特許第6576648号(P6576648)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6576648エリア単位太陽光発電発電量推定装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576648
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】エリア単位太陽光発電発電量推定装置および方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20190909BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20190909BHJP
   H02S 50/00 20140101ALI20190909BHJP
   G01W 1/12 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   H02J3/00 170
   H02J3/38 130
   H02S50/00
   G01W1/12 J
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-30284(P2015-30284)
(22)【出願日】2015年2月19日
(65)【公開番号】特開2016-152742(P2016-152742A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2017年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 広考
(72)【発明者】
【氏名】古川 健太
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】松田 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】志間 達夫
(72)【発明者】
【氏名】木村 全一
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−200167(JP,A)
【文献】 特開2012−191777(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/207848(WO,A1)
【文献】 再公表特許第2014/199502(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
G01W 1/12
H02J 3/38
H02S 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効電力と無効電力を得ることができる送配電系統の情報入力点の電気的下流側領域における太陽光発電の発電量を推定するためのエリア単位太陽光発電発電量推定装置であって、
前記情報入力点における有効電力と無効電力を短周期で取得する短周期PQ計測情報取得機能と、前記送配電系統の情報入力点の電気的下流側領域における太陽光発電による有効電力と無効電力の発電量を、前記電気的下流側領域における日射量から長周期に求める長周期エリア単位太陽光発電出力推定機能と、該長周期エリア単位太陽光発電出力推定機能が得た太陽光発電による複数の有効電力と無効電力の発電量と前記短周期PQ計測情報取得機能が得た有効電力と無効電力から、太陽光発電停止時における有効電力と無効電力を算出する太陽光発電停止時出力算出機能と、該太陽光発電停止時出力算出機能による有効電力と無効電力の関係を示す負荷特性を導き、前記短周期PQ計測情報取得機能で得た有効電力と無効電力とから、前記太陽光発電の発電量を推定する短周期エリア単位太陽光発電出力推定機能を備えることを特徴とするエリア単位太陽光発電発電量推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエリア単位太陽光発電発電量推定装置であって、
前記長周期エリア単位太陽光発電出力推定機能における前記日射量の情報は、前記電気的下流側領域を複数に分割した小地域ごとの日射量情報であり、前記小地域ごとの太陽光発電の設備容量情報を有し、前記小地域ごとの日射量情報と、前記小地域ごとの太陽光発電の設備容量情報とから前記太陽光発電による発電量を生成することを特徴とすることを特徴とするエリア単位太陽光発電発電量推定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のエリア単位太陽光発電発電量推定装置であって、
短周期エリア単位太陽光発電出力推定機能において、前記短周期PQ計測情報取得機能から求めた無効電力の大きさが第1の値のときに前記負荷特性で定まる有効電力と、前記短周期PQ計測情報取得機能から求めた有効電力の差を前記太陽光発電の発電量の推定値とすることを特徴とするエリア単位太陽光発電発電量推定装置。
【請求項4】
請求項3に記載のエリア単位太陽光発電発電量推定装置であって、
前記第1の値の無効電力は、前記短周期PQ計測情報取得機能で取得した無効電力を、力率を用いて補正した値であることを特徴とするエリア単位太陽光発電発電量推定装置。
【請求項5】
有効電力と無効電力を得ることができる送配電系統の情報入力点の電気的下流側領域における太陽光発電の発電量を推定するためのエリア単位太陽光発電発電量推定方法であって、
前記情報入力点における有効電力と無効電力を短周期で取得し、前記送配電系統の情報入力点の電気的下流側領域における太陽光発電による有効電力と無効電力の発電量を、前記電気的下流側領域における日射量から長周期で取得し、該長周期で取得した太陽光発電による複数の有効電力と無効電力の発電量と前記短周期で取得した有効電力と無効電力から、太陽光発電停止時における有効電力と無効電力を算出し、該太陽光発電停止時における有効電力と無効電力の関係を示す負荷特性を導き、前記短周期で取得した有効電力と無効電力とから、前記太陽光発電による有効電力と無効電力の発電量を推定することを特徴とするエリア単位太陽光発電発電量推定方法。
【請求項6】
請求項5に記載のエリア単位太陽光発電発電量推定方法であって、
前記日射量の情報は、前記電気的下流側領域を複数に分割した小地域ごとの日射量情報であり、前記小地域ごとの太陽光発電の設備容量情報を有し、前記小地域ごとの日射量情報と、前記小地域ごとの太陽光発電の設備容量情報とから前記太陽光発電による有効電力と無効電力の発電量を生成することを特徴とするエリア単位太陽光発電発電量推定方法
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のエリア単位太陽光発電発電量推定方法であって、
前記短周期で取得した無効電力の大きさが第1の値のときに前記負荷特性で定まる有効電力と、前記短周期で取得した有効電力の差を前記太陽光発電による推定値とすることを特徴とするエリア単位太陽光発電発電量推定方法。
【請求項8】
請求項7に記載のエリア単位太陽光発電発電量推定方法であって、
前記第1の値の無効電力は、前記短周期で取得した無効電力を、力率を用いて補正した値であることを特徴とするエリア単位太陽光発電発電量推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電装置による発電量を推定することに係り、特にエリア単位で太陽光発電の発電量を推定する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護を目的に電力系統への太陽光発電の連系量が増加している。一方で、太陽光発電は雲の影響で発電量が急激に変化するリスクがある。このため電力会社には、電力の安定供給のために、太陽光発電出力を数秒間隔などで高頻度かつ正確に知りたいとうニーズがある。
【0003】
太陽光発電出力推定の従来技術のひとつに、非特許文献1に記す技術がある。非特許文献1には、力率法による太陽光発電出力推定方式が紹介されている。力率法の概要を以下に記す。
【0004】
力率法ではまず、横軸が有効電力P、縦軸が無効電力Qの座標平面において、分散電源である太陽光発電が停止中に変電所のバンク単位等で計測した有効電力Pや無効電力Qに応じて複数のプロットを打ち、これら複数のプロットに基づき、例えば線形近似処理することにより当該電力系統の負荷特性を予め特定しておく。次に、変電所のバンク単位等で計測するリアルタイムの有効電力Pや無効電力Q(例えば10秒間隔で計測)に応じて先の有効電力Pと無効電力Qの座標面上にプロットを打つ。
【0005】
仮に太陽光発電が力率1で動作しているとすると、太陽光発電は有効電力Pだけを出力する。このため、無効電力がQ1の場合に当該電力系統のあらかじめ特定した前記の負荷特性から求まる有効電力をP、リアルタイムの有効電力Pの計測値をPとすると、太陽光発電出力は、負荷特性から求まる有効電力Pとリアルタイムの有効電力Pの差として求めることができる。
【0006】
力率法のメリットは、変電所のバンク単位等で有効電力Pや無効電力Qを計測するたびに、その時点における太陽光発電出力を計算可能であるため、高頻度に太陽光発電出力を推定することができるという点である。
【0007】
次に、太陽光発電出力推定の他の既存技術として、特許文献1がある。特許文献1には、「太陽光発電状況予測装置10は、予め区分けされた地域の識別情報と、当該地域の太陽光発電の設備に関する設備情報とを対応付けて記憶する発電能力DB31を備え、所定時間ごとに、予め区分けされた地域における日射量データを受信し、気象観測した気象データを送信する気象サーバ103から気象データを受信し、受信した日射量データと、受信した気象データとにより、予め区分けされた地域ごとの一定時間の日射量を推定し、推定した日射量によって、発電能力DB31に基づいて、予め区分けされた地域ごとの太陽光発電の発電量を算定し、算定した太陽光発電の発電量を、電力系統を監視する監視システム108に送信する。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−249608号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】松田他「分散形電源の運転状況推定手法の提案」 電気学会論文誌B、Vol.130 No.6 Page.593−602(2010年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
非特許文献1に記載の方式において太陽光発電出力を正確に計算するには、電力系統の負荷特性を正確に生成する必要がある。しかし、そのためには需要サイドの全ての太陽光発電装置を停止させる必要があるという課題がある。
【0011】
一方、特許文献1に記載の方式は、気象衛星画像情報が長周期(たとえば30分間隔)でしか取得できないため、数秒間隔といった短周期で太陽光発電出力を推定できないとう課題がある。
【0012】
非特許文献1に記載の力率法で太陽光発電出力を正確に計算するには,需要サイドの全ての太陽光発電装置を停止させる必要があるという課題がある。
【0013】
また,変電所バンクの負荷特性は,太陽光発電装置が設置されているバンク単位で異なるし,またそこの需要家数の増減によっても変化するため,バンク単位の負荷特性をきめ細かくかつ正確に把握することが困難であるという課題もある。
【0014】
さらに,特許文献1には,気象衛星画像情報により太陽光発電出力を推定する方式が記載されているが,この特許文献1に記載の方式は,長周期(例えば30分間隔)でしか推定できないという課題がある。
【0015】
以上のことから本発明においては、需要サイドの太陽光発電装置を止める必要がなく、高頻度に太陽光発電出力を推定することができるエリア単位太陽光発電発電量推定装置および方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明においては、有効電力と無効電力を得ることができる送配電系統の情報入力点の電気的下流側領域における太陽光発電の発電量を推定するためのエリア単位太陽光発電発電量推定装置であって、情報入力点における有効電力と無効電力を短周期で取得する短周期PQ計測情報取得機能と、送配電系統の情報入力点の電気的下流側領域における太陽光発電による有効電力と無効電力の発電量を、下流側領域における日射量から長周期に求める長周期エリア単位太陽光発電出力推定機能と、長周期エリア単位太陽光発電出力推定機能が得た太陽光発電による複数の有効電力と無効電力の発電量と短周期PQ計測情報取得機能が得た有効電力と無効電力から、太陽光発電停止時における有効電力と無効電力を算出する太陽光発電停止時出力算出機能と、太陽光発電停止時出力算出機能による有効電力と無効電力の関係を示す負荷特性を導き、短周期PQ計測情報取得機能で得た有効電力と無効電力とから、太陽光発電の発電量を推定する短周期エリア単位太陽光発電出力推定機能を備える。
【0017】
また本発明においては、有効電力と無効電力を得ることができる送配電系統の情報入力点の電気的下流側領域における太陽光発電の発電量を推定するためのエリア単位太陽光発電発電量推定方法であって、情報入力点における有効電力と無効電力を短周期で取得し、送配電系統の情報入力点の電気的下流側領域における太陽光発電による有効電力と無効電力の発電量を、下流側領域日射量から長周期で取得し、長周期で取得した太陽光発電による複数の有効電力と無効電力の発電量と短周期で取得した有効電力と無効電力から、太陽光発電停止時における有効電力と無効電力を算出し、太陽光発電停止時における有効電力と無効電力の関係を示す負荷特性を導き、短周期で取得した有効電力と無効電力とから、太陽光発電による有効電力と無効電力の発電量を推定する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、需要サイドの太陽光発電を止める必要がないというメリットがある。さらに、高頻度に太陽光発電出力を推定できるというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るエリア単位太陽光発電発電量推定装置の全体構成を示す図。
図2】短周期PQ計測情報取得機能2の出力データの一例を示す図。
図3】配電用変電所とここに接続された配電線の一例を示す図。
図4】電力系統に対するメッシュ定義の一例を示す図。
図5】気象衛星観測情報取得機能3が出力する情報の一例を示す図。
図6】長周期エリア単位太陽光発電出力推定機能4の処理を示すフローチャート。
図7】太陽光発電容量データベースDB1のテーブル定義を示す図。
図8】長周期エリア単位太陽光発電出力推定機能4の出力データの一例を示す図。
図9】太陽光発電停止時PQ算出機能6の処理を示すフローチャート。
図10】太陽光発電停止時PQ情報データベースDB2のテーブル定義を示す図。
図11】短周期エリア単位太陽光発電出力推定機能9の処理を示すフローチャート。
図12】太陽光発電出力推定処理のイメージを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例について図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
上記課題の明確化により、本発明者らはこの解決に向けて,バンク毎に負荷特性を求めると共に,この負荷特性とバンク単位で取得可能な短周期の有効電力Pや無効電力Qの情報から,気象衛星画像情報により長周期でしか推定できない太陽光発電量を短周期でかつバンク単位毎に推定する仕組みを開発し,本発明に至ったものである。
【0022】
また当初はバンク単位での検討から開始したが、その後必ずしもバンク単位である必要はなく、要は送配電系統の有効電力Pや無効電力Qの情報を得ることが可能な位置であれば任意点でよいという結論に至り、エリア単位という概念を有するに至った。この場合のエリア単位とは、当該情報入手点よりも電気的に下流にある領域全体が監視対象になるという意味である。
【0023】
このように上記記載のバンク単位での太陽光発電出力の推定方式は,バンク単位に限らず配電線単位または送電線単位毎に有効電力Pや無効電力Qの情報を得ることにより,配電線単位または送電線単位での太陽光発電出力の推定も可能である。
【0024】
つまり、本発明において着目するエリア単位とは、狭い領域を想定した場合には、1つのフィーダ(配電線)に接続された領域であり、フィーダ遮断器の近辺を情報入力点として電圧・電流から有効電力Pや無効電力Qの情報を得る。またより広範囲の領域を想定した場合には、変電所内の母線に接続された複数のフィーダ(配電線)に接続された領域であり、母線近辺を情報入力点として電圧・電流から有効電力Pや無効電力Qの情報を得る。この形式では母線の上流側には変圧器が設置されることが多いので、このケースがバンク単位というに最も近いものといえる。
【0025】
より広範囲のエリア単位とするケースでは、配電変電所の受電入口における電圧・電流から有効電力Pや無効電力Qの情報を得、受電変電所に接続された負荷側の領域を監視対象とすることができる。さらにはより高圧側の送電系統に着目したときに、上記配電変電所と同じ観点で送電変電所に設定したエリア単位(1送電線、複数送電線、送電変電所受電端など)での領域を監視の対象とすることも可能である。
【0026】
要するにエリア単位としての監視位置を定めるには送配電電力系統中の任意点での有効電力Pや無効電力Qの情報が得られれば良い。
【実施例】
【0027】
図1は本発明に係るエリア単位太陽光発電発電量推定装置の全体構成を示す図である。ここでは推定装置の全体構成について説明する。なお、以降は特段記載しない限り、「エリア」を「配電用変電所のバンク単位で電力が供給される地域」と定義した例について説明する。
【0028】
図1において1は本発明に係るエリア単位太陽光発電発電量推定装置であり、図示しない記憶装置や入出力機能を含んで構成されるPC等の電子演算機能で実現されるものである。図1には、電子演算機能で実現する各種機能、及び当該機能の実行に使用する各種データを保持するデータベースDBを記載している。このうち、2と3が外部からのデータを取得する入力機能であり、9が内部の演算結果を外部出力する出力機能である。4、6、8が各種の演算機能に相当している。
【0029】
入力機能のうち2は、短周期で有効電力Pと無効電力Qを計測して情報を取得する機能(以下単に短周期PQ計測情報取得機能という)であり、電力系統の変電所におけるバンク単位で短周期(例えば10秒)ごとに計測された有効電力Pや無効電力Qの計測値を取得する機能である。ここで入力された有効電力Pや無効電力Qは、太陽光発電停止時PQ算出機能6、および短周期エリア単位太陽光発電出力推定機能8へ渡される。
【0030】
入力機能のうち3は、気象衛星観測情報取得機能であり、気象衛星が撮影する気象衛星画像情報からメッシュ単位(例えば1km四方メッシュ)の日射量情報へ変換された日射量情報を取得する。この日射量情報は長周期(例えば30分間隔)で取得される。取得された日射量情報は、取得される度に長周期エリア単位太陽光発電出力推定機能4へ渡される。なおこの機能は、広範囲な対象エリアの日射量情報を取得する目的で気象衛星観測情報を採用しているが、他の手段により地上の日射量計測情報を広範囲に得ることができるのであれば、代用可能である。
【0031】
各種機能の実行に使用する各種データを保持するデータベースDBのうちDB1は、太陽光発電容量データベースDB1であり、メッシュ(例えば1km四方メッシュ)ごとの太陽光発電設置容量情報を記憶している。
【0032】
各種機能の実行に使用する各種データを保持するデータベースDBのうちDB2は、太陽光発電停止時PQ情報データベースであり、太陽光発電停止時の有効電力Pや無効電力Qが記録される。
【0033】
電子演算機能で実現される各種の機能4、6、8のうち、長周期エリア単位太陽光発電出力推定機能4では、気象衛星観測情報取得機能3から取得するメッシュ単位の日射量情報と、太陽光発電容量データベースDB1に記録されているメッシュごとの太陽光発電設置容量情報とから、エリア全体の太陽光発電発電量を30分間隔で計算する。このエリア全体の太陽光発電による発電量情報は太陽光発電停止時PQ算出機能6へ渡される。
【0034】
電子演算機能で実現される各種の機能4、6、8のうち、太陽光発電停止時PQ算出機能6においては、短周期PQ計測情報取得機能2が10秒間隔に取得する短周期での有効電力P、無効電力Qの計測情報と、長周期エリア単位太陽光発電出力推定機能4が30分間隔で計算するエリア全体の太陽光発電発電量情報とから、30分ごとのエリア単位の太陽光発電停止時に相当する有効電力Pや無効電力Qを計算する。
【0035】
電子演算機能で実現される各種の機能4、6、8のうち、短周期エリア単位太陽光発電出力推定機能8は、太陽光発電停止時PQ情報データベースDB2に記録された30分間隔の太陽光発電停止時における有効電力P、無効電力Qの情報と、短周期PQ計測情報取得機能2が取得する10秒間隔の有効電力P、無効電力Qの計測情報とから、10秒間隔の太陽光発電出力推定値を計算する。この計算結果は、出力機能9にて外部出力される。
【0036】
以下、各機能について詳しく説明する。
【0037】
図2は、短周期PQ計測情報取得機能2の出力データの一例を示す図である。本データは、エリア単位の有効電力P(kw)と無効電力Q(kvar)、さらにこれらの情報を計測した日付と時刻の情報で構成される。取得周期は10秒周期(短周期)である。ここでエリア単位とは、例えば配電用変電所のバンク単位の意味であり、図3にそのイメージを記す。
【0038】
図3は、配電用変電所とここに接続された配電線の一例を示す図である。この図3により、短周期PQ計測情報取得機能2が取得する情報の計測点の一例を説明する。
【0039】
典型的な配電用変電所SSは、受電母線Bus1において送電線L1に接続されている。受電母線Bus1にはバンクB(変圧器:B1、B2、B3)を介して配電母線Bus2(Bus21、Bus22、Bus23)がそれぞれ接続されており、かつ配電母線Bus2(Bus21、Bus22、Bus23)にはそれぞれ複数の配電線L2が接続されている。また配電線L2には、複数の需要家負荷Ldや複数台の太陽光発電PVが接続されている。
【0040】
ここでエリア単位とは、例えば配電用変電所のバンク単位の意味である。従って、図3の例の配電変電所SSをエリア単位で表す時には、バンクB1、B2、B3に接続される3つのエリアが存在することになる。図3の例ではバンクB1に接続されるエリアには、配電母線Bus21と、配電線L21(L211、L212、L213)と、需要家の負荷Ld1(Ld11、Ld12、Ld13)と、太陽光発電PV1(PV11、PV12、PV13)を含む。図3のバンクB2に接続されるエリアには、配電母線Bus22と、配電線L22(L221からL22n)が記載されているが、これ以外に需要家の負荷Ldや、太陽光発電PVを含む。また図3のバンクB3に接続されるエリアには、配電母線Bus23と、配電線L23(L231からL23m)が記載されているが、これ以外に需要家の負荷Ldや、太陽光発電PVを含む。
【0041】
また図3において、図1のエリア単位太陽光発電発電量推定装置1の短周期PQ計測情報取得機能2が使用する有効電力Pや無効電力Qは、エリア単位で把握された量である。このため有効電力Pや無効電力Qの計測は、バンク合計での有効電力Pや無効電力Qが把握可能に設置される。例えばバンクBの後流側にセンサSC(SC1、SC2、SC3)が設置されるのがよい。
【0042】
図1に戻り、気象衛星観測情報取得機能3が取得する情報は、気象衛星が撮影する気象衛星画像情報からメッシュ単位(たとえば1km四方メッシュ)の日射量情報へ変換された日射量情報である。ここでメッシュの定義を、図4を用いて説明する。
【0043】
図4は電力系統に対するメッシュ定義の一例を示す図である。ここではバンクB1を例にとり、メッシュ定義の一例として説明する。なお、配電用変電所SS、バンクB1、配電線L211、L212、L213は図3に記載したものと同一である。図4に示すように、バンクB1に接続する配電線L211、L212、L213の全域を1km四方のメッシュに区切り、左右方向を英字表示し、上下方向を数字表示して特定する交点であるセル位置を「A0、H8」などのように記号の組み合わせで示している。配電線によりカバーされるこれらの領域が、有効電力Pや無効電力Qの計測点(バンク位置)における電気的な下流領域に該当している。
【0044】
図5は気象衛星観測情報取得機能3が出力する情報の一例を示す図である。取得周期は30分(長周期)である。本情報は、日付、時刻と、セル位置がA0やA1などの各セルの日射量情報(kW/m)で構成される。
【0045】
図6は、長周期エリア単位太陽光発電出力推定機能4の処理を示すフローチャートである。本フローチャートは10秒間隔で実行される。
【0046】
図6のフローチャートの最初の処理ステップであるS41は、気象衛星観測情報取得確認を実行する機能である。本機能は、処理時点における最新の気象衛星観測情報(図5)を取得する。
【0047】
次の処理ステップS42では、今回の処理ステップS41で取得した気象衛星観測情報の日付や時刻の情報が、前回の10秒前の処理ステップS41で取得した気象衛星観測情報(図5)のものと異なるか否かを判定する。今回の取得情報と前回の取得情報とで日付や時刻が異なる場合(Y)には処理ステップS43へ進む。今回の取得情報と前回の取得情報とで日付や時刻が同じ場合には、処理を終了(N)する。なお、気象衛星観測情報(図5)は30分間隔で取得するため、処理ステップS43以降の処理は、30分に1回の周期での処理になる。
【0048】
長周期エリア単位太陽光発電出力推定機能4としての実質的な処理である処理ステップS43では、メッシュ別太陽光発電容量情報を太陽光発電容量データベースDB1から取得する。太陽光発電容量データベースB1のテーブル定義の一例を図7に示す。
【0049】
太陽光発電容量データベースB1のテーブル定義の一例を図7に示すように、セル位置ごとの太陽光発電容量(kW)が記録されている。例えば、セル位置A0の太陽光発電容量はCAPA0であるが、これはセル位置A0の地域に存在する個別太陽光発電の容量の合計値を示している。
【0050】
処理ステップS44では、長周期エリア単位太陽光発電出力を推定している。本機能は、処理ステップS41で取得するセル位置ごとの日射量情報(kW/m)と、処理ステップS43で取得するセル位置ごとの太陽光発電容量(kW)とから、エリア全体の太陽光発電出力を推定する。エリア単位の太陽光発電出力は(1)式、(2)式で計算する。
【0051】
なお(1)式は、エリア単位の太陽光発電出力として有効電力P1800を求めたものであり、(2)式は、エリア単位の太陽光発電出力として無効電力Q1800を求めたものである。またこれらの式において、nは図4で述べたセル位置(n=A0、A1、・・・、H8)、CAP(n)はセル位置nでの太陽光発電容量(kW)、 Rは太陽光発電容量に対する設置面積の変換係数(m/kW)、 SR(n)はセル位置nの日射量(kW/m)、 cosθは太陽光発電の力率である。
【0052】
【数1】
【0053】
【数2】
【0054】
図8は、図6に処理フローを示した図1の長周期エリア単位太陽光発電出力推定機能4の出力情報の一例を示す図である。本出力情報の一例は、日付(2014年4月1日)、時刻(12時30分00秒)、有効電力P(kw)(P1800)、無効電力Q(kvar)(Q1800)で構成されている。なお、有効電力P1800は(1)式の計算結果、無効電力Q1800は(2)式の計算結果に相当する。
【0055】
図9は、図1の太陽光発電停止時PQ算出機能6の処理を示すフローチャートである。本フローチャートは、長周期エリア単位太陽光発電出力推定機能4の処理フローにおける周期と同様に、10秒間隔で実行する。
【0056】
図9のフローチャートの最初の処理ステップであるS61は、最新の短周期PQ計測情報を取得する。本機能は、短周期PQ計測情報取得機能2が10秒間隔で取得する短周期の有効電力Pや無効電力Qの計測情報のうち、本処理実行時における図2に示す最新の情報を取得する。
【0057】
次の処理ステップS62では、最新の長周期エリア単位太陽光発電出力情報を取得する。この機能では、図1の長周期エリア単位太陽光発電出力推定機能4が30分間隔で出力するエリア単位太陽光発電出力推定情報のうち、本処理実行時における図8に示す最新情報を取得する。
【0058】
処理ステップS63では、短周期PQ計測情報取得機能2から取得した最新情報(図2)と、長周期エリア単位太陽光発電出力推定機能4から取得した最新情報(図8)とのタイムスタンプを比較する。両者のタイムスタンプが同じであれば処理ステップS64へ進む。なお、短周期PQ計測情報取得機能2から取得する最新情報(図2)は、10秒間隔で更新されるが、長周期エリア単位太陽光発電出力推定機能4から取得する最新情報(図8)は30分間隔の更新であるため、両者のタイムスタンプが一致するのは30分に一回である。このため、両者のタイムスタンプが異なる場合には本フローチャートを終了する。
【0059】
処理ステップS64では、太陽光発電停止時における有効電力Pと無効電力Qを算出する。本機能においては、エリア単位での計測値に相当する太陽光発電停止状態の有効電力Pや無効電力Q、すなわち、全需要家の太陽光発電が停止した状態における図3のセンサSCの位置で計測した有効電力Pや無効電力Qに相当する値を計算する。
【0060】
この場合の計算式は、エリア単位の太陽光発電停止相当の有効電力PであるPYYYYMMDD_hhmmssを求めているのが(3)式、エリア単位の太陽光発電停止相当の無効電力QであるQYYYYMMDD_hhmmssを求めているのが(4)式である。なおこれらに付与した記号「YYYYMMDD」は、日付(年月日)を表しており、「hhmmss」は時刻(時分秒)を表している。
【0061】
またこの式において、P10は短周期PQ計測情報取得機能2から取得した有効電力P、P1800 は長周期エリア単位太陽光発電出力推定機能4が推定するエリア単位太陽光発電出力推定値(有効電力P)、 Q10は短周期PQ計測情報取得機能2から取得する無効電力Q、 Q1800は長周期エリア単位太陽光発電出力推定機能4が推定するエリア単位太陽光発電出力推定値(無効電力Q)である。
【0062】
【数3】
【0063】
【数4】
【0064】
(3)式、(4)式で計算した太陽光発電停止時相当の有効電力P(PYYYYMMDD_hhmmss)と無効電力(QYYYYMMDD_hhmmss)は、太陽光発電停止時PQ情報データベースDB2に記録される。
【0065】
図10は、太陽光発電停止時PQ情報データベースDB2のテーブル定義の一例である。日付、時刻、センサSCの位置で計測する場合の太陽光発電停止時相当の有効電力P、センサSCの位置で計測する場合の太陽光発電停止時相当の無効電力Qを計算の都度(従って30分周期で)、記録する。
【0066】
図11は、短周期エリア単位太陽光発電出力推定機能8の処理を示すフローチャートである。本フローチャートは、長周期エリア単位太陽光発電出力推定機能4の処理フローにおける周期あるいは太陽光発電停止時PQ算出機能6の処理を示すフローと同様に、10秒間隔で実行する。
【0067】
図11のフローチャートの最初の処理ステップであるS81は、太陽光発電停止時PQ情報を取得する機能である。本機能は、太陽光発電停止時PQ情報データベースDB2に記録されたデータのうちから、抽出規則に合致するデータを抽出する。抽出規則は、例えば「現在から過去24時間以内に記録されたデータ」とすることが考えられる。
【0068】
次の処理ステップS82は、負荷特性を算出する機能である。負荷特性を算出する方式として、例えば、処理ステップS81で抽出したデータを、横軸有効電力P、縦軸無効電力QとするPQ座標平面上にプロットし、これらの線形近似直線を負荷特性とすることが考えられる。
【0069】
処理ステップS83は、最新の短周期PQ計測情報を取得する機能である。短周期PQ計測情報は、短周期PQ計測情報取得機能2が10秒間隔で出力する情報であり、図2に示す内容のものである。
【0070】
処理ステップS84は、太陽光発電出力推定機能である。この機能では、 Q10(短周期PQ計測情報の無効電力Q)を(5)式で算出し、10秒間隔の太陽光発電出力推定値Pest10を(6)式にて算出する。なおこれらの式において、P10は太陽光発電出力のうち短周期PQ計測情報の有効電力Pを意味し、cosθ は太陽光発電の力率、 PNoPV(Q)は、負荷特性における無効電力Qに対する有効電力Pを表している。
【0071】
【数5】
【0072】
【数6】
【0073】
なお、太陽光発電の力率が不明な場合は、力率=1と設定することが考えられる。(5)式(6)式で算出した10秒間隔の太陽光発電出力推定値は、図1の出力機能9により出力される。
【0074】
図12は、太陽光発電出力推定処理の過程イメージを説明するための一例を示す図である。図12は、横軸が有効電力P、縦軸が無効電力Qの座標平面であり、前記の力率法で述べたと同じ座標平面である。この平面において黒丸が長周期エリア単位太陽光発電出力推定機能4の処理で求めた各時点における負荷位置である。複数の黒丸による負荷位置の情報から太陽光発電停止時PQ算出機能6の処理により求められたPV停止時PQ情報((3)式及び(4)式)が点線に示す領域であり、この領域における黒丸のプロットから例えば線形近似処理により求めた負荷特性がLXである。
【0075】
負荷特性LXは、太陽光発電停止時の負荷特性であるが、夜間と昼間では様相を異にする。例えば工場が停止する夜間には個別家庭負荷、配電線負荷が主体であり、この場合には負荷特性の傾きが小さくなる傾向にある。他方、工場が稼働する昼間には工場負荷の比率が高く、個別家庭負荷、配電線負荷の割合が低い状態であり、この場合には負荷特性の傾きが大きくなる傾向にある。
【0076】
本発明において、太陽光発電出力推定のために参照すべき負荷特性は、昼間における負荷特性である太陽光発電停止時の負荷特性ということで、太陽光発電が停止する夜間の負荷特性を採用したとしても、これは先に述べた理由により、太陽光発電出力推定のために参照すべき負荷特性としては相応しくない。
【0077】
この点、本発明は昼間の長周期エリア単位太陽光発電出力から負荷特性を定めているので、太陽光発電出力推定のために参照すべき負荷特性として好適のものであり、昼間の電力実態を反映したものということができる。
【0078】
本発明では、図12のPQ座標平面上に、太陽光発電停止時の負荷特性LXとともに、短周期のPQ計測情報を表示、プロットしている。短周期のPQ計測情報が、図12の座標(P10、10)である。
【0079】
この関係からは、座標(P10、10)と負荷特性LXとの間の横軸方向の距離(有効電力)が、現在時点における太陽光発電出力(有効電力)とすることもできるが、本発明では、直ちにこの差分を採用するのではなく、短周期PQ計測情報(座標(P10、10))に対し、太陽光発電の力率を反映する。先の(5)式が力率を反映した結果であり、座標(P10、10)から反映分を差し引いて新しい座標(P10、Q)を求める。
【0080】
(6)式では、力率反映点(P10、Q)と負荷特性LXとの間の横軸方向の距離(有効電力)を、太陽光発電出力(有効電力)としている。なおPNoPV(無効電力Q)が、
無効電力Qのときの負荷特性LX上の有効電力である。P10とPNoPV(無効電力Q)との差が太陽光発電出力と推定される。なお、本イメージは太陽光発電出力推定の根拠の情報としてモニタ等へ表示してもよい。
【0081】
上記した本発明によれば、昼間の長周期エリア単位太陽光発電出力から負荷特性を定め、短周期のPQ計測情報との比較により太陽光発電出力を推定しているので、需要サイドの太陽光発電装置を止める必要がなく、かつ高頻度に太陽光発電出力を推定することができる。
【0082】
本発明により最終的に得られた出力は、現在の電力系統エリアにおける太陽光発電出力を反映している。従って、この値を用いることで配電線末端における電圧上昇を推定可能であり、変電所バンク(変圧器)におけるタップ操作に反映させることで、末端の配電線電圧制御が可能となる。
【0083】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0084】
1:エリア単位太陽光発電発電量推定装置
2:短周期PQ計測情報取得機能
3:気象衛星観測情報取得機能
4:長周期エリア単位太陽光発電出力推定機能
6:太陽光発電停止時PQ算出機能
8:短周期エリア単位太陽光発電出力推定機能
9:出力機能
DB1:太陽光発電容量データベース
DB2:太陽光発電停止時PQ情報データベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12