特許第6576448号(P6576448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576448
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】両側サブマージアーク溶接方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/18 20060101AFI20190909BHJP
【FI】
   B23K9/18 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-524592(P2017-524592)
(86)(22)【出願日】2016年6月3日
(86)【国際出願番号】JP2016002703
(87)【国際公開番号】WO2016208131
(87)【国際公開日】20161229
【審査請求日】2018年9月12日
(31)【優先権主張番号】特願2015-124430(P2015-124430)
(32)【優先日】2015年6月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小西 浩之
(72)【発明者】
【氏名】白井 将太
【審査官】 奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−206563(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第748531(GB,A)
【文献】 特開昭56−158282(JP,A)
【文献】 特開2009−172632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00−9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に並ぶNi鋼板の端部同士をフラックスで覆いながら両側から溶接する両側サブマージアーク溶接方法であって、
Ni基合金からなる第1ワイヤおよび第2ワイヤを電極として用い、
前記第1ワイヤを前記端部同士が近接する接合領域に向けて繰り出す第1トーチを前記接合領域に沿って移動させるとともに、前記第1トーチと反対側から前記第2ワイヤを前記接合領域に向けて繰り出す第2トーチを、前記第2ワイヤの先端を前記第1ワイヤの先端から10mm以上60mm以下の所定距離だけ後方に保ちながら、前記接合領域に沿って移動させる、両側サブマージアーク溶接方法。
【請求項2】
前記端部の少なくとも一方には、他方に向かって尖る、前記Ni鋼板の板厚方向の両側に傾斜面を有するルートフェイスが形成されており、前記ルートフェイスの先端は、前記Ni鋼板の中心に対して前記第1ワイヤ側または前記第2ワイヤ側に位置している、請求項1に記載の両側サブマージアーク溶接方法。
【請求項3】
前記Ni鋼板の板厚は20mm以下である、請求項1または2に記載の両側サブマージアーク溶接方法。
【請求項4】
下側の前記Ni鋼板の両側に前記Ni鋼板に接するようにベルトを配置し、このベルト上に、前記接合領域を覆い隠すように前記フラックスを堆積させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の両側サブマージアーク溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両側(double side)サブマージアーク溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上下に並ぶ鋼板同士を突合せ溶接(横向き溶接)する方法としては、まずは板厚方向の一方および他方に開口する2つの開先の一方の底で溶接を行い、ついで他方の開先の底をガウジングにより裏ハツリした後に、この開先の底で溶接を行う方法がある。これに対し、裏ハツリを省略するために、両側から同時に溶接する方法もある。
【0003】
例えば、特許文献1には、母材の両側に先行電極および後行電極をそれぞれ配置するとともに、先行電極同士の間隔を0〜50mmとする溶接方法が開示されている。なお、特許文献1に開示された溶接方法の実施例では、母材および溶接材料(ワイヤ)が共に軟鋼であるとともに、溶接の際にシールドガスが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−206564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、LNG(液化天然ガス)やLPG(液化石油ガス)などの液化ガスを貯蔵する低温タンクでは、低温靱性に優れたNi鋼板が側壁に使用されることがある。低温タンクは巨大であるため、上下に並ぶNi鋼板同士の突合せ溶接は屋外の現場で行う必要がある。また、溶接作業場所は、高所となることが多い。このような観点からは、上下に並ぶNi鋼板を現場で突合せ溶接する方法として、シールドガスを用いない、端部同士をフラックスで覆いながら両側から溶接する両側サブマージアーク溶接方法を用いることが望ましい。
【0006】
また、屋外の現場では均一な溶接作業を行うことが困難である。従って、溶接作業のバラつきによって溶接部である継手の性能が低くなることを防止するために、電極となるワイヤとして、Ni鋼板よりも高靱性のNi基合金からなるワイヤを用いることが有効である。
【0007】
ところで、本発明の発明者らは、上記のような母材(Ni鋼板)と溶接材料(ワイヤ)とが異なる異材継手を用いた場合には、母材が厚い場合は十分に高い継手強度を得ることができるが、母材が薄い場合には継手強度が低くなることを発見した。
【0008】
そこで、本発明は、突き合わされるNi鋼板が薄い場合でも十分に高い継手強度を得ることができる両側サブマージアーク溶接方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の発明者らは、鋭意研究の結果、異材継手において母材の板厚が小さい場合の継手強度の低下は、溶接部中への母材の溶け込み量(希釈率)が大きくなることに起因することを突き止めた。そして、母材の両側に配置される電極の先端を互いにずらせば、希釈率を低く抑えられることを見出した。本発明は、このような観点からなされたものである。
【0010】
すなわち、本発明の両側サブマージアーク溶接方法は、上下に並ぶNi鋼板の端部同士をフラックスで覆いながら両側から溶接する両側サブマージアーク溶接方法であって、Ni基合金からなる第1ワイヤおよび第2ワイヤを電極として用い、前記第1ワイヤを前記端部同士が近接する接合領域に向けて繰り出す第1トーチを前記接合領域に沿って移動させるとともに、前記第1トーチと反対側から前記第2ワイヤを前記接合領域に向けて繰り出す第2トーチを、前記第2ワイヤの先端を前記第1ワイヤの先端から10mm以上60mm以下の所定距離だけ後方に保ちながら、前記接合領域に沿って移動させる、ことを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、第2ワイヤの先端が第1ワイヤの先端から10mm以上後方に配置されるため、それらを同じ位置に配置する場合に比べ、Ni鋼板の端部における高温となる範囲が狭くなる。従って、溶接部中へのNi鋼板の溶け込み量が小さくなり、希釈率を低く抑えることができる。これにより、十分に高い継手強度を得ることができる。一方、第2ワイヤの先端は、第1ワイヤの先端から60mmを超えて離されないため、溶接部内での溶け込み不良などの欠陥を抑制することができる。
【0012】
前記端部の少なくとも一方には、他方に向かって尖る、前記Ni鋼板の板厚方向の両側に傾斜面を有するルートフェイスが形成されており、前記ルートフェイスの先端は、前記Ni鋼板の中心に対して前記第1ワイヤ側または前記第2ワイヤ側に位置していてもよい。ルートフェイスの先端がNi鋼板の中心に位置している場合には、溶接によって上側のNi鋼板が第2ワイヤ側に倒れることがある。これに対し、前記構成のようにルートフェイスの先端がNi鋼板の中心に対して第1ワイヤ側または第2ワイヤ側に位置していれば、そのような上側のNi鋼板の倒れを抑制することができる。
【0013】
例えば、前記Ni鋼板の板厚は20mm以下であってもよい。
【0014】
下側の前記Ni鋼板の両側に前記Ni鋼板に接するようにベルトを配置し、このベルト上に、前記接合領域を覆い隠すように前記フラックスを堆積させてもよい。この構成によれば、溶接位置に合わせてフラックスの堆積位置を簡単に変更することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、突き合わされるNi鋼板が薄い場合でも十分に高い継手強度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る両側サブマージアーク溶接方法を説明するための断面図である。
図2】第1トーチおよび第2トーチの位置関係を示す平面図である。
図3】別のルートフェイスの形状を示す断面図である。
図4】実施例1〜4および比較例1,2の継手構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1および図2を参照して、本発明の一実施形態に係る両側サブマージアーク溶接方法を説明する。この両側サブマージアーク溶接方法は、上下に並ぶNi鋼板1同士を突合せ溶接(横向き溶接)するものである。具体的には、下側のNi鋼板1の上端部と上側のNi鋼板1の下端部とをフラックス5で覆いながら両側から溶接する。
【0018】
Ni鋼板1の端部同士が近接する接合領域15(いわゆる、溶接線)の両側には、電極として用いられる第1ワイヤ21および第2ワイヤ22が配置される。第1ワイヤ21は、片側で先行して溶接を行うためのものであり、第2ワイヤ22は、反対側で少し遅れて溶接を行うためのものである。第1ワイヤ21は、接合領域15に向けて第1トーチ31により繰り出され、第2ワイヤ22は、第1トーチ31と反対側から、接合領域15に向けて第2トーチ32により繰り出される。
【0019】
まず、母材であるNi鋼板1ならびに溶接材料である第1および第2ワイヤ21,22について説明する。
【0020】
Ni鋼板1は、主添加物としてNi(ニッケル)を含む鉄合金である。この鉄合金中のニッケル以外の添加物としては、例えば、C(炭素)、Si(ケイ素)、Mn(マンガン)などがある(例えば、日本工業規格 JIS G 3127参照)。例えば、Ni鋼板1のニッケルの含有量は、質量パーセントで3%以上15%以下である。中でも、液化ガスを貯蔵する低温タンク用としては、Ni鋼板1として7%Ni鋼や9%Ni鋼を用いることが好ましい。Ni鋼板1は、典型的にはフェライト構造を有する。
【0021】
本実施形態の両側サブマージアーク溶接方法は、Ni鋼板1が厚い場合にも用いることができるが、Ni鋼板1が薄い場合(例えば、Ni鋼板1の板厚が20mm以下の場合)に用いれば、溶接部である継手の強度の低下を防止できるという効果が得られる。なお、Ni鋼板1の板厚は、18mm以下でもよいし、16mm以下でもよい。
【0022】
本実施形態では、下側のNi鋼板1の上端部はフラットであるが、上側のNi鋼板1の下端部に、下側のNi鋼板1の上端部に向かって尖る、Ni鋼板1の板厚方向の両側に傾斜面を有するルートフェイス12が形成されている。これにより、Ni鋼板1の端部同士の間に、Ni鋼板1の板厚方向の一方および他方に開口する2つの開先11が形成されている。ただし、ルートフェイス12は、下側のNi鋼板の上端部にも形成されていてもよい。あるいは、下側のNi鋼板の上端部のみにルートフェイス12が形成されていてもよい。
【0023】
Ni鋼板1の端部同士の間のルートギャップは、例えば、1〜3mmである。
【0024】
本実施形態では、ルートフェイス12のフラットな先端13が、Ni鋼板1の中心CLに位置している。ただし、図3に示すように、ルートフェイス12の先端13は、Ni鋼板1の中心CLに対して第2ワイヤ22側に位置していてもよい。ルートフェイス12の先端13がNi鋼板1の中心CLに位置している場合には、溶接によって上側のNi鋼板1が後行する第2ワイヤ22側に倒れることがある。これに対し、図3に示すようにルートフェイス12の先端13がNi鋼板1の中心CLに対して第2ワイヤ22側に位置していれば、そのような上側のNi鋼板1の倒れを抑制することができる。この効果は、ルートフェイスの先端がNi鋼板1の中心CLに対して第1ワイヤ21側に位置していても、同様に得ることができる。あるいは、ルートフェイス12のフラットな先端13がNi鋼板1のどちらかの一面側に位置するように、ルートフェイス12が1つの傾斜面のみを有していてもよい。
【0025】
第1ワイヤ21および第2ワイヤ22は、Ni鋼板1よりも高靱性のNi基合金からなる。例えば、このようなNi基合金は、Niを質量パーセントで55%以上含む。Ni基合金のNi以外の成分は、例えば、Cu(銅)、Cr(クロム)、Fe(鉄)、Mo(モリブテン)などである。Ni基合金は、典型的にはオーステナイト構造を有する。第1および第2ワイヤ21,22の直径は、例えば1.0〜3.2mmである。
【0026】
例えば、Ni鋼板1が9%Ni鋼である場合、第1および第2ワイヤ21,22としては、日本工業規格 JIS G 3333 YS9Niを準拠する任意のワイヤを使用することができる。また、この場合、フラックス5としては、例えば、日本工業規格 JIS G 3333 FS9Ni-Hを準拠する任意のフラックスを使用することができる。
【0027】
次に、本実施形態の両側サブマージアーク溶接方法を詳細に説明する。
【0028】
まず、下側のNi鋼板1の両側に、当該Ni鋼板1に接するようにベルト4を配置する。このベルト4は、図略のフラックス供給装置の一部である。ついで、ベルト4上に、粉末であるフラックス5を、接合領域15を両側から覆い隠すように、換言すれば双方の開先11内にフラックス5が充填されるように堆積する。
【0029】
その後、第1トーチ31および第2トーチ32を、第1ワイヤ21が一方の開先11内に挿入され、かつ、第2ワイヤ22が他方の開先11内に挿入されるように、配置する。このとき、図2に示すように、第1ワイヤ21が溶接方向の前方に位置し、第2ワイヤ22が溶接方向の後方に位置するように、第1トーチ31および第2トーチ32を配置する。換言すれば、第2ワイヤ22の先端は、第1ワイヤ21の先端から所定距離Lだけ後方に位置する。
【0030】
所定距離Lは、10mm以上60mm以下であることが好ましい。所定距離Lが小さくなりすぎたり大きくなりすぎたりすると、継手強度が低下するためである。所定距離Lは、15mm以上であることがより好ましく、20mm以上であることがさらに好ましい。また、所定距離Lは、50mm以下であることがより好ましく、40mm以下であることがさらに好ましい。
【0031】
その後、第1ワイヤ21および第2ワイヤ22に電圧を印加しながら、第1トーチ31を接合領域15に沿って移動させるとともに、第2トーチ32を、第2ワイヤ22の先端を第1ワイヤ21の先端から所定距離Lだけ後方に保ちながら、接合領域15に沿って移動させる。これにより、双方の開先11の底に初層61が形成される。初層61の形成後は、同様にして第2層62を形成する。なお、初層61のみで開先11内が埋まるのであれば、第2層62の形成は不要である。
【0032】
第1ワイヤ21および第2ワイヤ22のそれぞれに印加される電圧は、交流電圧であってもよいが、直流電圧であることが好ましい。直流電圧の場合、電圧値は、例えば20〜40Vであり、電流値は、例えば200〜400Aである。また、第1および第2トーチ31,32の移動速度は、例えば20〜70cm/分である。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の両側サブマージアーク溶接方法では、第2ワイヤ22の先端が第1ワイヤ21の先端から10mm以上後方に配置されるため、それらを同じ位置に配置する場合に比べ、Ni鋼板1の端部における高温となる範囲が狭くなる。従って、溶接部中へのNi鋼板1の溶け込み量が小さくなり、希釈率を低く抑えることができる。これにより、十分に高い継手強度を得ることができる。一方、第2ワイヤ22の先端は、第1ワイヤ21の先端から60mmを超えて離されないため、溶接部内での溶け込み不良などの欠陥を抑制することができる。
【0034】
また、本実施形態では、ベルト4上にフラックス5を堆積するため、溶接位置に合わせてフラックス5の堆積位置を簡単に変更することができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
まず、上下に並べられる2枚のNi鋼板として、日本工業規格 JIS G 3127 SL9N590を準拠する、幅500mm、高さ200mm、板厚12mmの9%Ni鋼板を用意した。下側のNi鋼板の上端部はフラットとし、上側のNi鋼板の下端部に、図1に示すように、中央2mmがフラットで両側が45度傾斜するルートフェイスを形成した。ルートギャップは2mmとした。
【0037】
電極として用いられる第1および第2ワイヤとして、日本工業規格 JIS G 3333 YS9Niを準拠する直径2.4mmの神戸製鋼所社製US-709Sを用意し、フラックスとして、日本工業規格 JIS G 3333 FS9Ni-Hを準拠する神戸製鋼所社製PF-N4を用意した。
【0038】
第1ワイヤの先端と第2ワイヤの先端との間の所定距離Lは40mmとし、第1および第2ワイヤに、電圧28V、電流360Aの直流電圧を印加して溶接を行った。第1および第2トーチは、40cm/分で移動させた。これにより、図4に示すような継手構造7を得た。
【0039】
(実施例2)
まず、上下に並べられる2枚のNi鋼板として、米国試験材料協会規格 ASTM A553を準拠する、幅1500mm、高さ150mm、板厚9.6mmの9%Ni鋼板を用意した。下側のNi鋼板の上端部に、第1ワイヤ側の一面側2mmがフラットで、中央および他面側が15度傾斜のルートフェイスを形成した。上側のNi鋼板の端部に、第1ワイヤ側の一面側2mmがフラットで、中央および他面側が40度傾斜のルートフェイスを形成した。すなわち、Ni鋼板の端部同士の間に、一面側から他面側に向かって角度55度で開く1つの開先のみを形成した。
【0040】
電極として用いられる第1および第2ワイヤとして、直径1.6mmのリンカーン社製Techalloy 276を用意し、フラックスとして、リンカーン社製P2007を用意した。
【0041】
第1ワイヤの先端と第2ワイヤの先端との間の所定距離Lは25mmとし、第1および第2ワイヤに、電圧28V、電流300Aの直流電圧を印加して溶接を行った。第1および第2トーチは、35cm/分で移動させた。これにより、図4に示すような継手構造7を得た。
【0042】
(実施例3)
まず、上下に並べられる2枚のNi鋼板として、日本工業規格 JIS G 3127 SL9N590を準拠する、幅500mm、高さ200mm、板厚12mmの9%Ni鋼板を用意した。下側のNi鋼板の上端部はフラットとし、上側のNi鋼板の下端部に、図1に示すように、中央2mmがフラットで両側が45度傾斜するルートフェイスを形成した。ルートギャップは2mmとした。
【0043】
電極として用いられる第1および第2ワイヤとして、日本工業規格 JIS G 3333 YS9Niを準拠する直径2.4mmの神戸製鋼所社製US-709Sを用意し、フラックスとして、日本工業規格 JIS G 3333 FS9Ni-Hを準拠する神戸製鋼所社製PF-N4を用意した。
【0044】
第1ワイヤの先端と第2ワイヤの先端との間の所定距離Lは30mmとし、第1および第2ワイヤに、電圧29V、電流300Aの直流電圧を印加して溶接を行った。第1および第2トーチは、40cm/分で移動させた。これにより、図4に示すような継手構造7を得た。
【0045】
(実施例4)
第1ワイヤの先端と第2ワイヤの先端との間の所定距離Lを50mmとした以外は、実施例3と同様にして継手構造7を得た。
【0046】
(比較例1)
第1ワイヤの先端と第2ワイヤの先端とを同じ位置とした(すなわち、所定距離L=0mm)以外は、実施例1と同様にして継手構造7を得た。
【0047】
(比較例2)
第1ワイヤの先端と第2ワイヤの先端との間の所定距離Lを80mmとした以外は、実施例3と同様にして継手構造7を得た。
【0048】
(引張試験)
図4に示すように、実施例1〜4および比較例1,2の継手構造7から、溶接方向と直交する方向に延びる短冊状の2つのサンプル71を切り出し、これらのサンプル71に対して引張試験を行った。引張試験では、各サンプル71を長手方向に引っ張り、各サンプル71の溶接部が破断したときの応力を引張強さとして測定した。なお、Ni鋼板自体の引張強さは、750MPa程度である。
【0049】
実施例1〜4および比較例1,2の継手構造7の製造条件および引張強さを表1,2に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
表2からは、第1ワイヤの先端と第2ワイヤの先端とを同じ位置とした比較例1では、引張強さが600MPaを下回り、継手強度が低くなっていることが分かる。これに対し、第2ワイヤの先端を第1ワイヤの先端から後方にある程度離した実施例1〜4では、引張強さが690MPaを超えており、高い継手強度が得られている。しかし、第2ワイヤの先端を第1ワイヤの先端から後方に大きく離した比較例2では、引張強さが680MPa(一方のサンプルでは650MPa)を下回り、継手強度が低くなっている。
【符号の説明】
【0053】
1 Ni鋼板
12 ルートフェイス
13 先端
15 接合領域
21 第1ワイヤ
22 第2ワイヤ
31 第1トーチ
32 第2トーチ
4 ベルト
5 フラックス
図1
図2
図3
図4