【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28・29年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/ソーシャル・ビッグデータ利活用・基盤技術の研究開発 課題A ソーシャル・ビッグデータ利活用アプリケーションの研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記配信部は、前記配信情報を未読の前記利用者と、配信情報の既読率と、配信情報が既読か未読かを示すとともに配信日時及び既読日時を示す利用情報と、指定された前記利用者の属性を含む情報とを抽出可能である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の情報配信装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る情報配信装置100を含む配信システム1の概略構成を示す図である。配信システム1は、情報配信装置100、無線LANアクセスポイント10−1、10−2、10−3、及びタブレット端末20−1、20−2、20−3を含む。以下、無線LANアクセスポイント10−1、10−2、10−3のそれぞれを特に区別しない場合には任意の1台を無線LANアクセスポイント10と称する。タブレット端末20−1、20−2、20−3のそれぞれを特に区別しない場合には任意の1台をタブレット端末20と称する。
【0016】
タブレット端末20は、利用者が携帯する端末である。タブレット端末20は、GPSを用いてタブレット端末の位置を示す位置情報を取得可能である。また、タブレット端末20は、情報配信装置100から配信される各種情報を表示可能、または音声出力可能である。なお、本実施形態では、タブレット端末20のGPSを用いて位置情報を取得しているが、無線LANアクセスポイント10のSSIDとその位置とを対応付けておき、受信したSSIDを用いて位置情報を取得するようにしたり、ビーコンを用いてもよい。
【0017】
無線LANアクセスポイント10は、タブレット端末20と情報配信装置100とを中継する。例えば、タブレット端末20が取得した位置情報は、無線LANアクセスポイント10により中継されて、情報配信装置100に送信される。また、情報配信装置100が配信した配信情報は、無線LANアクセスポイント10により中継されて、タブレット端末20に送信される。
【0018】
情報配信装置100は、タブレット端末20の位置情報等に基づき、タブレット端末20に適切に配信情報を配信可能である。
図2は、情報配信装置100の構成を示す図である。情報配信装置100は、分析部101、動線・滞在時間検出部102、位置情報受信部103、気象解析部104、外部情報入力部107、属性認識部105、及び情報配信部106を備える。またデータとして、分析結果110、属性認識結果111、及び配信情報112を備える。
【0019】
また、情報配信装置100は、演算装置(例えばCPU(Central Processing Unit)等)、及び記憶装置(例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等)を備える。情報配信装置100が実行する処理は演算装置により実行され、記憶装置は一時記憶のために用いられたり、上述した分析結果110、属性認識結果111、及び配信情報112等が記憶される。
【0020】
分析部101は、利用者の行動に基づき、利用者が分類される特性、または行動の傾向を複数の属性の組み合わせとその割合で示す分析情報を取得し、これを分析結果110として出力する。具体的に、分析部101は、動線・滞在時間検出部102からの出力された情報や入力データが入力され、状況が指定されると、NMTF(複合非負値テンソル因子分析法:Non-negative Multiple Tensor Factorization)を用いて分析を行い、分析結果110を出力する。入力データ、状況の例については後述する。なお、NMTFは、NTF(Nonnegative Tensor Factorization)において、データ(属性)の数を増加させたときに生じるスパース性の問題を解決するために開発された技術である。このNMTFによって、入力データから状況に基づきクラスタリングされた結果が分析結果として出力される。
【0021】
動線・滞在時間検出部102は、利用者の行動を検出する。具体的に、動線・滞在時間検出部102は、タブレット端末20から送信される位置情報から、利用者の動線、移動順序、移動した時刻、移動速度、移動時間、滞在場所、滞在場所での滞在日時、及び滞在場所での滞在時間を検出する。滞在時間とは、予め対象となっているエリアに滞在した時間を示す。以下の説明では、「移動順序、移動した時刻、移動速度、移動時間、滞在場所、滞在場所での滞在日時、及び滞在場所での滞在時間」を行動情報と表現することがある。動線・滞在時間検出部102は、検出した行動情報を、分析部101及び属性認識部105に出力する。
【0022】
行動情報のうち、例えば移動速度から、分析部101は、利用者の移動手段(徒歩、自転車、自動車など)を推定できる。また、滞在時間と滞在場所から利用者が公共交通手段を利用しているか、マイカーを利用しているかなどを推定することができる。具体的には、移動速度が毎時40キロ程度から毎時3キロ程度になった地点が停留所で、そこでの滞在時間が2分程度であり、またその地点から毎時3キロ程度で移動した場合には、利用者はバスから下車したと推定される。すなわち、利用者の交通手段がバスであることが推定される。このように、分析部101は、行動情報に含まれる各種情報から、利用者の移動手段を推定することができる。このように、特性には、利用者の移動手段があり、分析部101は、動線・滞在時間検出部102により検出された利用者の行動を示す行動情報から移動手段を推定し、推定された移動手段を含む特性を複数の属性の組み合わせとその割合で示す分析情報を取得することも可能である。
【0023】
位置情報受信部103は、タブレット端末20から送信される位置情報を受信する。また、位置情報受信部103は、位置情報を受信した日時を記録する。気象解析部104は、利用者が位置する地域の気象情報を取得する。具体的に、気象解析部104は、気象センサから入力されたデータから、高密度気象予測を行う。高密度気象予測結果は、情報配信部106に出力される。高密度気象予測において、気象センサが設置されていない場所については、センサの空間補間を行い、気象予測を実行する。これにより、気象の急激な変化やヒートアイランド現象など、気象環境の変化によって生じる人の行動の変化を解析することが可能となる。なお、気象庁の気象観測網では、計測条件が厳密に規定され、その地域を代表する地点の気象データが提供されるが、実際に人々が生活する環境では、舗装道路からの熱輻射や建造物の影響を強く受けるため、本実施形態による気象予測結果は、必ずしも気象庁のデータとは一致しない。
【0024】
外部情報入力部107は、自治体からの警報や注意報避難勧告などの防災情報、ハザードマップ、イベント情報、自治体が提供する地域に関するオープンデータが入力され、入力された情報を情報配信部106に出力する。なお、外部情報入力部107に入力される情報は、上記の情報に限るものではない。例えば、SNSやメディアによる情報発信など、利用者の行動に影響を与える情報であれば、どのような情報であってもよい。以下の説明では、外部情報入力部107に入力された情報を、外部情報と表現することがある。
【0025】
属性認識部105は、検出された利用者の行動を示す行動情報と、分析部により出力された分析結果110とに基づき、当該利用者の属性を認識する。具体的に、属性認識部105は、行動情報から特徴量を取得する。特徴量については後述する。そして、属性認識部105は、取得した特徴量と分析結果110から、オンライン機械学習向け分散処理フレームワークであるJubatusを用いて、利用者の属性を認識する。具体的には、Jubatusの多値分類機能(入力データを複数グループに分類する機能)を用いて、例えば利用者はある属性Aのグループに属するかなどと分類することで、属性を認識する。認識結果は属性認識結果111として出力される。属性認識結果111は、利用者がある属性か否かを示すものである。
【0026】
情報配信部106は、認識部により認識された属性に応じた配信情報を利用者に配信する。具体的に、情報配信部106は、利用者の属性と、位置情報受信部103により受信された利用者の現在の位置情報と、気象解析部104が出力した高密度気象予測結果と、外部情報と、現在時刻から適切な配信情報112を取得して、利用者のタブレット端末20に配信する。なお、現在時刻は、不図示のRTC(Real Time Clock)から取得する。配信情報112には、利用者に配信する各種情報が記憶されている。各種情報として、例えばベビーカーの使用者に配信するベビーカー使用者情報、イベントに関する情報(例えば、イベント名、イベント場所、イベント時間等)、交通機関に関する情報(例えば、電車やバスの時刻表等)、ある場所に関する情報(例えば、その場所の歴史等)など、地域(施設も含む)で提供されているサービスに関するサービス情報が挙げられる。
【0027】
情報配信部106は、例えば利用者の属性がベビーカー使用者と認識された場合には、ベビーカー使用者に有益なベビーカー使用情報を配信情報112から取得して、タブレット端末20に配信する。
【0028】
次に、上述した入力データ等の具体例について説明する。なお、これから説明する実施形態では、一例として動物園において適切に情報を配信する形態について説明する。
【0029】
図3は、分析部101に入力される入力データの一例、指定される状況の一例、及び属性認識部105が用いる特徴量の一例を示す図である。
図3(A)は、入力データの一例を示す図である。入力データにおいて、エリアAなどは、動物園に予め設けられている各エリア(例えば、園内の西側のエリアなど)を示している。1番目に行ったエリアや、Xの前を通ったか、などは、エリアをどのように移動したかを示すデータである。ベビーカーを使用とは、利用者がベビーカー使用者であることを示すデータである。
図3(A)の場合、一例として14個のデータ例が示されているが、このような複数のデータが多次元のベクトルとして利用者1人ごとに用意されている。そのデータには、上述したような行動を示すデータや、利用者の属性を示すデータが含まれる。
【0030】
図3(B)は、状況の一例を示す図である。状況は、利用者の属性を分類するために用いられる。例えば、「子供連れ」、「高齢者を含む」、「ベビーカー使用者」を状況として入力すると、複数のクラスタへの帰属度の組合せがNMTFによって算出される。例えば、クラスタ1として「子供連れ」、かつ「高齢者を含む」、クラスタ2として「子供連れ」、かつ「高齢者を含む」、かつ「ベビーカー使用者」、クラスタ3として「子供連れ」の3つのクラスタへの帰属度の組み合わせが算出される。この帰属度の組合せが分析結果110として出力される。
【0031】
図3(C)は、特徴量の一例を示す図である。特徴量は、属性認識部105が利用者がある属性であるかどうかを機械学習による分類問題として認識するために用いられる。
図3(C)に示される例では、エリア移動順序とエリア滞在時間が一定割合以上か否かが特徴量の例として示されている。エリア移動順序では、利用者がエリアAからエリアBに移動したか、またはエリアBからエリアCに移動したかという情報が特徴量となる。また、エリア滞在時間が一定割合以上か否かという情報が特徴量となる。
【0032】
図4は、分析結果110の一例をグラフ化した図である。
図4に示されるグラフでは、横軸に示される100人の利用者ごとに、各クラスタへの帰属度を縦軸の長さで示している。この分析結果110に示されるように、多くの利用者は、複数のクラスタの候補となる一方で、特定の一つのクラスタのみの候補となることもある。
【0033】
図5、6は、情報配信装置100の処理の一例を示すフローチャートである。上述したように、情報配信装置100は、まず分析結果110を取得する。そこで、
図5(A)に示されるように、分析部101は、入力データを取得し(ステップS101)、状況を取得する(ステップS102)。次いで、分析部101は、NMTFで分析を行い(ステップS103)、その分析結果110を出力して(ステップS104)、処理を終了する。
【0034】
このように分析結果110を予め取得しておき、分析結果110を用いて、リアルタイムで利用者の属性を認識して適切に情報を配信する。
図5(B)に示されるように、位置情報受信部103は、タブレット端末20から位置情報を受信し(ステップS201)、動線・滞在時間検出部102に出力する。動線・滞在時間検出部102は、受信した位置情報から動線及び滞在時間を検出する(ステップS202)。ここで、動線及び滞在時間を検出するためには、それなりの時間が必要となるため、ステップS201とステップS202が繰り返し行われる。
【0035】
属性認識部105は、特徴量を取得し(ステップS203)、Jubatusを用いて、利用者の属性を認識し(ステップS204)、属性認識結果として出力する(ステップS111)。次いで、情報配信部106は、位置情報受信部103により受信された利用者の現在の位置情報と、気象解析部104が出力した高密度気象予測結果と、外部情報と、現在時刻とを取得し(ステップS206)、情報配信処理を行う(ステップS207)。
【0036】
図6は、情報配信処理の一例を示すフローチャートである。情報配信処理は、各々の利用者ごとに行われる。また、各々の利用者に対して常時行われているものではなく、例えば数分おきや、利用者の行動や天気の変動などをトリガーに行われる。これは、頻繁に情報を配信すると、利用者が混乱したり、利用者が迷惑に感じる可能性があるためである。
【0037】
情報配信部106は、属性認識部105による認識結果から、利用者がベビーカー使用者か否かを判定する(ステップS301)。利用者がベビーカー使用者の場合には(ステップS301:YES)、情報配信部106は、配信情報112にベビーカー使用情報があるか否かを判定する(ステップS302)。ベビーカー使用情報がある場合には、ベビーカー使用情報をタブレット端末20に配信して(ステップS303)、処理を終了する。
【0038】
ステップS301において、利用者がベビーカー使用者ではない場合には(ステップS301:NO)、情報配信部106は、位置情報から、利用者の周辺でイベントがあるか否かを配信情報112を用いて判定する(ステップS304)。周辺でイベントがある場合には(ステップS304:YES)、イベント情報をタブレット端末20に配信して(ステップS305)、処理を終了する。
【0039】
ステップS304において、利用者の周辺でイベントがない場合には(ステップS304:NO)、情報配信部106は、高密度気象予測結果から、天候が変化するか否かを判定する(ステップS306)。天候が変化する場合には(ステップS306:YES)、情報配信部106は、天候情報をタブレット端末20に配信して(ステップS307)、処理を終了する。
【0040】
ステップS306において、天候が変化しない場合には(ステップS306:NO)、情報配信部106は、位置情報から、利用者の周辺にバス停があるか否かを判定する(ステップS308)。周辺にバス停がある場合には(ステップS308:YES)、情報配信部106は、バス時刻情報をタブレット端末20に配信して(ステップS309)、処理を終了する。周辺にバス停がない場合には(ステップS308:NO)、情報配信部106は、何もせずに終了する。
【0041】
以上説明した実施形態を実験的に運用した事例について説明する。
図7は、二度に渡って行われた実験結果とアンケート結果を示す図である。
図7(A)は、1つめの実験結果を示しており、対象利用者数501名で、対象となる属性をベビーカー使用者としたときの認識結果の正解率等を示す図である。このとき、特徴量として、エリア移動順序、エリア滞在時間が第3四分位以上、対象ルートを通ったか、を用いた。また、
図7(A)、
図7(B)のいずれにおいても、認識結果を出力する処理が1秒程度で可能なことが確認できた。従って、リアルタイム性が担保されている。
【0042】
図7(A)に示されるように、利用者数501名のうち、ベビーカー使用者は214名で、全体の43%であった。そして属性認識結果の正解率は、ベビーカー使用者と認識された利用者のうち、実際にベビーカー使用者であった割合は60%であり、ベビーカー使用者ではない認識された利用者のうち、実際にベビーカー使用者ではなかった割合は67%であった。ベビーカー使用者は全体の43%であるところ、ベビーカー使用者として認識された結果の正解率が60%であることから、精度よく認識できていることがわかる。また、ベビーカー使用者との認識結果とベビーカー使用者ではないとの認識結果を合わせた全体の正解率が64%であることから、精度よく認識できていることがわかる。
【0043】
図7(B)は、2つめの実験結果を示しており、大きく異なる点は、属性として「リピーター」を設けた点である。2つめの実験における対象利用者数は197名であり、特徴量は1つめの実験時の特徴量と同様である。なお、ここでのリピーターとは、過去2年間の入園回数が4回以上の利用者である。
【0044】
図7(B)に示されるように、利用者数197名のうち、ベビーカー使用者は70名で、全体の36%であった。そして属性認識結果の正解率は、ベビーカー使用者と認識された利用者のうち、実際にベビーカー使用者であった割合は59%であり、ベビーカー使用者ではない認識された利用者のうち、実際にベビーカー使用者ではなかった割合は65%であった。ベビーカー使用者は全体の36%であるところ、ベビーカー使用者として認識された結果の正解率が59%であることから、精度よく認識できていることがわかる。また、ベビーカー使用者との認識結果とベビーカー使用者ではないとの認識結果を合わせた全体の正解率が62%であることから、精度よく認識できていることがわかる。
【0045】
また、利用者数197名のうち、リピーターは106名で、全体の54%であった。そして属性認識結果の正解率は、リピーターと認識された利用者のうち、実際にリピーターであった割合は66%であり、リピーターではないと認識された利用者のうち、実際にリピーターではなかった割合は54%であった。リピーターは全体の54%であるところ、リピーターとして認識された結果の正解率が59%であることから、精度よく認識できていることがわかる。また、リピーターとの認識結果とリピーターではないとの認識結果を合わせた全体の正解率が60%であることから、精度よく認識できていることがわかる。
【0046】
図7(C)は、配信情報の配信数についてのアンケート結果を示す図である。配信情報は、利用者の滞在位置に合わせたイベント情報、気象の変化に関する情報、利用者の属性にあった情報の3つである。
図7(C)に示される「利用者数」は、タブレット端末20を携帯した利用者数である。「配信数(トータル)」は、動物園滞在時に配信された配信情報数を示す。「配信数(1hあたり)」は、1時間あたりに配信された配信情報数を示す。「配信数(トータル)」及び「配信数(1hあたり)」における「平均」、「最大」、「最小」は、それぞれの配信数の平均値、最大値、最小値を示す。このように配信数にばらつきが生じる理由は、滞在時間や滞在位置により配信する配信情報が変化するためである。
図7(C)に示されるように、「ちょうどよい」と回答した利用者が184名と圧倒的に多い。
【0047】
図7(D)は、配信情報が嬉しかったか否かについてのアンケート結果を示す図である。
図7(D)は、配信情報の種類ごとに、嬉しかった場合には「はい」、そうでない場合には「いいえ」、「はい」及び「いいえ」のどちらでもない場合は「どちらともいえない」が利用者によって選択された結果を示している。「未受信」は、配信情報を受信していないことを示している。配信情報は、利用者の滞在位置に合わせたイベント情報、気象の変化に関する情報、利用者の属性(ベビーカー使用者及びバス利用者)にあった情報である。
【0048】
いずれの配信情報に対しても、非常に高い割合で嬉しかったと利用者が回答していることがわかる。例えば、「はい」の回答率が最も低かったイベント配信においても8割近いモニタが「はい」と回答している。また、バス利用者向けの配信において「いいえ」と回答した利用者はいずれもバス未利用の利用者であった。このことから、適切に情報が配信されていることがわかる。なお、上述したように、分析部101は利用者の移動手段を推定する推定機能を有するが、本事例においても当該推定機能を用いた場合には、バス利用者向けの配信はバス利用者と推定された利用者となるため、「いいえ」と回答される割合がほぼ0となることが考えられるので、推定機能によって適切に情報を配信することが可能となる。
【0049】
図8(A)は、利用者のイベント参加率を示す図である。
図8(A)では、一般の入園者と比較するために、対象を入園者全体と利用者ごとのイベント参加率が示されている。
図8(A)に示されるように、利用者のイベント参加率(56.2%)は、入園者全体の参加率(18.8%)と比較して非常に高い値となっている。このことから、適切に情報が配信されていることがわかる。
【0050】
図8(B)は、具体的なイベントでの参加率を示す図である。
図8に示されるように、いずれのイベントにおいても、利用者のイベント参加率は、入園者全体の参加率と比較して高い値となっている。このことから、適切に情報が配信されていることがわかる。
【0051】
上述した利用者からのアンケート結果から、属性認識結果の正解率は100%でなくとも、十分に有効であることがわかる。
【0052】
以上説明した実施形態により、適切に情報をリアルタイムで配信可能な情報配信装置を提供することができる。上述した実施形態では、動物園を例にしたが、地域、商業施設などにも適用可能である。例えば、地域サービスや商業施設のサービスにおける情報提供では、WEBなどのインターネットが用いられ、また地域では防災無線等が用いられている。
【0053】
自治体や商業施設のWEBで情報提供が行われる場合には、利用者はWEBにアクセスしなければならないという問題があり、また防災無線では提供可能な情報量が少ないという問題がある。さらに、災害時には防災無線が利用できなかったり、音が小さいなどの問題もある。また、観光客など地域外からの来訪者に対しては、WEBや防災無線は有効な伝達とは言い難かった。観光客など地域外からの来訪者に限らず、地域住民や商業施設の利用者も必要な情報は異なっているので、一律に同じ情報しか提供できないという問題が従来技術にはあった。また、メールアドレスで情報を配信することもあるが、利用者の属性等を予め設定しておかない限り、一律に同じ情報しか提供できない。
【0054】
このような問題の他に、行動から属性を認識することが困難という問題があった。例えば、従来より位置情報から行動パターンを認識する方法として、クロス分析、バスケット分析、クラスタ分析等が用いられている。しかし、利用者の行動は季節、曜日、時間帯、天候、イベントの有無、SNS、メディアによる情報発信等、多種多様の要因によって大きく変化する。このような多種多様の要因の組合せで変化する行動をパターン化すること、及び利用者の属性を推定することは従来技術では困難であった。
【0055】
このような問題に対しても、本実施形態によれば、利用者の行動から属性を認識し、認識された属性に応じた配信情報を配信できるので、少なくとも利用者の行動が検出可能であれば、適切に情報をリアルタイムで配信することができる。
【0056】
以上説明した実施形態では、一例として
図3に示した入力データや状況例による実施形態について説明したが、
図3の入力データで説明したように、入力データは利用者ごとに多次元のベクトルという形のデータとなっている。NMTFは次元の数に制限はないため、多種多様の要因をデータとして入力可能である。
【0057】
よって、例えば上述した季節、曜日、時間帯、天候、イベントの有無、SNS、メディアによる情報発信、地域の住人、訪問者、観光客、未成年、交通弱者、高齢者など有効と考えられるデータを入力データに用意しておくことで、より精度よく属性を認識可能となる。
【0058】
このような多種多様の要因を入力データとし、NMTFによって分析結果を取得しておくことで、より適切な情報を配信することができる。例えば、属性が観光客と認識された場合、イベントや災害時に関する配信情報は、土地勘のない人でもわかりやすい情報とすることができる。また、属性が老人と認識された場合、災害時には早めの避難勧告や徒歩で行ける避難場所の経路など、属性に応じた情報を配信することができる。
【0059】
また、天候について、属性が観光客と認識され、雨天時の場合には、近くにある屋内の観光施設に関する情報を配信したり、属性が高齢者と認識され、真夏日の場合には、熱射病に関する情報や、近くの涼しい施設に関する情報を配信することができる。このように、行動情報、分析情報に加え、気象情報などの地域関連情報に基づき利用者の属性を認識してもよい。
【0060】
また、上述した実施形態では動物園に遊びに来た利用者という、非日常における利用者の行動情報に基づいて属性が認識されていたが、地域の住民を対象にする場合には、日常の利用者の行動によって属性が認識される。日常の利用者の行動には、会社への出勤や、近所のスーパーへの買い物などがある。こうした日常の利用者の行動から、分析部101は移動範囲を推定するようにしてもよい。具体的に、移動範囲のうち、平日の昼は会社のある地域が移動範囲であり、夜は自宅の近傍が移動範囲として推定する。このように、特性には、利用者の移動範囲があり、分析部101は、動線・滞在時間検出部102により検出された利用者の行動を示す行動情報から移動範囲を推定し、推定された移動範囲を含む特性を複数の属性の組み合わせとその割合で示す分析情報を取得するようにしてもよい。移動範囲を特性とすることで、より正確に利用者の属性を推定することが可能となる。
【0061】
このように、移動範囲を推定することで、例えば平日昼に会社がある地域で災害が起きた場合には、当該災害に関する情報を配信することが可能となる。また、上述した移動手段の推定によってもバスの利用者に向けて情報を配信することが可能となる。このように、情報配信部106は、移動手段及び移動範囲が含まれた特性を用いて取得された分析結果110と、動線・滞在時間検出部102により検出された利用者の行動を示す行動情報とによって属性認識部105が認識した利用者の属性に応じた配信情報を利用者に配信するようにしてもよい。
【0062】
なお、情報配信部106は、配信情報が利用者によって既に読まれたか(既読)、未だに読まれていないか(未読)を抽出可能であってもよい。この場合、情報配信部106は、各々の配信情報に一意となる識別情報を割り当てておくとともに配信時刻を記録しておく。タブレット端末20において、配信情報が利用者によって読まれた場合、配信情報が読まれたことと当該配信情報を示す識別情報とを示すメッセージを情報配信装置100に送信する。タブレット端末20は、受信時刻と識別情報とを記録しておく。このようにすることで、情報配信部106は、配信情報を未読の利用者と、配信情報の既読率と、配信情報が既読か未読かを示すとともに配信日時及び既読日時を示す利用情報とを抽出することができる。また、利用者の属性を含む情報については、属性認識部105によって得られた認識結果が、属性認識結果111として記憶されているため、情報配信部106は、属性認識結果111から利用者の属性を取得し、当該属性と利用者の属性以外の情報(例えば現在位置等)を、利用者の属性を含む情報として抽出することができる。
【0063】
情報配信部106が抽出した配信情報を未読の利用者と、配信情報の既読率と、配信情報が既読か未読かを示すとともに配信日時及び既読日時を示す利用情報と、指定された利用者の属性を含む情報は、情報配信装置100に接続した表示装置や、管理者用の端末等で表示するようにしてもよい。また、利用者の属性を含む情報を抽出する際の利用者の指定手段として、情報配信装置100に接続したキーボードやタッチパネルや、管理者用の端末であれば端末に設けられたタッチパネルやハードキーなどが挙げられる。このように、未読や既読を利用者ごとに抽出可能であれば、どのような配信情報が未読となっているか、また未読の利用者の属性等を認識することが可能となるため、配信情報の配信内容や配信タイミング等を検討するための有効な情報を提供することができる。
【0064】
本実施形態によれば、利用者の行動から属性を認識できるため、必要な人に必要な情報を適切に配信可能となる。また、利用者は、予め属性を入力する必要がないため、利用者も手軽に適切な情報を受信することができる。
【0065】
なお、本実施形態では、情報配信装置100に分析部101を備えていたが、分析部101は他の装置に設けるようにしてもよい。また、分析結果110、属性認識結果111、配信情報112は、他の装置に記憶されていてもよく、この場合、情報配信装置100は適宜他の装置から分析結果110、属性認識結果111、配信情報112のうちの必要な情報を取得するようにしてもよい。例えば、配信情報112は、予め情報配信装置100に記憶されているが、他の装置から各種情報を適宜取得する配信情報取得部を設けるようにしてもよい。この場合、配信情報取得部と上述した気象解析部104とが地域関連情報取得部の一例となる。さらに、情報配信装置100で実行する処理を他の装置で分散処理することで、それらの装置全体として情報配信装置100の機能を実現するようにしてもよい。
【0066】
本実施形態では、利用者の情報を認識するために、NMTF及びJubatusを用いたが、利用者の属性を認識可能なものであれば、これらに限るものではない。
【0067】
また、本実施形態では、利用者が携帯する端末として、タブレット端末を例にしたが、これに限るものではなく、通信可能で情報を表示可能な端末(例えばスマートフォン、フィーチャーフォン等)であれば、どのような端末であってもよい。
【0068】
上述した実施形態における情報配信装置100の処理をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0069】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【解決手段】利用者の行動に基づき、利用者が分類される特性、または行動の傾向を複数の属性の組み合わせとその割合で示す分析情報を取得する分析情報取得部と、利用者の行動を検出する検出部と、前記検出部により検出された利用者の行動を示す行動情報と、前記分析情報取得部により取得された前記分析情報とに基づき、当該利用者の属性を認識する認識部と、前記認識部により認識された属性に応じた配信情報を前記利用者に配信する配信部と、を備える。