特許第6576377号(P6576377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6576377データ記憶システムおよびデータ記憶方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576377
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】データ記憶システムおよびデータ記憶方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20190909BHJP
   H04N 5/91 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   H04N7/18 D
   H04N5/91
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-19741(P2017-19741)
(22)【出願日】2017年2月6日
(65)【公開番号】特開2018-129590(P2018-129590A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2018年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108085
【氏名又は名称】セコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100161089
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 良一
(72)【発明者】
【氏名】濱石 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】瀧田 悠一
【審査官】 益戸 宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−192598(JP,A)
【文献】 特開平06−266774(JP,A)
【文献】 特開2000−023092(JP,A)
【文献】 特開平08−228337(JP,A)
【文献】 特開平08−077468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
H04N 5/91
H04N 21/00
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の監視装置、データ解析装置、ならびに前記複数の監視装置および前記データ解析装置と通信可能なデータ記憶装置を有するデータ記憶システムであって、
前記複数の監視装置のそれぞれは、監視対象に関して生成した監視データをパケットのペイロード部に、当該監視装置が前記監視データを生成したときの当該監視装置の位置であるデータ生成位置に関する情報を前記パケットのヘッダ部に記し、前記ペイロード部を前記データ解析装置が復号可能な暗号方式によって暗号化した拡張パケットを生成して送信し、
前記データ解析装置は、受信した前記拡張パケットの前記ペイロード部に含まれる前記監視データを解析することで、前記監視対象にて所定のイベントが発生したか否かを検知するとともに、検知結果を前記データ記憶装置に送信し、
前記データ記憶装置は、
受信した前記拡張パケットを一時的に記憶する短期記憶部と、
前記拡張パケットを前記短期記憶部よりも長期間記憶する長期記憶部と、
前記検知結果に応じて、前記短期記憶部に記憶された拡張パケットの前記ヘッダ部を参照し、当該拡張パケットのうちで、前記イベントが検知された監視データの送信元である第1の監視装置からの前記拡張パケット、および前記ヘッダ部に記されたデータ生成位置が前記第1の監視装置のデータ生成位置から所定範囲内にある他の監視装置からの前記拡張パケットを、前記短期記憶部から読み出して前記長期記憶部に記憶させる記憶制御部と、を有する、
ことを特徴とするデータ記憶システム。
【請求項2】
前記複数の監視装置のそれぞれは、当該監視装置が前記監視データを生成したときの時刻であるデータ生成時刻に関する情報を前記拡張パケットのヘッダ部に更に記し、
前記記憶制御部は、前記イベントの検知時刻の前後に跨った所定の長期保存期間内にデータ生成時刻が含まれる前記拡張パケットを前記長期記憶部に記憶させる、請求項1に記載のデータ記憶システム。
【請求項3】
前記長期保存期間の長さおよび開始時刻の少なくとも一方は、前記複数の監視装置のそれぞれで異なり、データ生成位置が前記第1の監視装置のデータ生成位置から遠い監視装置ほど長いかまたは遅い、請求項2に記載のデータ記憶システム。
【請求項4】
前記記憶制御部は、前記他の監視装置からの前記拡張パケットとして、前記長期保存期間内の各時刻について、当該時刻にデータ生成位置が前記第1の監視装置のデータ生成位置から所定範囲内にある監視装置からの前記拡張パケットを前記長期記憶部に記憶させる、請求項2に記載のデータ記憶システム。
【請求項5】
前記データ記憶装置は、移動する監視装置の移動方向に基づいて所定期間の経過後における当該監視装置の想定移動先を求める移動先算出部を更に有し、
前記記憶制御部は、前記想定移動先が前記第1の監視装置のデータ生成位置から所定範囲内にある他の監視装置からの前記拡張パケットを更に前記長期記憶部に記憶させる、請求項1〜4の何れか一項に記載のデータ記憶システム。
【請求項6】
前記データ記憶装置は、移動する監視装置の移動方向に基づいて所定期間の経過後における当該監視装置の想定移動先を求める移動先算出部を更に有し、
前記記憶制御部は、データ生成位置が前記第1の監視装置の前記想定移動先から所定範囲内にある他の監視装置からの前記拡張パケットを更に前記長期記憶部に記憶させる、請求項1〜4の何れか一項に記載のデータ記憶システム。
【請求項7】
前記複数の監視装置のそれぞれは、当該監視装置が前記監視データを生成したときの監視方向に関する情報を前記拡張パケットのヘッダ部に更に記し、
前記データ記憶装置は、前記データ生成位置と前記監視方向とに基づいて各監視装置の監視エリアを求める監視エリア算出部を更に有し、
前記記憶制御部は、前記他の監視装置からの前記拡張パケットとして、監視エリアが前記第1の監視装置の監視エリアから所定範囲内にある監視装置からの前記拡張パケットを前記長期記憶部に記憶させる、請求項1〜6の何れか一項に記載のデータ記憶システム。
【請求項8】
複数の監視装置、データ解析装置、ならびに前記複数の監視装置および前記データ解析装置と通信可能なデータ記憶装置を有するデータ記憶システムであって、
前記複数の監視装置のそれぞれは、監視対象に関して生成した監視データをパケットのペイロード部に、当該監視装置が前記監視データを生成したときの当該監視装置の位置であるデータ生成位置に関する情報をパケットのヘッダ部に記し、前記ペイロード部を前記データ解析装置が復号可能な暗号方式によって暗号化した拡張パケットを生成して送信し、
前記データ解析装置は、受信した前記拡張パケットの前記ペイロード部に含まれる前記監視データを解析することで、前記監視対象にて所定のイベントが発生したか否かを検知するとともに、前記イベントが検知された監視データの送信元である第1の監視装置、および受信した他の監視装置からの前記拡張パケットの前記ヘッダ部を参照し、当該拡張パケットのうちで前記ヘッダ部に記されたデータ生成位置が前記第1の監視装置のデータ生成位置から所定範囲内にある前記拡張パケットの送信元である監視装置の識別情報を前記データ記憶装置に通知し、
前記データ記憶装置は、
受信した前記拡張パケットを一時的に記憶する短期記憶部と、
前記拡張パケットを前記短期記憶部よりも長期間記憶する長期記憶部と、
前記短期記憶部に記憶された前記拡張パケットのうちで、通知された前記識別情報に対応する監視装置からの前記拡張パケットを、前記短期記憶部から読み出して前記長期記憶部に記憶させる記憶制御部と、を有する、
ことを特徴とするデータ記憶システム。
【請求項9】
短期記憶部および長期記憶部を有するデータ記憶装置にデータを記憶する方法であって、
複数の監視装置のそれぞれが監視対象に関して生成した監視データパケットのペイロード部に、当該監視装置が前記監視データを生成したときの当該監視装置の位置であるデータ生成位置に関する情報を前記パケットのヘッダ部に記し、前記ペイロード部をデータ解析装置が復号可能な暗号方式によって暗号化した拡張パケットを生成して送信するステップと、
受信した前記拡張パケットを前記短期記憶部に一時的に記憶させるステップと、
受信した前記拡張パケットの前記ペイロード部に含まれる前記監視データを前記データ解析装置にて解析することで、前記監視対象にて所定のイベントが発生したか否かを検知するステップと、
前記検知の結果に応じて、前記短期記憶部に記憶された拡張パケットの前記ヘッダ部を参照し、当該拡張パケットのうちで、前記イベントが検知された監視データの送信元である第1の監視装置からの前記拡張パケット、および前記ヘッダ部に記されたデータ生成位置が前記第1の監視装置のデータ生成位置から所定範囲内にある他の監視装置からの前記拡張パケットを前記短期記憶部から読み出して、前記短期記憶部よりも長期間、前記長期記憶部に記憶させるステップと、
を有することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ記憶システムおよびデータ記憶方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物等の監視区域に設置された監視カメラ等の監視装置が取得した撮像画像に基づいて不審者の侵入等のイベントを検知し、イベント発生時の画像を記憶することでイベントの状況を把握できるようにする画像監視システムが利用されている(例えば、特許文献1を参照)。こうした画像監視システムでは、1つの監視装置の撮像画像だけではイベントの状況把握が困難である場合には、その監視装置に近接する他の監視装置の撮像画像も状況把握に利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−080947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、1つのイベントが検知されたときに複数の監視装置からの監視データを使用するためには、全ての監視装置が生成した監視データを全時間帯について予め記憶しておく必要がある。この場合、画像監視システムの管制センタ(データセンタ)に大量の記憶容量を用意しなければならず、管理コストの問題がある。また、従来の画像監視システムでは、管制センタの画像解析装置が受信パケットから撮像画像を再構成した画像データ(例えば、画像ファイル)を記憶しているため、画像解析装置の管理者等が画像データにアクセスすることが容易であり、セキュリティやプライバシーの問題がある。
【0005】
本発明は、検知されたイベントの発生位置の周辺にある複数の監視装置からの監視データのうちで必要なデータのパケットのみを効率よく記憶して、記憶容量の増加を抑制することができるとともにセキュリティやプライバシーの問題も解決できるデータ記憶システムおよびデータ記憶方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
複数の監視装置、データ解析装置、ならびに複数の監視装置およびデータ解析装置と通信可能なデータ記憶装置を有するデータ記憶システムであって、複数の監視装置のそれぞれは、監視対象に関して生成した監視データをパケット化し、その監視装置が監視データを生成したときのその監視装置の位置であるデータ生成位置に関する情報をパケットのヘッダ部に記して送信し、データ解析装置は、受信したパケットに含まれる監視データを解析することで、監視対象にて所定のイベントが発生したか否かを検知するとともに、検知結果をデータ記憶装置に送信し、データ記憶装置は、受信したパケットを一時的に記憶する短期記憶部と、パケットを短期記憶部よりも長期間記憶する長期記憶部と、検知結果に応じて、短期記憶部に記憶されたパケットのうちで、イベントが検知された監視データの送信元である第1の監視装置からのパケット、およびデータ生成位置が第1の監視装置のデータ生成位置から所定範囲内にある他の監視装置からのパケットを、短期記憶部から読み出して長期記憶部に記憶させる記憶制御部とを有することを特徴とするデータ記憶システムが提供される。
【0007】
複数の監視装置のそれぞれは、その監視装置が監視データを生成したときの時刻であるデータ生成時刻に関する情報をパケットのヘッダ部に更に記し、記憶制御部は、イベントの検知時刻の前後に跨った所定の長期保存期間内にデータ生成時刻が含まれるパケットを長期記憶部に記憶させることが好ましい。
【0008】
長期保存期間の長さおよび開始時刻の少なくとも一方は、複数の監視装置のそれぞれで異なり、データ生成位置が第1の監視装置のデータ生成位置から遠い監視装置ほど長いかまたは遅いことが好ましい。
【0009】
記憶制御部は、他の監視装置からのパケットとして、長期保存期間内の各時刻について、その時刻にデータ生成位置が第1の監視装置のデータ生成位置から所定範囲内にある監視装置からのパケットを長期記憶部に記憶させることが好ましい。
【0010】
データ記憶装置は、移動する監視装置の移動方向に基づいて所定期間の経過後におけるその監視装置の想定移動先を求める移動先算出部を更に有し、記憶制御部は、想定移動先が第1の監視装置のデータ生成位置から所定範囲内にある他の監視装置からのパケットを更に長期記憶部に記憶させることが好ましい。
【0011】
記憶制御部は、データ生成位置が第1の監視装置の想定移動先から所定範囲内にある他の監視装置からのパケットを更に長期記憶部に記憶させることが好ましい。
【0012】
複数の監視装置のそれぞれは、その監視装置が監視データを生成したときの監視方向に関する情報をパケットのヘッダ部に更に記し、データ記憶装置は、データ生成位置と監視方向とに基づいて各監視装置の監視エリアを求める監視エリア算出部を更に有し、記憶制御部は、他の監視装置からのパケットとして、監視エリアが第1の監視装置の監視エリアから所定範囲内にある監視装置からのパケットを長期記憶部に記憶させることが好ましい。
【0013】
また、複数の監視装置、データ解析装置、ならびに複数の監視装置およびデータ解析装置と通信可能なデータ記憶装置を有するデータ記憶システムであって、複数の監視装置のそれぞれは、監視対象に関して生成した監視データをパケット化し、その監視装置が監視データを生成したときのその監視装置の位置であるデータ生成位置に関する情報をパケットのヘッダ部に記して送信し、データ解析装置は、受信したパケットに含まれる監視データを解析することで、監視対象にて所定のイベントが発生したか否かを検知するとともに、イベントが検知された監視データの送信元である第1の監視装置、および受信した他の監視装置からのパケットのうちでデータ生成位置が第1の監視装置のデータ生成位置から所定範囲内にあるパケットの送信元である監視装置の識別情報をデータ記憶装置に通知し、データ記憶装置は、受信したパケットを一時的に記憶する短期記憶部と、パケットを短期記憶部よりも長期間記憶する長期記憶部と、短期記憶部に記憶されたパケットのうちで、通知された識別情報に対応する監視装置からのパケットを、短期記憶部から読み出して長期記憶部に記憶させる記憶制御部とを有することを特徴とするデータ記憶システムが提供される。
【0014】
また、短期記憶部および長期記憶部を有するデータ記憶装置にデータを記憶する方法であって、複数の監視装置のそれぞれが監視対象に関して生成した監視データのパケットであって、その監視装置が監視データを生成したときのその監視装置の位置であるデータ生成位置に関する情報をヘッダ部に記したパケットを生成するステップと、パケットをデータ記憶装置に送信するステップと、パケットを短期記憶部に一時的に記憶させるステップと、パケットに含まれる監視データを解析することで、監視対象にて所定のイベントが発生したか否かを検知するステップと、検知の結果に応じて、短期記憶部に記憶されたパケットのうちで、イベントが検知された監視データの送信元である第1の監視装置からのパケット、およびデータ生成位置が第1の監視装置のデータ生成位置から所定範囲内にある他の監視装置からのパケットを短期記憶部から読み出して、短期記憶部よりも長期間、長期記憶部に記憶させるステップとを有することを特徴とする方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
上記のデータ記憶システムおよびデータ記憶方法によれば、検知されたイベントの発生位置の周辺にある複数の監視装置からの監視データのうちで必要なデータのパケットのみを効率よく記憶して、記憶容量の増加を抑制することができるとともにセキュリティやプライバシーの問題も解決できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】データ記憶システム1の全体構成図である。
図2】撮像装置10が送信する画像パケットの構成図である。
図3】データ記憶装置20の記憶制御部23の機能ブロック図である。
図4】データ記憶装置20の記憶移行処理を説明するための概念図である。
図5】撮像装置10の画像パケット生成処理のフローチャートである。
図6】データ記憶装置20のパケット記憶処理のフローチャートである。
図7】データ記憶装置20の記憶移行処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、データ記憶システムおよびデータ記憶方法について説明する。ただし、本発明は図面または以下に記載される実施形態には限定されないことを理解されたい。
【0018】
図1は、データ記憶システム1の全体構成図である。データ記憶システム1は、複数の撮像装置10、データ記憶装置20、データ解析装置30、および配信先端末40を有する。以下で説明する例では、データ記憶システム1は画像監視システムであり、撮像装置10は監視対象の区域に設置される。データ記憶装置20は、例えば、通信事業者が提供する通信網(例えば、インターネットに接続するための回線網)90内に設置されたアプリケーション処理可能なルータ等に搭載される。データ解析装置30は、例えば、画像監視システムの管制センタ内に設置される。また、配信先端末40は、画像を監視する管制員が使用する端末装置(据置き端末または携帯端末)である。各装置は通信網90を介して互いに通信可能に接続されている。各装置間の通信は、有線と無線の何れでもよい。なお、各装置間では時刻の同期が概ねとれているものとする。
【0019】
データ記憶システム1では、撮像装置10が、撮影した画像のデータをパケット化し、画像の撮影位置(画像データの生成位置)に関する位置情報をパケットのヘッダ部に埋め込んで、データ記憶装置20に送信する。データ記憶装置20は、受信パケットをデータ解析装置30に転送するとともに一時的に記憶(短期記憶)する。データ解析装置30は、撮影された画像内におけるイベント発生の有無(例えば、不審者や不審物等が現れたか否か)を検知(判定)し、イベントを検知した場合にはその旨をデータ記憶装置20に通知する。その通知に応じて、データ記憶装置20は、パケットのヘッダ部の位置情報に基づき、短期記憶されたパケットのうちで、イベントが検知された撮像装置10からのパケットとその撮像装置10の周辺にある他の撮像装置10からのパケットとを長期記憶する。また、データ記憶装置20は、配信先端末40からの要求に応じて、長期記憶されたパケットを配信する。
【0020】
撮像装置10は、例えば、固定設置されたネットワークカメラか、または、ドローン(小型無人飛行機)に搭載された監視カメラもしくは警備員等が携帯するウェアラブルカメラ等の移動可能な監視カメラである。データ記憶システム1では、複数の撮像装置10のうちの少なくとも一部は、時間経過とともに移動する移動体であるとする。撮像装置10は、監視装置の一例であり、監視対象の画像を撮影して監視対象に関する監視データである画像データを生成するとともに、その画像データをパケット化して、画像パケットとしてデータ記憶装置20に送信する。
【0021】
撮像装置10は、撮像部11、位置検出部12、パケット生成部13および送信部14を有する。撮像部11は、例えばCMOSセンサを備えたカメラであり、監視区域を連続的に撮影することで、例えば30フレーム/秒の画像データを出力する。位置検出部12は、例えば、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)衛星からの電波を受信するアンテナと、そのアンテナが受信したGPS信号から位置情報および時刻情報を抽出する受信回路とで構成され、撮像部11が画像データを生成したときの撮像装置10自身の位置を示す位置情報を算出するとともに、時刻を示す時刻情報を取得する。なお、本実施形態では位置検出部12により時刻情報を取得しているが、それに限らず、別途設けられた時計手段(図示せず)により時刻情報を取得してもよい。
【0022】
パケット生成部13は、CPU、ROMおよびRAM等で構成される撮像装置10の制御部であり、撮像部11が出力した画像データをペイロード部に記した画像パケットを生成する。その際、パケット生成部13は、位置検出部12から取得した位置情報および時刻情報を、その画像パケットのヘッダ部に埋め込む。なお、データ記憶装置20は画像パケットのヘッダ部の情報のみに従って記憶および配信の処理を行うため、パケット生成部13は、データ解析装置30および配信先端末40が復号可能な暗号方式で、画像パケットのペイロード部を暗号化してもよい。
【0023】
送信部14は、パケット生成部13が生成した画像パケットをデータ記憶装置20に送信する。
【0024】
図2は、撮像装置10が送信する画像パケットの構成図である。画像パケットのペイロード部には、撮像部11が出力した画像データが含まれる。1枚の画像データのサイズが1つのパケットのペイロード部に格納可能なサイズを超える場合には、図2に示すように、1枚の画像データは複数の部分画像データに分割され、それぞれが個々の部分画像データを含む複数のパケットが生成される。なお、ペイロード部には、画像データの他に、時系列で連続する画像列を復号し表示するために必要な、解像度、画質、フレームレートおよび符号化のタイプ等の形式情報を更に含めてもよい。
【0025】
画像パケットのヘッダ部には、「送信元撮像装置アドレス」、「位置情報」および「時刻情報」が含まれる。1枚の画像データに対して複数の画像パケットが生成される場合には、それらの画像パケットのヘッダ部のうち、前述の情報は全て同じになる。「送信元撮像装置アドレス」は、その画像パケットを送信する撮像装置10自身を一意に特定する識別子(例えばIPアドレスおよびポート番号)である。「位置情報」は、例えば、撮像部11が画像データを生成したときの撮像装置10自身の位置を示す緯度および経度の値である。「時刻情報」は、例えば、撮像部11が画像データを生成したときの時刻を示す時分秒の値である。ただし、位置情報および時刻情報は、それぞれ、画像データのデータ生成位置およびデータ生成時刻を間接的に表す値であってもよい。例えば、位置情報として基準点からの方向および距離を表す値を使用し、時刻情報としてある時点を起点とする相対時刻を表す値を使用してもよい。
【0026】
なお、パケット生成部13は、必ずしも撮像装置10に組み込まれていなくてもよい。例えば、撮像装置10が別の装置に画像データおよび位置情報を送信し、その装置が図2の形式の画像パケットを生成して、それをデータ記憶装置20に送信してもよい。また、ヘッダ部の時刻情報は必須ではなく、パケット生成部13は、ヘッダ部に時刻情報を含めずに画像パケットを生成してもよい。
【0027】
データ記憶装置20は、短期記憶部21、長期記憶部22、記憶制御部23および通信部26を有する。
【0028】
短期記憶部21は、撮像装置10から受信された画像パケットを一時的に記憶する。データ記憶装置20は撮像装置10から順次画像パケットを受信するため、短期記憶部21には、ヘッダ部に記されているデータ生成時刻が新しい所定期間分のパケットのみが記憶され、データ生成時刻が古いパケットは順次削除される。長期記憶部22は、短期記憶部21に記憶されている画像パケットの一部または全部を、短期記憶部21よりも長期間記憶する。短期記憶部21と長期記憶部22は別体のメモリであり、例えば、短期記憶部21は揮発性のメモリ、長期記憶部22は不揮発性のメモリで構成される。ただし、1つのメモリの中で記憶領域を分けてこれら2つの記憶部を実現してもよい。何れの場合でも、記憶容量は、短期記憶部21よりも長期記憶部22の方が多い。
【0029】
また、長期記憶部22は、データ解析装置30からイベントが検知されたことの通知(イベント通知パケット)をデータ記憶装置20が受信すると、そのイベント通知パケットに含まれる情報を恒久的に記憶する。イベント通知パケットには、例えば、(1)「送信元撮像装置アドレス」、(2)「位置情報」、(3)「時刻情報」、(4)「範囲情報」、(5)「検知前保存期間」、および(6)「検知後保存期間」の情報が含まれる。
【0030】
このうち、「送信元撮像装置アドレス」、「位置情報」および「時刻情報」は、画像パケットのヘッダ部から得られる情報であり、それぞれイベントが検知された画像データの送信元である撮像装置(以下、「検知元の撮像装置」という)10のIPアドレスとポート番号、ならびに検知元の撮像装置10によるその画像データの生成位置および生成時刻を示す値である。「範囲情報」は、検知元の撮像装置10の周辺にある他の撮像装置のうちで、どの程度の領域内のものからの画像パケットを長期記憶の対象とするかを規定する情報である。例えば、検知元の撮像装置10を中心とする半径1kmの円形領域内にある撮像装置からの画像パケットを長期記憶の対象とする場合には、「範囲情報」には1kmを示す値が格納される。「検知前保存期間」および「検知後保存期間」は、イベントの検知時刻(発生時刻)を基準とした、長期記憶の対象となる時間範囲(長期保存期間)を規定する情報である。
【0031】
図3は、データ記憶装置20の記憶制御部23の機能ブロック図である。記憶制御部23は、CPU、ROMおよびRAM等で構成される制御回路であり、その制御回路でコンピュータプログラムを実行することにより実現される機能モジュールとして、パケット記憶手段231、記憶移行手段232および配信手段233を有する。記憶制御部23は、受信された画像パケットのヘッダ部に記された位置情報に基づいて、そのパケットを短期記憶または長期記憶させる。
【0032】
パケット記憶手段231は、撮像装置10から受信した画像パケットを、イベント検知の有無にかかわらず、短期記憶部21に一時記憶させる。その際、画像パケットのヘッダ部に記されているデータ生成時刻が新しい所定期間分のパケットのみが短期記憶部21に記憶されるように、パケット記憶手段231は、データ生成時刻が古いパケットを削除して、新たに受信された画像パケットを記憶させる。
【0033】
また、パケット記憶手段231は、イベント通知パケットが受信されると、検知元の撮像装置10およびその周辺にある他の撮像装置から新たに受信され短期記憶部21に一時記憶された画像パケットを、そのイベントの識別情報と対応付けて、イベントの検知時刻からイベント通知パケットの(6)「検知後保存期間」で規定される所定期間内、長期記憶部22に複製して記憶させる。その際、パケット記憶手段231は、検知元の撮像装置10以外の撮像装置から受信された画像パケットについては、その画像パケットのヘッダ部の位置情報が示す位置がイベント通知パケットの(2)「位置情報」および(4)「範囲情報」で規定される領域内に含まれるものを、長期記憶の対象とする。
【0034】
例えば、イベント通知パケットの(2)「位置情報」が「北緯35.68°、東経139.56°」であり、(3)「時刻情報」が「2016/12/29 14:33:00」であり、(4)「範囲情報」が「半径1km」であり、(6)「検知後保存期間」が「10分」であったとする。この場合、パケット記憶手段231は、新たに受信された画像パケットのヘッダ部の位置情報が示す位置が北緯35.68°、東経139.56°を中心とした半径1km以内の領域に含まれ、かつ、そのヘッダ部の時刻情報が示す時刻が(3)「時刻情報」および(6)「検知後保存期間」で規定される2016/12/29の14:33:00〜14:43:00の間に含まれる場合に、その画像パケットを長期記憶部22に記憶させる。パケット記憶手段231が長期記憶部22に記憶させる画像パケットは、イベント検知後に生成された画像データに相当する。
【0035】
記憶移行手段232は、イベント通知パケットが受信されると、そのパケットで指定された情報に従って、短期記憶部21に既に記憶されている各撮像装置10からの過去の画像パケットのうちで必要なものを読み出して、長期記憶部22に記憶させる。その際、記憶移行手段232は、検知元の撮像装置10からの画像パケットのうちで、その時刻情報が示す時刻がそのイベント検知の直前の検知前保存期間に含まれるものを短期記憶部21から読み出し、そのイベントの識別情報と対応付けて長期記憶部22に記憶させる。
【0036】
例えば、イベント通知パケットの(3)「時刻情報」が「2016/12/29 14:33:00」であり、(5)「検知前保存期間」が「5分」であったとする。この場合、記憶移行手段232は、短期記憶部21内の画像パケットのうちで、ヘッダ部の送信元撮像装置アドレスが検知元の撮像装置10のものと同じであり、かつ、ヘッダ部の時刻情報が示す時刻が(3)「時刻情報」および(5)「検知前保存期間」で規定される2016/12/29 14:28:00〜14:33:00の間に含まれるものを、長期記憶部22に記憶させる。
【0037】
更に、記憶移行手段232は、データ生成位置が検知元の撮像装置10のデータ生成位置から所定範囲内にある他の撮像装置10からの画像パケットのうちで、その時刻情報が示す時刻がそのイベント検知の直前の検知前保存期間に含まれるものも短期記憶部21から読み出し、同様にそのイベントの識別情報と対応付けて長期記憶部22に記憶させる。すなわち、記憶移行手段232は、検知元の撮像装置10以外の撮像装置10からの画像パケットについては、そのヘッダ部の位置情報が示す位置がイベント通知パケットの(2)「位置情報」および(4)「範囲情報」で規定される領域内に含まれ、かつ、画像パケットのヘッダ部の時刻情報が示す時刻が(3)「時刻情報」および(5)「検知前保存期間」で規定される期間内に含まれるものを、長期記憶部22に記憶させる。
【0038】
例えば、イベント通知パケットの(2)「位置情報」が「北緯35.68°、東経139.56°」であり、(3)「時刻情報」が「2016/12/29 14:33:00」であり、(4)「範囲情報」が「半径1km」であり、(5)「検知前保存期間」が「5分」であったとする。この場合、記憶移行手段232は、短期記憶部21内の画像パケットのうちで、ヘッダ部の送信元撮像装置アドレスが検知元の撮像装置10のものとは異なり、かつ、ヘッダ部の位置情報が示す位置が北緯35.68°、東経139.56°を中心とした半径1km以内の領域に含まれ、かつ、ヘッダ部の時刻情報が示す時刻が2016/12/29 14:28:00〜14:33:00の間に含まれるものを、長期記憶部22に記憶させる。記憶移行手段232が長期記憶部22に記憶させる画像パケットは、イベント検知の直前に取得された過去の画像データに相当する。
【0039】
なお、記憶移行手段232およびパケット記憶手段231は、時刻情報を用いずに、長期記憶部22に記憶させる画像パケットを選択してもよい。例えば、記憶移行手段232およびパケット記憶手段231は、短期記憶部21内の画像パケットのうちで、検知元の撮像装置10からのものと、位置情報に従って選択されたその周辺にある他の撮像装置10からのものを、その画像データのデータ生成時刻にかかわらず、全て長期記憶部22に記憶させてもよい。
【0040】
なお、移動体である撮像装置10は時間経過とともにその位置が変化するため、記憶移行手段232は、検知前保存期間内の各時刻について、その時刻にデータ生成位置が検知元の撮像装置10のデータ生成位置から所定範囲内にある撮像装置10からの画像パケットを長期記憶部22に記憶させてもよい。ただし、検知元の撮像装置10については、イベントが検知された位置から移動したとしても、その撮像装置10が不審者等を追跡している場合があるため、画像データの生成位置にかかわらず、検知前保存期間内の画像パケットを長期記憶することが好ましい。
【0041】
図4は、データ記憶装置20の記憶移行処理を説明するための概念図である。例えば、撮像装置10Aの周囲に3台の撮像装置10B,10C,10Dがあり、撮像装置10A〜10Cは固定設置されており、撮像装置10Dは移動体に設置されており、撮像装置10Aが撮影した画像データからイベントが検知されたとする。時刻t3をイベントが検知された時刻、時刻t1をt3から検知前保存期間だけ遡った時刻、時刻t5をt3から検知後保存期間だけ経過した後の時刻とし、時刻t0〜t6をt0<t1<t2<t3<t4<t5<t6の順序を満たす時刻として定義する。更に、撮像装置10Bは撮像装置10Aを中心とする長期記憶の対象の範囲81内に位置し、撮像装置10Cはその範囲外に位置し、撮像装置10Dは時刻t2〜t3の間だけその範囲内に位置したとする。
【0042】
この場合、各時刻t0〜t6で撮像装置10A〜10Dから受信された画像パケット80のうち、撮像装置10A,10Bからの画像パケット80については、検知前保存期間および検知後保存期間に含まれる時刻t1〜t5のものが、撮像装置10Dからの画像パケット80については、検知前保存期間および検知後保存期間に含まれる時刻t2〜t3のものが、短期記憶部21から長期記憶部22に記憶される。一方、撮像装置10Cからの画像パケット80については、撮像装置10Cが長期記憶の対象領域の外に位置しているため、長期記憶部22には記憶されない。
【0043】
配信手段233は、特定のイベントに対応する画像パケットの配信をデータ記憶装置20に要求する配信要求パケットを配信先端末40から受信したときに、その配信要求パケットで指定されたイベントに対応付けて長期記憶部22に記憶されている画像パケットを読み出し、その画像パケットを配信先端末40に送信させる。すなわち、配信手段233は、配信先端末40からの要求に応じて、イベント検知時刻よりも前に取得された過去の画像データおよびイベント検知時刻よりも後に取得された(現在の)画像データを配信する。
【0044】
通信部26は、撮像装置10から画像パケットを受信するとともにその画像パケットをデータ解析装置30に送信し、データ解析装置30からイベント通知パケットを受信する。また、通信部26は、配信先端末40から配信要求パケットを受信し、それに応じて配信手段233が長期記憶部22から読み出した画像パケットを配信先端末40に送信する。
【0045】
データ解析装置30は、データ記憶装置20から受信された画像パケットに含まれる画像データに基づいて、監視対象にて所定のイベントが発生したか否かを判定し、イベントが発生したと判定したときに、イベント通知パケットをデータ記憶装置20に送信する。イベント通知パケットは、データ記憶装置20に受信パケットを長期保存させるための長期保存指示であり、本発明における検知結果に相当する。データ解析装置30は、記憶部31、制御部32および通信部33を有する。
【0046】
記憶部31は、受信された画像パケットおよび制御部32の処理に必要な情報を記憶する。
【0047】
制御部32は、CPU、ROMおよびRAM等で構成される制御回路である。制御部32は、受信された画像パケットのうちで、送信元撮像装置アドレスおよび時刻情報が共通する画像パケットから1枚の画像を復元し、復元した1枚の画像または復元した複数枚の画像を用いて、例えば公知の画像認識処理によりその画像を解析して、特定の意味を有するイベントの発生の有無を検知(判定)する。例えば、イベントが不審物の放置である場合には、制御部32は、画像中で、放置された物体の画像領域を検知する。画像解析した結果、イベントの発生を検知した場合には、制御部32は、上記した(1)〜(6)の情報を含むイベント通知パケットを生成する。
【0048】
通信部33は、画像パケットをデータ記憶装置20から受信し、制御部32が生成したイベント通知パケットをデータ記憶装置20に送信する。
【0049】
なお、データ解析装置30は、データ記憶装置20を経由せずに、撮像装置10から直接、画像パケットを受信してもよい。また、データ解析装置30は、イベントの種類に応じて異なる長さの長期保存期間をデータ記憶装置20に指定してもよい。また、データ記憶システム1ではデータ解析装置30はデータ記憶装置20とは別体の装置であり、通信網90の外に設置されているが、データ解析装置30をデータ記憶装置20と同じ装置として、通信網90内で画像解析を行ってもよい。
【0050】
配信先端末40は、必要に応じて配信要求パケットを生成して、それをデータ記憶装置20に送信する。配信要求パケットは、例えば、データ記憶装置20のアドレス、画像データの配信を希望する1つまたは複数の撮像装置10のアドレス、配信先端末40の使用者が確認したいイベントのID、および配信先端末40自身のアドレスで構成される。そして、配信先端末40は、データ記憶装置20から画像パケットを受信し、そのパケットから画像を復元して配信先端末40の表示部に表示させる。なお、現在発生しているイベントのIDは、イベントリストの形式で、予め、データ記憶装置20またはデータ解析装置30から配信先端末40に通知される。
【0051】
図5は、撮像装置10の画像パケット生成処理のフローチャートである。図5に示すフローは、撮像装置10の制御部のROMに予め記憶されたプログラムに従って、その制御部のCPUにより実行される。画像パケット生成処理は、撮像部11が画像データを生成してパケット生成部13に出力するたびに実行される(ループ1−1)。
【0052】
まず、パケット生成部13は、撮像部11から画像データを取得するたびに、その時点での撮像装置10の位置情報および時刻情報を位置検出部12から取得する(ST11)。
【0053】
画像データをパケット化して送信するに当たり、画像データが1つのパケットのペイロード部に格納可能なサイズを超える場合には、画像データを分割する必要がある。以下のST12〜14は、そのような場合に、画像データの分割数分だけ実行される(ループ1−2)。ただし、画像データが1つのパケットのサイズに収まる場合には、ループ1−2は1度だけ実行される。
【0054】
ループ1−2では、パケット生成部13は、まず、送信すべき画像データが全て送信されているか否かを確認する(ST12)。画像データの一部が未送信の場合(ST12でNo)には、パケット生成部13は、位置検出部12から取得した位置情報および時刻情報をヘッダ部に、撮像部11から取得した画像データをペイロード部に記した画像パケットを生成する(ST13)。そして、パケット生成部13は、その画像パケットをデータ記憶装置20およびデータ解析装置30に対して送信部14に送信させて(ST14)、ST12に戻る。一方、画像データが全て送信された場合(ST12でYes)には、ループ1−2を抜けて、処理は終了する。
【0055】
図6(A)および図6(B)は、データ記憶装置20のパケット記憶処理のフローチャートである。図6(A)は、パケット記憶処理の全体フローを示し、図6(B)は、図6(A)のST25における長期記憶部への保存処理のフローを示す。これらの図および以下で説明する図7に示すフローは、データ記憶装置20の記憶制御部23のROMに予め記憶されたプログラムに従って、記憶制御部23のCPUにより実行される。パケット記憶処理では、データ記憶装置20が撮像装置10から画像パケットを受信するたびに、以下のST21〜25が実行される(ループ2−1)。
【0056】
まず、パケット記憶手段231は、受信された画像パケットのヘッダ部に記載されている送信元撮像装置アドレスを確認し、現在から所定期間以上過去にその撮像装置10から受信された画像パケットが短期記憶部21に保存されているか否かを確認する(ST21)。所定期間分の画像パケットが既に短期記憶部21に記憶されている場合(ST21でYes)には、パケット記憶手段231は、短期記憶部21内の画像パケットのうち、現在から所定期間以上過去にその撮像装置10から受信されたものを削除する(ST22)。その上で、パケット記憶手段231は、新たに受信された画像パケットを短期記憶部21に記憶させる(ST23)。一方、所定期間分の画像パケットが短期記憶部21に記憶されていない場合(ST21でNo)には、ST22は実行されず、ST21の次にST23が実行される。
【0057】
続いて、データ記憶装置20がイベント通知パケットを受信している場合(ST24でYes)には、パケット記憶手段231は、その画像パケットについて、後述する長期記憶部への保存処理を実行し(ST25)、ループ2−1の先頭に戻る。一方、データ記憶装置20がイベント通知パケットを受信していない場合(ST24でNo)には、ST25は実行されず、ループ2−1の先頭に戻る。ループ2−1を抜けると、パケット記憶処理は終了する。
【0058】
ST25の長期記憶部への保存処理では、パケット記憶手段231は、まず、受信された画像パケットのヘッダ部から位置情報および時刻情報を取得する(ST251)。続いて、これまでに受信されたイベント通知パケットのそれぞれについて、以下のST252〜254が実行される(ループ25−1)。
【0059】
まず、パケット記憶手段231は、ST251で取得された位置情報が示す位置が、イベント通知パケットの(2)「位置情報」および(4)「範囲情報」で規定される対象領域内に含まれるか否かを判定する(ST252)。なお、検知元の撮像装置10からの画像パケットであるならば、当該対象領域内に含まれる(ST252でYes)と判定されることとする。位置が対象領域内に含まれない場合(ST252でNo)には、受信された画像パケットは長期記憶せず、ループ25−1の先頭に戻る。一方、位置が対象領域内に含まれる場合(ST252でYes)には、パケット記憶手段231は、ST251で取得された時刻情報が示す時刻が、イベント通知パケットの(3)「時刻情報」および(6)「検知後保存期間」で規定される対象期間内に含まれるか否かを更に判定する(ST253)。時刻が対象期間内に含まれない場合(ST253でNo)には、受信された画像パケットは長期記憶せず、ループ25−1の先頭に戻る。
【0060】
一方、時刻が対象期間内に含まれる場合(ST253でYes)には、パケット記憶手段231は、受信された画像パケットを該当するイベントの識別情報(ID)と対応付けて長期記憶部22に記憶させ(ST254)、ループ25−1の先頭に戻る。ループ25−1を抜けると、長期記憶部への保存処理は終了する。
【0061】
図7は、データ記憶装置20の記憶移行処理のフローチャートである。記憶移行処理は、短期記憶部21内に既に記憶されている過去の画像パケットを短期記憶部21から長期記憶部22に移行するための処理である。この処理では、データ記憶装置20がデータ解析装置30からイベント通知パケットを受信するたびに、以下のST31〜35が実行される(ループ3−1)。
【0062】
最初に、記憶移行手段232は、短期記憶部21に既に記憶されている検知元の撮像装置10からの画像パケットのそれぞれについて、以下のST31,32を実行する(ループ3−2)。
【0063】
ループ3−2では、記憶移行手段232は、まず、画像パケットのヘッダ部に記載されている時刻情報が示す時刻が、イベント通知パケットの(3)「時刻情報」および(5)「検知前保存期間」で規定される対象期間内に含まれるか否かを判定する(ST31)。時刻が対象期間内に含まれない場合(ST31でNo)には、その画像パケットは長期記憶せず、ループ3−2の先頭に戻る。一方、時刻が対象期間内に含まれる場合(ST31でYes)には、記憶移行手段232は、その画像パケットを該当するイベントの識別情報(ID)と対応付けて長期記憶部22に記憶させ(ST32)、ループ3−2の先頭に戻る。
【0064】
ループ3−2の後で、記憶移行手段232は、短期記憶部21に既に記憶されている検知元の撮像装置10以外の撮像装置10からの画像パケットのそれぞれについて、以下のST33〜35を実行する(ループ3−3)。
【0065】
ループ3−3では、記憶移行手段232は、まず、画像パケットのヘッダ部に記載されている時刻情報が示す時刻が、イベント通知パケットの(3)「時刻情報」および(5)「検知前保存期間」で規定される対象期間内に含まれるか否かを判定する(ST33)。時刻が対象期間内に含まれない場合(ST33でNo)には、その画像パケットは長期記憶せず、ループ3−3の先頭に戻る。一方、時刻が対象期間内に含まれる場合(ST33でYes)には、記憶移行手段232は、画像パケットのヘッダ部に記載されている位置情報が示す位置が、イベント通知パケットの(2)「位置情報」および(4)「範囲情報」で規定される対象領域内に含まれるか否かを更に判定する(ST34)。位置が対象領域内に含まれない場合(ST34でNo)には、その画像パケットは長期記憶せず、ループ3−3の先頭に戻る。
【0066】
一方、位置が対象領域内に含まれる場合(ST35でYes)には、記憶移行手段232は、その画像パケットを該当するイベントの識別情報(ID)と対応付けて長期記憶部22に記憶させ(ST35)、ループ3−3の先頭に戻る。ループ3−3を抜けると処理は終了する。
【0067】
以上説明したデータ記憶システム1には、次の(1)〜(4)の利点がある。
(1)画像パケットのヘッダ部に位置情報を付与し、イベント検知に合わせてその位置情報を参照して画像パケットを選択することで、イベント発生位置の周辺の撮像装置10からの画像データを効率よく長期記憶することができる。撮像装置10は移動体でもよいため、固定設置された監視カメラに加えて、ドローンやウェアラブルカメラ等を連携させて、配信先端末40上にイベント発生位置の周辺の画像(映像)を表示させることができ、イベントの状況把握が容易になる。
(2)更に、所定期間内の受信パケットを短期記憶部21に一時的に記憶しておくことで、イベント発生後だけでなく、イベント発生前の画像データも短期記憶部21から読み出して長期記憶部22に記憶可能である。このため、配信先端末40でイベント発生前後の画像も表示させることができ、イベントの発生原因の特定等に利用することができる。また、撮像装置10からデータ記憶装置20に至るネットワーク経路の通信トラフィックが混雑している場合、設定により撮像装置10は通信トラフィックが混雑していない時間帯にパケットを送信することがある。そのため、画像パケットのヘッダ部に時刻情報を付与することにより、当該時刻情報に基づいて長期記憶部22に記憶させることができ、このように遅れて送信されたパケットであっても、検知前保存期間および検知後保存期間として設定された期間に含まれるパケットであるならば確実に長期記憶することが可能となる。
(3)データ解析装置30がある管制センタ内ですべての画像データを記憶する必要がなく、必要な画像データのみを取得したいときに取得できるため、撮像装置10の台数が増えても記憶容量の増加が抑制される。
(4)ヘッダ部の情報に従ってパケットが処理され、パケット形式のまま保存されるため、管理者等による画像データの閲覧を難しくすることができる。特に、ペイロード部の画像データを暗号化したまま、経路上のデータ記憶装置20で画像データを記憶し送信(配信)することができ、プライバシーの問題にも対応可能である。
【0068】
なお、撮像装置10に加速度センサや電子コンパス等を更に設けて、その加速度センサや電子コンパス等により、撮像部11が画像データを取得したときの撮像装置10の向きや地表からの高さ、俯角等の設置状態に関する情報を取得してもよい。この場合、例えば、パケット生成部13は、撮像部11が画像データを生成したときの撮影方向(監視方向)を示す情報を画像パケットのヘッダ部に更に記載する。また、データ記憶装置20には、受信された各画像パケットについて、そのヘッダ部の位置情報と撮影方向の情報とに基づき撮像装置10の撮影エリアを求める撮影エリア算出部の機能が更に設けられる。
【0069】
その上で、記憶制御部23は、上記の通り位置情報に基づいて長期記憶の対象に選択された画像パケットのうちで、得られた撮影エリアが検知元の撮像装置10の撮影エリアから所定範囲内にある他の撮像装置10からの画像パケットのみを、長期記憶部22に記憶させてもよい。すなわち、撮像装置10の撮影方向等が検知元の撮像装置10のものと異なる場合には、検知元の撮像装置10の周辺に位置していたとしても、その撮像装置10からの画像パケットは長期記憶しなくてもよい。これにより、検知元の撮像装置10の周辺にある他の撮像装置10のうちで、監視対象をよりしっかりと捉えている撮像装置10を選択することができるので、有用な画像データを効率よく長期記憶することができる。
【0070】
また、移動体である撮像装置10に加速度センサ等を更に設け、その加速度センサ等を利用して、撮像装置10の移動方向を取得してもよい。或いは移動体である撮像装置10の位置の時間変化から当該撮像装置10の移動方向を取得してもよい。この場合、例えば、パケット生成部13は、撮像部11が画像データを生成したときの撮像装置10の移動方向を示す情報を画像パケットのヘッダ部に更に記載する。また、データ記憶装置20には、受信された各画像パケットについて、そのヘッダ部の位置情報と移動方向の情報とに基づき、所定期間の経過後における撮像装置10の想定移動先を求める移動先算出部の機能が更に設けられる。
【0071】
その上で、記憶制御部23は、位置情報に基づいて長期記憶の対象に選択された画像パケットに加えて、得られた想定移動先が検知元の撮像装置10のデータ生成位置から所定範囲内にある他の撮像装置10からの画像パケットを、更に長期記憶部22に記憶させてもよい。すなわち、イベントが検知された時点では長期記憶の対象領域外にある撮像装置10であっても、その対象領域に近付いている撮像装置10(例えば、対処員が携帯するウェアラブルカメラ等)については画像パケットを長期記憶の対象に含めてもよい。これにより、検知されたイベントに関連する可能性が高い画像データを効率よく長期記憶することが可能となる。なお、ここでの想定移動先についての「所定範囲」(すなわち、検知元の撮像装置10のデータ生成位置を中心とする長期記憶の対象領域)は、想定移動先を考慮せずに記憶制御部23が画像パケットを長期記憶させるときに対象となる画像パケットの送信元の撮像装置10を選択するための「所定範囲」と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0072】
また、移動体である撮像装置10の想定移動先から所定範囲内にある他の撮像装置10からの画像パケットは、イベント発生の有無にかかわらず長期記憶部22に更に記憶させてもよい。例えば、検知元の撮像装置10が移動体である場合には、記憶制御部23は、位置情報に基づいて長期記憶の対象に選択された画像パケットに加えて、データ生成位置が検知元の撮像装置10の想定移動先から所定範囲内にある他の撮像装置10からの画像パケットを、更に長期記憶部22に記憶させてもよい。これにより、例えば、ウェアラブルデバイスを携帯した対処員が不審者を追跡している際に、その移動経路周辺の画像データを事後の証跡データとして利用するために長期保存することも可能になる。
【0073】
また、記憶制御部23は、検知元の撮像装置10の位置からの距離に応じて、撮像装置10ごとに、検知前保存期間や検知後保存期間の長さや開始時間を変更してもよい。例えば、検知対象のイベントが不審者の侵入である場合には、イベントの発生位置の直近では、イベントの発生後に不審者がすぐに立ち去る可能性が高いので、イベントの発生位置に近い撮像装置10については、それ以外の撮像装置10よりも検知後保存期間を短くしてもよい。また、イベントの発生位置から離れたところでは、時間が経過した後で不審者が撮像画像に映る可能性が高いので、長期記憶の対象領域内において、イベントの発生位置から遠い撮像装置10ほど検知前保存期間の開始時間を遅らせてもよいし、検知後保存期間を長くしてもよい。
【0074】
また、データ記憶システム1では長期記憶の対象となる画像パケットの送信元の撮像装置10をデータ記憶装置20が選択しているが、撮像装置10の選択はデータ解析装置30が行ってもよい。この場合、データ解析装置30は、ヘッダ部の送信元撮像装置アドレスが検知元の撮像装置10のものとは異なる画像パケットのうちで、ヘッダ部の位置情報が示す位置が、検知元の撮像装置10についてのデータ生成位置から所定範囲内にあるものを特定する。そして、データ解析装置30は、特定した他の撮像装置10のアドレス(識別情報)をイベント通知パケットに含めて、データ記憶装置20に通知する。その上で、データ記憶装置20の記憶制御部23は、短期記憶部21に記憶された画像パケットのうちで、送信元撮像装置アドレスがデータ解析装置30から通知されたものと一致する撮像装置10からの画像パケットを長期記憶部22に記憶させればよい。
【0075】
上記ではデータ記憶システムが画像監視システムである場合の例を説明したが、データ記憶システムの記憶対象のデータは画像データに限らず、例えば、音声データであってもよいし、様々なセンサの検知状態を示すデータでもよい。また、監視装置は撮像装置には限定されず、監視対象における何らかの状態変化を検知する他のセンサであってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 データ記憶システム
10 撮像装置
20 データ記憶装置
21 短期記憶部
22 長期記憶部
23 記憶制御部
231 パケット記憶手段
232 記憶移行手段
233 配信手段
26 通信部
30 データ解析装置
40 配信先端末
90 通信網
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7