるろ液中のポリフェノールの含有量を制御できるので、ろ剤の仕様などのろ過処理の条件を改めて設定する必要がない。このため、ろ過の終了後、次のろ過を行う際に、ろ過設備の条件を再設定せずに済む。また、この結果、ポリフェノールを安定的に高収率でホップ抽出液中に回収することができる。なお、フィルタープレス又はスクリュープレス等のろ過機を用いる場合のホップ含有水の温度とは、ろ過機の設定温度のことを意味する。
【0027】
なお、ろ過処理後のろ液に対しては、公知の方法に従って、遠心分離、ろ過、限外ろ過の他、濃縮等の処理を行ってもよく、かかる処理後のろ液も本発明のホップ抽出液の一態様である。
【0028】
かくして、ホップ抽出液が得られる。得られたホップ抽出液は、ろ過処理を経て抽出残渣が除かれており、清澄な状態にありながらも、温度が高められた状態で処理されたものであるから、ポリフェノール含有量が高い。ホップ抽出液におけるポリフェノール濃度は、好ましくは1000ppm以上、より好ましくは1200ppm以上、更に好ましくは1500ppm以上である。また、好ましくは5000ppm以下、より好ましくは4700ppm以下、更に好ましくは4600ppm以下である。
【0029】
また、ホップ抽出液の苦味価は、ホップ抽出液を更に加工して苦味剤として用いる観点から、40BUs以上が好ましく、60BUs以上がより好ましく、80BUs以上が更に好ましい。また、600BUs以下が好ましく、575BUs以下がより好ましく、550BUs以下が更に好ましい。なお、本明細書において、苦味価とは、BCOJビール分析法 8.15 苦味価の項に記載の方法に従って測定される苦味価のことを意味する。
【0030】
なお、ホップ抽出液を取得後のホップ含有水のろ過残渣は、ホップ抽出液を残渣から高収率で回収し、かつろ過残渣を低コストで乾燥させる観点から、含水率が好ましくは85重量%以下、より好ましくは83重量%以下、更に好ましくは80重量%以下である。下限は特に設定されず、例えば、50重量%以上である。なお、ろ過残渣の含水率は、残渣中の水を蒸発させて、蒸発前後の固体重量を測定する事で算出することができる。
【0031】
本発明は、また、本発明の製造方法により得られたホップ抽出液を提供する。かかるホップ抽出液は、ポリフェノール含有量が高いことから、例えば、医薬組成物、飲食品、化粧料、又は飼料の原材料として好適に用いることが出来る。
【0032】
医薬組成物としては、例えば、ヒトをはじめとする哺乳動物における疾患の治療剤又は予防剤が挙げられる。具体的には、本発明のホップ抽出液は、蛋白質毒素中和剤、エナメル質脱灰抑制素材、体脂肪調整剤、歯根膜保護剤、ウィルス不活化剤、胸腺間質性リンパ球新生因子過剰発現抑制剤、共生再生剤、抗炎症剤の原材料として、また、炎症性腸疾患、冠動脈疾患、肥満症、高尿酸血症、アレルギー疾患、消化器疾患の治療剤又は予防剤の原材料として好適に使用され得る。医薬組成物における本発明のホップ抽出液の含有量としては、特に限定されないが、例えば、ポリフェノール量が好ましくは1〜1000ppm、より好ましくは5〜500ppm、更に好ましくは10〜300ppmとなる程度に本発明のホップ抽出液を配合することができる。
【0033】
飲食品としては、例えば、ヒトをはじめとする哺乳動物におけるポリフェノール量の低下に起因する状態の改善用又は予防用の飲食品が挙げられる。具体的には、本発明のホップ抽出液は、炎症性腸疾患、冠動脈疾患、肥満、高尿酸血症、アレルギー疾患、消化器疾患等の症状に対する改善又は予防のための飲食品の原材料として好適に使用され得る。飲食品における本発明のホップ抽出液の含有量としては、特に限定されないが、例えば、ポリフェノール量が好ましくは1〜1000ppm、より好ましくは5〜500ppm、更に好ましくは10〜300ppmとなる程度に本発明のホップ抽出液を配合することができる。
【0034】
かかる飲食品としては、具体的には、錠剤、顆粒剤、液剤、カプセル剤、丸剤、粉末剤、キャンデー、ドロップ、トローチ、ガム、粉末ジュース、ドリンク剤、調味料、加工食品等の形態等を挙げることができる。これらは、サプリメントとして好適に用いることができる。また、ポリフェノール含有量が高くなることから、得られる飲食品に例えばコク味を付与できるなど、呈味を調整することが可能になるという優れた効果が奏される。
【0035】
化粧料としては、例えば、美白化粧料、皮膚障害を予防及び/又は治療するための美容用経口剤等の化粧料が挙げられる。化粧料における本発明のホップ抽出液の含有量としては、特に限定されないが、例えば、ポリフェノール量が好ましくは1〜1000ppm、より好ましくは5〜500ppm、更に好ましくは10〜300ppmとなる程度に本発明のホップ抽出液を配合することができる。
【0036】
飼料としては、例えば、ウシ、ブタ、ニワトリ、ヒツジ、ウマ等の家畜や、イヌ、ネコ等のペット動物におけるポリフェノール量の低下に起因する状態の改善用又は予防用の飼料が挙げられる。具体的には、本発明のホップ抽出液は、高コレステロール血症、高トリグリセリド症、耐糖能異常、高血圧、肥満等の様々な疾患の改善用又は予防用の飼料の原材料としても好適に用いられ得る。飼料における本発明のホップ抽出液の含有量としては、特に限定されないが、例えば、ポリフェノール量が好ましくは1〜1000ppm、より好ましくは5〜500ppm、更に好ましくは10〜300ppmとなる程度に本発明のホップ抽出液を配合することができる。
【0037】
前記した医薬組成物、飲食品、化粧料、及び飼料は、前記本発明のホップ抽出液を配合するのであれば、その他に製剤分野や食品分野等において通常使用される担体、基剤、及び/又は添加剤等を本発明の目的を達成する範囲内で適宜配合して調製することができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0039】
実施例(水準A、B、C)、比較例(水準D、E)
ペレットホップ(チェコ産)70gを、98℃に加熱した温水700gに加えた後、80分間加熱し、ホップ含有水を得た。加熱終了時の水温は99.8℃であった。
【0040】
得られたホップ含有水を、水準Aはそのままメッシュスクリーン(スクリーン篩目開き:250μm、60メッシュ)でろ過した。水準B〜Eはそれぞれ下記温度になるまで冷却後、上記と同様に処理した。その後、メッシュ上に残存する抽出液を含有したホップ粕を、スパチュラの底部を手で加圧しながらメッシュ上に押し付け、メッシュ通過液を回収した。メッシュスクリーンにてろ過する際の液温は、それぞれ以下のようであった。水準A(94.8℃)、水準B(70.5℃)、水準C(51.2℃)、水準D(32.1℃)、水準E(12.7℃)。
【0041】
なお、液温は、佐藤計量器製作所製 デジタル温度計SK-250WP II−Nを用いて測定した。
【0042】
メッシュスクリーンでろ過後、遠心分離を行い、水準A〜Eのサンプルを得た。
【0043】
水準A〜Eのサンプルについて、ポリフェノール含有量を測定した。ポリフェノール含有量の測定は、一般に知られているいずれの方法によっても行うことができるが、ビール酒造組合国際技術委員会(BCOJ)が定める「BCOJビール分析法(2004年11月1日改訂版) 7.11 総ポリフェノール」に従い測定した。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1より、水準A(4,580ppm)、水準B(3,708ppm)、水準C(3,383ppm)、水準D(2,863ppm)、水準E(2,518ppm)となり、ろ過時の温度が50℃以上である、水準A、B、Cは高ポリフェノール含有量となっていることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の製造方法により得られるホップ抽出液は、ポリフェノール濃度が高いものであり、例えば、蛋白質毒素中和、エナメル質脱灰抑制、体脂肪調整、歯根膜保護、ウィルス不活化、胸腺間質性リンパ球新生因子過剰発現抑制、共生再生、抗炎症等の治療及び/又は改善用組成物の原材料として好適に用いられる。
図1