(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吸収体と、前記吸収体を一端に備えた先端部と担持部とを分離可能な棒状部材と、を備えた捕集器材を用い、前記捕集器材の前記吸収体に液状媒体を吸収させる第1の工程と、
被検査面に前記捕集器材の前記吸収体を接触させて前記被検査面上の微生物又は遺伝子を捕集する第2の工程と、
一端に開口部を有し前記開口部に蓋体を装着することによって密封可能な第1の容器を用い、前記捕集器材を前記吸収体側から前記第1の容器の開口部に挿入し、挿入後前記棒状部材の前記先端部と前記担持部とを分離して前記担持部を前記第1の容器から取り出し、挿入方向が維持されるように前記先端部が収納された前記第1の容器を密封する第3の工程と、
一端に開口部を有し前記開口部に蓋体を装着することによって密封可能な第2の容器を用い、前記捕集器材の前記先端部を、前記吸収体とは逆側から前記第2の容器の開口部に挿入されるように前記第1の容器から前記第2の容器に挿入し、挿入方向が維持されるように前記先端部が収納された前記第2の容器を密封する第4の工程と、
を含む微生物及び遺伝子の捕集方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、微生物や遺伝子を培養などの手法で検出する方法(例えば、遺伝子増幅法(ポリメーラゼ連鎖反応法(PCR法))など)を用いて検査を行う場合、存在量が少ない病原ウイルスや病原菌については、回収後に捕集液を濃縮する方法が採用されている。例えば、従来の方法においては、希釈液量を数mL〜10mL単位としているが、このような希釈液から少量の微生物を回収するには多段階の濃縮操作が必要となる。しかし、多段階の濃縮操作が必要となると、作業が煩雑化し、作業ミスや回収ロス、回収のばらつきに繋がるなどのいくつかの問題点がある。一方、特許文献1に開示される技術においても当該問題点を解決することが検討されているが、拭き取り液量が0.5mL〜1mL程度と記載されており、遺伝子増幅法等により検査を行うためには未だ濃縮工程が必要になることが想定される。かかる点において、検査結果の正確性をさらに高めるためには可能な限り濃縮工程が少ない又は濃縮工程を経ないことが望まれる。
【0006】
さらに、微生物等の捕集作業については、複雑な手段や装置を用いることなく簡便に実施可能であることが好ましい。例えば、食品を扱う店舗や工場等で作業員が特別な知識を必要とすることなく、簡便に微生物等を採取できることが望まれる。また、微生物等の捕集作業の被検査面には、例えば、冷蔵庫の取っ手の裏なども含まれる。このため、捕集に用いられる器材は長さを有するなど操作性に優れるものを用いて簡便に行えることが好ましい。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決すべく、被検査面から微生物又は遺伝子を簡便に捕集できる微生物及び遺伝子の捕集方法、及び、当該捕集方法によって捕集された微生物又は遺伝子を効率良く簡便に抽出できる微生物及び遺伝子の抽出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<1> 吸収体と、前記吸収体を一端に備えた先端部と担持部とを分離可能な棒状部材と、を備えた捕集器材を用い、前記捕集器材の前記吸収体に液状媒体を吸収させる第1の工程と、
被検査面に前記捕集器材の前記吸収体を接触させて前記被検査面上の微生物又は遺伝子を捕集する第2の工程と、
一端に開口部を有し前記開口部に蓋体を装着することによって密封可能な第1の容器を用い、前記捕集器材を前記吸収体側から前記第1の容器の開口部に挿入し、挿入後前記棒状部材の前記先端部と前記担持部とを分離して前記担持部を前記第1の容器から取り出し、挿入方向が維持されるように前記先端部が収納された前記第1の容器を密封する第3の工程と、
一端に開口部を有し前記開口部に蓋体を装着することによって密封可能な第2の容器を用い、前記捕集器材の前記先端部を、前記吸収体とは逆側から前記第2の容器の開口部に挿入されるように前記第1の容器から前記第2の容器に挿入し、挿入方向が維持されるように前記先端部が収納された前記第2の容器を密封する第4の工程と、
を含む微生物及び遺伝子の捕集方法。
<2> 前記液状媒体の容量が、20μL〜100μLである前記<1>に記載の微生物及び遺伝子の捕集方法。
<3> 前記第1の工程において、前記液状媒体が前記第1の容器に収納されている前記<1>又は<2>に記載の微生物及び遺伝子の捕集方法。
<4> 前記捕集器材の先端部の露出部の長さが、5mm〜10mmである前記<1>〜<3>のいずれか一つに記載の微生物及び遺伝子の捕集方法。
<5> 前記捕集器材を折り切ることで前記先端部と前記担持部とを分離可能な前記<1>〜<4>のいずれか一つに記載の微生物及び遺伝子の捕集方法。
<6> 前記捕集器材が、先端部と担持部とを分離可能な綿棒である前記<1>〜<5>のいずれか一つに記載の微生物及び遺伝子の捕集方法。
<7> 前記<1>〜<6>のいずれか一つに記載の微生物及び遺伝子の捕集方法を用いた微生物及び遺伝子の抽出方法であって、
前記第4の工程によって得られた前記第2の容器を、前記第2の容器内に収納された前記先端部の前記吸収体側が遠心軸側となるように遠心分離機に装着し、遠心分離を行う第5の工程を含む微生物及び遺伝子の抽出方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被検査面から微生物又は遺伝子を簡便に捕集できる微生物及び遺伝子の捕集方法、及び、当該捕集方法によって捕集された微生物又は遺伝子を効率良く簡便に抽出できる微生物及び遺伝子の抽出方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の内容について実施態様を用いて詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は例示であり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0012】
本実施形態の微生物及び遺伝子の捕集方法(以下、単に「本実施形態の捕集方法」と称することがある。)は、以下の第1〜第4の工程を含む方法である。
(第1の工程)
吸収体と、前記吸収体を一端に備えた先端部と担持部とを分離可能な棒状部材と、を備えた捕集器材を用い、前記捕集器材の前記吸収体に液状媒体を吸収させる工程
(第2の工程)
被検査面に前記捕集器材の前記吸収体を接触させて前記被検査面上の微生物又は遺伝子を捕集する工程
(第3の工程)
一端に開口部を有し前記開口部に蓋体を装着することによって密封可能な第1の容器を用い、前記捕集器材を前記吸収体側から前記第1の容器の開口部に挿入し、挿入後前記棒状部材の前記先端部と前記担持部とを分離して前記担持部を前記第1の容器から取り出し、挿入方向が維持されるように前記先端部が収納された前記第1の容器を密封する工程
(第4の工程)
一端に開口部を有し前記開口部に蓋体を装着することによって密封可能な第2の容器を用い、前記捕集器材の前記先端部を、前記吸収体とは逆側から前記第2の容器の開口部に挿入されるように前記第1の容器から前記第2の容器に挿入し、挿入方向が維持されるように前記先端部が収納された前記第2の容器を密封する工程
【0013】
また、本実施形態の微生物及び遺伝子の抽出方法(以下、単に「本実施形態の抽出方法」称することがある。)は、上述の第1〜第4の工程を経て得られた第2の容器を用い、下記第5の工程によって微生物等を抽出する方法である。
(第5の工程)
前記第4の工程によって得られた前記第2の容器を、前記第2の容器内に収納された前記先端部の前記吸収体側が遠心軸側となるように遠心分離機に装着し、遠心分離を行う工程
【0014】
本実施形態の捕集方法によれば、被検査面に存在する微生物等を簡便に捕集し、密封することができる。特に、本実施形態の捕集方法によれば、微生物等を捕集した捕集器材を分離して担持部を取り除き、先端部のみを第1の容器に格納しこれを密封するため、簡便でありながら高い密封性にて微生物等を捕集できる。このため、店舗や工場等においても、従業員が特別な知識を要することなく、被検査面の微生物等を簡便に捕集することができる。
また、本実施形態の抽出方法によれば、少ない液体媒体量で捕集器材の吸収体に捕集した微生物又は遺伝子を、遠心分離によって効率良く抽出することが可能である。このため、得られた捕集液は、濃縮工程を経ずに顕微鏡などによる直接の観察、遺伝子検査、免疫学的検査又は培養検査などの微生物検査を行うことができる。
【0015】
ここで、本実施形態の検査対象となる微生物(細菌を含む)又は遺伝子としては、例えば、クリストスポリジウム、赤痢アメーバなどの原虫、カンジダや酵母、かびなどの真菌、腸管出血性大腸菌、腸管侵入性大腸菌、赤痢菌、毒素原性大腸菌、サルモネラ属菌、リステリア菌、ビブリオ菌、カンピロバクター菌、黄色ブドウ球菌、ウエルシュ菌、ボツリヌス菌、セレウス菌などの食中毒原因菌や緑膿菌やレジオネラ菌などの細菌、ノロウイルス、サポウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス、アストロウイルスなどの下痢症ウイルスやエンテロウイルス、肝炎ウイルス、コクサッキーウイルスなどのウイルスやその他微生物の痕跡としての遺伝子が含まれる。
本実施形態の捕集方法及び抽出方法(以下、これらを総じて「本実施形態の方法」と称することがある。)は、特に少ない液体媒体量で微生物等の捕集及び抽出が可能であることから、上述の細菌、微生物又は遺伝子の中でも少ない菌数、あるいはウイルス数で感染が成立する病原ウイルスや病原菌(例えば、ノロウイルス、腸管出血性大腸菌やカンピロバクター等)の捕集・抽出方法として好適に用いることができる。例えば、ノロウイルスは10〜100個などの存在量でも感染の恐れがある。このため、捕集液を濃縮せずに用いて検査した場合には、例え検査結果が“陰性”であっても完全に感染性がないと言い切るのが難しい場合がある。一方、希釈されていない捕集液を用いた場合、検査結果が“陰性”であれば感染がないと言い切れる可能性が高く、検査結果の信頼度が高い。
【0016】
[本実施形態の捕集方法]
上述のように、本実施形態の捕集方法は、第1〜第4の工程を含む方法である。以下、第1〜第4の工程について説明する。
【0017】
(第1の工程)
本実施形態の方法において、第1の工程は、吸収体と、前記吸収体を一端に備えた先端部と担持部とを分離可能な棒状部材と、を備えた捕集器材を用い、前記捕集器材の前記吸収体に液状媒体を吸収させる工程である。当該工程において吸収体に液状媒体を吸収させることで、吸収体によって被検査面を拭き取った際に被検査面上に存在する微生物等を吸収体中に捕集することができる。
【0018】
−捕集器材−
本実施形態において、捕集器材は、吸収体と、棒状部材と、を備えており、棒状部材の一端に吸収体が備えられている。本実施形態における捕集器材は、棒状部材を二つに分離することで、吸収体が備えられた先端部と担持部とに分離することができる。また、本実施形態における捕集器材は棒状部材を用いているため、拭き取りの際の操作性に優れる。
【0019】
吸収体は、液状媒体を吸収させることで拭き取った微生物等を捕集・維持することができる部材である。また、吸収体に遠心分離などを行うことによって、吸収体中に維持された微生物等を液状媒体と共に抽出することができる。吸収体を構成する材料は、後述する液状媒体を吸収し、被検査面の微生物等を捕集できるものであれば特に限定されない。吸収体に用いることのできる材料としては、例えば、綿球、スポンジ、ガーゼ等が挙げられる。また、吸収体のサイズ及び形状も特に限定されるものではなく、後述する第1及び第2の容器(例えば、微生物検査に用いられる遠心分離機用のマイクロチューブ等)のサイズに合わせて適宜選定することができる。ただし、本実施形態の方法によれば、少ない量の液状媒体にて微生物等の捕集を行う観点から、例えば、吸収される液量が20〜100μLとなるように吸収体のサイズ等を決定することができる。
【0020】
棒状部材は吸収体の支持部材として機能する部材である。また、棒状部材は、少なくとも先端部と担持部とに分離することが可能なように設計されている。先端部と担持部との分離手段は特に限定されるものではないが、例えば、先端部と担持部との分離部位の強度を他の部位よりも低くして、外部より力が加わった場合に当該分離部位が折れるなど分離可能なように設計することができる。分離部位の強度を低くするためには、例えば、棒状部材に切り欠けを入れたり、分離部位に該当する箇所の径を他の部位よりも細くする等の方法が挙げられる。
棒状部材に用いられる材料は、ある程度の剛性を有し、液体を吸収しない部材であれば特に限定されないが、例えば、ポリスチレン等のプラスチック材等が挙げることができる。また、先端部と担持部とを同一の材料で形成してもよいし、異なる材料で形成してもよい。また、棒状部材の先端部のサイズ(全長)は特に限定されないが、例えば、後述する第3及び4の工程にて、各容器に収納された後、開口部に蓋体を取り付けることができるサイズ(すなわち、各容器の全長よりも短い)であって、且つ、第5の工程にて捕集液を抽出した際に第2の容器内で吸収体の位置が捕集液の液面よりも容器の開口部側に位置できる長さであることが好ましい。また、棒状部材の担持部についてもサイズについては特に限定はないが、分離後の視認性及び微生物等の捕集時(拭き取り時)の操作性を向上させるため、4cm〜18cm程度の長さとすることができ、好ましくは6cm〜13cmとすることができる。
【0021】
前記捕集器材としては、例えば、吸収体が綿球、棒状部材がプラスチックなどで形成された、先端部と担持部とを分離可能な綿棒を用いることができる。捕集器材が綿棒である場合、吸収体(綿球)のサイズを、例えば、直径3mm〜10mm、長さ8mm〜15mmとし、棒状部材全体のサイズを、例えば、直径2mm〜5mm、長さ6cm〜20cmとすることができる。この際、先端部の露出部の長さ(吸収体の先端部側端部から先端部の担持部側端部までの距離)を、例えば、5mm〜10mmとすることができる。先端部の露出部の長さは、後述する第5の工程における遠心分離の際にマイクロチューブの先端側に抽出された捕集液と綿球とが接触するのを抑制する効果に影響を与え得るものとなる。このため、上述の“吸収体の先端部側端部”は、吸収体の最も先端部側に位置する部位が基準となる。
【0022】
例えば、一般的な綿棒は、綿球に棒状部材の先端が挿入されており、綿球の一部分が棒状部材の表面を被覆するように構成されている。
図1を用いて綿棒の綿球(吸収体)の先端部側端部と先端部の担持部側端部との関係について説明する。
図1は、綿棒における吸収体の先端部側端部と先端部の担持部側端部との関係について説明するための断面図である。
図1に示すように、綿球22に棒状部材の先端部24が挿入されている場合、先端部24の一部が綿球22の一部に被覆されることとなる。この場合、綿球22の繊維の端(いわゆる、“生え際”)のうち最も先端部側に位置する部位が、綿球22(吸収体)の先端部側端部となる(
図1における点線E2)。すなわち、
図1においては、綿球22の先端(
図1における点線E1)から点線E2までの距離が、“綿球の長さ”となる。同様に、
図1においては、綿球22の先端部側端部(点線E2)から先端部24の担持部側端部(
図1における点線E3)までの距離が、“先端部の露出部の長さ”となる。
【0023】
−液状媒体−
液状媒体は、吸収体が微生物等を捕集するのを補助する材料であって、一般に緩衝液や希釈液と呼ばれる水溶液等を用いることができる。液状媒体としては、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの緩衝液や水などを用いることができる。また、液状媒体は必ずしも液状である必要はなく、微生物等が吸収体に捕集されるのを補助可能な媒体であれば、例えば、ゲル状などであってもよい。
【0024】
第1の工程においては、捕集器材の吸収体に液状媒体を吸収させる。吸収体に吸収される液状媒体の容量は、遠心力によって捕集液を抽出し、濃縮工程を経ることなく効率的に微生物検出を行う観点から、20μL〜100μLであることが好ましく、30μL〜40μLがさらに好ましい。また、第1の工程においては、液状媒体が、予め容器内に収納された後述する第1の容器内を用いることができる。この場合、第1の容器から蓋体を外し、その後、容器内に捕集器材の吸収体を挿入して液状媒体を吸収体に吸収させることができる。また、液状媒体には、第2の工程で捕集する微生物の移行を促進したり、捕集した微生物の生存を担保する観点から、界面活性剤や微生物の栄養素やゲル化剤や塩などを添加してもよい。
【0025】
(第2の工程)
第2の工程は、被検査面に前記捕集器材の前記吸収体を接触させて前記被検査面上の微生物又は遺伝子を捕集する工程である。当該工程において吸収体中に微生物等が捕集される。被検査面に吸収体を接触させる方法は特に限定はなく、例えば、吸収体によって被検査面を拭き取る方法が例として挙げられる。
【0026】
(第3の工程)
第3の工程は、一端に開口部を有し前記開口部に蓋体を装着することによって密封可能な第1の容器を用い、前記捕集器材を前記吸収体側から前記第1の容器の開口部に挿入し、挿入後前記棒状部材の前記先端部と前記担持部とを分離して前記担持部を前記第1の容器から取り出し、挿入方向が維持されるように前記先端部が収納された前記第1の容器を密封する工程である。本工程は、第2の工程において被検査面の微生物を吸収体中に捕集した後、吸収体を備えた捕集器材の先端部のみを第1の容器中に密封する工程である。
【0027】
捕集器材は、第2の工程において被検査面の微生物を吸収体中に捕集した後、吸収体側から第1の容器の開口部に挿入され、その後、先端部と担持部とに分離される。先端部と担持部との分離方法は、特に限定されないが、例えば、第1の容器の壁面を利用し、テコの原理を用いて、捕集器材を折り切ることで先端部と担持部とを分離することができる。先端部から分離された担持部は第1の容器から取り出され、その後、開口部に蓋体を装着して第1の容器を密封する。このように、本実施形態の方法によれば、吸収体及びその周辺部に直接触れることなく、担持部を除去し、吸収体を備えた先端部のみを第1の容器中に密封することができる。このため、第1の容器中に捕集した微生物等に、第1、第2、第3の工程を実施する作業者(主に手指)由来の微生物等が混入するのを効果的に抑制することができる。
また、第1の容器に収納された捕集器材(先端部)は、吸収体が設けられている側が第1の容器の他端側(すなわち、閉塞されている側)であり、収納後も捕集器材が挿入された方向(挿入方向)が第1の容器内で維持される。
【0028】
−第1の容器−
第1の容器は、一端に開口部を有し、開口部に蓋体を装着することによって密封可能な容器である。また、第1の容器の他端は壁面などで閉塞されており、例えば、他端を下方にした場合に容器内の液体が溜まるように構成されている。第1の容器のサイズ及び形状は特に限定はなく、例えば、遠心分離機に使用されるマイクロチューブなど公知の密封可能な容器を適宜利用することができる。
第1の容器の開口部には蓋体が装着可能なように構成されており、開口部に蓋体を装着することで第1の容器が密封される。蓋体は、螺合又は圧着手段など公知の手段を適用して開口部に装着させることができる。
第1の容器の素材は特に限定されるものではなく、マイクロチューブに用いられる材料等公知の材料を適宜用いることができ、例えば、色つきのものなども用いることができる。また、第1の容器は、棒状部材の先端部が収納された後、その挿入方向が維持される形状であることを要する。このような形状としては、例えば、第1の容器の内径が先端部の全長(吸収体を含む)よりも小さい筒状体などが挙げられる。第1の容器のサイズは、例えば、直径8mm〜15mm、長さ30mm〜50mmとすることができ、容量的には2.5mL,2mL又は1.5mL用などのマイクロチューブを用いることができる。さらに、上述のように、第1の容器は上述の液状媒体が、例えば、20μL〜100μL、好ましくは30μL〜40μL、予め収納されたものを用いることができる。
【0029】
(第4の工程)
第4の工程は、一端に開口部を有し前記開口部に蓋体を装着することによって密封可能な第2の容器を用い、前記捕集器材の前記先端部を、前記吸収体とは逆側から前記第2の容器の開口部に挿入されるように前記第1の容器から前記第2の容器に挿入し、挿入方向が維持されるように前記先端部が収納された前記第2の容器を密封する工程である。本工程は、第3の工程において第1の容器に密封された捕集器材を、挿入方向を逆にして、第2の容器に移し替え、その後密封する工程である。
【0030】
本工程において、第1の容器から取り出された捕集器材は、吸収体が設けられている側とは逆側から第2の容器の開口部に挿入される。第1の容器内では開口部と逆側(すなわち他端側)に捕集器材の吸収体側が位置しているため、第1の容器の開口部から取り出した状態のまま第2の容器の開口部に捕集器材を挿入すれば、捕集器材(先端部)は吸収体が設けられている側とは逆側から第2の容器の開口部に挿入される。
第2の容器に挿入された後、捕集器材は収納後も捕集器材が挿入された方向(挿入方向)が第2の容器内で維持されるように密封される。
【0031】
−第2の容器−
第2の容器は、一端に開口部を有し前記開口部に蓋体を装着することによって密封可能な容器であり、第1の容器と同様の容器を用いることができる。
【0032】
[本実施形態の抽出方法]
上述のように、本実施形態の抽出方法は、上述の第1〜第4の工程を経て得られた第2の容器を用い、第5の工程によって微生物等を抽出する方法である。
【0033】
(第5の工程)
第5の工程は、前記第4の工程によって得られた前記第2の容器を、前記第2の容器内に収納された前記先端部の前記吸収体側が遠心軸側となるように遠心分離機に装着し、遠心分離を行う工程である。本工程においては、収納された先端部の吸収体側が遠心軸側となるように第2の容器を遠心分離機に装着し、遠心分離を行うことで、吸収体に捕集されていた微生物等を含む液状媒体(捕集液)が第2の容器の他端側(開口部と逆側)に抽出される。第4の工程を経た第2の容器中の捕集器材は、開口部側に吸収体が位置しており、他端側が先端部となる。このように、先端部の存在によって第2の容器内の他端側(開口部とは逆側)の壁面と吸収体との間にギャップを設けることができるため、第2の容器の他端側が回転軸外側になるように設置して遠心分離を行うことで、第2の容器の他端側に捕集液を溜めた際に吸収体と捕集液とが再び接触するのを抑制することができる。
【0034】
−遠心分離機−
本工程に用いることのできる遠心分離機は、回転軸を中心として第2の容器を設置でき、駆動機構によって回転軸を中心に回転ロータが回転し、第2の容器中の吸収体から微生物等を遠心分離できる装置である。遠心分離機は、特に限定されるものではなく、例えば、卓上型の小型微量遠心機など市販されているものを適宜選定して用いることができる。遠心条件については特に限定はなく、用いるサンプル量や装置に応じて適宜設定することができる。遠心条件としては、低速遠心(例えば、遠心力1000〜3000[×g]で3〜10秒間)で行うことができる。
【0035】
−捕集液−
本工程において抽出された捕集液は、吸収体に捕集された微生物等と液体媒体とが高効率で抽出されたものであるため、濃縮工程を施すことなく、顕微鏡などによる直接の観察、遺伝子検査、免疫学的検査又は培養検査などの微生物検査に使用することができる。
【0036】
[第1の実施形態]
以下、本実施形態の方法について図を用いて具体的に説明する。
図2は、本実施形態の第1及び第2の工程の流れを示す概略図である。
図2に示すように、マイクロチューブ10(第1の容器)は、チューブ本体2と蓋体4とから構成される。チューブ本体2の一端(紙面上側)には開口部8が設けられており、開口部8に蓋体4を装着することでマイクロチューブ10を密封できる。
図2に示すようにチューブ本体2は、一端に開口部8を有し他端(先端:紙面下側)が壁面で閉鎖されている。また、チューブ本体2は、開口部8側から先端側に向かって一定の長さで径が同一の筒状となる部位を有するとともに、さらに先端側に向かって径が縮小してテーパ状となる部位を有している。チューブ本体2の他端は、マイクロチューブ10の先端を形成しており、内部において液溜部としての役割を果たすことができる。
図2の(1−a)においてはマイクロチューブ10の内部に緩衝液6(液状媒体)が溜められている。なお、マイクロチューブ10中の緩衝液6は必ずしも通常状態時に先端側に溜まっている必要はなく、使用時に開口部8側を支点としてマイクロチューブ10を振ることで緩衝液6をその先端に集めることができる。
【0037】
図2の(1―b)に示すように、まず、綿球22(吸収体)と、先端部24及び担持部26を分離可能な棒状部材と、を備えた綿棒20(捕集器材)をマイクロチューブ10に挿入し、綿球22に緩衝液6を吸収させる(第1の工程)。綿棒20には先端部24と担持部26との分離手段として切り欠き28が設けられている。
【0038】
次いで、
図2の(2)に示すように、緩衝液6を吸収させた綿棒20をマイクロチューブ10から引き抜き、その後、綿棒20の綿球22が接触するようにして被検査面32を拭き取り、被検査面32上の微生物又は遺伝子を綿球22中に捕集する(第2の工程)。
【0039】
図3を用いて第3の工程について説明する。
図3は、本実施形態の第3の工程の流れを示す概略図である。
図3の(3−a)に示すように、微生物等を捕集した綿棒20を綿球22側からマイクロチューブ10の開口部8に挿入する。次いで、
図3の(3−b)に示すように、切り欠き部28に力が加わるようにマイクロチューブ10の壁面を利用して綿棒20を折り切り、先端部24と担持部26とを分離する。その後、
図3の(3−c)に示すように、担持部26のみをマイクロチューブ10から取り出し、先端部24を残し、蓋体4を装着してマイクロチューブ10を密封する。この際、マイクロチューブ10内では、綿球22がマイクロチューブ10の他端側(紙面下側)に位置するように先端部24の挿入方向が維持される。例えば、微生物等を捕集した場所と微生物検査を行う場所とが異なる場合、第3の工程にて密封されたマイクロチューブ10を、微生物等を捕集した場所から微生物検査を行う検査センターなどに搬送することができる。本実施形態においては、マイクロチューブ10は携帯性及び密封性に優れていることから、例えば、封筒等に入れてマイクロチューブ10を検査センター等に低コストで郵送することができる。
【0040】
図4を用いて第4の工程について説明する。
図4は、本実施形態の第4の工程の流れを示す概略図である。第4の工程において、マイクロチューブ10に密封された先端部24を、マイクロチューブ30に移し替え、その後マイクロチューブ30を密封する。本実施形態においては同一形状及びサイズのマイクロチューブ10とマイクロチューブ30とを用いているが、マイクロチューブ10とマイクロチューブ30とで異なる形状又はサイズのものを用いてもよい。
【0041】
図4の(4−a)に示すように、本実施形態の第4の工程においては、マイクロチューブ30(第2の容器)を用い、マイクロチューブ30から蓋体34を脱着し、さらにマイクロチューブ10から蓋体4を脱着して、マイクロチューブ10内に収納された綿棒の先端部24を、マイクロチューブ10から、開口部36よりマイクロチューブ30内に挿入する。この際、先端部24は図中の矢印で示すようにマイクロチューブ10の壁面を滑り落ちてマイクロチューブ30中に挿入される。このため、マイクロチューブ10からマイクロチューブ30への移行を、綿棒の先端部24が人の指等に触れることなく行うことができる。また、綿棒の先端部24は、綿球22がマイクロチューブ30の開口部36側(紙面上側)となり挿入方向が維持される。その後、蓋体34を装着して綿棒の先端部24を収納したままマイクロチューブ30を密封する。
【0042】
つぎに、第5の工程について説明する。
図5において、(5−a)は本実施形態の第5の工程に用いられる遠心分離機を概略的に示す側面図であり、(5−b)は第5の工程に用いられる遠心分離機と第2の容器との関係を示す上面図である。詳細については省略するが、
図5の(5−a)に示すように、遠心分離機40は、一点鎖線で示される回転軸(遠心軸)Rを中心に回転する回転ロータ42を備える。回転ロータ42には、複数のマイクロチューブ30が設置される。
【0043】
図5の(5−b)に示されるように、複数のマイクロチューブ30は、第4の工程によって得られたマイクロチューブ30であり、容器内に収納された綿棒の先端部24の綿球22側が回転軸R側となるように遠心分離機40に装着される。なお、本実施の形態においては8つのマイクロチューブ30が遠心分離機40に設置されているが、マイクロチューブ30の設置数は特に限定されるものではない。
【0044】
第5の工程においては、図示を省略する駆動機構によって回転軸Rを中心に回転ロータ42が高速回転し、遠心力によって綿球22から微生物等を含む捕集液がマイクロチューブ30中に抽出される。遠心分離後は綿球22から抽出された捕集液がマイクロチューブ30の先端側に溜められる。この際、先端部24の存在により、マイクロチューブ30の先端側に抽出された捕集液と綿球22とが接触するのを抑制することができる。
【0045】
本実施形態の方法によれば、第2の工程にて捕集した微生物等の抽出について、第3の工程における先端部24と第4の工程における先端部24との挿入方向(綿球22が位置する方向)を逆にすることで、第5の工程にて綿球22(吸収体)から捕集液を効率的に抽出できる。このため、本工程において抽出された捕集液は、濃縮工程を施すことなく、顕微鏡などによる直接の観察、遺伝子検査、免疫学的検査又は培養検査などの微生物検査に使用することができる。
【0046】
以上、本発明の捕集方法、及び、抽出方法について実施例を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。