特許第6576621号(P6576621)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6576621官能化ポリマー、ゴム組成物及び空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576621
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】官能化ポリマー、ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/25 20060101AFI20190909BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20190909BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20190909BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20190909BHJP
   B60C 15/06 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   C08C19/25
   C08K3/36
   C08L15/00
   B60C1/00 A
   B60C1/00 B
   B60C1/00 C
   B60C1/00 D
   B60C15/06 C
   B60C15/06 B
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-173417(P2014-173417)
(22)【出願日】2014年8月28日
(65)【公開番号】特開2015-44996(P2015-44996A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2017年4月14日
(31)【優先権主張番号】61/870,924
(32)【優先日】2013年8月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】タン・ホン・ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・ジョ・リー
(72)【発明者】
【氏名】カロリン・アンナ・ヴェルテル
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−169381(JP,A)
【文献】 特表平08−504865(JP,A)
【文献】 特開平06−179730(JP,A)
【文献】 特開2009−191270(JP,A)
【文献】 特開2003−155381(JP,A)
【文献】 特開平11−349632(JP,A)
【文献】 特開2005−290355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C19
C08F8
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ジビニルベンゼン及びイソプレンを含むモノマーから誘導された単位を含むリビングアニオン性エラストマー性ポリマーと;(2)式:
Q−(CHSi(OR3−Y
[式中、Qは、RCH=N−又は(RN−であり;Rは、6〜18個の炭素原子を有するアリール又は置換アリール、又は3〜18個の炭素原子を有するヘテロサイクル又はヘテロアリールからなる基を表し;Rは、独立に、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表し;R及びRは、それぞれ独立に、アルキル、シクロアルキル、アリル、及びアリールからなる群から選ばれる1〜18個の炭素原子を有する基を表し;Xは1〜20の整数であり;そしてYは1〜3の整数である]の重合停止剤との反応生成物を含む官能化エラストマーであって、停止剤から誘導された単位の少なくとも90パーセントがジビニルベンゼンから誘導された単位に隣接して配置されていることを特徴とする官能化エラストマー。
【請求項2】
モノマー対ジビニルベンゼンの重量比が0.04〜0.4の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の官能化エラストマー。
【請求項3】
Yが3であり、Rがエチルであることを特徴とする、請求項1に記載の官能化エラストマー。
【請求項4】
がフェニルであることを特徴とする、請求項1に記載の官能化エラストマー。
【請求項5】
Xが3であることを特徴とする、請求項1に記載の官能化エラストマー。
【請求項6】
停止剤が、式:
【化1】
であることを特徴とする、請求項1に記載の官能化エラストマー。
【請求項7】
モノマーがスチレン及び1,3−ブタジエンの少なくとも一つをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の官能化エラストマー。
【請求項8】
請求項1に記載の官能化エラストマー及びシリカを含有することを特徴とするゴム組成物。
【請求項9】
請求項8に記載のゴム組成物から製造されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、官能化ポリマー、ゴム組成物及び空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
周期表のI及びII族の金属は、モノマーからポリマーへの重合を開始するのに一般に使用されている。例えば、リチウム、バリウム、マグネシウム、ナトリウム、及びカリウムは、そのような重合に頻繁に利用される金属である。この種の開始剤系は、様々なポリマー微細構造、従ってガラス転移温度(Tg)及びポリマー組成を有するポリマーの製造に使用できるので商業的に重要である。例えば、リチウム開始剤は、イソプレンから合成ポリイソプレンゴムへのアニオン重合を開始したり、又は1,3−ブタジエンから所望の微細構造を有するポリブタジエンゴムへの重合を開始するのに利用できる。
【0003】
そのような重合で形成されたポリマーは、重合開始に使用された金属をそれらのポリマー鎖の成長末端に有しており、リビングポリマーと呼ばれることもある。それらがリビングポリマーと呼ばれるのは、末端金属開始剤を含有するそれらのポリマー鎖が、すべての利用可能なモノマーが使い果たされるまで成長し続ける又は生き続けるからである。そのような金属開始剤を利用して製造されたポリマーは、通常本質的に線形の構造を有し、大量の枝分れは通常含有しない。
【0004】
リビング重合技術によって製造されたゴム状ポリマーは、典型的には、硫黄、促進剤、劣化防止剤、充填剤、例えばカーボンブラック、シリカ又はデンプン、及びその他の所望のゴム薬品と配合された後、加硫又は硬化されて有用な物品、例えばタイヤ又はパワートランスミッションベルトの形になる。そのような硬化ゴムの物理的性質は、充填剤がゴム全体に均一に分散されている程度に依存することが確立されている。これは、すなわち、充填剤が特定のゴム状ポリマーに対して有する親和性のレベルと関連する。このことは、そのようなゴム組成物を利用して製造されるゴム物品の物理的特性の改良に実際的に重要となりうる。例えば、タイヤの転がり抵抗及び牽引特性は、それに利用されるゴム状ポリマーに対するカーボンブラック及び/又はシリカの親和性を改良することによって改良できる。従って、所与のゴム状ポリマーの、カーボンブラック及びシリカなどの充填剤に対する親和性を改良することが非常に望ましいであろう。
【0005】
タイヤトレッド配合物(tire tread formulations)において、充填剤とゴム状ポリマー間の良好な相互作用は低いヒステリシスをもたらし、その結果、そのようなゴム配合物を用いて製造されたタイヤは低い転がり抵抗を有する。60℃における低いタンデルタ値は低いヒステリシスの指標であるので、60℃における低いタンデルタ値を有するそのようなゴム配合物を利用して製造されたタイヤは、通常低い転がり抵抗を示す。タイヤトレッド配合物中の充填剤とゴム状ポリマー間の良好な相互作用は、典型的には0℃における高いタンデルタ値ももたらす。これは良好な牽引特性の指標である。
【0006】
ゴムとカーボンブラック間の相互作用は、カーボンブラック表面上の酸素含有官能基とゴムとの間の物理吸収(physical absorption)(ファンデルワールス力)及び化学吸着(chemisorption)の組合せによるものである(D.Rivin,J.Aron,及びA.Medalia,Rubber Chem.& Technol.41,330(1968)並びにA.Gessler,W.Hess,及びA Medalia,Plast.Rubber Process,3,141(1968)参照)。ポリマー−充填剤相互作用を改良してヒステリシス損を低減するための様々なその他の化学変性技術も、特に溶液重合によって製造されたスチレン−ブタジエンゴム(S−SBR)に関し、報告されている。これらの技術の一つにおいて、溶液ゴム鎖末端はアミノベンゾフェノンで変性される。これは、ポリマーとカーボンブラック表面上の酸素含有基との間の相互作用を非常に改良する(N.Nagata,Nippon Gomu Kyokaishi,62,630(1989)参照)。アニオン溶液ポリマーのスズカップリングは、別のよく使用される鎖末端変性法で、おそらくはカーボンブラック表面上のキノン基との反応の増大を通じてポリマー−充填剤相互作用を補助している。この相互作用の効果はカーボンブラック粒子間の凝集を削減することで、それが分散の改良につながり、最終的にヒステリシスを低減する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】D.Rivin,J.Aron,及びA.Medalia,Rubber Chem.& Technol.41,330(1968)
【非特許文献2】A.Gessler,W.Hess,及びA Medalia,Plast.Rubber Process,3,141(1968)
【非特許文献3】N.Nagata,Nippon Gomu Kyokaishi,62,630(1989)
【発明の概要】
【0008】
主題発明は、ゴム状リビングポリマーの末端基を官能化して、カーボンブラック及び/又はシリカなどの充填剤に対するそれらの親和性を改良するための低コストの手段を提供する。そのような官能化ポリマーは、改良されたポリマー/充填剤相互作用が望ましいタイヤ及びその他のゴム製品の製造に有益に使用できる。タイヤトレッドコンパウンドにおいて、これは低いポリマーヒステリシスをもたらすことができ、ひいては低レベルのタイヤ転がり抵抗を提供することができる。
【0009】
本発明は、さらに詳しくは、
(1)ジビニルベンゼン及びイソプレンを含むモノマーから誘導された単位を含むリビングアニオン性エラストマー性ポリマーと;(2)式:
Q−(CHSi(OR3−Y
[式中、Qは、RCH=N−又は(RN−であり;Rは、6〜18個の炭素原子を有するアリール又は置換アリール、又は3〜18個の炭素原子を有するヘテロサイクル又はヘテロアリールからなる基を表し;Rは、独立に、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表し;R及びRは、それぞれ独立に、アルキル、シクロアルキル、アリル、及びアリールからなる群から選ばれる1〜18個の炭素原子を有する基を表し;Xは1〜20の整数であり;そしてYは1〜3の整数である]の重合停止剤との反応生成物を含む官能化エラストマーであって、停止剤から誘導された単位は専らジビニルベンゼンから誘導された単位に隣接して配置されている官能化エラストマーに向けられる。
【0010】
本発明はさらに、官能化エラストマーを含むゴム組成物、及びそのゴム組成物を含む空気入りタイヤにも向けられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、いくつかのエラストマーの分子量対ムーニー粘度のグラフを示す。
図2図2は、いくつかのエラストマーの回転半径対ムーニー粘度のグラフを示す。
図3図3は、いくつかのエラストマーの粘弾性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)ジビニルベンゼン及びイソプレンを含むモノマーから誘導された単位を含むリビングアニオン性エラストマー性ポリマーと;(2)式:
Q−(CHSi(OR3−Y
[式中、Qは、RCH=N−又は(RN−であり;Rは、6〜18個の炭素原子を有するアリール又は置換アリール、又は3〜18個の炭素原子を有するヘテロサイクル又はヘテロアリールからなる基を表し;Rは、独立に、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表し;R及びRは、それぞれ独立に、アルキル、シクロアルキル、アリル、及びアリールからなる群から選ばれる1〜18個の炭素原子を有する基を表し;Xは1〜20の整数であり;そしてYは1〜3の整数である]の重合停止剤との反応生成物を含む官能化エラストマーであって、停止剤から誘導された単位は専らジビニルベンゼンから誘導された単位に隣接して配置されている官能化エラストマーを開示する。
【0013】
官能化エラストマーを含むゴム組成物、及びそのゴム組成物を含む空気入りタイヤも開示する。
【0014】
主題発明は、ゴム状リビングポリマーの、カーボンブラック及び/又はシリカなどの充填剤に対するそれらの親和性を改良するための官能化を提供する。本発明の方法は、周期表のI又はII族の金属を持つ活性末端を有するあらゆるリビングポリマーの官能化に使用できる。これらのポリマーは当業者に周知の技術を利用して製造できる。本発明に従って式Iの停止剤で官能化できるリビングポリマーは、一官能性開始剤を利用して製造でき、一般構造式Pを有する。ここで、Pはポリマー鎖を表し、は、例えばI又はII族の金属を含有する開始剤に由来する活性部位を表す。そのようなリビングポリマーの合成に利用される金属開始剤は多官能性有機金属化合物であってもよい。例えば、二官能性有機金属化合物がそのような重合を開始するのに利用できる。そのような二官能性有機金属化合物を開始剤として利用すると、一般的に、一般構造式を有するリビングポリマーの形成がもたらされる。I又はII族の金属を持つそれらの両鎖端で活性なそのようなポリマーも、それらの両鎖端を官能化するために式Iの停止剤と反応させることができる。ポリマー鎖の両端を式Iの停止剤で官能化できるように二官能性開始剤を利用することは、カーボンブラック及びシリカなどの充填剤との相互作用をさらに改良できると考えられる。
【0015】
そのようなリビングポリマーは、時にSnCl又はSiClカップリング剤のいずれかを用いてカップリングされることもある。このクラスのカップリング剤は、活性鎖端を封止して、鎖端を容易に変性する可能性をなくし、官能性停止剤を用いてさらに官能化するという選択肢を排除する。これに対し、ジビニルベンゼン(DVB)とリビングポリマーとの反応は活性鎖端を保存するので、官能性停止剤による更なる官能化を可能にする。スキーム1に、リビングポリマーのジビニルベンゼンとのカップリング、続いて官能性停止剤による停止という、この概念的順序を示す。ここで、Pは、イソプレンを含むモノマーの単位を含むリビングポリマーを表す。リビングポリマーPは、ジビニルベンゼン(
【0016】
【化1】
【0017】
として示す)と順次反応して、結合(coupled)リビングポリマーを形成する。これを官能性停止剤により活性部位()を封止すると、官能基Fを持つ最終的な結合官能性ポリマーとなる。ジビニルベンゼンとの反応に先立ち、リビングポリマーPを高いモノマー変換率で製造することがランダムな架橋を最小化するために必要である。ランダムな架橋はゲル形成及び得られたポリマーのムーニー粘度の顕著な増大をもたらしうるからである。
【0018】
【化2】
【0019】
最大でも4本の鎖しか一緒に結合できないSnCl又はSiClカップリングと異なり、ジビニルベンゼンのカップリングの程度は理論的には無制限である。その結果、線形等価物と比べて、ずっと高い官能化度が可能である。言い換えれば、ポリマー分子あたりの官能基の数は線形ポリマーよりも実質的に高くなりうる。
【0020】
本発明に従って官能化されるリビングゴム状ポリマーの合成に使用される重合を開始するために使用される開始剤は、典型的には、バリウム、リチウム、マグネシウム、ナトリウム、及びカリウムからなる群から選ばれる。リチウム及びマグネシウムは、そのような金属末端ポリマー(リビングポリマー)の合成に最も一般的に利用される金属である。通常、リチウム開始剤がより好適である。
【0021】
有機リチウム化合物はそのような重合に利用するための好適な開始剤である。開始剤として利用される有機リチウム化合物は通常有機モノリチウム化合物である。開始剤として好適な有機リチウム化合物は、式:R−Li(式中、Rは1〜約20個の炭素原子を含有するヒドロカルビルラジカルを表す)によって表すことができる一官能性化合物である。一般的に、そのような一官能性有機リチウム化合物は、1〜約10個の炭素原子を含有する。いくつかの好適な代表例は、ブチルリチウム、secブチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、n−オクチルリチウム、tertオクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、1−ナフチルリチウム、4−ブチルフェニルリチウム、p−トリルリチウム、4−フェニルブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、4−ブチルシクロヘキシルリチウム、及び4−シクロヘキシルブチルリチウムである。sec−ブチルリチウムが非常に好適な有機リチウム開始剤である。2ミクロン未満の平均粒径を有する超微粉リチウムも、本発明に従って式Iの停止剤で官能化できるリビングゴム状ポリマー合成のための開始剤として使用できる。米国特許第4,048,420号(引用によってその全文を本明細書に援用する)に、微粉リチウムを開始剤として利用するリチウム末端リビングポリマーの合成が記載されている。リチウムアミドもリビングポリジエンゴムの合成における開始剤として使用できる(米国特許第4,935,471号参照。その教示は、リビングゴム状ポリマーの合成の開始剤として使用できるリチウムアミドに関し、引用によって本明細書に援用する)。
【0022】
利用される有機リチウム開始剤の量は、合成されるゴム状ポリマーに所望される分子量のほか、使用される正確な重合温度によっても変動する。所望分子量のポリマーを製造するのに必要とされる有機リチウム化合物の正確な量は、当業者であれば容易に求めることができる。しかしながら、通則として、0.01〜1phm(100重量部のモノマーあたりの部)の有機リチウム開始剤が利用されることになろう。ほとんどの場合、0.01〜0.1phmの有機リチウム開始剤が利用され、0.025〜0.07phmの有機リチウム開始剤を利用するのが好適である。
【0023】
炭素炭素二重結合を含有する多くの種類の不飽和モノマーが、そのような金属触媒を用いてポリマーに重合できる。エラストマー性又はゴム状ポリマーは、このタイプの金属開始剤系を利用してジエンモノマーを重合することによって合成できる。合成ゴム状ポリマーに重合できるジエンモノマーは、共役ジオレフィン又は非共役ジオレフィンのいずれでもよい。4〜8個の炭素原子を含有する共役ジオレフィンモノマーが一般的には好適である。ビニル置換芳香族モノマーも、一つ又は複数のジエンモノマーと共重合させてゴム状ポリマー、例えばスチレン−ブタジエンゴム(SBR)にすることができる。ゴム状ポリマーに重合できる共役ジエンモノマーのいくつかの代表例は、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、及び4,5−ジエチル−1,3−オクタジエンなどである。ゴム状ポリマーの合成に利用できるビニル置換芳香族モノマーのいくつかの代表例は、スチレン、1−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、3,5−ジエチルスチレン、4−プロピルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、4−ドデシルスチレン、3−メチル−5−ノルマル−ヘキシルスチレン、4−フェニルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、3,5−ジフェニルスチレン、2,3,4,5−テトラエチルスチレン、3−エチル−1−ビニルナフタレン、6−イソプロピル−1−ビニルナフタレン、6−シクロヘキシル−1−ビニルナフタレン、7−ドデシル−2−ビニルナフタレン、α−メチルスチレンなどである。
【0024】
本発明に従って式Iの停止剤で官能化されるリビングポリマーは、一般的に、飽和脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、又はエーテルなどの不活性有機溶媒を利用する溶液重合によって製造される。そのような溶液重合に使用される溶媒は、通常1分子あたり約4〜約10個の炭素原子を含有し、重合条件下で液体である。適切な有機溶媒のいくつかの代表例は、ペンタン、イソオクタン、シクロヘキサン、ノルマル−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラヒドロフランなどで、これらを単独で又は混合して使用する。例えば、溶媒は異なるヘキサン異性体の混合物でありうる。そのような溶液重合はポリマーセメント(高粘性ポリマー溶液)の形成をもたらす。
【0025】
本発明の実施に利用されるリビングポリマーは、実質的に任意の分子量であってよい。しかしながら、リビングゴム状ポリマーの数平均分子量は、典型的には約50,000〜約500,000の範囲内であろう。そのようなリビングゴム状ポリマーは、100,000〜250,000の範囲内の数平均分子量を有するのが、より典型的である。
【0026】
利用された不飽和モノマーから誘導されたリビングポリマーをジビニルベンゼンと反応させる。ジビニルベンゼンとの反応に先立ち、リビングポリマーPを高いモノマー変換率で製造することがランダムな架橋を最小化するために必要である。ランダムな架橋は、ゲル形成及び得られたポリマーのムーニー粘度の顕著な増大をもたらしうるからである。一態様において、重合は、初期モノマー量あたりの未反応モノマー量としての測定で、95パーセントより高いモノマー変換率になるまで実施される。所望のモノマー変換率を達成したら、十分なジビニルベンゼンを重合媒体に加えて、スキーム1に示されているようなリビングポリマーとジビニルベンゼンとのカップリングを誘導する。添加されるジビニルベンゼンの量は所望のカップリングレベルによる。一態様において、完成官能化エラストマーに配合されるジビニルベンゼンの量は、完成官能化エラストマーの100重量部あたり0.04〜0.4重量部(phr)の範囲である。
【0027】
リビングポリマーにおける高いモノマー変換率が達成された後にのみリビングポリマーをジビニルベンゼンと反応させることにより、ジビニルベンゼンは、スキーム1に示されているとおり、活性部位に隣接してリビングポリマーに付加される。当然のことながら、いくらかの僅少量の残留モノマーが存在して、ジビニルベンゼンの添加後にリビングポリマーの活性部位と反応し、活性部位をジビニルベンゼンから遠ざけることがあるかもしれない。しかしながら、一般的に、ジビニルベンゼン単位はリビングポリマー中で活性部位に隣接して存在する。
【0028】
ジビニルベンゼンとの反応後、活性ポリマーを式Iの停止剤で停止させて、官能化エラストマーを製造する。リビングポリマーとジビニルベンゼンとのカップリング後のリビングポリマーの停止は、官能化エラストマー中で、停止剤から誘導された実質的にすべての単位がジビニルベンゼンから誘導された単位に隣接して配置されることを確実にする。すなわち、停止剤から誘導された単位は、ジビニルベンゼンから誘導された単位と共有結合される。残留モノマーがゼロの理想的ケースでは、停止剤から誘導された全単位は専らジビニルベンゼンから誘導された単位に隣接して配置される。しかしながら、ジビニルベンゼンとのカップリング中にいくらかの残留モノマーが存在しうることを認めると、一態様では、停止剤から誘導された単位の少なくとも90パーセントが官能化エラストマー中でジビニルベンゼンから誘導された単位に隣接している。
【0029】
ジビニルベンゼン結合リビングポリマーは、単に化学量論量の式Iの停止剤をゴム状ポリマーの溶液(リビングポリマーのゴムセメント)に添加するだけで官能化することができる。言い換えれば、リビングゴム状ポリマー中の活性金属基(活性部位)1モルあたり約1モルの式Iの停止剤を添加する。そのようなポリマー中の金属基のモル数は、開始剤に利用された金属のモル数であると推定される。当然ながら、化学量論量より多い式Iの停止剤を添加することも可能である。しかしながら、多量の利用は最終的なポリマーの性質に有益でない。それでも、多くの場合、少なくとも化学量論量が実際に使用されるのを確保するため又は官能化反応の化学量論を制御するために、わずかに過剰の式Iの停止剤を利用するのが望ましいであろう。ほとんどの場合、処理されるリビングポリマー中の金属基1モルあたり約0.8〜約1.1モルの式Iの停止剤が利用される。万一ゴム状ポリマー中のすべての金属基を官能化することが所望でない場合、当然ながら、より少量の式Iの停止剤を利用することもできる。
【0030】
式Iの停止剤は、リビングポリマーと非常に広い温度範囲にわたって反応する。実践的理由から、そのようなリビングポリマーの官能化は通常0℃〜150℃の範囲内の温度で実施される。反応速度を増大するために、ほとんどの場合、20℃〜100℃の範囲内の温度を利用するのが好適で、50℃〜80℃の範囲内の温度が最も好適である。キャッピング反応は非常に迅速で、0.5〜4時間の範囲内のごく短い反応時間しか通常必要としない。しかしながら、場合によっては、最大変換を確実にするために約24時間までの反応時間を使用することもある。
【0031】
官能化反応の完了後、残存しているリビングポリジエン鎖があれば、それを“止める(kill)”のが通常望ましいであろう。これは、メタノール又はエタノールなどのアルコールを官能化反応の完了後にポリマーセメントに添加し、式Iの停止剤との反応によって消費されなかった何らかのリビングポリマーを除去することによって達成できる。その後、末端基官能化ポリジエンゴムは、標準技術を用いて溶液から回収できる。
【0032】
官能化ポリマーはゴム組成物に配合することができる。
【0033】
ゴム組成物は、任意に、官能化ポリマーの他にオレフィン性不飽和を含有する一つ又は複数のゴム又はエラストマーを含んでいてもよい。“オレフィン性不飽和を含有するゴム又はエラストマー”又は“ジエン系エラストマー”という語句は、天然ゴム及びその各種未加工形及び再生形、並びに各種合成ゴムのどちらも含むものとする。本発明の記載において、“ゴム”及び“エラストマー”という用語は、別段の規定のない限り互換的に使用されうる。“ゴム組成物”、“配合ゴム”及び“ゴムコンパウンド”という用語は、各種成分及び材料とブレンド又は混合されているゴムのことを言うのに互換的に使用され、そのような用語はゴム混合又はゴム配合分野の当業者には周知である。代表的な合成ポリマーは、ブタジエン及びその同族体及び誘導体、例えばメチルブタジエン、ジメチルブタジエン及びペンタジエンのホモ重合生成物、並びにブタジエン又はその同族体もしくは誘導体とその他の不飽和モノマーとから形成されるようなコポリマーである。後者に含まれるものとしては、アセチレン、例えばビニルアセチレン;オレフィン、例えばイソブチレン(イソプレンと共重合してブチルゴムを形成する);ビニル化合物、例えばアクリル酸、アクリロニトリル(ブタジエンと重合してNBRを形成する)、メタクリル酸及びスチレン(後者の化合物はブタジエンと重合してSBRを形成する)のほか、ビニルエステル及び各種不飽和アルデヒド、ケトン及びエーテル、例えばアクロレイン、メチルイソプロペニルケトン及びビニルエチルエーテルなどが挙げられる。合成ゴムの具体例は、ネオプレン(ポリクロロプレン)、ポリブタジエン(シス−1,4−ポリブタジエンを含む)、ポリイソプレン(シス−1,4−ポリイソプレンを含む)、ブチルゴム、ハロブチルゴム、例えばクロロブチルゴム又はブロモブチルゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエンゴム、1,3−ブタジエン又はイソプレンとスチレン、アクリロニトリル及びメチルメタクリレートなどのモノマーとのコポリマー、並びにエチレン/プロピレンターポリマー(エチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)としても知られる)、特にエチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエンターポリマーなどである。使用できるゴムの追加例は、アルコキシ−シリル末端官能化溶液重合ポリマー(SBR、PBR、IBR及びSIBR)、ケイ素結合及びスズ結合星状枝分れポリマーなどである。好適なゴム又はエラストマーはポリイソプレン(天然又は合成)、ポリブタジエン及びSBRである。
【0034】
一側面において、少なくとも一つの追加ゴムは、好ましくはジエン系ゴムの少なくとも二つである。例えば、シス1,4−ポリイソプレンゴム(天然又は合成、ただし天然が好適)、3,4−ポリイソプレンゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエンゴム、乳化重合及び溶液重合由来スチレン/ブタジエンゴム、シス1,4−ポリブタジエンゴム及び乳化重合調製ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーなどの二つ以上のゴムの組合せが好適である。
【0035】
本発明の一側面において、約20〜約28パーセントの結合スチレンという比較的従来的なスチレン含有量を有する乳化重合由来スチレン/ブタジエン(E−SBR)が使用されうる。又は用途によっては、中程度〜比較的高い結合スチレン含有量、すなわち約30〜約45パーセントの結合スチレン含有量を有するE−SBRが使用されうる。
【0036】
乳化重合調製E−SBRとは、スチレンと1,3−ブタジエンが水性エマルジョンとして共重合されることを意味する。そのようなことは当業者には周知である。結合スチレン含有量は、例えば、約5〜約50パーセントの間で変動しうる。一側面において、E−SBRは、アクリロニトリルも含有してE−SBARとしてターポリマーゴムを形成することもできる。その場合、ターポリマー中に例えば約2〜約30重量パーセントの量の結合アクリロニトリルが含有される。
【0037】
約2〜約40重量パーセントの結合アクリロニトリルをコポリマー中に含有する乳化重合調製スチレン/ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーゴムも、本発明で使用するためのジエン系ゴムとして想定されている。
【0038】
溶液重合調製SBR(S−SBR)は、典型的には、約5〜約50、好ましくは約9〜約36パーセントの範囲の結合スチレン含有量を有する。S−SBRは、例えば、有機炭化水素溶媒の存在下、有機リチウム触媒作用によって都合よく調製できる。
【0039】
一態様において、シス1,4−ポリブタジエンゴム(BR)が使用されうる。そのようなBRは、例えば、1,3−ブタジエンの有機溶液重合によって調製できる。BRは、例えば、少なくとも90パーセントのシス1,4−含有量を有することによって都合よく特徴付けできる。
【0040】
シス1,4−ポリイソプレン及びシス1,4−ポリイソプレン天然ゴムは、ゴム分野の当業者には周知である。
【0041】
本明細書中で使用されている、従来の慣例による用語“phr”は、“100重量部のゴム、又はエラストマーあたりの各材料の重量部”を意味する。
【0042】
ゴム組成物は70phrまでのプロセス油も含みうる。プロセス油は、エラストマーを増量するために典型的に使用される増量油(extending oil)としてゴム組成物中に含まれうる。プロセス油は、ゴム配合中に直接オイルを添加することによってゴム組成物中に含めることもできる。使用されるプロセス油は、エラストマー中に存在する増量油及び配合中に添加されるプロセス油の両方を含みうる。適切なプロセス油は、当該技術分野で知られている各種油、例えば芳香族油、パラフィン系油、ナフテン系油、植物油、及び低PCA油、例えばMES、TDAE、SRAE及び重ナフテン系油などである。適切な低PCA油は、IP346法による測定で3重量パーセント未満の多環芳香族含有量を有するものなどである。IP346法の手順は、英国石油学会(Institute of Petroleum)出版のStandard Methods for Analysis & Testing of Petroleum and Related Products 及び British Standard 2000 Parts、2003年、第62版に見出すことができる。
【0043】
ゴム組成物は約10〜約150phrのシリカを含みうる。別の態様では、20〜80phrのシリカが使用されうる。
【0044】
ゴムコンパウンドに使用されうる一般的に用いられるケイ質顔料は、従来型の焼成(pyrogenic)及び沈降ケイ質顔料(シリカ)を含む。一態様においては沈降シリカが使用される。本発明で使用される従来型ケイ質顔料は、例えば、ケイ酸ナトリウムなどの可溶性ケイ酸塩の酸性化によって得られるような沈降シリカである。
【0045】
そのような従来型シリカは、例えば、窒素ガスを用いて測定されたBET表面積を有することによって特徴付けされうる。一態様において、BET表面積は、1グラムあたり約40〜約600平方メートルの範囲でありうる。別の態様において、BET表面積は、1グラムあたり約80〜約300平方メートルの範囲でありうる。表面積を測定するBET法は、Journal of the American Chemical Society、第60巻、304ページ(1930)に記載されている。
【0046】
従来型シリカは、約100〜約400、あるいは約150〜約300の範囲のジブチルフタレート(DBP)吸収値を有することによって特徴付けすることもできる。
【0047】
従来型シリカは、電子顕微鏡による測定で例えば0.01〜0.05ミクロンの範囲の平均極限粒径を有すると予想されうるが、シリカ粒子はサイズがさらに小さくても又はおそらくは大きくてもよい。
【0048】
様々な市販シリカが使用できる。例えば、本明細書における単なる例として及び制限なしに挙げると、PPG Industries社から商標Hi−Sil、規格表示210、243などとして市販されているシリカ;Rhodia社から例えば規格表示Z1165MP及びZ165GRとして入手できるシリカ;及びDegussa AG社から例えば規格表示VN2及びVN3として入手できるシリカなどである。
【0049】
一般的に使用されるカーボンブラックが従来型充填剤として10〜150phrの範囲の量で使用できる。別の態様では20〜80phrのカーボンブラックが使用できる。そのようなカーボンブラックの代表例は、N110、N121、N134、N220、N231、N234、N242、N293、N299、N315、N326、N330、N332、N339、N343、N347、N351、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N683、N754、N762、N765、N774、N787、N907、N908、N990及びN991などである。これらのカーボンブラックは、9〜145g/kgの範囲のヨウ素吸収及び34〜150cm/100gの範囲のDBP数を有している。
【0050】
他の充填剤もゴム組成物に使用できる。例えば、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)などの粒状充填剤、米国特許第6,242,534号;6,207,757号;6,133,364号;6,372,857号;5,395,891号;又は6,127,488号(これらに限定されない)に開示されているような架橋粒状ポリマーゲル、及び米国特許第5,672,639号(これに限定されない)に開示されているような可塑化デンプン複合充填剤などであるが、これらに限定されない。そのようなその他の充填剤は1〜30phrの範囲の量で使用されうる。
【0051】
一態様において、ゴム組成物は従来型の硫黄含有有機ケイ素化合物を含有しうる。一態様において、硫黄含有有機ケイ素化合物は、3,3’−ビス(トリメトキシ又はトリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドである。一態様において、硫黄含有有機ケイ素化合物は、3,3’−ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド及び/又は3,3’−ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドである。
【0052】
別の態様において、適切な硫黄含有有機ケイ素化合物は、米国特許第6,608,125号に開示されている化合物を含む。一態様において、硫黄含有有機ケイ素化合物は、Momentive Performance Materials社からNXTTMとして市販されている3−(オクタノイルチオ)−1−プロピルトリエトキシシラン、CH(CHC(=O)−S−CHCHCHSi(OCHCHを含む。
【0053】
別の態様において、適切な硫黄含有有機ケイ素化合物は、米国特許公開第2003/0130535号に開示されているものを含む。一態様において、硫黄含有有機ケイ素化合物はDegussa社製Si−363である。
【0054】
ゴム組成物中の硫黄含有有機ケイ素化合物の量は、使用されるその他の添加剤の量によって変動する。一般的に言えば、該化合物の量は0.5〜20phrの範囲であろう。一態様において、その量は1〜10phrの範囲であろう。
【0055】
当業者であれば、ゴム組成物は、ゴム配合分野で一般的に知られている方法によって配合されるであろうことは容易に分かるはずである。例えば、様々な硫黄加硫可能成分ゴムを、一般的に使用されている様々な添加剤材料、例えば、硫黄供与体、硬化補助剤、例えば活性化剤及び遅延剤及び加工添加剤、例えばオイル、粘着付与樹脂を含む樹脂及び可塑剤、充填剤、顔料、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、抗酸化剤及びオゾン劣化防止剤及びしゃく解剤などと混合する。当業者には分かる通り、硫黄加硫可能(sulfur vulcanizable)材料及び硫黄加硫(sulfur-vulcanized)材料(ゴム)の意図する使用に応じて、上記添加剤は選択され、従来量で一般的に使用される。硫黄供与体の代表例は、元素硫黄(遊離硫黄)、アミンジスルフィド、ポリマー性ポリスルフィド及び硫黄オレフィン付加物などである。一態様において、硫黄加硫剤は元素硫黄である。硫黄加硫剤は、0.5〜8phrの範囲、あるいは1.5〜6phrの範囲の量で使用されうる。粘着付与樹脂の典型的な量は、使用される場合、約0.5〜約10phr、通常約1〜約5phrを含む。加工助剤の典型的な量は約1〜約50phrを含む。抗酸化剤の典型的な量は約1〜約5phrを含む。代表的抗酸化剤は、例えばジフェニル−p−フェニレンジアミン及びその他、例えばThe Vanderbilt Rubber Handbook(1978),344〜346ページに開示されているものであろう。オゾン劣化防止剤の典型的な量は約1〜5phrを含む。脂肪酸の典型的な量は、使用される場合、ステアリン酸などでありうるが、約0.5〜約3phrを含む。酸化亜鉛の典型的な量は約2〜約5phrを含む。ワックスの典型的な量は約1〜約5phrを含む。微晶質ワックスが使用されることが多い。しゃく解剤の典型的な量は約0.1〜約1phrを含む。典型的なしゃく解剤は、例えば、ペンタクロロチオフェノール及びジベンズアミドジフェニルジスルフィドであろう。
【0056】
促進剤は、加硫に要する時間及び/又は温度を制御するため、及び加硫物の性質を改良するために使用される。一態様において、単一促進剤系、すなわち一次促進剤が使用されうる。一次促進剤(一つ又は複数)は、約0.5〜約4、あるいは約0.8〜約1.5phrの範囲の総量で使用されうる。別の態様では、活性化及び加硫物の性質を改良するために、一次及び二次促進剤の組合せが使用されうる。その場合、二次促進剤は少量、例えば約0.05〜約3phrの量で使用される。これらの促進剤の組合せは、最終性質に対して相乗効果をもたらすことが期待され、いずれかの促進剤を単独で使用して製造されたものよりも多少良好である。さらに、標準的な加工温度には影響されないが、通常の加硫温度で満足のいく硬化をもたらす遅延作用促進剤を使用することもできる。加硫遅延剤も使用できる。本発明に使用されうる適切なタイプの促進剤は、アミン、ジスルフィド、グアニジン、チオウレア、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバメート及びキサンテートである。一態様において、一次促進剤はスルフェンアミドである。二次促進剤を使用する場合、二次促進剤は、グアニジン、ジチオカルバメート又はチウラム化合物であろう。
【0057】
ゴム組成物の混合は、ゴム混合分野の当業者に公知の方法によって達成できる。例えば、成分は典型的には少なくとも二つの段階、すなわち、少なくとも一つのノンプロダクティブ段階とそれに続くプロダクティブ混合段階で混合される。硫黄加硫剤を含む最終硬化剤は典型的には最終段階で混合される。この段階は従来、“プロダクティブ”混合段階と呼ばれ、そこでは混合が典型的にはその前のノンプロダクティブ混合段階(一つ又は複数)の混合温度より低い温度、又は極限温度で行われる。“ノンプロダクティブ”及び“プロダクティブ”混合段階という用語は、ゴム混合分野の当業者には周知である。ゴム組成物は、熱機械的混合ステップに付されてもよい。熱機械的混合ステップは、一般的に、140℃〜190℃のゴム温度を生ずるために適切な時間、ミキサー又は押出機内での機械的作業を含む。熱機械的作業の適切な時間は、運転条件、並びに成分の体積及び性質に応じて変動する。例えば、熱機械的作業は1〜20分であろう。
【0058】
当該ゴム組成物は、タイヤの様々なゴム部品に組み込むことができる。例えば、ゴム部品は、トレッド(トレッドキャップ及びトレッドベースを含む)、サイドウォール、アペックス、チェーファー、サイドウォールインサート、ワイヤコート又はインナーライナーでありうる。一態様において、該部品はトレッドである。
【0059】
本発明の空気入りタイヤは、レース用タイヤ、乗用車用タイヤ、航空機用タイヤ、農業用、土工機械用、オフロード用、トラック用タイヤなどでありうる。一態様において、タイヤは乗用車又はトラック用タイヤである。タイヤはラジアルでもバイアスでもよい。
【0060】
本発明の空気入りタイヤの加硫は、一般的に約100℃〜200℃の範囲の従来温度で実施される。一態様において、加硫は約110℃〜180℃の範囲の温度で実施される。成形機又は金型内での加熱、過熱蒸気又は熱風による加熱といった通常の加硫プロセスのいずれも使用できる。そのようなタイヤは、当業者に公知の、そして容易に明らかな様々な方法によって構築、成形(shaped)、成型(molded)及び硬化できる。
【0061】
本発明を以下の実施例によって例示するが、下記実施例は単に例示を目的としたものであって、本発明の範囲又はそれを実施できる様式の制限と見なされてはならない。特に明記しない限り、部及びパーセンテージは重量によって示されている。
【実施例】
【0062】
実施例1.
スチレンとイソプレンの共重合
重合は、1ガロン反応器内65℃で実施した。イソプレン(90パーセント)とスチレン(10パーセント)のモノマープレミックスをヘキサン入りの反応器に装入し、次いで変性剤(DTP、ジテトラヒドロフリルプロパン)及び開始剤(n−ブチルリチウム)を加えた。モノマーの変換率が98%を超えたら、ジビニルベンゼンを重合媒体に、モノマーの変換後、ただし停止前に加えた。ジビニルベンゼン対リチウムの比率は1.0当量であった。ジビニルベンゼンとの反応後、重合をイソプロパノール又は式RCH=N(CHSi(OR3−Yの停止剤、すなわちRがフェニル基、x=3、y=3及びRがエチルであるイミン−TEOS:
【0063】
【化3】
【0064】
と呼ばれる停止剤で停止させた。停止剤対リチウムの比率は1.5当量であった。サンプル1、2、7及び8は、モノマープレミックス中に0.25重量パーセントのピロリジノエチルスチレン(PES)も含んでいた。
【0065】
得られたポリマーを様々な技術を用いて特徴付けした。例えば、分子量を決定するためのGPC、Tgを決定するためのDSC、回転半径及びムーニー粘度測定をし、結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
図1にMw対ムーニー粘度に関する表1のデータを示す。線形ポリマーのムーニー値は一般的に分子量と直線関係にある。典型的なポリマーの場合、分子量は典型的には175K〜350Kの範囲である。1,000K付近の分子量を有する線形ポリマーは、加工が困難となるような極めて高いムーニー値を有する。図1に見られるように、DVB架橋ポリマーは、たとえ分子量が同様のムーニー値を有する線形ポリマーより著しく高くても、適度なムーニー値、従って加工性を示している。
【0068】
図2に回転半径対ムーニー粘度に関する表1のデータを示す。図2に見られるように、ムーニー及び分子量の依存関係はDVB架橋ポリマーと線形ポリマーでは異なり、ムーニーと回転半径の相関関係は極めて良好である。この意味は、DVB架橋ポリマーは、それらの分子量にしてはずっと緻密であるということである。
【0069】
実施例2.
実施例1の4つのポリマーを、表2に示す処方に従い、多段階混合手順で混合してゴム組成物にした。ゴム組成物は標準量の硬化剤も含んでいた。ゴム組成物を標準の硬化条件を用いて硬化し、粘弾性について試験した。結果は図3に示す通りである。性質は、対照化合物サンプル9に対する指標として示されている。
【0070】
【表2】
【0071】
図3に見られるように、イミン−TEOS/DVBポリマーを含有するサンプル11及び13は、イソプロパノール停止ポリマーを含有するサンプル10及び12より低いタンデルタを示した。低いタンデルタはタイヤコンパウンドにおける良好な転がり抵抗を示す。
【0072】
主題発明を例示する目的で一定の代表的態様及び詳細を示してきたが、主題発明の範囲から逸脱することなく、その中で多様な変更及び修正が可能であることは当業者には明らかであろう。
【0073】
[発明の態様]
1.(1)ジビニルベンゼン及びイソプレンを含むモノマーから誘導された単位を含むリビングアニオン性エラストマー性ポリマーと;(2)式:
Q−(CHSi(OR3−Y
[式中、Qは、RCH=N−又は(RN−であり;Rは、6〜18個の炭素原子を有するアリール又は置換アリール、又は3〜18個の炭素原子を有するヘテロサイクル又はヘテロアリールからなる基を表し;Rは、独立に、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表し;R及びRは、それぞれ独立に、アルキル、シクロアルキル、アリル、及びアリールからなる群から選ばれる1〜18個の炭素原子を有する基を表し;Xは1〜20の整数であり;そしてYは1〜3の整数である]の重合停止剤との反応生成物を含む官能化エラストマーであって、停止剤から誘導された単位は専らジビニルベンゼンから誘導された単位に隣接して配置されている官能化エラストマー。
【0074】
2.停止剤から誘導された単位の少なくとも90パーセントが官能化エラストマー中でジビニルベンゼンから誘導された単位に隣接している、1記載の官能化エラストマー。
【0075】
3.モノマー対ジビニルベンゼンの重量比が0.04〜0.4の範囲である、1記載の官能化エラストマー。
【0076】
4.Yが3であり、Rがエチルである、1記載の官能化エラストマー。
【0077】
5.Rがフェニルである、1記載の官能化エラストマー。
【0078】
6.Xが3である、1記載の官能化エラストマー。
【0079】
7.停止剤が、式:
【0080】
【化4】
【0081】
である、1記載の官能化エラストマー。
【0082】
8.モノマーがスチレン及び1,3−ブタジエンの少なくとも一つをさらに含む、1記載の官能化エラストマー。
【0083】
9.1記載の官能化エラストマーを含むゴム組成物。
【0084】
10.シリカをさらに含む、9記載のゴム組成物。
【0085】
11.10記載のゴム組成物を含む空気入りタイヤ。
図1
図2
図3