(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両のブレーキシステムのための制御装置(10)であって、電子回路装置(12)を有しており、該電子回路装置(12)は、ブレーキシステムのブレーキ操作部材(16)を操作することによって予設定された目標ブレーキトルク(M0)に関する、提供された少なくとも1つの目標ブレーキトルク信号(14)を考慮して、少なくとも1つの車輪出口弁制御信号(22)をブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキ回路(20)の少なくとも1つの車輪出口弁(18)にアウトプットするように設計されており、この際に、少なくとも1つの前記車輪出口弁制御信号(22)によって制御された、前記各ブレーキ回路(20)の少なくとも1つの前記車輪出口弁(18)が少なくとも部分的に開放された状態に制御可能であることによって、前記ブレーキ操作部材(16)の操作中に、前記ブレーキ操作部材(16)に接続された、前記ブレーキシステムのマスタブレーキシリンダ(24)から押し出されたブレーキ液が、少なくとも部分的に、前記各ブレーキ回路(20)の少なくとも1つの前記車輪出口弁(18)を介して移動可能である形式のものにおいて、
前記電子回路装置(12)はさらに、少なくとも1つの弁制御信号(26)を、少なくとも1つの前記車輪出口弁(18)を前記ブレーキシステムの、内部にブレーキ液をほぼ大気圧で貯蔵するブレーキ液リザーブタンク(32)に低圧リザーブチャンバを介さずに接続する少なくとも1つの管路(30)内の少なくとも1つの弁(28)にアウトプットするように設計されていて、この際に、少なくとも1つの前記弁制御信号(26)によって制御された少なくとも1つの前記弁(28)が、少なくとも部分的に開放された状態に制御可能であることによって、前記ブレーキ操作部材(16)の操作中に前記マスタブレーキシリンダ(24)から押し出されたブレーキ液が少なくとも部分的に、前記各ブレーキ回路(20)の少なくとも1つの前記車輪出口弁(18)および少なくとも1つの前記弁(28)を介して前記ブレーキ液リザーブタンク(32)内に移動可能であり、それによって、前記各ブレーキ回路(20)の少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ(36a,36b)内でのブレーキ圧形成が、前記ブレーキ操作部材(16)の操作中に阻止可能または低下可能である、
ことを特徴とする、車両のブレーキシステムのための制御装置(10)。
前記電子回路装置(12)によってさらに、少なくとも1つのジェネレータによって最大実施可能な可能ジェネレータブレーキトルク(Mg0)に関する、提供された情報(44)および少なくとも1つの目標ブレーキトルク信号(14)を考慮して、少なくとも1つのジェネレータ制御信号(46)を少なくとも1つのジェネレータにアウトプット可能であり、予設定された前記目標ブレーキトルク(M0)が最大実施可能な前記可能ジェネレータブレーキトルク(Mg0)よりも小さいときに、少なくとも1つの前記ジェネレータ制御信号(46)により制御された少なくとも1つのジェネレータによって、予設定された前記目標ブレーキトルク(M0)と同じジェネレータブレーキトルク(Mg)を作用させることができ、前記ブレーキ操作部材(16)の操作中に前記マスタブレーキシリンダ(24)から押し出されたブレーキ液を少なくとも部分的に、各ブレーキ回路(20)の少なくとも1つの車輪出口弁(18)および少なくとも1つの前記弁(28)を介して前記ブレーキ液リザーブタンク(32)内に移動させることによって、前記各ブレーキ回路の少なくとも1つの前記車輪ブレーキシリンダ(36a,36b)内でのブレーキ圧形成が阻止可能である、
請求項1に記載の制御装置(10)。
前記電子回路装置(12)によってさらに、最大実施可能な前記可能ジェネレータブレーキトルク(Mg0)に関する、提供された情報(44)および少なくとも前記目標ブレーキトルク信号(14)を考慮して、少なくとも1つのポンプ制御信号(48)が、少なくとも1つの前記管路(30)に接続された少なくとも1つのポンプ(50a)にアウトプット可能であり、一時的に低下する最大実施可能な前記可能ジェネレータブレーキトルク(Mg0)が予設定された前記目標ブレーキトルク(M0)よりも小さいときに、少なくとも1つのポンプ制御信号(48)により制御された少なくとも1つの前記ポンプ(50a)によって、ブレーキ液がブレーキ液リザーブタンク(32)から少なくとも1つの開放制御された弁(28)を介して、前記各ブレーキ回路(20)の少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ(36a,36b)内にポンプ供給可能である、
請求項2に記載の制御装置(10)。
車両のブレーキシステムを運転するための方法であって、マスタブレーキシリンダ(24)から押し出されたブレーキ液が、少なくとも部分的に前記各ブレーキ回路(20)の少なくとも1つの前記車輪出口弁(18)を介して移動せしめられるように、各ブレーキ回路(20)の少なくとも1つの車輪出口弁(18)を、前記ブレーキ操作部材(16)の操作中に少なくとも一時的に、少なくとも部分的に開放された状態に制御することによって、前記ブレーキシステムの前記マスタブレーキシリンダ(24)に接続された前記ブレーキ操作部材(16)の操作中に、前記ブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキ回路(20)の少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ(36a,36b)内におけるブレーキ圧形成を阻止または低下させるステップを有している方法において、
前記各ブレーキ回路(20)の少なくとも1つの前記車輪出口弁(18)を前記ブレーキシステムの、内部にブレーキ液をほぼ大気圧で貯蔵するブレーキ液リザーブタンク(32)に低圧リザーブチャンバを介さずに接続する少なくとも1つの管路(30)内の少なくとも1つの弁(28)を、前記ブレーキ操作部材(16)の操作中に少なくとも一時的に、少なくとも部分的に開放した状態に制御し、それによって、前記マスタブレーキシリンダ(24)から押し出された前記ブレーキ液を少なくとも部分的に、前記各ブレーキ回路(20)の少なくとも1つの前記車輪出口弁(18)および少なくとも1つの弁(28)を介して前記ブレーキ液リザーブタンク(32)内に移動させるステップを有している、
ことを特徴とする、車両のブレーキシステムを運転するための方法。
一時的に低下する最大実施可能な前記可能ジェネレータブレーキトルク(Mg0)が予設定された前記目標ブレーキトルク(M0)よりも小さいときに、少なくとも1つの前記管路(30)に接続された少なくとも1つのポンプ(50a)を制御することで、制御された少なくとも1つの前記ポンプ(50a)によって、ブレーキ液が前記ブレーキ液リザーブタンク(32)から少なくとも1つの開放制御された前記弁(28)を介して、前記各ブレーキ回路(20)の少なくとも1つの前記車輪ブレーキシリンダ(36a,36b)内にポンプ供給されるようにする、
請求項8に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のその他の特徴および利点を、以下に図面を用いて説明する。
【0017】
図1は、制御装置および該制御装置と協働するブレーキシステムの実施例の概略図を示す。
【0018】
図1に概略的に示された制御装置10は電子回路装置12を有している。電子回路装置12は少なくとも、ブレーキシステムのブレーキ操作部材16を操作することによって予設定された目標ブレーキトルクに関する、提供された少なくとも1つの目標ブレーキトルク信号14を考慮して、ブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキ回路20の少なくとも1つの車輪出口弁18を制御するように、設計されている。このために、電子回路装置12によって、少なくとも1つの車輪出口弁制御信号22がそれぞれの車輪出口弁18にアウトプット可能である。少なくとも1つの車輪出口弁制御信号22によって制御された、各ブレーキ回路20の少なくとも1つの車輪出口弁18は、少なくとも部分的に開放された状態で制御可能である。このような形式で、ブレーキ操作部材16の操作中に、ブレーキ操作部材16に接続された、ブレーキシステムのマスタブレーキシリンダ24から押し出されたブレーキ液が少なくとも部分的に、各ブレーキ回路20の少なくとも1つの車輪出口弁18を介して移動可能であることが保証される。
【0019】
電子回路装置12はさらに、(少なくとも1つの目標ブレーキトルク信号14を考慮しながら)少なくとも1つの弁制御信号26を、少なくとも1つの管路30内の少なくとも1つの弁28にアウトプットするように設計されており、この際に、少なくとも1つの車輪出口弁18は少なくとも1つの管路30を介してブレーキシステムのブレーキ液リザーブタンク32に接続されている。ブレーキ液リザーブタンク32とは、好適な形式で、内部に(ほぼ)大気圧が存在する液体タンクのことである。ブレーキ液リザーブタンク32は、例えば少なくとも1つのスニッファ孔34を介してマスタブレーキシリンダ24に接続されていてよい。少なくとも1つの弁制御信号26によって制御された少なくとも1つの弁28は、少なくとも部分的に開放された状態に制御可能である。特に、制御信号22および26を(ほぼ)同時にアウトプットすることによって、弁18および28は同時に/一緒に開放状態に移行可能である。これによって、ブレーキ操作部材16の操作中に、マスタブレーキシリンダ24から押し出されたブレーキ液が少なくとも部分的に、各ブレーキ回路20の少なくとも1つの車輪出口弁18を介しておよび少なくとも1つの弁28を介してブレーキ液リザーブタンク32内に移動可能であり、それによって各ブレーキ回路20の少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ36a,36b内のブレーキ圧形成がブレーキ操作部材16の操作中に阻止可能かまたは低下可能であることが保証される。
【0020】
従って、制御装置10と協働するブレーキシステムにおいて、リザーブチャンバ、特に低圧リザーブチャンバの使用は省くことができる。ブレーキ液リザーブタンク32内に(通常は)一定に存在する大気圧に基づいて、対抗圧力を克服することなしに、ブレーキ液リザーブタンク32内にブレーキ液を移動させることができる。これに対して、ブレーキ液をリザーブチャンバ内、それも低圧リザーブチャンバ内に移動させるためには、リザーブチャンバ/低圧リザーブチャンバの少なくとも1つのリターンスプリングのばね定数に基づく残留圧力を考慮する必要がある。リザーブチャンバ/低圧リザーブチャンバの少なくとも1つのリターンスプリングを選択する際に、低い温度におけるブレーキ液の高い粘性を考慮しなければならないので、残留圧力を所定の閾値未満に低下させることは全く/殆どできない。従って、マスタブレーキシリンダ24から押し出されたブレーキ液を、少なくとも1つの車輪出口弁18を介して少なくとも1つの対応配設された車輪ブレーキシリンダ36aおよび36bに接続されたリザーブチャンバ/低圧リザーブチャンバ内に中間貯蔵する際に、各車輪ブレーキシリンダ内に存在する残留圧力を低下させることは、全く/殆どできないであろう。
【0021】
これに対して、ブレーキ液リザーブタンク32内にブレーキ液を中間貯蔵することによって、ブレーキ操作部材16の操作にも拘わらず、車輪ブレーキシリンダ36aおよび36b内における大気圧に相当する約ゼロのブレーキ圧が保証される。従って、弁18および28を同時に/一緒に開放することによって、少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ36aおよび36b内に不都合な残留圧力が存在することは阻止できる。制御装置10によって実現可能な、ブレーキ液リザーブタンク32内でのブレーキ液の中間貯蔵によって、少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ36aおよび36bを残留圧力のない状態が保証されるので、例えば少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ36aおよび36bのブレーキライニングの摩耗は減少される。その他の利点は以下に記載されている。
【0022】
弁28は安価な仕切弁であってよい。代替的に、弁28として連続的に調節可能/制御可能な弁を使用してもよい。
【0023】
目標ブレーキトルク信号14は、ブレーキ操作部材センサ38、例えばブレーキ操作ストロークセンサ、ロッドストロークセンサ、差分ストロークセンサ、運転者制動力センサおよび/または運転者制動圧センサによって提供可能である。運転者制動要求の検出は、その他の形式のセンサを介しても可能である。ブレーキ操作部材16を操作することによって予設定された目標ブレーキトルクは、例えばブレーキ操作部材16の算出された調整ストロークとして、ロッドストロークとして、差分ストロークとして、運転者制動圧および/または運転者制動力として、電子回路装置12にアウトプットされる。
図1の実施例では、ブレーキ操作部材16はブレーキペダル16である。しかしながら、制御装置10と協働するブレーキシステムは、所定のブレーキ操作部材16または所定の型式のブレーキ操作部材センサ38に限定されないことを指摘しておく。
【0024】
図示の実施例において、制御装置10と協働するブレーキシステムは2つの同じブレーキ回路20を有しており、これらのブレーキ回路20はそれぞれ2つの車輪ブレーキシリンダ36a,36bを有している。2つのブレーキ回路20は、それぞれ1つの供給ライン40を介してマスタブレーキシリンダ24に接続され、(それぞれ1つの管路30の一部としての)それぞれ1つの吸込みライン42を介してブレーキ液リザーブタンク32に接続されている。しかしながら制御装置10の使用可能性は、ブレーキ回路20と協働するブレーキシステムのブレーキ回路20の特定の数に限定されない。例えば、
図1のブレーキシステムはX形のブレーキ回路分割を有している。従って、各ブレーキ回路20の第1の車輪ブレーキシリンダ36aは、第1の車両縦軸線に対応配設されており、これに対して各ブレーキ回路20の第2の車輪ブレーキシリンダ36bは別の車両縦軸線に対応配設されている。従って電子回路装置12は、少なくとも1つの車輪出口弁制御信号22によってブレーキ回路20毎に1つの車輪出口弁18だけを制御する。しかしながら、この制御装置10は、並列形のブレーキ回路分割を有するブレーキシステムのためにも使用できることを指摘しておく。同様に、ブレーキ回路20毎に複数の車輪出口弁18が少なくとも1つの車輪出口弁制御信号22によって制御可能であってもよい。
【0025】
図1の実施例では、電子回路装置12によって追加的にさらに少なくとも1つの(図示していない)ジェネレータを制御することができる。少なくとも1つのジェネレータとは、発電機的に使用可能な電動モータ、例えば電動式の駆動モータのことである。このために、電子回路装置12は、少なくとも目標ブレーキトルク信号14および、少なくとも1つのジェネレータによって最大実施可能な可能ジェネレータブレーキトルク(Kann−Generatorbremsmoment)に関する、提供された情報44を考慮して、少なくとも1つのジェネレータ制御信号46を少なくとも1つのジェネレータにアウトプットするように、設計されている。提供された情報44は、例えば最大実施可能な可能ジェネレータブレーキトルク、少なくとも1つのジェネレータによって充電可能な車両バッテリーの充電状態および/または車両速度を含むことができる。情報44は、例えばセンサおよび/または中央の車両コントロール装置によって制御装置10に提供され得る。
【0026】
好適には、電子回路装置12は、予設定された目標ブレーキトルクが最大実施可能な可能ジェネレータブレーキトルクよりも小さい場合、少なくとも1つの制御されたジェネレータが予設定された目標ブレーキトルクと同じジェネレータブレーキトルクを作用させることができるように、少なくとも1つのジェネレータを少なくとも1つのジェネレータ制御信号46によって制御するように、設計されている。これは、ブレーキ操作部材16の操作中にマスタブレーキシリンダ24から押し出されたブレーキ液を少なくとも部分的に(各ブレーキ回路20の少なくとも1つの車輪出口弁18および少なくとも1つの弁28を介して)ブレーキ液リザーブタンク32内に移動させることによって、各ブレーキ回路20の少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ36a,36b内での圧力形成が完全に阻止され得るので、可能である。
【0027】
従って、電子回路装置12は、少なくとも1つのジェネレータを制御する際に、少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ36a,36bを残留圧力のない状態にするために役立つ。少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ36a,36bの残留圧力がないことに基づいて、予設定された目標ブレーキトルクを上回ることなしに、少なくとも1つのジェネレータが純粋に電気的な制動のために制御される。従って、従来のようにリザーブチャンバ/低圧リザーブチャンバによってジェネレータブレーキトルクが消費されるのに対して、制御装置10によって高められた回生効果を実現することができる。これによって、車両の運動エネルギの大部分が車両バッテリーを充電するために利用され得る。
【0028】
図1の実施例ではさらに、電子回路装置12は、少なくとも1つの目標ブレーキトルク信号14および提供された情報44(最大実施可能な可能ジェネレータブレーキトルクに関する)を考慮して、少なくとも1つのポンプ制御信号48を、少なくとも1つの管路30に接続された少なくとも1つのポンプ50a若しくは各ポンプ50aの少なくとも1つのモータ50bにアウトプットするために設計されている。少なくとも1つのポンプ50aは例えばリターンポンプ50aであってよい。従って、ブレーキ液リザーブタンク32から2つのブレーキ回路20内に追加的な量を(集中的に、かつ個別のブレーキ回路毎に)供給することができる。例えば、
図1のブレーキシステムは、2ピストンESPシステムとして構成されている。別の構成による変調システム、例えば複数のピストンを備えたポンプ、非対称ポンプおよび/または歯車ポンプを、ブレーキシステムのために同様に使用することができる。時間の経過に伴って低下する、最大実施可能な可能ジェネレータブレーキトルクが、予設定された目標ブレーキトルクよりも小さい場合、好適な形式で、少なくとも1つのポンプ制御信号48によって制御された少なくとも1つのポンプ50aによって、ブレーキ液はブレーキ液リザーブタンク32から少なくとも1つの開放制御された弁28を介して各ブレーキ回路20の少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ36aおよび/または36b内にポンプ供給可能である。従って、純粋に電気的な制動においても、少なくとも1つのジェネレータの廃止された使用可能性に迅速に反応することができる。
【0029】
図1の実施例では、各管路30が、分岐した管路区分52を有しており、この管路区分52の分岐部に2つの車輪出口弁18が接続されていて、管路区分52の分岐部とは反対側の端部に各ブレーキ回路20のポンプ50aの吸込み側が接続されている。管路区分52内に管路区分54が開口しており、この管路区分54に、各ブレーキ回路20の弁28が接続されていて、この弁28は補助的に、対応配設された吸込みライン42を介してブレーキ液リザーブタンク32に接続されている。しかしながら、
図1に示した管路30の構成は単に1例として解釈されるべきであることを指摘しておく。
【0030】
この制御装置10は各ブレーキシステムに備えることができる。各ブレーキシステムは、少なくとも簡単な構成の構成部材18,24,28,30,32,36a,36bを有している。これらの構成部材18,24,28,30,32,36a,36bを選択した場合、高い設計自由度が得られることを指摘しておく。また、ブレーキシステムのブレーキ回路20を形成するための以下の説明は、例として示されているだけである。
【0031】
図1に示したブレーキシステムの各ブレーキ回路20は切換弁56を有しており、この切換弁56は、対応配設された供給ライン40を介してマスタブレーキシリンダ24に接続されている。各ブレーキ回路20の切換弁56からそれぞれ1つの管路区分58が延びていて、この管路区分58は2つの車輪入口弁60に分岐している。各車輪入口弁60は管路区分61を介して、対応配設された車輪ブレーキシリンダ36aまたは36bに液圧接続されている。各管路区分61内に、それぞれ1つの管路区分62が開口していて、この管路区分62は、この管路区分62に接続された、対応配設された車輪出口弁18を備えている。また、各ポンプ50aの吐出側から管路区分58に管路区分64が通じている。オプション的に、リップルフィルタ66が管路区分64内に挿入されていてよい。さらに、少なくとも1つの圧力センサ、例えばフィード圧センサ68またはブレーキ圧センサが、少なくとも1つのブレーキ回路20に接続されていてよい。ブレーキシステムのための少なくとも2つのポンプ50aが使用されている場合、これらのポンプ50aは、軸70を介して共通のモータ50bによって駆動可能であってよい。
【0032】
好適な形式で、制御装置10と協働するブレーキシステムは、真空ブレーキ倍力装置72を有している。制御装置10が既に、車輪ブレーキシリンダ36a,36bのブレーキ圧のない所望の状態を保証しているので、車輪ブレーキシリンダ36aおよび36b内に存在するブレーキ圧を、リザーバチャンバ、例えば特に低圧リザーバチャンバの反応圧力未満に低下させるための電気機械式のブレーキ倍力装置の利用は省略することができる。(このような技術は出願人にとって従来技術として公知である。)従って、車輪ブレーキシリンダ36aおよび36b内の残留圧力の存在を考慮することなしに、電気機械式のブレーキ倍力装置において可能な制御方式の使用は省くことができる。従って、このブレーキシステムは、比較的安価な真空ブレーキ倍力装置72を備えていてよい。しかしながら、制御装置10と協働するブレーキシステムは、その他の型式のブレーキ倍力装置を備えていてもよいし、またはブレーキ倍力装置を備えていなくてもよいことを指摘しておく。
【0033】
図2は、制御装置と協働するブレーキシステムの別の実施例の概略図を示す。
【0034】
図2に概略的に示されたブレーキシステムは、前記実施例の実施態様としてさらに、ブレーキ回路20毎にそれぞれ1つのリザーブチャンバ80(例えば低圧リザーブチャンバ)を有しており、このリザーブチャンバ80は管路区分52に接続されている。
図2のブレーキシステムにおいては、ABS制御/ESP制御中に、もっぱらリザーブチャンバ80が使用される。従って、ABS制御/ESP制御中に、弁28の開放/開放維持/使用は必要ない。従って、従来の方法ステップがABS制御/ESP制御のために実行される。従って、
図2のブレーキシステムにおいて、ABS制御/ESP制御は、より簡単に実行可能である。
【0035】
これとは別個に、回生ブレーキにおいて弁28および吸込みライン42が使用される。リザーブチャンバ80の使用と弁28の使用との間の分離可能性が実現されたことによって、ブレーキシステムをより簡単なアルゴリズムで制御することが保証される。
【0036】
図3は、制御装置と協働するブレーキシステムの別の実施例の概略図を示す。
【0037】
図3に概略的に示されたブレーキシステムは、吸込みライン42を介してブレーキ液リザーブタンク32に接続された1つのブレーキ回路20だけを有している。ブレーキシステムの別のブレーキ回路90は、(吸込みライン42および弁28の代わりに)高圧切換弁92を有しており、この高圧切換弁92は、供給ライン40に液圧接続されている。しかも、管路区分52内に、リザーブチャンバ80および安全弁94が組み込まれている。
【0038】
マスタブレーキシリンダ24が浮動ピストンを備えている場合、吸込みラインのないブレーキ回路90の車輪ブレーキシリンダ36aおよび36b内においても残留圧力のないブレーキ圧減圧が可能であることを指摘しておく。この場合、吸込みラインのないブレーキ回路90の車輪出口弁18を開放すると、ブレーキ液がリザーブチャンバ80内に移動され、この際に同時に、マスタブレーキシリンダ24内の浮動ピストンが調節されることによって、吸込みラインのないブレーキ回路90の車輪ブレーキシリンダ36aおよび36b内に存在するブレーキ圧は、リザーブチャンバ80の反応圧力未満に低下可能である。従って、
図3のブレーキシステムにおいて、純粋に電気的な制動が可能である。追加的に、リザーブチャンバ80を備えた、吸込みラインのないブレーキ回路90の好適な設計に基づいて、ABS制御/ESP制御がより簡単に実行可能である。
【0039】
以上記載したすべてのブレーキシステムにおいて、アクティブな圧力上昇(つまり、ブレーキ操作部材16を操作することなしの圧力上昇)は、少なくとも1つのポンプ50a、開放された弁28および閉鎖された車輪出口弁18を介して実行可能である。変調システムが故障している場合でも、前記すべてのブレーキシステムは、すべての車輪ブレーキシリンダ36a,36bにおいて、さらに増強されたブレーキ機能を有している。
【0040】
図4a〜
図4cは、車両のブレーキシステムを運転するための方法の第1実施例を説明するための座標系を示す。
図4aおよび
図4bの座標系において、横座標は時間軸tである。
図4aの座標系の縦座標はブレーキトルクMを示し、これに対して
図4bの座標系の縦座標は制御信号の電流値Iを示す。
図4cの座標系内において、横座標で、前車軸にかけられた前車軸ブレーキトルクMFが示されていて、縦座標で、後車軸にかけられた後車軸ブレーキトルクMBが示されている。
【0041】
以下に記載された方法によって、できるだけ高い回生効果を有する回生ブレーキが実現されるべきである。好適な形式で、これが可能であれば、(ほぼ)常に、純粋な回生ブレーキが実施される。回生ブレーキとは、一定ではないが既知のジェネレータブレーキトルクMgが、少なくとも1つのジェネレータによって車両に及ぼされる、ということであってよい。少なくとも1つのジェネレータとは、車両の減速時における電気的な運転のために設計された電気モータ、例えば電動式の駆動モータのことであってよい。
【0042】
ただし一般的には、少なくとも1つの車両バッテリーが完全に充電されてなく、しかも車両が少なくとも1つのジェネレータを使用するためにまだ十分に高い速度を有していない場合に限り、少なくとも1つのジェネレータが車両の制動/減速のために使用可能である。従って、少なくとも1つのジェネレータによって最大実施可能な可能ジェネレータブレーキトルクMg0は時間的に変化する。最大実施可能な可能ジェネレータブレーキトルクMg0の時間的な変化にも拘わらず、いかにして、できるだけ高い回生効果が保証され得るかについて、以下に説明する。
【0043】
方法ステップを説明する前に、この方法ステップは、少なくとも1つのジェネレータのジェネレータブレーキトルクMgを消費するためだけに実施可能なわけではないことを指摘しておく。その他の使用目的のためにも、これらの方法ステップのうちのいくつかによって、運転されたブレーキシステムの少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダの、残留圧力のない状態を保証することができる。
【0044】
例えば、以下に記載した方法によって、X形のブレーキ回路分割を有するブレーキシステムが運転される。例えば上記構成のブレーキシステムのうちの1つが、以下に記載された方法によって運転されてよい。もちろん、この方法の実施可能性は、このような形式のブレーキシステムの使用に限定されるものではない。同様に、並列形のブレーキ回路分割を有するブレーキシステムも、以下に記載された(場合によっては適合された)方法ステップによって運転されてよい。
【0045】
X形のブレーキ回路分割を有するブレーキシステムは、例えばそれぞれ1つの前車軸車輪ブレーキシリンダおよびそれぞれ1つの後車軸車輪ブレーキシリンダを備えた2つのブレーキ回路を有している。2つのブレーキ回路の前車軸車輪ブレーキシリンダによって、前車軸摩擦ブレーキトルクMrfが前車軸にかけられ得る。2つの後車軸車輪ブレーキシリンダによって、後車軸摩擦ブレーキトルクMrbが後車軸にかけられ得る。少なくとも1つのジェネレータが前車軸に作用する。従って、前車軸に全体的にかけられる前車軸ブレーキトルクMFは、前車軸摩擦ブレーキトルクMrfとジェネレータブレーキトルクMgとを含有していてよい。これに対して、後車軸にかけられる後車軸ブレーキトルクMBは、後車軸摩擦ブレーキトルクMrbと同じである。
【0046】
時点t0から、運転者はブレーキシステムのブレーキ操作部材を操作する。従って、時点t0から、ブレーキ操作部材の操作によって予設定された目標ブレーキトルクM0は、ゼロに等しくないと算出される。目標ブレーキトルクM0は好適には、これが最大実施可能な可能ジェネレータブレーキトルクMg0よりも小さい場合、純粋に回生的に実施される。時点t0において、最新の車両速度が可能となり、少なくとも1つの車両バッテリーの充電状態が比較的高い最大実施可能な可能ジェネレータブレーキトルクMg0を可能にする。従って、以下の方法ステップによって、車両はまず純粋に電気的に制動される。
【0047】
このために、ブレーキシステムの少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ内、つまり前車軸車輪ブレーキシリンダ内および後車軸車輪ブレーキシリンダ内で、ブレーキ圧形成がブレーキシステムのマスタブレーキシリンダに接続されたブレーキ操作部材の操作中に阻止される。これは、ブレーキ操作部材の操作中に、各ブレーキ回路の少なくとも1つの車輪出口弁を少なくとも部分的に開放した状態に(少なくとも一時的に)制御することによって、実行される。
図4a〜
図4cの実施例では、後車軸車輪ブレーキシリンダに対応配設された後車軸車輪出口弁が、時点t0から開放された状態に制御される。これは、図示の実施例では、後車軸車輪出口弁は無電流状態で閉鎖する弁として構成されているので、ゼロに等しくない後車軸車輪出口弁制御信号Iabによって行われる。無電流状態で閉鎖する弁として構成された前車軸車輪出口弁は、図示していない、ゼロに等しい前車軸車輪出口弁制御信号によって、その閉鎖状態に維持される。しかしながら、好適であれば、後車軸車輪出口弁の代わりに前車軸車輪出口弁を消費のために使用してもよい。
【0048】
制御信号Iabが後車軸車輪出口弁にアウトプットされている間、後車軸車輪ブレーキシリンダに対応配設された後車軸車輪入口弁、および前車軸車輪ブレーキシリンダに対応配設された前車軸車輪入口弁は、その開放された状態に保たれる。後車軸車輪入口弁および前車軸車輪入口弁は、この実施例では、無電流状態で開放する弁として構成されているので、このために、ゼロに等しい後車軸車輪入口弁制御信号Iebが後車軸車輪入口弁にアウトプットされ、ゼロに等しい前車軸車輪入口弁制御信号Iefが前車軸車輪入口弁にアウトプットされる。
【0049】
時点t0から、各ブレーキ回路の少なくとも車輪出口弁(後車軸車輪出口弁)をブレーキシステムのブレーキ液リザーブタンクに接続する少なくとも1つの管路内において、少なくとも1つの弁も、ブレーキ操作部材の操作中に、少なくとも部分的に開放された状態に(少なくとも一時的に)制御される。少なくとも1つの弁が無電流状態で閉鎖する弁である場合、このためにゼロに等しくない制御信号Ivが少なくとも1つの弁にアウトプットされる。
【0050】
前記制御信号IabおよびIvによって、マスタブレーキシリンダから押し出されたブレーキ液が少なくとも部分的に、各ブレーキ回路の少なくとも1つの車輪出口弁(後車軸車輪出口弁)および少なくとも1つの弁を介してブレーキ液リザーブタンク内に移動せしめられることが保証できる。従って、前車軸車輪ブレーキシリンダによってかけられた前車軸摩擦ブレーキトルクMrf、および後車軸車輪ブレーキシリンダによってかけられた後車軸摩擦ブレーキトルクMrbも、ブレーキ操作部材の操作にも拘わらず、ゼロに等しい値に維持される。従って、時点t0から実施された方法ステップも、ブレーキシステムのすべての車輪ブレーキシリンダの残留圧力のない所望の状態を保証する。
【0051】
従って、少なくとも1つのジェネレータが時点t0から、少なくとも1つの制御されたジェネレータによって予設定された目標ブレーキトルクM0と同じジェネレータブレーキトルクMgがかけられるように、制御される。これは、(ブレーキ操作部材の操作中に)マスタブレーキシリンダから押し出されたブレーキ液が(少なくとも部分的に各ブレーキ回路の少なくとも1つの車輪出口弁および少なくとも1つの弁を介して)ブレーキ液リザーブタンク内に移動せしめられることによって、各ブレーキ回路の少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ内におけるブレーキ圧形成が阻止されるので、可能であるということを、改めて指摘しておく。
【0052】
時点t1まで、最大実施可能な可能ジェネレータブレーキトルクMg0が、目標ブレーキトルクM0よりも小さく維持される。従って、時点t0と時点t1との間では、最大実施可能な可能ジェネレータブレーキトルクMg0は、運転者制動要求を完全に電気的に実施するために十分である。従って、運転者の既知の制動要求を介して、実施しようとするジェネレータブレーキトルクMgが計算され、調節される。
【0053】
時点t1から、目標ブレーキトルクM0が最大実施可能な可能ジェネレータブレーキトルクMg0を上回る。さらに運転者ブレーキ要求を完全に満たすために、少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ内に液圧のブレーキ圧が形成されてよい。しかしながら、少なくとも1つのジェネレータによって、最大実施可能な可能ジェネレータブレーキトルクMg0がさらに要求される。運転者の既知の制動要求、および同様に少なくとも1つのジェネレータの、実施された既知のジェネレータブレーキトルクMgから、必要な追加的なブレーキトルクが算出され得る。
【0054】
図4a〜
図4cの実施例では、必要な追加的なブレーキトルクは前車軸摩擦ブレーキトルクMrfとして前車軸車輪ブレーキシリンダによってかけられる。(ゼロに等しくない後車軸車輪入口弁制御信号Iebによる)後車軸車輪出口弁の少なくとも一時的な閉鎖によって、時点t1から、運転者によって追加的に移動せしめられたブレーキ液体積が(少なくとも部分的に)前車軸車輪ブレーキシリンダ内に移動せしめられ得る。これによって、時点t1から、ゼロに等しくない前車軸摩擦ブレーキトルクMrfが形成される。
【0055】
連続的に調節可能な後車軸車輪入口弁によって、ブレーキシステムの各ブレーキ回路内の圧力制御も可能である。従って好適な形式で、時点t1から、デルタp制御に適した後車軸車輪入口弁制御信号Iebが後車軸車輪入口弁にアウトプットされる。これによって、前車軸摩擦ブレーキトルクMrfが、予設定された目標ブレーキトルクM0と最大実施可能な可能ジェネレータブレーキトルクMg0との間の差を正確に補正するために調節され得る。時点t1後においてもなお、車両はさらに運転者制動要求に応じて減速する。
【0056】
時点t2から一定の目標ブレーキトルクM0が予設定された後でも、上記利点は維持される。時点t3から、車両の運転者はブレーキ操作部材を解除し、それによって目標ブレーキトルクM0を低下させる。目標ブレーキトルクM0が最大実施可能な可能ジェネレータトルクMg0より大きければ、前車軸車輪ブレーキシリンダ内に移動せしめられたブレーキ液体積だけがマスタブレーキシリンダ内に戻し案内される。このためにさらに、デルタp制御のために適した後車軸車輪入口弁制御信号Iebが後車軸車輪入口弁にアウトプットされ得る。
【0057】
時点t4から、目標ブレーキトルクM0が、最大実施可能な可能ジェネレータブレーキトルクMg0を下回る。従って、後車軸車輪入口弁は、時点t4から再び(ゼロに等しい後車軸車輪入口弁制御信号Iebによって)開放維持され得る。新たに、予設定された目標ブレーキトルクM0に等しいジェネレータブレーキトルクMgを有する純粋に回生的/電気的な制動が実施可能である。
【0058】
時点t5とt6との間で、運転者は、最大実施可能な可能ジェネレータブレーキトルクMg0を下回る一定の目標ブレーキトルクM0を予設定する。時点t6から、目標ブレーキトルクM0は上昇し、最大実施可能な可能ジェネレータブレーキトルクMg0は、これが時点t8の後で一定に維持される前に、時点t7から再び上昇する。従って、時点t1〜t3の間に実施された方法ステップが再び繰り返され得る。
【0059】
時点t1〜t4の間および時点t7とt8との間における、ゼロに等しくない前車軸摩擦ブレーキトルクMrfの調節は、ポンプを駆動することなしに可能である。従って、ブレーキシステムの少なくとも1つのポンプは、時点t0〜t8の間で、ゼロに等しいポンプ制御信号Ipによって制御され得る。
【0060】
図4cの座標系により分かるように、時点t0〜t8の間で、ゼロに等しくない前車軸ブレーキトルクMFが常に前車軸にかけられる。これに対して、後車軸にかけられる後車軸ブレーキトルクMBは、時点t0〜t8の間で常にゼロに等しい。
【0061】
図5a〜
図5cは、車両のブレーキシステムを運転するための方法の第2実施例を説明するための座標系を示す。
図5a〜
図5cの座標系の横座標および縦座標に関して、
図4a〜
図4cが参照される。
【0062】
図5a〜
図5cの方法は、前記方法のためにも適している同じブレーキシステムによって実行され得る。単なる例として、新たにX形のブレーキ回路分割を有するブレーキシステムが使用される。
【0063】
時点t0から、運転者は、上昇する目標ブレーキトルクM0を予設定する。この目標ブレーキトルクM0は、時点t10において一定に維持された値に達し、この値は、時点t11を越えるまで維持されている。時点t0〜t11の間において、予設定された目標ブレーキトルクM0は、最大実施可能な可能ジェネレータブレーキトルクMg0を下回っている。従って、前記記載した方法ステップは新たに、電気的な制動のために実施され得る。
【0064】
時点t11から、最大実施可能な可能ジェネレータブレーキトルクMg0は低下し、時点t12において、予設定された目標ブレーキトルクM0よりも小さい。少なくとも1つのジェネレータの使用可能性の省略は、次のようにして補うことができる。つまり、少なくとも1つの制御されたポンプによってブレーキ液がブレーキ液リザーブタンクから、少なくとも1つの開放制御された弁を介して各ブレーキ回路の少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ内にポンプ供給されるように、少なくとも1つの管路に接続された少なくとも1つのポンプが制御されることによって、補うことができる。このために、少なくとも1つのポンプが、ゼロに等しくないポンプ制御信号Ipによって、時点t12から作動せしめられる。しかも、後車軸車輪出口弁はゼロに等しい後車軸車輪出口弁制御信号Iabによって閉鎖される。従って、少なくとも1つのポンプによって、ブレーキ液がブレーキ液リザーブタンクからブレーキ回路内に戻して移動せしめられる。後車軸車輪入口弁および前車軸車輪入口弁は、ゼロに等しい制御信号IebおよびIefによってさらに開放維持されるので、後車軸車輪ブレーキシリンダ内にも、また前車軸車輪ブレーキシリンダ内にもブレーキ圧が形成される。
【0065】
時点t12から、ジェネレータブレーキトルクMgは、低下する最大実施可能な可能ジェネレータブレーキトルクMg0に応じて減少せしめられるにも拘わらず、ジェネレータブレーキトルクMgと前車軸摩擦ブレーキトルクMrfと後車軸摩擦ブレーキトルクMrbとの合計としての、予設定された目標ブレーキトルクM0がさらに実行される。
【0066】
好適な形式で、後車軸車輪ブレーキシリンダ内のブレーキ圧は、前車軸車輪ブレーキシリンダ内のブレーキ圧と同じである。しかしながら、車輪ブレーキシリンダの異なる係数に基づいて、前車軸摩擦ブレーキトルクMrfは、後車軸摩擦ブレーキトルクMrbよりも著しく高い。従ってさらに、前車軸負荷によるブレーキ力分割が保証される。
【0067】
時点t13からの、目標ブレーキトルクM0の上昇に対しても、前車軸摩擦ブレーキトルクMrfおよび後車軸摩擦ブレーキトルクMrbの迅速な上昇によって、運転者制動要求がさらに満たされるように、反応することができる。最大実施可能な可能ジェネレータブレーキトルクMg0が、時点t14においてゼロに等しくなった後でも、運転者制動要求はなお確実に維持され得る。従って、純粋に電気的な制動後においても、少なくとも1つのジェネレータの廃止された使用可能性に迅速に反応することができる。
【0068】
図6a〜
図6cは、車両のブレーキシステムを運転するための方法の第3実施例を説明するための座標系を示す。
図6a〜
図6cの座標系の横座標および縦座標に関して、
図4a〜
図4cが改めて参照される。
【0069】
図6a〜
図6cの方法は、前記実施例と同じブレーキシステムによって実施され得る。以下に説明した方法ステップのために、やはり、X形のブレーキ回路分割を有するブレーキシステムが使用される。
【0070】
図6a〜
図6cの方法において、時点t0〜t3の間で、前記方法ステップが実行される。しかしながら、
図6a〜
図6cの実施例では、時点t3から運転者が目標ブレーキトルクM0を高める。この際に、マスタブレーキシリンダから押し出されたブレーキ液は、もちろん(自動的に)前車軸車輪ブレーキシリンダ内に移動せしめられ、それによって前車軸摩擦ブレーキトルクMrfが高められる。従って、高められた運転者制動要求は、ジェネレータブレーキトルクMg(最大実施可能な可能ジェネレータブレーキトルクMg0と同じ)と、一緒に高められた前車軸摩擦ブレーキトルクMrfとの合計により、さらに確実に満たされる。
【0071】
時点t20から、目標ブレーキトルクM0は最大値に達し、次いで一定に維持される。最大実施可能な可能ジェネレータブレーキトルクMg0も、時点t22で予設定された目標ブレーキトルクM0と同じになる前に、時点t21で上昇する。最大実施可能な可能ジェネレータブレーキトルクMg0の、このような上昇は、後車軸車輪入口弁のデルタp制御によっておよびさらに開放された後車軸車輪出口弁を介してブレーキ液がブレーキ液リザーブタンク内に移動可能であることによって、追加的なエネルギ回収のために利用可能である。従って、ブレーキ回路内に存在する圧力は追加的に低下せしめられることが可能で、それによってさらに、実施されたジェネレータブレーキトルクMgは、最大実施可能な可能ジェネレータブレーキトルクMg0と同じ値に調節可能である。後車軸車輪入口弁および後車軸車輪出口弁を介して前車軸車輪ブレーキシリンダ内に完全に圧力形成が行われてから、再び回生的な制動を行うことができる。
【0072】
上記方法により実施された量的消費に追加して、選択的に力的消費も実施することができる。(少なくとも1つのジェネレータの運転中に)少なくとも1つのブレーキ回路内で減少された圧力を補正するために、マスタブレーキシリンダ内のマスタブレーキシリンダ圧力が共に減少される。これは、ブレーキ倍力装置によってマスタブレーキシリンダの少なくとも1つの調節可能なピストンにかけられた力が同様に減少されるように、ブレーキシステムのブレーキ倍力装置が制御されることによって、可能である。従って運転者が、ブレーキペダルの操作中に、回生制動が行われるかどうか、またどの程度の割合で回生制動されるかを感知することはない。
【0073】
相応に、少なくとも1つのブレーキ回路内で圧力形成が行われた場合でも、少なくとも1つのジェネレータの廃止された/取り止められた使用可能性を補正するために、ブレーキ倍力装置は、このブレーキ倍力装置によって、調節可能な少なくとも1つのピストンにかけられた力が共に高められるように、制御され得る。この場合も、運転者が触覚によってブレーキ圧上昇を感知することは阻止される。