特許第6576461号(P6576461)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6576461触媒化セラミックキャンドルフィルタ及びプロセスオフガスまたは排ガスの清浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576461
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】触媒化セラミックキャンドルフィルタ及びプロセスオフガスまたは排ガスの清浄方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/648 20060101AFI20190909BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20190909BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20190909BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20190909BHJP
   B01D 46/24 20060101ALI20190909BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20190909BHJP
   B01D 46/42 20060101ALN20190909BHJP
【FI】
   B01J23/648 AZAB
   B01D53/86 241
   B01D53/86 245
   B01D53/86 280
   B01D53/94 241
   B01D53/94 245
   B01D53/94 280
   B01D39/20 D
   B01D46/24 C
   F01N3/035 A
   !B01D46/42 B
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-546958(P2017-546958)
(86)(22)【出願日】2015年4月28日
(65)【公表番号】特表2018-513777(P2018-513777A)
(43)【公表日】2018年5月31日
(86)【国際出願番号】EP2015059192
(87)【国際公開番号】WO2016150523
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2018年4月26日
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2015/055951
(32)【優先日】2015年3月20日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2015/055952
(32)【優先日】2015年3月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】ハルドール・トプサー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】トゥーヤスン・ヨーアキム・ライマ
(72)【発明者】
【氏名】カステリノ・フランセスコ
(72)【発明者】
【氏名】ピーダスン・ラース・ストーム
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−514410(JP,A)
【文献】 特開2008−064015(JP,A)
【文献】 特開2005−046836(JP,A)
【文献】 特表2004−503375(JP,A)
【文献】 特開2005−066562(JP,A)
【文献】 特開2001−246209(JP,A)
【文献】 特開2001−038117(JP,A)
【文献】 特開平05−115782(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0066621(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
B01D53/86,53/94
B01D39/00−41/04
B01D46/00−46/54
F01N3/01−3/038
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属含有触媒が、フィルタの透過側上に及び/またはフィルタの分散側上に及び/またはフィルタの壁内に配置されており、前記貴金属含有触媒が、フィルタの20重量ppmと1000重量ppmとの間の全量で貴金属を含む、セラミックキャンドルフィルタであって、前記フィルタの分散側にはV/Ti触媒が充填されており、及びフィルタの透過側及び/または壁にはPd触媒またはPd/V/Ti触媒が充填されていることを特徴とする、前記セラミックキャンドルフィルタ
【請求項2】
フィルタのセラミック材料が、シリカ−アルミネート、カルシウム−マグネシウム−シリケート、カルシウム−シリケート繊維またはこれらの混合物の群から選択される、請求項1に記載のセラミックキャンドルフィルタ。
【請求項3】
フィルタのセラミック材料が、カルシウム−マグネシウム−シリケートの群から選択される生体内溶解性繊維からなる、請求項に記載のセラミックキャンドルフィルタ。
【請求項4】
煤、灰、金属及び金属化合物の形の粒状物を、プロセスオフガスまたはエンジン排ガス中に存在する炭化水素及び一酸化炭素と一緒に除去するための方法であって、次のステップ:
オフガスまたは排ガスをセラミックキャンドルフィルタに通し及び粒状物を捕集するステップ、
フィルタの壁上に及び/または壁内に配置されている酸化触媒と接触させることによって、フィルタの分散側に捕集された粒状物中の煤の量を減少させ及びオフガスまたは排ガス中の炭化水素の量を減少させるステップ、
を含み、
ここで前記酸化触媒は、フィルタの20重量ppmと1000重量ppmとの間の全量で一種以上の貴金属を含み、及び前記フィルタの分散側にはV/Ti触媒が充填されており、及びフィルタの透過側及び/または壁にはPd触媒またはPd/V/Ti触媒が充填されている、
前記方法。
【請求項5】
フィルタのセラミック材料が、シリカ−アルミネート、カルシウム−マグネシウム−シリケート、カルシウム−シリケート繊維またはこれらの混合物から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
フィルタのセラミック材料が、カルシウム−マグネシウム−シリケートの群から選択される生体内溶解性繊維を含む、請求項4または5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックキャンドルフィルタ及びプロセスオフガスまたは排ガスの清浄方法に関する。より具体的には、本発明は、プロセスオフガスまたはエンジン排ガス中のダスト及び粒状物並びにこれらのガス中に含まれる有害成分を除去するための触媒化セラミックキャンドルフィルタを提供するものである。該触媒化セラミックキャンドルフィルタは、鉱物、ガラス、セメントの生産や廃棄物の焼却などの燃焼を含む工業的プロセスからのまたは石炭火力ボイラー及びエンジンからのプロセスガスまたは粗ガスの清浄に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
フィルタキャンドルの形のセラミックフィルタは、プロセスガスから粒状物を除去するための多くの工業において使用されている。これらは、利用できる最も効果的なタイプの集塵器のうちの一つであり、粒状物について99%超の集塵効率を達成できる。これらのフィルタは、セラミック繊維を含む様々なセラミック材料から製造できる。
【0003】
セラミックキャンドルフィルタの高粒状物除去効率は、キャンドルフィルタの表面上に形成したダストケーキに部分的に及びキャンドルフィルタ組成及び多孔度に部分的に起因する。十分な濾過活性及びフィルタ中の許容可能な低い圧力低下を提供するために、慣用のセラミックキャンドルフィルタは70%と90%との間の多孔度を有する。これらのフィルタの壁厚は、十分な安定性及び機械的強度のためには10〜20mmの範囲であるのがよい。
【0004】
粒子含有プロセスガスは、大概の場合に、複数の汚染物、例えばNOx、揮発性有機化合物(VOC)、SO、CO、NH、ジオキシン類及びフラン類を、現地の法規に依存して減少しなければならない濃度で含む。この目的のためには、触媒方法を含む幾つかの慣用の方法が利用可能である。
【0005】
一例として、白金は既知の酸化触媒であり、そしてVOC、SO、CO、NH、ジオキシン類及びフラン類の酸化的除去にしばしば使用されている。
【0006】
NOx、VOC、ジオキシン類及びフラン類などのガス状汚染物の減少は、定置型及び自動車の用途におけるNHを用いたNOxの選択的還元によるNOx減少のために通常使用される酸化バナジウムベースの触媒と接触させることによっても効果的に行うことができる。
【0007】
この触媒は、酸化とNHを用いたSCR反応との組み合わせによって、炭化水素(VOC)の除去及びNOxの除去の両方に活性を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
酸化バナジウムが活性酸化触媒であることも知られている。Pt及びPd触媒のような貴金属触媒と比べて、酸化バナジウム触媒は、COの生成において選択性が低く、幾らかの量のCOが酸化反応中に生成する。COは、酸化バナジウム触媒単独との接触によっては適した反応速度でCOに酸化できず、かなりより高価な貴金属触媒の存在を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、セラミックキャンドルフィルタの壁内にまたは壁上に配置された非常に少量の貴金属を含む触媒が、炭化水素及び一酸化炭素の酸化において十分な触媒効率を提供することを見い出した。
【0010】
この知見に従って、本発明は、貴金属含有触媒が、フィルタの透過側上に及び/またはフィルタの分散側上に及び/またはフィルタの壁内に配置されており、前記貴金属含有触媒が、フィルタの20ppm/重量と1000ppm/重量との間の全量で貴金属を含む、セラミックキャンドルフィルタを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用する「分散側」及び「透過側」とは、それぞれ、未濾過の排ガスに面するフィルタの流動側、及び濾過されたオフガスもしくは排ガスに面する流動側のことを指す。
【0012】
追加的に本発明は、煤、灰、金属及び金属化合物の形の粒状物を、プロセスオフガスまたはエンジン排ガス中に存在する炭化水素及び一酸化炭素と一緒に除去するための方法であって、次のステップ:
オフガスまたは排ガスをセラミックキャンドルフィルタに通し及び粒状物を捕集するステップ、
フィルタの壁上に及び/または壁内に配置されている酸化触媒と接触させることによって、フィルタの分散側に捕集された粒状物中の煤の量を減少させ及びオフガスまたは排ガス中の炭化水素の量を減少させるステップ、
を含み、
ここで前記酸化触媒は、フィルタの20ppm/重量と1000ppm/重量との間の全量で一種以上の貴金属を含む、
前記方法を提供する。
【0013】
殆どの用途において、炭化水素及び一酸化炭素の除去において望ましい性能のためには、酸化触媒中での貴金属(複数種可)の500ppm/重量未満の量または100ppm/重量未満の量でも十分である。
【0014】
他の態様の一つでは、貴金属含有触媒は更に酸化バナジウム及びチタニアを含む。
【0015】
「酸化バナジウム類」または「酸化バナジウム」という用語は、
酸化バナジウム(II)(一酸化バナジウム)、VO;または
酸化バナジウム(III)(三二酸化バナジウムまたは三酸化バナジウム)、V; または
酸化バナジウム(IV)(二酸化バナジウム)、VO;または
酸化バナジウム(V)(五酸化バナジウム)、V
のことを指す。
【0016】
好ましくは、本発明で使用するための酸化バナジウムは、酸化バナジウム(V)(五酸化バナジウム)、Vを含むかまたはこれからなる。
【0017】
「チタニア」という用語は二酸化チタン(TiO)のことを指す。
白金またはパラジウムの触媒活性形態はその金属及び/または酸化物形態である。
【0018】
V/Ti、Pd/V/Ti及びPt/V/Tiという略語は、それぞれ、酸化バナジウム類とチタニアからなる触媒、及びパラジウム、酸化バナジウム類及びチタニアからなる触媒、及び白金、酸化バナジウム類及びチタニアからなる触媒を意味する。
【0019】
これらの触媒は以下の理由から好ましい。Pd/V/Ti触媒は、i)二つの機能性(NOxの除去、及びVOC(揮発性有機化合物)の除去)を有し;ii)硫黄寛容性を有し;及びiii)他の触媒組成物と比べて低いSO酸化活性を有する。
【0020】
一例としては、アンモニアとVOCとを含むプロセスガスを、酸化バナジウム類ベースの触媒が充填されたフィルタの分散側に通すと、アンモニアが、透過側に接触する前に、NOxのNH−SCRによってガスから除去される。分散側を通る間にV/Ti触媒と直接接触した後に、VOCの不完全な酸化によって幾らかの量のCOが生成する。フィルタの透過側上に及び/または壁にのみPd触媒またはPd/V/Ti触媒を充填することによって、COと残量のVOCとが次いで効果的にCOに酸化される。このようにして、フィルタの壁内及び/または透過側上での高価なパラジウムの最小の充填量を達成できる。
【0021】
更に別の利点として、Pd/V/Ti触媒を使用する場合、該触媒化フィルタキャンドルは耐硫黄性となる、すなわち硫黄失活を被らない。Pd/V/Ti触媒は、追加的に、SOの酸化によって生成するSOの量を減少させる。フィルタに入るプロセスガス中にHSも存在する場合には、これも、V/Ti及びPd/V/Ti触媒の両方でSOに酸化される。
【0022】
高温セラミックフィルタの場合は、幾つかのタイプの繊維をそれらの製造に使用し得る。これらは、例えば、シリカ−アルミネート、カルシウム−マグネシウム−シリケート、カルシウム−シリケート繊維またはこれらの混合物によって構成することができる。
【0023】
他の好ましいセラミック繊維は、カルシウム−マグネシウム−シリケートの群から選択される生体内溶解性繊維を含む。
【0024】
触媒活性材料は、チタニア微粒子の形の触媒活性材料と活性材料の前駆体、例えばバナジウムの塩とを含むスラリーを、パラジウム及び/または白金塩の溶液と一緒に、あるいはチタニア微粒子と、バナジウムの塩及びパラジウム及び/または白金の塩とを含むスラリーを、フィルタの壁に含浸またはコーティングすることによってセラミックフィルタ上に施与される。含浸したら、フィルタを次いで乾燥し、そして全ての前駆体を活性触媒組成物に転化するために必要な温度まで加熱する。
【実施例】
【0025】
例1
以下の例は、長さ3m及び壁厚20mmのカルシウム−マグネシウム−シリケート繊維から製造されたセラミックキャンドルフィルタを用いて得ることができる性能を例証するものである。フィルタは、その壁内において、フィルタの全重量に基づいて計算して1.26重量%のV及び2.36重量%のTiを含むV/Ti触媒でコーティングした。コーティングされたフィルタの多孔度は83%であった。このフィルタを、40ppmの無水トルエン、19体積%のO、8体積%のHOを含む入口ガス中でのトルエンの酸化について試験した。
【0026】
【表1】
【0027】
上記の表から明らかな通り、85%のトルエンが240℃で転化された。同じ温度でのCO放出は35ppm(湿性)であった。
【0028】
例2
以下の例は、追加的に36ppmのPdでコーティングされた、例1のセラミックキャンドルフィルタのCO酸化性能を例証するものである。これらの試験は、約150ppmの湿性CO、19%のO及び8%のHOを含むガスを用いて行った。
【0029】
【表2】
【0030】
240℃で、97%のCOがCOに酸化された。
【0031】
例1及び例2に報告したセラミックキャンドルフィルタの性能を組み合わせることによって、分散側ではV/Ti触媒で及び透過側ではPd/V/Ti触媒で触媒化されたキャンドルフィルタによって1ppmのCOしか放出されないと結論することができる。
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1.
貴金属含有触媒が、フィルタの透過側上に及び/またはフィルタの分散側上に及び/またはフィルタの壁内に配置されており、前記貴金属含有触媒が、フィルタの20ppm/重量と1000ppm/重量との間の全量で貴金属を含む、セラミックキャンドルフィルタ。
2.
貴金属がパラジウム及び/または白金である、上記1に記載のセラミックキャンドルフィルタ。
3.
貴金属含有触媒が更に酸化バナジウム類及びチタニアを含む、上記1または2に記載のセラミックキャンドルフィルタ。
4.
フィルタのセラミック材料が、シリカ−アルミネート、カルシウム−マグネシウム−シリケート、カルシウム−シリケート繊維またはこれらの混合物の群から選択される、上記1〜3のいずれか一つに記載のセラミックキャンドルフィルタ。
5.
フィルタのセラミック材料が、カルシウム−マグネシウム−シリケートの群から選択される生体内溶解性繊維からなる、上記4に記載のセラミックキャンドルフィルタ。
6.
煤、灰、金属及び金属化合物の形の粒状物を、プロセスオフガスまたはエンジン排ガス中に存在する炭化水素及び一酸化炭素と一緒に除去するための方法であって、次のステップ:
オフガスまたは排ガスをセラミックキャンドルフィルタに通し及び粒状物を捕集するステップ、
フィルタの壁上に及び/または壁内に配置されている酸化触媒と接触させることによって、フィルタの分散側に捕集された粒状物中の煤の量を減少させ及びオフガスまたは排ガス中の炭化水素の量を減少させるステップ、
を含み、
ここで前記酸化触媒は、フィルタの20ppm/重量と1000ppm/重量との間の全量で一種以上の貴金属を含む、
前記方法。
7.
酸化触媒の一種以上の貴金属がパラジウム及び/または白金である、上記6に記載の方法。
8.
酸化触媒が、更に、酸化バナジウム類及びチタニアを含む、上記6または7に記載の方法。
9.
フィルタのセラミック材料が、シリカ−アルミネート、カルシウム−マグネシウム−シリケート、カルシウム−シリケート繊維またはこれらの混合物から選択される、上記6〜8のいずれか一つに記載の方法。
10.
フィルタのセラミック材料が、カルシウム−マグネシウム−シリケートの群から選択される生体内溶解性繊維を含む、上記6〜8のいずれか一つに記載の方法。