特許第6576479号(P6576479)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576479
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】燃焼排ガス中の酸性ガス除去装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/68 20060101AFI20190909BHJP
   B01D 53/50 20060101ALI20190909BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20190909BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20190909BHJP
   F23J 15/06 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   B01D53/68 100
   B01D53/50 270
   B01D53/78ZAB
   B01D53/18
   F23J15/06
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-1351(P2018-1351)
(22)【出願日】2018年1月9日
(65)【公開番号】特開2019-118893(P2019-118893A)
(43)【公開日】2019年7月22日
【審査請求日】2018年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100097755
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】工藤 隆行
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−126127(JP,A)
【文献】 特開平09−280540(JP,A)
【文献】 特開昭60−221693(JP,A)
【文献】 特開2014−237097(JP,A)
【文献】 特開2014−237096(JP,A)
【文献】 特開2012−207617(JP,A)
【文献】 特開2013−202497(JP,A)
【文献】 再公表特許第01/012299(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34− 53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
F02G 1/00− 5/04
F23J 13/00− 99/00
F27D 17/00− 99/00
F28D 1/00− 13/00
B01D 53/26− 53/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の酸性ガス成分および水分を含む燃焼排ガスがチューブの内部に流れその燃焼排ガスとチューブの外部との間で熱交換が可能な複数の熱交換部がそれぞれケーシングに組み込まれた状態で前記燃焼排ガスの流れ方向に順に設けられてなる煙道と、冷却用熱媒体を送り出す熱媒体送出機、及び前記ケーシングを配管で接続して前記複数の熱交換部のうち下流側の熱交換部から順に上流側の熱交換部へと連続した流れで冷却用熱媒体を供給する冷却用熱媒体供給手段と、前記複数の熱交換部の上流側に配設される集塵器とを備え、
前記複数の熱交換部における上流側の熱交換部よりも下流側の熱交換部の方が段階的に低い冷却温度となるように、前記冷却用熱媒体供給手段によって供給される冷却用熱媒体を用いて前記燃焼排ガスを前記複数の熱交換部を介して間接的に冷却することにより、前記燃焼排ガス中の水分と前記燃焼排ガス中の種類毎の酸性ガス成分とを含む複数種類の凝縮液を個別に生成して、前記燃焼排ガスから水分と共に複数種類の酸性ガス成分を分離することを特徴とする燃焼排ガス中の酸性ガス除去装置。
【請求項2】
前記上流側の熱交換部での冷却温度を硫酸露点以下かつ塩酸露点以上とすることで凝縮液として硫酸を生成し、前記下流側の熱交換部での冷却温度を塩酸露点以下とすることで凝縮液として塩酸を生成するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の燃焼排ガス中の酸性ガス除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば廃棄物焼却施設等で発生する燃焼排ガスに含まれる酸性ガス成分を除去するのに用いられて好適な燃焼排ガス中の酸性ガス除去方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば廃棄物焼却施設等で発生する燃焼排ガスには、HCl,SOxなどの酸性ガス成分が含まれており、これらを除去してから大気に放出するようにされている。このような酸性ガス成分を除去する方法として、乾式法や湿式法などがある。
【0003】
図2(a)に示されるように、乾式法は、燃焼排ガス中に消石灰や重曹等のアルカリ薬剤を吹き込み、アルカリ薬剤と酸性ガスとを中和反応させて生じた中和塩を下流側の集塵器101で捕集することにより、燃焼排ガスから酸性ガス成分を除去するものである(特許文献1参照)。なお、図2(a)において、集塵器101の下流側に配設されるガス再加熱器は必要に応じて設置されるものであり、設置されない場合もある。
【0004】
図2(b)に示されるように、湿式法は、集塵器101でばいじんが除去された燃焼排ガスを排ガス洗浄装置102に導入し、この排ガス洗浄装置102で噴霧・循環される洗浄水によって洗浄し、大量の洗浄水に酸性ガス成分を吸収させ、酸性ガス成分を吸収した洗浄水に苛性ソーダ等のアルカリ剤を添加して中和することにより、燃焼排ガスから酸性ガス成分を除去するものである(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−199198号公報
【特許文献2】特開2003−88726号公報
【0006】
上記の図2(a)に示されるような乾式法では、酸性ガス成分との反応に必要な消石灰は理論当量に対して1.5〜3倍程度であるため、未反応消石灰が発生するという問題点がある。この未反応消石灰は、消石灰等と酸性ガス成分との反応生成物や焼却飛灰と共に最終処分場に埋め立て処分されるため、最終処分場の残余年数の低下の一因となっている。
【0007】
上記の図2(b)に示されるような湿式法では、燃焼排ガス中の塩化水素や硫黄酸化物等の酸性ガス成分は苛性ソーダ等と反応し中和塩として洗浄水に含まれるが、洗浄水量が大量であることから、塩素および硫黄を洗浄水から分離することは非常に困難であるという問題点がある。また、洗浄水の排水処理が別途に必要になり、処理費用が嵩むという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、消石灰や苛性ソーダ等のアルカリ剤や大量の洗浄水などを用いることなく燃焼排ガス中の酸性ガス成分を除去することができるとともに、除去した酸性ガス成分から例えば塩酸や硫酸等の有効利用可能な形態の酸液を生成することができ、しかも燃焼排ガスからの熱回収のみならず凝縮熱をも回収することができる燃焼排ガス中の酸性ガス除去方法およびその装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、第1発明による燃焼排ガス中の酸性ガス除去方法は、
酸性ガス成分および水分を含む燃焼排ガスを、冷却用熱媒体を用いて間接的に冷却することにより、前記燃焼排ガス中の水分と前記燃焼排ガス中の酸性ガス成分とを含む凝縮液を生成して、前記燃焼排ガスから水分と共に酸性ガス成分を分離することを特徴とするものである。
【0010】
第1発明の燃焼排ガス中の酸性ガス除去方法において、前記燃焼排ガスから水分と共に酸性ガス成分が除去された後の酸性ガス除去後燃焼排ガスを、前記冷却用熱媒体が前記燃焼排ガスを間接的に冷却した際に回収した熱を利用して間接的に加熱するのが好ましい(第2発明)。
【0011】
次に、第3発明による燃焼排ガス中の酸性ガス除去方法は、
複数種類の酸性ガス成分および水分を含む燃焼排ガスが流れる煙道の上流側よりも下流側の方が段階的に低い冷却温度となるように、前記煙道の複数箇所で冷却用熱媒体を用いて前記燃焼排ガスを間接的に冷却することにより、前記燃焼排ガス中の水分と前記燃焼排ガス中の種類毎の酸性ガス成分とを含む複数種類の凝縮液を個別に生成して、前記燃焼排ガスから水分と共に複数種類の酸性ガス成分を分離することを特徴とするものである。
【0012】
第3発明の燃焼排ガス中の酸性ガス除去方法において、前記冷却用熱媒体によって前記燃焼排ガスの間接的な冷却が行われる前記煙道の複数箇所における上流側での冷却温度を制御することにより、凝縮される前記燃焼排ガス中の水分量を制御するのが好ましい(第4発明)。
【0013】
第3発明または第4発明の燃焼排ガス中の酸性ガス除去方法において、前記燃焼排ガスから水分と共に複数種類の酸性ガス成分が除去された後の酸性ガス除去後燃焼排ガスを、前記冷却用熱媒体が前記燃焼排ガスを間接的に冷却した際に回収した熱を利用して間接的に加熱するのが好ましい(第5発明)。
【0014】
次に、第6発明による燃焼排ガス中の酸性ガス除去装置は、
酸性ガス成分および水分を含む燃焼排ガスがチューブの内部に流れその燃焼排ガスとチューブの外部との間で熱交換が可能な熱交換部が設けられてなる煙道と、前記熱交換部へと冷却用熱媒体を供給する冷却用熱媒体供給手段とを備え、
前記冷却用熱媒体供給手段によって供給される冷却用熱媒体を用いて前記燃焼排ガスを前記熱交換部を介して間接的に冷却することにより、前記燃焼排ガス中の水分と前記燃焼排ガス中の酸性ガス成分とを含む凝縮液を生成して、前記燃焼排ガスから水分と共に酸性ガス成分を分離することを特徴とするものである。
【0015】
また、第7発明による燃焼排ガス中の酸性ガス除去装置は、
複数種類の酸性ガス成分および水分を含む燃焼排ガスがチューブの内部に流れその燃焼排ガスとチューブの外部との間で熱交換が可能な複数の熱交換部が前記燃焼排ガスの流れ方向に順に設けられてなる煙道と、前記複数の熱交換部のうち下流側の熱交換部から順に上流側の熱交換部へと連続した流れで冷却用熱媒体を供給する冷却用熱媒体供給手段とを備え、
前記複数の熱交換部における上流側の熱交換部よりも下流側の熱交換部の方が段階的に低い冷却温度となるように、前記冷却用熱媒体供給手段によって供給される冷却用熱媒体を用いて前記燃焼排ガスを前記複数の熱交換部を介して間接的に冷却することにより、前記燃焼排ガス中の水分と前記燃焼排ガス中の種類毎の酸性ガス成分とを含む複数種類の凝縮液を個別に生成して、前記燃焼排ガスから水分と共に複数種類の酸性ガス成分を分離することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
第1発明および第6発明によれば、酸性ガス成分および水分を含む燃焼排ガスが冷却用熱媒体により間接的に冷却され、燃焼排ガス中の水分と燃焼排ガス中の酸性ガス成分とを含む凝縮液(例えば塩酸や硫酸等)が生成されることによって、燃焼排ガスから水分と共に酸性ガス成分が分離されるので、消石灰や苛性ソーダ等のアルカリ剤を用いることなく燃焼排ガス中の酸性ガス成分を除去することができるとともに、除去した酸性ガス成分から例えば塩酸や硫酸等の有効利用可能な形態の酸液を生成することができる。また、燃焼排ガスを冷却用熱媒体によって間接的に冷却することにより、燃焼排ガスから熱を回収することができるとともに、凝縮液生成の際の凝縮熱をも回収することができる。
【0017】
第2発明および第5発明の構成を採用することにより、別途加熱用の熱源を用いることなく酸性ガス除去後燃焼排ガスを飽和温度よりも高い温度に昇温させることができ、酸性ガス除去後燃焼排ガスの結露に起因する腐食を防止することができる。
【0018】
第3発明および第7発明によれば、複数種類の酸性ガス成分および水分を含む燃焼排ガスが流れる煙道の上流側よりも下流側の方が段階的に低い冷却温度となるように、煙道の複数箇所で燃焼排ガスが冷却用熱媒体により間接的に冷却され、燃焼排ガス中の水分と燃焼排ガス中の種類毎の酸性ガス成分とを含む複数種類の凝縮液(例えば塩酸や硫酸)が個別に生成されることによって、燃焼排ガスから水分と共に複数種類の酸性ガス成分が分離されるので、消石灰や苛性ソーダ等のアルカリ剤を用いることなく燃焼排ガス中の酸性ガス成分を除去することができるとともに、除去した酸性ガス成分から例えば塩酸や硫酸等の有効利用可能な形態の酸液を生成することができる。また、燃焼排ガスを冷却用熱媒体によって間接的に冷却することにより、燃焼排ガスから熱を回収することができるとともに、凝縮液生成の際の凝縮熱をも回収することができる。
【0019】
第4発明の構成を採用することにより、回収される凝縮液の酸濃度を制御することができ、回収液からの酸性成分、重金属などの除去工程において、除去効率や処理効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る燃焼排ガス中の酸性ガス除去装置の概略システム構成図である。
図2】従来の酸性ガス除去方法を示すフロー図で、(a)は乾式法、(b)は湿式法である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明による燃焼排ガス中の酸性ガス除去方法およびその装置の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
<燃焼排ガス中の酸性ガス除去装置の概略説明>
図1に示される燃焼排ガス中の酸性ガス除去装置(以下、単に「酸性ガス除去装置」と称する。)1は、例えば図示されない廃棄物焼却施設で発生した燃焼排ガスに含まれる複数種類の酸性ガス成分および水分を除去するものであり、廃棄物焼却施設からの燃焼排ガスに含まれるばいじんを除去する集塵器2と、この集塵器2の下流側に配設され、窒素酸化物やダイオキシン類を除去する触媒反応装置3(または煙突)との間に組み込まれている。
【0023】
この酸性ガス除去装置1は、集塵器2から触媒反応装置3に向かって順に配設される前段凝縮器4、後段凝縮器5およびガス再加熱器6を備えている。
【0024】
<凝縮器の説明>
前段凝縮器4と後段凝縮器5とは、基本的に同構造のものであって、各凝縮器4,5は、排ガス導入口7aおよび排ガス導出口7bと熱媒体導入口7cおよび熱媒体導出口7dとを有するケーシング7を備え、このケーシング7の内部に、排ガス導入口7aと排ガス導出口7bとを繋ぐように熱交換部8が組み込まれて構成されている。ここで、熱交換部8は、複数種類の酸性ガス成分および水分を含有する燃焼排ガスを流すのに好適な耐熱および耐食性に優れる例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の樹脂からなる複数の樹脂チューブを集合させた管群により形成されている。
【0025】
<ガス再加熱器の説明>
ガス再加熱器6は、排ガス導入口9aおよび排ガス導出口9bと熱媒体導入口9cおよび熱媒体導出口9dとを有するケーシング9を備え、このケーシング9の内部に、熱媒体導入口9cと熱媒体導出口9dとを繋ぐように熱交換部10が組み込まれて構成されている。ここで、熱交換部10は、空気または水等の冷却用熱媒体を流すのに好適な材料からなる複数のチューブを集合させた管群により形成されている。
【0026】
<煙道の説明>
前段凝縮器4におけるケーシング7の排ガス導入口7aは、第1ダクト11を介して集塵器2の排ガス導出口2aに接続されている。前段凝縮器4におけるケーシング7の排ガス導出口7bは、第2ダクト12を介して後段凝縮器5におけるケーシング7の排ガス導入口7aに接続されている。後段凝縮器5におけるケーシング7の排ガス導出口7bは、第3ダクト13を介してガス再加熱器6におけるケーシング9の排ガス導入口9aに接続されている。ガス再加熱器6におけるケーシング9の排ガス導出口9bは、第4ダクト14を介して触媒反応装置3の排ガス導入口3aに接続されている。こうして、第1ダクト11、前段凝縮器4の熱交換部8、第2ダクト12、後段凝縮器5の熱交換部8、第3ダクト13、ガス再加熱器6のケーシング9および第4ダクト14により、集塵器2と触媒反応装置3とを繋ぐ煙道15が形成されている。
【0027】
後段凝縮器5におけるケーシング7の熱媒体導入口7cは、第1配管21を介して熱媒体送出機20の熱媒体吐出口20aに接続されている。ここで、熱媒体送出機20としては、例えば空気や水等の冷却用熱媒体を送出するファンまたはポンプ等が挙げられる。
【0028】
後段凝縮器5におけるケーシング7の熱媒体導出口7dは、第2配管22を介して前段凝縮器4におけるケーシング7の熱媒体導入口7cに接続されている。前段凝縮器4におけるケーシング7の熱媒体導出口7dは、第3配管23を介して熱交換器30の熱媒体導入口30aに接続されている。熱交換器30の熱媒体導出口30bは、第4配管24を介してガス再加熱器6におけるケーシング9の熱媒体導入口9cに接続されている。ガス再加熱器6におけるケーシング9の熱媒体導出口9dは、第5配管25を介して熱媒体送出機20の熱媒体吸込口20bに接続されている。なお、熱交換器30は、必要に応じて設置されるものであって、省略される場合がある。
【0029】
こうして、熱媒体送出機20、後段凝縮器5、前段凝縮器4、熱交換器30およびガス再加熱器6が配管21〜25によって接続されることにより、熱媒体送出機20から送り出された冷却用熱媒体を、後段凝縮器5、前段凝縮器4、熱交換器30およびガス再加熱器6を経て熱媒体送出機20に還流・循環させることができる。
【0030】
また、熱媒体送出機20、第1配管21、後段凝縮器5のケーシング7、第2配管22および前段凝縮器4のケーシング7により、下流側に配される後段凝縮器5の熱交換部8から上流側に配される前段凝縮器4の熱交換部8へと連続した流れで冷却用熱媒体を供給する冷却用熱媒体供給手段35が構成されている。
【0031】
以上に述べたように構成される酸性ガス除去装置1において、集塵器2によってばいじんが除去された後の燃焼排ガスは、第1ダクト11を介して前段凝縮器4の熱交換部8に導入され、次いで、第2ダクト12を介して後段凝縮器5の熱交換部8に導入される。後段凝縮器5の熱交換部8を通過した燃焼排ガスは、第3ダクト13を介してカス再加熱器6のケーシング9内に導入された後、第4ダクト14を介して触媒反応装置3に導入される(または煙突に導入された後に大気中に放出される)。
【0032】
一方、熱媒体送出機20から送り出された冷却用熱媒体は、第1配管21を介して後段凝縮器5のケーシング7内に導入され、後段凝縮器5の熱交換部8を介して燃焼排ガスを間接的に冷却し、燃焼排ガスから熱を回収する。後段凝縮器5において熱を回収した冷却用熱媒体は、第2配管22を介して前段凝縮器4のケーシング7内に導入され、前段凝縮器4の熱交換部8を介して燃焼排ガスを間接的に冷却し、燃焼排ガスから熱を回収する。こうして、下流側に配される後段凝縮器5の熱交換部8から上流側に配される前段凝縮器4の熱交換部8へと連続するように冷却用熱媒体を流して燃焼排ガスから熱を回収することにより、前段凝縮器4の熱交換部8よりも後段凝縮器5の熱交換部8の方が段階的に低い冷却温度となるようにされている。
【0033】
各凝縮器4,5で燃焼排ガスから熱を回収した冷却用熱媒体は、熱交換器30を経てガス再加熱器6の熱交換部10に導入された後、熱媒体送出機20へと還流される。熱交換器30では、冷却用熱媒体の回収熱の一部を利用するとともに、ガス再加熱器6では、冷却用熱媒体の回収熱を利用してガス再加熱器6のケーシング9内に導入される燃焼排ガスを間接的に加熱するようにされている。
【0034】
本実施形態の酸性ガス除去装置1によれば、複数種類の酸性ガス成分および水分を含む燃焼排ガスが流れる煙道15の上流側よりも下流側の方が段階的に低い冷却温度となるように、煙道15の複数箇所で燃焼排ガスが冷却用熱媒体により間接的に冷却され、燃焼排ガス中の水分と燃焼排ガス中の種類毎の酸性ガス成分とを含む複数種類の凝縮液(例えば塩酸や硫酸)が個別に生成されることによって、燃焼排ガスから水分と共に複数種類の酸性ガス成分が分離されるので、消石灰や苛性ソーダ等のアルカリ剤を用いることなく燃焼排ガス中の酸性ガス成分を除去することができるとともに、除去した酸性ガス成分から例えば塩酸や硫酸等の有効利用可能な形態の酸液を生成することができ、加えて、燃焼排ガスから熱を回収することができるとともに、凝縮液生成の際の凝縮熱をも回収することができる。
【0035】
また、酸性ガス除去装置1においては、前段凝縮器4での冷却温度(出口排ガス温度)を制御することにより、凝縮される燃焼排ガス中の水分量を制御するようにされている。これにより、回収される凝縮液の酸濃度を制御することができ、回収液からの酸性成分、重金属などの除去工程において、除去効率や処理効率を向上させることができる。
【0036】
また、酸性ガス除去装置1においては、燃焼排ガスから水分と共に酸性ガス成分が除去された後の酸性ガス除去後燃焼排ガスを、冷却用熱媒体が燃焼排ガスを間接的に冷却した際に回収した熱を利用してガス再加熱器6により間接的に加熱するようにされている。これにより、別途加熱用の熱源を用いることなく酸性ガス除去後の燃焼排ガスを飽和温度よりも高い温度に昇温させることができ、酸性ガス除去後の燃焼排ガスの結露に起因する腐食を防止することができる。
【0037】
さらに、本実施形態の酸性ガス除去装置1によれば、以下の(1)〜(6)のような作用効果を得ることができる。
(1)集塵器2で完全に除去できない水溶性水銀等の水溶性微量有害物質の除去が可能である。
(2)回収した塩酸や硫酸を廃棄物焼却施設内で利用することができる(使用例:集塵飛灰や廃棄物焼却施設から発生する排水のpH調整)。
(3)従来の湿式法では、燃焼排ガスと大量の洗浄水とを接触させて飽和温度まで低下させる方式のため、熱回収が困難であるのに対し、酸性ガス除去装置1では、燃焼排ガスからの熱回収のみならず、硫酸や塩酸、水分等を凝縮する際の凝縮熱をも回収することができ、装置出口ガスの昇温等に利用することができるため、従来よりエネルギー効率が高い。
(4)従来の湿式法では、燃焼排ガスと大量の洗浄水とを接触させることから、耐食性の高い金属、または炭素鋼の内面(燃焼排ガスと接する箇所)に樹脂ライニングを使用する必要があるのに対し、各凝縮器4,5において、燃焼排ガスと接する箇所を耐熱および耐食性に優れる樹脂製チューブとすることにより、ケーシング7等の装置本体の材質を炭素鋼とすることで、従来のような高価な樹脂ライニングが不要となる。
(5)回収した塩酸、硫酸、水を利用することにより、排水処理設備が従来よりも小規模または不要となる。
(6)排ガスを40℃程度まで低下させることにより、本装置の後段にCO分離回収装置(化学吸収法など)を設置してエネルギー効率の高いCO分離回収システムを構築することが可能となる。
【0038】
以上、本発明の燃焼排ガス中の酸性ガス除去方法およびその装置について、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【実施例】
【0039】
次に、本発明による燃焼排ガス中の酸性ガス除去方法およびその装置のより具体的な実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
<実施例1>
塩化水素や硫黄酸化物等の酸性ガス成分および水分を含む燃焼排ガスを集塵器2に導入し、集塵器2でばいじんが除去された後の燃焼排ガス(150〜200℃)を、前段凝縮器4および後段凝縮器5の順に流し、熱媒体送出機20から送り出される冷却用熱媒体を、後段凝縮器5から前段凝縮器4へと順に供給して、各凝縮器4,5における熱交換部8を介して間接的に燃焼排ガスを冷却する。
【0041】
ここで、前段凝縮器4の出口排ガス温度を硫酸露点温度である100〜120℃程度以下かつ塩酸露点温度である80℃程度以上とすることにより、前段凝縮器4で主に硫酸(HSO)を分離し、後段凝縮器5の出口排ガス温度を塩酸露点温度以下の40〜70℃とすることにより、残りの酸性ガス成分(主に塩酸(HCl))を分離することが可能となる。なお、本実施例では、上流側に凝縮器4を、下流側に凝縮器5をそれぞれ設ける2段階構成の例を示したが、凝縮器を1基のみ設ける態様もあり得る。この場合、凝縮器の出口排ガス温度を40〜70℃程度として、硫酸および塩酸等を含む混合酸液として燃焼排ガスから分離することになる。
【0042】
なお、酸性ガス成分および水分を除去された後の燃焼排ガスは、カス再加熱器6において熱交換部10により間接的に加熱されることで180〜210℃程度まで昇温された後、触媒反応装置3に導入されて、燃焼排ガス中の窒素酸化物やダイオキシン類が除去された後、図示されてない煙突を介して大気中に放出される。
【0043】
<実施例2>
実施例1において、前段凝縮器4の出口排ガス温度を100〜120℃程度以下かつ塩酸露点温度である80℃程度以上とするのを、実施例2では、前段凝縮器4の出口排ガス温度を60〜100℃の範囲となるように変更することにより、前段凝縮器4で燃焼排ガス中の酸性ガス成分(主に硫酸、塩酸)を凝縮させる。なお、前段凝縮器4の出口排ガス温度を制御することにより、凝縮される水分量を制御し、それによって回収される酸の濃度を制御する。この制御を行うことにより、回収液からの酸性成分、重金属などの除去工程において、除去効率や処理効率を増加させることが可能となる。また、後段凝縮器5の出口排ガス温度を制御することにより、水分の回収量を制御し、排出ガス量を低減することができる。
【0044】
<実施例3>
実施例1において、後段凝縮器5により40℃程度まで低下させた排ガスを、化学吸収法などの方法を用いてCOを分離回収後にガス再加熱器6にて昇温し、煙突により排出する。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の燃焼排ガス中の酸性ガス除去方法およびその装置は、消石灰や苛性ソーダ等のアルカリ剤や大量の洗浄水などを用いることなく燃焼排ガス中の酸性ガス成分を除去することができるとともに、除去した酸性ガス成分から例えば塩酸や硫酸等の有効利用可能な形態の酸液を生成することができ、しかも燃焼排ガスからの熱回収のみならず凝縮熱をも回収することができるという特性を有していることから、例えば廃棄物焼却施設等で発生する燃焼排ガスに含まれる酸性ガス成分の除去と熱回収の用途に好適に用いることができ、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0046】
1 酸性ガス除去装置
2 集塵器
3 触媒反応装置
4 前段凝縮器
5 後段凝縮器
6 ガス再加熱器
8 熱交換部
15 煙道
20 熱媒体送出機
30 熱交換器
35 冷却用熱媒体供給手段

図1
図2