特許第6576449号(P6576449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プランゼー エスエーの特許一覧

特許6576449タンタルコンデンサの熱処理のための装入装置
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576449
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】タンタルコンデンサの熱処理のための装入装置
(51)【国際特許分類】
   F27D 3/12 20060101AFI20190909BHJP
   C22C 27/04 20060101ALI20190909BHJP
   C22C 27/02 20060101ALI20190909BHJP
   C23C 24/04 20060101ALI20190909BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20190909BHJP
【FI】
   F27D3/12 Z
   C22C27/04 101
   C22C27/02 103
   C22C27/04 102
   C23C24/04
   H01G13/00 371Z
【請求項の数】17
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-527343(P2017-527343)
(86)(22)【出願日】2015年11月18日
(65)【公表番号】特表2018-503045(P2018-503045A)
(43)【公表日】2018年2月1日
(86)【国際出願番号】AT2015000145
(87)【国際公開番号】WO2016077853
(87)【国際公開日】20160526
【審査請求日】2018年1月31日
(31)【優先権主張番号】GM404/2014
(32)【優先日】2014年11月21日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】390040486
【氏名又は名称】プランゼー エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】エバール、ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ホスプ、パトリック
(72)【発明者】
【氏名】カトライン、マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ラング、ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】スプレンガー、ディートマー
(72)【発明者】
【氏名】トラクスラー、ハンネス
【審査官】 静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−237111(JP,A)
【文献】 特開2003−207279(JP,A)
【文献】 特開2005−331215(JP,A)
【文献】 特開2004−281392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 3/00−5/00
F27B 5/00−7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ta又は90質量%を超えるTa含有量を有するTa合金からなる少なくとも1つの領域A及びMo、Mo含有量が90質量%を超えるMo合金、W、W含有量が90質量%を超えるW合金、又はMoとWとの合計含有量が90質量%を超えるMo−W合金からなる少なくとも1つの領域Bを含有してなり、前記領域A及び前記領域Bによって形成される層複合体を含有してなることを特徴とする収容用具
【請求項2】
前記領域A及び前記領域Bが、機械的嵌合結合及び原子間力又は分子間力による結合からなる群から選ばれる少なくとも1つの結合技術を用いて相互に結合されていることを特徴とする請求項1に記載の収容用具
【請求項3】
領域A/領域B/領域Aの層配列を有する層複合体を含有してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の収容用具
【請求項4】
前記領域Aが熱溶射プロセスに依り前記領域Bに適用されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の収容用具
【請求項5】
前記熱溶射プロセスがコールドガススプレーであることを特徴とする請求項に記載の収容用具
【請求項6】
器又はプレートであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の収容用具
【請求項7】
前記容器の内側が少なくとも部分的に前記領域Aからなることを特徴とする請求項に記載の収容用具
【請求項8】
前記容器の外側が少なくとも部分的に前記領域Bからなることを特徴とする請求項又はに記載の収容用具
【請求項9】
前記容器がカップとして設計されていることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の収容用具
【請求項10】
前記領域BがMo、Mo−0.1〜2質量%のLa、TZM又はMHCからなることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の収容用具
【請求項11】
前記領域Aが純Taからなることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の収容用具
【請求項12】
高温炉で使するための請求項1〜11のいずれか1項に記載の収容用具。
【請求項13】
少なくとも下記の工程を有する収容用具の製造方法。
−Mo、Mo含有量が90質量%を超えるMo合金、W、W含有量が90質量%を超えるW合金、又はMo+Wの合計含有量が90質量%を超えるMo−W合金からなる少なくとも1つの領域Bを含有してなる主要部分を準備する工程、及び
−Ta又はTa含有量が90質量%を超えるTa合金からなる層(領域A)を、前記主要部分が少なくとも部分的にこの層を備えるように、熱溶射により領域Bに塗被する工程。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の収容用具を製造するための請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記層がコールドガススプレーにより適用されることを特徴とする請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
5バールを超える圧力を有するプロセスガスが先細末広ノズル中で加速され、Ta又はTa含有量が90質量%を超えるTa合金からなる粉末が前記先細末広ノズルの上流で又は前記先細末広ノズル中に又は前記先細末広ノズルの下流で、前記プロセスガス中に注入され、加速され、少なくとも幾つかの領域において前記主要部分上に堆積されて前記領域Aを形成することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記領域Bが圧延された材料から製造されることを特徴とする請求項1316のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Ta又はTa含有量が90質量%を超えるTa合金からなる少なくとも1つの領域を有する装入装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンタル(Ta)は、例えば、化学装置の分野及び高温炉に用いられる。更に、Taは、Ta電解コンデンサにおいて用いられる。Ta電解コンデンサは、Taからなる電極本体を有し、陽極酸化により五酸化タンタルの誘電体層で均一に覆われている。電極本体を製造するために、Ta粉末が結合剤と混合され、次いで、Ta線の周りに圧縮されて球形の又は立方形のブロックを形成する。このブロックが高温で焼結される。焼結の結果、粉末粒子は、相互に電気的に接続される。焼結は、典型的には、例えばTaからなる容器又はプレートのような装入装置の中で、1,300〜2,000℃の範囲の温度で実施される。もし容器の壁の高さが低いときは、それはカップ(例えば、装入カップ又は焼結カップ)と称される。装入装置は、交差汚染を避けるために、Taで作られる。交差汚染とは、特に、装入装置の構成要素が加熱されるべき材料中に(例えばTaコンデンサ中に)拡散することである。
【0003】
Taコンデンサの焼結は、例えば特許文献1又は2に記載されている。Ta製の装入装置の不利な点は、特に長時間使用した場合又は高繰返し応力を掛けた場合に、高温強度乃至耐クリープ性が低く、寸法安定性が不十分なことである。高温寸法安定性は、(例えばイットリウム(Y)又はシリコン(Si)で)ミクロ合金化したTaを使用した場合にも、改善されない。従来法(例えば、溶融又は高温焼結)で製造された高度合金化Ta合金(例えば10質量%W含有Ta)は、Ta中に溶解した合金化元素に因るTaコンデンサの汚染を引き起こすので、使用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許公開第103700504号
【特許文献2】特開2013−135211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、強度が高く、特に高温強度及び耐クリープ性が高く、また、Taコンデンサを汚染しない装入装置を提供することにある。
【0006】
本発明の更なる目的は、上述の特性を有する装入装置を製造する方法を提供することにある。
【0007】
上述の目的は、独立請求項により達成される。有利な態様は、従属請求項に示されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
装入装置は、Ta又はTa含有量が90質量%、好ましくは95質量%、を超えるTa合金からなる少なくとも1つの領域Aと、Mo、Mo含有量が90質量%、好ましくは95質量%、を超えるMo合金、W、W含有量が90質量%、好ましくは95質量%、を超えるW合金、又はMoとWとの合計含有量が90質量%、好ましくは95質量%、を超えるMo−W合金からなる少なくとも1つの領域Bとを、含有してなる。
装入装置は、有利には、少なくとも1つの領域Aと少なくとも1つの領域Bとからなる。
【0009】
本発明の装入装置により、相反する高寸法安定性特性と交差汚染の防止とを1つの部品において同時に達成することが可能になる。
【0010】
領域Bは、上述のように、Mo、Mo含有量が90質量%、好ましくは95質量%、を超えるMo合金、W、W含有量が90質量%、好ましくは95質量%、を超えるW合金、又はMoとWとの合計含有量が90質量%、好ましくは95質量%、を超えるMo−W合金からなる。これらの材料は、純粋なTa又はTa合金より、遥かに高い高温強度及び耐クリープ性を有しており、その結果、装入装置は、高い使用温度においても優れた寸法安定性を示す。有利なMo合金は、例えば、Mo−0.1〜2質量%の希土類酸化物である。特に有利な希土類酸化物はLaである。熱処理により又は使用中に、これらの合金は、粗大な整列積層結晶ミクロ構造を形成し、これにより、取り分け1,300℃を超える温度における優れた耐クリープ性が確保される。他の有利なMo合金は、TZM及びMHCである。TZMは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)及び炭素(C)との合金である。典型的なTi量は、約0.3〜0.7質量%であり、典型的なZr量は、0.05〜0.1質量%であり、典型的なC量は、0.15〜0.04質量%である。MHCは、ハフニウム(Hf)及びCとの合金化であり、典型的なHfの量は1〜1.4質量%で、典型的なCの量は0.05〜0.15質量%である。有利なタングステン合金の例は、典型的には0.004〜0.01質量%のカリウム(K)を含有するASKタングステン、典型的には1〜2質量%のLaを含有するW−La、及び、典型的には1〜2質量%のCeを含有するW−Ceである。Mo−W合金も、また、有利に使用することができ、Mo含有量及びW含有量は、5〜95質量%の範囲で、有利に選定することができる。
【0011】
領域Aは、純粋なTa又は90質量%、好ましくは95質量%、を超えるTa含有量を有するTa合金よりなる。本発明において、純粋なTaとは、技術的な意味で純粋なTaをいい、典型的なTa含有量は、約99.5〜99.995質量%である。
Ta合金は、有利には、酸化物、炭化物、窒化物、W、Mo及びニオブ(Nb)からなる群から選ばれる1以上の成分を0.001〜10質量%含有していてもよい。W、Mo及びNbは、溶解した形態ではなく分離した粒子として存在するのが有利であり、これにより外部への拡散が減少する。
【0012】
領域Aと領域Bとは、形態的に(Formschluessig)及び/又は物質的に(stoffschluessig)に結合するのが有利である。形態的結合は、結合の構成成分が力の行使なしでは又は加えている力の解除では分離できないことによって特徴づけられる。物質的結合も、また、原子間力及び/又は分子間力によって、部材がともに保持されているので、解放することができない。
【0013】
領域Aは、領域Bに層の形態で適用されるのが特に有利である。このようにして製造された複合材料は、通常、層複合体と称される。領域Aは、形態的結合(例えば、機械的噛み合い効果)により及び/又は物質的に(例えば、相互拡散により)、領域Bに結合される。更に非常に有利な態様では、層複合体は、形態的に及び/又は物質的に相互に結合した3つの層を有する。外側の層は領域Aからなり、中央の層は領域Bからなる。
【0014】
領域Aは、熱溶射プロセスに依り、簡単な方法で適用できる。熱溶射プロセスには、溶融浴溶射、電弧溶射、プラズマ溶射、フレーム溶射、高速フレーム溶射、爆発溶射、レーザー溶射、PTWA溶射及びコールドガススプレー(略してCGS)が含まれる。CGSは、特に有利なものとして選ばれる。というのは、この場合、スプレーされる材料が溶融されず、非常に純粋であり、それにより、低酸素層を生成することができるからである。熱溶射に関する教科書に詳細に述べられているとおり、当業者は、堆積された層のミクロ構造から、その層が熱溶射プロセスによって製造されたものか否かを疑問の余地なく、結論付けることができる。当業者は、また、CGS層を、他の熱溶射プロセスによって製造された層から、区別することもできる。というのは、CGSの場合、被覆材料は溶融されず、プロセスに関連する酸化が起こらないからである。層を構成する粒子は、少なくとも幾つかの領域において冷間変形されており、比較的(他の熱溶射プロセスに比較して)高い硬度を示す。
【0015】
CGSにおいて、粉末粒子は、非常に高い運動量且つ低い熱エネルギで支持体材料に適用される。高圧下のプロセスガス、例えば窒素(N)、空気、ヘリウム(He)又はこれらの混合物、が、先細末広ノズル(超音波ノズルとも称される。)により、減圧される。典型的なノズル形状は、ラバルノズル(ドラバルノズルとも称される。)である。使用されるプロセスガスにより、Nの場合は900m/秒から、Heの場合は2,500m/秒のガス速度が達成される。被覆材料(純Ta又は90質量%を超えるTa含有量のTa合金)は、例えば、スプレーガンの部分を形成する先細末広ノズルの最も狭い断面部分の上流でガス流に注入され、典型的には300〜1,200m/秒の速度に加速されて領域B(例えば、金属シートで形成された賦形部品)に堆積される。先細末広ノズルの上流でガスを加熱することにより、ガスの流速及び、従って、粒子の速度を増加させることができる。CGSにより、Ta又はTa含有量が90質量%を超えるTa合金をスプレーして稠密で強固に付着した層を得ることができる。個々のTa又はTa合金粒子から複数の層を層状に作りあげることができる。
【0016】
このようにして製造された複合材料は、異なる機能特性を有する領域を有する。領域Bにより、高い高温強度と耐クリープ性とをTaよりも低い材料コストで、確保することができる。Ta又はTa合金からなる被覆(領域A)は、熱処理され又は焼結される材料、例えばTaコンデンサ、と使用中に接触する場合に、有利に適用することができる。これにより、Taコンデンサが装入装置の元素に因り汚染されることを確実に防止することができる。
【0017】
本発明の装入装置は、高使用温度及び高繰り返し回数でも寸法的に安定である。領域Bから領域Aへの又は領域Aから領域Bへの元素の領域間拡散は、驚くべきことに、所与の使用温度/時間において、非常に低いものにすぎず、従って、装入装置の安定性を損なう(カーケンドール孔として知られている)拡散孔が、高温での長時間使用中にも実質的に形成されない。
【0018】
更に、CGSによるTaの塗被効率は、非常に高いので、その結果、実質上、被覆中の材料の損失がない。Ta又はTa合金からなる被覆は、50〜400μm、好適には100〜300μm、特に好適には120〜200μm、の層厚を有するのが有利である。Ta層の厚さは、CGSにより精密に信頼性よく設定することができる。従って、より厚いTa層を有し、より高い応力に曝すことが可能な装入装置の領域を提供することができる。
【0019】
より好ましい態様において、装入装置は、容器又はプレートとして設計される。容器は、好ましくは、領域Aをその内部の少なくとも一部に有する。容器の内側のみが熱処理されるべき材料(例えば、コンデンサ)と接触するので、熱処理されるべき材料の汚染を確実に避けることができる。容器の外側は、有利には、領域Bで作られる。というのは、この領域は、熱処理される材料と接触しないからである。領域Bは、高い寸法安定性を保証する。更に好ましい態様では、容器は、外側及び内側の少なくとも幾つかの領域に領域Aを有する。領域Bは、少なくとも幾つかの領域において領域Aの間に配列されている。この態様により、熱処理されるべき材料が容器の外側と接触したとしても、信頼性よく汚染を防止することができる。領域Bの中央層は、また、容器の高寸法安定性を保証する。
【0020】
容器は、カップとして設計するのが特に好ましい。本発明において、カップは、円筒形側面の高さが低い容器である。より好ましくは、容器又はカップは、中央領域に装入支持装置として機能するスリーブを有している。
【0021】
本発明の装入装置は、特に有利に、高温炉で使用することができる。本発明において、高温炉とは、1,000℃を超える温度で運転される炉をいう。
【0022】
本発明の目的は、また、装入装置を製造するプロセスに依り達成される。
【0023】
本発明のプロセスは、少なくとも下記の工程を有する。
−Mo、Mo含有量が90質量%、好ましくは95質量%、を超えるMo合金、W、W含有量が90質量%、好ましくは95質量%、を超えるW合金、又はMo+Wの合計含有量が90質量%、好ましくは95質量%、を超えるMo−W合金からなる少なくとも1つの領域Bを含有してなる主要部分を準備する工程、及び
−Ta、又はTa含有量が90質量%、好ましくは95質量%、を超えるTa合金からなる層(領域A)を、前記主要部分が少なくとも部分的にこの層を備えるように、熱溶射により領域Bに塗被する工程。
【0024】
本発明のプロセスは、下記の特性の少なくとも1つを有する装入装置を製造するのに好ましく用いられる。
−領域A及び領域Bは、形態的に及び/又は物質的に結合される。
−領域A及び領域Bは、層複合体を形成する。
−前記層複合体は、領域A/領域B/領域Aの層配列を有する。
−装入装置は、容器又はプレートである。
−装入装置の内側は少なくとも部分的に領域Aで構成される。
−装入装置の外側は少なくとも部分的に領域Bで構成され、内側は少なくとも部分的に領域Aで構成される。
−装入装置の外側は少なくとも部分的に領域Bで構成され、内側は少なくとも部分的に領域Aで構成される。
−装入装置の外側及び内側は少なくとも部分的に領域Aで構成される。領域Bの層は、領域Aの層の間に配列される。
−容器は、カップとして設計される。
−領域Bは、Mo、Mo−0.1〜2質量%のLa、TZM又はMHCで構成される。
−領域Aは、純Taからなる。
−領域Aは、溶射された層として存在し、領域Bは、変形された金属シート又はプレートとして存在する。
【0025】
特に有利な熱溶射プロセスは、CGSである。好ましい変形態様において、5バールを超える、好ましくは10バールを超える、特に好ましくは20バールを超える(例えば20〜60バールの)圧力を有するプロセスガスが、先細末広ノズル中で加速され、Ta又はTa含有量が90質量%を超えるTa合金からなる粉末(塗被材料)が先細ノズルの上流で、先細ノズル中に又は先細ノズルの下流で、プロセスガス中に注入され、加速され、主要部分上に堆積される。例として示された60バールの上限値は、現在利用可能なプラントに基づく。将来、より高いガス圧力が可能なプラントが利用可能となれば、前記制限値は、対応して移動し得る。塗被材料は、典型的には、300〜800m/秒の速度に加速される。プロセスガスは、先細末広ノズルの上流で加熱されるのが有利である。その結果、ノズル中でのガスの膨張、ガスの流速及び従って粒子速度を増大させることができる。
【0026】
本発明のプロセスは、その低いプロセス温度の故に、好適には、また、酸化物、炭化物、窒化物、W、o及びニオブ(Nb)からなる群から選ばれる1以上の成分0.001〜10質量%を含有するTa合金の製造を可能にする。溶射操作の後、W、Mo及びNbは、Taマトリクス中に個別の粒子として存在する。セラミックス又は金属(例えば、W及びMo)の硬い構成成分は、層厚に好ましい効果をもたらす。というのは、前もって堆積された層の構成成分が硬い粒子の衝突によって圧縮されるからである。
【0027】
これらの成分の導入により、また、Ta層の高温強度及び耐クリープ性を向上させることができる。セラミック成分は、1,300℃を超える、特に好ましくは1,800℃を超える、融点を有するのが有利である。
【0028】
CGSにおける溶射距離は、好ましくは20〜60mm、特に好ましくは30〜50mmである。所望の層厚は、スプレーパスの回数を適宜選定することにより設定することができる。更に、領域Bは、有利には、変形した材料からなる。というのは、それにより、高い高温強度と耐クリープ性が達成されるからである。特に有利な変形プロセスは、圧延である。従って、変形された材料は、有利には圧延されたプレート又は圧延された金属シートである。プレート又は金属シートは、更に成形プロセスに依り加工して賦形された部品(例えば容器又はカップ)とするのが有利である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、実施例の助けを借りて、本発明を説明する。
【0030】
好適な実施態様において、装入装置は、カップ中に装入される部品(例えばTaコンデンサ)の熱処理に用いられるカップとして設計される。このカップは、一片で形成され、カップの底と縁とを有する。Moのスリーブがカップの底の中央に結合されている。例示的態様において、カップは、178mmの外径と17mmの縁の高さを有する。再結晶状態の、変形された(金属シート様出発材料)Mo−0.7質量%La合金がカップの主要部分の材料として用いられ、更に通常の彫刻可能な賦形プロセスに依り加工されてカップが得られる。カップの内側及びスリーブの外側をCGSにより純Taで塗被し、次いで互いに接合させる。26.4μmのレーザー光学的に測定した平均直径d50を有するTa粉を塗被材料として用いる。
【0031】
以下の塗被パラメータを使用した。
−プロセスガス圧:30バール
−プロセスガス流:65m/h
−Ta粉の供給速度:46g/分
−プロセスガス温度:800℃
−塗被ガン−主要部分の距離:40mm
【0032】
層を測定した結果、以下の値が得られた。
−密度:99.5%
−O含有量:47.8μg/g
−水素(H)含有量:26μg/g
−N含有量:94μg/g
【0033】
スリーブの外側及びカップの内側を塗被した後、スリーブをカップの主要部分に結合させる。このために、スリーブをカップの底の中央開孔に押し込み、パンチングして結合させる。スリーブとカップの底とをパンチングにより変形させ、リベット状の結合を形成する。本発明によるカップは、焼結炉においてTaコンデンサに使用する。分析の結果、使用した焼結温度1,450℃において、主要部分の材料に依るTaコンデンサの汚染は、見られない。複数回の繰り返しの後、本発明の装入装置は、如何なる変形をも示さない。