(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フィルムの左右側縁部を、それぞれ、縦方向のクリップピッチが変化する可変ピッチ型の左右のクリップによって把持して、該左右のクリップのクリップピッチをそれぞれ独立して変化させて、該フィルムを斜め延伸すること、および、
該斜め延伸したフィルムを縦方向に延伸すること
を連続して行い、
得られる位相差フィルムのNz係数が1.00〜1.30である、
位相差フィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の1つの実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0010】
本発明の位相差フィルムの製造方法は、フィルムを斜め延伸すること、および、フィルムを縦方向に延伸することを連続して行う。以下、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1〜
図5は本発明の位相差フィルムの製造方法の一例を示す概略図である。具体的には、
図1は延伸装置の一例の全体構成を説明する概略平面図である。
図2および
図3は、それぞれ、
図1の延伸装置においてクリップピッチを変化させるリンク機構を説明するための要部概略平面図であり、
図2はクリップピッチが最小の状態を示し、
図3はクリップピッチが最大の状態を示す。
図4はフィルムの延伸状態を説明する模式図であり、
図5は
図4に示す延伸の際の延伸装置の各ゾーンとクリップピッチとの関係を示すグラフである。
【0012】
延伸装置100は、平面視で、左右両側に、フィルム把持用の多数のクリップ20を有する無端ループ10Lと無端ループ10Rとを左右対称に有する。なお、本明細書においては、フィルムの入口側から見て左側の無端ループを左側の無端ループ10L、右側の無端ループを右側の無端ループ10Rと称する。左右の無端ループ10L、10Rのクリップ20は、それぞれ、基準レール70に案内されてループ状に巡回移動する。左側の無端ループ10Lは反時計廻り方向に巡回移動し、右側の無端ループ10Rは時計廻り方向に巡回移動する。
【0013】
延伸装置100においては、フィルムの入口側から出口側へ向けて、把持ゾーンA、予熱ゾーンB、延伸ゾーンC、熱処理ゾーンD、および解放ゾーンEが順に設けられている。なお、これらのそれぞれのゾーンは、延伸対象となるフィルムが実質的に把持、予熱、斜め延伸、熱処理および解放されるゾーンを意味し、機械的、構造的に独立した区画を意味するものではない。また、それぞれのゾーンの長さの比率は、実際の長さの比率と異なることに留意されたい。
【0014】
把持ゾーンAおよび予熱ゾーンBでは、左右の無端ループ10L、10Rは、延伸対象となるフィルムの初期幅に対応する離間距離で互いに略平行となるよう構成されている。延伸ゾーンCは、斜め延伸ゾーンC1と縦延伸ゾーンC2とを含む。延伸ゾーンCは、入口側から出口側に進むに従って左右の無端ループ10L、10Rの離間距離が上記フィルムの延伸後の幅に対応するまで徐々に拡大する構成とされている。熱処理ゾーンDでは、左右の無端ループ10L、10Rは、上記フィルムの延伸後の幅に対応する離間距離で互いに略平行となるよう構成されている。
【0015】
左側の無端ループ10Lのクリップ(左側のクリップ)20および右側の無端ループ10Rのクリップ(右側のクリップ)20は、それぞれ独立して巡回移動し得る。例えば、左側の無端ループ10Lの駆動用スプロケット11、12が電動モータ13、14によって反時計廻り方向に回転駆動され、右側の無端ループ10Rの駆動用スプロケット11、12が電動モータ13、14によって時計廻り方向に回転駆動される。その結果、これら駆動用スプロケット11、12に係合している駆動ローラ(図示せず)のクリップ担持部材30に走行力が与えられる。これにより、左側の無端ループ10Lは反時計廻り方向に巡回移動し、右側の無端ループ10Rは時計廻り方向に巡回移動する。左側の電動モータおよび右側の電動モータを、それぞれ独立して駆動させることにより、左側の無端ループ10Lおよび右側の無端ループ10Rをそれぞれ独立して巡回移動させることができる。
【0016】
さらに、左側の無端ループ10Lのクリップ(左側のクリップ)20および右側の無端ループ10Rのクリップ(右側のクリップ)20は、それぞれ可変ピッチ型である。すなわち、左右のクリップ20,20は、それぞれ独立して、移動に伴って縦方向(MD)のクリップピッチ(クリップ間距離)が変化し得る。可変ピッチ型は、任意の適切な構成により実現され得る。以下、一例として、リンク機構(パンタグラフ機構)について説明する。
【0017】
図2および
図3に示すように、クリップ20を個々に担持する平面視横方向に細長矩形状のクリップ担持部材30が設けられている。図示しないが、クリップ担持部材30は、上梁、下梁、前壁(クリップ側の壁)、および後壁(クリップと反対側の壁)により閉じ断面の強固なフレーム構造に形成されている。クリップ担持部材30は、その両端の走行輪38により走行路面81、82上を転動するよう設けられている。なお、
図2および
図3では、前壁側の走行輪(走行路面81上を転動する走行輪)は図示されない。走行路面81、82は、全域に亘って基準レール70に並行している。クリップ担持部材30の上梁と下梁の後側(クリップと反対側)には、クリップ担持部材の長手方向に沿って長孔31が形成され、スライダ32が長孔31の長手方向にスライド可能に係合している。クリップ担持部材30のクリップ20側端部の近傍には、上梁および下梁を貫通して一本の第1の軸部材33が垂直に設けられている。一方、クリップ担持部材30のスライダ32には一本の第2の軸部材34が垂直に貫通して設けられている。各クリップ担持部材30の第1の軸部材33には主リンク部材35の一端が枢動連結されている。主リンク部材35は、他端を隣接するクリップ担持部材30の第2の軸部材34に枢動連結されている。各クリップ担持部材30の第1の軸部材33には、主リンク部材35に加えて、副リンク部材36の一端が枢動連結されている。副リンク部材36は、他端を主リンク部材35の中間部に枢軸37によって枢動連結されている。主リンク部材35、副リンク部材36によるリンク機構により、
図2に示すように、スライダ32がクリップ担持部材30の後側(クリップ側の反対側)に移動しているほど、クリップ担持部材30同士の縦方向のピッチ(以下、単にクリップピッチと称する)が小さくなり、
図3に示すように、スライダ32がクリップ担持部材30の前側(クリップ側)に移動しているほど、クリップピッチが大きくなる。スライダ32の位置決めは、ピッチ設定レール90により行われる。
図2および
図3に示すように、クリップピッチが大きいほど、基準レール70とピッチ設定レール90との離間距離が小さくなる。なお、リンク機構は当業界において周知であるので、より詳細な説明は省略する。
【0018】
上記のような延伸装置を用いてフィルムを延伸することにより、斜め方向(例えば、幅方向に対して45°の方向)に遅相軸を有する位相差フィルムが作製され得る。以下、各工程について説明する。
【0019】
A.把持工程
把持ゾーンA(延伸装置100のフィルム取り込みの入口)において、左右の無端ループ10L、10Rのクリップ20によって、延伸対象となるフィルムの左右の側縁部が把持される。具体的には、
図4に示すように、フィルムは一定のクリップピッチで把持され、左右のクリップ20,20は左右方向(幅方向)に対向するように配置される。左右の無端ループ10L、10Rの移動(実質的には、基準レール70に案内された各クリップ担持部材30の移動)により、フィルムは予熱ゾーンBに送られる。
【0020】
B.予熱工程
予熱ゾーンBにおいて、左右の無端ループ10L、10Rは、上記のとおり延伸対象となるフィルムの初期幅に対応する離間距離で互いに略平行となるよう構成されている。したがって、基本的には横延伸も縦延伸も行わずにフィルムは加熱されるが、例えば、予熱によりフィルムのたわみが起こり、オーブン内のノズルに接触するなどの不具合を回避するために、わずかに左右クリップ間の距離(幅方向の距離)を広げてもよい。
【0021】
予熱工程においては、フィルムを温度T1(℃)まで加熱する。温度T1は、フィルムのガラス転移温度(Tg)以上であることが好ましく、より好ましくはTg+2℃以上、さらに好ましくはTg+5℃以上である。一方、温度T1は、好ましくはTg+40℃以下、より好ましくはTg+30℃以下である。用いるフィルムにより異なるが、温度T1は、例えば70℃〜190℃であり、好ましくは80℃〜180℃である。
【0022】
上記温度T1までの昇温時間および温度T1での保持時間は、フィルムの構成材料や製造条件(例えば、フィルムの搬送速度)に応じて適切に設定され得る。これらの昇温時間および保持時間は、クリップの移動速度、予熱ゾーンの長さ、予熱ゾーンの温度等を調整することにより制御され得る。
【0023】
C.延伸工程
上述のとおり、本発明においては、斜め延伸と縦延伸とを連続して行うことによりフィルムを延伸する。斜め延伸と縦延伸の順序は特に限定されず、斜め延伸後に縦延伸してもよいし、縦延伸後に斜め延伸してもよい。このように斜め延伸と縦延伸とを組み合わせることにより、所望の配向角(例えば、幅方向に対して45°)を良好に達成することができる。具体的には、縦延伸後に連続して斜め延伸を行う場合、フィルムの分子鎖を縦方向(搬送方向)に配向させ、この配向状態で斜め方向に変形を与えるので、無配向状態で斜め方向に変形を与える場合に比べて容易に斜め方向に配向させることができる。斜め延伸後に連続して縦延伸を行う場合、フィルムの分子鎖を斜め方向に配向させ、この配向状態で縦方向(搬送方向)に変形を与えるので、もともと斜め方向に配向していた分子鎖の配向方向を縦方向に近づけることができる。こうして、所望の配向角よりも斜め延伸角度を小さくすることができる(クリップにかかる斜め方向の力を低減することができる)。その結果、均一性に優れた位相差フィルムを得ることができる。具体的には、得られる位相差フィルムの配向角のバラツキは抑制され、フィルムの幅方向端部(クリップ把持部近傍)におけるフィルムの変形量を小さくして、フィルム幅方向中央部との物性差を抑制することができる(例えば、幅方向端部の破断を防止することができる)。
【0024】
各延伸は、一段階で行ってもよいし、多段階で行ってもよい。各延伸の延伸条件は、適宜設定され得る。例えば、延伸温度は、斜め延伸温度と縦延伸温度は同じであってもよいし異なっていてもよい。延伸温度T2は、フィルムのガラス転移温度(Tg)に対し、Tg−20℃〜Tg+30℃であることが好ましく、さらに好ましくはTg−10℃〜Tg+20℃、特に好ましくはTg程度である。用いるフィルムにより異なるが、温度T2は、例えば70℃〜180℃であり、好ましくは80℃〜170℃である。斜め延伸温度T21と縦延伸温度T22との差の絶対値は、好ましくは5℃以下であり、さらに好ましくは2℃以下である。
【0025】
上記温度T1と温度T2との差の絶対値は、好ましくは2℃以上であり、さらに好ましくは5℃以上である。1つの実施形態においては、T1>T2である。この場合、予熱工程で温度T1まで加熱されたフィルムは温度T2まで冷却され得る。
【0026】
以下、具体例をもとに説明する。上述のとおり、延伸ゾーンCは、斜め延伸ゾーンC1と縦延伸ゾーンC2とを含む。
【0027】
C−1.斜め延伸
斜め延伸ゾーンC1においては、左右のクリップのクリップピッチをそれぞれ独立して変化させて、フィルムを斜め延伸する。1つの実施形態においては、斜め延伸は、一方のクリップのクリップピッチを増大させ、かつ、他方のクリップのクリップピッチを減少させること;および、左右のクリップのクリップピッチが等しくなるように該一方のクリップのクリップピッチを維持または減少させ、かつ、該他方のクリップのクリップピッチを増大させること;を含む。斜め延伸は、
図4に示すように、左右のクリップ間の距離(幅方向の距離)を拡大させながら行われ得る。なお、
図4および
図5において、便宜上、斜め延伸ゾーンC1を、入口側の第1の斜め延伸ゾーンC1aと出口側の第2の斜め延伸ゾーンC1bとに分けて記載する。第1の斜め延伸ゾーンC1aにおける延伸を第1の斜め延伸、第2の斜め延伸ゾーンC1bにおける延伸を第2の斜め延伸と称する場合がある。第1の斜め延伸ゾーンC1aおよび第2の斜め延伸ゾーンC1bの長さおよび互いの長さの比は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0028】
予熱ゾーンBにおいては、左右のクリップのクリップピッチはともにP
1とされている。フィルムが第1の斜め延伸ゾーンC1aに入ると同時に、一方の(図示例では右側)クリップのクリップピッチの増大を開始し、かつ、他方の(図示例では左側)クリップのクリップピッチの減少を開始する。第1の斜め延伸ゾーンC1aの始点から終点にかけて、右側クリップのクリップピッチをP
1からP
2まで増大させ、左側クリップのクリップピッチをP
1からP
3まで減少させる。したがって、第1の斜め延伸ゾーンC1aの終点において、右側クリップはクリップピッチP
2で移動し、左側クリップはクリップピッチP
3で移動することとされている。左右のクリップピッチの比は、左右のクリップの移動速度の比に概ね対応し得る。よって、左右のクリップピッチの比は、フィルムの右側縁部と左側縁部のMD方向の延伸倍率の比に概ね対応し得る。
【0029】
図示例では、右側クリップのクリップピッチが増大し始める位置および左側クリップのクリップピッチが減少し始める位置をともに第1の斜め延伸ゾーンC1aの始点としているが、例えば、右側クリップのクリップピッチが増大し始めた後に左側クリップのクリップピッチが減少し始めてもよく、左側クリップのクリップピッチが減少し始めた後に右側クリップのクリップピッチが増大し始めてもよい。1つの実施形態においては、一方の側(例えば右側)のクリップのクリップピッチが増大し始めた後に他方の側(例えば左側)のクリップのクリップピッチが減少し始める。このような実施形態において、斜め延伸が左右のクリップ間の距離(幅方向の距離)を拡大させながら行われる場合には、既にフィルムが幅方向に一定程度(好ましくは1.2倍〜2.0倍程度)延伸されていることから、該他方の側のクリップピッチを大きく減少させてもシワが発生しにくい。よって、面内配向性の高い位相差フィルムが好適に得られ得る。
【0030】
図示例では、第1の斜め延伸ゾーンC1aの終点まで右側クリップのクリップピッチの増大および左側クリップのクリップピッチの減少が続いているが、例えば、クリップピッチの増大または減少のいずれか一方が第1の斜め延伸ゾーンC1aの終点よりも前に終了し、第1の斜め延伸ゾーンC1aの終点までクリップピッチがそのまま維持されてもよい。
【0031】
1つの実施形態においては、上記増大するクリップピッチの変化率(
図5におけるP
2/P
1)は、好ましくは1.10〜1.70、より好ましくは1.15〜1.60、さらに好ましくは1.20〜1.55である。また、減少するクリップピッチの変化率(
図5におけるP
3/P
1)は、例えば0.50以上1未満、好ましくは0.55〜0.95、より好ましくは0.60〜0.90、さらに好ましくは0.60〜0.80である。クリップピッチの変化率がこのような範囲内であれば、フィルムの幅方向に対して35°〜41°の方向に遅相軸を発現させることができ、後述の縦延伸と組み合わせることによりフィルムの幅方向に対して概ね45°の方向に遅相軸を有する位相差フィルムを得ることができる。
【0032】
クリップピッチは、上記のとおり、延伸装置のピッチ設定レールと基準レールとの離間距離を調整してスライダを位置決めすることにより調整され得る。
【0033】
第1の斜め延伸ゾーンC1aにおけるフィルムの幅方向の延伸倍率(W
2/W
1)は、好ましくは1.05倍〜2.00倍、より好ましくは1.15倍〜1.80倍、さらに好ましくは1.25倍〜1.60倍である。幅方向の延伸倍率が1.05倍未満であると、収縮させた側の側縁部にトタン状のシワが生じる場合がある。一方、幅方向の延伸倍率が2.00倍を超えると、十分な均一性が得られない場合がある。
【0034】
1つの実施形態において、第1の斜め延伸は、一方のクリップのクリップピッチの変化率と他方のクリップのクリップピッチの変化率との積が、好ましくは0.70〜1.20、より好ましくは0.75〜1.15、さらに好ましくは0.80〜1.10となるように行われる。
【0035】
次に、フィルムが第2の斜め延伸ゾーンC1bに入ると同時に、左側クリップのクリップピッチの増大を開始する。第2の斜め延伸ゾーンC1bにおいては、左側クリップのクリップピッチをP
2まで増大させる。一方、右側クリップのクリップピッチは、第2の斜め延伸ゾーンC1bにおいてP
2のまま維持される。したがって、第2の斜め延伸ゾーンC2の終点において、左側クリップおよび右側クリップはともに、クリップピッチP
2で移動することとされている。このように左右のクリップピッチの差を縮小しながら、斜め延伸することにより、余分な応力を緩和しつつ、斜め方向に十分に延伸することができる。また、左右のクリップの移動速度が等しくなった状態でフィルムを解放工程に供することができるので、左右のクリップの解放時にフィルムの搬送速度等のバラつきが生じ難く、その後のフィルムの巻き取りが好適に行われ得る。
【0036】
第2の斜め延伸ゾーンC1bにおけるフィルムの幅方向の延伸倍率(W
3/W
1:したがって、幅方向の最終的な延伸倍率)は、好ましくは1.50倍〜3.00倍、より好ましくは1.60倍〜2.80倍、さらに好ましくは1.70倍〜2.50倍である。幅方向の延伸倍率が1.50倍未満であると、収縮させた側の側縁部にトタン状のシワが生じる場合がある。一方、幅方向の延伸倍率が3.00倍を超えると、十分な均一性が得られない場合がある。
【0037】
第1の斜め延伸の延伸温度と第2の斜め延伸の延伸温度とは、代表的には、同等である。
【0038】
斜め延伸の方式としては、
図5に示すようなクリップピッチのプロファイルに限らず、幅方向に対して所定の角度の方向に遅相軸を有する位相差フィルムが得られる限り適宜変更可能である。例えば、
図6に示すような、左右のクリップのうちの一方(例えば右側)のクリップのクリップピッチを一定とした状態で他方(例えば左側)のクリップのクリップピッチを減少させて、斜め延伸する形態(必要に応じて、減少させた左側のクリップのクリップピッチを右側のクリップのクリップピッチまで増大させることをさらに含む);
図7に示すような、左右のクリップのうちの一方(例えば右側)のクリップのクリップピッチが減少し始めるタイミングと他方(例えば左側)のクリップのクリップピッチが減少し始めるタイミングとをずらし、それぞれのクリップのクリップピッチを所定のピッチまで減少させて、斜め延伸する形態が挙げられる。
【0039】
C−2.縦延伸
縦延伸ゾーンC2において、左右のクリップのクリップピッチを互いに対応させながら増大させる。具体的には、左右のクリップピッチをP
2からP
4まで増大させてフィルムの搬送方向(MD)に延伸する。図示例では、クリップピッチを連続的に増大させているが、段階的に増大させてもよい。縦延伸の延伸倍率(縦延伸におけるクリップピッチ変化率(
図5におけるP
4/P
2))は、好ましくは1.0倍を超え1.5倍以下であり、さらに好ましくは1.0倍を超え1.2倍以下である。
【0040】
図示例では、縦延伸の際、左右のクリップは幅方向に移動させずにフィルム幅はW
3に保たれているが、左右のクリップ間の距離(幅方向の距離)を縮めてもよい。具体的には、縦延伸は固定端延伸であってもよいし、自由端延伸であってもよい。1つの実施形態においては、縦延伸の際、左右のクリップ間の距離(幅方向の距離)を縮める。具体的には、縦延伸前後でフィルム幅がW
3からW
4(W
4<W
3)となるように幅方向における左右のクリップ間距離を調節する。このような形態によれば、斜め方向の配向性を上げることができる上に、クリップに発生する負荷を下げることができるため、フィルム破断を防ぐことができる。縦延伸前後におけるフィルム幅の収縮率は、好ましくは3%〜10%であり、さらに好ましくは3%〜5%である。
【0041】
所望の配向角(フィルムの幅方向に対する角度)θを得るために、斜め延伸によりθ−10°〜θ−4°の配向角を得ることが好ましい。上述のとおり、斜め延伸と縦延伸の順序は特に限定されず、
図8に示すように、縦延伸後に斜め延伸してもよい。この場合、斜め延伸の条件は、縦延伸を行わず単独で斜め延伸を行った場合に得られ得る配向角が上記範囲となるように設定され得る。具体的には、
図5におけるクリップピッチ変化率P
2/P
1は、
図8におけるP
3/P
2に相当し、
図5におけるクリップピッチ変化率P
3/P
1は、
図8におけるP
4/P
2に相当し得る。
【0042】
D.熱処理工程
熱処理ゾーンDにおいては、左右のクリップ20のクリップピッチを一定とした状態で、フィルムを熱処理する。本実施形態では(
図4および
図5においては)、左右のクリップ20のクリップピッチをともにP
4とした状態で、フィルムを搬送しながら加熱する。熱処理工程は、必要に応じて行われ得る。
【0043】
熱処理は、代表的には、温度T3で行われ得る。温度T3は、延伸されるフィルムによって異なり、T2≧T3の場合も、T2<T3の場合もあり得る。一般的に、フィルムが非晶性材料である場合はT2≧T3であり、結晶性材料である場合はT2<T3にすることで結晶化処理を行う場合もある。T2≧T3の場合、温度T2とT3の差(T2−T3)は好ましくは0℃〜50℃である。熱処理時間は、代表的には10秒〜10分である。熱処理時間は、熱処理ゾーンの長さおよび/またはフィルムの搬送速度を調整することにより制御され得る。
【0044】
E.解放工程
最後に、フィルムを把持するクリップを解放して、位相差フィルムが得られる。なお、延伸後のフィルムの幅W
3が、得られる位相差フィルムの幅に対応する(
図4)。斜め延伸が横延伸を含まない場合、例えば、得られる位相差フィルムの幅はフィルムの初期幅に実質的に等しい。
【0045】
F.延伸対象のフィルムおよび延伸により得られる位相差フィルム
本発明の製造方法(実質的には、上記A項〜E項に記載の延伸方法)に好適に用いられるフィルムとしては、位相差フィルムとして用いられ得る任意の適切なフィルムが挙げられる。フィルムを構成する材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、シクロオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、セルロースエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。好ましくは、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、セルロースエステル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂である。これらの樹脂であれば、いわゆる逆分散の波長依存性を示す位相差フィルムが得られ得るからである。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、所望の特性に応じて組み合わせて用いてもよい。
【0046】
上記ポリカーボネート系樹脂としては、任意の適切なポリカーボネート系樹脂が用いられる。例えば、ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂が好ましい。ジヒドロキシ化合物の具体例としては、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−n−プロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−n−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂は、上記ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の他に、イソソルビド、イソマンニド、イソイデット、スピログリコール、ジオキサングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール(TEG)、ポリエチレングリコール(PEG)、ビスフェノール類などのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。
【0047】
上記のようなポリカーボネート樹脂の詳細は、例えば特開2012−67300号公報、特許第3325560号およびWO2014/061677号に記載されている。当該特許文献の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0048】
ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、110℃以上250℃以下であることが好ましく、より好ましくは120℃以上230℃以下である。ガラス転移温度が過度に低いと耐熱性が悪くなる傾向にあり、フィルム成形後に寸法変化を起こす可能性がある。ガラス転移温度が過度に高いと、フィルム成形時の成形安定性が悪くなる場合があり、また、フィルムの透明性を損なう場合がある。なお、ガラス転移温度は、JIS K 7121(1987)に準じて求められる。
【0049】
上記ポリビニルアセタール樹脂としては、任意の適切なポリビニルアセタール樹脂を用いることができる。代表的には、ポリビニルアセタール樹脂は、少なくとも2種類のアルデヒド化合物及び/又はケトン化合物と、ポリビニルアルコール系樹脂とを縮合反応させて得ることができる。ポリビニルアセタール樹脂の具体例および詳細な製造方法は、例えば、特開2007−161994号公報に記載されている。当該記載は、本明細書に参考として援用される。
【0050】
上記延伸対象のフィルムを延伸して得られる位相差フィルムは、好ましくは、屈折率特性がnx>nyの関係を示す。さらに、位相差フィルムは、好ましくはλ/4板として機能し得る。位相差フィルムの面内位相差Re(550)は、好ましくは100nm〜180nm、より好ましくは135nm〜155nmである。なお、本明細書において、nxは面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、nyは面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、nzは厚み方向の屈折率である。また、Re(λ)は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの面内位相差である。したがって、Re(550)は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルムの面内位相差である。Re(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx−ny)×dによって求められる。
【0051】
位相差フィルムは、nx>nyの関係を有する限り、任意の適切な屈折率楕円体を示す。好ましくは、位相差フィルムの屈折率楕円体は、nx>ny≧nzの関係を示す。
【0052】
位相差フィルムのNz係数は、好ましくは1.00〜1.30であり、より好ましくは1.00〜1.25であり、さらに好ましくは1.00〜1.20であり、特に好ましくは1.00〜1.15である。このようにNz係数が小さい位相差フィルムを用いることにより、反射率および反射色相の視野角依存性に優れた画像表示装置を得ることができる。Nz係数は、Nz=Rth(λ)/Re(λ)によって求められる。ここで、Rth(λ)は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差であり、式:Rth(λ)=(nx−nz)×dによって求められる。
【0053】
位相差フィルムは、好ましくは、いわゆる逆分散の波長依存性を示す。具体的には、その面内位相差は、Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係を満たす。Re(450)/Re(550)は、好ましくは0.8以上1.0未満であり、より好ましくは0.8〜0.95である。Re(550)/Re(650)は、好ましくは0.8以上1.0未満であり、より好ましくは0.8〜0.97である。逆分散の波長依存性によれば、反射率および反射色相の視野角依存性に優れた画像表示装置を得ることができる。
【0054】
位相差フィルムは、その光弾性係数の絶対値が、好ましくは2×10
−12(m
2/N)〜100×10
−12(m
2/N)であり、より好ましくは10×10
−12(m
2/N)〜50×10
−12(m
2/N)である。
【0055】
G.円偏光板および円偏光板の製造方法
上記の本発明の製造方法により得られた位相差フィルムは、代表的には円偏光板に好適に用いられ得る。
図9は、そのような円偏光板の一例の概略断面図である。図示例の円偏光板300は、偏光子310と、偏光子310の片側に配置された第1の保護フィルム320と、偏光子310のもう片側に配置された第2の保護フィルム330と、第2の保護フィルム330の外側に配置された位相差フィルム340と、を有する。位相差フィルム340は、上記の本発明の製造方法により得られた位相差フィルムである。第2の保護フィルム330は省略されてもよい。その場合、位相差フィルム340が偏光子の保護フィルムとして機能し得る。偏光子310の吸収軸と位相差フィルム340の遅相軸とのなす角度は、好ましくは30°〜60°、より好ましくは38°〜52°、さらに好ましくは43〜47°、特に好ましくは45°程度である。なお、偏光子および保護フィルムの構成は業界で周知であるので、詳細な説明は省略する。
【0056】
円偏光板は、目的に応じて任意の適切な光学部材や光学機能層を任意の適切な位置にさらに含んでいてもよい。例えば、第1の保護フィルム320の外側表面に、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理、光拡散処理等の表面処理が施されていてもよい。また、位相差フィルム340の少なくとも一方の側に、目的に応じて任意の適切な屈折率楕円体を示す別の位相差フィルムが配置されてもよい。さらに、第1の保護フィルム320の外側には、フロント基板(例えば、透明保護基板、タッチパネル)等の光学部材が配置されてもよい。
【0057】
上記の本発明の製造方法により得られた位相差フィルムは、円偏光板の製造にきわめて好適である。詳細は以下のとおりである。この位相差フィルムは、長尺状であり、かつ、斜め方向(例えば、長尺方向に対して例えば45°の方向)に遅相軸を有する。多くの場合、長尺状の偏光子は長尺方向または幅方向に吸収軸を有するので、本発明の製造方法により得られた位相差フィルムを用いれば、いわゆるロールトゥロールを利用することができ、きわめて優れた製造効率で円偏光板を作製することができる。なお、ロールトゥロールとは、長尺のフィルム同士をロール搬送しながら、その長尺方向を揃えて連続的に貼り合わせる方法をいう。
【0058】
図10を参照して、本発明の1つの実施形態による円偏光板の製造方法を簡単に説明する。
図10において、符号811および812は、それぞれ、偏光板および位相差フィルムを巻回するロールであり、符号822は搬送ロールである。図示例では、偏光板(第1の保護フィルム320/偏光子310/第2の保護フィルム330)と、位相差フィルム340とを矢印方向に送り出し、それぞれの長手方向を揃えた状態で貼り合わせる。その際、偏光板の第2の保護フィルム330と位相差フィルム340とが隣接するように貼り合わせる。このようにして、
図9に示すような円偏光板300が得られ得る。図示しないが、例えば、偏光板(第1の保護フィルム320/偏光子310)と位相差フィルム340とを、偏光子310と位相差フィルム340とが隣接するように貼り合わせ、位相差フィルム340が保護フィルムとして機能する円偏光板を作製することもできる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下のとおりである。
【0060】
(1)配向角(遅相軸の発現方向)の測定方法
フィルムから、一辺が当該フィルムの幅方向と平行となるように幅50mm、長さ50mmの正方形状に切り出した試料片に対し、ミュラーマトリクス・ポラリメーター(Axometrics社製 製品名「Axoscan」)を用いて測定を行った。具体的には、波長550nm、23℃における配向角θを測定した。なお、配向角θは測定台に試料を平行に置いた状態で測定した。
(2)厚み
マイクロゲージ式厚み計(ミツトヨ社製)を用いて測定した。
【0061】
<実施例1−1>
(ポリカーボネート樹脂フィルムの作製)
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した縦型反応器2器からなるバッチ重合装置を用いて重合を行った。9,9−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BHEPF)、イソソルビド(ISB)、DEG(ジエチレングリコール)、ジフェニルカーボネート(DPC)、および酢酸マグネシウム4水和物を、モル比率でBHEPF/ISB/DEG/DPC/酢酸マグネシウム=0.348/0.490/0.162/1.005/1.00×10
−5になるように仕込んだ。反応器内を十分に窒素置換した後(酸素濃度0.0005〜0.001vol%)、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。
【0062】
第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力0.2kPaにした。その後、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、反応液をストランドの形態で抜出し、回転式カッターでペレット化を行い、BHEPF/ISB/DEG=34.8/49.0/16.2[mol%]の共重合組成のポリカーボネート樹脂Aを得た。このポリカーボネート樹脂の還元粘度は0.430dL/g、ガラス転移温度は128℃であった。
【0063】
得られたポリカーボネート樹脂を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(いすず化工機社製、スクリュー径25mm、シリンダー設定温度:220℃)、Tダイ(幅275mm、設定温度:220℃)、チルロール(設定温度:120〜130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み130μmのポリカーボネート樹脂フィルムを作製した。
【0064】
上記のようにして得られたポリカーボネート樹脂フィルムを、
図1〜
図4に示すような装置を用い、
図5に示すようなクリップピッチのプロファイルで、予熱処理、斜め延伸および縦延伸に供し、位相差フィルムを得た。具体的には、以下のとおりである。
【0065】
(予熱処理)
上記ポリカーボネート樹脂フィルム(厚み130μm、幅730mm)を、延伸装置の予熱ゾーンでフィルム温度が135℃となるように予熱した。予熱ゾーンにおいては、左右のクリップのクリップピッチは125mmであった。
【0066】
(斜め延伸)
次に、フィルムが第1の斜め延伸ゾーンC1aに入ると同時に、左側クリップのクリップピッチの減少を開始し、第1の斜め延伸ゾーンC1aにおいて125mmから112.5mmまで減少させるとともに、右側クリップのクリップピッチを125mmから170mmまで増大させた。次に、フィルムが第2の斜め延伸ゾーンC1bに入ると同時に、左側クリップのクリップピッチの増大を開始し、第2の斜め延伸ゾーンC1bにおいて112.5mmから170mmまで増大させた。一方、右側クリップのクリップピッチは、第2の斜め延伸ゾーンC1bにおいて170mmのまま維持した。なお、斜め延伸は135℃で行った。斜め延伸は横延伸を含み、この横延伸の延伸倍率は1.9倍であった。
この時点で、フィルムの配向角は35°、厚みは51μmであり、幅は1387mmであった。
【0067】
(縦延伸)
次に、フィルムが縦延伸ゾーンC2に入ると同時に、左右のクリップのクリップピッチを170mmから204mmまで増大させた(延伸倍率:1.2倍)。なお、縦延伸は135℃で行った。縦延伸の際、左右のクリップを幅方向に移動させなかった。
【0068】
以上のようにして、厚み50μm、幅1387mmの位相差フィルムを得た。
【0069】
<実施例1−2>
第1の斜め延伸ゾーンにおいて左側クリップのクリップピッチを125mmから108.7mmまで減少させたこと、および、縦延伸ゾーンにおいて左右のクリップのクリップピッチを170mmから187mmまで増大させたこと(延伸倍率を1.1倍としたこと)以外は実施例1−1と同様に、位相差フィルムを得た。
なお、斜め延伸終了時点で、フィルムの配向角は38°、厚みは50μmであり、幅は1387mmであった。得られた位相差フィルムの厚みは49μmであり、幅は1387mmであった。
【0070】
<実施例1−3>
第1の斜め延伸ゾーンにおいて左側クリップのクリップピッチを125mmから102.5mmまで減少させたこと、および、縦延伸ゾーンにおいて左右のクリップのクリップピッチを170mmから187mmまで増大させたこと(延伸倍率を1.1倍としたこと)以外は実施例1−1と同様にして、位相差フィルムを得た。
なお、斜め延伸終了時点で、フィルムの配向角は41°、厚みは49μmであり、幅は1387mmであった。得られた位相差フィルムの厚みは48μmであり、幅は1387mmであった。
【0071】
<実施例2−1>
斜め延伸と縦延伸の順序を逆にしたこと以外は実施例1−1と同様にして、位相差フィルムを得た。具体的には、予熱ゾーンにおける左右のクリップのクリップピッチを125mmとし、フィルムが縦延伸ゾーンに入ると同時に、左右のクリップのクリップピッチを125mmから150mmまで増大させた(延伸倍率:1.2倍)。次に、フィルムが第1の斜め延伸ゾーンに入ると同時に、左側クリップのクリップピッチの減少を開始し、第1の斜め延伸ゾーンにおいて150mmから135mmまで減少させるとともに、右側クリップのクリップピッチを150mmから204mmまで増大させた。次に、フィルムが第2の斜め延伸ゾーンに入ると同時に、左側クリップのクリップピッチの増大を開始し、第2の斜め延伸ゾーンにおいて135mmから204mmまで増大させた。一方、右側クリップのクリップピッチは、第2の斜め延伸ゾーンにおいて204mmのまま維持した。
縦延伸終了時点で、フィルムの厚みは109μmであり、幅は730mmであった。得られた位相差フィルムの厚みは48μmであり、幅は1387mmであった。
【0072】
<実施例2−2>
縦延伸ゾーンにおいて左右のクリップのクリップピッチを125mmから137.5mmまで増大させたこと(延伸倍率を1.1倍としたこと)、および、第1の斜め延伸ゾーンにおいて左側クリップのクリップピッチを137.5mmから119.6mmまで減少させるとともに、右側クリップのクリップピッチを137.5mmから187mmまで増大させたこと以外は実施例2−1と同様にして、位相差フィルムを得た。
縦延伸終了時点で、フィルムの厚みは118μmであり、幅は730mmであった。得られた位相差フィルムの厚みは49μmであり、幅は1387mmであった。
【0073】
<実施例2−3>
縦延伸ゾーンにおいて左右のクリップのクリップピッチを125mmから137.5mmまで増大させたこと(延伸倍率を1.1倍としたこと)、および、第1の斜め延伸ゾーンにおいて左側クリップのクリップピッチを137.5mmから113.4mmまで減少させるとともに、右側クリップのクリップピッチを137.5mmから187mmまで増大させたこと以外は実施例2−1と同様にして、位相差フィルムを得た。
縦延伸終了時点で、フィルムの厚みは118μmであり、幅は730mmであった。得られた位相差フィルムの厚みは48μmであり、幅は1387mmであった。
【0074】
<比較例1>
第1の斜め延伸ゾーンにおいて左側クリップのクリップピッチを125mmから96mmまで減少させたこと(得られる位相差フィルムの配向角が45°となるように延伸したこと)、および、縦延伸を行わないこと以外は実施例1−1と同様にして、位相差フィルムの作製を試みた。
【0075】
<比較例2>
予熱ゾーンでフィルム温度が145℃となるように予熱したこと以外は比較例1と同様にして、位相差フィルムを得た。
【0076】
<評価>
各実施例および比較例で得られた位相差フィルムの均一性を評価した。具体的には、耐久性および配向角のバラツキを評価した。評価方法は以下のとおりであり、評価結果を表1および表2に示す。
1.耐久性
延伸工程において、フィルムに破断が生じるか否かを観察した。
(評価基準)
良好:破断は生じない
不良:クリップ把持部近傍において破断が生じる
2.配向角のバラツキ
得られた位相差フィルムに対し、配向角を幅方向に5点計測した。幅方向中央位置の計測値を基準値として、基準値より大きいときは+の変化量、小さいときは―の変化量としてバラツキを評価した。なお、表1および表2には、フィルムの幅方向に対して45°の方向に対するズレ幅を記載している。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
表1および表2から明らかなように、実施例の位相差フィルムは均一性に優れていた。一方、比較例1ではクリップ把持部近傍において破断が生じ、比較例2ではフィルムの破断は防止されたものの配向角のバラツキが大きかった。