(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記複数の発熱体は、上記可溶導体の配設方向と直交する方向を長手方向とする矩形状をなし、長手方向の一端が上記発熱体引出電極と接続され、長手方向の他端が外部接続電極と接続されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の保護素子。
上記外部接続電極は、上記絶縁基板に形成された導電スルーホールを介して上記発熱体が形成された表面と反対側の裏面に形成された端子部と接続され、上記端子部が上記外部回路に接続される請求項7に記載の保護素子。
【背景技術】
【0002】
充電して繰り返し利用することのできる二次電池の多くは、バッテリパックに加工されてユーザに提供される。特に重量エネルギー密度の高いリチウムイオン二次電池においては、ユーザ及び電子機器の安全を確保するために、一般的に、過充電保護、過放電保護等のいくつもの保護回路をバッテリパックに内蔵し、所定の場合にバッテリパックの出力を遮断する機能を有している。
【0003】
多くのリチウムイオン二次電池を用いた電子装置においては、バッテリパックに内蔵されたFETスイッチを用いて出力のON/OFFを行うことにより、バッテリパックの過充電保護又は過放電保護動作を行う。しかしながら、何らかの原因でFETスイッチが短絡破壊した場合、雷サージ等が印加され、瞬間的な大電流が流れた場合、或いはバッテリセルの寿命によって出力電圧が異常に低下したり、逆に過大異常電圧を出力した場合であってもバッテリパックや電子機器は、発火等の事故から保護されなければならない。そこで、このような想定し得るいかなる異常状態においても、バッテリセルの出力を安全に遮断するために、外部からの信号によって電流経路を遮断する機能を有するヒューズ素子からなる保護素子が用いられる。
【0004】
このようなリチウムイオン二次電池等向けの保護回路の保護素子として、特許文献1に記載されているように、保護素子内部に発熱体を有し、この発熱体の発熱によって電流経路上の可溶導体を溶断する構造が用いられている。
【0005】
具体的に、この種の保護素子100は、
図14、
図15に示すように、絶縁基板103と、外部回路に接続される第1、第2の電極101,102と、WやMo、Ru等の高融点金属によって絶縁基板103に設けられた発熱体104と、発熱体104を絶縁被覆するガラス層105と、ガラス層105上に積層されるとともに発熱体104と重畳され、発熱体104と電気的に接続された発熱体引出電極106と、絶縁基板103に設けられ、発熱体104の幅方向の両側縁と接続された一対の発熱体接続電極107a,107bと、発熱体接続電極107aを介して発熱体104と接続されるとともに発熱体引出電極106と接続された第1の発熱体電極108と、発熱体接続電極107aと接続されるとともに発熱体104を外部の給電回路に接続する第2の発熱体電極109と、発熱体引出電極106を介して第1、第2の電極101,102間にわたって接続された可溶導体110とを有する。可溶導体110は、半田等の接続材料111によって、第1、第2の電極101,102及び発熱体引出電極106と接続されている。なお、
図15では、ガラス層105を省略している。
【0006】
保護素子100は、第1、第2の電極101,102が外部回路に接続されることにより、可溶導体110が当該外部回路の電流経路の一部に組み込まれる。また、保護素子100は、第2の発熱体電極109が外部回路に接続されることにより、第1の電極101から可溶導体110、発熱体引出電極106、発熱体104、第2の発熱体電極109を経て外部回路に至る発熱体104への給電経路が形成される。
【0007】
通常、保護素子100は、外部回路に設けられたスイッチ素子によって当該給電経路への通電が規制されている。そして、外部回路の電流経路を遮断する場合、保護素子100は、スイッチ素子によって発熱体104への給電が解除され、発熱体104が通電、発熱することにより可溶導体110を溶断させる。これにより、外部回路の電流経路が遮断されるとともに、発熱体104への給電も停止される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明が適用された保護素子について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0020】
[第1の実施例]
本発明が適用された保護素子1は、
図1、
図2に示すように、絶縁基板2と、絶縁基板2に形成された複数の発熱体3と、複数の発熱体3と電気的に接続された発熱体引出電極4と、発熱体引出電極4に支持された可溶導体5とを備える。また、保護素子1は、第1、第2の電極11,12を有し、絶縁基板2が第1、第2の電極11,12間に配設されている。そして、保護素子1は、可溶導体5が第1、第2の電極11,12間に跨って接続されている。
【0021】
[第1及び第2の電極]
第1及び第2の電極11,12は、保護素子1を外部回路に接続する金属等の接続端子であり、それぞれ保護素子1の内部でハンダ等の接続材料7を介して可溶導体5と接続され、可溶導体5を介して接続されている。これにより、保護素子1は、第1の電極11〜可溶導体5〜第2の電極12に至る電流経路を構成し、この電流経路は、第1、第2の電極11,12が外部回路の接続端子と接続されることにより、当該外部回路の一部に組み込まれる。そして、保護素子1は、可溶導体5に定格を超える過電流が通電することによる可溶導体5の自己発熱によって溶融し、
図3に示すように、可溶導体5と第1、第2の電極11,12の一方との間で溶断することにより、外部回路の充放電経路を遮断する。あるいは、保護素子1は、発熱体3が通電、発熱されることにより、
図4に示すように、可溶導体5を溶融させ、第1、第2の電極11,12と発熱体引出電極4との間で溶断するとともに、溶融導体5aが発熱体引出電極4上に凝集することにより、当該外部回路の電流経路を遮断する。
【0022】
保護素子1は、第1及び第2の電極11,12が、保護素子1の外筐体10に支持されることにより内外にわたって配設されている。また、保護素子1は、外筐体10の中央のスペースに絶縁基板2が配設され、これにより第1、第2の電極11,12と絶縁基板2とが隣接されている。
【0023】
外筐体10は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド:Polyphenylenesulfide)等の耐熱性に優れるエンジニアリングプラスチックを用いて形成することができる。また、外筐体10は、所定の形状に成形する際に、インサート成型等により第1、第2の電極11,12を一体成型してもよい。
【0024】
なお、第1及び第2の電極11,12は、絶縁基板2と隣接するエポキシ樹脂等からなる絶縁素材に形成するようにしてもよい。また、第1及び第2の電極11,12は、
図5に示すように、高融点金属ペーストの印刷等により絶縁基板2の表面2aの対向する一対の側縁部に形成してもよい。
【0025】
[絶縁基板]
絶縁基板2は、例えば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材によって形成される。その他、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよいが、ヒューズ溶断時の温度に留意する必要がある。
【0026】
[発熱体]
発熱体3は、絶縁基板2の表面2aに積層され、絶縁部材13に覆われている。発熱体3は、比較的抵抗値が高く通電すると発熱する導電性を有する部材であって、例えばW、Mo、Ru等からなる。これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板2上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成される。
【0027】
保護素子1は、所定の間隔を隔てて複数の発熱体3が並列され、例えば
図1に示すように、2つの発熱体3A,3Bが設けられている。このように、保護素子1は、従来一つであった発熱体を複数に分割して形成することにより、同等の発熱量を維持しつつ発熱による絶縁基板2に対する熱衝撃を緩和することができる。すなわち、保護素子1は、発熱体3が複数に分割して配置されることにより、絶縁基板2の熱分布が広がりピークも下がることから、絶縁基板2に対する熱衝撃も緩和される。一方で、保護素子1は、分割された発熱体3の全発熱量は従来と同等であり、可溶導体5の溶断に要する時間が延びることもない。したがって、保護素子1は、大電流容量に対応するために可溶導体5を大型化するとともに、発熱体3の電力を増大させた場合にも、絶縁基板2に割れが生じることかなく、安定した発熱動作を奏する。
【0028】
図2に示すように、各発熱体3A,3Bは、可溶導体5が配設される方向と直交する方向を長手方向とする矩形状に形成され、長手方向の一端が発熱体接続電極17aを介して絶縁基板2の表面2aに形成された第1の発熱体電極15と接続され、長手方向の他端が発熱体接続電極17bを介して絶縁基板2の表面2aに形成された第2の発熱体電極16と接続されている。
【0029】
第1の発熱体電極15は、複数の発熱体3の各一端と接続されるとともに、発熱体引出電極4と接続されている。第2の発熱体電極16は、複数の発熱体3の各他端と接続されるとともに、保護素子1が外部回路に接続される際の外部接続電極となる。保護素子1は、第2の発熱体電極16を介して外部回路と接続されることにより、発熱体3が外部回路に形成された発熱体3への給電経路に組み込まれる。
【0030】
第1、第2の発熱体電極15,16は、例えばAgやCu、あるいはこれらを主成分とした合金等の高融点金属を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板2上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成することができる。
【0031】
発熱体3は、第1、第2の発熱体電極15,16間にわたって通電されることにより発熱する。すなわち、発熱体3は、長手方向に通電されることにより、長手方向に沿って割れが発生した場合にも、第1、第2の発熱体電極15,16間にわたる通電経路が遮断されることがなく通電、発熱が停止されることが無い。一方、
図15に示すように、発熱体3が長手方向と直交する幅方向の両側に発熱体接続電極を設け、幅方向に通電されることにより発熱する構成では、長手方向に沿って割れが発生した場合、第1、第2の発熱体電極15,16間にわたる通電経路が遮断され、可溶導体5の溶断前に発熱が停止する恐れがある。
【0032】
絶縁部材13としては、例えばガラスを用いることができる。なお、保護素子1は、発熱体3の熱を効率良く可溶導体5に伝えるために、複数の発熱体3と絶縁基板2との間にも絶縁部材を積層し、発熱体3を絶縁基板2の表面2aに形成された絶縁部材13の内部に設けるようにしても良い。
【0033】
[発熱体引出電極]
発熱体引出電極4は、第1、第2の電極11,12間にわたって接続された可溶導体5を支持するとともに発熱体3への給電経路を構成するものであり、第1の発熱体電極15と接する引出部4aと、絶縁部材13上に積層されるとともに可溶導体5が接続される接続部4bとを有する。発熱体引出電極4は、接続部4bが第1、第2の電極11,12の間に形成され、可溶導体5を介して第1、第2の電極11,12と接続される。また、発熱体引出電極4は、発熱体3によって加熱されるとともに、発熱体3の熱を可溶導体5に伝えて溶断させる。さらに、発熱体引出電極4は、可溶導体5が溶融すると、可溶導体5の溶融導体5aが凝集され、第1、第2の電極11,12と分断することにより、第1、第2の電極11,12間にわたる電流経路を遮断する。このとき、発熱体引出電極4は、発熱体3によって加熱されることにより、可溶導体5の溶融導体5aを凝集しやすくする。
【0034】
発熱体引出電極4は、接続部4bが絶縁部材13を介して複数の発熱体3間に跨って一部重畳する位置に形成されている。したがって、発熱体引出電極4は、絶縁部材13を介して各発熱体3の熱が効率よく伝わり、速やかに可溶導体5を加熱、溶融させることができる。すなわち、保護素子1は、複数の発熱体3がそれぞれ発熱されると、熱は絶縁部材13及び絶縁部材13上に積層された発熱体引出電極4を介して可溶導体5に伝わり加熱する。このとき、保護素子1は、発熱体引出電極4が分割配置された発熱体3間に跨って一部重畳するように配置されることで発熱体3の熱が効率よく伝わり、可溶導体5を速やかに溶断させることができる。また、保護素子1は、発熱体3の熱がより発熱体引出電極4及び可溶導体5へ伝わりやすくなることから、絶縁基板2に対する熱衝撃も緩和され、絶縁基板2や発熱体3の割れの発生を防止することができる。
【0035】
なお、発熱体引出電極4は、
図1に示すように、2つの発熱体3A,3Bの両方に跨って重畳させてもよく、一方の発熱体3のみに重畳させてもよいが、可溶導体5への熱伝導や絶縁基板2に対する熱衝撃の緩和効果の面で両方に跨って重畳させることが好ましい。
【0036】
発熱体引出電極4は、例えばAgやCu、あるいはこれらを主成分とした合金等の高融点金属を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁部材13上及び第1の発熱体電極15上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成することができる。
【0037】
そして、発熱体引出電極4は、ハンダ等の接続材料7を介して、第1、第2の電極11,12間を接続する可溶導体5と接続される。また、発熱体引出電極4は、可溶導体5が溶融すると、溶融導体5aを凝集し、第1、第2の電極11,12間の電流経路を遮断する。
【0038】
なお、保護素子1は、
図1に示すように、発熱体3A,3Bを絶縁基板2の中央を境に両側に形成するとともに、発熱体引出電極4を絶縁基板2の中央を跨って配設することが好ましい。これは、絶縁基板2は外縁部に行くほど放熱による冷却効果が高く、外縁部から最も遠い基板中央は熱が逃げにくいことから、熱膨張による応力も大きくなり、割れが発生しやすい。したがって、この基板中央部を避けて両側に発熱体3A,3Bを形成することにより、発熱体3A,3Bの熱が基板中央部に蓄積し、熱膨張による応力で割れが発生した場合にも、割れによる影響が発熱体3A,3Bに及ぶことを防止することができる。
【0039】
また、発熱体引出電極4を絶縁基板2の中央を跨って配設することにより、保護素子1は、発熱体3A,3Bの熱を放熱しにくい基板中央部に集中させ、絶縁基板2に分散させることなく効率的に可溶導体5を加熱することができる。同時に、保護素子1は、発熱体3A,3Bから基板中央部にわたる熱を発熱体引出電極4を介して可溶導体5に伝えていくことにより、発熱体3A,3Bの熱を放熱しにくく熱膨張による応力も大きくなる基板中央部に蓄積させることなく、絶縁基板2の割れを防止することができる。
【0040】
また、絶縁基板2は、第2の発熱体電極16が、複数の発熱体3の各他端側において、各発熱体3間にわたって設けられ、各発熱体3間の領域において第2の発熱体電極16を介して外部回路の端子部にハンダ等の接合材料によって接続されている。これにより、保護素子1は、発熱体3間の領域で絶縁基板2が固定され、発熱体3が発熱することにより絶縁基板2に生じる応力が発熱体3の間に現れ、割れが発生した場合にも発生位置を発熱体3が設けられていない領域に制御することができる。特に、2つの発熱体3A,3Bを絶縁基板2の中央を境に両側配置することで、発熱体3A,3Bの熱を放熱しにくい基板中央部に集中させ、熱膨張による応力が蓄積した場合には、第2の発熱体電極16が固定点となって、割れの発生位置を確実に発熱体3A,3Bの間の領域に制御でき、絶縁基板2に割れが発生した場合にも、発熱体3A,3Bに割れが生じ、発熱が停止する事態を防止することができる。
【0041】
ここで、第2の発熱体電極16は、絶縁基板2に導電層を有するスルーホール20を形成するとともに、絶縁基板2の裏面2bにスルーホール20を介して電気的に接続された接続端子部を設け、当該接続端子部を介して外部回路の端子部と接続、固定するようにしてもよい。保護素子1は、絶縁基板2の固定点にスルーホール20を形成することにより、絶縁基板2の割れの発生位置がスルーホール20を起点とすることができ、発熱体3A,3Bに割れが生じ、発熱が停止する事態を確実に防止することができる。
【0042】
なお、第2の発熱体電極16は、ハンダブリッジによって外部回路の端子部と接続、固定してもよい。この場合も、保護素子1は、発熱体3間の領域で絶縁基板2が固定されることから、割れの発生位置を発熱体3が設けられていない発熱体3間の領域に制御することができる。
【0043】
[可溶導体]
可溶導体5は、過電流状態によって溶融するものであり、したがって、溶断する導電性の材料であればよく、例えば、SnAgCu系のPbフリーハンダのほか、BiPbSn合金、BiPb合金、BiSn合金、SnPb合金、PbIn合金、ZnAl合金、InSn合金、PbAgSn合金等を用いることができる。なお、可溶導体5は、Ag若しくはCu又はAg若しくはCuを主成分とする金属からなる高融点金属と、ハンダ又はSnを主成分とするPbフリーハンダ等の低融点金属との積層体であってもよい。
【0044】
このような可溶導体5は、低融点金属箔に、高融点金属層をメッキ技術を用いて成膜することによって形成することができ、あるいは、他の周知の積層技術、膜形成技術を用いて形成することもできる。なお、可溶導体5は、高融点金属層を内層とし、低融点金属層を外層として構成してもよく、また低融点金属層と高融点金属層とが交互に積層された4層以上の多層構造とするなど、様々な構成によって形成することができる。
【0045】
また、可溶導体5は、所定の定格電流が流れている間は、自己発熱によっても溶断することがない。そして、定格よりも高い値の電流が流れると、自己発熱によって溶融し、第1、第2の電極11,12間の電流経路を遮断する。また、可溶導体5は、発熱体3が通電、発熱されることにより加熱され、溶断することにより、第1、第2の電極11,12間の電流経路を遮断する。このとき、可溶導体5は、溶融した低融点金属が高融点金属を浸食することにより、高融点金属が溶融温度よりも低い温度で溶融する。したがって、可溶導体5は、低融点金属による高融点金属の浸食作用を利用して短時間で溶断することができる。
【0046】
また、可溶導体5は、内層となる低融点金属に高融点金属が積層されて構成することにより、溶断温度を従来の高融点金属からなるチップヒューズ等よりも大幅に低減することができる。したがって、可溶導体5は、同一サイズのチップヒューズ等に比して、断面積を大きくでき電流定格を大幅に向上させることができる。また、同じ電流定格をもつ従来のチップヒューズよりも小型化、薄型化を図ることができ、速溶断性に優れる。
【0047】
また、可溶導体5は、保護素子1が組み込まれた電気系統に異常に高い電圧が瞬間的に印加されるサージへの耐性(耐パルス性)を向上することができる。すなわち、可溶導体5は、例えば100Aの電流が数msec流れたような場合にまで溶断してはならない。この点、極短時間に流れる大電流は導体の表層を流れることから(表皮効果)、可溶導体5は、外層として抵抗値の低いAgメッキ等の高融点金属を設けることにより、サージによって印加された電流を流しやすく、自己発熱による溶断を防止することができる。したがって、可溶導体5は、高融点金属で被覆することにより、ハンダ合金からなるヒューズに比して、大幅にサージに対する耐性を向上させることができる。
【0048】
なお、可溶導体5は、酸化防止、及び溶断時の濡れ性の向上等のため、フラックス(図示せず)が塗布されている。
【0049】
[発熱体]
また、
図6に示すように、保護素子1は、発熱体3を絶縁基板2の裏面2bに形成してもよい。発熱体3は、絶縁基板2の裏面2bに形成されるとともに、裏面2b上において絶縁層13に被覆される
【0050】
発熱体3は、一端が図示しない発熱体電極を介して発熱体引出電極4及び発熱体引出電極4上に搭載された可溶導体5と電気的に接続される。また、発熱体3は、他端が第2の発熱体電極16と接続される。
【0051】
また、
図7に示すように、保護素子1は、発熱体3を絶縁基板2の内部に形成してもよい。この場合、発熱体3は、ガラス等の絶縁層によって被覆する必要はない。また、発熱体3は、一端が図示しない発熱体電極を介して発熱体引出電極4及び発熱体引出電極4上に搭載された可溶導体5と電気的に接続される。また、発熱体3は、他端が第2の発熱体電極16と接続される。
【0052】
[回路構成]
保護素子1は、例えばバッテリパックに組み込まれると、過電流時における可溶導体5の自己溶断に加え、バッテリセルの過電圧を検知して発熱体3を通電、発熱させ、可溶導体5を溶断させることにより、バッテリパックの充放電経路を遮断することができる。
【0053】
バッテリパック30は、
図8に示すように、例えば、合計4個のリチウムイオン二次電池のバッテリセル31〜34からなるバッテリスタック35を有する。
【0054】
バッテリパック30は、バッテリスタック35と、バッテリスタック35の充放電を制御する充放電制御回路40と、バッテリスタック35の異常時に充電を遮断する本発明が適用された保護素子1と、各バッテリセル31〜34の電圧を検出する検出回路36と、検出回路36の検出結果に応じて保護素子1の動作を制御するスイッチ素子となる電流制御素子37とを備える。
【0055】
バッテリスタック35は、過充電及び過放電状態から保護するための制御を要するバッテリセル31〜34が直列接続されたものであり、バッテリパック30の正極端子30a、負極端子30bを介して、着脱可能に充電装置45に接続され、充電装置45からの充電電圧が印加される。充電装置45により充電されたバッテリパック30は、正極端子30a、負極端子30bをバッテリで動作する電子機器に接続することによって、この電子機器を動作させることができる。
【0056】
充放電制御回路40は、バッテリスタック35から充電装置45に流れる電流経路に直列接続された2つの電流制御素子41、42と、これらの電流制御素子41、42の動作を制御する制御部43とを備える。電流制御素子41、42は、たとえば電界効果トランジスタ(以下、FETという。)により構成され、制御部43によりゲート電圧を制御することによって、バッテリスタック35の電流経路の導通と遮断とを制御する。制御部43は、充電装置45から電力供給を受けて動作し、検出回路36による検出結果に応じて、バッテリスタック35が過放電又は過充電であるとき、電流経路を遮断するように、電流制御素子41、42の動作を制御する。
【0057】
保護素子1は、例えば、バッテリスタック35と充放電制御回路40との間の充放電電流経路上に接続され、その動作が電流制御素子37によって制御される。
【0058】
検出回路36は、各バッテリセル31〜34と接続され、各バッテリセル31〜34の電圧値を検出して、各電圧値を充放電制御回路40の制御部43に供給する。また、検出回路36は、いずれか1つのバッテリセル31〜34が過充電電圧又は過放電電圧になったときに電流制御素子37を制御する制御信号を出力する。
【0059】
電流制御素子37は、たとえばFETにより構成され、検出回路36から出力される検出信号によって、バッテリセル31〜34の電圧値が所定の過放電又は過充電状態を超える電圧になったとき、保護素子1を動作させて、バッテリスタック35の充放電電流経路を電流制御素子41、42のスイッチ動作によらず遮断するように制御する。
【0060】
以上のような構成からなるバッテリパック30に用いられる、本発明が適用された保護素子1は、
図9に示すような回路構成を有する。すなわち、保護素子1は、第1の電極11がバッテリスタック35側と接続され、第2の電極12が正極端子30a側と接続され、これにより可溶導体5がバッテリスタック35の充放電経路上に直列に接続される。また、保護素子1は、発熱体3が第2の発熱体電極16を介して電流制御素子37と接続されるとともに、発熱体3がバッテリスタック35の開放端と接続される。これにより、発熱体3は、一端を発熱体引出電極4、可溶導体5及び第1の電極11を介してバッテリスタック35の一方の開放端と接続され、他端を第2の発熱体電極16を介して電流制御素子37及びバッテリスタック35の他方の開放端と接続され、電流制御素子37によって通電が制御される発熱体3への給電経路が形成される。
【0061】
[保護素子の動作]
バッテリパック30に定格を超える過電流が通電されると、保護素子1は、可溶導体5が自己発熱により溶融し、バッテリパック30の充放電経路を遮断する。
【0062】
また、検出回路36がバッテリセル31〜34のいずれかの異常電圧を検出すると、電流制御素子37へ遮断信号を出力する。すると、電流制御素子37は、発熱体3に通電するよう電流を制御する。保護素子1は、バッテリスタック35から、第1の電極11、可溶導体5及び発熱体引出電極4を介して発熱体3に電流が流れ、これにより発熱体3が発熱を開始する。保護素子1は、発熱体3の発熱により可溶導体5が溶断し、バッテリスタック35の充放電経路を遮断する(
図3)。
【0063】
このとき、過電圧時における発熱体3による溶断時において、保護素子1は、従来一つであった発熱体を複数に分割して形成することにより、同等の発熱量を維持しつつ発熱による絶縁基板2に対する熱衝撃を緩和することができる。したがって、保護素子1は、大電流容量に対応するために可溶導体5を大型化するとともに、発熱体3の電力を増大させた場合にも、可溶導体5の溶断に要する時間が延びることもなく、また、絶縁基板2に割れが生じ難くなり、安定した発熱動作を奏する。
【0064】
また、保護素子1は、発熱体引出電極4が、絶縁部材13を介して複数の発熱体3間に跨って一部重畳する位置に形成されることにより、絶縁部材13を介して各発熱体3の熱が効率よく伝わり、速やかに可溶導体5を加熱、溶融させることができる。また、保護素子1は、発熱体3の熱がより発熱体引出電極4及び可溶導体5へ伝わりやすくなることから、絶縁基板2に対する熱衝撃も緩和され、絶縁基板2や発熱体3の割れの発生を防止することができる。
【0065】
また、保護素子1は、可溶導体5を高融点金属と低融点金属とを含有させて形成することにより、溶融した低融点金属による高融点金属の溶食作用を利用して短時間で溶断することができる。
【0066】
なお、保護素子1は、可溶導体5が溶断することにより、発熱体3への給電経路も遮断されるため、発熱体3の発熱が停止される。
【0067】
本発明に係る保護素子は、リチウムイオン二次電池のバッテリパックに用いる場合に限らず、電気信号による電流経路の遮断を必要とする様々な用途にももちろん応用可能である。
【0068】
[第2の実施例]
また、本発明が適用された保護素子は、
図10に示すように、発熱体引出電極4、絶縁層13、及び絶縁基板2を貫き、可溶導体5の溶融導体5aを吸引する吸引孔51を設けてもよい。なお、以下の説明において上述した保護素子1と同じ部材については同じ符号を付して、その詳細を省略する。
【0069】
吸引孔51が設けられた保護素子50は、可溶導体5が過電流による自己発熱、あるいは過電圧に伴う発熱体3の発熱により溶融すると、毛管現象によってこの溶融導体5aを吸引孔51内に吸引し、溶融導体5aの体積を減少させる。保護素子50は、大電流用途に対応するために可溶導体5の断面積を増大させることにより、溶融量が増大した場合にも、吸引孔51に吸引させることで、溶融導体5aの体積を減少させることができる。
【0070】
これにより、保護素子50は、可溶導体5を速やかに、かつ確実に溶断することができる。また、保護素子50は、過電流に伴う自己発熱遮断時に生じるアーク放電による溶融導体5aの飛散を軽減し、絶縁抵抗の低下を防止するとともに、可溶導体5の搭載位置の周辺回路への付着による短絡故障を防止することができる。
【0071】
吸引孔51は、内面に導電層52が形成されている。導電層52が形成されることにより、吸引孔51は、溶融導体5aを吸引しやすくすることができる。導電層52は、例えば銅、銀、金、鉄、ニッケル、パラジウム、鉛、錫のいずれか、又はいずれかを主成分とする合金によって形成され、吸引孔51の内面を電解メッキや導電ペーストの印刷等の公知の方法により形成することができる。
【0072】
また、吸引孔51は、絶縁基板2の厚さ方向に貫通する貫通孔として形成されることが好ましい。これにより、吸引孔51は、溶融導体5aを絶縁基板2の裏面2b側まで吸引することができ、より多くの溶融導体5aを吸引し、溶断部位における溶融導体5aの体積を減少させることができる。なお、吸引孔51は、非貫通孔として形成してもよい。
【0073】
また、
図11に示すように、吸引孔51は、絶縁基板2の表面2aに絶縁層13を介して積層された発熱体引出電極4の幅方向の中央に設けられる。なお、吸引孔51は、複数設けることで、可溶導体5の溶融導体5aを吸引する経路を増やし、より多くの溶融導体5aを吸引することで、溶断部位における溶融導体5aの体積を減少させるようにしてもよい。ここでは、複数の吸引孔51が直線状に一列に並んで設けられている。
【0074】
また、吸引孔51の内面に設けられた導電層52は、発熱体引出電極4と連続されている。したがって、保護素子50は、発熱体引出電極4に凝集した溶融導体5aを、導電層52を介して吸引孔51内に導きやすくすることができる。
【0075】
また、絶縁基板2の裏面2bには、吸引孔51の導電層52と接続された裏面電極53が形成されている。
図12に示すように、裏面電極53は、導電層52と連続することにより、可溶導体5が溶融すると、吸引孔51を介して移動した溶融導体5aが凝集する。これにより、保護素子1は、より多くの溶融導体5aを吸引し、溶断部位における溶融導体5aの体積を減少させることができる。
【0076】
なお、保護素子50は、発熱体3を、絶縁基板2の表面2a、裏面2b又は絶縁基板2の内部に設けてもよい。
【0077】
発熱体3は、絶縁基板2の裏面2bに設ける場合、一端が裏面電極53と連続するとともに、導電層52及び発熱体引出電極4を介して可溶導体5と電気的に接続され、他端が裏面2bに設けられた第2の発熱体電極16と接続される。同様に、発熱体3は、絶縁基板2の内部に設ける場合、一端が第1の発熱体電極15及び発熱体引出電極4を介して可溶導体5と電気的に接続され、他端が第2の発熱体電極16と接続される。
【0078】
発熱体3を絶縁基板2の裏面2bに形成することにより、保護素子50は、裏面電極53が発熱体3によって加熱されることにより、より多くの溶融導体5aを凝集しやすくなる。したがって、保護素子50は、発熱体引出電極4から導電層52を介して裏面電極53へ溶融導体5aを吸引する作用を促進させ、確実に可溶導体5を溶断することができる。
【0079】
また、発熱体3を絶縁基板2の内部に形成することにより、保護素子50は、導電層52を介して発熱体引出電極4及び裏面電極53が発熱体3によって加熱されることにより、より多くの溶融導体5aを凝集しやすくなる。したがって、保護素子50は、発熱体引出電極4から導電層52を介して裏面電極53へ溶融導体5aを吸引する作用を促進させ、確実に可溶導体5を溶断することができる。
【0080】
また、保護素子50は、吸引孔51内に可溶導体5と同一若しくは類似の材料又は可溶導体5より融点の低い予備ハンダ55、あるいはフラックスを充填してもよい。保護素子50は、発熱体3が発熱したとき、熱伝導に優れる導電層52や発熱体引出電極4や裏面電極53が絶縁基板2より先に温度が高くなることによって、予備ハンダ55等が可溶導体5より先に溶融し、溶融導体5aを吸引孔51に呼び込むことができる。これにより、溶融導体5aは、絶縁基板2の表面2aから裏面2bに移動し、姿勢に拘わらず、第1の電極11と第2の電極12との間の電流経路を確実に遮断することができる。
【実施例】
【0081】
次いで、本発明の実施例について説明する。本実施例では、絶縁基板上に2つの発熱体が分割配置されるとともに、発熱体引出電極が2つの発熱体間に跨って重畳配置された保護素子(実施例:
図1参照)と、絶縁基板上に2つの発熱体が分割配置されるとともに、発熱体引出電極が2つの発熱体間に発熱体と重畳せずに配置された保護素子(比較例:
図13参照)を用意し、発熱体の発熱による溶断時間を測定した。
【0082】
実施例及び比較例に係る保護素子は、いずれも絶縁基板として表面に2つの発熱体が設けられたセラミック基板を用いた。また、第1、第2の電極間にわたって支持される可溶導体として、厚さ0.35mm、幅5.4mmのSn‐Ag‐Cu系金属箔に厚さ6μmのAgメッキ処理を施したものを用いた。可溶導体と各電極とはハンダによって接続した。また、第1、第2の電極は、PPS製の外筐体によって支持した。
【0083】
これら実施例及び比較例に係る保護素子に対して、32W、100Wの電力を印加し、発熱体の発熱によって可溶導体を溶断させた。測定結果を表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
表1に示すように、実施例に係る保護素子では、印加した電力が32W、100Wのいずれの場合も比較例に比して溶断時間が短くなった。一方、比較例に係る保護素子では、100Wの電力を印加した場合に、半数のサンプルで絶縁基板に割れが発生し、可溶導体を溶断することが出来なかった(NG)。
【0086】
これは、実施例においては、発熱体引出電極を発熱体に重畳して配置したことから、発熱体引出電極に、絶縁部材を介して各発熱体の熱が効率よく伝わり、速やかに可溶導体を加熱、溶融させることができたことによる。また、実施例では、発熱体の熱がより発熱体引出電極及び可溶導体へ伝わりやすくなることから、100Wの電力を印加した場合にも、絶縁基板に対する熱衝撃も緩和され、絶縁基板や発熱体の割れの発生を防止することができた。
【0087】
一方、比較例においては、発熱体引出電極が2つの発熱体間に発熱体と重畳せずに配置されているため、発熱体引出電極への発熱体からの熱の伝導効率が下がり、実施例に比して溶断時間が延びた。加えて、比較例では、発熱体の熱が絶縁基板に蓄積されやすく、100Wの電力を印加した場合に、絶縁基板に対する熱衝撃が過大となり、半数のサンプルにおいて絶縁基板に割れが発生し可溶導体を溶断することが出来なかった。
【0088】
これより、絶縁基板上に複数の発熱体が分割配置されるとともに、発熱体引出電極を各発熱体間に跨って重畳配置させる構成が、速溶断性、及び絶縁基板に対する熱衝撃を緩和し安定した発熱動作を確保するうえで有効であることが分かる。