(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一実施形態に係る栽培装置は、作物を着生させる培地部と、この培地部に栽培液を供給する栽培液供給機構とを備える栽培装置であって、上記培地部が、枠体と、この枠体内に充填される粒子と、この充填粒子が形成する層の少なくとも中層部に毛管現象により栽培液が供給される領域とを有する栽培装置である。
【0014】
当該栽培装置は、培地部が、枠体とこの枠体内に充填される粒子とを有し、かつこの充填粒子が形成する層の少なくとも中層部に毛管現象を発現して栽培液が培地部内に供給される領域を有することで、栽培液の過剰な供給が避けられ、作物の根部に安定的に適度な水分ストレスをかけることができる。また、毛管現象により栽培液が供給される上記領域は、気相が液相に比べて大きく、通気性に優れる。これにより、酸素供給構造がなくとも、酸素不足による根腐れを効果的に抑制することができ、設備コスト及び運転コストを削減できる。また、上記領域で毛管現象が発現できる量の土壌等の粒子が枠体内に充填されればよいので、従来の土壌栽培に比べて土壌の使用量を大幅に低減でき、培地部を軽量化できる。これにより、樹脂パイプ等の安価な材料で形成した足場の上に農地を設ける構成とでき、足場の調節により農地の高低差を容易に調整できる。ここで、「水分ストレス」とは、例えば作物が低湿度の状態に曝されることによる乾燥ストレス、及び作物を取り囲む環境が高濃度の塩分のため高浸透圧となることによる浸透圧ストレスを意味する。
【0015】
上記栽培液供給機構が、栽培液を貯留する貯留部と、上記培地部及び貯留部間に配設される送液部とを有し、上記送液部が、貯留部の栽培液を毛管現象により培地部内の粒子の底部に供給するとよい。栽培液供給機構が、このような貯留部及び送液部を備えることで、培地部と貯留部とを隔離しても培地部内に栽培液を容易かつ確実に供給することが可能となる。また、貯留部の栽培液を毛管現象により培地部内の粒子の底部に供給することで、栽培液が貯留部から培地部へ一方向的に送液されるので、貯留水を介した病害の水平伝播を防止できる。
【0016】
上記貯留部内の栽培液の水位又は塩分濃度を調節する機構を備えるとよい。このように、貯留部内の栽培液の水位又は塩分濃度を調節可能とすることで、作物の根部に対してかかる乾燥ストレス又は浸透圧ストレスを制御できるため、収穫する作物の糖度をより高めることができる。
【0017】
上記貯留部内の栽培液の温度を調節する温度調節機構を備えるとよい。このように、貯留部内の栽培液の温度を調節することで、作物の生育に適切な温度となるよう培地の温度を調節することができる。また、栽培液の温度調節に要する運転コストは、気温を調節するエアコン等の運転コストより低いので、従来のエアコン等により気温を調節する場合に比べて低コストで培地温度を調節することができる。また、培地温度は栽培液の温度と密接に連動するので、培地温度を調節し易い。
【0018】
上記枠体の少なくとも底部が遮根透水シートであることが好ましい。このように枠体の少なくとも底部を遮根透水シートとすることで、培地部内の作物の根部が貯留部に浸漬することを防ぐことができる。その結果、根腐れ防止及び水分ストレスの付与をより効果的に発揮させることができる。また、貯留部の汚染を防ぐこともできる。
【0019】
上記粒子としては、土壌が好ましい。このように上記粒子を土壌とすることで、充填粒子が形成する層の中層部が毛管現象をより確実かつ効果的に発揮することができる。その結果、根腐れ防止及び水分ストレスの付与をより効果的に発揮させることができる。
【0020】
上記土壌としては、砂が好ましい。このように上記土壌として砂を用いることで、充填粒子が形成する層の中層部における気相の液相に対する比をより高めることができ、酸素供給能力を効果的に高めることができる。また、砂は土に比べて有機物含量が低く微生物生息数も少ないので根病が起こり難い。従って、水耕栽培で必要な栽培液の循環フィルター処理や、栽培装置の殺菌等を省略又は簡略化できる。さらに、砂は物理化学的に安定であるため、長年使用した場合でも連作障害が発生し難く継続的に使用でき、根病も起こり難い。また、砂は単粒構造であるため、団粒構造をとる他の土壌よりも毛管現象の再現性及び水の均一拡散性が高く、水分調節をし易い。その結果、低コストで高品質な作物を栽培することができる。ここで、「砂」とは、例えば未固結の破片の堆積物で孔隙に毛管水が保水される例えば直径が0.01mm以上2mm以下の砕屑物を意味する。
【0021】
上記充填粒子が形成する層の毛管上昇高さとしては、3cm以上300cm以下が好ましい。このような毛管上昇高さとすることで、装置設計の自由度を高められるほか、農作業の作業性を向上させることができる。
【0022】
上記粒子は、粒径0.1mm以上1mm以下の単粒を50質量%以上含むことが好ましい。上記粒子をこのような構成とすることで、上記中層部が毛管現象をより効果的に発揮し、かつ中層部における気相の液相に対する比をさらに高めることで酸素不足による根腐れをより効果的に抑制することができる。ここで、「粒径」とは、JIS−Z8801−1(2006)に規定される篩を用い、目開きの大きい篩から順に粒子をかけて篩上の粒子数と各篩の目開きとから算出される粒子の平均径である。
【0023】
上記粒子のタップ密度としては、1.00g/cm
3以上3.00g/cm
3以下が好ましい。このように粒子のタップ密度を上記範囲内とすることで、上記中層部が毛管現象をより効果的に発揮することができ、かつ中層部における気相の液相に対する比をより高めることで酸素不足による根腐れをより効果的に抑制することができる。ここで、「タップ密度」とは、粉体の嵩密度を意味し、JIS−Z2512(2012)に準拠して測定される値である。
【0024】
また、別の本発明の一態様に係る栽培方法は、作物を着生させた培地部に栽培液を供給する栽培方法であって、上記培地部が、枠体と、この枠体内に充填される粒子と、この充填粒子が形成する層の少なくとも中層部に毛管現象により栽培液が供給される領域とを有し、上記領域を介して作物に栽培液を供給する栽培方法である。
【0025】
当該栽培方法は、枠体内の充填粒子が形成する層の毛管現象により栽培液が供給される領域から作物へ栽培液が供給されるので、栽培液の過剰な供給が避けられ、作物の根部に安定的に適度な水分ストレスをかけることができる。また、毛管現象により栽培液が供給される上記領域は、気相が液相に比べて大きく通気性に優れるので、酸素供給構造がなくとも、作物の根部に十分な酸素を供給でき根腐れを効果的に抑制できる。また、当該栽培方法は、上記領域で毛管現象が発現できる量の土壌等の粒子を枠体内に充填すればよいので、従来の土壌栽培に比べて土壌の使用量を大幅に低減でき、培地部を軽量化できる。これにより、当該栽培方法は、樹脂パイプ等の安価な材料で形成した足場の上に農地を設ける構成とでき、足場の調節により農地の高低差を容易に調整できる。
【0026】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明に係る栽培装置の実施形態について図面を参照しつつ詳説する。
【0027】
〔第一実施形態〕
図1に示す当該栽培装置1は、作物Pを着生させる培地部2と、この培地部2に栽培液を供給する栽培液供給機構20とを主に備える。培地部2は、枠体4と、この枠体4内に充填される充填粒子5と、この充填粒子5が形成する層の少なくとも中層部に毛管現象により栽培液が供給される栽培液供給領域6とを有する。また、栽培液供給機構20は、栽培液を貯留する貯留部3と、栽培液を培地部2内の充填粒子5の底部に供給する送液部7とを有する。また、当該栽培装置1は、上記貯留部3内の栽培液の水位及び塩分濃度を調節する水位塩分濃度調節機構21、遮根透水シート8、第一防水シート9a及び第二防水シート9bを備える。
【0028】
<培地部>
培地部2は、枠体4と、この枠体4内に充填される充填粒子5と、この充填粒子5が形成する層の少なくとも中層部に毛管現象により栽培液が供給される栽培液供給領域6とを有し、作物Pを着生させる部分である。
【0029】
(枠体)
枠体4は、充填粒子5を保持すると共に、作物Pの根が枠体4外へ貫通することを防止する。
【0030】
枠体4は有底筒状体である。枠体4の平面形状としては、特に限定されないが、輸送の観点からは重ね合わせ可能な形状が好ましく、円形がより好ましい。また、枠体4の底部は遮根透水シート8で構成される。このように枠体4の少なくとも底部を遮根透水シート8とすることで、培地部2内の作物Pの根部が貯留部3に浸漬することを防止できる。
【0031】
なお、枠体4の底部だけでなく、側部及び上部も遮根透水シート8とする構成としてもよいが、培地部2の保水性を高める観点からは底面のみを遮根透水シート8とすることが好ましい。
【0032】
枠体4の平均内径の下限としては、6cmが好ましく、9cmがより好ましい。一方、枠体4の平均内径の上限としては、23cmが好ましく、15cmがより好ましい。枠体4の平均内径が上記下限未満の場合、作物Pの根部が十分に広がることができず生育不良となるおそれがある。逆に、枠体4の平均内径が上記上限を超える場合、培地部2の質量が大きくなりすぎるおそれがある。なお、「平均内径」とは、枠体4の平面視内面形状と同面積の円の直径(真円換算径)を枠体4の高さ方向で平均した値を意味する。
【0033】
枠体4の底部(遮根透水シート8)を除く部分を構成する材料としては、特に限定されないが、通気性と透水性とを有する紙、シート状の樹脂等が挙げられる。シート状の樹脂は織布でも不織布でもよく、その中でも多孔質樹脂フィルムが好ましく、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂製フィルムを延伸した多孔質樹脂フィルムがより好ましい。
【0034】
遮根透水シート8は、枠体4の底面部分のみに配設してもよいが、
図1に示すように平面視で枠体4以外の領域にも敷設してもよい。遮根透水シート8は、透水性を有するため、このように敷設することで栽培液の送液を邪魔せずに、防水、遮光等の機能を奏する。なお、枠体4の底部と遮根透水シート8とは接着されていてもよいし、枠体4を遮根透水シート8の上に載置してもよい。
【0035】
遮根透水シート8の素材としては、特に限定されないが、例えば紙、織布等が挙げられる。
【0036】
遮根透水シート8の平均厚みの下限としては、0.1mmが好ましく、0.2mmがより好ましい。一方、遮根透水シート8の平均厚みの上限としては、5mmが好ましく、3mmがより好ましい。遮根透水シート8の平均厚みが上記下限未満の場合、遮根性が損なわれるおそれがある。逆に、遮根透水シート8の平均厚みが上記上限を超える場合、遮根透水シート8のコストが高くなりすぎるおそれがある。
【0037】
(粒子)
枠体4内に充填される充填粒子5が形成する層の中層部及び下層部が、毛管現象を発現する栽培液供給領域6に含まれる。充填粒子5としては、充填により形成する層が毛管現象を発現するものであれば特に限定されないが、例えば土壌、パミスミサンド等の微粒軽石、多孔性の火山岩の粉砕粒、粒状のロックウール、コーラルサンド、サンゴ、木炭等が挙げられる。これらは2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、良好な毛管現象が確保され、また不要になった場合に自然土に返せる観点から、充填粒子5としては土壌が好ましい。
【0038】
上記土壌としては、例えば市販の園芸用の培土、バーミキュライト、ベントナイト、ゼオライト、砂、鹿沼土、赤玉土、真砂土等が挙げられる。これらの中でも、砂が好ましい。上記土壌として砂を用いることで、気相の液相に対する比をより高めて、酸素供給能力を効果的に高めることができる。これにより、酸素供給構造がなくとも、酸素不足による根腐れを効果的に抑制することができる。また、砂は一般的な培土に比べて有機物含量が低く微生物生息数も少ないので根病が起こり難い。
【0039】
充填粒子5の単粒の粒径の下限としては、0.1mmが好ましく、0.15mmがより好ましい。一方、上記粒径の上限としては、1mmが好ましく、0.6mmがより好ましい。上記粒径が上記下限未満の場合、栽培液供給領域6の空隙部分が少なくなりすぎて過湿になり雑菌が繁殖し易くなるおそれがある。逆に、上記粒径が上記上限を超える場合、栽培液供給領域6の空隙が大きくなりすぎて毛管現象が弱くなり、所定の量の栽培液を根部に給水できなくなるおそれがある。
【0040】
充填粒子5の粒径0.1mm以上1mm以下の単粒の含有割合の下限としては、50質量%が好ましく、80質量%がより好ましい。上記単粒の含有割合が上記下限未満の場合、栽培液供給領域6が発揮する毛管現象が弱くなり、所定の量の栽培液を根部に給水できなくなるおそれがある。
【0041】
充填粒子5を構成する粒子のタップ密度の下限としては、1.00g/cm
3が好ましく、1.65g/cm
3がより好ましく、1.70g/cm
3がさらに好ましい。一方、上記粒子のタップ密度の上限としては、3.00g/cm
3が好ましく、1.85g/cm
3がより好ましく、1.83g/cm
3がさらに好ましい。上記粒子のタップ密度が上記下限未満の場合、栽培液供給領域6の空隙が大きくなりすぎて毛管現象が弱くなり、所定の量の栽培液を根部に給水できなくなるおそれがある。逆に、上記粒子のタップ密度が上記上限を超える場合、栽培液供給領域6の空隙部分が少なくなりすぎて過湿になり雑菌が繁殖し易くなるおそれがある。
【0042】
充填粒子5が形成する層の毛管上昇高さの下限としては、3cmが好ましく、10cmがより好ましく、20cmがさらに好ましい。一方、充填粒子5が形成する層の毛管上昇高さの上限としては、300cmが好ましく、200cmがより好ましく、40cmがさらに好ましい。充填粒子5が形成する層の毛管上昇高さを上記範囲とすることで、装置設計の自由度を高められるほか、農作業の作業性を向上させることができる。充填粒子5が形成する層の毛管上昇高さが上記下限未満の場合、作物Pの根部に栽培液を給水できず作物Pが生育不良となるおそれがある。逆に、充填粒子5が形成する層の毛管上昇高さが上記上限を超える場合、根部に水分ストレスを与え難くなるおそれがある。
【0043】
なお、毛管上昇高さ(m)hは、栽培液の表面張力(N/m)をT、栽培液の接触角(°)をθ、栽培液の密度(kg/m
3)をρ、重力(m/s
2)をg、充填粒子5の質量10%粒子径(m)をrとすると、下記式(1)で求められる。ここで、「質量10%粒子径」とは、JIS−A1204(2009)「土の粒度試験方法」に準拠して、粒径加積曲線から読み取られる通過質量百分率が10%のときの粒径D(10%粒径D
10)を意味する。
h=2Tcosθ/ρgr ・・・(1)
【0044】
1つの枠体4において、栽培液供給領域6の枠体4の底面からの高さが0cmの位置における栽培液の平均流速の下限としては、0.2L/hrが好ましく、0.3L/hrがより好ましい。上記栽培液の平均流速が上記下限未満であると、作物Pが必要な吸水速度に満たないため、水切れにより作物Pが枯れるおそれがある。なお、平均流速とは、枠体4の底面を通過して栽培液供給領域6に至る栽培液の通過量(L)を5つ以上の独立した枠体4で測定して得られる数値の平均値である。
【0045】
栽培液供給領域6における栽培液の平均流速が十分に大きい条件では、栽培液供給領域6に作物Pの吸水速度が平均流速以下となる地点が存在するため、作物Pは際限なく吸水する(このときの吸水量を最大吸水日量という)。この状態から後述する貯留部3の液面の水位を少しずつ下げていくと、徐々に給水速度が低下して吸水に制限が掛かる(このときの吸水量を制限吸水日量という)。当該栽培装置1では作物Pの吸水日量は水消費日量から概算できるため、吸水量を任意の割合に制限できる。栽培液の平均流速が制限されても給水は継続するため、給水量を制限する場合と比べて培地部2は乾燥し難く、根部が傷むおそれは小さい。給水速度制限による培地部2の保水量の低下は、培地部2の重量の低下によっても計測できる。そのため、管理者は高価な水分センサーがなくとも水分を管理できる。
【0046】
充填粒子5の充填高さの下限としては、1cmが好ましく、3cmがより好ましく、5cmがさらに好ましい。一方、充填粒子5の充填高さの上限としては、50cmが好ましく、30cmがより好ましく、15cmがさらに好ましい。充填粒子5の充填高さが上記下限未満の場合、作物Pの根が栽培液供給領域6の毛管構造を破壊することにより、生育不良となるおそれがある。逆に、充填粒子5の充填高さが上記上限を超える場合、培地部2の質量が大きくなりすぎるおそれがある。
【0047】
栽培液供給領域6の栽培液の保水量の下限としては、0.04Lが好ましく、0.05Lがより好ましく、0.10Lがさらに好ましい。一方、栽培液供給領域6の栽培液の保水量の上限としては、2Lが好ましく、1.5Lがより好ましく、0.6Lがさらに好ましい。栽培液供給領域6の栽培液の保水量が上記下限未満の場合、当該栽培装置1の故障等により貯留部3からの給水が失われた場合に、作物Pが全滅するリスクが高くなる場合がある。逆に、栽培液の保水量が上記上限を超える場合、培地部2の質量が大きくなるおそれや、保水量の調節が困難となるおそれがある。なお、保水量とは、保水状態の培地部2の質量から乾燥状態の培地部2の質量を引いた値を体積換算したものをいう。
【0048】
<栽培液供給機構>
栽培液供給機構20は、栽培液を貯留する貯留部3と、培地部2及び貯留部3間に配設される送液部7とを有する。
【0049】
(送液部)
送液部7はシート体である。送液部7は、培地部2及び貯留部3間に、その一部が後述の貯留部3内に浸漬されるように配設されており、貯留部3の栽培液を毛管現象により揚水し、遮根透水シート8を介して培地部2内の充填粒子5の底部に供給する。栽培液供給機構20が送液部7を有することで、培地部2と貯留部3とを隔離しても培地部2内に栽培液を容易かつ確実に供給することが可能となる。
【0050】
送液部7は、毛管現象により栽培液を揚水し、充填粒子5の底部に供給できるものであれば特に制限されないが、例えば不織布、ロックウールシート、フェルトシート、ウレタンシート等が挙げられる。これらのうち、適度な毛管現象の発現及び適切な吸水率を発揮させる観点から、不織布が好ましい。
【0051】
送液部7の透水率の下限としては、0.01%が好ましく、1%がより好ましい。一方、送液部7の透水率の上限としては、40%が好ましく、30%がより好ましい。送液部7の透水率が上記下限未満の場合、培地部2内の充填粒子5の底部に供給される栽培液の量が不十分となるおそれがある。逆に、送液部7の透水率が上記上限を超える場合、送液部7ひいては当該栽培装置1のコストが高くなりすぎるおそれがある。ここで、透水率とは、平面状の送液部7の表面から水を散布した際に送液部7の裏面へ通過した水の比率をあらわす。
【0052】
送液部7の平均厚みの下限としては、0.5mmが好ましく、0.7mmがより好ましい。一方、送液部7の平均厚みの上限としては、2mmが好ましく、1.5mmがより好ましい。送液部7の平均厚みが上記下限未満の場合、送液部7の強度が低下し破断するおそれがある。逆に、送液部7の平均厚みが上記上限を超える場合、送液部7のコストが高くなるおそれがある。
【0053】
送液部7の揚水高さの下限としては、3cmが好ましく、10cmがより好ましく、20cmがさらに好ましい。一方、送液部7の揚水高さの上限としては、300cmが好ましく、200cmがより好ましく、40cmがさらに好ましい。送液部7の揚水高さが上記下限未満の場合、培地部2内の充填粒子5の底部に供給される栽培液の量が不十分となり水切れが起こるおそれがある。逆に、送液部7の揚水高さが上記上限を超える場合、送液部7のコストが高くなるおそれがある。ここで、揚水高さとは、以下の手法で測定される。まず、送液部7を幅4cm、長さ120cmに切断したシートを平均厚み0.03mmのポリエチレンフィルムで被覆(熱圧着で袋状としたフィルムにシートを挿入して周りを被覆)したものを測定サンプルとし、鉛直に測定サンプルを吊り下げられるようにした架台にセットする。このとき、上部及び下部を5cm開放して液面に接しておくようにする。そして、24時間で液面から揚水した高さを5回測定した値の平均値を揚水高さとする。
【0054】
(貯留部)
貯留部3は、栽培液を保持する非透水性の貯留槽から構成される。貯留部3は培地部2と離間して配設される。具体的には、貯留部3は、培地部2の下方かつ平面視で培地部2と重複しない領域に配設されている。このような領域に貯留部3を配設することで、作物Pの根が貯留部3に侵入することをより確実に防止できると共に、複数の培地部2で1つの貯留部3を共有することができる。なお、貯留部3の貯留槽は、上方が開放され栽培液の供給を容易にすると共に、底面及び側面には第二防水シート9bが敷設され栽培液の漏出を防止している。第一防水シート9aと第二防水シート9bとは一枚のシートから形成されてもよい。
【0055】
貯留部3内には送液部7の一部が浸漬されており、栽培液はこの送液部7を介して培地部2内の充填粒子5の底部に供給される。栽培液は貯留部3から培地部2へ一方向的に送液されるため、水耕栽培に見られる貯留水を介した病害の水平伝播を防止できる。
【0056】
貯留部3が保持する栽培液は、肥料を含むことが好ましい。肥料は、貯留部3において雑菌が繁殖することを抑制できる観点から、化学肥料を含むことが好ましい。なお、肥料は、栽培液だけでなく、培地部2内に直接与えてもよい。
【0057】
貯留部3の上部は、遮光材で遮光されていることが好ましい。この遮光材としては、例えば遮根透水シート8、第一防水シート9a等を使用できる。このように貯留部3が遮光されることで、貯留部3において藻が繁殖することを抑制することができる。加えて、当該栽培装置1においては、貯留部3の保持する栽培液が作物Pの根に直接接触しない。これらの相乗効果で、貯留部3は清潔な状態が保たれており、栽培液はフィルター処理せずとも雑菌の繁殖が抑制されている。
【0058】
<防水シート>
第一防水シート9aは、培地部2設置領域以外の領域の遮根透水シート8及び送液部7の上面側に積層されるシートであり、栽培液の蒸発、漏出した栽培液等が貯留部3に混入すること等を防止する。また、上述したように、第一防水シート9aは、遮光材としての機能も発揮することができる。
【0059】
第二防水シート9bは、遮根透水シート8と送液部7又は貯留部3との下面側に積層されるシートであり、当該栽培装置1を例えば地表と隔離することで、漏出した栽培液が地下に浸透することを防止できる。
【0060】
第一防水シート9a及び第二防水シート9bとしては、水と作物Pの根とを通さないものであれば特に限定されないが、例えばポリオレフィン系フィルム、フッ素樹脂系フィルム、生分解性プラスチックフィルム等を使用することができる。
【0061】
<水位塩分濃度調節機構>
水位塩分濃度調節機構21は、培地部2の充填粒子5中に埋め込まれた水分センサー11及び水分張力センサー12と、これらのセンサーの測定値に基づいて貯留部3へ継ぎ足し供給する栽培液の供給量及び塩分濃度を調節する制御部13とを有する。
【0062】
水分センサー11は、培地部2が保持する水分量を検出し、水分張力センサー12は、充填粒子5間の水分張力を検出する。制御部13は、培地部2内の水分量及び充填粒子5間の水分張力に基づいて、作物Pに適した乾燥ストレスがかかるように、供給管14から貯留部3への栽培液の供給量を制御し、貯留部3内の栽培液の水位を調節する。貯留部3内の栽培液の水位を上下させることで毛管上昇後の培地部2内の液面高さを調節することができる。従って、このように貯留部3内の栽培液の水位を調節することで、高糖度処理のための乾燥ストレスをかけることができ、作物Pの食味の向上を図ることができる。
【0063】
従来の水耕栽培では作物への栽培液の供給量を減少させるよう制御することは困難であったが、当該栽培装置1では、培地部2内の水分量及び充填粒子5間の水分張力に基づいて毛管上昇後の培地部2内の液面高さを調節できるので、作物Pへの栽培液の供給量を減少させるように調節することができる。
【0064】
また、制御部13は、培地部2内の水分量及び充填粒子5間の水分張力に基づいて、作物Pに適した浸透圧ストレスがかかるように、供給管14から貯留部3へ供給する栽培液に添加する塩分の量を調節する。これにより、作物Pの根部に対する栽培液の浸透圧を調節できるので、高糖度処理のための浸透圧ストレスをかけることができ、作物Pの食味の向上を図ることができる。なお、このように栽培液に塩分を添加する場合、作物Pの根部から吸収される栽培液の塩分濃度を調節するだけの量の塩分を添加すればよいので、従来の水耕栽培で塩分を直接添加する場合に比べて塩分の使用量を低減できる。
【0065】
当該栽培装置1は、このように水位調節と共に塩分濃度を調節するので、より少ない塩分の添加量で、効果的に作物Pに対して水分ストレスをかけることができる。
【0066】
[栽培方法]
当該栽培方法は、作物Pを着生させた培地部に栽培液を供給する栽培方法であって、上記培地部2が、枠体4と、この枠体4内に充填される充填粒子5と、この充填粒子5が形成する層の少なくとも中層部に毛管現象により栽培液が供給される栽培液供給領域6とを有し、上記栽培液供給領域6を介して作物Pに栽培液を供給する栽培方法である。
【0067】
当該栽培方法は、より具体的には、送液部7によって培地部2に栽培液を供給する工程(栽培液供給工程)と、培地部2に供給する栽培液を保持する貯留部3の水位の調節により作物Pに乾燥ストレスをかける工程(乾燥ストレス工程)と、培地部2に供給する栽培液の塩分濃度の調節により作物Pに浸透圧ストレスをかける工程(浸透圧ストレス工程)とを備える。
【0068】
<栽培液供給工程>
栽培液供給工程では、送液部7が貯留部3で保持される栽培液を培地部2の底部まで送液する。この栽培液は、枠体4内の充填粒子5が形成する層の毛管現象により培地部2の栽培液供給領域6へ供給される。具体的には、栽培液を保持する貯留部3から、送液部7の毛管現象により栽培液を揚水し、遮根透水シート8を介して培地部2内の充填粒子5の底部へ供給する。そして、充填粒子5の底部へ送液された栽培液は、充填粒子5が形成する層の毛管現象によって栽培液供給領域6を介して作物Pの根部へ供給される。
【0069】
栽培液供給工程では、培地部2への栽培液の供給状態に従って作物Pに適した供給量の栽培液を貯留部3に継ぎ足す。具体的には、水分センサー11及び水分張力センサー12により培地部2内の水分量及び充填粒子5間の水分張力を検出し、これらの検出結果に基づいて制御部13が栽培液を貯留部3へ継ぎ足し供給する。これにより、作物Pに連続的に栽培液を供給することができる。
【0070】
<乾燥ストレス工程>
乾燥ストレス工程では、培地部2への栽培液の供給状態に従って栽培液を保持する貯留部3の水位を調節し、この水位の調節により乾燥ストレスをかける。具体的には、水分センサー11及び水分張力センサー12により培地部2内の水分量及び充填粒子5間の水分張力を検出し、これらの検出結果に基づいて制御部13が貯留部3へ継ぎ足す栽培液の供給量を調節する。この貯留部3への栽培液の供給量の調節により、貯留部3内の栽培液の水位を調節する。このようにして貯留部3内の栽培液の水位を上下させることで毛管上昇後の培地部2内の液面高さを調節し、作物Pに対して適切な乾燥ストレスをかける。
【0071】
<浸透圧ストレス工程>
浸透圧ストレス工程では、培地部2への栽培液の供給状態に従って培地部2に供給する栽培液の塩分濃度を調節し、この栽培液の塩分濃度の調節により浸透圧ストレスをかける。具体的には、水分センサー11及び水分張力センサー12により培地部2内の水分量及び充填粒子5間の水分張力を検出し、これらの検出結果に基づいて制御部13が貯留部3へ供給する栽培液に添加する塩分の量を調節する。これにより、作物Pの根部に対する栽培液の浸透圧を調節し、作物Pに対して適切な浸透圧ストレスをかける。
【0072】
<利点>
当該栽培装置は、枠体内の充填粒子が形成する層の少なくとも中層部に毛管現象を発現して栽培液が培地部内に供給される栽培液供給領域を有するので、栽培液の過剰な供給が避けられ、作物の根部に安定的に適度な水分ストレスをかけることができる。また、毛管現象により栽培液が供給される栽培液供給領域は、気相が液相に比べて大きく通気性に優れるので、当該栽培装置は、酸素供給構造がなくとも、酸素不足による根腐れを効果的に抑制することができる。
【0073】
また、当該栽培装置は、栽培液供給領域で毛管現象が発現できる量の土壌等の粒子を枠体内に充填すればよく、従来の土壌栽培に比べて土壌の使用量を大幅に低減できるので、培地部を軽量化できる。これにより、当該栽培装置は、樹脂パイプ等の安価な材料で形成した足場の上に農地を設ける構成とすることができ、足場の調節により農地の高低差を容易に調整できる。
【0074】
また、当該栽培装置は下方灌水であるため、上方灌水より節水である。これは培地部の上層の保水量が比較的低く蒸発が起こり難いためである。このように蒸発が起こり難いため、温室の湿度管理と灌水管理とが干渉し難い。当該栽培装置では貯留部の貯留槽が非透水性であるためさらに節水であり、排水のない完全閉鎖的な栽培装置が構築可能である。また、蒸発による水分の流亡が極めて小さいため、栽培液の消費量をほぼ正確に計測でき、吸水量を通じた植物生育の定量化が可能となる。さらに、このように培地部からの蒸発量が小さく、培地部に保たれた水分に塩類が溶出するため、上方灌水や毛管水耕に比べ塩類集積が起こり難いというメリットがある。また、培地部をフラッシングすることも容易である。
【0075】
また、当該栽培装置は、培地量を最小化することで、培地部に保持される栽培液の消費速度を高めることができ、貯留部中の栽培液と培地部中の栽培液とがほぼ均質となる。これにより他の培地耕に比べて栽培液の変更の影響も即座に得ることができ、培地部中のpHの調整等が容易となる。
【0076】
〔第二実施形態〕
図2に示す当該栽培装置31は、作物Pを着生させる培地部32と、この培地部32に栽培液を供給する栽培液供給機構とを主に備える。培地部32は、枠体34と、この枠体34内に充填される充填粒子35と、この充填粒子35が形成する層の少なくとも中層部に毛管現象により栽培液が供給される栽培液供給領域36とを有する。なお、栽培液供給機構は、栽培液を貯留する貯留部33により構成される。また、当該栽培装置31は、上記貯留部33内の栽培液の水位を調節する水位調節機構38と、貯留部33内の栽培液の温度を調節する温度調節機構とを備える。
【0077】
第一実施形態の栽培装置1は、貯留部3と培地部2とが隔離されていたのに対し、当該栽培装置31は、貯留部33と培地部32とを隔離せず、栽培液供給機構が送液部を有していない点が第一実施形態の栽培装置1と異なる。なお、当該栽培装置31は、送液部を有していないので、栽培装置1が備える遮根透水シート8、第一防水シート9a及び第二防水シート9bなどは備えない。以下、第一実施形態の栽培装置1と異なる点について説明する。
【0078】
<培地部>
培地部32は、枠体34と、この枠体34内に充填される充填粒子35と、この充填粒子35が形成する層の少なくとも中層部に毛管現象により栽培液が供給される栽培液供給領域36とを有し、作物Pを着生させる部分である。
【0079】
枠体34は、栽培液が通過し充填粒子35は通過しない複数の微小な貫通孔が底部に形成されており、貯留部33の底に配設された複数の台37の上に載置されている。この枠体34は、底部が栽培液に浸漬しており、充填粒子35の浸漬部分は栽培液が侵入した栽培液浸潤層となり、充填粒子35の栽培液浸潤層の上方が全て栽培液供給領域36となる。当該栽培装置31は、栽培液浸潤層において酸素が不足しがちであるため、作物Pの根は栽培液浸潤層に伸長し難い。
【0080】
なお、枠体34の底部を除く部分、例えば側面を構成する材料としては、特に限定されないが、第一実施形態の枠体4の底部を除く部分、例えば側面と同様の材料を用いることができる。すなわち、通気性と透水性とを有する紙、シート状の樹脂等が挙げられる。シート状の樹脂は織布でも不織布でもよく、その中でも多孔質樹脂フィルムが好ましく、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂製フィルムを延伸した多孔質樹脂フィルムがより好ましい。
【0081】
<栽培液供給機構>
栽培液供給機構は、栽培液を貯留する貯留部33で構成される。
【0082】
(貯留部)
貯留部33は、底に複数の台37が配設され、これらの台37の上に培地部32が載置される。貯留部33には、所定の水位の栽培液が保持され、枠体34の底部がこの栽培液に浸漬するように培地部32が貯留部33内に載置される。なお、1つの貯留部33内に複数の培地部32が載置されることが好ましい。1つの貯留部33内に複数の培地部32を載置することで、これらの複数の培地部32に対する乾燥ストレスを同時かつ同等に調節できる。
【0083】
<水位調節機構>
水位調節機構38は、貯留部33内に付設された水位計39と、水位計39で検出される水位に基づいて貯留部33への栽培液の供給量を調節する制御部40とを備える。
【0084】
水位計39は、貯留部33内の栽培液の水位を検出し、その検出結果を制御部40へ通知する。
【0085】
制御部40は、水位計39で検出された水位に基づいて貯留部33へ補充すべき栽培液の供給量を求め、供給管41より栽培液を供給する。例えば、貯留部33内の水位が常に一定になるように制御部40が栽培液の供給量を制御することで、栽培液を自動供給でき、管理者の水やりの手間の省力化を図ることができる。
【0086】
また、制御部40による貯留部33への栽培液の供給量の制御により、乾燥ストレスをかけるように貯留部33の水位を調節してもよい。上述したように、貯留部33内の栽培液の水位を上下させることで毛管上昇後の培地部32内の液面高さを調節できるので、貯留部33への栽培液の供給量を制御することで、作物Pに対して適切な乾燥ストレスをかけることができる。
【0087】
また、制御部40により、貯留部33へ供給する栽培液に添加する塩分の量を調節してもよい。制御部40は、水位計39で検出された水位から貯留部33内に保持される栽培液量を検出できるので、この栽培液量から作物Pに適した浸透圧ストレスがかかるような塩分の添加量を求めることができる。これにより、作物Pの根部に対する栽培液の浸透圧を調節できるので、作物Pに対して適切な浸透圧ストレスをかけることができる。なお、浸透圧ストレスを調節する場合、第一実施形態の栽培装置1のように培地部32内の水分量及び充填粒子35間の水分張力を検出できる機構を備えることにより、より適切な浸透圧をかけることができる。
【0088】
<温度調節機構>
温度調節機構は、例えば培地部32の充填粒子35に埋め込まれて配設される温度計42と、制御部40に配設され、制御部40から貯留部33へ供給する栽培液を加熱するヒーター43とを備える。
【0089】
発明者らは、後述する培地温度調査により、培地部の温度が温室内の気温よりも栽培液の温度に密接に連動することを見出した。これにより、従来のエアコン等で温室内の気温を調節するよりも、培地部へ供給する栽培液の温度を調節する方が、培地部の温度を効率よく調節できることを見出した。上記温度調節機構は、この知見に基づき、培地部内の温度を調節するために付設した機構であり、栽培液の温度を調節する機構である。
【0090】
制御部40は、温度計42で検出される培地部32の温度に基づいて、作物Pの根部に供給される栽培液の温度が適切な温度となるよう、ヒーター43を制御して貯留部33へ供給する栽培液の温度を調節すると共に、その温度調節した栽培液を貯留部33へ供給する。上述したように、培地部32の温度は栽培液の温度に密接に連動するので、このように貯留部33へ供給する栽培液の温度を調節することで、培地部32に供給される栽培液の温度が調節され、これにより培地部32内の温度を精度よく調節できる。従って、このような温度調節機構を備えることで、従来のエアコン等での温室内の気温調節による培地部の温度調節に比べて容易かつ効果的に培地部32内の温度を調節できる。
【0091】
<利点>
当該栽培装置は、栽培液供給機構として送液部を有していないので、簡易な構成とでき、設備コストを低減できる。また、当該栽培装置は、水位計により貯留部の水位を検出するので、精度よく貯留部の水位を調節できる。
【0092】
また、当該栽培装置は、温度調節機構により栽培液の温度を調節することで培地部の温度を調節する。これにより、当該栽培装置は、従来のエアコン等での温室内の気温調節による培地部の温度調節に比べて低コストで運転でき、作物の栽培コストを低減できる。
【0093】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0094】
上記第一実施形態では送液部7としてシート体を用いたが、貯留部3内の栽培液を培地部2に供給できれば送液部7はシート体に限定されない。例えば、送液部7として貯留部3と培地部2とに接続される板状や筒状の供給路を用いてもよい。また、送液部7として、上記充填粒子5として好適に用いられるものを含む構造体を用いてもよい。つまり、例えば土壌、パミスサンド等の微粒軽石、多孔性の火山岩の粉砕粒、粒状のロックウール、コーラルサンド、サンゴ、木炭等の板状や筒状等への成形や、筒状の枠内への充填等により栽培液の通過で崩れない形状の構造体とし、この構造体を介して貯留部3と培地部2の底部とを接続してもよい。
【0095】
また、上記実施形態においては、制御部により乾燥ストレス及び浸透圧ストレスを調節する栽培装置について説明したが、制御部を備えない栽培装置も本発明の意図する範囲内である。当該栽培装置は、制御部を備えていなくても、枠体内の充填粒子が形成する層の少なくとも中層部に毛管現象を発現して栽培液が培地部内に供給される領域を有するので、栽培液の過剰な供給が避けられ、作物の根部に安定的に適度な水分ストレスをかけることができ、かつ酸素不足による根腐れを効果的に抑制することができる。
【0096】
また、上記第一実施形態において制御部13により作物Pに加える乾燥ストレス及び浸透圧ストレスは、同時に加えてもよいし、それぞれを作物Pに適した別々のタイミングで加えてもよい。また、当該栽培装置は、乾燥ストレス及び浸透圧ストレスのいずれか一方のみを加える構成としてもよい。
【0097】
また、上記第一実施形態では、水位塩分濃度調節機構21として水分センサー11及び水分張力センサー12を備える構成について説明したが、上記第二実施形態のように、水位塩分濃度調節機構が水位計と貯留部への栽培液の供給量を制御する制御部とを備える構成としてもよい。例えば貯留部内に水位計を付設し、この水位に基づいて貯留部へ供給する栽培液量を調節することにより、作物Pにかかる乾燥ストレス及び浸透圧ストレスを調節する。水位塩分濃度調節機構として水位計を用いる場合、水分センサー及び水分張力センサーを用いる場合に比べて、検出対象が可視的で検出し易く、かつ低コストで設置できる。
【0098】
また、上記第一実施形態では、遮根透水シート8、第一防水シート9a及び第二防水シート9bを備える栽培装置1について説明したが、これらを備えない構成の栽培装置も本発明の意図する範囲内である。
【実施例】
【0099】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0100】
<生育評価>
実施例として、4cmの高さの砂(粒径0.15mm〜0.6mmである砂粒子が80質量%以上)をポット枠体に詰めた培地部にトマト苗を植え、3cmの水面高さの栽培液を保持する貯留部に培地部の下方を浸漬し、2ヶ月以上静置した。この際、水耕栽培では必要とされる酸素供給などは行わず、水位維持のための栽培液の給液を継続した。その結果、2ヶ月経過後もトマトは根腐れすることなく成長し着果した。
【0101】
比較例の水耕栽培では、溶存酸素の確保による根呼吸の維持と雑菌の繁殖防止が最重視され、水分管理の大きな手間が必要となる。これに対し、上記実施例の栽培方法では、酸素供給設備、除菌設備及び水分管理の手間を省略できる。
【0102】
<培地量評価>
底面部に複数の貫通孔を有する高さ30cmの円柱状のポット枠体に砂(粒径0.15mm〜0.6mmである砂粒子が80質量%以上)4.3Lを充填した培地部にトマト苗を植え、実施例としての試験No.1の評価苗とした。2個の試験No.1の評価苗について、水面高さ2cmの栽培液を保持する貯留部に培地部の底部を浸漬し2ヶ月静置した。その後、栽培液への塩分の添加により浸透圧ストレスをかけて高糖度処理を1ヶ月実施し、合計30個の果実を収穫した。それぞれの評価苗で収穫した果実について、糖度(Brix値)を測定すると共に収量換算値(t/1000m
2/年)を求めた。
図3に、これらの平均収量換算値(t/1000m
2/年)及び平均糖度(°Bx)をそれぞれ棒グラフ及び黒点で示す。なお、
図3中のエラーバーは標準偏差を示している。
【0103】
ポット枠体を高さ25cmの円柱状のものとしたこと以外は試験No.1の評価苗と同様としたものを実施例としての試験No.2の評価苗とした。2個の試験No.2の評価苗について合計27個の果実を収穫し、試験No.1の評価苗と同様の評価を実施した。
【0104】
ポット枠体を高さ20cmの円柱状のものとしたこと以外は試験No.1の評価苗と同様としたものを実施例としての試験No.3の評価苗とした。2個の試験No.3の評価苗について合計28個の果実を収穫し、試験No.1の評価苗と同様の評価を実施した。
【0105】
実施例としての試験No.4では、上部5cmが円柱状で、下部10cmが厚み方向が水平方向となるよう立設された板状であり、下部が窄まった形状の高さ15cmのポット枠体を用いた。このポット枠体に砂を充填してトマト苗を植えた。ポット枠体上部の円柱状部分に充填された砂は0.5Lであった。1個の試験No.4の評価苗について、このポット枠体を貯留部の底に載置し、ポット枠体の円柱状の最下位置が、水面高さ2cmの栽培液を保持する貯留部の水面の8cm上方の位置となるように配置した。このようにして、ポット枠体の下部に板状に充填された砂の毛管現象によって栽培液が上記円柱状の培地部へ揚水されるようにした。なお、ポット枠体の下部に充填された板状の砂の平均厚みは、1cmであった。この試験No.4の評価苗について14個の果実を収穫し、試験No.1の評価苗と同様の評価を実施した。
【0106】
底面部に複数の貫通孔を有する高さ20cmの円柱状のポット枠体に砂2.2Lを充填した培地部にトマト苗を植え、実施例としての試験No.5の評価苗とした。2個の試験No.5の評価苗について、ポット枠体の底面の位置が、水面高さ2cmの栽培液を保持する貯留部の水面の7cm上方の位置となるように配置した。そして、ポット枠体の底面と貯留部の栽培液の水面との間に不織布を配設し、この不織布での毛管現象によって栽培液が培地部へ揚水されるようにした。これらの試験No.5の評価苗について合計29個の果実を収穫し、試験No.1の評価苗と同様の評価を実施した。
【0107】
試験No.1で用いたものと同種の砂を土壌としてトマト苗を植え、比較例としての試験No.6の評価苗とした。14個の試験No.6の評価苗について、従来の土壌栽培により、高糖度処理を行わずに3ヶ月栽培し、合計195個の果実を収穫した。これらの試験No.6の評価苗について、試験No.1の評価苗と同様の評価を実施した。
【0108】
試験No.1で用いたものと同種の砂を土壌としてトマト苗を植え、比較例としての試験No.7の評価苗とした。12個の試験No.7の評価苗について、従来の土壌栽培により、2ヶ月後から高糖度処理を1ヶ月実施し、合計162個の果実を収穫した。これらの試験No.7の評価苗について、試験No.1の評価苗と同様の評価を実施した。
【0109】
[評価結果]
図3の結果より、試験No.1〜試験No.5の実施例と高糖度処理を実施しない従来の土壌栽培(試験No.6)とを比較すると、試験No.6の果実の平均糖度が6.2°Bxであったのに対し、試験No.1〜試験No.5では平均糖度6.7°Bx以上7.5°Bx以下という高糖度の果実を生産できることを確認できた。
【0110】
一方、高糖度処理を行った従来の土壌栽培(試験No.7)で収穫した果実の平均糖度は7.8°Bxと高かったものの、その平均収量換算値は12.5t/1000m
2/年と比較的小さかった。これに対し、試験No.1〜試験No.5の実施例における平均収量換算値は20.8t/1000m
2/年以上であり、試験No.7の1.6倍以上の収量が得られることがわかった。これらのことから、試験No.1〜試験No.5の栽培方法により、高糖度処理との兼ね合いで多少収量を犠牲にしてもそれを補う高糖度の果実を生産できること、すなわち糖度及び収量を高次元でバランスさせて作物を栽培できることがわかった。
【0111】
また、砂の充填量を0.5Lとした超小型のポット枠体を用いた試験No.4における平均収量換算値は21.4t/1000m
2/年であり、従来の土壌栽培と同等の果実の収量が得られることがわかった。なお、従来の土壌栽培では、1ベッド(1000mm×600mm×70mm)当たり平均2.75株の苗を植え42Lの砂を使用する。つまり、従来の土壌栽培では1株当たり15.3Lの砂を使用するので、試験No.4の超小型のポット枠体を用いることにより、従来の土壌栽培における砂の使用量を96.7%低減できるといえる。
【0112】
<農地高低差評価>
第一実施形態の栽培装置を用いて、農地高低差による作物の生育状態を評価した。具体的には、
図4に示すような足場の上に設けた25m長の農地50を用いて、この農地50の長手方向の両端部及び中央部の3箇所に、本葉5枚又は6枚が展開したトマト苗を植えた第1ポット枠体51a、第2ポット枠体51b、第3ポット枠体51cを載置した。そして、第三花房が確認できるまでこれらのトマト苗を栽培した。栽培した期間は43日間である。各ポット枠体の鉛直方向高さは、農地50の長手方向の一端側に載置した第1ポット枠体51a、農地50の長手方向中央部に載置した第2ポット枠体51b、農地50の長手方向の他端側に載置した第3ポット枠体51cの順に高くなっており、第1ポット枠体51aと第3ポット枠体51cとの高低差は約3cmであった。
【0113】
上記3つのポット枠体:第1ポット枠体51a、第2ポット枠体51b、第3ポット枠体51cに植えたトマト苗について、農地50内の載置箇所の違いによる生育差は見られなかった。これにより、当該栽培方法により、ある程度の高低差がある場合でも同等の品質でトマト苗を栽培できることを確認できた。
【0114】
<培地温度調査>
第一実施形態の栽培装置1を用いて、温室内の気温、培地部2の温度及び貯留部3内の栽培液の温度を測定し、培地部2の温度と温室内の気温及び貯留部3内の栽培液の温度との関係を調査した。栽培装置1を用いてトマト苗を栽培し、収穫直前の5.5日間におけるこれらの温度の経時的変化を
図5に示す。
【0115】
図5の結果より、培地部2の温度は、温室内の気温よりも栽培液の温度に密接に連動していることがわかった。従って、
図1の栽培装置1で培地部2に供給する栽培液の温度を調節することで、従来のようなエアコン等による温室内の気温調節よりも、培地温度を調節し易いといえる。