(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576619
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】電気化学堆積のための現場でのフィンガプリントを採取する電気化学分析法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20190909BHJP
C25D 21/12 20060101ALI20190909BHJP
G01N 27/48 20060101ALI20190909BHJP
G01N 27/02 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
G01N27/416 341B
G01N27/416 300M
C25D21/12 C
G01N27/48 Z
G01N27/02 Z
【請求項の数】13
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-121168(P2014-121168)
(22)【出願日】2014年6月12日
(65)【公開番号】特開2015-11026(P2015-11026A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2017年3月7日
(31)【優先権主張番号】13174725.5
(32)【優先日】2013年7月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509205238
【氏名又は名称】アンコーシーズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】シュタール,ユルク
(72)【発明者】
【氏名】シュレーダー,ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】リヒター,フレート
【審査官】
田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭59−026660(JP,B2)
【文献】
特開平11−092947(JP,A)
【文献】
特開2006−283151(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/019980(WO,A1)
【文献】
特開昭57−153255(JP,A)
【文献】
特開2001−108653(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0200171(US,A1)
【文献】
特開平05−080028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解堆積プロセスの品質を監視及び制御するための、電気化学分析法であって、
前記電気化学分析法は、化学物質及び/又はプロセスが正常想定範囲内で動作しているかどうかの指標を得るための、電解堆積プロセス中の出力信号のフィンガプリント分析法を使用し、
前記方法は、前記電気化学分析法の1つ以上の作用電極(11)として、前記電解堆積プロセス自体の1つ以上の基板を利用し、前記1つ以上の基板は、1つ以上の基板ウェハ又はプリント回路基板又はインターポーザ又はいずれの他の形の電子基板を備え、
a)前記1つ以上の作用電極(11)と1つ以上の参照電極(13)との間の電位を分析して、時間の関数としての電位差として表される出力信号フィンガプリントを提供するか、
b)前記1つ以上の作用電極(11)と対電極(12)の間に電流及び/又は電位の形で入力エネルギを提供するプロセス電源(14)の入力電力を提供し、
前記方法は、前記1つ以上の作用電極(11)と、前記1つ以上の参照電極(13);前記1つ以上の対電極(12)のうちの少なくとも一方との間の電位を利用して、前記電解堆積プロセス自体の出力信号フィンガプリントを提供する、電気化学分析法。
【請求項2】
a)入力電源を、前記1つ以上の基板と前記1つ以上の対電極(12)の間に接続して、電流及び/又は電位のばらつきの追加の源を供給し、前記電流及び/又は電位のばらつきを使用して、前記プロセスのみによって提供される情報以上の情報を提供する波形を生成することにより、分析を補助するか、
b)前記1つ以上の基板と前記1つ以上の対電極(12)の間の電流又は電位を、追加の入力信号として使用する、請求項1に記載の電気化学分析法。
【請求項3】
前記入力電力の追加の波形を、プロセス波形と重畳し、
前記電流及び/又は電位のばらつきの追加の源を供給することによって前記プロセス波形を強化するために、前記追加の波形を使用し、
前記電流及び/又は電位のばらつきを使用して、前記プロセス波形のみによって提供される情報以上の情報を提供する波形を生成することにより、前記分析を補助する、請求項1又は2に記載の電気化学分析法。
【請求項4】
前記化学物質及び/又は前記プロセスが想定範囲内で操作されているか、又は前記操作の異常範囲に接近しているか若しくは前記操作の前記異常範囲に既に入ったかについての情報を提供する定量的な品質予測値を生成するために使用されるモデルに、前記出力信号を供給する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気化学分析法。
【請求項5】
前記プロセス電源の調整による堆積プロセスの制御を提供するために、システムは、前記品質予測値を、堆積システムでフィードバックして使用する、請求項4に記載の電気化学分析法。
【請求項6】
製品品質パラメータを前記モデルにフィードバックして、好ましいプロセスの結果と好ましくないプロセスの結果の間の分別を前記モデルが精密化するのを援助し、より多くのデータが前記モデルにフィードバックされるにつれて前記モデルが前記好ましいプロセスの結果と前記好ましくないプロセスの結果の間の相違を狭めることを可能にすることによって、前記モデル及び前記品質予測値は、正常挙動と異常挙動とを区別するために、経時的に学習するように設計される、請求項4または5に記載の電気化学分析法。
【請求項7】
酸を主成分とする電解質の汚染物質分析法であって、少なくとも1つの電気化学的に活性な汚染物質の存在を示すために、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電気化学分析法によって前記電解質の電気化学的フィンガプリントを取得し、取得された前記電解質の電気化学的フィンガプリントを使用する、前記汚染物質分析法。
【請求項8】
前記酸を主成分とする電解質は、以下の酸:蟻酸;エタン酸;プロパン酸;ブタン酸;メタンスルホン酸;エタンスルホン酸;プロパンスルホン酸;2−プロパンスルホン酸;ブタンスルホン酸;2−ブタンスルホン酸;ペンタンスルホン酸;クロロペンタンスルホン酸;2−ヒドロキシエタン−1−スルホン酸;2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸;2−ヒドロキシブタン−1−スルホン酸;2―ヒドロキシペンタンスルホン酸;アリルスルホン酸;2−スルホ酢酸;2−又は3−スルホプロピオン酸;スルホコハク酸;スルホ−マレイン酸;スルホフマル酸;ベンゼンスルホン酸;トルエンスルホン酸;キシレンスルホン酸;ニトロベンゼンスルホン酸;スルホ安息香酸;スルホサリチル酸;及びベンズアルデヒドスルホン酸のうちの少なくとも1つの溶液を含む、請求項7に記載の汚染物質分析法。
【請求項9】
前記出力信号を用いて、前記堆積プロセスのために使用される前記電源(14)を制御する、請求項1に記載の電気化学分析法。
【請求項10】
1つ以上の作用電極(11)、1つ以上の対電極(12)1つ以上の参照電極(13)、電源(14)及び1つ以上の基板を備える、電解堆積のための電気化学システムであって、
前記参照電極はpH電極であり、
前記1つ以上の作用電極(11)として前記電解堆積のプロセス自体のための前記1つ以上の基板を利用し、前記1つ以上の基板は、1つ以上の基板ウェハ又はプリント回路基板を備え、
前記プロセス電源(14)の入力電力は、前記1つ以上の作用電極(11)と前記1つ以上の対電極(12)との間に電流及び/又は電位の形で入力エネルギーを提供し、
前記システムは、前記1つ以上の作用電極(11)と、前記1つ以上の参照電極(13);又は前記1つ以上の対電極(12)のうちの少なくとも一方との間の電位を分析して出力信号を提供できる、電気化学システム。
【請求項11】
1つ以上の作用電極(11)、1つ以上の参照電極(13)、1つ以上の対電極(12)及び1つ以上の基板を備える、電解堆積のための電気化学システムであって、
前記参照電極はpH電極であり、
前記1つ以上の作用電極(11)として前記電解堆積のプロセス自体のための前記1つ以上の基板を利用し、前記1つ以上の基板は、1つ以上の基板ウェハ又はプリント回路基板を備え、
前記システムは、
前記1つ以上の作用電極(11)と前記1つ以上の参照電極(13)との間の電位を分析して出力信号を提供でき、
前記出力信号は、第2のパラメータの関数としての1つのパラメータとして表され、
前記パラメータは以下の群:電位差;時間;温度;電流;インピーダンスの実数成分;インピーダンスの虚数成分;周波数の群から選択される、電気化学システム。
【請求項12】
前記プロセス電源(14)と並列に、又は前記1つ以上の基板と前記1つ以上の対電極(12)との間に、入力電力の追加の電源(15)を接続し、
前記入力電力の前記追加の電源(15)を用いて、追加の電流及び/又は電圧のばらつきを供給する、請求項10または11に記載のシステム。
【請求項13】
分からナノ秒の範囲の取得速度でデータを処理するための高速信号処理デバイスが使用され、
前記データは、前記電解堆積プロセスに対する入力パラメータであるプロセスパラメータの、オンに関する決定を行うか又は修正を行うために使用されるデータである、請求項1に記載の電気化学分析法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解若しくは無電解堆積技術又は電気化学エッチング技術を使用する製品(基板)処理の、浴組成物、ハードウェアの準備状態及びフィンガプリントを含むめっきプロセスの品質を監視及び制御するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学堆積又はエッチングプロセスのプロセス制御のための従来技術では、各プロセスパラメータを制御限界に対して個別に評価している。例えば、電解質の各成分の濃度を監視するために浴分析ツールを使用し、堆積時間、浴温等のプロセスパラメータを監視するために堆積ツールを使用している。この複雑な工業的な使用は、高い誤警報率の原因となる単変量アプローチである。
【0003】
電気化学堆積技術を使用して製品の一部分に堆積したコーティングを有する多くの製品が製作されている。以下で説明するように、これらの技術は、基板部分上に金属及び合金等の材料の層を堆積させるために使用される。基板部分は、金属部分、プラスチック部分、プリント回路基板、マイクロ電子デバイスを製造するためのウェハ、又はこのような何らかの他の基板を含むことができる。
【0004】
マイクロ電子デバイスは、シリコンウェハ等の基板上において複数の材料の層を堆積及び除去して多数の個別デバイスを製作することによって製造される。例えば、フォトレジスト、導電材料及び誘電材料の層を堆積、パターン化、エッチング、平坦化する等して、基板に及び/又は基板上に特徴部分を形成する。特徴部分は、集積回路(IC)、MicroElectroMechanical Systems(MEMS)及び他のマイクロエレクトロニクス構造を形成するように配置される。
【0005】
通常、湿式化学プロセスを使用して、マイクロエレクトロニクス基板上に特徴部分を形成している。湿式化学プロセスは、一般に、清浄、エッチング、電気化学堆積及びすすぎの組み合わせのための複数の処理チャンバを有する湿式化学処理ツール内で実施される。電気化学堆積プロセスとしては、基板に電流が加えられる電解堆積、及び基板に外部電流が供給されない無電界堆積が挙げられる。これらのプロセスでは、基板に堆積する材料を供給する電解質を含むチャンバ内で基板を浸漬する。また、電解質及び基板を通過する電流を反転させることによって、又は適切なエッチング液を供給することによって、基板から材料を除去できる。アプライド・マテリアルズ社によって提供されるRaider(登録商標)システム、ラムリサーチ社によって提供されるSabre(登録商標)システム、Tel/Nexx社によって提供されるStratus(登録商標)システム、又は同様の処理ツール等のウェハ製造機器でこれらのプロセスを行うことができる。
【0006】
通例では、前記のプロセスの1つで使用される電解質の化学成分又は化学的活性を監視する機能が含まれる。このような監視を行うことにより、電解質をその寿命全体を通して使用する場合に複数の基板において一貫した処理が維持されるように、電解質の化学成分の濃度を制御する。通常は、特に、特定の組み合わせの電解質の各構成成分のために、及びその特定の電解質に存在する成分の濃度のために、分析の技術を発展させる必要がある。電解質の各成分のための、電気分析、HPLC及び滴定技術を使用する分析技術又は方法の実施は、時間がかかり、高価となる可能性がある。更に、市販されている一部の添加剤は2つ以上の構成成分を有し、化学種の予備知識なしにこの構成成分を分離することは不可能な場合がある。各成分の濃度変化に応じて及び電解質寿命に応じて成分間で発生し得る複数の相互作用のために、これらの電解質の各化学成分の監視は複雑なものとなる。電解質の経時変化は、酸化、還元若しくは触媒活性による成分の1つ以上の分解をもたらし、又は電解質の寿命にわたって電解質と接触するハードウェア若しくは基板との、若しくは他の汚染物との相互作用を伴う場合がある。
【0007】
電解質の成分を監視するいくつかの方法は、電気分析法を用いる。古典的なアプローチでこれらの電気分析法を使用する際の1つの制限は、化学成分濃度が「規格内で」あるかどうかを決定するために電気分析法を使用する前に、化学物質及びシステムの適切な動作範囲のいくつかを事前に把握する必要があることである。通常、これらの濃度範囲は、電解質の複数の成分の濃度を変化させることによって、及び各トレーニング電解質を分析して分析結果への濃度変化の影響を決定することによって、化学溶液の「トレーニングセット」を製作するために使用される。このような方法は、電解質の成分の数、並びにこれらの成分間の複数の相互作用及び他の成分の濃度を表すために生成される応答のために、トレーニングセットとして使用される法外な数のサンプルを、非常に短時間でもたらすことができる。古典的には、電解質中の各公知の成分の濃度を表すために、別個の電気分析法が利用されている。Technic社によって提供されているReal Time Analyzer(RTA)、ECI Technology社によって提供されているQualiーLine(登録商標)システム、Ancosys社によって提供されているAncolyzer(登録商標)システム、又は同様の解析ツール等の化学分析機器で、これらの電気化学分析を行うことができる。
【0008】
電気分析法を単純化して、化学成分の濃度を表すために使用する、通常使用される1つのアプローチは、電気化学応答の1つの特定の態様を選択して、その態様を成分濃度に関連づけることである。利用される応答の態様としては、例えば、特定の応答ピークの高さ、特定の応答曲線下の面積、又は2つの応答ピークの高さの比率を挙げることができる。このアプローチは、指定されたパラメータの、1つ以上の電解質成分の変化する濃度への関連づけを、より単純にするが、結果として、電気分析技術によって生成されたかなりのデータを無視することになる。これは、考慮されていない領域での応答の変化を評価する機会が失われることを意味する。これらの領域は、分解生成物、化学汚染物質等と関連した情報を包含する場合がある。
【0009】
図1は、マイクロエレクトロニクス基板に金属を堆積する電気化学堆積ツールに直結された従来技術の分析及び薬注システムの略図を示す。この図では、電気化学堆積ツールの槽から出て、分析システム及び薬注システムを通過して循環するスリップストリームが示されている。分析システムは、溶液がスリップストリーム内を流れる際に溶液のサンプルを取り出せるように構成されており、薬注システムは、スリップストリームに1つ以上の化学成分を注入できるように構成されている。概略図は、例えばドイツ、プリーツハウゼンのAncosys社及びニュージャージー州、トトワのECI社によって製造されるシステム等の分析及び薬注システムを表すように作成される。
図2は、ロードアイランド州、プロヴィデンスのTechnic社のRTA(Real Time Analyzer)等の、異なる分析構成を示す略図である。この構成では、めっき槽内部の「プローブ」が、めっき溶液の電気分析を実施するように構成される。このプローブは、プローブの操作及びプローブによって生成される電気化学データの分析の操作を制御するコンピュータコントローラに接続される。
【0010】
様々な成分濃度を有する溶液のトレーニングセットを使用する通常のアプローチの更なる制限は、これらの溶液が通常、新鮮な複数の成分を混合して異なる濃度を有する複数の溶液を生成することによって作製されることである。このアプローチは、分析結果に対する電解質の経時変化のいかなる影響も無視するものである。電解質の経時変化は、電解質成分が電解システムのアノード及び/又はカソードと接触する際に、1つ以上の電解質成分の酸化及び/又は還元をもたらす可能性がある。また、電解質の経時変化としては、システム構成要素から、又はシステムが処理する製品基板(若しくはホルダ)からの浸出による、電解質に意図的に添加されなかった構成成分の増加が挙げられる。汚染物質が電解質に不注意に導入される可能性のある他の方法も存在する。電解質の経時変化は、ほとんどの工業的堆積プロセスの重要な態様であり、湿式堆積法を利用して製作される製品及び材料に発生する問題の多くの原因となる。浴の経時変化と関連した化合物の濃度を許容限界下に保つために、経時変化した電解質のある割合を基本的に廃棄し、新鮮な電解質と交換する「ブリード・アンド・フィード」技術の使用を把握することにより、浴の経時変化の影響にもかかわらず化学成分濃度を維持する重要性は理解できる。ブリード・アンド・フィード技術は、マイクロエレクトロニクス産業でよく見られ、マイクロエレクトロニクス産業では、分解生成物及び/又は浴汚染物質が低い値である定常条件に堆積プロセスの電解質を維持するために、この技術が使用されている。当然、電解質のブリード・アンド・フィード動作の使用は、化学物質の使用量、環境への影響及び関連コストを増加させる。
【0011】
電気分析の古典的な方法は、分析のためにシステムからの電解質のサンプル抽出を用いる。抽出されたサンプルが製品の処理で使用されている電解質と一致した組成を確実に有するようにするために、抽出には、流体サンプリングラインを通過して抽出点に一部の電解質を流すことが必要となる。また、前のサンプルの分析器汚染又は「記憶」を防止するために、通常、この電解質の一部を用いて分析機器をすすぐ。分析頻度が高い場合、又はシステムのフラッシング及び分析に必要とされる電解質の量が多い場合には、分析システムの動作は、分析目的に消費される電解質の量により、ブリード・アンド・フィード型の動作を効果的にもたらすことができるが、この動作には、新鮮な電解質を補充する必要がある。
【0012】
分析の間に使用される参照電極又は作用電極の変化によって、上記電気分析法が複雑なものとなる場合がある。参照電極は、それが接触する電解質と適合するように選択される必要があり、一貫した結果を維持するために、その寿命にわたって維持される必要がある。作用電極は、通常、電気機械回転機構を備える回転ディスク電極で構成され、表面粗さ又は電極の完全性が経時的に変化する。
【0013】
回転ディスク電極が電気分析法の作用電極として使用される場合には、電極は、一般的に、ある測定から次の測定まで一貫した結果を維持するために、洗浄及び調節される。それでも、結果を監視し、電極ドリフトの影響を頻繁に較正及び/又は排除すること、並びにより厳密な保守手続を実現する時期又は電極を交換する時期を知ることは、重要である。電極の表面積の変化は、例えば、化学物質の変化に起因しない測定される応答の変化を引き起こす可能性がある。
【0014】
特許文献1は、電気めっき槽の光沢剤及び平滑化剤の量を分析する直接的な方法を教示している。この方法によると、各浴槽に既知の異なる量の光沢剤及び平滑化剤が含まれる複数のめっき槽が作成される。以下、各浴槽ごとに、対電極、洗浄された作用電極及び参照電極が提供されて、浴槽に浸漬され、そして、各浴槽ごとに、測定されたエネルギー出力値が、光沢剤の量、初期エネルギー出力及びエネルギー出力の変化と関連づけられる。これらの値に基づいて、平滑化剤及び光沢剤の量が、未知量の光沢剤及び平滑化剤の浴槽で決定される。この方法では、異なる作用電極、すなわち、複数の各めっき槽のために1つの作用電極が使用される。作用電極は、適切な金属ディスクである。
【0015】
特許文献2は、めっき及び堆積後、並びに腐食の間、金属表面の状態を評価する方法に関する。基板上に既に堆積したアルミニウムのような金属を、金属を腐食するイオンを含有する溶液と接触させる。半導体基板として機能する半導体ウェハ上に配線するための金属薄層であるアルミニウム合金層の電極電位が、金属を腐食するイオンを含有する溶液中で測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5223118号
【特許文献2】欧州特許出願公開第0760473(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、浴組成物、プロセスチャンバ及び/又は基板上の膜形成プロセスを含む、電気化学堆積及び/又はめっきプロセスの品質を監視及び制御する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、時間に応じた電位差として表される出力信号フィンガプリントを提供するために、1つ以上の作用電極として1つ以上の基板を利用して、電気化学堆積及び/又はめっきプロセス中に、1つ以上の作用電極と1つ以上の参照電極の間の電位を分析する電気化学分析法に関する。この電気化学分析法は、化学物質及び/又はプロセスが正常想定範囲内で動作しているかどうかの指標を得るためのフィンガプリント分析法を使用する。本方法は、電気化学分析法の1つ以上の作用電極として、堆積及び/又はめっきプロセス自体の基板のうちの1つ以上を利用する。
【0019】
好ましくは、この第1実施形態の1つ以上の基板は、1つ以上の基板ウェハ又はプリント回路基板を含む。
【0020】
更に、入力電源を、1つ以上の基板と1つ以上の対電極の間に接続できる。電流及び/又は電位のばらつきの追加の源を供給することによってプロセス分析を強化するために、この追加の入力電源を使用する。この電流及び/又は電位のばらつきを使用して、プロセスのみによって提供される情報以上の情報を提供する波形を生成することにより、分析を補助する。
【0021】
また、1つ以上の基板と1つ以上の対電極の間の電流又は電位を、追加の入力信号として使用できる。
【0022】
また、本発明は、1つ以上の作用電極として1つ以上の基板を利用し、また1つ以上の作用電極と対電極の間に電流及び/又は電位の形で入力エネルギーを提供するプロセス電源の入力電力を利用する電気化学分析法に関する。本方法は、1つ以上の作用電極と、1つ以上の参照電極又は1つ以上の対電極の少なくとも1つとの間の電位を利用して、出力信号を提供する。本実施形態では好ましくは、1つ以上の基板は、1つ以上の基板ウェハを含む。
【0023】
電気化学分析システムは、化学物質及び/又はプロセスが正常想定範囲内で動作しているかどうかの指標を得るためのフィンガプリント分析法を使用してもよい。
【0024】
入力電力の追加の波形を、プロセス波形と重畳することが好ましい。電流及び/又は電位のばらつきの追加の源を供給することによってプロセス波形を強化するために、この追加の波形を使用する。この電流及び/又は電位のばらつきを使用して、プロセス波形のみによって提供される情報以上の情報を提供する波形を生成することにより、分析を補助する。
【0025】
化学物質及び/又はプロセスが想定範囲内で操作されているか、又は操作の異常範囲に接近しているか若しくは操作の異常範囲に既に入ったかについての情報を提供する定量的品質予測値を生成するために使用されるモデルに、電気化学分析法の1つ以上の出力を供給できる。
【0026】
本発明は、電解質及び/又は電気化学堆積若しくはエッチング用システムのフィンガプリントを採取するために、トレースデータ(電解質流量、温度、基板回転又は撹拌速度)及び電気分析データ(めっき又はエッチング電流、基板の電圧、電解槽電圧)を使用する方法であり、以下に対する品質モニタとして使用される:(a)基板、アノード等とのあらゆる接続を含むプロセスチャンバの準備状態;(b)マイクロ電子又は電子デバイスを製造するために使用されるシリコンウェハ又はプリント回路基板(PCB)等の基板上に実施される膜形成プロセスのフィンガプリント採取。
【0027】
本発明は、International SEMATECH Manufacturing Initiative(ISMI)の定義に従ったフィンガプリント法を含み、ISMIによると、「フィンガプリント」とは、「ある期間にわたってある速度でサンプリングされ、その時間枠のユニットの状態を表す結果を生成するために数学的技術のセットを使用して変換されて分析される、フィンガプリント採取される構成成分に関連するデータ変数のセット」である。したがって、フィンガプリントの主要特性は、以下の通りである:(a)明確に定義されたフィンガプリントは、その値が正常動作範囲外にある場合には、劣化している(又は変動している)構成成分を直接指摘する;(b)大部分の異常検出分類(FDC)システムとは対照的に、異常が検出される前にドリルダウンプロセスを開始できる;(c)フィンガプリントは多くの場合、ファブ顧客が一般に利用不可能なデータ及び非常に特殊な機器領域の知識を必要とするモデルを使用する。
【0028】
本発明は好ましくは、分析技術の作用電極として基板を利用する。本発明は、各電気分析測定のための作用電極として基板自体を利用することにより、測定ごとの作用電極の交換を可能にする。この技術は、製品が作用電極として実際に使用されるという事実のために、作用電極が製品自体を表すことが常に分かっているという利点を提供する。
【0029】
本発明の更なる態様は、堆積プロセスの間に基板に適用される波形に付加信号を重畳させる並列回路を提供する。本発明のこの形式では、小振幅の電流又は電圧掃引等の信号を、堆積のために使用される波形に付加できる。この重畳信号を使用して、出力信号を提供するために使用される入力エネルギーを修正する。この出力信号は、電気化学堆積システムを監視するために使用される。
【0030】
本発明の更に別の態様では、化学物質(浴健全性因子)及び/又はプロセス(機器健全性因子)が想定範囲内で操作されているか、又は操作の異常範囲に接近しているか、若しくは操作の異常範囲に既に入ったかについての情報を提供する定量的品質予測値を生成するために使用されるモデルに、電気化学分析法の1つ以上の出力を供給する。システムは、プロセス電源の調整による堆積プロセスの制御を提供するために、品質予測値を堆積システムでフィードバックして使用する。したがって、出力信号を使用して、堆積又はエッチングプロセス用の電源を制御するために使用されるフィードバックだけでなく、電解質へ基板を入れるための(例えば、基板を電解質と接触させる前に、電位が基板に適用される「ホットエントリ」のための)教示点を提供ができる。電源及び基板取扱デバイスは、所望のプロセスの結果を得るための主要構成要素である。この実施形態では、製品及び/又は試験基板の計測との相関が一度明らかにされると、電解質の寿命全体を通して発生する変化を補償するために、分析の測定特性を補償するように電源の出力を変化させることができる。代替として、フィードバックを使用して、低いプロセス性能と関連した出力限界に接近する場合に、プロセスの動作を停止してもよい。このように、本発明を有利に使用して、プロセスで使用される電解質の寿命を延長してもよいし、又は理想的な動作条件から離れて変動しているプロセスでの粗悪製品の製作を阻止してもよい。
【0031】
本発明の最後の実施形態では、プロセス電源の調整による堆積プロセスの制御を提供するために、方法は、品質予測値を、堆積システムでフィードバックして使用してもよい。モデル及び品質予測値は、正常挙動と異常挙動とを区別するために、経時的に学習するように設計される。製品品質パラメータをモデルにフィードバックして、好ましいプロセスの結果と好ましくないプロセスの結果の間の分別をモデルが精密化するのを援助し、より多くのデータがモデルにフィードバックされるにつれてモデルが好ましいプロセスの結果と好ましくないプロセスの結果間の相違を狭めることを可能にする。
【0032】
集められた情報を使用して、品質因子又は機器健全性因子を製作する。因子は、1クラスサポートベクタマシン(OC―SVM)、ロバスト主成分分析(ROBPCA)のような多変量統計アプローチについては、トレースデータの任意の組み合わせを含むことができる。品質因子を、電気分析結果、古典的化学分析結果、想定電気波形との比較等から作り出してもよい。電気化学堆積又は電気化学エッチングプロセスのために、トレースデータをグループ分けして、以下の種類の分析を可能にしてもよい:(a)接続、アノード品質、流速又は撹拌等を含むプロセスチャンバの準備状態;(b)電源の挙動/準備状態;(c)基板(特に、シード層、フォトレジスト、開口)の品質;(d)電気分析結果により決定された電解質の挙動。更に、製作されている製品を確実に十分な品質なものとするために、品質因子は監視される。品質因子/健全性因子が許容できない限界に向かっていると認められる場合には、品質因子を改良するために、プロセスを修正するように対応できる。トラブルシューティング及び/又は根本原因解析を最適化するために、フィンガプリントデータと製品の収率データ間の相関は必須である。
【0033】
本発明の更なる一態様では、ミリ秒からナノ秒の範囲でデータを処理する高速信号処理デバイスを使用する。高速信号処理デバイスの使用は、プロセスパラメータ(例えば、堆積電流)をオンにするか又は切り替えるために、特に有効である。必要とされるデータ速度は、監視されているプロセスパラメータ次第であるが、高速信号処理デバイスの機能は、ナノ秒から分までのデータ取得範囲にわたらなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】プロセス制御のために電解質サンプルを抽出して分析するように設計された従来技術の電気分析システムの概略図である(Ancolyzer/ECI)。
【
図2】その場で電解質を分析するように設計された第2の従来技術の電気分析システムの概略図である(RTA)。
【
図3a】包囲する上下の線が好ましい及び好ましくない品質の範囲を定めた電流I
p、電圧
UCell及びU
Rの線図であって、本発明の方法の原理を説明するための図である。
【
図4】本発明のハードウェアの実施形態の模式図である。
【
図5】良好な浴及び劣化した浴からの信号を示した、めっき基板のために使用されるプロセスと同様のプロセスを使用して獲得された電気化学分析応答曲線を示すグラフである。劣化した化学物質からの信号は、各印加電流で、より大きな偏りを、更に、13ASDの印加電流で、電位変動を示す。
【
図6】電気化学堆積反応器の参照電極13の実装形態の略図である。
【
図7】毛管22、及び毛管22を通過する電解質の流れを確保するポンプ25を有する電気化学堆積反応器10の参照電極13の実装形態の概略図である。
【
図8】膜21を有する電気化学堆積反応器10の参照電極13、13'の実装形態の概略図である。
【
図9】膜21及び毛管22を有する電気化学堆積反応器10の参照電極13、13'の実装形態の概略図である。
【
図10】4つの同心アノード12、12'、12''、12'''、及び参照電極13、13'、13''、13'''とカソード基板11近傍の間の毛管22を有する電気化学堆積反応器10の参照電極13、13'、13''、13'''の実装形態の概略図である。
【
図11】4つの同心アノード12、12'、12''、12'''、及びカソード11とアノード12、12'、12''、12'''の間の膜21分離を有し、参照電極13、13'、13''、13'''と電極表面近傍の間の毛管22を有する電気化学堆積反応器10の参照電極13、13'、13''、13'''の実装形態の概略図である。
【
図12】プロセス波形上への電気化学分析のための重畳波形を供給する並列回路を含む、本発明の代替実施形態の模式図である。
【
図13a】プロセス電流への分析電流の小さな乱れの重畳を伴った電気分析技術によるグラフのセットである。これらのグラフを生成するために、2%の電流密度のばらつきが、9ASDのプロセス電流に重畳された周波数の関数としてのインピーダンスのグラフである。
【
図13b】プロセス電流への分析電流の小さな乱れの重畳を伴った電気分析技術によるグラフのセットである。これらのグラフを生成するために、2%の電流密度のばらつきが、9ASDのプロセス電流に重畳された周波数の関数としてのインピーダンス位相シフトのグラフである。
【
図13c】プロセス電流への分析電流の小さな乱れの重畳を伴った電気分析技術によるグラフのセットである。これらのグラフを生成するために、2%の電流密度のばらつきが、9ASDのプロセス電流に重畳されたナイキスト線図、つまりインピーダンスの実数成分の関数としてのインピーダンスの虚数成分のグラフである。
【
図14】粗悪アノードの存在下ですずめっき浴を経時変化させた結果として、劣化したプロセス性能の可能性を表す信号が発生することを示した電気化学分析応答曲線のセットである。
【
図15】フォトレジストサンプルにさらされている化学物質による変化を表すデータから、信号を抽出してもよいことを示す電気化学分析応答曲線のセットを示したグラフである。
【
図16】好ましい参照電極13、すなわちpH電極(ガラス電極)の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、電解質及び/又は電気化学堆積若しくはエッチングのためのシステムのフィンガプリントを採取するために、電気分析技術を使用して、以下を表す品質モニタ又は健全性因子を作り出す方法である:(a)基板やアノード等とのあらゆる接続を含むプロセスチャンバの準備状態;及び/又は(b)シリコンウェハ、プリント回路基板、インターポーザ若しくは任意の他の形の電子基板等のマイクロエレクトロニクス基板に実施される膜堆積プロセスのフィンガプリント採取。本発明は、好ましくは、分析技術の作用電極11として、基板を利用する。本発明の一実施形態の略図が、
図3に示される。略図には、更に、対電極12、参照電極13、電源14、めっきチャンバ10、並びに電流及び電圧を測定するための機器16、17、18が含まれる。図は、電気プロセス変数の監視により生成された電気化学データを、プロセスパラメータ及びプロセスの結果を表す他のデータと共に、多次元モデルにどのように供給できるかを示す。モデルは、供給されたデータ上で動作するアルゴリズムを使用して、好ましいか又は好ましくないプロセスの結果を有するプロセスで次の製品が動作する可能性を表す品質予測をもたらすことができる。本発明は、電気分析測定のための作用電極11として基板自体を利用することにより、測定ごとの作用電極11の交換を可能にする。
図4には、本発明に有用であるハードウェアのセットの概略図を示す。
【0036】
図3aは、更に、本発明の方法の原理を説明するための図である。同図は、めっき電流I
p、好ましい品質の被覆基板のための、電解槽の想定電圧U
cell(細い黒線)、及び参照用の想定電圧U
R(細い黒線)を示す。U
cell及びU
Rの想定線は、上下の線によって各々包囲される。上下の線の間の領域が、好ましい品質の電解槽電圧U
cell又は参照の電圧U
Rの領域を定める。
【0037】
上の線より上の領域、及び下の線より下の領域では、被覆基板の想定品質は、好ましくない。
【0038】
別の基板の品質及びいくつかの基板の電流I
p及び/又は電圧U
cell若しくはU
Rを定めた後に、後続の基板の品質を、後続の基板のI
p又は電圧U
cell若しくはU
Rの測定により、予測できる。
【0039】
基板の品質及び電圧又は電流の各新しい決定が、結果として修正されたモデルをもたらすことになる。
【0040】
電流I
p、電圧U
cell又はU
Rは、
図3の測定機器16及び電圧計17、18で、測定される。
【0041】
電気化学測定のための作用電極として基板が使用される場合には、考慮に入れる必要のあるいくつかの制限及び複雑化が発生する。マイクロ電子デバイスの製造業者は、通常、同じ設備及び機器を使用して、複数の製品種を製造する。各製品種は、その特定の製品要求のために、固有の表面積及び場合によっては異なる動作波形を有する可能性がある。したがって、本発明の方法から一貫した結果を得るために、各製品種を、おそらくはルックアップテーブル等を使用して、別々に比較することが必要となる。製品をカテゴリに分類するために使用されるパラメータとしては、製品種、利用される1つ以上のプロセスチャンバ、前のプロセス機器パラメータ等を挙げることができる。分類された各パラメータの各値によって、又は単一のデータセットのあらゆるパラメータのあらゆる値を考慮する集合形で、データを考慮できる。加えて、例えば、リソグラフィプロセスでの正常な製造のばらつきを原因とした、ばらつきが製品種内に存在する可能性があり、このばらつきを、本明細書で説明される方法では考慮する必要がある。
【0042】
電気化学応答データの収集の際に作用電極11として製品基板を使用する1つの利点は、製品が、プロセスを分析するために使用されるデータを提供しているプロセス自体であるため、製品に実施されるプロセスを表す方法を作るか又は設計する必要がないことである。製品基板が、分析のために使用されているデータを生成するために使用されるプロセスそのものであるため、製品基板上で使用される狭い範囲にだけ発生する化学物質のいくつかの特性を捕捉不可能にする非常に低いか又は高い印加電流(又は電圧)の危険がない、
図5は、例えば、電気化学堆積及び分析の間に生成された2本の曲線を示す。これらの曲線は、好ましい電解質(1)と、いくつかの位置では堆積が生じ、残りの位置では堆積が生じていない基板をもたらした不良の電解質(2)との相違を示す。不良の電解質で堆積が開始されると、好ましい電解質での場合より、電位は高く上昇する。更に、最も高い電流密度の段階では、不良の電解質については、変動する電位が観察される。印加電流が9ASDより高い場合にだけ、電位変動が、方法の応答に認められ、基板上の問題による電位を明らかにする。
【0043】
図5に示された例は、パターン化シリコンウェハの断片を、複数の電流密度の段階で、電気化学堆積プロセスに供した実験から得られる。不良の浴は、正確にめっきされた(又は正常より高い)いくつかのバンプ特徴部分を伴ったウェハ上の結果をもたらし、残りは、非常に短いバンプを有することが観察された。プロセスに実行されたトラブルシューティングに基づき、不良の電解質による堆積物の相違は、正常な「好ましい」電解質と比較して、堆積プロセスの最も高い電流密度の段階でだけ発生することが観察された。不良の電解質は、堆積の最初の段階では、より高い電位を示すが、ほとんど堆積を発生させないいくつかの領域で問題がある可能性があり基板の残りの領域では正常に堆積することを明らかにする振動挙動を電位応答が示すのは、13ASDの段階だけである。これが、本明細書で開示される発明を非常に強力なものにする、製品基板の処理の間に取得されるこのデータ「フィンガプリント」の、製品上で観察される故障との、相関である。データは、プロセス制御を改善するために使用することが可能な、製品上のプロセスの性能の直接表示を提供する。
【0044】
この方法で作用電極11として製品基板を利用するために、1つ以上の作用電極11と電気化学的連絡をするように、参照電極13を堆積システムに組み込むことが望ましい。上記の説明では、製品基板は、作用電極11として説明された。また、全体としてシステムの性能を表すトレースデータの更に別のセットとして、(製品基板電極11と1つ以上のアノード12又は1つ以上の対電極の間の)電解槽電圧及び/又は電解槽電流を使用することも、本発明の範囲内にある。この点で、製品基板11と参照電極13の間、及び製品基板との対電極12の間の信号を、分析信号として利用する、
図4、6に示されたシステム等の、比較的簡単な電気化学処理システムを有することができる。また、対電極12と参照電極13の間の信号を含むことも可能である。
【0045】
図6に説明されるようなシステムを、複数のカソード11及び/又はアノード12を利用するシステム、又は特定の流体システムへの電解質の分離を提供する膜21を有するシステム等のより複雑な堆積システムに応用してもよいことが、当業者には理解される。システムに参照電極13を追加して複数のカソード11及び/又はアノード12の電位の測定を可能にすることが、望ましい場合がある。また、毛管22のデバイスを利用して、作用電極11の近接に参照電極13を有さずに、関連作用電極11の近くの電位差の測定を可能にすることが望ましい場合がある。これにより、堆積反応器自体での電界の破壊が最小な、電極の近くで電位を監視する方法が提供される。また、毛管22の電解質を混合させたまま、めっき電解質と同様の濃度に保つために、及び毛管22から気泡をパージするために、流体ポンプシステム25を参照電極13のための毛管22と関連させると有利な場合がある(
図7参照)。分析の理想的なシステムは、利用されている特定の堆積システムに幾分左右されることが、認識されるであろう。様々な堆積システムのためのいくつかの代表的な構成が、
図4、6〜12に示されている。
【0046】
1つ以上のイオン選択膜21を備える構成でシステムを使用する場合には、酸性溶液を含む流体システムの1つに電解質が存在してもよい。硫酸又はメタンスルホン酸等酸を主成分とした酸性溶液が、通常利用される。この場合、汚染又は電解質の変化を識別するために、この溶液を監視することが有利な場合がある。この点で、本発明の実施形態は、フィンガプリント分析技術を使用して、この電解質の汚染物質を識別する。このフィンガプリント分析技術は、分析のための作用電極として堆積システムの電極を利用してもよく、本出願の他の箇所で説明されるような、追加の分析波形を重畳する並列電子回路を任意に含んでいてもよい。例えば、システムの一部分である1つ以上の膜21を通過する材料の移動により、このような汚染物質が導入される場合がある。これは、正常動作、システム内の反応による汚染物質の生成に起因するか、又は汚染された供給材料をもたらす1つ以上の電解質構成成分による製造上の問題である可能性がある。本発明は、硫酸又はメタンスルホン酸等の酸を含む電解質中の有機化合物等の汚染物質の存在を識別する能力を提供する。この方法で試験可能な他の酸性電解質の例としては、蟻酸、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、及びRがC
1-5アルキル基又は炭素環構造である一般式(I)の脂肪族又は非ベンゼン脂環式化合物としてのスルホン酸が挙げられる。
【0047】
(X
1)
n−R−SO
3H ・・・(I)
【0048】
式中、X
1は、ハロゲン原子又はヒドロキシル、アリール、アルキルアリール、カルボキシル、若しくはスルホニル基であり、アルキル基の任意の位置にあってもよく、nは、0−3の整数である。これらの有機スルホン酸の例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、2−プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、2−ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸、クロロペンタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタン−1−スルホン酸、2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸、2−ヒドロキシブタン−1−スルホン酸、2―ヒドロキシペンタンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−スルホ酢酸、2−又は3−スルホプロピオン酸、スルホコハク酸、スルホ−マレイン酸、スルホフマル酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸、スルホサリチル酸、及びベンズアルデヒドスルホン酸が挙げられる。更に、本開示の他の箇所で説明されているように、本方法は、正常動作時の情報のトレーニングセットを生成することが可能であり、追加のデータを生成しシステムにフィードバックしながら「学習する」ことによって、経時的に汚染物質を識別する機能を精密化することが可能である。方法を使用して電解質サンプルを分析する際に、汚染されたか及び汚染されていない電解質のトレーニングセットを生成できる。トレーニングセットは、少なくとも1つの経時変化した電解質を含んでいてもよい。経時変化した電解質は、電気化学プロセスの電解質を使用することによってもたらされる。また、本出願の他の箇所で説明されているように、定量的品質因子、つまり浴健全性因子を、電解化学物質の品質を表すことができる本方法により製作されたデータから生成できることは明らかである。
【0049】
本発明の更なる態様は、汚染された電解質と汚染されていない電解質を区別するために、経時的に学習するように、モデル及び品質因子が設計されることである。電解質品質パラメータをモデルにフィードバックして、汚染された電解質と汚染されていない電解質の間の分別をモデルが精密化するのを援助し、より多くのデータがモデルにフィードバックされるにつれてモデルが汚染された電解質と汚染されていない電解質間の相違を狭めることを可能にする。プロセス出力の質を表すモデルを作り出すことができ、プロセスが動作し続ける間に、システムは経時的にプロセス挙動を学習できる。これにより、プロセスの不良モードの予備知識なしに、本方法により、プロセスを監視できる。プロセスに製作される製品によって何らかの問題が発生する場合には、モデルにフィードバックを提供することが、有利である。このようにして、欠陥のある製品が製作された場合に捕捉された応答は、観察される欠陥と関連づけることができ、システムが使用して、将来、このような限界が切迫する場合に製造業者に注意を与えるために使用できる適切な限界を設定できる。このようにして、一度不良情報がモデルへフィードバックされると、システムを使用して、不良の再発生を防止できる。
【0050】
処理されている間に、特定の製品基板と関連した各ベクトルのための情報を簡単に集めることによって、不特定数のプロセスベクトルからモデルを作り出すことができる。どのような値が特定のベクトルのために要求されるのか先験的に知る必要はない。情報が捕捉され、この情報が利用可能となるときに、良否の品質属性を特定の基板と関連づけることができる。このようにして、経時的に、好ましい及び好ましくない製品の結果とどの値が関連づけられるかについて、システムは、効果的に「学習する」。
【0051】
プロセスの適切な性能を確認するために、トレースデータを監視及び分析する。トレースデータ集めは規則的又は不規則的な瞬間でのサンプリング又は測定、並びに結果として得られる量の算出によって遂行される。第1段階では、トレースデータの各点に対する実行可能セットが、テストラン及び技術者の専門知識によって定められる。これにより、いくつかのデータ点のために単純な間隔が提供され、また残りの、例えば時間ベースのトレースデータのためのエンベロープによって説明されるコンパクトレンジのために、より複雑なセットが提供される。トレースデータ集合の各点が、その対応する実行可能セットに収まる場合には、プロセスは正常な実施の範囲内と位置づけられる。同様に、実行可能領域外に位置しているトレースデータの1つ以上の点によって、異常値又は異常挙動プロセスがそれぞれ識別される。
【0052】
次の段階では、重要業績評価指標(KPI)の定義を伴う、正常な挙動プロセスからのブレを最も厳密に反映するトレースデータから導かれる(局所的な)臨界範囲及び量を識別することによって、異常値の発生が分析される。これらのKPIに基づいて、今後のプロセスが実行可能かとどうかの先験的な判定に支援を提供する手順が確立される。フィッシャーの線形判別及び主成分分析(PCA)等の線形分類から、サポートベクタマシン(SVM)、ニューラルネットワーク及びベクトル量子化にわたる多種多様の安定した決定論的及び確率的分類モデルが存在し、判定モデルの定義の基礎として使用できる。
【0053】
成長するトレースデータ集合又はトレーニングセットに基づき判定閾値又は実行可能セットを適合させることによって、及び異常値の増加する多様性のために新しいKPIを追加することによって、経時的に判定モデルを精密化及び改良でき、結果として、モデルの次元の増加がもたらされる。本動作法の利点は、正常動作時に、トレーニングセットを製作できることである。その結果、プロセスが動作する間、経時的にトレーニングセット又は実行可能セットを強化及び改良でき、また、製品をプロセスにかける前に生成すべき大量のデータのトレーニングセットを必要としないため、プロセス立ち上げのコストが減少する。
【0054】
多くのチャンバのプロセスを監視しなければならない場合には、各チャンバのために独立に判定モデルが確立される。様々なチャンバの異なるプロセスを制御し、比較できるように、個別判定モデルの核は同一でなければならない。異なるか又は同じチャンバで作用する種々の製品のためのプロセスがある意味において類似しており、したがって、同じトレースデータによって評価されることを考慮すると、同じKPIを、異常値の固有の発生に関係なく、各チャンバで利用することが可能である。全体にわたって、例えば判定閾値及びエンベロープ等の実行可能セットだけがチャンバごとに異なる同じ判定モデルを使用できる。チャンバ特有の伝達機能を設計することによって、実行可能セットの形状のばらつきを調節でき、種々の製品のためのチャンバ整合及び制御プロセス用ツールが提供される。
【0055】
上記の説明は主に、電解堆積プロセスの分析のための、開示されるシステム及び技術の使用に関連していた。電解堆積プロセスでは、加えられた電流(又は電位)を使用して、基板上へ材料を堆積させるために必要なエネルギーを供給する。無電解堆積及び浸漬堆積として公知のプロセス群では、堆積のための原動力が、化学物質内の又は化学物質と基板間の電気化学的電位からもたらされる。これらのプロセスでは、外部の電気回路が一般的に存在せず、基板は、電気的にフローティング状態か、又は電解質を有する開回路となる。このようなシステムでは、基板が処理されている間、基板と流動的に連通して参照電極を設置し、基板と参照電極の間の電位を監視することによって、上記の発明を依然として適用できる。後述するように、システムへの対電極の追加は、また、低振幅の電流又は電位波形を、無電解又は浸漬堆積と一般的に関連した零電流条件に重畳する機能を提供する。システムへの適切な参照電極の追加によって、本発明の他の態様を、無電界堆積又は浸漬堆積プロセスに有利に適用できる。
【0056】
本発明を任意の従来技術と差別化する主な特性の1つは、ウェハ等の製品基板を、電気分析法のための作用電極として利用することである。これは、プロセス自体から生成されるデータを使用して、プロセス応答の「フィンガプリント」を採取するか又はプロセス応答を監視し、それらが正常動作範囲又は実行可能セット内かどうかを確かめることを意味する。更に、プロセス出力の質を予測するモデルへの入力としてシステムから又はシステムに関して集められる他の情報と、電気分析結果を組み合わせてもよい。製品が処理されている間に製品から電気化学データを捕捉し、単回使用の作用電極として電気化学分析のために効果的に製品自体を使用するこの方法は、独特であり、我々の知る限り、電気化学堆積産業で使用されていない。
【0057】
別の実施形態では、本分析法の主な差別化要因は、プロセス又は電解質のフィードバックを提供するために、トレーニングセットとしての多数の溶液の特性評価を必要としないことである。化学物質又はプロセスに関する情報を、経時的に収集し、以前に取得したデータのセットと比較できる。このようにして、出力データの正常範囲を決定して、更に、これらのデータを経時的に製作及び識別しながら、異常データを望ましくない化学的又はプロセス特性に関連づけることが可能である。
【0058】
本発明を使用して獲得される利点としては、すぐにプロセスを動作し始める機能が挙げられ、浴調整又は補充のために浴構成成分分析を使用可能にする電解質分析技術の大量の(及び高価な)特性評価の完成を待つことがない。また、本発明を使用して獲得される利点には、プロセスが動作している間に、基板単位の、迅速な品質フィードバックを得る機能が含まれる。また、長期にわたってプロセスが動作し、実行可能セットが増加する間に、プロセスの学習機能は制御システムを向上させる。また、電解質が使用されている間に電解質を監視する機能は、分析のためのサンプルを抽出せず、化学物質の消費を減少させて浴の寿命を極力長く保たせる機会を提供する。
【0059】
本発明の更なる態様は、堆積プロセスの間に基板に適用される波形に付加信号を重畳させる並列回路を提供する。この一例が、
図12に概略的に示されている。本発明のこの実施形態では、追加の源15から生じる、小振幅の電流又は電圧掃引等の信号を、堆積のために使用される波形に付加できる。続いて、この重畳信号を使用して、電気化学堆積システム及びプロセスを監視するために使用される出力信号を提供できる。
【0060】
プロセス波形と重畳する信号は、正常プロセス波形に付加される場合にプロセスの結果に不利な影響を与えないように設計される。このような考慮により、電流又は電位変化は、正常プロセス電流又は電位の10%までとなる。より好ましくは、電流又は電位の変化を、正常プロセス値の1%又は2%未満とすることができる。製品へのプロセスの影響は、個別的に決定される必要があり、実施されている特定のプロセス、プロセスの間に利用される波形のばらつきに対する製品の感度、及びプロセス波形に重畳されている特定の波形に左右されることになる。重畳される波形は、ほとんどの場合に電気化学堆積プロセスが施される製品に不利に影響を与えることなく、電気化学分析結果に追加の情報を提供するような方法で、決定されるべきである。
【0061】
正常プロセス波形に対して小さな変化を提供するように、重畳される波形は正常に選択されることになる。プロセス波形と重畳できる例示的な波形としては、時間依存三角波形状を有する低振幅の電圧若しくは電流掃引、時間依存正弦波形状を有する低振幅の電圧若しくは電流掃引、低振幅の電圧若しくは電流ステップ、様々な周波数での低振幅の電流変調、又は使用されているプロセス若しくは化学物質についての電気化学的情報を提供するために使用可能な電流及び/若しくは電位出力を提供する同様のばらつきが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
プロセス波形と重畳する追加の波形を提供する結果として、プロセスに及び/又は電気化学堆積若しくはエッチングプロセスで使用される1つ以上の電解質に、更なる電気化学分析を実施する機能を提供できる。これにより、電気化学インピーダンス分光法、サイクリックボルタンメトリ、ステップボルタンメトリ等の、分析結果の提供が可能となる。監視されている1つ以上の電解質の変化に、又はプロセス若しくはプロセスを実施するために使用されるハードウェアの変化に応答する可能性のある電気化学分析結果のセットを提供するように、1つ以上の適切な波形を選択できる。また、入ってくる製品に電気化学堆積プロセスを実施する際、このような製品のばらつきに分析結果が応答するであろうことも想定される。
【0063】
図5に示されるプロセスと同様の、すず−銀はんだ合金を堆積させるために使用される電気化学堆積プロセスの一部を代表する電気化学堆積プロセスに半導体ウェハ基板の一部を供する実験を実施した。9アンペア/平方デシメートル(ASD)の電流密度の段階を使用したが、小振幅の電流のばらつきを直流電流レベルと重畳させた。小振幅の電流のばらつきは、信号のインピーダンス分光分析を可能にするために、様々な周波数とした。この小振幅の信号は、直流電流レベルの2%の変化からなった。実験は、2つの化学物質サンプルによって実施された。一方は、半導体ウェハ基板上に好ましいプロセスの結果を提供し、他方は、同種の基板上に有害なプロセスの結果を提供した。第2溶液からの堆積は、二峰性の堆積挙動をもたらし、いくつかのバンプは、異常に薄い堆積厚さで堆積し、他のバンプは正常に堆積し、利用可能なわずかに増加した電流により厚いバンプがもたらされた。
【0064】
好ましい堆積物を提供する化学物質を使用してこの実験を実施した場合には、小振幅の電流のばらつきを正常直流電流に付加した後でも、堆積物は想定通りであった。したがって、これと同じアプローチを、現実の製品基板に使用できる。
【0065】
図13a〜cに見られるように、これらの2つのサンプルからの電気化学的結果に、著しい相違が存在した。この相違を、化学物質に問題がある場合を識別するために使用できる。この種のフィンガプリント分析は、通常プロセス電気波形に小さな修正を行うことによって、追加の能力を与える。
図13aは、上段で説明された2つの化学物質の、周波数の関数としての実インピーダンス値を示す。
図13bは、周波数に対してプロットされた位相角の相違を示す。
図13cは、インピーダンスの実数成分の関数としてのインピーダンスの虚数成分の形で、同じ2つの浴の結果の相違を示す。この図は、通常ナイキスト線図と呼ばれる。総合して、
図14に示すプロットは、操作により修正された、製品基板上に劣った結果をもたらす化学物質から、好ましい化学物質を差別化する機能を示す。
【0066】
上述したように、本明細書において説明される電気化学分析法は、以下のパラメータ:カソード若しくはアノードでの電気的接触抵抗、シード層の厚さ若しくは抵抗値、電源出力、製品汚染若しくは残渣、電解質の化学汚染物質、プロセスに接する表面積、又は電解質成分濃度のばらつきに感応性があってもよい。したがって、本明細書で説明される方法は、電気化学堆積プロセスの変化、又はプロセスのために使用される電解質の変化を監視する際に非常に強力である。
【0068】
表1:開示された分析法を使用して検出できる問題、この問題を診断するために使用できる影響、及びこの問題を検知した後に開始できる応答
【0069】
本発明の更に別の態様では、出力信号を使用して、堆積プロセス用に使用される電源を制御するために使用されるフィードバックを提供できる。この実施形態では、電解質の寿命全体を通して及び/又はアノードが使用又は消費されている間に、発生する(電流効率等の)変化を補償するために、分析の測定特性を補償するように電源の出力を変化させることができる。この動作モードによってプロセスを調節して、このような動作方式がなかったならばそうであったであろう寿命を越えて有用寿命を延長できる。分析の出力又は分析データに基づくモデルを使用して、製品をその規格内に保つためにプロセスの動作パラメータを調節できる。例えば、時が経つにつれて電解質が変化する場合には、製品上の所望の堆積物特性をプロセスがもたらし続ける方法で、電源出力を調節できる。
【0070】
本実施形態の一例としては、所望の金属を堆積するために必要な電位をシフトさせるように、めっきプロセスのために使用される電解質が経時的に変化する場合が挙げられる。この挙動は、
図14に見ることができ、例えば、不十分に設計されたアノードの使用は偏りをもたらし、又は堆積を開始するために増加した電位を必要とする。これは、
図5にも見ることができる。この状態をどのように検出するのか、及び所望の堆積物特性を維持するために電源パラメータをどのように調節するのかが一度明らかになると、この情報を使用して、許容可能な製品を製作する方法でプロセスを動作し続けることができる。代替として、電解質の状態が許容できない範囲へ変動しているが、規格限界にまだ到達していないことを分析技術が表す場合、分析の出力又は分析に基づくモデルを使用して、プロセスが制御下に戻るまで、追加の製品が動作するのを止めることができる。例えば、フォトレジスト成分等の、マイクロエレクトロニクス基板からの浸出、経時的な電解質の増加の場合に、この動作法は有利な可能性がある。より多くの基板が、例えば
図15に示されるようなプロセスにさらされるとき、このような状態は、所与の印加電位での電流を変化させる場合がある。
【0071】
本発明の更に別の実施形態では、集められた情報を使用して、堆積プロセスの、したがって更にマイクロエレクトロニクス基板上の堆積物の、品質を表す品質因子を製作する。品質因子を、電気分析結果、古典的化学分析結果、想定電気波形との比較等から作り出してもよい。更に、製作されている製品を確実に十分な品質なものとするために、品質因子は監視される。品質因子が許容できない限界に向かっていると認められる場合には、品質因子を改良するために、プロセスを修正するように対応でき、又はより好ましい品質因子を有する製品を製作するために、プロセスが修正され得るまで、製造を止めるように対応できる。
【0072】
独国特許出願公開第102012106831(A1)号に開示されるように、pH電極を参照電極として使用することが更に好ましい。pH電極として、ガラス電極又はemail電極を使用することが好ましく、本発明のガラス電極は、
図16に示されるように、漏出システム30、電極31、内部緩衝液又は電解質32及びガラス膜33を含む単純なガラス電極である。好ましいpH電極は、単線式測定体として標準的に使用される、非複合ガラス電極である。
【0073】
pH電極が好ましいのは、浴を汚染しないため、手入れ又は補充の必要がないため、長時間安定し、一般的なAg/AgCl電極又はカロメル電極のように。小電流を電極に印加した後電位を変化させないためである。更に、pH電極は、多くの場合堆積により欠陥品となるダイヤフラムを含まない。
【0074】
本発明は、1つ以上の作用電極11として1つ以上の基板を利用し、1つ以上の作用電極11と1つ以上の対電極12の間に電流及び/又は電位の形で入力エネルギーを提供するプロセス電源14の入力電力を利用した電気化学分析システムに関する。システムは、1つ以上の作用電極11と、1つ以上の参照電極13又は1つ以上の対電極12の少なくとも1つとの間の電位を分析する機能を有し、出力信号を提供する。好ましくは、1つ以上の基板は、1つ以上の基板ウェハ又はプリント回路基板を含む。電気化学分析システムは、化学物質及び/又はプロセスが正常想定範囲内で動作しているかどうかの指標を得るためのフィンガプリント分析法を使用する。
【0075】
追加の入力電源を、プロセス電源14と並列に接続できる。電流及び/又は電位のばらつきの追加の源を供給することによってプロセス電源14を強化するために、この追加の入力電源を使用する。この電流及び/又は電位のばらつきを使用して、プロセス波形のみによって提供される情報以上の情報を提供する波形を生成することにより、分析を補助する。化学物質(浴健全性因子)及び/又はプロセス(機器健全性因子)が想定範囲内で操作されているか、又は操作の異常範囲に接近しているか、若しくは操作の異常範囲に既に入ったかについての情報を提供する定量的品質予測値を生成するために使用されるモデルに、電気化学分析システムの1つ以上の出力を供給できる。プロセス電源の調整による堆積プロセスの制御を提供するために、システムは、品質予測値を、堆積システムでフィードバックして使用できる。正常挙動と異常挙動とを区別するために、経時的に学習するようにモデル及び品質予測値を設計できる。製品品質パラメータをモデルにフィードバックして、好ましいプロセスの結果と好ましくないプロセスの結果の間の分別をモデルが精密化するのを援助し、より多くのデータがモデルにフィードバックされるにつれてモデルが好ましいプロセスの結果と好ましくないプロセスの結果間の相違を狭めることを可能にする。
【0076】
また本発明は、第2パラメータに応じた一パラメータとして表される出力信号フィンガプリントを提供するために、1つ以上の作用電極11として1つ以上の基板を利用して、電気化学堆積、及び/又はめっきプロセス中に、1つ以上の作用電極11と1つ以上の参照電極13の間の電位を分析する機能を有する電気化学分析システムに関する。前記パラメータは、以下の群:電位差;時間;温度;電流;インピーダンスの実数成分;インピーダンスの虚数成分;周波数の群から選択される。1つ以上の基板は好ましくは、1つ以上の基板ウェハを含む。
【0077】
電気化学分析システムは、化学物質及び/又はプロセスが正常想定範囲内で動作しているかどうかの指標を得るためのフィンガプリント分析法を使用してもよい。
【0078】
入力電源を、1つ以上の基板と1つ以上の対電極12の間に接続できる。電流及び/又は電位のばらつきの追加の源を供給することによってプロセス分析を強化するために、追加の入力電源を使用する。この電流及び/又は電位のばらつきを使用して、プロセスのみによって提供される情報以上の情報を提供する波形を生成することにより、分析を補助する。
【0079】
好ましくは、化学物質(浴健全性因子)及び/又はプロセス(機器健全性因子)が想定範囲内で操作されているか、又は操作の異常範囲に接近しているか、若しくは操作の異常範囲に既に入ったかについての情報を提供する定量的品質予測値を生成するために使用されるモデルに、電気化学分析システムの1つ以上の出力を供給する。
【0080】
プロセス電源の調整による堆積プロセスの制御を提供するために、システムは、品質予測値を、堆積システムでフィードバックして使用してもよい。正常挙動と異常挙動とを区別するために、経時的に学習するようにモデル及び品質予測値を設計できる。製品品質パラメータをモデルにフィードバックして、好ましいプロセスの結果と好ましくないプロセスの結果の間の分別をモデルが精密化するのを援助し、より多くのデータがモデルにフィードバックされるにつれてモデルが好ましいプロセスの結果と好ましくないプロセスの結果間の相違を狭めることを可能にする。
【0081】
モデル及び品質予測値は、正常挙動と異常挙動とを区別するために、経時的に学習するように設計される。製品品質パラメータをモデルにフィードバックして、好ましいプロセスの結果と好ましくないプロセスの結果の間の分別をモデルが精密化するのを援助し、より多くのデータがモデルにフィードバックされるにつれてモデルが好ましいプロセスの結果と好ましくないプロセスの結果の間の相違を狭めることを可能にする。
【0082】
入力電力の追加の波形を、プロセス波形と重畳できる。電流及び/又は電位のばらつきの追加の源を供給することによってプロセス波形を強化するために、この追加の波形を使用する。この電流及び/又は電位のばらつきを使用して、プロセス波形のみによって提供される情報以上の情報を提供する波形を生成することにより、分析を補助する。
【0083】
また、本発明は、プロセス及び/又はプロセスで使用される電解質の電気化学的フィンガプリント採取の使用によって、プロセス性能を表す出力を提供することを含む、低コストのプロセス立ち上げ法に関する。本方法の低コストの態様は、プロセスで使用される少なくとも1つの電解質の、電解質組成物の変化に応じたプロセス性能の特徴づけの必要性の排除から導かれる。本方法は、プロセス及び/又は正常動作プロセスを表す電解質の、電気化学的フィンガプリント採取を利用する。
【0084】
この実施形態では、電気化学的フィンガプリントを製作する作用電極として、電気化学堆積装置の少なくとも1つの電極を使用することによって、電気化学的フィンガプリントが製作される。本方法は、更に、定量的品質予測値を出力として提供するモデルへ、電気化学的フィンガプリントを、入力の少なくとも一部分として使用することを含んでもよい。品質予測値はプロセスの結果と比較され、プロセスが動作し続ける間、製作される製品の想定相対的品質を予測可能にするために、プロセスが完了した後にモデルにフィードバックされる。
【0085】
更に、品質予測値を、実行可能セット及び/又は製品質と比較するために、経時的に学習するようにモデル及び品質予測値を設計してもよい。製品品質パラメータを、モデルにフィードバックして、製品質とモデルが生成する品質予測値間の相関をモデルが精密化するのを援助し、より多くのデータがモデルにフィードバックされるにつれて、相関を向上させることを可能にする。
【0086】
更に、判定モデルを使用して、入力パラメータを評価し、どのパラメータが品質測定値を作り出すために有用かを決定できる。
【0087】
また本発明は、経時変化した溶液を含む電気化学分析法のために、データのトレーニングセットを提供する。プロセスが動作している長期間のあいだ、電気化学分析法のためのデータのトレーニングセットを生成できる。
【0088】
また本発明は、分析法の出力に基づいて故障機構を識別する電気化学プロセスのための、分析法に関する。分析法は、出力信号を提供するために、1つ以上の作用電極11としての1つ以上の基板、及び1つ以上の参照電極13を利用するステップを含む。
【0089】
この分析法が、プロセスが動作する間にデータフィードバックによりプロセスの故障機構を学習できるようにすることもできる。
【0090】
更に、システムが、基板又はシステムハードウェアと関連した故障機構を識別できるようにすることができる。
【0091】
また本発明は、分からナノ秒の範囲の取得速度でデータを処理するための高速信号処理デバイスを使用する分析法に関する。このデータは、電気化学プロセスに対する入力パラメータであるプロセスパラメータの、オンに関する決定を行うか又は修正を行うために使用される。
【符号の説明】
【0092】
10 めっきチャンバ
11 作用電極、カソード
12 対電極、アノード
13 参照電極
14 電源
15 追加の源
16、17、18 機器
21 膜
22 毛管
25 ポンプ
30 漏出システム
31 電極
32 内部緩衝液、電解質
33 ガラス膜