(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ゲート部における通過可否の判定動作に、前記手荷物検査部における検査結果を反映して連動させる連動部をさらに備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載のセキュリティシステム。
前記連動部は、前記手荷物検査部における検査結果で異常が確認された場合に、前記ゲート部において通過不可とさせる信号を送信する、請求項6及び7のいずれか一項に記載のセキュリティシステム。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、上記背景技術の問題に鑑みてなされたものであり、コンパクトな構成でありつつメンテナンス性に優れたセキュリティシステム及び手荷物検査装置を提供することを目的とする。
【0007】
上記目的を達成するため
のセキュリティシステムは、通行人の通過の可否を判定するゲート部と、ゲート部に対して一体的に又は近接して設置され手荷物の検査を行う手荷物検査部と、ゲート部と手荷物検査部とのうち少なくとも一方を移動可能にする移動機構とを備える。
【0008】
上記セキュリティシステムでは、ゲート部と手荷物検査部とが一体的に又は近接して設置されていることで通行人のゲート通過と手荷物検査との処理を迅速に行えるものとしつつコンパクトな構成を実現可能とした上で、特に、移動機構によりゲート部と手荷物検査部とのうち少なくとも一方を移動可能にするとで、動作時には一体的に又は近接して設置された状態にあるゲート部と手荷物検査部とを、メンテナンス時において離隔させた状態にできメンテナンスの作業性を向上できる。
【0009】
本発明の具体的な側面では、移動機構は、手荷物検査部をスライドさせるスライド構造部である。この場合、スライド構造部によって手荷物検査部をスライドさせることでゲート部と手荷物検査部とを離隔できる。
【0010】
本発明の別の側面では、ゲート部は、並列して複数配置され、手荷物検査部は、並列する複数のゲート部の間に設置されており、スライド構造部は、手荷物検査部をゲート部の間からスライドさせる。この場合、スライド構造部によって、並列して複数配置されたゲート部の間から手荷物検査部を抜き出すことができる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、ゲート部と手荷物検査部とを一体的に接続させるカバー部をさらに備える。この場合、カバー部により一体化した外観の装置にできる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、手荷物検査部は、X線検査部を有する。この場合、X線を利用して手荷物の中身を検査できる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、ゲート部における通過可否の判定動作に、手荷物検査部における検査結果を反映して連動させる連動部をさらに備える。この場合、連動部においてゲート部の判定動作に手荷物検査部の検査結果を連動させる態様とすることで、ゲート部のゲートとしての機能を利用して手荷物を検査して検査での判定結果に基づく通過の可否までの動作を迅速かつ的確に行えるものとなっている。また、この場合、ゲート部については、例えば駅の自動改札のような既存のものを利用可能であり、手荷物検査部については、ゲート部における通行可否の判定動作を利用することで一部の機能を簡易化できる。したがって、設置に際して新たな設備一式を揃える場合と比較すると大幅にコストが抑えられる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、ゲート部は、既存の自動改札機であり、手荷物検査部は、連動部を介して当該自動改札機との通信を可能にする。この場合、既存の自動改札機との通信可能とすることにより、例えば既存の自動改札機から信号を受けた手荷物検査部が手荷物検査部での検査結果を既存の自動改札機に対して送信し、既存の自動改札機において手荷物検査部での結果を反映した動作を行わせることができる。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、連動部は、手荷物検査部における検査結果で異常が確認された場合に、ゲート部において通過不可とさせる信号を送信する。この場合、手荷物検査部における検査結果を反映して通行人の通過を抑制するとともに、手荷物の進入を防ぎ、安全を図ることができる。
【0016】
上記目的を達成するため
の手荷物検査装置は、通行人の通過の可否を判定するゲート部に近接して設けられる手荷物検査装置であって、移動機構によりゲート部に対して移動可能である。
【0017】
上記手荷物検査装置では、ゲート部に近接して設置されていることで通行人のゲート通過と手荷物検査との処理を迅速に行えるものとしつつコンパクトな構成を実現可能とし、特に、移動機構により移動可能にするとで、動作時には近接して設置された状態にあるゲート部と手荷物検査部とを、メンテナンス時において離隔させた状態にできメンテナンスの作業性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、
図1等を参照して、本発明の実施形態に係るセキュリティシステムの一例について概要を説明する。
【0020】
本実施形態に係るセキュリティシステム500は、ゲート部としての駅の自動改札装置と、手荷物検査部としての手荷物検査装置とを複数並列して配置させてこれらを統括制御することで構成される自動改札システムである。言い換えると、セキュリティシステム500は、自動改札装置と手荷物検査装置とが一体化して単体としてもセキュリティシステムとして機能することが可能な複数のセキュリティ装置100,100…と、これらと接続して統括制御する制御装置200とによって構成されている。なお、ここでは、各セキュリティ装置100については、同一あるいはほぼ同一の構造を有しており、個々のセキュリティ装置100を、セキュリティ装置100a,100b等と示す場合もあるものとする。
【0021】
各セキュリティ装置100は、自動改札装置10と、手荷物検査装置50と、カバー部60とを備える。例えば、1つのセキュリティ装置100aについて見れば、セキュリティ装置100aは、自動改札装置10a(10)と、手荷物検査装置50a(50)と、カバー部60a(60)とを備えていることになる。
【0022】
セキュリティ装置100について、自動改札装置10や手荷物検査装置50は、床面に対してねじ止め固定されることで設置個所から動かないようにそれぞれ固定されている。カバー部60は、例えば手荷物検査装置50や床面に対してはめ込み固定やねじ止め固定により固定されている。
【0023】
1つのセキュリティ装置100a(100)のうち、自動改札装置10a(10)は、通行人の通過が可能な程度に間隔をあけて配置される一対の主機11a(11)及び従機12a(12)で構成されている。
【0024】
自動改札装置10aは、ICカード用のタッチパネルや切符の挿入口等で構成される受付部RP,RP…や、通過の出口側や入口側に設けられて受付部RPで受け付けたICカード等の情報分析の結果にしたがって開閉動作するフラップFa,Fb…等を備えることで、通行人の通過の可否を判定するゲート部として機能する。ここでは、図中矢印A1の方向を駅構内(ここでは改札内を意味するものとする。)に向かう方向とし、以後、この方向に進む通行人、すなわち駅内部に入っていく人の通過におけるシステムの動作を説明する。
【0025】
また、自動改札装置10aについては、駅に既に配備されている既存の自動改札装置(自動改札機)を利用することが可能である。既存の自動改札装置については、上記の例以外にもフラップや各種表示ランプ等の構成について種々の態様やサイズのものがあるが、多くの場合において、本実施形態と同様の構成とすることが可能である。例えば、矢印A1の方向に進む通行人に対してのみ通過させ、逆方向には通過させる機能を有しない一方通行の形態も考えられる。この場合、例えばフラップFa等は有しない構成となる。
【0026】
手荷物検査装置50a(50)は、搬送部としてのベルトコンベア51(
図2参照)により通行人の手荷物を搬送してX線検査部52(
図2参照)でのX線照射により手荷物の中身を確認することで手荷物検査部として機能する。1つの手荷物検査装置50aは、対応する自動改札装置10aに対して一体的に又は近接して組付けされて設置されており、連動部を介して自動改札装置10aとの通信が可能になっていることで、連動して動作可能となる。図示の場合、手荷物検査装置50aは、自動改札装置10aを構成する主機11a及び従機12aのうち主機11a側に近接して設けられている。さらに、手荷物検査装置50aは、主機11aと反対側において隣接する自動改札装置10bの従機12bに近接して設けられている。また、ここでは、既述のように、矢印A1の方向すなわち駅構内に進入しようとする方向に進む通行人を対象として手荷物検査を行うものとする。このため、セキュリティ装置100aを利用する通行人は、自動改札の通過に際して、自身は自動改札装置10aを通過するとともに、自己の手荷物を手荷物検査装置50aの入口ENから矢印A1に沿った搬送方向AR1に通過させることになる。
【0027】
カバー部60a(60)は、セキュリティシステム500の各部を覆うための部材である。本実施形態では、カバー部60は、特に、自動改札装置10を構成する主機11や従機12と、手荷物検査装置50とを一体的に接続させた状態にしている。このため、例えば1つのカバー部60aは、手荷物検査装置50aの上部を覆う天板部61a(61)と、矢印A1の方向についての手荷物検査装置50aの入口側を覆う前方部62a(62)と、矢印A1の方向についての手荷物検査装置50aの出口側を覆う後方部63a(63)とを備える。図示の場合では、高さ方向について主機11及び従機12に比べて手荷物検査装置50が少し小さく(低く)なっており、この高さのギャップを天板部61によって埋めるものとなっている。また、前方部62及び後方部63は、矢印A1に垂直な幅方向について主機11、手荷物検査装置50及び従機12を並べた幅に合わせたものとなっている。
【0028】
セキュリティ装置100を以上のような構成とするために、例えば
図2において分解斜視図で示す自動改札装置10aの主機11aと、自動改札装置10bの従機12bと、手荷物検査装置50aと、カバー部60a(61a〜63a)とを、
図1に示すように、一体化して1つのユニット構造100uとして構成している。同様に、自動改札装置10aの従機12aは、別の自動改札装置10の主機11x、手荷物検査装置50及びカバー部60と一体化して1つのユニット構造100uを構成しており、また、自動改札装置10bの主機11b、手荷物検査装置50b及びカバー部60bは、別の自動改札装置10の従機12yと一体化して1つのユニット構造100uを構成している。見方を変えると、セキュリティシステム500は、並列した複数のユニット構造100uによって構成されているものと捉えることもできる。
【0029】
上記のように、ゲート部である自動改札装置10の主機11と従機12との間に手荷物検査部である手荷物検査装置50を一体的にまたは近接して設置することで、装置全体をコンパクトな構成とすることができる。これにより、駅の改札のようにスペースの制限がある場合であり、かつ、手荷物検査の迅速性が求められるような場合であっても、かかる環境下に対応可能なものにできる。ただし、この場合、自動改札装置10と手荷物検査装置50とについてメンテナンス性の確保も考慮する必要がある。すなわち、メンテナンス時(保守点検時)において、各部の点検作業をしやすくした構成とする必要がある。特に、手荷物検査装置50での検査として、X線を利用するといった場合には、各部の経年劣化や安全性の観点から、定期的なメンテナンスが必須である。
【0030】
本実施形態では、ゲート部である自動改札装置10に対して、手荷物検査部である手荷物検査装置50をスライド式で移動可能とするための移動機構を設けることにより、メンテナンスに際して、例えば自動改札装置10が固定されたままの状態であっても手荷物検査装置50を動かして、自動改札装置10から離隔させた状態にし、メンテナンス性に優れたものとなるようにしている。
【0031】
以下、
図3を参照して、本実施形態に係るセキュリティシステムに設けた移動機構について説明する。
【0032】
図3(A)及び3(B)は、移動機構の一例について説明するための斜視図である。ここでは、移動機構の一例として、手荷物検査装置50をスライドさせるスライド構造部SL(
図3(B)参照)を有するものとする。
【0033】
図3(A)は、手荷物検査装置50のメンテナンスのために、カバー部60のうち手荷物検査装置50の入口側を覆う前方部62(
図1、2参照)を取り外した状態を示す図である。
図3(B)は、
図3(A)の状態からスライド構造部SLを利用して、手荷物検査装置50や自動改札装置10を並列配置する配列方向(幅方向)に対して垂直な挿抜方向(奥行方向)A2について手荷物検査装置50を引き出した状態を示す図である。
【0034】
図3(A)に示すように、前方部62を取り外した状態において、手荷物検査装置50は、例えば床面にねじ止め固定する固定具FKによって固定されている。固定具FKを取り外すと、
図3(B)に示すように、手荷物検査装置50は、スライド構造部SLによって挿抜方向A2にスライドさせることで、主機11と従機12との間から抜き出すことができる。なお、スライド構造部SLについては、種々のものが考えられるが、例えば、図示のように、手荷物検査装置50のうち自動改札装置10と近接する側面において溝状の構造等で構成されるスライダ機構を設けることや、手荷物検査装置50の下部(床面)側にタイヤ状の構造を設けること等が考えられる。
【0035】
以上のように、スライド構造部SLによって挿抜方向A2について手荷物検査装置50を自動改札装置10の間からスライドさせることで手荷物検査装置50を挿抜可能にすることで、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0036】
また、この他、手荷物検査装置50と自動改札装置10とを近接した状態から離隔した状態にできる構造であれば、上記のようなスライドさせる構造に限らず、種々の態様を移動機構として適用することができる。
【0037】
手荷物検査の構成や方法については、種々の態様が可能であると考えられるが、上記のように、駅の改札等において手荷物検査を行うに際しては、スペースの制限からの装置の小型化の要請や、検査の迅速性(スループットの早さ)についての要請が特に強くなると考えられる。このため、本実施形態では、
図1及び
図2で示すように、手荷物検査装置50は、搬送部としてのベルトコンベア51と、ベルトコンベア51により搬送された手荷物の中身をX線照射により確認するX線検査部52とを有した構成とすることで、装置の小型化を図りつつ流れ作業により迅速な検査を可能としている。また、X線検査部52については、小型化に対応可能としつつ、迅速な検査と安全性を考慮した構成としている。
【0038】
なお、本実施形態では、X線検査部52において、出入り口におけるX線の漏洩抑制機構については、特に記載していないが、法的規制等の必要に応じて出入り口にカーテン機構やロック機構と必要なX線漏洩の抑制部を設けることができる。
【0039】
以下、
図4を参照して、自動改札装置が既に設けられている自動改札システムに手荷物検査の機能を付加することで本実施形態に係るセキュリティシステム500を構成する場合の一例について説明する。
図4(A)は、ゲート部としての自動改札装置に手荷物検査部としての手荷物検査装置を組付けた本実施形態のセキュリティシステム500を構成するセキュリティ装置100についての一例を示すブロック図である。これに対して、
図4(B)は、手荷物検査装置が組み付けられて
図4(A)のような構成となる前の状態の既存の自動改札装置(自動改札システム)についての一例を示すブロック図である。
【0040】
ここでは、
図4(A)に示すように、各セキュリティ装置100を構成する自動改札装置10の主機11及び従機12と、手荷物検査装置50とは、HUB等で構成される中継装置CNを介して制御部70に接続され、制御部70がセキュリティシステム500の全体を統括制御する制御装置200の制御下で各種動作を行うものとする。制御部70は、ゲート部である自動改札装置10の主機11及び従機12の動作制御をするゲート制御部71と、手荷物検査装置50の動作制御をする手荷物検査制御部72と、自動改札装置10の動作と手荷物検査装置50の動作とを連動させるための連動部73とを有する。このような構成とすることについては、例えば
図4(B)に示すように、既存の自動改札装置あるいは自動改札システムを最大限利用して付加する要素を少なくて済むようにしたものである。すなわち、
図4(B)に示す典型的な一例では、既存の自動改札装置の主機11及び従機12がHUB等で構成される中継装置CNを介してイーサネット(登録商標)等のネットワーク上において制御部70に接続されるとともに制御部70を構成するゲート制御部71により動作制御がなされ、さらに、制御部70は、ネットワークを介してシステムの全体を統括制御する制御装置200の制御下で各種動作を行う。
図4(A)では、
図4(B)に示す既存のゲート機能を有する自動改札の設備において、新たに手荷物検査の動作を付加するため、手荷物検査装置50と、これに動作を行わせる手荷物検査制御部72と、手荷物検査を既存の自動改札装置10を利用しつつ行うように連動動作を行わせる連動部73を設けている。言い換えると、主機11及び従機12が接続された中継装置CNに新たに手荷物検査装置50を付加するとともに、手荷物検査装置50単体としての検査の動作及び手荷物検査装置50と自動改札装置10との連動動作を可能とするために、制御部70においてソフトウェア的あるいはハードウェア的に手荷物検査制御部72及び連動部73を付加するだけで所望の目的を達成可能な構成とすることができるものとなっている。なお、各部の電源確保のため、電源部PWに対する接続等も併せて行うことになる。
【0041】
以下、
図5のフローチャートを参照して、本実施形態に係るセキュリティシステム500の各種処理の一例について説明する。
【0042】
ここでは、セキュリティシステム500を構成する各セキュリティ装置100の動作は同様であるため、複数のセキュリティ装置100,100…のうちの1つの動作について説明する。なお、1つのセキュリティ装置100については、既述のように、システムの全体を統括制御する制御装置200の制御下において制御部70によりなされるものとする。
【0043】
セキュリティ装置100において、ゲート制御部71としての制御部70は、自動改札装置10の主機11の受付部RPにおいてICカードや切符の検知がなされたか否かを確認する(ステップS101)。ステップS101においてICカード等の検知がなされると(ステップS101:Yes)、制御部70は、当該ICカード等についての情報を読み取って(ステップS102)、通行人の通過可否の判定をする(ステップS103)。すなわち、切符が正当なものであるか否か、ICカードの残高不足等がないか、といったことが確認される。ステップS103における判定の結果通過可能であると判断された場合(ステップS104:Yes)、制御部70は、連動部73として、手荷物検査装置50に対して手荷物検査結果要求信号を送信する(ステップS105)。
【0044】
一方、手荷物検査装置50においては、上記した自動改札装置10での人の通過に関する動作とは別個に、手荷物検査制御部72としての制御部70により、一連の手荷物検査シーケンスSC1に基づいて手荷物検査の処理がなされる。すなわち、上述した構成の手荷物検査装置50の各部を動作させて、X線を利用した手荷物の検査が行われている。手荷物検査制御部72としての制御部70は、手荷物検査結果要求信号を自動改札装置10側から受信すると、手荷物検査シーケンスSC1においてなされた手荷物検査の結果を示す手荷物検査結果報告信号を返信する。なお、手荷物検査シーケンスSC1については、上記手荷物検査結果要求信号の有無にかかわらず、手荷物検査装置50において手荷物が確認されると検査が行われるものとする。特に、検査結果で異常が確認された場合には、自動改札装置10において通過不可とさせる信号を送信する。
【0045】
連動部73としての制御部70は、ステップS105での手荷物検査結果要求信号の送信を手荷物検査結果報告信号が返信されるまで繰り返し(ステップS106)、ステップS106において、手荷物検査結果報告信号を受けると手荷物についての検査結果の可否を判定する(ステップS107)。制御部70は、手荷物についての検査結果に問題が無ければ(ステップS107:Yes)、ゲート制御部71として、フラップFbを開く動作を行い(ステップS201)、通行人の通過完了を確認し(ステップS202)、通過完了が確認されると(ステップS202:Yes)、通過人数を+1カウントする(ステップS203)とともに初期の待機状態に戻して(ステップS204)一連の動作を終了する。
【0046】
一方、制御部70は、ゲート制御部71としてステップS104での通行人の通過可否の判定の結果通過不可能であると判断した場合や、連動部73としてステップS107での手荷物検査の結果通過不可能であると判断した場合には、フラップFbを閉じる動作を行うととともに(ステップS301)、異常発生を知らせる警報表示動作を行う(ステップS302)。さらに、フラップFbを閉じた状態であるにもかかわらず、フラップFbを越えて強行突破がなされたか否かを確認する(ステップS303)。ステップS303において、強行突破が確認されない場合(ステップS303:No)、自動改札装置10内すなわちゲート内に人が残っているか否かを検知し(ステップS304)、ステップS304において人が残っていると判断される限り(ステップS304:No)、ステップS301〜S303の動作を繰り返す。一方、ステップS303において、強行突破が確認された場合(ステップS303:Yes)、制御部70は、その旨を制御装置200に対して通報する(ステップS305)。ステップS304において人が残っていないと判断された後、あるいは、ステップS305における通報の動作がなされた後、制御部70は、ステップS301からの一連の動作を解除すべく異常動作の解除処理を行う(ステップS306)とともに初期の待機状態に戻して(ステップS204)一連の動作を終了する。
【0047】
以上のように、上記に示した一動作例では、ゲート部である自動改札装置10における通過可否の判定動作に、手荷物検査部である手荷物検査装置50における検査結果を、連動部73によって反映して連動させている。これにより、自動改札装置10のゲートとしての機能を利用して、手荷物検査装置50における手荷物の検査結果に基づく通過の可否までの動作を迅速かつ的確に行えるものとなっている。また、この場合、手荷物検査装置50については、自動改札装置10における通行可否の判定動作を利用することで一部の機能を簡易化できる。したがって、設置に際して新たな設備一式を揃える場合と比較すると大幅にコストが抑えられる。
【0048】
なお、手荷物検査シーケンスSC1において検査結果に問題有りとされた、すなわちステップS107においてその旨を判定したにもかかわらず、ステップS305による強行突破の通報がなされた場合、特に、緊急を要するものと考えられる。このような場合には、制御部70から通報を受けた制御装置200は、テロ対策等のために必要な各部への通信を直ちに行う。
【0049】
以上の各種処理のうち、破線で囲んだ処理内容SS1の部分が、既存の自動改札システムに対して新たに加えるべき処理内容となる。より具体的には、ステップS105〜S107の動作が連動部73によりなされるべき処理内容に相当し、手荷物検査シーケンスSC1や手荷物検査結果要求信号に対する手荷物検査結果報告信号の返信の動作が手荷物検査制御部72によりなされるべき処理内容に相当する。見方を変えると、
図5のフローチャートにおいて、処理内容SS1を除くと、既存の自動改札システムの動作の典型的一例を示すものとなっている。つまり、既存の設備に処理内容SS1に相当する処理機能のみを付加すれば、目的とする動作が可能な構成にできる。
【0050】
以下、
図6を参照して、既存の自動改札システムの設備の一部を利用して本実施形態に示すセキュリティシステムを構築する場合の寸法に関して説明する。
【0051】
図6(A)は、手荷物検査装置が組み付けられる前の既存の自動改札装置10により構成される自動改札システムについての寸法の一例を示す図である。一方、
図6(B)は、6(A)の状態からゲート部としての各自動改札装置10に手荷物検査装置50を組付けて構成されたセキュリティシステム500についての寸法の一例を示す図である。
【0052】
図示のように、ここでの一例では、
図6(A)の状態において、3つ分(3レーン分)の自動改札装置10の設置スペースであったところに、
図6(B)に示すように、2つ分(2レーン分)の自動改札装置10及び手荷物検査装置50を設置している。
【0053】
まず、
図6(A)に示すように、前提として、自動改札装置10を構成する一対の主機11及び従機12は、幅方向(横方向)に関してそれぞれ160〜180mmの横幅d1(図では180mmの場合を例示)を有し、かつ、その間を人が通過できるように600mm程度の間隔d2を有している。
【0054】
一方、
図6(B)に示すように、上記した
図6(A)に示す幅方向(横方向)に関する各部のサイズを維持しつつ手荷物検査装置50を設けるとなると、手荷物検査装置50の横幅d3については、480mm程度あるいはそれ以下とすることになる。また、この場合、3レーン分あった自動改札装置10のうち1レーン分については、使用しないことになるが、2レーン分の自動改札装置10については、一部について位置を変更させつつ既存の設備を継続して使用できる。なお、既存の自動改札装置10は、典型的には床面に対してねじ止め固定されており、床面下に通信や電源確保のための各種ケーブルの配線のための孔が形成されている。これらについて設置工事が必要となる。
【0055】
以上のように、本実施形態に係るセキュリティシステム500では、自動改札装置10と手荷物検査装置50とが、一体的に又は近接して設置されていることで通行人のゲート通過と手荷物検査との処理を迅速に行えるものとしつつコンパクトな構成を実現可能とし、特に、移動機構であるスライド構造部SLによって手荷物検査装置50をスライドさせることができる。これにより、動作時には一体的に又は近接して設置された状態にある自動改札装置10と手荷物検査装置50とを、メンテナンス時において離隔させた状態にできメンテナンスの作業性を向上できる。
【0056】
なお、上記では、手荷物検査装置50をスライドさせるすなわち移動可能とすることで、メンテナンスの作業性向上を図るものとしているが、これに限らず、例えば自動改札装置10側を移動可能な構成とすることも考えられる。具体的には、自動改札装置10側にスライドによる移動を可能にする構造部を設け、手荷物検査装置50側を固定したままとする態様も考えられる。さらに、自動改札装置10と手荷物検査装置50との双方についてそれぞれ移動可能とすることも考えらえる。つまり、自動改札装置10と手荷物検査装置50とのうち少なくとも一方を他方に対して移動可能にするとで、所期の目的を達成できる。
【0057】
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0058】
まず、上記実施形態では、一例として、手荷物検査装置50を、自動改札装置10を構成する一対の主機11及び従機12のうち主機11に近接して設置するものとしているが、手荷物検査装置50の設置・取付方法についてはこれに限らず、種々の態様が考えられる。例えば、
図7に示すように、3つ分(3レーン分)の自動改札装置10の設置スペースのうち中央のレーンの部分に2つの手荷物検査装置50を設置してもよい。具体的に説明すると、まず、
図7(A)は、
図6(A)と同じ図であり、手荷物検査装置が組み付けられる前の既存の自動改札装置10により構成される自動改札システムについての寸法の一例を示す図である。一方、
図7(B)は、
図7(A)の状態からゲート部としての各自動改札装置10に手荷物検査装置150を組み付けた場合の寸法の一例を示す図である。ここでは、3レーン分の自動改札装置10のうち中央のレーンを取り外し、代わりに大型の手荷物検査装置150を設置することで、手荷物検査を可能にしている。この場合、取り外した自動改札装置10のサイズ内に手荷物検査装置150のサイズを抑えておく(図示の場合、960mm程度に抑える)ことで、両端の自動改札装置10,10について配置変更をしないまま設備の交換が可能となる。
【0059】
手荷物検査装置150については、種々の態様が考えられるが、例えば、図示のように、左右に配置された2つの検査部150a,150bにおいて、それぞれ対応するレーンの自動改札装置10と連動して検査及びゲートの通過処理を行うものにできる。また、この場合において、例えばX線源S1については、2つの検査部150a,150bで共用とするといったことも考えられる。また、2つの検査部150a,150bを隔てる遮蔽壁部BWが着脱可能となっており、
図7(C)のような大型の搬入口を形成可能とすることで、1つの検査部150aには入れられない大型の荷物の検査を可能とする態様としてもよい。なお、以上の場合、例えば
図7(B)に示す場合では、2つの検査部150a,150bについては、検査可能な荷物の最大値について横幅を300mm、高さを500mm程度にできるのに対して、
図7(C)に示す場合では、横幅を700mm、高さを500mm程度にできる。
【0060】
また、
図7に示した手荷物検査装置150についても、手荷物検査装置50において例示したものと同様のスライド構造部等の移動機構を設けることで、メンテナンス時における作業性の向上を図ることができる。手荷物検査装置150については、2つの検査部150a,150bを一体のものとして引抜き可能なスライド構造部を設けるほか、1つの検査部を個別に引き出し可能な構成とすることも考えられる。
【0061】
また、上記では、駅構内すなわち改札内での安全性を確保するという観点から駅構内に進入しようとする方向に進む通行人を対象として手荷物検査を行うものとしているが、改札口から出て行く通行人を対象として手荷物検査を行うものとすることも考えられる。
【0062】
また、上記において、カバー部60は、天板部61と、前方部62と、後方部63とを備えるものについて例示したが、これに限らず、天板部61等に付随する部材をさらに有するもの等種々の態様が考えられる。特に、新たに設計した手荷物検査装置を、既存の自動改札装置に取り付ける場合、既存の自動改札装置は、種類によって寸法が異なる一方、手荷物検査装置については同じ寸法であるといったことが想定される。このような場合に、例えばカバー部60としての天板部61を既存の自動改札装置の種類に応じて寸法が異なるものを用意することで、設置後において既存の自動改札装置と新たに設計した手荷物検査装置とが高さの揃ったものであるように見せることができる。
【0063】
また、上記では、自動改札装置について主機と従機との一対構成としているが、これ以外の種々の態様の自動改札装置や他の装置において、本願発明のような手荷物検査を可能とするセキュリティシステムを構成してもよい。例えば、空港における搭乗直前に使用されるゲート改札機のように比較的簡易な構成について、本願と同様の構成とすることも考えられる。この場合、既存の搭乗ゲート改札機にはフラップが設けられておらず、必要に応じて係員が通過を制止することになるが、このような場合においても、迅速な手荷物検査を人の通過に併せて行うことができる。特に、この場合、搭乗直前における検査が可能となり、乗客のさらなる安全対策が施せることになる。
【0064】
このほか、例えばカプセル型のボディスキャナーといった通行人に対して厳重な検査を行うような装置について、手荷物検査の機能を追加するといったことも考えられ、このような場合に本願発明を適用することも考えられる。
【0065】
また、上記では、手荷物検査装置については、荷物を閉じ込める構成とせず、通行人の通過を規制する構成としているが、手荷物検査において異常があった場合には、併せて荷物を閉じ込めるものとしてもよい。例えば、X線検査部52において法的規制等の関係からX線漏洩の抑制部が必要な場合に抑制部としてのロック機構が荷物を閉じ込める機能を兼ねるものとしてもよい。