(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576629
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】米飯用日持ち向上剤および米飯類の日持ち向上方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20190909BHJP
A23L 3/3508 20060101ALI20190909BHJP
A23L 3/3562 20060101ALI20190909BHJP
A23L 29/30 20160101ALN20190909BHJP
【FI】
A23L7/10 B
A23L3/3508
A23L3/3562
!A23L29/30
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-223452(P2014-223452)
(22)【出願日】2014年10月31日
(65)【公開番号】特開2016-86706(P2016-86706A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000189659
【氏名又は名称】上野製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(72)【発明者】
【氏名】上杉 謙吾
(72)【発明者】
【氏名】貝沼 直亮
(72)【発明者】
【氏名】加藤 紘平
【審査官】
藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−068557(JP,A)
【文献】
特開昭64−060341(JP,A)
【文献】
特開2011−101605(JP,A)
【文献】
特開2013−128415(JP,A)
【文献】
特開平07−170921(JP,A)
【文献】
特開平11−285358(JP,A)
【文献】
特開2004−208683(JP,A)
【文献】
特開平05−176693(JP,A)
【文献】
特開昭59−055177(JP,A)
【文献】
特開平09−220061(JP,A)
【文献】
特開2004−159629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/00
A23L 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA/WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸、乳酸ナトリウム、重合度1の糖アルコールを10重量%以下、重合度2の糖アルコールを40〜56重量%、重合度3の糖アルコールを17〜33重量%および重合度4以上の糖アルコールを13〜29重量%含有する還元水飴、ならびにコハク酸およびアジピン酸よりなる群から選ばれる1種以上の有機酸を含有し、乳酸ナトリウムの割合が乳酸100重量部に対し60〜150重量部であり、コハク酸およびアジピン酸よりなる群から選ばれる1種以上の有機酸の割合が乳酸100重量部に対し2.27〜23重量部であり、還元水飴の割合が乳酸100重量部に対し120〜300重量部(固形分として)であり、かつ、pHが3〜3.88である、米飯用日持ち向上剤。
【請求項2】
乳酸の割合が日持ち向上剤全量に対して5〜35重量%である、請求項1記載の米飯用日持ち向上剤。
【請求項3】
還元水飴が、重合度1の糖アルコールを8重量%以下、重合度2の糖アルコールを42〜54重量%、重合度3の糖アルコールを19〜31重量%および重合度4以上の糖アルコールを15〜27重量%含有するものである、請求項1または2に記載の米飯用日持ち向上剤。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の米飯用日持ち向上剤を炊飯水または炊飯後の米飯類に0.12〜0.7重量%となるよう添加することを特徴とする、米飯類の日持ち向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米飯類の日持ち向上に適した液状の日持ち向上剤に関する。
【背景技術】
【0002】
弁当用白米やおにぎり等の米飯類の製造においては、従来から各種の有機酸、有機酸塩、合成保存料、天然物由来の保存料などを用いて、米飯類の保存性改善が検討されてきた。その中でも保存効果や安全性の点から、醸造酢の添加による方法が主流となっている。しかしながら、醸造酢により十分な保存効果を得るためには、添加量を増やす必要があり、喫食時に醸造酢に含まれる酢酸に起因する酸味や酸臭が問題となっていた。特にスーパーマーケットやコンビニエンスストアで提供される弁当などは、電子レンジで加熱した後、喫食されることが多く、酸味や酸臭をより強く感じるため、改善が求められていた。また、弁当の白飯などは、時間の経過により、表面が乾燥し、白飯本来の食感が保持されないという課題もあった。
【0003】
上記のような背景から、米飯類の味質や食感に影響を与えずに保存性を改善するための日持ち向上剤や食味改良剤が従来より提案されている。
【0004】
特許文献1には、有機酸、有機酸塩およびアミノ酸を含有する米飯日持向上用製剤が提案されているが、有機酸として酢酸を含む製剤を米飯に添加した場合、米飯本来の風味が損なわれやすく、特に炊飯直後や電子レンジでの加熱後に酸味や酸臭を強く感じるという問題があった。また、アミノ酸を添加すると、米飯が着色し易いという課題もあった。
【0005】
特許文献2には、不揮発性有機酸、冷水可溶性高分子多糖類、還元水あめおよび/またはデキストリンを含有する米飯用食味改良剤が提案されている。しかしながら、アラビアガムやカラギナンといった高分子多糖類は、水への溶解性は高いものの、強い粘性を有するため、米飯類に添加した場合、米飯本来の食感が損なわれ易く、また、高分子多糖類によるものと思われる異味・異臭が感じられる傾向があった。
【0006】
したがって、米飯類の味質や食感に影響を与えずに保存性を改善するという課題は、未だ解決されておらず、更なる改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−159629号公報
【特許文献2】特開2004−208683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、米飯の味質や食感を低下させることがなく、優れた日持ち向上効果を有する米飯用日持ち向上剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、乳酸、乳酸ナトリウム、特定の還元水飴および特定の有機酸を含む液体製剤が、米飯の風味や品質を低下させることなく、米飯の保存性を向上させ得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、乳酸、乳酸ナトリウム、重合度3の糖アルコールを17〜33重量%および重合度4以上の糖アルコールを13〜29重量%含有する還元水飴、ならびにコハク酸、アジピン酸およびフィチン酸よりなる群から選ばれる1種以上の有機酸を含有し、乳酸ナトリウムの割合が乳酸100重量部に対し40〜250重量部である、米飯用日持ち向上剤を提供する。
【0011】
本発明は、又、上記米飯用日持ち向上剤を炊飯水または炊飯後の米飯類に添加することを特徴とする米飯類の日持ち向上方法も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の米飯用日持ち向上剤の構成成分である乳酸および乳酸ナトリウムは、食品に添加可能なものであればよく、合成法および発酵法のいずれによって得られたものであっても使用可能である。
【0013】
本発明の米飯用日持ち向上剤における乳酸の割合は特に限定されないが、例えば日持ち向上剤全量に対して5〜35重量%、好ましくは8〜25重量%、より好ましくは10〜20重量%であり得る。
【0014】
本発明の米飯用日持ち向上剤における乳酸ナトリウムの割合は、乳酸100重量部に対し、40〜250重量部であればよく、50〜200重量部が好ましく、60〜150重量部がより好ましい。乳酸ナトリウムの割合が乳酸100重量部に対し40重量部未満である場合、酸味が強く食味が損なわれる傾向があり、乳酸100重量部に対し250重量部を超える場合、静菌効果が弱くなる傾向がある。
【0015】
本発明の米飯用日持ち向上剤は、特定の還元水飴を含有するものである。本発明の米飯用日持ち向上剤に用いる還元水飴は、重合度3の糖アルコールを17〜33重量%および重合度4以上の糖アルコールを13〜29重量%含有するものであればよく、重合度3の糖アルコールを18〜32重量%および重合度4以上の糖アルコールを14〜28重量%含有するものが好ましく、重合度3の糖アルコールを19〜31重量%および重合度4以上の糖アルコールを15〜27重量%含有するものがより好ましい。
尚、本発明において用いる還元水飴中の各種糖アルコールの割合は、該還元水飴中の固形分あたりの割合を示すものである。
【0016】
また、本発明において用いる好適な還元水飴として、固形分中の糖アルコールの割合が(a)重合度1の糖アルコール:10重量%以下、重合度2の糖アルコール:40〜56重量%、重合度3の糖アルコール:17〜33重量%、重合度4以上の糖アルコール:13〜29重量%であるもの、(b)重合度1の糖アルコール:9重量%以下、重合度2の糖アルコール:41〜55重量%、重合度3の糖アルコール:18〜32重量%、重合度4以上の糖アルコール:14〜28重量%であるもの、および(c)重合度1の糖アルコール:8重量%以下、重合度2の糖アルコール:42〜54重量%、重合度3の糖アルコール:19〜31重量%、重合度4以上の糖アルコール:15〜27重量%であるものが挙げられる。これらの中でも、酸味および酸臭のマスキング効果に優れる点で、(c)の還元水飴が特に好ましい。ここで、重合度1の糖アルコールとは、単糖を還元して得られる糖アルコールを意味し、本明細書において「単糖アルコール」とも称する。また、本明細書において、重合度Xの糖アルコール(Xは2以上の整数)を「X糖アルコール」とも称する。
【0017】
本発明において用いる還元水飴中の固形分の割合は特に限定されないが、通常は60〜80重量%であり、好ましくは65〜75重量%である。
【0018】
本発明の米飯用日持ち向上剤に用いる還元水飴は、タピオカ澱粉、コーンスターチ等の澱粉を、上記条件に該当するように酵素によって加水分解し、精製および濃縮して製造したものの他、上記条件に該当する市販品を用いてもよい。本発明の米飯用日持ち向上剤に適用可能な市販の還元水飴としては、上野製薬株式会社製のMU−50などが例示される。また、個別に製造した複数種の糖アルコール(又は糖アルコール溶液)を混合することによって上記と同じ成分組成の糖アルコールシロップを作成し、これを本発明の米飯用日持ち向上剤における還元水飴として用いることもできる。
【0019】
本発明の米飯用日持ち向上剤における還元水飴の割合は、酸味抑制効果および照りやツヤ等の外観改善効果の点で、乳酸100重量部に対し、還元水飴中の固形分として100〜300重量部であることが好ましく、150〜275重量部であることがより好ましく、165〜250重量部であることがさらに好ましい。還元水飴の割合が、乳酸100重量部に対して100重量部(固形分として)未満の場合、酸臭および酸味が強くなる傾向があり、300重量部(固形分として)を超える場合、粘度が高くなり製剤化が困難となる傾向や、日持ち向上剤を添加した米飯類の味質に影響が及ぶ可能性がある。
【0020】
本発明の米飯用日持ち向上剤は、上記乳酸、乳酸ナトリウムおよび還元水飴に加え、コハク酸、アジピン酸およびフィチン酸よりなる群から選ばれる1種以上の有機酸を含有する。これら有機酸の中でも、コハク酸およびアジピン酸が好ましく、米飯の味質改善効果の点でコハク酸がより好ましい。
本発明の米飯用日持ち向上剤におけるこれら1種以上の有機酸の割合の合計は、乳酸100重量部に対して、1.5〜23重量部が好ましく、2.5〜15重量部がより好ましく、3.5〜10重量部がさらに好ましい。有機酸の割合の合計が、乳酸100重量部に対して1.5重量部未満の場合、米飯の旨味が弱くなる傾向があり、23重量部を超える場合、均一な液剤が得られ難い傾向がある。
【0021】
また、本発明の米飯用日持ち向上剤のpHは、特に限定されないが、3〜5が好ましく、3.1〜4.7がより好ましく、3.2〜4.5がさらに好ましい。pHが3未満の場合、日持ち向上効果は増すが酸味が強くなり、pHが5を超える場合、日持ち向上効果が低下する傾向がある。
【0022】
本発明の米飯用日持ち向上剤には、必要に応じて、乳化剤、可溶性デンプン等の副成分を添加してもよい。これら副成分の割合は、乳酸100重量部に対して、1重量部以下が好ましく、0.8重量部以下がより好ましく、0.2〜0.5重量部がさらに好ましい。
【0023】
本発明の好適な米飯用日持ち向上剤として、例えば(A)乳酸15〜19重量%、乳酸ナトリウム8〜12重量%、還元水飴(三糖アルコールを17〜33重量%および四糖以上の糖アルコールを13〜29重量%含むもの)25〜30重量%(固形分として)、ならびに有機酸0.8〜1.2重量%を含有するもの、(B)乳酸10〜14重量%、乳酸ナトリウム14〜18重量%、還元水飴(三糖アルコールを17〜33重量%および四糖以上の糖アルコールを13〜29重量%含むもの)25〜30重量%(固形分として)、ならびに有機酸0.8〜1.2重量%を含有するもの、(C)乳酸15〜19重量%、乳酸ナトリウム8〜12重量%、還元水飴(三糖アルコールを17〜33重量%および四糖以上の糖アルコールを13〜29重量%含むもの)25〜30重量%(固形分として)、ならびにコハク酸0.8〜1.2重量%を含有するもの等が挙げられる。
【0024】
本発明の米飯用日持ち向上剤は液体の形態であり、該日持ち向上剤を構成する乳酸、乳酸ナトリウム、還元水飴中の固形分、有機酸(コハク酸、アジピン酸およびフィチン酸より選ばれる1種以上)および必要に応じて添加し得る副成分以外の残部は、水である。食品添加物として一般に流通している乳酸および乳酸ナトリウムは、水溶液(例えば50%濃度)の形態であることが多い。例えば、乳酸および乳酸ナトリウムの50%水溶液を本発明の米飯用日持ち向上剤の調製に用いる場合、通常、水を別途添加せずとも液体の日持ち向上剤が得られる。
【0025】
したがって、本発明の米飯用日持ち向上剤を調製する方法は、特に限定されず、例えば、各成分(水溶液形態のものを含む)を単純に混合する方法や各成分と水を単純に混合する方法等によって該日持ち向上剤を調製することができる。
【0026】
本発明の米飯用日持ち向上剤の使用方法としては、特に限定されず、例えば、本発明の米飯用日持ち向上剤を炊飯水に添加する方法、炊飯後の米飯類に添加し混合する方法、スプレー容器等に充填し米飯類の表面に噴霧する方法等が挙げられる。
【0027】
本発明の米飯用日持ち向上剤の米飯類への添加量は特に限定されず、日持ち向上剤の成分濃度に応じて適宜決定し得る。好適な態様において、本発明の米飯用日持ち向上剤は、生米重量に対する乳酸の割合が0.005〜0.7重量%、好ましくは0.016〜0.375重量%、より好ましくは0.03〜0.2重量%となる量で米飯類へ添加される。本発明の米飯用日持ち向上剤の米飯類への添加量が、生米重量に対する乳酸の割合が0.005重量%未満となる量である場合、日持ち向上効果が不十分となる傾向があり、生米重量に対する乳酸の割合が0.7重量%を超える量である場合、米飯の味質への影響が大きくなる傾向がある。本発明の米飯用日持ち向上剤を炊飯後の米飯類に適用する場合、米飯類の水分含量等から生米に相当する重量を算出して添加量を決定すればよい。
【0028】
本発明の米飯用日持ち向上剤を適用し得る米飯類としては、白飯、炊き込みご飯、チャーハン、おにぎり、リゾット、パエリア、クッパ、赤飯、ピラフ、おこわ、雑炊等が例示されるが、特に白飯および炊き込みご飯に好ましく適用し得る。
【0029】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0030】
実施例1〜3および比較例1〜10
表1に示す組成の製剤を調製した。調製した各製剤を用いて米飯を製造し、得られた米飯について、保存性、米飯硬度、官能評価の各試験を下記方法により実施した。
【0031】
米飯の製造
生米160gを洗米した後、炊き水230gを加え、表1に示す各製剤を0.8g(生米重量に対して0.5重量%)添加し、家庭用炊飯器(象印マホービン株式会社製、NS−WB10−CA)により約40分間炊飯し、各試験に供する米飯とした。
【0032】
保存性試験
炊き上げた試験区白飯をマヨネーズ瓶に120g入れ、Bacillus cereus IAM1029芽胞懸濁液を2CFU/g白飯になる様0.5ml接種し、30℃で保存した。保存開始後0、6、12および16時間後に各試験区から10gずつ2検体をサンプリングし、標準寒天培地を用いた平板混釈法により、生菌数を測定した。製剤による保存効果は、細菌検査結果より散布図を作製し、指数近似曲線より算出した数式により、菌数が10
5CFU/gに到達する日(有効保存日数)を求め、下記評価基準により判定した。結果を表2に示す。
[評価基準]
◎:対照と比較して2日以上の延長効果
○:対照と比較して1日以上2日未満の延長効果
×:対照と比較して1日未満の延長効果
【0033】
米飯硬度測定試験
上記「米飯の製造」に記載した方法と同様の方法により、炊飯して得られた米飯50gをステンレス製カップに採り、FUDOH製レオメーター(平板プランジャー φ17mm)を用いて、テーブルが10mm上昇した時の荷重を測定し、硬度の値とした。また、4℃で4時間、開放条件で放置した後、同様に硬度を測定した。放置前後の硬度から、下記評価基準により判定した。結果を表2に示す。
[評価基準]
○:4時間放置後の硬度の値が対照の90%以下である試験区
×:4時間放置後の硬度の値が対照の90%より大きい試験区
【0034】
官能評価
上記「米飯の製造」に記載した方法と同様の方法により、炊飯して得られた米飯を用い、10名のパネラーにより、酸臭および酸味について、下記採点基準により採点し、その合計点数を求め、下記評価基準により判定した。結果を表2に示す。
[採点基準]
酸臭・酸味が強い:10点
普通 : 5点
酸臭・酸味が弱い: 1点
[評価基準]
○:有意差なし
×:t検定により対照と有意水準5%で差が認められた(酸臭、酸味が強い)
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】