特許第6576631号(P6576631)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6576631-アミン化合物、および有機電界発光素子 図000025
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576631
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】アミン化合物、および有機電界発光素子
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/91 20060101AFI20190909BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20190909BHJP
   C07D 333/76 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   C07D307/91CSP
   H05B33/14 A
   H05B33/22 D
   C07D333/76
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-252956(P2014-252956)
(22)【出願日】2014年12月15日
(65)【公開番号】特開2016-113396(P2016-113396A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年11月6日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】高田 一範
(72)【発明者】
【氏名】糸井 裕亮
【審査官】 伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/006708(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/058826(WO,A1)
【文献】 特表2012−526804(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/034795(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0299793(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
H01B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表されるアミン化合物。
【化1】

上記一般式(1)において、
は、OまたはSであり、
ArおよびArは、互いに独立して、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、または置換もしくは無置換の環形成炭素数2〜30のヘテロアリール基であり、
、R、RおよびRは、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜20のアリール基、または任意の隣接した置換基と結合して形成された環員数5〜7の環構造であり、
は、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基であり、
n1〜n4は、互いに独立して、0〜4の整数であり、
m1は、0〜3の整数であり、
pは、1〜3の整数である。
Arは、下記を除く。


Arは、下記(i)〜(v)を除く。

【請求項2】
下記の一般式(1)で表されるアミン化合物。
【化1】
上記一般式(1)において、
は、OまたはSであり、
ArおよびArは、互いに独立して、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、または置換もしくは無置換の環形成炭素数2〜30のヘテロアリール基であり、
、R、RおよびRは、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜20のアリール基、または任意の隣接した置換基と結合して形成された環員数5〜7の環構造であり、
は、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基であり、
n1〜n4は、互いに独立して、0〜4の整数であり、
m1は、0〜3の整数であり、
pは、1〜3の整数である。
Arは、下記を除く。

前記一般式(1)において、
フルオレニル基とアリールアミノ基とを連結するp個のフェニレン基のうち少なくとも1つ以上は、前記フルオレニル基と前記アリールアミノ基とをメタ位で連結する
【請求項3】
前記Arは、環員数5〜6の芳香環および複素環のいずれかが、2または3環縮合して形成された、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基である、請求項1または2に記載のアミン化合物。
【請求項4】
下記の一般式(1)で表されるアミン化合物。
【化1】
上記一般式(1)において、
は、OまたはSであり、
Arは、環員数5〜6の芳香環および複素環のいずれかが、2または3環縮合して形成された、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基であり、
Arは、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、または置換もしくは無置換の環形成炭素数2〜30のヘテロアリール基であり、
、R、RおよびRは、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜20のアリール基、または任意の隣接した置換基と結合して形成された環員数5〜7の環構造であり、
は、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基であり、
n1〜n4は、互いに独立して、0〜4の整数であり、
m1は、0〜3の整数であり、
pは、1〜3の整数である。
【請求項5】
前記Arは、環員数5〜6の芳香環および複素環のいずれかが、2または3環縮合して形成された、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアミン化合物。
【請求項6】
前記Arは、下記の一般式(2)で表される置換基である、請求項5に記載のアミン化合物。
【化2】
前記一般式(2)において、
は、OまたはSであり、
およびRは、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜20のアリール基、または任意の隣接した置換基と結合して形成された環員数5〜7の環構造であり、
n5は、0〜4の整数であり、
m2は、0〜3の整数である。
【請求項7】
陽極と発光層との間に位置する少なくともいずれか1つ以上の層中に、請求項1〜6のいずれか一項に記載されたアミン化合物を含む、有機電界発光素子。
【請求項8】
前記発光層に隣接する層に前記アミン化合物を含む、請求項7に記載の有機電界発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミン化合物、および有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機電界発光表示装置(Organic Electroluminescence Display)の開発が進められている。そこで、有機電界発光表示装置に使用される自発光型の発光素子である有機電界発光素子(Organic Electroluminescence Device)の開発が盛んに行われている。
【0003】
有機電界発光素子の構造としては、例えば、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層および陰極を順に積層した積層構造が知られている。このような有機電界発光素子では、陽極および陰極から注入された正孔および電子が発光層中において再結合することで励起子を生成し、生成された励起子が基底状態に遷移することにより発光が行われる。
【0004】
ここで、有機電界発光素子の発光寿命を向上させるために、各層の材料として様々な化合物が検討されている。例えば、特許文献1〜3には、有機電界発光素子の正孔輸送材料として使用可能なアミン(amine)化合物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3079909号明細書
【特許文献2】特許第3983215号明細書
【特許文献3】国際公開第2011/059099号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1〜3に開示されている正孔輸送材料を用いた有機電界発光素子では、発光や素子寿命が十分ではないという問題点があった。そのため、有機電界発光素子の発光や素子寿命をさらに向上させることが可能な材料化合物が求められていた。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、有機電界発光素子の発光寿命を改善することが可能な、新規かつ改良されたアミン化合物、および該アミン化合物を含む有機電界発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、下記の一般式(1)で表されるアミン化合物が提供される。
【化1】
上記一般式(1)において、
は、OまたはSであり、
ArおよびArは、互いに独立して、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール(aryl)基、または置換もしくは無置換の環形成炭素数2〜30のヘテロアリール(heteroaryl)基であり、
、R、RおよびRは、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル(alkyl)基、置換もしくは無置換の炭素数5〜10のシクロアルキル(cycloalkyl)基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜20のアリール基、または任意の隣接した置換基と結合して形成された環員数5〜7の環構造であり、
は、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基であり、
n1〜n4は、互いに独立して、0〜4の整数であり、
m1は、0〜3の整数であり、
pは、1〜3の整数である。
【0009】
この構成によれば、上記のアミン化合物を用いることにより、有機電界発光素子の発光寿命を向上させることができる。
【0010】
前記一般式(1)において、フルオレニル(fluorenyl)基とアリールアミノ(arylamino)基とを連結するp個のフェニレン(phenylene)基のうち少なくとも1つ以上は、前記フルオレニル基と前記アリールアミノ基とをメタ(meta)位で連結してもよい。
【0011】
この構成によれば、上記のアミン化合物を用いることにより、有機電界発光素子の発光寿命をさらに向上させることができる。
【0012】
前記Arは、環員数5〜6の芳香環および複素環のいずれかが、2または3環縮合して形成された、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基であってもよい。
【0013】
この構成によれば、上記のアミン化合物を用いることにより、有機電界発光素子の発光寿命をさらに向上させることができる。
【0014】
前記Arは、環員数5〜6の芳香環および複素環のいずれかが、2または3環縮合して形成された、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基であってもよい。
【0015】
この構成によれば、上記のアミン化合物を用いることにより、有機電界発光素子の発光寿命をさらに向上させることができる。
【0016】
前記Arは、下記の一般式(2)で表される置換基であってもよい。
【化2】
前記一般式(2)において、
は、OまたはSであり、
およびRは、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜20のアリール基、または任意の隣接した置換基と結合して形成された環員数5〜7の環構造であり、
n5は、0〜4の整数であり、
m2は、0〜3の整数である。
【0017】
この構成によれば、上記のアミン化合物を用いることにより、有機電界発光素子の発光寿命をさらに向上させることができる。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、陽極と発光層との間に位置する少なくともいずれか1つ以上の層中に、上記のアミン化合物を含む、有機電界発光素子が提供される。
【0019】
この構成によれば、有機電界発光素子の発光寿命がさらに向上する。
【0020】
前記発光層に隣接する層に上記のアミン化合物を含んでもよい。
【0021】
この構成によれば、有機電界発光素子の発光寿命がさらに向上する。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、有機電界発光素子の発光寿命を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0025】
<1.本発明の一実施形態に係るアミン化合物>
まず、本発明の一実施形態に係るアミン化合物について説明する。本実施形態に係るアミン化合物は、有機電界発光素子の正孔輸送材料として好適に用いることが可能な、下記の一般式(1)で表される化合物である。
【0026】
【化3】
【0027】
上記一般式(1)において、
は、OまたはSであり、
ArおよびArは、互いに独立して、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、または任意の隣接した置換基と結合して形成された環員数5〜7の環構造であり、
、R、RおよびRは、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜20のアリール基、または任意の隣接した置換基と縮環して形成された置換もしくは無置換のアリール基またはヘテロアリール基であり、
は、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基であり、
n1〜n4は、互いに独立して、0〜4の整数であり、
m1は、0〜3の整数であり、
pは、1〜3の整数である。
【0028】
ただし、上記一般式(1)において、Arは、アミノ基によって置換されていないことが好ましく、Arは、フルオレニル基ではないことが好ましい。
【0029】
上記一般式(1)で表されるアミン化合物は、分子構造中に正孔輸送能を有するアリールアミノ基を含むため、高い正孔輸送能を有する。また、一般式(1)で表されるアミン化合物は、分子構造中に電子耐性の高いジベンゾヘテロール(dibenzoheterole)環を含むため、発光層から侵入してきた電子に対して高い耐久性を有する。そのため、正孔輸送能および耐久性が高い一般式(1)で表されるアミン化合物を含むことにより、有機電界発光素子は、発光寿命を向上させることができる。
【0030】
また、上記一般式(1)で表されるアミン化合物は、連結基(1つ以上のフェニレン基)を介してフルオレニル基が置換されているため、ArおよびAr近傍の立体障害を緩和することができる。そのため、一般式(1)で表されるアミン化合物は、ArおよびArに対して多様な分子修飾をすることが可能になる。
【0031】
なお、有機電界発光素子の素子寿命を向上させるためには、一般式(1)で表されるアミン化合物は、有機電界発光素子の発光層と陽極との間に位置する少なくともいずれか1つ以上の層中に含まれることが好ましい。具体的には、一般式(1)で表されるアミン化合物は、正孔注入層、および正孔輸送層などの層中の少なくともいずれか1つ以上に含まれることが好ましい。
【0032】
ただし、一般式(1)で表されるアミン化合物は、発光層からの電子の侵入および拡散を効果的に防止するためには、発光層に隣接した層(例えば、正孔輸送層)に含まれることがより好ましい。
【0033】
また、上記の一般式(1)において、フルオレニル基とアリールアミノ基とを連結するp個のフェニレン基のうち少なくとも1つ以上は、フルオレニル基とアリールアミノ基とをメタ位で連結することが好ましい。ここで、「連結する」とは、置換基同士が直接連結している場合に加えて、置換基同士が連結基(例えば、フェニレン基)を介して連結している場合も含む。
【0034】
例えば、p=1である場合、フルオレニル基およびアリールアミノ基は、メタ位にフルオレニル基およびアリールアミノ基が置換されたフェニレン基によって連結されることが好ましい。また、p=2または3である場合、フルオレニル基およびアリールアミノ基は、メタ位にフルオレニル基、アリールアミノ基、またはフェニレン基が置換された少なくとも1つ以上のフェニレン基を含む連結基によって連結されていることが好ましい。
【0035】
フルオレニル基とアリールアミノ基とがメタ位で連結されている場合、一般式(1)で表されるアミン化合物は、側鎖部分のかさ高さが増し、電子が正孔輸送層側に拡散することを抑制することができると考えられる。そのため、一般式(1)で表されるアミン化合物は、有機電界発光素子の発光寿命をさらに向上させることができるため、より好ましい。
【0036】
また、上記の一般式(1)において、Arは、環員数5〜6の芳香環および複素環のいずれかが2または3環縮合して形成された置換もしくは無置換のアリール基またはヘテロアリール基であることが好ましい。また、Arは、環員数5〜6の芳香環および複素環のいずれかが2または3環縮合して形成された置換もしくは無置換のアリール基またはヘテロアリール基であることが好ましい。
【0037】
環員数5〜6の芳香環および複素環のいずれかが2または3環縮合して形成されたアリール基またはヘテロアリール基としては、例えば、フルオレニル(fluorenyl)基、アントリル(anthryl)基、ナフチル(naphthyl)基、ジベンゾフラニル(dibenzofuranyl)基、ジベンゾチオフェニル(dibenzothiophenyl)基、カルバゾリル(carbazolyl)基、フェナントレニル(phenanthrenyl)基、インドリル(indolyl)基、およびキノリル(quinolyl)基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
ArまたはArがこのような置換基である場合、一般式(1)で表されるアミン化合物は、縮合環系の置換基を多く有し、嵩高い分子となるため、電子阻止能が向上し、発光層から侵入してきた電子の拡散を防止することができる。そのため、一般式(1)で表されるアミン化合物は、有機電界発光素子の発光寿命をさらに向上させることができるため、より好ましい。
【0039】
さらに、上記の一般式(1)において、Arは、下記の一般式(2)で表される置換基であることがより好ましい。
【0040】
【化4】
【0041】
上記一般式(2)において、
は、OまたはSであり、
およびRは、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜20のアリール基、または任意の隣接した置換基と結合して形成された環員数5〜7の環構造であり、
n5は、0〜4の整数であり、
m2は、0〜3の整数である。
【0042】
この構成によれば、一般式(1)で表されるアミン化合物は、分子構造中に電子耐性の高いジベンゾヘテロール環をさらに含むため、発光層から侵入してきた電子に対する耐久性がさらに向上する。したがって、一般式(1)で表されるアミン化合物を含む有機電界発光素子は、発光寿命がさらに向上するため、より好ましい。
【0043】
ここで、上述したアリール基およびヘテロアリール基の例としては、フェニル(phenyl)基、ビフェニル(biphenyl)基、ターフェニル(terphenyl)基、ナフチル(naphthyl)基、フェニルナフチル基(phenylnaphthyl)基、ナフチルフェニル基(naphthylphenyl)基、アントリル(anthryl)基、フェナントレニル(phenanthrenyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、インデニル(indenyl)基、ピレニル(pyrenyl)基、フルオランテニル(fluoranthenyl)基、トリフェニレニル(triphenylenyl)基、ピラジニル(pyrazinyl)基、ピロリル(pyrrolyl)基、ピリジル(pyridyl)基、ピリミジル(pyrimidyl)基、ピリダジル(pyridazyl)基、ピラジル(pyrazinyl)基、フラニル(furanyl)基、ピラニル(pyranyl)基、チエニル(thienyl)基、キノリル(quinolyl)基、イソキノリル(isoquinolyl)基、ベンゾフラニル(benzofuranyl)基、ジベンゾチオフェニル(dibenzothiophenyl)基、インドリル(indolyl)基、ベンゾオキサゾリル(benzoxazolyl)基、ベンゾチアゾリル(benzothiazolyl)基、キノキサリル(quinoxalyl)基、ベンゾイミダゾリル(benzoimidazolyl)基、ピラゾリル(pyrazolyl)基、テトラゾリル(tetrazolyl)基、イミダゾリル(imidazolyl)基、オキサゾリル(oxazolyl)基、イソオキサゾリル(isoxazolyl)基、チアゾリル(thiazolyl)基、イソチアゾリル(isothiazolyl)基、およびジベンゾヘテロリル(dibenzoheterolyl)基などを挙げることができる。
【0044】
上述したアルキル基の例としては、メチル(methyl)基、エチル(ethyl)基、プロピル(propyl)基、ブチル(butyl)基、オクチル(octyl)基、デシル(decyl)基等の直鎖状アルキル基、およびt−ブチル基等の分岐状アルキル基などを挙げることができる。また、上述したシクロアルキル基の例としては、シクロペンチル(cyclopentyl)基、シクロヘキシル(cyclohexyl)基、シクロヘプチル(cycloheptyl)基、シクロオクチル(cyclooctyl)基などを挙げることができる。
【0045】
ArおよびArを構成するアリール基およびヘテロアリール基を置換する置換基としては、上述したアルキル基、アリール基およびヘテロアリール基の他に、アルキルオキシ(alkyloxy)基、トリアルキルシリル(trialkylsilyl)基、アリールオキシ(aryloxy)基、アリールチオ(arylthio)基、トリアリールシリル(triarylsilyl)基、アルキルジアリールシリル(alkyldiarylsilyl)基、ジアルキルアリールシリル(dialkylarylsilyl)基などが挙げられる。なお、これらの置換基は、同様の置換基でさらに置換されていてもよく、隣接する置換基同士で結合して5〜7員環を形成していてもよい。
【0046】
ここで、本実施形態に係るアミン化合物の具体例である化合物1〜54の構造式を以下に示す。ただし、本実施形態に係るアミン化合物は、以下の化合物に限定されるものではない。
【0047】
【化5】
【0048】
【化6】
【0049】
【化7】
【0050】
以上にて、本実施形態に係るアミン化合物について詳細に説明した。
【0051】
本実施形態に係るアミン化合物は、分子構造中にアリールアミノ基を有し、正孔輸送能を有するため、正孔輸送材料として好適に用いることができる。また、本実施形態に係るアミン化合物は、電子耐性および電子阻止能が高いため、例えば、正孔輸送層に侵入した電子によって正孔輸送層が劣化することを防止し、さらに正孔注入層や陽極へ電子が拡散することを防止することができる。したがって、本実施形態に係るアミン化合物によれば、有機電界発光素子の素子寿命を向上させることができる。
【0052】
<2.本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子>
次に、図1を参照しながら、本発明の一実施形態に係る一般式(1)で表される化合物を含む有機電界発光素子について、簡単に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子の一例を示す概略断面図である。
【0053】
図1に示すように、本実施形態に係る有機電界発光素子100は、基板110と、基板110上に配置された第1電極120と、第1電極120上に配置された正孔注入層130と、正孔注入層130上に配置された正孔輸送層140と、正孔輸送層140上に配置された発光層150と、発光層150上に配置された電子輸送層160と、電子輸送層160上に配置された電子注入層170と、電子注入層170上に配置された第2電極180と、を備える。
【0054】
ここで、本実施形態に係るアミン化合物は、例えば、正孔注入層130および正孔輸送層140のうち、少なくともいずれか一方に含まれる。また、本実施形態に係るアミン化合物は、これらの層の両方に含まれていてもよい。特に、本実施形態に係るアミン化合物は、発光層150に隣接する正孔輸送層140に含まれることが好ましい。
【0055】
なお、有機電界発光素子100の第1電極120および第2電極180の間に配置された各有機薄膜層は、公知の様々な方法、例えば蒸着法等で形成することができる。
【0056】
基板110は、一般的な有機電界発光素子で使用される基板を使用することができる。例えば、基板110は、ガラス(glass)基板、半導体基板、または透明なプラスチック(plastic)基板等であってもよい。
【0057】
基板110上には、第1電極120が形成される。第1電極120は、例えば、陽極であり、仕事関数が大きい金属、合金、導電性化合物等によって透過型電極として形成される。第1電極120は、例えば、透明であり、導電性に優れる酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)等で形成されてもよい。また、第1電極120は、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)などを用いて反射型電極として形成されてもよい。
【0058】
第1電極120上には、正孔注入層130が形成される。正孔注入層130は、第1電極120からの正孔の注入を容易にする機能を備えた層であり、例えば、約10nm〜約150nmの厚さにて形成される。
【0059】
正孔注入層130は、本実施形態に係るアミン化合物で形成されてもよく、また、公知の材料にて形成されてもよい。正孔注入層130を形成する公知の材料としては、例えば、トリフェニルアミン含有ポリエーテルケトン(TPAPEK)、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(PPBI)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−[4−(フェニル−m−トリル−アミノ)−フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミン(DNTPD)、銅フタロシアニン等のフタロシアニン化合物、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPB)、4,4’,4”−トリス{N,Nジフェニルアミノ}トリフェニルアミン(TDATA)、4,4’,4”−トリス(N,N−2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)、ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(Pani/DBSA)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホネート)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/カンファースルホン酸(Pani/CSA)、または、ポリアニリン/ポリ(4−スチレンスルホネート)(PANI/PSS)等を挙げることができる。
【0060】
正孔注入層130上には、正孔輸送層140が形成される。正孔輸送層140は、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料を含む層であり、例えば、約10nm〜約150nmの厚さにて形成される。なお、正孔輸送層140は複数層にて形成されてもよい。
【0061】
また、正孔輸送層140は、本実施形態に係るアミン化合物で形成されることが好ましいが、正孔注入層130が本実施形態に係るアミン化合物にて形成された場合、正孔輸送層140は、公知の正孔輸送材料にて形成されてもよい。公知の正孔輸送材料としては、例えば、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、N−フェニルカルバゾール(N−phenylcarbazole)、ポリビニルカルバゾール(polyvinylcarbazole)などのカルバゾール誘導体、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、4,4’,4”−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPB)等を挙げることができる。
【0062】
正孔輸送層140上には、発光層150が形成される。発光層150は、蛍光、りん光等により光を発する層であり、例えば、約10nm〜約60nmの厚さにて形成される。発光層150の材料としては、公知の発光材料を用いることができる。具体的には、公知の発光材料であるフルオランテン(fluoranthene)誘導体、スチリル(styryl)誘導体、ピレン(pyrene)誘導体、アリールアセチレン(arylacetylene)誘導体、フルオレン(fluorene)誘導体、ペリレン(perylene)誘導体、クリセン(chrysene)誘導体等を用いることができる。また、好ましくは、スチリル誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、アントラセン誘導体を用いることができる。例えば、発光層150の材料として、以下の一般式(3)で表わされるアントラセン誘導体を用いてもよい。
【0063】
【化8】
【0064】
上記一般式(3)において、
Arは、互いに独立して、水素原子、重水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1以上50以下のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3以上50以下のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1以上50以下のアルコキシ(alkoxy)基、置換もしくは無置換の炭素数7以上50以下のアラルキル(aralkyl)基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6以上50以下のアリールオキシ(aryloxy)基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6以上50以下のアリールチオ(arylthio)基、置換もしくは無置換の炭素数2以上50以下のアルコキシカルボニル(alkoxycarbonyl)基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6以上50以下のアリール基、環形成炭素数5以上50以下のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のシリル(silyl)基、カルボキシル(carboxyl)基、ハロゲン(halogen)原子、シアノ(cyano)基、ニトロ(nitro)基、またはヒドロキシル(hydroxy)基であり、
qは、1以上10以下の整数である。
【0065】
具体的には、Arは、互いに独立して、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フェニルナフチル基、ナフチルフェニル基、アントリル基、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、アセトナフテニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピリジル基、フラニル基、ピラニル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、およびジベンゾチエニル基などであってもよい。また、好ましくは、Arは、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基などであってもよい。
【0066】
上記一般式(3)で表される化合物は、例えば、以下の構造式により表される化合物a−1〜a−12である。ただし、一般式(3)で表される化合物は、以下の化合物に限定されるわけではない。
【0067】
【化9】
【0068】
また、発光層150には、スチリル誘導体として、例えば、1,4−bis[2−(3−N−ethylcarbazoryl)vinyl]benzene(BCzVB)、4−(di−p−tolylamino)−4‘−[(di−p−tolylamino)styryl]stilbene(DPAVB)、N−(4−((E)−2−(6−((E)−4−(diphenylamino)styryl)naphthalen−2−yl)vinyl)phenyl)−N−phenylbenzenamine(N−BDAVBi)などが用いられてもよく、ペリレン誘導体として、例えば、2,5,8,11−tetra−t−butylperylene(TBPe)などが用いられてもよく、ピレン誘導体として、例えば、1,1’−bipyrene、1,4−dipyrenylbenzene、1,4−bis(N,N−diphenylamino)pyreneなどが用いられてもよい。ただし、本発明は、上記の例示化合物に限定されるわけではない。
【0069】
発光層150上には、電子輸送層160が形成される。電子輸送層160は、電子を輸送する機能を有する電子輸送材料を含む層であり、例えば、約15nm〜約50nmの厚さにて形成される。
【0070】
電子輸送層160は、公知の電子輸送材料にて形成されてもよい。公知の電子輸送材料としては、例えば、tris(8−hydroxyquinolinato)aluminium(Alq3)や、含窒素芳香環を有する材料等を挙げることができる。含窒素芳香環を有する材料の具体例としては、例えば、1,3,5−tri[(3−pyridyl)−phen−3−yl]benzeneのようなピリジン(pyridine)環を含む材料、2,4,6−tris(3’−(pyridin−3−yl)biphenyl−3−yl)−1,3,5−triazineのようなトリアジン(triazine)環を含む材料、2−(4−(N−phenylbenzoimidazolyl−1−ylphenyl)−9,10−dinaphthylanthraceneのようなイミダゾール(imidazole)誘導体を含む材料を挙げることができる。
【0071】
電子輸送層160上には、電子注入層170が形成される。電子注入層170は、第2電極180からの電子の注入を容易にする機能を備えた層であり、約0.3nm〜約9nmの厚さにて形成される。電子注入層170は、電子注入層170を形成する材料として公知の材料ならば、いずれも使用することができる。例えば、電子注入層170は、リチウム8-キノリナート(Liq)、フッ化リチウム(LiF)等のLi錯体、塩化ナトリウム(NaCl)、フッ化セシウム(CsF)、酸化リチウム(LiO)、酸化バリウム(BaO)等を使用して形成されてもよい。
【0072】
電子注入層170上には、第2電極180が形成される。第2電極180は、例えば、陰極であり、仕事関数が小さい金属、合金、導電性化合物等で反射型電極として形成される。第2電極180は、例えば、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)等の金属、アルミニウム−リチウム(Al−Li)、マグネシウム−インジウム(Mg−In)、マグネシウム−銀(Mg−Ag)等の金属の混合物で形成されてもよい。また、第2電極180は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)などを用いて透過型電極として形成されてもよい。
【0073】
なお、上述した各層は、真空蒸着法、スパッタ法(sputtering)、各種塗布法など材料に応じた適切な成膜方法を選択することにより、形成することができる。
【0074】
以上、本実施形態に係る有機電界発光素子100の構造の一例について説明した。本実施形態に係るアミン化合物を含む有機電界発光素子100によれば、発光寿命が改善される。
【0075】
なお、本実施形態に係る有機電界発光素子100の構造は、上記例示に限定されない。本実施形態に係る有機電界発光素子100は、公知の他の様々な有機電界発光素子の構造を用いて形成されてもよい。例えば、有機電界発光素子100は、正孔注入層130、電子輸送層160および電子注入層170のうち1層以上を備えていなくともよく、また、他の層を備えていてもよい。さらに、有機電界発光素子100の各層は、単層で形成されてもよく、複数層で形成されてもよい。
【0076】
また、有機電界発光素子100は、三重項励起子または正孔が電子輸送層160に拡散する現象を防止するために、正孔輸送層140と発光層150との間に正孔阻止層を備えていてもよい。なお、正孔阻止層は、例えば、オキサジアゾール(oxadiazole)誘導体、トリアゾール(triazole)誘導体、または、フェナントロリン(phenanthroline)誘導体等によって形成される。
【実施例】
【0077】
<3.実施例>
以下では、実施例および比較例を参照しながら、本発明の一実施形態に係るアミン化合物、および該アミン化合物を含む有機電界発光素子について具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、あくまでも一例であって、本実施形態に係るアミン化合物および有機電界発光素子が下記の例に限定されるものではない。
【0078】
[アミン化合物の合成]
まず、本実施形態に係るアミン化合物の合成方法について、上記化合物2、6、9〜11、31の合成方法を例示して具体的に説明する。なお、以下に述べる合成方法はあくまでも一例であって、本実施形態に係るアミン化合物の合成方法が下記の例に限定されるものではない。
【0079】
(化合物2の合成)
以下の反応式1によって、本実施形態に係るアミン化合物である化合物2を合成した。
【0080】
【化10】
【0081】
本実施形態に係るアミン化合物は、上記の反応式1に示すように、化合物61に類する構造を有するアリールアミン化合物に対して、Pd触媒を用いてハロゲン化アリールまたはハロゲン化ヘテロアリールを作用させることにより合成することができる。
【0082】
具体的には、9−フェニル−9−(4−アミノフェニル)フルオレン(9−phenyl−9−(4−aminophenyl)fluorene)(61)(1.41g,4.23mmol)、3−ブロモジベンゾフラン(3−bromodibenzofuran)(62)(2.14g,8.67mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド(sodium−tert−butoxide)(1.24g,12.7mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム錯体(tris(dibenzilideneacetone)dipalladium・chloroform adduct)(219mg,0.211mmol)、無水キシレン(xylene)(60mL)の混合溶液を脱気し、1.6Mトリブチルホスフィン(tri−t−butylphosphine)溶液(159μL,0.254mmol)を加えた。さらに、混合物を8時間加熱還流した後、冷却し、ろ過した。ろ液を濃縮し、直接カラムクロマトグラフィ(column chromatography)を用いて精製することによって化合物2(1.67g)の白色粉末を収率75%にて得た。
【0083】
なお、化合物2の分子量は、FAB−MS(Fast Atom Bombardment−Mass Spectrometry)を用いて測定した。FAB−MSによって測定された分子量は、665であり、この分子量が化合物2の分子式C4931NOから計算される値と一致したことによって、化合物2の構造を同定した。
【0084】
(化合物6の合成)
上記反応式1において、9−フェニル−9−(4−アミノフェニル)フルオレン(61)に替えて、9−フェニル−9−(4−アミノビフェニル)フルオレンを用いた以外は、反応式1と同様にして、化合物6を合成した。なお、化合物6の同定は、化合物2と同様にFAB−MS測定により得られた分子量(741)が、分子式C5535NOから計算される値と一致したことによって行った。
【0085】
(化合物9の合成)
上記反応式1において、9−フェニル−9−(4−アミノフェニル)フルオレン(61)に替えて、9−フェニル−9−(3’−アミノ−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)フルオレンを用い、3−ブロモジベンゾフランに替えて、3−ブロモジベンゾフランおよび9−ブロモフェナントレンを等量ずつ2回に分けて反応させた以外は、反応式1と同様にして、化合物9を合成した。なお、化合物9の同定は、化合物2と同様にFAB−MS測定により得られた分子量(751)が分子式C5737NOから計算される値と一致したことによって行った。
【0086】
(化合物10の合成)
上記反応式1において、9−フェニル−9−(4−アミノフェニル)フルオレン(61)に替えて、9−フェニル−9−(3’−アミノ−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)フルオレンを用いた以外は、反応式1と同様にして、化合物9を合成した。なお、化合物10の同定は、化合物2と同様にFAB−MS測定により得られた分子量(741)が分子式C5535NOから計算される値と一致したことによって行った。
【0087】
(化合物11の合成)
上記反応式1において、9−フェニル−9−(4−アミノフェニル)フルオレン(61)に替えて、9−フェニル−9−(3’−アミノ−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)フルオレンを用い、3−ブロモジベンゾフランに替えて、3−ブロモジベンゾチオフェンを用いた以外は、反応式1と同様にして、化合物11を合成した。なお、化合物11の同定は、化合物2と同様にFAB−MS測定により得られた分子量(773)が分子式C5535NSから計算される値と一致したことによって行った。
【0088】
(化合物31の合成)
化合物9の合成反応において、9−フェニル−9−(3’−アミノ−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)フルオレンに替えて、9−フェニル−9−(4’−アミノ−[1,1‘−ビフェニル]−3−イル)フルオレンを用い、9−ブロモフェナントレンに替えて、4−ブロモ−(1,1’−ビフェニル)を用いた以外は、化合物9の合成反応と同様にして、化合物31を合成した。なお、化合物31の同定は、化合物9と同様にFAB−MS測定により得られた分子量(727)が分子式C5537NOから計算される値と一致したことによって行った。
【0089】
なお、9−フェニル−9−(4’−アミノ−[1,1’−ビフェニル]−3−イル)フルオレンは、公知の合成方法である鈴木カップリング法を用い、9−フェニル−9−(3−ブロモフェニル)フルオレンに対して、1.1当量の4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランー2−イル)アミンを反応させることで合成した。
【0090】
[アミン化合物を含む有機電界発光素子の作製]
続いて、真空蒸着法を用いて、以下の手順にて本実施形態に係るアミン化合物を正孔輸送材料として含む有機電界発光素子を作製し、評価した。
【0091】
(実施例1)
まず、あらかじめパターニング(patterning)して洗浄処理を施したITO−ガラス基板に、紫外線およびオゾン(O)による表面処理を行った。なお、ITO−ガラス基板におけるITO膜(第1電極)の膜厚は、150nmであった。表面処理後、基板を洗浄し、洗浄済基板を有機層成膜用蒸着機に投入し、10−4〜10−5Paの真空度にて、正孔注入層、正孔輸送層(HTL)、発光層、および電子輸送層を順に蒸着した。
【0092】
正孔注入層は、4,4’,4’’−トリス(N,N−2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)にて膜厚60nmで形成した。正孔輸送層は、化合物2にて膜厚30nmで形成した。また、発光層は、ホスト(host)材料として9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(ADN)を用い、ドーパント(dopant)材料として、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン(TBP)を用いて膜厚25nmで形成した。なお、ドーパントのドープ(dope)量は、ホスト材料に対して3%(体積/体積)とした。さらに、電子輸送層は、Alq3にて膜厚25nmで形成した。
【0093】
続いて、金属成膜用蒸着機に基板を移し、10−4〜10−5Paの真空度にて、電子注入層、および第2電極を蒸着して、有機電界発光素子を作製した。なお、電子注入層は、LiFにて膜厚1nmで形成した。また、第2電極は、アルミニウム(Al)にて膜厚100nmで形成した。
【0094】
(実施例2)
正孔輸送層(HTL)を化合物6にて形成した以外は、実施例1と同様の方法で有機電界発光素子を作製した。
【0095】
(実施例3)
正孔輸送層(HTL)を化合物9にて形成した以外は、実施例1と同様の方法で有機電界発光素子を作製した。
【0096】
(実施例4)
正孔輸送層(HTL)を化合物10にて形成した以外は、実施例1と同様の方法で有機電界発光素子を作製した。
【0097】
(実施例5)
正孔輸送層(HTL)を化合物11にて形成した以外は、実施例1と同様の方法で有機電界発光素子を作製した。
【0098】
(実施例6)
正孔輸送層(HTL)を化合物31にて形成した以外は、実施例1と同様の方法で有機電界発光素子を作製した。
【0099】
(比較例1)
正孔輸送層(HTL)を下記の化合物c1にて形成した以外は、実施例1と同様にして、有機電界発光素子を作製した。なお、化合物c1は、化合物6に対してフルオレン骨格を形成する共有結合が1つ切断された構造を有する点において、本実施形態に係るアミン化合物と異なる化合物である。
【0100】
(比較例2)
正孔輸送層(HTL)を下記の化合物c2にて形成した以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。なお、化合物c2は、化合物6に対してジベンゾヘテロール環を有しない点において、本実施形態に係るアミン化合物と異なる化合物である。
【0101】
(比較例3)
正孔輸送層(HTL)を下記の化合物c3にて形成した以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。なお、化合物c3は、化合物2に対してジベンゾヘテロール環を有しない点において、本実施形態に係るアミン化合物と異なる化合物である。
【0102】
【化11】
【0103】
(評価結果)
作製した実施例1〜6、比較例1〜3に係る有機電界発光素子の評価結果を以下の表1に示す。なお、作製した有機電界発光素子の発光特性の評価には、浜松ホトニクス製C9920−11輝度配向特性測定装置を用いた。また、下記の表1において、電流密度は10mA/cmにて測定した。また、発光寿命は1000cd/mの光量における半減寿命(LT50)にて示した。
【0104】
【表1】
【0105】
表1を参照すると、本実施形態に係るアミン化合物を正孔輸送層(HTL)に用いた実施例1〜6は、比較例1〜3に対して、素子寿命が向上していることがわかる。
【0106】
具体的には、本実施形態に係るアミン化合物をHTLに用いた実施例1〜6は、フルオレン骨格を形成する共有結合が1つ切断された構造を有する化合物c1をHTLに用いた比較例1に対して、素子寿命が向上していることがわかる。また、本実施形態に係るアミン化合物をHTLに用いた実施例1〜6は、ジベンゾヘテロール環を有さない化合物c2およびc3をHTLに用いた比較例2および3に対して、素子寿命が向上していることがわかる。
【0107】
また、実施例1、2と実施例3〜6とを比較すると、実施例3〜6の方が長い発光寿命を有し、特性が良好であった。実施例1、2でHTLに用いた化合物2、6は、フルオレニル基とアリールアミノ基とを連結するフェニレン基がいずれもパラ位でフルオレニル基とアリールアミノ基と連結している。一方、実施例3〜6でHTLに用いた化合物9〜11、31は、フルオレニル基とアリールアミノ基とを連結するフェニレン基の一方がメタ位でフルオレニル基とアリールアミノ基と連結している。したがって、本実施形態に係るアミン化合物において、フルオレニル基とアリールアミノ基とを連結するフェニレン基の少なくとも1つ以上は、フルオレニル基とアリールアミノ基とをメタ位で(直接または連結基を介して)連結することが好ましいとわかる。
【0108】
以上の結果からわかるように、本実施形態に係るアミン化合物は、上述した一般式(1)で表される構造を有するため、該アミン化合物を用いた有機電界発光素子の発光寿命を向上させることができる。したがって、本実施形態に係るアミン化合物は、有機電界発光素子用材料として、有機電界発光素子の様々な用途における実用化に有用である。
【0109】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0110】
100 有機電界発光素子
110 基板
120 第1電極
130 正孔注入層
140 正孔輸送層
150 発光層
160 電子輸送層
170 電子注入層
180 第2電極
図1