(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576466
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】自由先端部型軸流ファンアセンブリ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/54 20060101AFI20190909BHJP
F04D 29/66 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
F04D29/54 D
F04D29/54 G
F04D29/66 N
【請求項の数】36
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2017-554065(P2017-554065)
(86)(22)【出願日】2016年4月15日
(65)【公表番号】特表2018-513310(P2018-513310A)
(43)【公表日】2018年5月24日
(86)【国際出願番号】US2016027655
(87)【国際公開番号】WO2016168528
(87)【国際公開日】20161020
【審査請求日】2017年10月13日
(31)【優先権主張番号】62/147,686
(32)【優先日】2015年4月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ジェイ. ヴァン ハウテン
(72)【発明者】
【氏名】ユンシク シン
【審査官】
岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0068028(US,A1)
【文献】
特開2015−038338(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0071776(US,A1)
【文献】
特表2004−503714(JP,A)
【文献】
仏国特許出願公開第02753495(FR,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102012224485(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/54
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自由先端部型軸流ファンアセンブリにおいて、
半径方向に延びる複数のブレードを有するファンであって、前記複数のブレードはそれぞれ、ブレード先端部と、前縁と、後縁とを有し、前記ファンは、前記後縁における前記ブレード先端部の半径方向範囲の2倍に等しいファン直径Dを有する、ファンと、
バレルを有するシュラウドであって、前記バレルは入口を有し、上流端部における前記入口の半径は、下流端部における前記入口の半径よりも大きい、シュラウドと、
を備え、
前記入口の面とファン軸線の方向との間の、子午面における角度は、表面座標に関して非単調に変化しており、前記表面座標は、前記入口の面に沿った距離とともに、上流端部から下流端部まで、前記入口の面の領域にわたって増大しており、
前記バレルは、前記表面座標が小さく増大する間に前記角度が大きく変化するポイントとして定義されるコーナーポイントを有し、前記バレルは、前記入口において3つ以上のコーナーポイントを有する、自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項2】
前記表面座標が増大するに従って、前記入口の面の半径方向座標が減少するかまたは一定のままである、請求項1記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項3】
前記表面座標が増大するに従って、前記入口の面の軸方向座標が増大するかまたはほぼ一定のままである、請求項2記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項4】
前記入口が段部を有し、各段部は、子午面において半径方向に面している軸方向の面と、子午面において軸方向に面している半径方向の面とを有する、請求項1記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項5】
子午面に位置する仮想直線が、非単調に変化する角度の領域に沿って配置された前記入口の面上の2つのポイントにおいて、該2つのポイントの間の前記入口の面と交差することなく接触することができ、前記仮想直線に対して垂直に測定された、前記仮想直線と、前記2つのポイントの間に位置するバレル面における1つのポイントとの間の距離は、前記ファン直径Dの0.2%以上である、請求項1記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項6】
前記仮想直線と、前記2つのポイントの間に位置するバレル面における1つのポイントとの間の距離は、前記ファン直径Dの0.4%以上である、請求項5記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項7】
前記入口の少なくとも一つの部分が、前記ブレード先端部の少なくとも一つの部分の軸方向位置に配置されており、
前記ブレード先端部の部分の上流端部の軸方向位置における前記入口の半径方向寸法は、前記ブレード先端部の部分の下流端部の軸方向位置における前記入口の半径方向寸法よりも大きく、
前記ブレード先端部の部分の上流端部における前記ブレード先端部の半径方向範囲は、前記ブレード先端部の部分の下流端部における前記ブレード先端部の半径方向範囲よりも大きく、
前記ブレード先端部の前記部分の前記軸方向位置に配置された前記入口の前記部分は、非単調に変化する角度の領域の少なくとも一部を含み、前記非単調に変化する角度の領域の一部の軸方向位置は、前記ブレード先端部の第2の部分を規定している、請求項1記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項8】
前記子午面に位置する仮想直線が、前記非単調に変化する角度の領域において前記ブレード先端部の軸方向範囲内に位置する前記入口の面上の2つのポイントにおいて、該2つのポイントの間の前記入口の面と交差することなく接触することができ、前記仮想直線に対して垂直に測定された、前記仮想直線と、前記2つのポイントの間に位置するバレル面における1つのポイントとの間の距離は、前記ファン直径Dの0.2%以上である、請求項7記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項9】
前記仮想直線と、前記2つのポイントの間に位置するバレル面における1つのポイントとの間の距離は、前記ファン直径Dの0.4%以上である、請求項8記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項10】
前記ブレード先端部の全体の軸方向位置が、前記入口の軸方向範囲内にある、請求項7記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項11】
前記非単調に変化する角度の領域が、少なくとも、前記ブレード先端部の軸方向範囲と重なり合う前記入口の部分の軸方向範囲の最も上流の50%にわたって延びている、請求項7記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項12】
前記非単調に変化する角度の領域が、少なくとも、前記ブレード先端部の上流にある前記入口の第2の部分の軸方向範囲の最も下流の50%にわたって延びている、請求項7記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項13】
前記ブレード先端部の部分の上流端部における前記入口の半径方向寸法は、前記ブレード先端部の部分の下流端部における前記入口の半径方向寸法よりも、前記ブレード先端部の部分の下流端部における前記入口の半径方向寸法の少なくとも2%だけ大きい、請求項7記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項14】
前記ブレード先端部の部分の上流端部における前記ブレード先端部の半径方向範囲は、前記ブレード先端部の部分の下流端部における前記ブレード先端部の半径方向範囲よりも、前記ブレード先端部の部分の下流端部における前記ブレード先端部の半径方向範囲の少なくとも2%だけ大きい、請求項7記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項15】
前記ブレード先端部の通過範囲は、前記入口の部分の形状に合致している、請求項7記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項16】
前記ブレード先端部の通過範囲に対して垂直に測定された、前記ブレード先端部の前記部分と、前記入口の前記部分との間の最小距離が、前記ファン直径Dの0.005倍よりも大きくかつ前記ファン直径Dの0.02倍よりも小さい、請求項7記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項17】
前記ブレード先端部の前記第2の部分の通過範囲とファン軸線の方向との間の、子午面における角度は、ブレード先端部前縁からブレード先端部後縁まで前記ブレード先端部の通過範囲に沿った距離とともに増大する先端部座標に関して単調に減少している、請求項7記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項18】
前記ブレード先端部の通過範囲に対して垂直に測定された、前記ブレード先端部の前記第2の部分の通過範囲と、入口の部分における局所的に最も近いポイントとの間の距離は、前記ブレード先端部の第2の部分に沿って、±30%以下だけ変化する、請求項17記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項19】
前記ブレード先端部の通過範囲に対して垂直に測定された、前記ブレード先端部の前記第2の部分の通過範囲と、入口の前記部分における局所的に最も近いポイントとの間の距離は、前記ブレード先端部の第2の部分に沿って、±20%以下だけ変化する、請求項17記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項20】
前記ブレード先端部の前記第2の部分と、前記入口の前記部分における局所的に最も近いポイントのうちの2つの間の入口の面との間の、前記ブレード先端部の通過範囲に対して垂直に測定された距離は、前記ブレード先端部の前記第2の部分と、前記2つの最も近いポイントとの間の平均距離よりも少なくとも20%大きい、請求項17記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項21】
前記ブレード先端部の前記第2の部分と、前記入口の前記部分における局所的に最も近いポイントのうちの2つの間の入口の面との間の、前記ブレード先端部の通過範囲に対して垂直に測定された距離は、前記ブレード先端部の前記第2の部分と、2つの最も近いポイントとの間の平均距離よりも少なくとも40%大きい、請求項17記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項22】
前記ブレード先端部の通過範囲に対して垂直に測定された、前記ブレード先端部の前記第2の部分と、前記入口の前記部分における最も近いポイントとの間の最小距離が、前記ファン直径Dの0.005倍よりも大きくかつ前記ファン直径Dの0.02倍よりも小さい、請求項17記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項23】
前記ブレード先端部の第2の部分の通過範囲が、前記入口の部分における前記ブレード先端部に局所的に最も近いポイントを通過する、子午面における、包絡曲線に合致する、請求項7記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項24】
前記包絡曲線は滑らかである、請求項23記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項25】
前記包絡曲線の軸方向および半径方向の座標が、それぞれほぼスプライン曲線の値として与えられており、スプライン曲線は以下の形式で決定される:
1)胴回り座標を生成し、該胴回り座標は、ピースごとの線形曲線をたどり、該線形曲線の頂点は前記ポイントであり、
2)前記頂点に配置されたノットを備える、前記胴回り座標に関する軸方向および半径方向の座標の三次スプラインを生成し、
3)前記頂点の間にある前記胴回り座標の値において前記スプラインを評価する、請求項23記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項26】
前記包絡曲線に対して垂直に測定された、前記ブレード先端部の第2の部分の通過範囲と、前記包絡曲線との間の距離は、前記ブレード先端部の第2の部分範囲にわたって、±30%以下だけ変化する、請求項23記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項27】
前記包絡曲線に対して垂直に測定された、前記ブレード先端部の第2の部分の通過範囲と、前記包絡曲線との間の距離は、前記ブレード先端部の第2の部分範囲にわたって、±20%以下だけ変化する、請求項23記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項28】
前記ブレード先端部の第2の部分と、最も近いポイントのうちの2つの間のポイントにおける入口の面との間の、前記ブレード先端部の通過範囲に対して垂直に測定された距離は、前記ブレード先端部の第2の部分と、前記包絡曲線との間の局所的な距離よりも少なくとも20%大きい、請求項23記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項29】
前記ブレード先端部の第2の部分と、最も近いポイントのうちの2つの間のポイントにおける入口の面との間の、前記ブレード先端部の通過範囲に対して垂直に測定された距離は、前記ブレード先端部の第2の部分と、前記包絡曲線との間の局所的な距離よりも少なくとも40%大きい、請求項23記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項30】
前記包絡曲線に対して垂直に測定された、前記ブレード先端部の第2の部分の通過範囲と、前記包絡曲線との間の最小距離が、前記ファン直径Dの0.005倍よりも大きくかつ前記ファン直径Dの0.02倍よりも小さい、請求項23記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項31】
前記包絡曲線は、前記ブレード先端部が当該包絡曲線に合致する領域において、前記ブレード先端部に局所的に最も近い、前記入口における少なくとも3つのポイントを通過する、請求項23記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項32】
前記入口の前記部分の面は、軸対称である、請求項7記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項33】
前記シュラウドは、プラスチックの射出成形された部材である、請求項1記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項34】
前記シュラウドは、ファンアセンブリの上流に位置決めされた熱交換器にファンアセンブリを取り付けることを容易にする特徴を有する、請求項1記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項35】
前記シュラウドは、前記バレルの上流のプレナムを有し、該プレナムによってカバーされた熱交換器面の領域は、ファンディスク領域の少なくとも1.5倍である、請求項34記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【請求項36】
前記角度は、合計で180度を超える方位角の1つまたは複数の範囲にわたって位置決めされた複数の子午面において非単調に変化する、請求項1記載の自由先端部型軸流ファンアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願とのクロスリファレンス
本願は、2015年4月15日に出願された米国仮特許出願第62/147686号明細書の優先権の利益を主張する。当該米国仮特許出願の内容全体は、引用したことによって本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
背景
本発明は、概して、用途の中でも特に自動車エンジン冷却ファンとして使用されてもよい自由先端部型軸流ファンに関する。
【0003】
エンジン冷却ファンは、空気を熱交換器のセットに通過させるために自動車において使用される。熱交換器は、通常、内燃機関を冷却するためのラジエータと、エアコンディショナ凝縮器と、恐らく付加的な熱交換器とを有する。これらのファンは、概して、シュラウドに取り付けられている。シュラウドは、空気を熱交換器とファンとの間に方向付け、再循環を制御する。通常、これらのファンは、シュラウドによって支持された電気モータによって動力が与えられる。
【0004】
ファンは、通常、制限された機械的特性を有する材料であるプラスチックにおいて射出成形されている。プラスチックファンは、高温において回転荷重および空力荷重に曝されるとクリープたわみを生じる。このたわみは、設計プロセスにおいて補償されなければならない。
【0005】
幾つかのエンジン冷却ファンは、全てのブレードの先端部を接続する、回転する先端部バンドを有するが、多くは、自由先端部である。すなわち、ブレードの先端部は、互いに接続されていない。自由先端部型ファンは、バンド付きファンと比較したとき複数の利点を有する。自由先端部型ファンは、より低いコスト、より小さな重量、よりよいバランス、そして、低減された慣性による利点、例えば、より低い接続不均衡、より低い歳差トルク、動力が停止されたときのより早いコーストダウンを有することができる。
【0006】
多くの場合、自由先端部型ファンは、一定半径の先端部形状を有し、かつシュラウドバレルにおいて作動するように設計されている。シュラウドバレルは、ファンブレードとの最も近い間隙の領域において円筒状である。その他のケースでは、先端部半径は一定ではない。例えば、米国特許第6595744号明細書には、自由先端部型エンジン冷却ファンが記載されている。この場合、ブレード先端部は、フレア状のシュラウドバレルに合致するように成形されている。この構成は、ブレード先端部をシュラウドに近接して作動させながら、バレルへの入口における流れ剥離を減じる。
【0007】
自由先端部型ファンは、ブレード先端部とシュラウドバレルとの間に先端部間隙またはランニングクリアランスを有するように設計されている。この先端部間隙は、製造公差および最大たわみの両方を許容するように十分でなければならない。最大たわみは、ファンアセンブリの耐用寿命にわたって生じ得る。実用上、この間隙は、概して、ファン直径の少なくとも0.5%であるが、2%未満であり、より典型的には、ファン直径の約1%である。
【0008】
先端部間隙の存在は、性能に複数の不利な効果を有する。1つの効果は、間隙が増大すると、ファンが、任意の作動ポイントを達成するためにより高速で作動しなければならないということである。これは、ブレード荷重、すなわちファンブレードの正圧面と負圧面との間の差圧が、間隙の近傍において減じられることによる。別の効果は、特にシステム抵抗が高い場合に、ファン効率が減じられ、ファン騒音が増大するということである。これらの不利な効果は、自由先端部型ファンの適用を、システム抵抗が比較的低い用途に限定する可能性がある。自由先端部型ファンの適用性を高めるために、先端部間隙によって生ぜしめられる不利な性能効果を克服するための複数の試みがなされてきた。
【0009】
1つのアプローチは、ファン荷重における先端部間隙の効果を打ち消すようにファンを設計することである。米国特許第9004860号明細書として発行された米国特許出願第13/035440号明細書には、先端部間隙の存在において、改良された先端部荷重を有するファンが記載されている。このファンは、ファン性能を高めることができるが、ファンの効率および騒音は、間隙によってまだ妥協されている。
【0010】
その他の努力は、ブレード先端部のたわみを減じ、これにより、干渉のリスクなしに先端部間隙をより小さくすることができるように、なされてきた。米国特許第6595744号明細書には、斜めの自由先端部型ファンの軸方向たわみを減じることができるレーキ角分配が記載されている。米国特許第8137070号明細書には、半径方向たわみを最小限に減じる、前縁および後縁のスキュー分配が記載されている。
【0011】
別のアプローチは、任意のサイズの間隙を通る空気の流れが最小限にされるようにファンの先端部を設計することである。米国特許出願公開第2014/0271172号明細書として公開された米国特許出願第13/964872号明細書には、局所的に厚くなった先端部を備えるファンが記載されている。局所的に厚くなった先端部は、厚くなっていない先端部セクションを備えるファンと比較して、高められた効率および減じられた騒音を実現する。
【0012】
過去の努力は、自由先端部型ファンの効率を高めかつ騒音を減じたが、特に高圧の作動ポイントにおいてより静粛な自由先端部型ファンアセンブリがいまだに必要とされている。これらの作動ポイントにおいて、各ブレードによって発生された先端渦は、当該ブレード、シュラウドバレルおよび/または後続のブレードと相互作用し得る。この相互作用は、より低圧の作動ポイントにおける騒音と比較して、騒音の著しい増大を生じる可能性がある。
【0013】
概要
1つの態様において、本発明は、ファンおよびシュラウドを含む自由先端部型軸流ファンアセンブリを提供し、ファンは、半径方向に延びる複数のブレードを有し、複数のブレードはそれぞれ、ブレード先端部と、前縁と、後縁とを有しており、ファンは、後縁におけるブレード先端部の半径方向範囲の2倍に等しい直径Dを有する。シュラウドはバレルを有し、バレルは入口を有し、上流端部における入口の半径は、下流端部における入口の半径よりも大きい。ファンアセンブリは、入口の面とファン軸線の方向との間の、子午面における角度が、表面座標に関して非単調に変化し、表面座標は、上流端部から下流端部までの入口の面に沿って距離に応じて増大している。
【0014】
発明の1つの態様において、自由先端部型軸流ファンは、さらに、表面座標が増大するに従って入口面の半径方向座標が減少するかまたは一定のままであることを特徴とする。
【0015】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、表面座標が増大するに従って入口面の軸方向座標が増大するかまたはほぼ一定のままであることを特徴とする。
【0016】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、入口が段部を有し、各段部が、ほぼ軸方向の(子午面において半径方向に面している)面と、ほぼ半径方向の(子午面において軸方向に面している)面とを有することを特徴とする。
【0017】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、子午面に位置する仮想直線が、非単調に変化する角度の領域に沿って配置された2つのポイントにおいて、ポイントの間の面と交差することなく入口面に接触することができ、仮想線に対して垂直に測定された、仮想線と、前記2つのポイントの間に位置するバレル面におけるポイントとの間の距離は、ファン直径の0.2%以上であることを特徴とする。
【0018】
発明の別の態様では、距離は、ファン直径の0.4%以上である。
【0019】
発明の別の態様において、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、少なくとも入口の一部が、少なくともブレード先端部の一部の軸方向位置に配置されており、部分の上流端部の軸方向位置における入口の半径方向寸法は、部分の下流端部の軸方向位置における入口の半径方向寸法よりも大きく、部分の上流端部におけるブレード先端部の半径方向範囲は、部分の下流端部におけるブレード先端部の半径方向範囲よりも大きく、ブレード先端部の部分の軸方向位置に配置された入口の部分は、非単調に変化する角度の領域の少なくとも一部を含み、非単調に変化する角度の領域の部分の軸方向位置は、ブレード先端部の第2の部分を規定していることを特徴とする。
【0020】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、子午面に位置する仮想直線が、非単調に変化する角度の領域に位置しかつブレード先端部の軸方向範囲内に位置する2つのポイントにおいて、当該ポイントの間の面と交差することなく入口面と接触することができ、仮想線に対して垂直に測定された、仮想線と、前記2つのポイントの間に位置するバレル面におけるポイントとの間の距離は、ファン直径の0.2%以上であることを特徴とする。
【0021】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、距離が、ファン直径の0.4%以上であることを特徴とする。
【0022】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、ブレード先端部全体の軸方向位置が入口の軸方向範囲内にあることを特徴とする。
【0023】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、非単調に変化する角度の領域が、少なくとも、ブレード先端部の軸方向範囲と重なり合う入口の部分の軸方向範囲の最も上流の50%にわたって延びていることを特徴とする。
【0024】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、非単調に変化する角度の領域が、少なくとも、ブレード先端部の上流にある入口の第2の部分の軸方向範囲の最も下流の50%にわたって延びていることを特徴とする。
【0025】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、部分の上流端部における入口の半径方向寸法は、部分の下流端部における入口の半径方向寸法よりも、部分の下流端部における入口の半径方向寸法の少なくとも2%だけ大きいことを特徴とする。
【0026】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、部分の上流端部におけるブレード先端部の半径方向範囲は、部分の下流端部におけるブレード先端部の半径方向範囲よりも、部分の下流端部におけるブレード先端部の半径方向範囲の少なくとも2%だけ大きいことを特徴とする。
【0027】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、ブレード先端部の通過範囲は、前記入口部分の形状に合致していることを特徴とする。
【0028】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、ブレード先端部の通過範囲に対して垂直に測定された、ブレード先端部の部分と、入口の部分との間の最小距離が、ファン直径Dの0.005倍よりも大きくかつファン直径Dの0.02倍よりも小さいことを特徴とする。
【0029】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、ブレード先端部の第2の部分の通過範囲とファン軸線の方向との間の、子午面における角度は、ブレード先端部前縁からブレード先端部後縁までブレード先端部の通過範囲に沿った距離とともに増大する先端部座標に関して単調に減少していることを特徴とする。
【0030】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、ブレード先端部通過範囲に対して垂直に測定された、ブレード先端部の第2の部分の通過範囲と、入口の部分における局所的に最も近いポイントとの間の距離は、ブレード先端部の第2の部分に沿って、±30%以下、または±20%以下だけ変化することを特徴とする。
【0031】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、ブレード先端部の第2の部分と、最も近いポイントのうちの2つの間の入口面との間の、ブレード先端部通過範囲に対して垂直に測定された距離は、ブレード先端部の第2の部分と、2つの最も近いポイントとの間の平均距離よりも少なくとも20%大きいことを特徴とする。
【0032】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、ブレード先端部の第2の部分と、最も近いポイントのうちの2つの間の入口面との間の、ブレード先端部通過範囲に対して垂直に測定された距離は、ブレード先端部の第2の部分と、2つの最も近いポイントとの間の平均距離よりも少なくとも40%大きいことを特徴とする。
【0033】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、ブレード先端部の通過範囲に対して垂直に測定された、ブレード先端部の第2の部分と、入口の部分における最も近いポイントとの間の最小距離が、ファン直径Dの0.005倍よりも大きくかつファン直径Dの0.02倍よりも小さいことを特徴とする。
【0034】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、ブレード先端部の第2の部分の通過範囲が、入口の部分におけるブレード先端部に局所的に最も近いポイントを通過する、子午面における包絡曲線に合致していることを特徴とする。
【0035】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、包絡曲線が滑らかであることを特徴とする。
【0036】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、包絡曲線の軸方向および半径方向の座標が、それぞれほぼスプライン曲線の値として与えられており、スプライン曲線は以下の形式で決定される:
1)胴回り座標を生成し、胴回り座標は、区分的線形曲線をたどり、その頂点は、包絡曲線が通過する入口におけるポイントであり、
2)胴回り座標に関する軸方向および半径方向の座標の三次スプラインを生成し、ノットが頂点に配置されており、
3)頂点の間にある胴回り座標の値においてスプラインを評価する。
【0037】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、包絡曲線に対して垂直に測定された、ブレード先端部の第2の部分の通過範囲と、包絡曲線との間の距離は、ブレード先端部の第2の部分の範囲にわたって、±30%以下、または±20%以下だけ変化することを特徴とする。
【0038】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、ブレード先端部の第2の部分と、最も近いポイントのうちの2つの間のポイントにおける入口面との間の、ブレード先端部の通過範囲に対して垂直に測定された距離は、ブレード先端部の第2の部分と、包絡曲線との間の局所的距離よりも少なくとも20%大きいことを特徴とする。
【0039】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、ブレード先端部の第2の部分と、最も近いポイントのうちの2つの間のポイントにおける入口面との間の、ブレード先端部の通過範囲に対して垂直に測定された距離は、ブレード先端部の第2の部分と、包絡曲線との間の局所的距離よりも少なくとも40%大きいことを特徴とする。
【0040】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、包絡曲線に対して垂直に測定された、ブレード先端部の第2の部分の通過範囲と、包絡曲線との間の最小距離が、ファン直径Dの0.005倍よりも大きくかつファン直径Dの0.02倍よりも小さいことを特徴とする。
【0041】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、包絡曲線が、ブレード先端部が当該包絡曲線に合致する領域において、ブレード先端部に局所的に最も近い、入口における少なくとも3つのポイントを通過することを特徴とする。
【0042】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、入口部分の面が軸対称であることを特徴とする。
【0043】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、シュラウドが、プラスチックの射出成形された部材であることを特徴とする。
【0044】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、シュラウドが、ファンアセンブリの上流に位置決めされた熱交換器にファンアセンブリを取り付けることを容易にする特徴を有することを特徴とする。
【0045】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、シュラウドが、上流の熱交換器の背後に取り付けられたバレルの上流のプレナムを有しており、そこでは、プレナムによってカバーされた熱交換器面の領域は、ファンディスク領域の少なくとも1.5倍であることを特徴とする。
【0046】
発明の別の態様では、自由先端部型軸流ファンアセンブリは、さらに、角度は、合計で180度よりも大きい方位角の1つまたは複数の範囲にわたって位置決めされた複数の子午面において非単調に変化することを特徴とする。
【0047】
発明のその他の態様は、詳細な説明および添付図面の考慮によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1a】フレア状のシュラウドバレルの形状に合致するブレード先端部を示す、従来の自由先端部型軸流ファンアセンブリの概略図である。自由先端部型軸流ファンアセンブリは、エンジン冷却ファンアセンブリとして構成されている。
【
図1b】
図1aのシュラウドバレルと、各ブレードの最も外側の部分の通過領域との、子午面における詳細な概略図である。
【
図1c】前縁および後縁と、ブレード先端部とを示す、ファンの上流から見た図である。
【
図2a】複数の段部を備える入口を有するシュラウドバレルと、段付きバレルに合致するファンブレード先端部とを備える、本願の1つの実施の形態による自由先端部型軸流ファンアセンブリの概略図である。
【
図2b】
図2aのシュラウドバレルの子午面における詳細な概略図である。
【
図2c】
図2aのシュラウドバレルと、各ブレードの外側部分によって通過される領域との、子午面における詳細な概略図である。
【
図3a】複数の段部を備える入口を有するシュラウドバレルと、バレル上の局所的に最も近いポイントを通過する滑らかな包絡曲線に合致するファンブレード先端部とを備える、本願の1つの実施の形態による自由先端部型軸流ファンアセンブリの概略図である。
【
図3b】
図3aのシュラウドバレルと、各ブレードの最も外側の部分によって通過される領域との、子午面における詳細な概略図である。
【
図3c】矩形のシュラウドプレナムを示す、
図3aの自由先端部型軸流ファンアセンブリの(上流から下流を見た)平面図である。
【
図4a】ブレード先端部の軸方向範囲が、入口における最も近いポイントの包絡曲線を規定する楕円の軸方向半軸より小さい、シュラウドバレルと、ブレードの外側部分の通過領域との、子午面における詳細な概略図である。
【
図4b】ブレード先端部の軸方向範囲が、入口における最も近いポイントの包絡曲線を規定する楕円の軸方向半軸より小さく、バレルが、ブレードの後縁の近くで終わっている、シュラウドバレルと、ブレードの外側部分の通過領域との、子午面における詳細な概略図である。
【
図4c】ブレード先端部の軸方向範囲が、入口における最も近いポイントの包絡曲線を規定する楕円の軸方向半軸より小さく、ファンが、先端部後縁が楕円の半径方向半軸に配置されるように位置決めされている、シュラウドバレルと、ブレードの外側部分の通過領域との、子午面における詳細な概略図である。
【
図5a】図示されていないブレード先端部に最も近い入口におけるポイントを示す、段付きシュラウドバレルの子午面図である。
【
図5b】ピースごとの線形包絡曲線を示し、かつ胴回りパラメータを規定する、段付きシュラウドバレルの子午面図である。
【
図5c】その座標が三次スプライン関数によって規定されている滑らかな包絡曲線を示す、段付きシュラウドバレルの子午面図である。
【
図5d】
図5cの滑らかな包絡曲線からずれた曲線を示す、段付きシュラウドバレルの子午面図である。
【
図5e】ブレード先端部の通過範囲が、
図5dのずれた曲線をたどる、段付きシュラウドバレルと、ブレードによって通過される領域との、子午面図である。
【
図6a】段部のほぼ軸方向の面に抜き勾配が存在する、段付きシュラウドバレルと、ブレードの通過領域との、子午面図である。
【
図6b】段部の外側の角が半径づけられている、段付きシュラウドバレルと、ブレードの通過領域との、子午面図である。
【
図6c】段部の内側の角が半径づけられている、段付きシュラウドバレルと、ブレードの通過領域との、子午面図である。
【
図6d】バレルへの入口が軸方向溝を有する、シュラウドバレルと、ブレードの通過範囲との、子午面図である。
【
図6e】バレルへの入口が、連続的でない段部を有する、シュラウドバレルと、ブレードの通過範囲との、子午面図である。
【
図6f】バレルへの入口が、軸方向の面と、半径方向に対して角度づけられた面とを備える段部を有する、シュラウドバレルと、ブレードの通過領域との、子午面図である。
【
図7a】段部の深さがバレルの厚さと同等であり、バレルの外面も段付けされている、段付きシュラウドバレルの両側を示している。
【
図7b】外側段部が半径づけられている、段付きシュラウドバレルの両側を示している。
【
図7c】段部の深さが、バレルの厚さと比較して小さく、バレルの外面が滑らかである、段付きシュラウドバレルの両側を示している。
【
図8a】米国特許出願公開第2014/0271172号明細書によるファンの負圧面と、本願の1つの実施の形態による段付きバレル入口との、軸方向図である。
【
図8b】
図8aに示したように、ブレード先端部における最大厚さのポイントに対応する角度で、ブレードおよびバレル入口を通る子午面セクションである。
【
図9a】段部が軸対称である、
図8の自由端部型ファンおよび段付きバレル入口の透視図である。
【
図9b】
図8の自由端部型ファンと、段部が非軸対称であり、らせん状である段付きバレル入口との、透視図である。
【
図10】滑らかなフレア状のシュラウドバレルを特徴とする従来のファンアセンブリの性能と比較した、本願の1つの実施の形態によるファンアセンブリの性能のプロットである。
【
図11】
図10のデータと同じデータを示しているが、無次元変数を使用している。
【
図12a】段部が方位角的に不連続である、米国特許出願公開第2014/0271172号明細書によるファンの負圧面と、段付きバレル入口との、軸方向図である。
【
図12b】セクションが段づけられている角度でそのセクションがシュラウドを通過している、ブレード先端部における最大厚さのポイントに対応する角度でブレードおよびバレル入口を通る、
図12aに示された、子午面セクションである。
【
図12c】
図12aに示されたシュラウドバレル入口の一部の透視図である。
【
図13a】米国特許出願公開第2014/0271172号明細書によるファンの負圧面と、円形のポケットの互い違いの列を有するバレル入口との軸方向図である。
【
図13b】このセクションが2つの入口ポケットを通過している、ブレード先端部における最大厚さのポイントに対応する角度でブレードおよびバレル入口を通る、
図13aに示された、子午面セクションである。
【
図13c】セクションが1つの入口ポケットを通過するような角度でブレードおよびバレル入口を通る子午面セクションである。
【
図13d】
図13aに示されたシュラウドバレル入口の一部の透視図である。
【0049】
詳細な説明
発明のあらゆる実施の形態が詳細に説明される前に、発明はその適用において、以下の説明に示されたまたは以下の図面に例示された構造の詳細および構成部材の配列に限定されないことが理解されるべきである。発明のその他の実施の形態が可能であり、発明は、様々な形式で実現または実施することができる。
【0050】
図1aは、従来の自由先端部型軸流ファンアセンブリ1を示している。例示した構成では、自由先端部型軸流ファンアセンブリ1は、少なくとも1つの熱交換器5に隣接して取り付けられたエンジン冷却ファンアセンブリである。この構成では、熱交換器5は、内燃機関(図示せず)を冷却するラジエータ51を有する。択一的に動力が供給される車両では、ファンアセンブリ1は、バッテリ、電気モータなどを冷却するために1つまたは複数の熱交換器に関連して使用することができる。シュラウド2は、冷却空気をラジエータ51からファン4へ案内し、漏れを制御するためにファンを包囲しており、モータ3のための支持28を提供している。
【0051】
シュラウド2は、プレナム壁21と、側壁23とを有し、これらは一緒にプレナム20を包囲している。プレナム壁21は、小さな円錐角を有するように示されているが、その他の場合には、ファン軸線6に対してほぼ垂直な平面に位置することができる。側壁23は、ファン軸線6に対して平行に示されているが、多くの場合、製造性を高めるために抜き勾配を有する。シュラウド2は、さらに、ファン4を包囲するバレル22を有する。バレル22は、滑らかなフレア状の入口24と、フレア状の入口24の下流の円筒状部分26とを有する。シュラウド入口へのエントランスの(軸線6から測定された)半径方向座標R
1は、シュラウド入口が円筒状部分26に接続するところの出口の半径方向座標R
2よりも大きい。円筒状と呼んでいるが、部分26は、部分26が軸線6と完全に平行ではないように、製造性のために抜き勾配を備えて形成されていてもよい。いずれの場合にも、部分26は、フレア状の入口24を規定する形状を有する部分から区別可能である。
【0052】
ファン4は、軸線6を中心に回転し、ハブ41と、概して半径方向に延びる複数のブレード40とを有している。
図1aは、ファンが回転するときにこれらのブレードによって通過される、子午面(ファン軸線を含む平面)における領域を示している。ハブ41に隣接した各ブレード40の端部はブレード根元部43であり、各ブレード40の最も外側の端部はブレード先端部46である。ブレード先端部46は、シュラウドバレル22に合致している。言い換えれば、ブレード先端部46は、シュラウドバレル22からずれているが、シュラウドバレル22によって規定された輪郭に従うまたは一致する形状を有している。ブレード先端部の前縁の半径方向座標R
LEは、ブレード先端部の後縁の半径方向座標R
TEよりも大きい。公称ファン半径Rは、R
TEと等しいとされており、ファン直径Dは、Rの2倍に等しい。先端部間隙7は、ブレード先端部46とシュラウドバレル22との間の最小ランニングクリアランスを提供し、これは0.005D〜0.02Dである。
【0053】
図1bは、
図1aのシュラウドバレル22と、各ブレード40の最も外側の部分によって通過される領域との、子午面における詳細な概略図である。フレア状の入口は、ほぼ楕円形であり、ブレード先端部46の通過される範囲は、バレル22からほぼ一定の距離“g”だけずれた滑らかな曲線である。この距離は、ブレード先端部46とシュラウドバレル22との間の間隙7の幅を表している。
【0054】
図1bは、入口面座標“s”も示しており、入口面座標は、入口がプレナム壁21につながるところではゼロであり、入口プロフィルに沿った距離とともに線形に増大している。
図1bに示されたフレア状入口は楕円形であるが、その他の従来のフレア状シュラウドは、当該形状とはいくぶん異なることができる。全てのケースにおいて、フレア状入口24の面と、ファン軸線6の方向との間の、子午面における角度“θ”は、“s”が増大するにつれて単調に減少している。
【0055】
図1bはほぼ一定の間隙幅を示しているが、その他の場合には、間隙は、前縁から後縁まで一定ではない。特に、時には、ブレード先端部とシュラウドとの間の最小軸方向距離が、一定の間隙幅の場合よりも大きくなるように設計される。これは、ブレード先端部の予測される軸方向たわみが、予測される半径方向たわみよりも大きい場合に特に有利である。
【0056】
図1aおよび
図1bは、ブレード先端部46の後縁TEの下流へある程度の距離だけ延びたバレル22を示しているが、バレル22は、時には、ブレード先端部46の後縁TEのすぐ近くで終わっている。これは、多くの場合、下流のモータ支持構造28が存在しないバレル周囲に沿った位置における場合である。これらの位置において、ブレード先端46の周囲の再循環を制限するために必要とされるよりもさらにバレル22を延長させることに対して空力的にほとんどまたは全く利点がない。幾つかの場合、良好な性能は、ブレード先端部の後縁TEのいくぶん上流において終わったバレル22によって達成することもできる。
【0057】
図1aおよび
図1bは、フレア状の入口の軸方向範囲とほぼ等しいブレード先端部46の軸方向範囲を示しているが、これは、時にはそうではない。幾つかの場合、ブレード先端部は、入口の端部を超えて、バレル22のほぼ円筒状の部分へ延びている。その他の場合、ブレード先端部46の後縁TEは、ファン軸線6に対するフレア状の入口の角度がまだゼロではない軸方向位置にある。楕円形のシュラウド形状の場合、これは、半径方向の半軸“b”の上流の位置に対応する。
【0058】
幾つかの場合、ブレード先端部の前縁は、入口へのエントランスの前方に位置しており、その他の場合には、入口へのエントランスの十分に内側に位置している。
【0059】
図1cは、
図1aおよび
図1bに示したように、フレア状シュラウドに合致するブレード先端部を備える、従来の自由先端部型ファン4の軸方向投影図である。回転は時計回りであり、ファンの前縁LEと後縁TEとが示されている。前縁におけるブレード先端部の半径R
LEは、後縁における半径R
TEよりも大きい。
【0060】
図2aは、本願の1つの実施の形態による、自由先端部型軸流ファンアセンブリを示している。
図1aの従来のファンアセンブリのように、バレル22は、ファン軸線6に対する入口面の半径方向座標が、入口へのエントランスにおいて、出口におけるよりも大きいことを特徴とする入口242を有する。これにより、入口は、軸流方向Fにおいて減少する断面積の領域を規定している。この例において、ブレード先端部の前縁の軸方向位置における入口の半径方向座標R
1は、ブレード先端部の後縁の軸方向位置における入口の半径方向座標R
2よりも、R
2の約6.8%だけ大きい。
図1aのエンジン冷却ファンアセンブリとは異なり、入口242は滑らかなフレア状ではなく、その代わり、段状であり、各段部は、子午面において、ほぼ半径方向の(軸方向に面した)面と、ほぼ軸方向の(半径方向に面した)面とを有する。
【0061】
図2aは、段部に合致するブレード先端部46を有するファン4を示している。ブレード先端部の前縁の(軸線6から測定された)半径方向範囲R
LEは、ブレード先端部の後縁の半径方向範囲R
TEよりも大きい。この例では、R
LEは、R
TEの約6.9%だけR
TEを超過している。先端部間隙7は、ブレード先端部とシュラウドバレルとの間にランニングクリアランスを提供し、このランニングクリアランスは、この例では、ほぼ一定であり、ファン直径Dの1.0%に等しい。
【0062】
図2bは、
図2aのシュラウドバレル22の子午面における詳細な概略図である。バレル22は、段状の入口242と、ほぼ円筒状の部分26とを有する。入口242の上流には、プレナム壁部21が配置されている。面座標“s”は、入口がプレナム壁部21につながるポイントにおいてはゼロであり、入口が円筒状部分26につながるまで、段状の入口面に沿った距離とともに線形に増大する。
【0063】
図2bに示された入口の場合、面の半径方向座標は単調に減少している。すなわち、面の半径方向座標は、“s”が増大するにつれて、減少するかまたは一定のままである。この特徴により、入口は、単純な射出成形機によって射出成形されたプラスチックから形成することができる。
【0064】
図2bに示された段状の入口は、付加的な特徴を有する。つまり、入口面の軸方向座標(正の下流)は、面座標“s”が増大すると、単調に増大する、すなわち、増大するかほぼ一定にとどまる。この特徴は、特に射出成形機を設計するときに好ましい。
【0065】
図2bに“θ”として示された、入口面とファン軸線との間の角度は、入口へのエントランスにおいては約90度であり、バレルの円筒状部分につながる、入口からの出口においては約0度であるが、
図2aのプレナム壁21において示したように円錐角(例えば5度)を提供することによって、変化形が生じてもよい。
図1の滑らかなフレア状の入口とは異なり、“s”が増大すると、角度“θ”は、入口における値から、出口における値まで非単調な形式で減少し、段部のほぼ半径方向の面に沿った約90度から、段部のほぼ軸方向の面に沿ったほぼ0度まで変化する。子午面に沿った断面図で見ると、入口面のスロープは、ポイント“A”とポイント“B”との間で不連続であり(
図2b参照)、これらのポイントの間には、角度“θ”が非単調に変化する領域が規定されている。非単調に変化する角度“θ”の領域では、複数の段部が入口面に規定されており、各段部は、別々の半径方向座標における2つの入口面セグメントを接続している。
【0066】
図2bは、入口面と交差することなく入口面上の2つのポイント(例えば、2つの連続する突出したポイント)に接触する直線28を示しており、これにより、直線28は、入口面に当てられた直定規を表している。直線28に対して垂直に測定された、直線28が入口面と接触する2つのポイントの間に位置する1つのポイントにおける、直線28とバレル面との間の距離“d”は、ファン直径Dの少なくとも1.0%(例えば、ファン直径Dの1.5%)であることが示されている。
【0067】
図2cは、
図2aのシュラウドバレル22と、各ブレード40の最も外側の部分によって通過される領域との、子午面における詳細な概略図である。バレル入口の軸方向範囲に位置するブレード先端部の部分P
1は、前縁LEと後縁TEとの間のブレード先端部の軸方向範囲全体と等しい。非単調に変化する角度“θ”の領域は、少なくとも、部分P
1と重なり合う入口の部分の軸方向範囲の最も上流の50%にわたって延びている。非単調に変化する角度の領域の軸方向範囲に位置するブレード先端部の部分は、ブレード先端部の第2の部分P
2として設計されている。
【0068】
図2cにおけるブレード先端部46の通過範囲は、段状の入口に合致するように段付けされており、半径方向間隙“g
r”および軸方向間隙“g
a”だけ入口からずれており、これらの間隙は、図示したように等しくても、または異なっていてもよい。特に、時には、g
aをg
rよりも大きく設計することが有利である。これは、特にブレード先端部の予測される軸方向たわみが予測される半径方向たわみよりも大きい場合に有利である。ブレード先端部と入口との間の典型的な最小距離は、ファン直径Dの0.005〜0.02倍である。
【0069】
図3aは、
図2aのものと同様の自由先端部型軸流ファンアセンブリを示しているが、以下で説明されるような相違点を有する。上記の説明は、同じ特徴の開示について参照される。段状の入口242に合致するのではなく、ブレード先端部46は、ファンブレード先端部に局所的に最も近いシュラウドバレル上のポイントを通過する包絡曲線に合致している。
図2aに示したように、ブレード先端部の前縁の(軸線6から測定された)半径方向範囲R
LEは、ブレード先端部の後縁の半径方向範囲R
TEよりも大きい。バレル22の入口面は、
図2a〜
図2cのファンアセンブリの入口面と比較してより多数の段部を備えて形成されている。
【0070】
図3bは、シュラウドバレル22と、
図3aの各ブレード40の最も外側の部分によって通過される領域との、子午面における詳細な概略図である。この例では、ファンブレード先端部に局所的に最も近いバレル上のポイントを通過する包絡曲線は、軸方向のセミ半径“a”および半径方向の半軸“b”を備える楕円の一部を形成している。ブレード先端部の通過範囲は、包絡曲線からほぼ一定の距離“g”だけずれた曲線である。この例では、“g”は、ファン直径Dの約1.0%である。先端部座標“t”は、ブレード前縁からブレード後縁までのブレード先端部の通過範囲に沿った距離とともに線形に増大する。ブレード先端部の通過範囲と、ファン軸線6の方向との間の、子午面における角度“Ψ”は、“t”が増大すると単調に減少する。
図3bに示された構成では、ブレード先端部の通過範囲は、角度“Ψ”が“t”の連続的な関数であるという点で、滑らかな曲線である。その他の構成では、ブレード先端部の通過範囲は、角度“Ψ”が“t”の連続的な関数ではないという点で、滑らかではないが、このような構成は、さらに、“t”が増大すると単調に減少する角度“Ψ”を特徴とすることができる。
【0071】
子午面に沿った断面図で見ると、入口面のスロープは、ポイント“A”とポイント“B”との間で不連続であり(
図3b参照)、これらのポイントの間には、上記で規定された入口面とファン軸線の方向との間の角度“θ”が非単調に変化する領域が規定されている。入口の軸方向範囲に位置するブレード先端部の部分P
1は、ブレード先端部の軸方向範囲全体である。ポイントAおよびBの間に位置する非単調に変化する角度“θ”の領域は、少なくとも、ブレード先端部の軸方向範囲と重なり合う入口の部分の軸方向範囲の最も上流の50%にわたって延びている。非単調に変化する角度の領域の軸方向範囲に位置するブレード先端部の部分は、ブレード先端部の第2の部分P
2として設計されている。
【0072】
図3bは、入口面と交差することなく、ブレード先端部の軸方向範囲内にある2つのポイントにおいて入口面と接触する直線28を示している。これは、入口面に当てられた直定規を表す。直線28に対して垂直に測定された、直線28が入口面と接触する2つのポイントの間に位置する1つのポイントにおける、この直線とバレル面との間の距離“d”は、ファン直径Dの約0.5%であることが示されている。この特定の例では、この測定は、段部深さの最大値を表しており、同様の測定が、ブレード先端部46の後縁TEのより近くで行われたならば、距離はより小さくなる。この最大段部深さdは、異なる入口設計を比較するための測定基準として使用することができる。ブレード先端部46の軸方向範囲内の最大段部深さdは、ファン直径Dの0.2%以上であることができ、幾つかの構成では、最大段部深さdは、ファン直径Dの0.3%よりも大きいか、またはさらには0.4%よりも大きい。入口面に沿って設けることができる段部の数量に制限しているが、ブレード先端部46の軸方向範囲内の最大段部深さdは、ファン直径Dの0.5%よりも大きくてもよい。
【0073】
図3bにおいて、距離“g”は、局所的に最小であるポイントのみにおける間隙7の幅を表している。
図3bは、距離“g”がブレード前縁からブレード後縁まで一定である一例を示しているが、その他の実施の形態では、この距離にわたって変化することができる。特に、時には、ブレード先端部とシュラウドとの間の最小軸方向距離が、“g”の一定の値の場合よりも大きくなるように設計される。これは、特にブレード先端部の予測される軸方向たわみが予測される半径方向たわみよりも大きい場合に有利である。ブレード先端部46上で、局所的に最も近いポイントまでの距離“g”の変化の範囲は、その平均値の±30%未満であり、その平均値の±20%未満であってもよい。距離“g”の最小値は、ファン直径Dの0.005〜0.02倍であることができる。
【0074】
距離“g”は、ブレード先端部と、シュラウドにおける局所的に最も近いポイントとの間の間隙7の幅を表しているが、その他のポイントにおいて、間隙7は、寸法“g”よりも著しく大きくてもよい。
図3bの例では、ブレード先端部の通過範囲に対して垂直に測定された間隙7の幅は、2つの局所的に最も近いポイントの間の位置における寸法“g”の局所的な値よりも50%大きい。ブレード先端部46に局所的に最も近いポイントの間の間隙7のこの局所的に最大の幅は、寸法“g”の局所的な値よりも少なくとも20%大きくてもよく、幾つかの構成では、寸法“g”の局所的な値よりも少なくとも30%または少なくとも40%またはさらには少なくとも50%大きい。
【0075】
図3bに示されたブレード先端部46は、包絡曲線を規定する楕円の全範囲にわたって延びており、ブレード先端部の後縁TEの領域における段部の深さは小さい。しかしながら、入口は、ブレード先端部46の後縁TEに向かって軸方向範囲を有する入口の一部分にわたって滑らかである(すなわち、段状でない)ことができる。幾つかの態様において、段部は、ブレード先端部46の軸方向範囲と重なり合う入口の部分の軸方向範囲の、少なくとも最も上流の50%、より具体的にはその大部分にわたって、延びている。
【0076】
図3cは、
図3aの自由先端部型軸流ファンアセンブリの(上流から下流を見た)平面図である。シュラウド2は、ほぼ矩形のプレナム壁21と、プレナム壁の外縁から、図示されていない上流の熱交換器まで軸方向に延びる側壁23とによって包囲された、ほぼ矩形のプレナム20を有する。プレナムによってカバーされた熱交換器の領域は、ファン直径Dと等しい直径を有する円の領域として規定されたファンディスク領域の約2.14倍である。シュラウドは、熱交換器における取付け特徴と係合するブラケット29を特徴とする。シュラウドは、段状のバレル入口242と、モータ支持部28の配列とを特徴とする。
図3cは、1つのファンを備えるファンアセンブリを示しているが、その他の構成は、1つのシュラウドに複数のファンを有する。これらの構成において、熱交換器領域の関連する測定基準は、全てのファンの合計ディスク領域に対するその領域の比である。
【0077】
図3cに示されたファン4の軸方向投影図は、
図1cに示された従来の自由先端部型ファンのものと同じである。このファンは、ブレード根元部の近くで前方スイープを、ブレード先端部において後方スイープを有するが、その他の実施の形態は、スイープのその他の分配を有することができる。同様に、
図2および
図3のファンは、
図1aに示された従来のファンのものと同様のレーキ角分配を有するが、その他の実施の形態は、その他のレーキ角分配を有することができる。
【0078】
図2および
図3は、入口における全ての段部が、同じ軸方向範囲を有する軸方向の面と、変化する半径方向範囲の半径方向面とを有するファンアセンブリを示している。その他の実施の形態では、全ての段部は、同じ半径方向範囲を有する半径方向の面と、変化する軸方向範囲の軸方向の面とを有する。さらに別の可能性は、包絡曲線に対して垂直な深さを全ての段部において一定にすることである。その他の構成も可能である。
【0079】
図4aは、シュラウドバレル22と、ブレード40の外側部分の通過領域との、子午面における詳細な概略図であり、この場合、
図3aに示したように、ファンブレード先端部に局所的に最も近いバレル上のポイントを通過する滑らかな包絡曲線は、軸方向のセミ半径“a”および半径方向の半軸“b”を備える楕円23の一部を形成している。この場合、ブレード先端部46の軸方向範囲は、楕円23の軸方向半軸よりも小さく、ブレード先端部の後縁TEは、距離“X”だけ、楕円半径方向軸線の上流にある。これにより、ブレード先端部の後縁TEの近くの段部は、
図3bのファンのブレード先端部後縁TEの近くの段部よりも、深く、より効果的となる。ブレード先端部後縁TEの下流の入口の部分は、滑らかであり、段部を有さない。このファンアセンブリの性能は、ブレード先端部後縁の下流の段部を延長させることによって、著しく高められないことがある。
【0080】
図4bは
図4aと同様であるが、この例では、バレル22は、ファンの後縁TEの近くで終わっている。この構成は、多くの場合、
図3aに示されたモータ支持構造28の間の周方向位置において使用されている。
【0081】
図4cは、ブレード先端部46の軸方向範囲が、入口における最も近いポイントを通って包絡曲線を規定する楕円23の軸方向のセミ半径“a”よりも小さい場合も示している。この場合、ファンは、先端部後縁TEが楕円23の半径方向半軸“b”上に配置されるように位置決めされており、ブレード先端部の前縁LEは、距離“Y”だけシュラウドバレル22へのエントランスの下流に配置されている。段部は、ブレード先端部の前縁LEの前方へ延びており、少なくとも、ブレード先端部46の前縁LEの上流に位置する、入口の第2の部分の軸方向範囲の最も下流の50%をカバーしている。このファンアセンブリの騒音性能は、段部がブレード先端部の前縁LEの前方へ延びていない同様のアセンブリのものよりも、著しく良好である。
【0082】
図3bおよび
図4a〜
図4cにおける包絡曲線は楕円の一部を形成しているが、その他の形状も良好な結果を生じることができる。幾つかの実施の形態では、包絡曲線の座標は、ブレード先端部46に局所的に最も近いポイントであるシュラウド上のポイントに対応するノットを通るスプライン曲線として形成されている。これらの“局所的に最も近い”ポイントは、
図5aに特定されている。
【0083】
図5bは、最も近いポイントの間において線形の包絡線を示している。包絡線は、この包絡線の長さに沿って線形に増大する胴回り座標“s
g”も規定している。このような包絡線は、包絡線とファン軸線6の方向との間の、子午面における角度が、“s
g”が増大すると単調に減少するという性質を有している。
【0084】
図5cは、そのノットが入口の最も近いポイントの軸方向および半径方向の座標でありかつその独立した変数が座標“s
g”である三次スプラインをたどる軸方向および半径方向座標を有する滑らかな包絡曲線を示している。これらのスプラインの最終条件は、滑らかな包絡曲線が、非単調な角度変化の領域の外側でシュラウド面と混合するようになっている。
【0085】
図5dは、
図5cの滑らかな包絡曲線から一定の距離だけずれた曲線を示しており、
図5eは、ブレード先端部の通過範囲が、ずれた曲線をたどっている、ファンブレードの通過領域を示している。
【0086】
図2、
図3、
図4および
図5は、軸方向および半径方向の面を有する段部を備える段状のバレル入口を示しているが、その他のジオメトリも有効である。
図6aは、
図2〜
図5においては軸方向である、入口の部分において抜き勾配を有する段状のバレル入口242を示している。示された抜き勾配は5度である。抜き勾配は、プラスチック部品の成形性を高めることができ、ファンアセンブリの性能を著しい程度にまで妥協しない。
【0087】
図6bは、段部の外側の角、つまりブレード先端部に最も近い角が、半径づけられている、段状のバレル入口242を示している。角を半径づけることは、鋭い角を備える段状のバレルに対して、性能の小さな損失を生じるが、その損失は、包絡曲線が、角の半径の効果を有するように再規定され、ブレード先端部46と包絡曲線との間のずれが維持されるならば、最小限に減じられる。
【0088】
図6cは、段部の内側の角が半径づけられている、段状のバレル入口242を示している。成形されたプラスチック部材の場合、このような半径の利点は、溶融したプラスチックが製造中に成形機をより容易に充填することができるということである。このような半径は、半径づけられた角を有さない段状のバレルに対して、性能の損失を生じる可能性があるが、この損失は、半径が、
図6bに示したように外側の角に適用された段状の入口の場合よりも、概して小さい。
【0089】
図6a〜
図6cは、成形された部材の製造性を高め得る、段状のバレル入口の変更を示している。それらは、これらの変更または同様の変更のあらゆる組合せを同じシュラウドバレルにおいて使用することができるという点で、相互に排他的ではない。
【0090】
図6dは、軸方向溝を有するバレル入口242を示している。拡大図は、入口面座標“s”を示しており、この入口面座標は、入口がプレナム壁21につながるところではゼロであり、入口プロフィルに沿った距離とともに線形に増大する。
図2〜
図5の段状の入口の場合のように、“s”が増大すると、半径方向寸法は、減少するか、または一定に保持される。しかしながら、段状の入口の場合とは異なり、“s”が増大すると、軸方向寸法(正の下流)は、必ずしも増大しないかまたは一定のままである。その代わり、減少する可能性もある。
図6dに示したように軸方向溝を含むことは、滑らかなフレア状のシュラウド入口を備えるファンアセンブリと比較したとき、自由先端部型軸流ファンアセンブリの性能を高めることができる。
【0091】
図6eは、段部が連続的ではなく、滑らかなフレア状のシュラウドの部分によって分離されている、段状のバレル入口242を示している。概して、このような構成は、段部が連続的である構成よりも、有効でない。これは、連続的に段付けされた入口に対する、軸方向溝を備える入口の性能不足の幾つかを補償し得る。
【0092】
図6fは、段状の入口の非軸方向の面が半径方向ではなく、その代わり、子午面において、半径方向に対して鋭角(例えば、30度の角度)を形成している構成を示している。4つの段部の角度付けられた部分の半径方向範囲は、この例において一定である。この構成は、溝付きの入口の付加的な深さと、段付けされた入口の連続的な性質とを提供する。滑らかなフレア状の入口よりも優れているが、このような構成は、段部の面が互いに対してほぼ垂直である構成よりも、有効でないことがある。
【0093】
図4、
図5および
図6は、シュラウドバレルの内面のみを示している。バレルの外側は、幾つかの場合、
図2aおよび
図3aに示したように、内側の形状に従うことができる。
図7aは、その内面が
図4bに示されているシュラウドバレルの、子午面断面図である。この例では、外面は、内面からほぼ一定の大きさだけずらされている。
図7bは、外側の角が半径づけられているシュラウドバレルの子午面断面図を示している。これは、使用される材料の量を減じ、射出成形されたシュラウドの場合、製造中のプラスチックの流動を高め得る。成形性をさらに高めるために、外面および内面における内側の角も半径づけることができ、外面および内面の両方に抜き勾配を適用することができる。
【0094】
シュラウドにおける段部が比較的浅い場合、択一的なアプローチは、バレルの外側を滑らかな面にすることである。これは、
図7cに示されている。この例における全ての段部は、楕円形の包絡曲線に対して垂直な同じ深さを有する。内側の角は、成形機内へのプラスチック材料の流動を高めるように、半径づけられている。
【0095】
図8aは、米国特許出願公開第2014/0271172号明細書によるファンの負圧面と、本願の1つの実施の形態による段付きバレル入口との、軸方向図である。この図において、ファンは反時計回りに回転する。
図8bは、
図8aに示したように、ブレード先端部における最大厚さのポイントに対応する角度における、ブレードおよびバレル入口の子午面断面図である。バレル入口は、
図7aに示されたものと同じである。
図8cは、
図8bの先端部領域の詳細図であり、ブレード先端部を超えて漏れる流れと、流れ剥離の領域において生ぜしめられる渦との概略図を含んでいる。ブレードの正圧面が間隙への入口につながる分離された領域に加えて、付加的に、シュラウド入口の各段部の半径方向の面において流れの剥離が生じる。これらの分離されたゾーンは、先端部間隙を通る流れを減じることがあり、加えて、先端部渦を複数のより小さな渦に分裂させるように機能してもよく、これらのより小さな渦は、1つの渦よりも迅速に消散することがあり、これにより、後続のブレードとの相互作用をより少なくする。ブレードが通過した後、先端部渦は、シュラウドに沿って上流方向へ流れを誘発し続ける可能性があるので、図示された分離ゾーンは、大きな周方向範囲にわたって存在することができる。これらの分離されたゾーンの存在は、非定常圧力場によりシュラウドによって放射される騒音を減じることがある。先端部渦が下流へ移動した、ブレードの間の領域において、段状の面に沿った流れは下流方向へ移動し、分離ゾーンは軸方向の面へシフトし、逆の符号の渦が発生される。
【0096】
図9aは、段部が軸対称である、
図8a〜
図8cの自由端部型ファンおよび段付きバレル入口の透視図である。
図9bは、
図8a〜
図8cの自由端部型ファンと、段部が非軸対称でかつらせん状である段付きバレル入口との、同じ図である。このシュラウドバレル22の子午面断面図は、
図9aのものにとても類似した段状の輪郭を有するが、段部の軸方向位置は、ファン軸線を中心とする周方向位置とともに変化している。図示されたらせん状の段部は、ブレードピッチのらせんとは逆の向きを有するが、その他のらせん状バレル段部は、ブレードピッチのらせんと同様の向きを有することができる。非軸対称の段状のバレル入口は、滑らかなフレア状の入口と比較して著しい騒音減少を生じることができるが、軸対称の段部を備える入口よりも必ずしも優れているわけではない。
【0097】
本明細書に開示された構成のうちのいずれかによる入口ジオメトリのいずれかを、シュラウドの周方向範囲全体(すなわち360度の方位角範囲全体)にわたって設けることができることにも留意すべきである。しかしながら、幾つかの場合、説明された入口ジオメトリは、周方向範囲全体に満たない範囲に設けられてもよい。このような場合、説明された入口ジオメトリは、周方向範囲の実質的な部分(すなわち、少なくとも33%)にわたって存在してもよい。幾つかの構成では、説明されたジオメトリは、周方向範囲の少なくとも大部分(すなわち、方位角の180度を超えて)にわたって、幾つかの場合には、実質的により多く(例えば、67%、80%、90%、95%または99%)存在してもよい。
【0098】
図10は、シュラウドバレルへの入口が滑らかなフレア状である点においてのみ異なる従来のファンアセンブリの性能(点線のプロット)と比較した、本願の1つの実施の形態によるファンアセンブリの性能(実線のプロット)を示している。ファン直径は375mmである。両ファンの作動速度は、自動車が停止している車両“アイドル”条件を表す200Paの圧力において、0.7m
3/sの設計上の流れを達成するように調節されている。従来のアセンブリにおけるファンの速度は2760rpmであり、本願によるファンアセンブリの速度は2736rpmである。圧力曲線における小さな円によって示された設計点では、本願によるファンアセンブリは、従来のファンよりも2.0dBだけ静粛である。その効率は、1.2ポイント高い。より高圧の作動点において、騒音低減は著しくより大きくなる。
【0099】
図11は、
図10のデータと同じデータを、ただし異なる変数の観点から示している。この場合、横座標は、動圧によって割った静圧に比例する、システム抵抗係数である。右側の縦座標は、比騒音であり、これは、排出された空気パワーおよびファンディスク領域を考慮する測定された騒音を正規化する。基準ファンアセンブリの騒音レベルは、2.5と4.5のシステム係数の間で劇的に増大している。これを、“騒音壁”と呼ぶことができる。騒音壁の位置を、比騒音が70dBを超えるシステム係数として規定するならば、段状の入口の効果は、騒音壁を28.6%だけ移動させる。これは、極めて著しい増大である。段状のシュラウドにより、自由先端部型ファンは、滑らかなフレア状のバレル入口を備える場合よりも著しく大きなシステム抵抗を有する用途において使用することができる。
【0100】
図12aは、段部が方位角方向で不連続である、米国特許出願公開第2014/0271172号明細書によるファンの負圧面と、段付きバレル入口との軸方向図である。段状の入口形状がバレル入口の選択された方位角部分のみにわたって適用されているにもかかわらず、シュラウドバレル入口の全周が段状である実施の形態と同様の利点が残っている。バレル入口が部分的にのみ段状である場合、段状の部分は、方位角の1つの範囲であるか、または、
図12aの場合のように、方位角の複数の小さな範囲であることができる。要するに、段状の部分は、入口の大きな方位角部分または領域(すなわち、方位角の180度よりも大きい)を形成していてもよい。
図12bは、
図12aに示したように、ブレード先端部における最大厚さのポイントに対応する角度における、ブレードおよびバレル入口の子午面断面図であり、この断面図は、当該断面図が複数の段部を含むように成形されたポイントにおいて、シュラウドバレル入口を通過している。各段状部分は、
図8a〜
図8cに示された形状を備えて示されているので、上記説明が参照される。しかしながら、択一的な構成において、個々の段状部分は、本明細書に規定されたあらゆるその他の構成に従って成形することができる。
図12cは、シュラウドバレル入口の一部の透視図である。
【0101】
図13aは、米国特許出願公開第2014/0271172号明細書によるファンの負圧面と、ポケット(例えば、円形のポケット)の互い違いの列を有するバレル入口との軸方向図である。各ポケットは、ファン軸線に対して平行に延びる軸線を規定しているか、またはファン軸線に対して平行な主要な成分を有している。
図12aに示されたシュラウドバレル入口は、方位角方向で不連続な段部を有するのに対し、
図13aのバレル入口は、不連続な軸方向溝を表していると考えることができる。これは、
図13bおよび
図13cに見ることができる。
図13bは、
図13aに示したように、ブレード先端部における最大厚さのポイントに対応する角度において、ブレードおよびバレル入口を通る子午面断面図であり、この場合、この断面図は、入口面が、より早期の実施の形態に関連して説明したように非単調に変化する角度“θ”の領域を規定するように、2つのポケットを通過している。この断面図は、
図6dに示された軸方向溝の断面図と似ているが、
図6dは、より多くの成形された特徴を有する。
図13cは、1つのポケットを通るような角度において、ブレードおよびバレル入口を通る子午面断面図である。全ての構成において必要とされるわけではないが、(子午面断面図において)複数のポケットが規定されている部分は、全体として見ると、バレル入口の大きな方位角部分または領域(すなわち、方位角の180度よりも大きい)を占めていることができる。
【0102】
米国特許第6595744号明細書、米国特許第8137070号明細書、米国特許第9004860号明細書および米国特許出願公開第2014/0271172号明細書の内容は全て、引用したことにより本明細書に組み込まれる。米国特許第6595744号明細書には、傾斜した自由先端部型ファンの軸方向たわみを減じることができるレーキ角分配が記載されており、米国特許第8137070号明細書は、自由先端部型ファンの半径方向たわみを減じるスキュー分配を開示している。これらの両特徴は、自由先端部型ファンアセンブリの所要の設計上の先端部間隙を減じることができる。米国特許第9004860号明細書は、ブレード先端部荷重に対する先端部間隙の効果に反作用するように作用する、ブレード反りおよびブレード角度の変化を開示している。米国特許出願公開第2014/0271172号明細書は、ブレード先端部において増大したブレード厚さを有するファンを開示しており、これは、騒音および効率における先端部間隙の不利な効果を減じる。本願の態様の多くは、ブレードジオメトリへのいかなる変化も伴わないので、ファンアセンブリは、有利には、本願の特徴に加えて、引用によって組み込まれたこれらの文献のいずれかに開示された特徴のあらゆる組合せを組み込むことができる。さらに、本願の特徴は、その他の公知のタイプの付加的な自由先端部型ファンブレードジオメトリとともに使用されてもよいことが理解されるであろう。
【0103】
本願の1つまたは複数の態様による特性を有するファンアセンブリは、前方に傾斜させられていることができるか、後方へ傾斜させられていることができるか、または混合された傾斜の設計であることができる。同様に、本願の1つまたは複数の態様によるファンアセンブリは、あらゆる数のブレード、ブレード角度、反り、弦またはレーキ角のあらゆる分配を有することができ、プッシャまたはプラー構成のいずれかであってもよい。