(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576450
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】連続的な油圧拡張による管の製造のための方法及び構成
(51)【国際特許分類】
B21D 41/02 20060101AFI20190909BHJP
B21D 39/08 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
B21D41/02 A
B21D39/08 A
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-530617(P2017-530617)
(86)(22)【出願日】2015年12月8日
(65)【公表番号】特表2017-536990(P2017-536990A)
(43)【公表日】2017年12月14日
(86)【国際出願番号】EP2015002468
(87)【国際公開番号】WO2016091376
(87)【国際公開日】20160616
【審査請求日】2018年10月9日
(31)【優先権主張番号】14196894.1
(32)【優先日】2014年12月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507226695
【氏名又は名称】サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】スヴェードベリ, ダニエル
【審査官】
豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】
特開平1−138035(JP,A)
【文献】
特開2001−137978(JP,A)
【文献】
特開昭51−32472(JP,A)
【文献】
特開昭61−56746(JP,A)
【文献】
特開昭50−90562(JP,A)
【文献】
特開昭50−30780(JP,A)
【文献】
特開昭50−33967(JP,A)
【文献】
特公昭48−20984(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 41/02
B21D 39/08
B21D 39/20
B21C 23/08
B21C 37/00
B21K 21/00
B21J 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管(110)を製造するための方法であって、
a.名目上の外径(D)及び名目上の内径(d)を有する、管状中空ブランク(100)を提供するステップ、
b.内側ツール部分(64)と外側ツール部分(61)が、前記名目上の外径(D)及び前記名目上の内径(d)を有する前記管状中空ブランク(100)を受け入れる入口開口部(68)と、外径(D1)及び内径(d1)を有する管(110)のための出口開口部(69)を画定するように、同軸状に配置された前記外側ツール部分(61)と前記内側ツール部分(64)を備えた、拡管ツール(60)を提供するステップであって、
前記内側ツール部分(64)が、前記中空ブランク(100)を密封可能に支持するための第1の密封部分(65)と、前記管(110)を密封可能に支持するための第2の密封部分(66)を備え、前記第1の密封部分(65)と前記第2の密封部分(66)との間でスペース(70)が延在し、前記スペース(70)が流体源に連結されている、ステップ、
c.前記拡管ツール(60)を通して前記管状中空ブランク(100)を連続的に移動させ、且つ、油圧(P1)が前記管状中空ブランク(100)の内側に加えられるように前記スペース(70)に流体を供給するステップであって、
前記管状中空ブランク(100)が塑性変形するように、前記油圧(P1)の大きさが選択される、ステップを含む、方法。
【請求項2】
前記管状中空ブランク(100)内で生成された接線方向の引張応力(σ)が、前記管状中空ブランクの材料の塑性域内にあるように、前記油圧(P1)の前記大きさが選択される、請求項1に記載の管を製造するための方法。
【請求項3】
前記管状中空ブランク(100)内で生成された接線方向の引張応力(σ)が、前記管状中空ブランクの材料の耐力以上であるように、前記油圧(P1)の前記大きさが選択される、請求項1又は2に記載の管を製造するための方法。
【請求項4】
前記管状中空ブランク(100)内で生成された接線方向の引張応力(σ)が、前記管状中空ブランクの材料の引張強度以上であるように、前記油圧(P1)の前記大きさが選択される、請求項1又は2に記載の管を製造するための方法。
【請求項5】
前記管状中空ブランク(100)が、部分的に前記油圧(P1)によって変形され、部分的に機械的変形によって変形される、請求項1から4のいずれか一項に記載の管を製造するための方法。
【請求項6】
油圧(P3)が、前記拡管ツール(60)の前記入口開口部(68)から、前記管状中空ブランクの第1の端部(101)に向けて延在する、前記管状中空ブランク(100)の一部分内(40)に加えられる、請求項1から5のいずれか一項に記載の管を製造するための方法。
【請求項7】
前記管状中空ブランク内で生成された接線方向の引張応力(σ)が、前記管状中空ブランクの材料の弾性域内にあるように、前記油圧(P3)の大きさが選択される、請求項6に記載の管を製造するための方法。
【請求項8】
前記拡管ツールへ向かう方向において、前記管状中空ブランクの第1の端部(101)に作用する力(F)によって、前記管状中空ブランク(100)が、前記拡管ツール(60)を通って連続的に移動される、請求項1から7のいずれか一項に記載の管を製造するための方法。
【請求項9】
前記管状中空ブランクの材料が、スチール若しくはステンレス鋼、又は二相ステンレス鋼若しくは高合金ステンレス鋼である、請求項1から8のいずれか一項に記載の管を製造するための方法。
【請求項10】
管(110)を製造するための構成(1)であって、
管状中空ブランク(100)を受け入れるための第1の管状ハウジング(10)、
内側ツール部分(64)と外側ツール部分(61)が、名目上の外径(D)及び名目上の内径(d)を有する管状中空ブランク(100)を受け入れる入口開口部(68)と、管外径(D1)及び管内径(d1)を有する拡管された管(110)のための出口開口部(69)とを画定するように、同軸状に配置された前記外側ツール部分(61)と前記内側ツール部分(64)を備えた、拡管ツール(60)、並びに
前記拡管ツール(60)を通して前記管状中空ブランク(100)を押すためのプッシング手段(16、30)を備え、
前記内側ツール部分(64)が、前記中空ブランク(100)を密封可能に支持するための第1の密封部分(65)と前記拡管された管(110)を密封可能に支持するための第2の密封部分(66)を備え、前記第1の密封部分(65)と前記第2の密封部分(66)との間でスペース(70)が延在し、前記スペース(70)が流体源に連結されている、構成(1)。
【請求項11】
前記外側ツール部分(61)が、リング形状であり、入口端部(62)と出口端部(63)を備え、前記外側ツール部分の内径が、前記入口端部(62)と前記出口端部(63)との間で増加する、請求項10に記載の管を製造するための構成(1)。
【請求項12】
前記内側ツール部分(64)の前記第2の密封部分(66)が、前記外側ツール部分(61)に対して前記管状中空ブランクを機械的に変形させるように配置された、形成セクション(74)を備える、請求項10又は11に記載の管を製造するための構成(1)。
【請求項13】
前記形成セクション(74)は、前記外側ツール部分(61)と同軸状に配置され、前記形成セクション(74)と前記外側ツール部分(61)との間で徐々に狭くなる間隙が設けられるように、寸法決定される、請求項12に記載の管を製造するための構成(1)。
【請求項14】
円周状の壁(81)と底壁とを備えた第2の管状ハウジング(80)を備え、前記第2の管状ハウジング(80)が、前記第1の管状ハウジングと摺動可能に配置され、拡管された管(110)を受け入れるように配置されている、請求項10から13のいずれか一項に記載の管を製造するための構成(1)。
【請求項15】
前記第2の管状ハウジング(80)が、前記第2の管状ハウジング(80)内に受け入れられた前記拡管された管(110)の内側に流体を供給するための流体チャネル(86)を備える、請求項14に記載の管を製造するための構成(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、請求項1の前文による、管の製造のための方法に関する。本開示は、請求項10の前文による、管の製造のための構成にも関する。
【背景技術】
【0002】
継目のない冷間加工されたスチールのみならず、他の金属材料の管も、通常、以下の主要な工程ステップによって製造される。
【0003】
第1に、鋼ビレットが、スクラップ金属を溶かすこと、取鍋(ladle)及び転換炉(converter)内で精錬すること、その後に、ビレットへと切断されるストランドの中へ連続的に鋳造することによって製造される。その後、ビレットは、熱間圧延に晒され、マンドレルで丸い棒を突き通すこと及び更なる熱間圧延又は熱間押し出しによってそこから管状中空ブランクが形成されるところの、丸い棒を形成する。インゴット鋳造スチールから中空のブランクを製造することも可能である。最後に、管状中空ブランクは、冷えた状態で、引かれるか又はピルガ圧延に晒されるかの何れかによって、最終的な寸法の管になる。
【0004】
引かれるか又はピルガ圧延されるかの最終的なステップにとって通常なことであるが、中空ブランクの外径は、作業ステップの間に低減される。したがって、大きな直径を有する管を製造するときに、開始材料として非常に大きな直径を有する管状中空ブランクを使用することが必要である。しかし、中空ブランクの寸法を低減させるために必要な力は、中空ブランクのサイズと共に急激に増加し、したがって、製造装備、すなわち、熱間圧延及び冷間圧延の両方のために、それにしたがって、引抜台(draw−bench)及び圧延装置(rolling mill)のサイズも増加する。これは、最終的に、高い製造コストをもたらす。
【0005】
将来、殊に石油抽出及びガス採取において、大きな直径の冷間加工された継目のないスチール管に対する需要、及び他の材料の大きな直径の冷間加工された継目のない管に対する需要が、増加すると予測され、したがって、これらの製品に対するより効率的で費用がかからない製造方法が必要である。
【0006】
結局、本開示の一態様は、管を製造する効果的で費用効率に優れた方法を提供することである。本開示の更なる一態様は、管を製造するための効果的で費用効率に優れた構成を提供することである。
【発明の概要】
【0007】
上述の態様は、以下のステップを含む管110を製造するための方法によって実現される。
a.名目上の外径(D)及び名目上の内径(d)を有する、管状中空ブランク100を提供するステップ、
b.内側ツール部分64と外側ツール部分61が、名目上の外径(D)及び名目上の内径(d)を有する管状中空ブランク100を受け入れる入口開口部68と、外径(D1)及び内径(d1)を有する管110のための出口開口部69とを画定するように、同軸状に配置された外側ツール部分61と内側ツール部分64を備えた、拡管ツール60を提供するステップであって、
内側ツール部分64が、中空ブランク100を密封可能に支持するための第1の密封部分65と、管110を密封可能に支持するための第2の密封部分66を備え、第1の密封部分65と第2の密封部分66との間でスペース70が延在し、スペース70が流体源に連結されている、ステップ、
c.拡管ツール60を通して管状中空ブランク100を連続的に移動させ、且つ、油圧(P1)が管状中空ブランク100の内側に加えられるようにスペース70に流体を供給するステップであって、管状中空ブランク100が塑性変形するように、油圧(P1)の大きさが選択される、ステップである。
【0008】
本開示では、油圧が、P、P1、P2、P3、P4、及びP5と表示される。しかし、当業者に知られているように、油圧(P、P1、P2、P3、P4、及びP5)の数値は、同じ場合もあるし又は異なっている場合もある。
【0009】
本明細書で上述された又は以降に記載される方法は、継目のない管などの管を拡げるための方法であり、管は、二種類の力すなわち圧力及び引っ張り力に晒される。これは、管の材料が、(通常使用される工程におけるような)一方的な力のみに晒されるのではなく、したがって、管内で形成される亀裂のリスクが低減されるということを意味する。
【0010】
本明細書で上述された又は以降に記載される方法によって、中空ブランクの断面は、名目上の寸法から連続的に拡げられ、名目上の中空ブランクよりも薄い壁厚と大きな内径及び外径を有する細長い管になる。それによって、高い生産性及びしたがって管当たりの製造コストの削減を実現することが可能である。管状中空ブランクの断面が拡げられるので、大きな直径の管を製造するときであっても、小さい名目上の直径の管状中空ブランクを使用することが可能である。
【0011】
本方法の更なる利点は、管状中空ブランクが、油圧流体圧力によって拡げられるということである。機械的二次成形と比較して、拡管ツール内の油圧(P1)と管状中空ブランクとの間の摩擦は非常に小さい。したがって、拡管ツールを通る中空ブランクを押したり又は引いたりするために、軸方向における小さい力を使用することが可能である。今度はこれが、変形工程のために必要とされる低減された力、小さい装備サイズ、及び低い電力消費などの、利点を提供する。
【0012】
一代替例によれば、管状中空ブランクは、拡管ツール内の油圧(P1)によって完全に拡げられる。それに伴う主要な利点は、拡管工程の間に管状中空ブランクと拡管ツールとの間に、ほとんど摩擦がない(摩擦が非常に小さい)ことである。拡管ツールを通して管状ブランクを移動させるために必要な力は、したがって、非常に小さくなり得る。
【0013】
更に別の一代替例によれば、管状中空ブランクは、油圧によって部分的に且つ機械的二次成形によって部分的に拡げられる。機械的端二次成形ステップは、最終的な管において狭い許容誤差が必要とされるときに有利である。
【0014】
中空ブランクに作用する油圧(P)は、管状中空ブランクの材料を可塑化するのに十分な大きさを有するべきである。したがって、管状中空ブランク内の接線方向の引張応力は、管状中空ブランク材料の塑性域内にあるべきである。これを実現するために、拡管ツール内の圧力の大きさは、管状中空ブランク内で実現された接線方向の引張応力が、管状中空ブランク材料の降伏限界又は耐力(proof strength)よりも大きくなるように、選択されることが好ましい。好ましくは、拡管ツール内の圧力の大きさは、管状中空ブランク内で実現された接線方向の引張応力が、管状中空ブランク材料の最大引張強度未満となるように、選択される。
【0015】
更に別の一代替例によれば、油圧(P3)が、拡管ツールの入口開口部から管状中空ブランクの第1の端部に向けて延在する、管状中空ブランクのセクションにおいて、管状中空ブランクの内側に加えられる。油圧(P3)は、拡管工程の間に管状中空ブランクを安定させて、制御できない座屈を避ける。
【0016】
別の一代替例によれば、接線方向の引張応力が管状中空ブランク内で実現されるように、油圧(P3)の大きさが適合され、接線方向の引張応力は、中空管の材料の弾性域内にある。拡管に先立って管状中空ブランクを弾性的に予め引張することによって、拡管ツールを通して管状中空ブランクを押すために必要とされる軸方向の力が、更に低減され得る。好ましくは、油圧(P3)の大きさは、管状中空ブランク内で実現された接線方向の引張応力が、管状中空ブランク材料の降伏限界又は耐力よりも約10%から約20%だけ小さくなるように、適合される。
【0017】
本開示は、請求項10による、管の製造のための構成にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の第1の好適な実施形態による方法を実行するための構成の概略図である。
【
図2b】本開示による構成の一代替例の拡大図である。
【
図3】本開示による方法の3つの異なる段階を概略的に示す。
【
図4】本開示による方法の例示的な一実施例のための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、名目上の内径d及び名目上の外径Dから、内径d1及び外径D1を有する細長い管へ、管状中空ブランクを連続的に拡げるための構成1を概略的に示す。
【0020】
構成1の説明を容易にするために、拡管され細長くされた管110への管状中空ブランク100の拡管の間の動作が示されている。
【0021】
該構成は、第1の端部11と、第2の端部13と、内側スペース15を取り囲む管状壁14とを有する、第1の細長い管状ハウジング10を備える。管状ハウジング10の第1の端部11は、第1の端壁12によって閉じられている。
【0022】
管状ブランクを押すための(「プッシング要素」又は「ホルダー要素」とも呼ばれる)ホールディング要素30が、内側スペース15内に配置される。ホールディング要素30は、第1の管状ハウジング10の内側スペース15の中へ摺動可能にフィットする円筒状のピースである。プッシング要素の一方の側は、平坦であり、第1の管状ハウジング10の第1の端部11に向けられている。プッシング要素の他方の側は、第1の管状ハウジング10の第2の端部13に向けられており、円筒状の凹部33すなわちボアが設けられ、第1の管状ハウジング10の内側スペース15内に配置された管状中空ブランク100の第1の端部101を受け入れるように設計されている。
【0023】
ホールディング要素30、第1の端壁12、及び円周状の円筒壁14は、第1の管状ハウジング10の内側スペース15内の圧力チャンバ16の範囲を定める。第1の圧力チャンバ16は、導管17によって(図示せぬ)油圧流体源に連結されている。プッシング要素30と圧力チャンバ16は、管状中空ブランクを押す(移動させる)ためのプッシング手段(移動手段)を構成する。
【0024】
拡管ツール60は、第1の管状ハウジング10の第2の端部13内に配置される。拡管ツール60は、互いから一定の距離で同軸状に配置された、外側ツール部分61と内側ツール部分64を備える。
【0025】
図2aは、第1の代替例による拡管ツール60の拡大図を示す。
【0026】
外側ツール部分61は、リング形状であり、入口端部62と出口端部63を有する。外側ツール部分61は、内径が、入口端部62から出口端部63に向けた方向において増加するように設計されている。したがって、入口端部62において、外側ツール部分61の内径は、管状中空ブランクの外径Dに等しく、一方、外側ツール部分の出口端部63は、拡管された管の外径D1に等しい。入口端部62と出口端部63は、円筒状に延在し、管状中空ブランクと拡管された管のための支持面を提供する。しかし、外側ツール部分61の正確なデザインは変動し、その内径が入口端部62から出口端部63へ連続的に増加することが好ましい。
【0027】
内側ツール部分64は、細長い回転対称な固いピースであり、少なくとも外側ツール部分61にわたり延在する。しかし、一実施形態によれば、好ましくは、内側ツール部分64が、外側ツール部分よりも長い。
【0028】
内側ツール部分64は、入口密封部分65と出口密封部分66を有する。入口セクションと出口セクションは、円筒状であり、内側ツール部分の軸方向において延在し、それによって、それらが、管状中空ブランクの内面と拡管された管の内面のための支持面を形成する。入口密封部分(第1の密封部分)65の半径方向の寸法と出口密封部分(第2の密封部分)66の半径方向の寸法は、入口密封部分65と管状中空ブランクの内面との間で、及び、出口密封部分66と拡管された管の内面との間で、水密が実現されるように決められる。
【0029】
管状中空ブランクのための入口開口部68は、外側ツール部分61の入口端部62と内側ツール部分64の入口密封部分65との間で、画定される。拡管された管のための出口開口部69は、外側ツール部分61の出口端部63と内側ツール部分64の出口密封部分との間で、画定される。入口開口部68では、外側ツール部分の入口端部62と内側ツール部分の入口密封部分65が、管状中空ブランクと接触している。出口開口部では、外側ツール部分61の出口端部63と内側ツール部分64の出口密封部分が、拡管された管と接触する。
【0030】
内側ツール部分64は、内側ツール部分64の入口密封部分65と出口密封部分66との間で延在するスペース70を更に備える。
図2aで示された実施形態では、スペース70が、内側ツール部分の中へ機械加工された円周状の凹部である。円周状の凹部(スペース)70は、任意の形状、例えば、矩形状の断面を有し、入口セクション65と出口セクション66によって限定され、内側ツール部分64の底部によって限定され得るしたがって、円周状の凹部70は、上側ツール部分に向かって開かれ、上側ツール部分の少なくとも一部分にわたり延在する。円周状の凹部70は、導管72によって(図示せぬ)油圧流体源に連結されている。動作において、円周状の凹部70と管状中空ブランクの内面が、油圧が管状中空ブランクの内面に加えられるように、圧力チャンバの範囲を定める。円周状の凹部70の深さは、管状中空ブランクの周りで均一な油圧が円周状に生成されるように、管状中空ブランクの寸法に応じて選択される。
【0031】
出口密封部分66の一側部73は、拡管工程の初期段階において、拡管ツールの出口開口部69に向けて管状中空ブランクを誘導するように傾斜が付けられ得る。
【0032】
管状中空ブランクが、円周状の凹部70内の流体によって油圧で部分的に変形され、出口密封部分66と外側ツール部分61との間で機械的に部分的に変形されるように、内側ツール部分64を設計することも可能である。拡管された管の最終的な寸法を調整することのみならず、拡管ツールの出口開口部において拡管された管に対する完全な水密を保証することは、有利である。
【0033】
図2bは、形成セクション74と外側ツール部分61との間に、リング形状の間隙が形成されるように、外側ツール部分61に沿って同軸状に延在する機械的形成セクション74を出口密封部分66が有する、拡管ツール60の第2の一代替例を示す。形成セクション74は、出口開口部69へ向かう方向において、リング形状の間隙が徐々に狭くなるように、寸法決定されている。したがって、
図2bでは、管状中空ブランクが、円周状の凹部70内の油圧P1によって部分的に、上側ツール部分61と形成セクション74との間のリング形状の間隙内の機械的形成によって部分的に、上側ツール部分61に対抗して拡管される。形成セクション74は、出口密封部分と一体的な部品であってもよく、又は別の部品であってもよい。
【0034】
図1を参照すると、管状中空ブランクを連続的に拡げるための構成1は、拡管された管110を受け入れるための第2の管状ハウジング80を更に備える。第2の管状ハウジング80は、円周状の壁81を備える。底壁は、第2の管状ハウジング80の第2の端部83を閉じ、第2の管状ハウジング80の第1の端部84は開かれている。
【0035】
第2の管状ハウジング80は、第1の管状ハウジング10と摺動可能に接触するように配置されている。第1の管状ハウジング10の第2の端部13は、すなわち、拡管ツール60を備え、それによって、第2の管状ハウジング80の開かれた第1の端部84の中へ挿入されている。第2の管状ハウジングの底壁82は、拡管された管の端部を受け入れるための環状の溝85を備えている。(図示せぬ)油圧チャックが、拡管された管の端部を固定するために、環状の溝85に隣接して設けられ得る。
【0036】
ロッド86が、内側ツール部分64から第2の管状ハウジング80の底壁を通って延在する。内側ツール部分内の円周状の凹部70を、(図示せぬ)油圧源と連結させるために、主要な流体チャネル87が、ロッド86を通って延在する。ロッドは、第2の管状ハウジング内に配置された拡管された管の内装に油圧流体を供給するための出口チャネル88も備える。
【0037】
構成1の動作において、拡管ツールを通して管状中空ブランクを押す軸方向の力は、第1の管状ハウジング10の端部を通して押し出すように、内側ツール部分64も強いる。これを妨げるために、拡管された管110、第2の管状ハウジングの底壁、及び内側ツール部分64が、ロッド86内の出口チャネル88を介して、(図示せぬ)流体源に連結された圧力チャンバ89の範囲を定める。流体が圧力チャンバ89内に供給されたときに、逆の油圧P2が内側ツール部分64に加えられる。それは、管状中空ブランクの拡管の間に、内側ツール部分が適所に維持されることを強いる。
【0038】
本開示の一代替例によれば、中空ブランクを拡げるための構成は、流体チャネル18を更に備え得る。流体チャネル18は、(図示せぬ)油圧流体源を、管状中空ブランクの一部分内の管状中空ブランクの内装と連結させる。その内装は、拡管ツールの入口端部からホルダー要素30に向けて延在する。
図1で識別され得るように、管状中空ブランク1の円周状の壁、ホルダー要素30、及び拡管ツール60は、圧力チャンバ40の範囲を定める。圧力チャンバ40は、工程の全体を通して管を安定させるために圧縮され得る。
【0039】
中空ブランクを拡げるための構成1では、管状中空ブランクの外面と第1の管状ハウジング10の円周状の壁14との間に、リング形状のスロット41が存在する。リング形状のスロット41の目的は、拡管工程の間に管状中空ブランクの横の動きを受容することである。一代替例によれば、リング形状のスロット41は、流体チャネルによって油圧流体源にも連結され、加圧され得る。リング形状のスロット41内の油圧P4を提供することによって、管状中空ブランクは、拡管工程の間に安定され得る。
【0040】
油圧を使用して管状ブランクを伴ったホルダー要素30を拡管ツールに向けて移動させる代わりに、機械的な力を使用することが可能である。例えば、リニアモータに連結されたプッシュロッドを使用することによって。
【0041】
拡管ツールを通して管状中空ブランクを押し、同時に、そこから離れるように第2の管状ハウジングを引くことも可能である。
【0042】
管を製造するための構成が、その構成の様々な構成要素の間で油圧流体が漏れることを妨げるために必要な密封要素を備えることも、更に理解され得る。適切な密封要素は、例えば、拡管ツールの入口開口部と出口開口部内に配置され得る。油圧流体源との連結は、適切な圧力を実現するために必要なポンプ及びバルブを含むことも、更に理解され得る。
【0043】
本開示による方法は、以下で、
図3a〜
図3cを参照しながら説明される。
【0044】
図3aは、開始位置における管状中空ブランクを拡げるための構成1を示している。したがって、プッシング要素30は、第1の管状ハウジングの第1の端部に向けて後退している。第2の管状ハウジング80は、その底壁85が、拡管ツール60の出口開口部69の近傍にある。
【0045】
管状中空ブランク100は、第1の管状ハウジングの内側スペース15内に配置されている。管状中空ブランクの第1の端部は、プッシング要素30の円筒状の凹部33内に挿入されている。管状中空ブランクの第2の端部は、拡管ツール60の入口開口部68の中へ挿入されている。管状中空ブランクは、二相ステンレス鋼又は高合金ステンレス鋼などの、スチールから製造されている。スチールの例は、(AB Sandvik Mterials Technologyから購入可能な)UNSS32750及びUNSn08028のものである。管状中空ブランクは、132mmの内径d、160mmの外径D、8900mmの長さを有し得る。しかし、管状中空ブランクは、アルミニウム、銅、炭素鋼、又はジルコニウムなどの、他の金属材料からも作られ得る。
【0046】
管状中空ブランクの円周状の壁は、水密圧力チャンバが実現されるように、円周状の凹部70の範囲を定める。
【0047】
第2のステップでは、
図3bを参照すると、円周状の凹部70が、チャネル88を通して導入された油圧流体によって、油圧P1まで圧縮される。油圧P1は、管状中空ブランクの内面に作用する。
【0048】
円周状の凹部70内の油圧P1の大きさは、管状中空ブランクの材料が可塑化するような大きさの接線方向の引張応力が管状中空ブランク内で実現されるように、選択される。これは、管状中空ブランクが、外側ツール部分61に向かって半径方向において均一に変形することをもたらす。高圧は、管状中空ブランクの内径を拡げるだけではなく、管状中空ブランクの壁厚を低減させもする。したがって、管状中空ブランクと比較して、結果としての拡管された管は、より長くなり且つ低減された壁厚を有する。
【0049】
これも適切に説明され得る。すなわち、円周状の凹部70内の高度に圧縮された流体が、可塑化した管状中空ブランクの内面に作用する。したがって、可塑化した管状中空ブランクは、外側ツール部分61と高度に圧縮された油圧流体との間で絞られ、それが今度は、管状中空ブランクの低減された壁厚をもたらす。
【0050】
油圧の大きさと管状中空ブランクの可塑化との間の関係は、以下、本明細書で後述される。
【0051】
上述のことと同時に、第1の管状ハウジング内の圧力チャンバ16も、チャネル17を通して導入された油圧流体によって、油圧P5まで圧縮される。これは、ホルダー要素30を、拡管ツール60に向かって移動させるように強い、管状中空ブランクが、拡管ツールを通って連続的に移動することをもたらす。
【0052】
拡管された管110は、出口開口部69を通って各管ツールを出て、第2の管状ハウジング80の端壁85と係合する。第2の管状ハウジング80は、拡管ツールから離れるように第1の管状ハウジング上で摺動し始める。この手順は、拡管工程を安定化させ、安定した速度で進むことをもたらす。
【0053】
図3cは、その終了位置における管状ブランクを拡げるための構成を示している。ホルダー要素30は、圧力チャンバ16内の油圧P5によって、拡管ツールの入口開口部68に近い位置まで押されている。この位置では、ホルダー要素が、拡管ツールを通して更に管状中空ブランクを押すことができない。代わりに、管状中空ブランクの最後の部分は、第2の管状ハウジングによって拡管ツールを通して引かれる。これは、第2の管状ハウジングの第1の端部81に力Fを加えることによって、又は第2の管状ハウジングの第2の端部を把持して、それを拡管ツールから離れる方向において引くことによって、実現され得る。円周状の凹部70内の圧力は、拡管された管の最後のセクションを拡管ツールから除去することを促進するために、増加され得る。
【0054】
円周状の凹部70内の油圧P1の大きさは、管状中空ブランクを拡げ且つ細長くするために極めて重要である。油圧の重要性は、以下で詳細に説明される。
【0055】
圧力すなわち荷重が管状中空ブランクの内側に加えられたときに、接線応力が、管状中空ブランクの壁内に生成される。
【0056】
増加する荷重に晒されたときの金属材料の挙動は、よく知られており、通常、いわゆる応力歪曲線によって示される。
【0057】
金属材料のピースが小さい荷重に晒されたときに、生成された応力は、金属材料内の原子の間の距離が、それらの相互配向に影響を与えることなしに増加することをもたらす。荷重が除去されたならば、金属材料のピースは、その元々の寸法へ戻る。金属材料のピースは、したがって、弾性的に変形される。応力歪曲線において、この領域は、通常、線形弾性領域と呼ばれる。金属材料のピースに加えられた荷重が増加するならば、応力も増加する。応力がいわゆる弾性限界又は降伏限界を越えたときに、原子面は、互いに滑り始め、金属材料のピースは、永久的な変形を経験し、すなわち、金属材料のピースは塑性変形する。金属材料のピースにおける塑性変形は、金属材料のピース内の応力がいわゆる極限引張応力に到達するまで、増加する荷重によって一様に増加する。このポイントを越えると、金属材料のピース内でくびれが形成し始め、荷重が更に増加されるならば、テストピースは遂に崩壊する。降伏限界と極限引張応力との間の領域は、通常、塑性域と呼ばれる。
【0058】
金属材料にとって、定義された降伏限界は存在しない。代わりに、「耐力」という用語が、塑性域の開始を決定するために使用される。耐力は、材料の0.2%の残留伸長をもたらす応力の量として定義される。通常、耐力は、Rp
0.2として示される。
【0059】
降伏点、耐力、及び極限引張応力は、ほとんどの建築金属材料に対して実証されており、又は実験を通して容易に決定され得る。本開示の方法では、管状中空ブランクを変形させる、すなわち、拡げるために必要な油圧の大きさを決定するために、この情報が使用され得る。
【0060】
以下は、管状中空ブランクを変形させるために十分な油圧の計算を説明する1つの例である。
【0061】
管状中空ブランクは、132mmの内径及び14mmの壁厚を有する。管状中空ブランクは、UNSS32750のタイプの熱延鋼板から製造された。それは、AB Sandvik Materials Technologyから購入可能である。
【0062】
この特定のタイプのスチールの耐力(Rp
0.2)は、550Mpaである。
【0063】
管状ブランクを可塑化するために必要な圧力Pは、以下の数式を用いて計算され得る。
P=(σ*2*W
t)/D
【0064】
この数式は、内圧Pに晒された円筒状のタンク内の接線応力σを考慮して導かれる。
図4a及び
図4b参照。
【0065】
タンクの長さはLであり、内径はDであり、壁厚はW
tであり、壁の面積はA
wallである。タンクに作用する力Fは全圧力Pであり、タンクの壁内の全引張力はTである。
F=PA
T=σ
tA
wall=σ
ttL
ΣF
H=0
F=2T
PDL=2(σ
ttL)
P=(σ*2*W
t)/D
【0066】
変形の間に、管状中空ブランクの歪が硬化し、今度はそれが、変形に対する抵抗を増加させる。この効果は、計算において考慮されるべきである。経験に基づくと、より高い耐力、すなわち、1000MPaが、したがって、数式において使用される。
P=(σ*2*W
t)/D=(1000*2*14)=212MPa
【0067】
したがって、管状中空ブランクを可塑化し変形させるために、少なくとも212MPaの圧力が、管状中空ブランクの内面に作用しなければならない。