(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電気機器または電子機器に用いられる電気信号の高周波化が進んでいる。したがって、高い周波数帯域において、配線回路基板の導体回路パターンにより伝送される電気信号の損失が低減されることが求められる。
【0006】
本発明の目的は、高い周波数帯域においても電気信号の損失が低減された配線回路基板およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般に、配線パターン上に被覆層を形成する場合には、配線パターンと被覆層との密着性を向上させるために、配線パターンと被覆層との間に金属薄膜が形成される。ここで、本発明者は、配線パターンに金属薄膜を形成すると、高い周波数帯域において配線パターンにより伝送される電気信号の損失が増加することを見出した。
【0008】
一方、本発明者は、種々の実験および検討を行なった結果、配線パターンの表面に形成される金属薄膜の厚みを一定値よりも小さくすることにより、高い周波数帯域における電気信号の伝送損失を低減できるという知見を得た。また、本発明者は、金属薄膜の厚みを小さくした場合でも、配線パターンと被覆層との密着性がほとんど低下しないという知見を得た。これらの知見に基づいて、以下の本発明に想到した。
【0009】
(1)第1の発明に係る配線回路基板は、第1の絶縁層と、第1の絶縁層上に形成される配線パターンと、配線パターン上に形成される金属薄膜と、金属薄膜を覆うように第1の絶縁層上に形成される第2の絶縁層と、配線パターンと電気的に接続され、かつ第2の絶縁層から露出するように第1の絶縁層上に形成される接続端子とを備え、金属薄膜の厚みは0nmよりも大きくかつ
50nm以下であり、接続端子は、配線パターンと一体的に接続された第1の導体層と、
第2の絶縁層の下方に形成されることなく第1の導体層上に形成された第2の導体層とを含み、第2の導体層の厚みは金属薄膜の厚みよりも大きく、第2の導体層の上面は金属薄膜の上面よりも上方に位置する。
【0010】
この配線回路基板においては、第1の絶縁層上に配線パターンが形成される。配線パターン上に0nmよりも大きくかつ
50nm以下の厚みを有する金属薄膜が形成される。金属薄膜を覆うように第1の絶縁層上に第2の絶縁層が形成される。配線パターンと電気的に接続されかつ第2の絶縁層から露出するように第1の絶縁層上に接続端子が形成される。
【0011】
この構成によれば、配線パターン上に形成される金属薄膜の厚みは小さい。本発明者の上記の実験および検討の結果、金属薄膜の厚みが
50nm以下と小さいことにより、電気信号の伝送損失が低減する。これにより、高い周波数帯域においても電気信号の伝送損失を低減することができる。
【0014】
(
2)金属薄膜の厚みは10nm以上であってもよい。この場合、配線パターンと第2の絶縁層との密着性がほとんど低下しない。これにより、第2の絶縁層が配線パターンから剥離することを十分に防止することができる。
【0015】
(
3)第2の絶縁層に対する金属薄膜の密着力は、第2の絶縁層に対する配線パターンの密着力よりも高くてもよい。
【0016】
この場合、金属薄膜により配線パターンと第2の絶縁層との密着性を確実に向上させることができる。
【0017】
(
4)配線パターンは銅を含み、金属薄膜はニッケル、金、白金、銀または錫を含んでもよい。
【0018】
この場合、銅を含む配線パターンと第2の絶縁層との間にニッケル、金、白金、銀または錫を含む金属薄膜が介在することにより、配線パターンと第2の絶縁層との密着性が十分に向上する。
【0019】
(
5)第1の導体層の厚みは配線パターンの厚みよりも小さくてもよい。
【0020】
配線回路基板の製造工程においては、一体的に接続された配線パターンおよび第1の導体層上に金属薄膜が形成される。また、第1の導体層上の金属薄膜が除去された後に、第1の導体層上に第2の導体層が形成されることにより接続端子が形成される。この工程において、第1の導体層上の金属薄膜が除去される際に、金属薄膜に接する第1の導体層の表面が除去される。そのため、第1の導体層の厚みが配線パターンの厚みよりも小さくなる。
【0021】
この構成によれば、第1の導体層上に金属薄膜が残存することが確実に防止される。これにより、第2の導体層を均一に形成することが可能となる。
【0022】
(
6)第2の発明に係る配線回路基板の製造方法は、第1の絶縁層上に配線パターンを形成する工程と、配線パターン上に0nmよりも大きくかつ
50nm以下の厚みを有する金属薄膜を形成する工程と、金属薄膜を覆うように第1の絶縁層上に第2の絶縁層を形成する工程と、配線パターンと電気的に接続されかつ第2の絶縁層から露出するように第1の絶縁層上に接続端子を形成する工程とを含み、配線パターンを形成する工程は、配線パターンと一体的に接続された第1の導体層を形成することを含み、接続端子を形成する工程は、第2の導体層の厚みが金属薄膜の厚みよりも大きく、第2の導体層の上面が金属薄膜の上面よりも上方に位置
し、かつ第2の絶縁層の下方に形成されないように第1の導体層上に第2の導体層を形成することを含む。
【0023】
この配線回路基板の製造方法においては、第1の絶縁層上に配線パターンが形成される。配線パターン上に0nmよりも大きくかつ
50nm以下の厚みを有する金属薄膜が形成される。金属薄膜を覆うように第1の絶縁層上に第2の絶縁層が形成される。配線パターンと電気的に接続されかつ第2の絶縁層から露出するように第1の絶縁層上に接続端子が形成される。
【0024】
この構成によれば、配線パターン上に形成される金属薄膜の厚みは小さい。本発明者の上記の実験および検討の結果、金属薄膜の厚みが
50nm以下と小さいことにより、電気信号の伝送損失が低減する。これにより、高い周波数帯域においても電気信号の伝送損失を低減することができる。
【0027】
(
7)金属薄膜の厚みは10nm以上であってもよい。この場合、配線パターンと第2の絶縁層との密着性がほとんど低下しない。これにより、第2の絶縁層が配線パターンから剥離することを確実に防止することができる。
【0028】
(
8)金属薄膜を形成する工程は、配線パターン上および第1の導体層上に金属薄膜を形成することと、第1の導体層上に形成された金属薄膜を除去することとを含む。
【0029】
この場合、配線パターンと第2の絶縁層との間にのみ容易に金属薄膜を形成することができる。
【0030】
(
9)金属薄膜を除去することは、金属薄膜に接する第1の導体層の表面を除去することを含んでもよい。
【0031】
この場合、第1の導体層上に金属薄膜が残存することが確実に防止される。これにより、接続端子における電気信号の損失が増加することを確実に防止することができる。
【0032】
(
10)金属薄膜を形成する工程は、無電解めっきにより金属薄膜を形成することを含んでもよい。この場合、配線パターン上に金属薄膜を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、高い周波数帯域においても電気信号の損失が低減される。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の一実施の形態に係る配線回路基板およびその製造方法について図面を参照しながら説明する。本発明の一実施の形態に係る配線回路基板として、ハードディスクドライブ装置のアクチュエータに用いられる回路付サスペンション基板(以下、サスペンション基板と略記する。)について説明する。
【0036】
(1)サスペンション基板の構造
図1は、本発明の一実施の形態に係るサスペンション基板の平面図である。
図1において、矢印が向かう方向を前方と呼び、その逆方向を後方と呼ぶ。
図1に示すように、サスペンション基板1は、金属製の長尺状の支持基板により形成されるサスペンション本体部100を備える。
図1においては、サスペンション本体部100は、略前後方向に延びている。
【0037】
サスペンション基板1は、長尺状の支持プレート50により支持される。サスペンション本体部100の上面には、点線で示すように、書込用配線パターンW1,W2、読取用配線パターンR1,R2および電源用配線パターンP1,P2が形成されている。
【0038】
サスペンション本体部100の先端部には、U字状の開口部11を形成することにより磁気ヘッド搭載部(以下、タング部と呼ぶ。)12が設けられている。タング部12は、サスペンション本体部100に対して所定の角度をなすように破線Rの箇所で折り曲げ加工される。
【0039】
サスペンション本体部100の一端部におけるタング部12の上面には4個の接続端子21,22,23,24が形成されている。また、サスペンション本体部100が延びる方向における中央部近傍の両側部には、2個の接続端子25,26がそれぞれ形成されている。タング部12の上面に磁気ヘッドを有するヘッドスライダ(図示せず)が実装される。タング部12の接続端子21〜24にヘッドスライダの磁気ヘッドの端子が接続される。接続端子25,26は、支持プレート50に設けられた2つの圧電素子61,62にそれぞれ接続される。
【0040】
サスペンション本体部100の他端部の上面には6個の接続端子31,32,33,34,35,36が形成されている。接続端子31〜34には、プリアンプ等の電子回路が接続される。接続端子35,36には圧電素子61,62用の電源回路が接続される。接続端子21〜26と接続端子31〜36とは、それぞれ書込用配線パターンW1,W2、読取用配線パターンR1,R2および電源用配線パターンP1,P2により電気的に接続されている。また、サスペンション本体部100には複数の孔部Hが形成されている。
【0041】
支持プレート50は、前端領域51、後端領域52および中央領域53を有する。前端領域51は台形状を有し、その幅は後方から前方に向かって漸次減少する。後端領域52は矩形状を有する。中央領域53は前後方向に延びる矩形状を有し、前端領域51と後端領域52との間に配置される。サスペンション基板1が支持プレート50の上面に支持された状態において、接続端子31〜36を含むサスペンション基板1の端部は、後端領域52から後方に突出する。
【0042】
中央領域53の一部分には、圧電素子実装領域54が設けられる。圧電素子実装領域54は、サスペンション基板1の接続端子25,26と重なる。圧電素子実装領域54の両側部は、外方に湾曲するように突出する。また、圧電素子実装領域54には、幅方向(前後方向に直交する方向)に延びる貫通孔54hが形成される。この構成によれば、支持プレート50の圧電素子実装領域54の部分は、前後方向に伸縮性を有する。
【0043】
貫通孔54hをまたぐように圧電素子実装領域54の下面に圧電素子61,62が実装される。圧電素子61,62は、サスペンション基板1の両側方にそれぞれ位置する。圧電素子61,62は、貫通孔54hを通してサスペンション基板1の接続端子25,26にそれぞれ接続される。
【0044】
接続端子25,35および電源用配線パターンP1を介して圧電素子61に電圧が印加され、接続端子26,36および電源用配線パターンP2を介して圧電素子62に電圧が印加される。これにより、圧電素子61,62の伸縮に伴って、支持プレート50が前後方向に伸縮する。圧電素子61,62に印加される電圧を制御することにより、サスペンション基板1上のヘッドスライダの磁気ヘッドの微小な位置合わせが可能になる。
【0045】
支持プレート50に支持されたサスペンション基板1はハードディスク装置に設けられる。磁気ディスクへの情報の書込み時に一対の書込用配線パターンW1,W2に電流が流れる。書込用配線パターンW1と書込用配線パターンW2とは、差動の書込み信号を伝送する差動信号線路対を構成する。また、磁気ディスクからの情報の読取り時に一対の読取用配線パターンR1,R2に電流が流れる。読取用配線パターンR1と読取用配線パターンR2とは、差動の読取り信号を伝送する差動信号線路対を構成する。
【0046】
(2)接続端子およびその周辺部分の構成
次に、サスペンション基板1の接続端子21〜26,31〜36およびその周辺部分について詳細に説明する。
図2および
図3は、接続端子21〜26,31〜36およびその周辺部分の平面図である。
図4は、接続端子21〜26,31〜36およびその周辺部分の断面図である。
図2(a)〜(c)の縮尺は互いに異なり、
図3(a)〜(c)の縮尺は互いに異なり、
図4(a)〜(c)の縮尺は互いに異なる。
【0047】
図2(a)および
図3(a)は接続端子21〜24およびその周辺部分を示し、
図2(b)および
図3(b)は接続端子25およびその周辺部分を示し、
図2(c)および
図3(c)は接続端子31,32およびその周辺部分を示す。
図2(a)〜(c)においては被覆層43(
図4参照)の図示が省略されている。接続端子26は接続端子25と同様の構成を有し、接続端子33〜36は接続端子31,32と同様の構成を有する。
【0048】
図4(a)〜(c)は、
図2(a)のA−A線拡大断面図、
図2(b)のB−B線拡大断面図および
図2(c)のC−C線拡大断面図をそれぞれ示す。
図2(a)〜(c)および
図3(a)〜(c)の平面図には、構成の理解を容易にするために、
図4(a)〜(c)の断面図の各部材に付されたハッチングまたはドットパターンと同一のハッチングまたはドットパターンが付されている。後述する
図5および図6についても同様である。
【0049】
図2(a)に示すように、書込用配線パターンW1,W2および読取用配線パターンR1,R2の一端部には、それぞれ接続端子21〜24が形成される。
図2(b)に示すように、電源用配線パターンP1の一端部には接続端子25が形成される。同様に、電源用配線パターンP2(
図1)の一端部には接続端子26(
図1)が形成される。
図2(c)に示すように、書込用配線パターンW1,W2の他端部には、それぞれ接続端子31,32が形成される。同様に、読取用配線パターンR1,R2(
図1)および電源用配線パターンP1,P2(
図1)の他端部には、接続端子33〜36(
図1)が形成される。
【0050】
図2(a)〜(c)に示すように、書込用配線パターンW1,W2、読取用配線パターンR1,R2および電源用配線パターンP1,P2上に金属薄膜15が形成される。本実施の形態では、金属薄膜15は、接続端子21〜26と接続端子31〜36との間における書込用配線パターンW1,W2、読取用配線パターンR1,R2および電源用配線パターンP1,P2の全体にわたって形成される。
【0051】
図3(a)〜(c)に示すように、書込用配線パターンW1,W2、読取用配線パターンR1,R2および電源用配線パターンP1,P2上の金属薄膜15を覆うように、絶縁層41上に例えばポリイミドからなる被覆層43が形成される。接続端子21〜26,31〜36は、被覆層43から露出する。
【0052】
図4(a)に示すように、例えばステンレス鋼からなる金属製の支持基板10上に例えばポリイミドからなる絶縁層41が形成されている。絶縁層41上に例えば銅からなる導体層42が形成される。導体層42は、パターン部42aおよび端子部42bを含む。
図4(a)においては、パターン部42aと端子部42bとの境界を点線で示す。
図4(b)および
図4(c)ならびに後述する
図7(b)〜
図8(c)においても同様である。
【0053】
書込用配線パターンW1はパターン部42aにより形成される。書込用配線パターンW1上に金属薄膜15が形成される。本実施の形態では、金属薄膜15は書込用配線パターンW1のパターン部42aの上面上および側面上に形成される。金属薄膜15は、例えば無電解めっきにより形成されるニッケル薄膜である。
【0054】
金属薄膜15の厚みは、0nmよりも大きく150nm以下である。金属薄膜15の厚みは10nm以上であることが好ましい。この場合、パターン部42aと被覆層43との密着性がほとんど低下しない。これにより、被覆層43がパターン部42aから剥離することを十分に防止することができる。
【0055】
また、金属薄膜15の厚みは100nmよりも小さいことが好ましい。この場合、高い周波数帯域においても電気信号の伝送損失をより低減することができる。また、金属薄膜15の厚みは50nmよりも小さいことがより好ましい。この場合、高い周波数帯域においても電気信号の伝送損失をさらに低減することができる。
【0056】
特に、金属薄膜15の厚みは、0nmよりも大きくかつ100nmよりも小さいことが好ましく、0nmよりも大きくかつ50nmよりも小さいことが好ましい。金属薄膜15の厚みは、10nm以上でかつ100nmよりも小さいことがより好ましく、10nm以上でかつ50nmよりも小さいことがさらに好ましい。
【0057】
書込用配線パターンW1上の金属薄膜15を覆うように絶縁層41上に例えばポリイミドからなる被覆層43が形成される。また、被覆層43から露出する端子部42b上に例えばニッケルおよび金(Au)からなる金属層44が形成される。接続端子21は、端子部42bおよび金属層44により構成される。
【0058】
書込用配線パターンW2と接続端子22との境界部分、読取用配線パターンR1と接続端子23との境界部分および読取用配線パターンR2と接続端子24との境界部分の構成は、
図4(a)の書込用配線パターンW1と接続端子21との境界部分の構成と同様である。
【0059】
同様に、
図4(b)に示すように、電源用配線パターンP1は導体層42のパターン部42aにより形成される。電源用配線パターンP1上に金属薄膜15が形成される。本実施の形態では、金属薄膜15は電源用配線パターンP1のパターン部42aの上面上および側面上に形成される。
【0060】
電源用配線パターンP1上の金属薄膜15を覆うように絶縁層41上に被覆層43が形成される。また、被覆層43から露出する端子部42b上に金属層44が形成される。接続端子25は、端子部42bおよび金属層44により構成される。本例においては、電源用配線パターンP1は円形状を有する。
【0061】
電源用配線パターンP2と接続端子26との境界部分の構成は、
図4(b)の電源用配線パターンP1と接続端子25との境界部分の構成と同様である。
【0062】
図4(c)に示すように、サスペンション本体部100の他端部において、書込用配線パターンW1はパターン部42aにより形成される。パターン部42a上に金属薄膜15が形成される。本実施の形態では、金属薄膜15は書込用配線パターンW1のパターン部42aの上面上および側面上に形成される。
【0063】
書込用配線パターンW1上の金属薄膜15を覆うように絶縁層41上に被覆層43が形成される。また、被覆層43から露出する端子部42b上に金属層44が形成される。接続端子31は、端子部42bおよび金属層44により構成される。
【0064】
書込用配線パターンW2と接続端子32との境界部分、読取用配線パターンR1と接続端子33との境界部分および読取用配線パターンR2と接続端子34との境界部分の構成は、
図4(c)の書込用配線パターンW1と接続端子31との境界部分の構成と同様である。また、電源用配線パターンP1と接続端子35との境界部分および電源用配線パターンP2と接続端子36との境界部分の構成は、書込用配線パターンW1と接続端子31との境界部分の構成と同様である。
【0065】
(3)サスペンション基板の製造方法
以下、サスペンション基板1の製造方法を説明する。
図5〜
図8は、
図1のサスペンション基板1の製造工程を示す模式的工程図である。
図5および
図6は接続端子21〜24およびその周辺に相当する部分の平面図を示す。
図7および
図8は、
図5および
図6のD−D線断面図を示す。
【0066】
まず、
図5(a)および
図7(a)に示すように、例えばステンレス鋼からなる支持層10a上に、例えばポリイミドからなる絶縁層41を形成する。支持層10aの厚みは、例えば10μm以上50μm以下である。絶縁層41の厚みは、例えば5μm以上15μm以下である。ここで、絶縁層41は、
図1のサスペンション基板1の形状と同一の形状に形成される。
【0067】
次に、
図5(b)および
図7(b)に示すように、絶縁層41上に例えば銅からなる導体層42を形成する。導体層42は所定のパターンを有する。導体層42の厚みは、例えば1μm以上20μm以下である。ここで、後の工程において、書込用配線パターンW1,W2、読取用配線パターンR1,R2および電源用配線パターンP1,P2が形成される導体層42の部分を上記のようにパターン部42aと呼ぶ。後の工程において、接続端子21〜26,31〜36が形成される導体層42の端部の部分を上記のように端子部42bと呼ぶ。
【0068】
続いて、
図5(c)および
図7(c)に示すように、導体層42上に金属薄膜15を形成する。金属薄膜15は、例えば無電解めっきにより形成される。無電解めっきの形成工程においては、例えばニッケルおよび還元剤を含む無電解めっき液に導体層42が浸漬された状態で、パラジウム等の触媒を核としてニッケルめっき皮膜が導体層42上で成長する。
【0069】
被覆層43に対する金属薄膜15の密着力は、被覆層43に対するパターン部42aの密着力よりも高いことが好ましい。この場合、金属薄膜15によりパターン部42aと被覆層43との密着性を確実に向上させることができる。
【0070】
例えば、パターン部42aは銅を含み、金属薄膜15はニッケルを含むことが好ましい。この場合、銅を含むパターン部42aと被覆層43との間にニッケルを含む金属薄膜15が介在することにより、パターン部42aと被覆層43との密着性が十分に向上する。
【0071】
金属薄膜15は、ニッケルにより形成されることが好ましいが、これに限定されず、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)または錫(Sn)により形成されてもよい。この場合でも、パターン部42aと被覆層43との密着性を向上させることができる。
【0072】
次に、
図5(d)および
図7(d)に示すように、パターン部42a上の金属薄膜15を覆うように絶縁層41上に例えばポリイミドからなる被覆層43を形成する。被覆層43の厚みは、例えば2μm以上10μm以下である。これにより、端子部42b上の金属薄膜15が被覆層43から露出する。
【0073】
その後、
図6(a)および
図8(a)に示すように、端子部42b上の金属薄膜15を除去する。ここで、端子部42b上の金属薄膜15を除去する際に、金属薄膜15に接する端子部42bの表面を除去する。そのため、端子部42bの厚みは、パターン部42aの厚みよりも僅かに小さくなる。
【0074】
この構成によれば、端子部42b上に金属薄膜15が残存することが確実に防止される。これにより、次の工程において、金属層44を均一に形成することが可能となる。
【0075】
続いて、
図6(b)および
図8(b)に示すように、端子部42b上に金属層44を形成する。本例においては、金属層44は、端子部42bに厚み0.01μm以上5μm以下のニッケルめっきおよび厚み0.1μm以上5μm以下の金めっきを順次行うことにより形成される。端子部42bおよび金属層44により接続端子21〜26,31〜36が形成され、パターン部42aにより書込用配線パターンW1,W2、読取用配線パターンR1,R2および電源用配線パターンP1,P2が形成される。
【0076】
書込用配線パターンW1,W2間の間隔および読取用配線パターンR1,R2間の間隔は、例えばそれぞれ5μm以上100μm以下である。同様に、書込用配線パターンW1と電源用配線パターンP1との間の間隔および読取用配線パターンR2と電源用配線パターンP2との間の間隔は、例えばそれぞれ5μm以上100μm以下である。書込用配線パターンW1,W2、読取用配線パターンR1,R2および電源用配線パターンP1,P2の幅は、例えば5μm以上200μm以下である。
【0077】
その後、
図6(c)および
図8(c)に示すように、絶縁層41と重なる支持層10aの部分が残存するように支持層10aを加工することにより、支持基板10を形成する。支持層10aの加工は、例えばエッチングにより行われる。これにより、サスペンション基板1が完成する。
【0078】
(4)他の実施の形態
(a)上記実施の形態において、パターン部42a上の全体に金属薄膜15が形成されるが、本発明はこれに限定されない。パターン部42a上の一部に金属薄膜15が形成されなくてもよい。
【0079】
(b)上記実施の形態において、パターン部42aの上面上および側面上に金属薄膜15が形成されるが、本発明はこれに限定されない。パターン部42aの上面上のみ、またはパターン部42aの上面上および一方の側面上に金属薄膜15が形成されてもよい。
【0080】
(c)上記実施の形態において、
図5(d)および
図7(d)に示すように、端子部42b上の金属薄膜15が除去される際に、金属薄膜15に接する端子部42bの表面が除去されるが、本発明はこれに限定されない。端子部42b上の金属薄膜15のみが除去され、金属薄膜15に接する端子部42bの表面は除去されなくてもよい。したがって、端子部42bの厚みは、パターン部42aの厚みと略等しくてもよい。
【0081】
(d)上記実施の形態において、金属薄膜15の厚みは一定であるが、本発明はこれに限定されない。パターン部42aの厚みは一定でなくてもよい。
【0082】
(e)上記実施の形態において、配線回路基板は支持基板10を含むサスペンション基板1であるが、本発明はこれに限定されない。配線回路基板は、例えば支持基板10を含まないフレキシブル配線回路基板であってもよい。
【0083】
(f)上記実施の形態において、金属薄膜15は無電解めっきにより形成されるが、本発明はこれに限定されない。金属薄膜15は、セミアディティブ法またはサブトラクティブ法等の他の方法を用いて形成されてもよい。
【0084】
(5)効果
本実施の形態に係るサスペンション基板1においては、絶縁層41上に導体層42が形成される。導体層42のパターン部42a上に0nmよりも大きくかつ150nm以下の厚みを有する金属薄膜15が形成される。金属薄膜15を覆いかつ導体層42の端子部42bを露出させるように絶縁層41上に被覆層43が形成される。端子部42b上に金属層44が形成されることにより、接続端子21〜26,31〜36が形成される。
【0085】
この構成によれば、パターン部42a上に形成される金属薄膜15の厚みは小さい。本発明者の上記の実験および検討の結果、金属薄膜15の厚みが150nm以下と小さいことにより、電気信号の伝送損失が低減する。これにより、高い周波数帯域においても電気信号の伝送損失を低減することができる。
【0086】
(6)実施例
実施例1〜11および比較例1〜4では、上記のサスペンション基板の製造方法に基づいて、金属薄膜15の厚みが異なるサスペンション基板を作製した。
【0087】
実施例1〜4に係るサスペンション基板においては、金属薄膜15の厚みはそれぞれ10nm、20nm、30nmおよび40nmである。実施例5〜7に係るサスペンション基板においては、金属薄膜15の厚みはそれぞれ50nm、70nmおよび90nmである。実施例8〜11に係るサスペンション基板においては、金属薄膜15の厚みはそれぞれ100nm、120nm、140nmおよび150nmである。
【0088】
比較例1に係るサスペンション基板においては、金属薄膜15の厚みは0nmである。すなわち、比較例1に係るサスペンション基板においては、金属薄膜15は形成されない。比較例2〜4に係るサスペンション基板においては、金属薄膜15の厚みはそれぞれ200nm、500nmおよび1000nmである。
【0089】
作製された実施例1〜11および比較例1〜4に係るサスペンション基板について、性能を評価した。評価結果を表1に示す。表1の性能の評価においては、帯域特性および密着性が良好であると判定された例には、性能が良好であることを示す“○”を表示する。一方、帯域特性または密着性が不良であると判定された例には、性能が不良であることを示す“×”を表示する。
【0090】
【表1】
帯域特性の評価においては、サスペンション基板を伝送する信号が3dB減衰するときの周波数を測定した。ここで、磁気ディスクの記録密度を考慮すると、当該周波数は4.4GHz以上であることが好ましい。そこで、周波数が4.4GHz以上であった例には、帯域特性が良好であることを示す“△”を表示する。また、周波数が4.9GHz以上であった例には、帯域特性が特に良好であることを示す“○”を表示する。さらに、周波数が5.4GHz以上であった例には、帯域特性が極めて良好であることを示す“◎”を表示する。一方、周波数が4.4GHz未満であった例には、帯域特性が不良であることを示す“×”を表示する。
【0091】
図9は、顕微鏡を用いて撮影されたサスペンション基板の一部の拡大画像である。密着性の評価においては、サスペンション基板作製時のキュア工程(
図6(a)および
図8(a)の工程)において被覆層43が書込用配線パターンW1,W2、読取用配線パターンR1,R2および電源用配線パターンP1,P2から剥離しなかった例には、密着性が良好であることを示す“○”を表示する。
図9(a)には、密着性が良好であると評価されたサスペンション基板の画像が示されている。
【0092】
一方、被覆層43が書込用配線パターンW1,W2、読取用配線パターンR1,R2または電源用配線パターンP1,P2から剥離した例には、密着性が不良であることを示す“×”を表示する。
図9(b)には、密着性が不良であると評価されたサスペンション基板の画像が示されている。
【0093】
表1に示すように、実施例1〜4に係るサスペンション基板においては、帯域特性は極めて良好であり、密着性は良好であった。実施例5〜7に係るサスペンション基板においては、帯域特性は特に良好であり、密着性は良好であった。実施例8〜11に係るサスペンション基板においては、帯域特性は良好であり、密着性は良好であった。したがって、実施例1〜11に係るサスペンション基板の性能は良好である。
【0094】
一方、比較例1に係るサスペンション基板においては、帯域特性は極めて良好であったが、密着性は不良であった。比較例2〜4に係るサスペンション基板においては、密着性は良好であったが、帯域特性は不良であった。したがって、比較例
1〜4に係るサスペンション基板の性能は不良である。
【0095】
上記の結果から、金属薄膜15の厚みが150nm以下である場合には、帯域特性が良好であることが確認された。また、金属薄膜15の厚みが100nmよりも小さい(本例では90nm以下である)場合には、帯域特性が特に良好であることが確認された。金属薄膜15の厚みが50nmよりも小さい(本例では40nm以下である)場合には、帯域特性が極めて良好であることが確認された。さらに、金属薄膜15の厚みが0nmよりも大きい(本例では10nm以上である)場合には、密着性が良好であることが確認された。
【0096】
(7)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0097】
上記実施の形態においては、絶縁層41および被覆層43がそれぞれ第1および第2の絶縁層の例であり、電源用配線パターンP1,P2、読取用配線パターンR1,R2または書込用配線パターンW1,W2が配線パターンの例である。金属薄膜15が金属薄膜の例であり、接続端子21〜26,31〜36が接続端子の例であり、サスペンション基板1が配線回路基板の例であり、端子部42bおよび金属層44がそれぞれ第1および第2の導体層の例である。
【0098】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
(8)参考形態
(8−1)第1の参考形態に係る配線回路基板は、第1の絶縁層と、第1の絶縁層上に形成される配線パターンと、配線パターン上に形成される金属薄膜と、金属薄膜を覆うように第1の絶縁層上に形成される第2の絶縁層と、配線パターンと電気的に接続され、かつ第2の絶縁層から露出するように第1の絶縁層上に形成される接続端子とを備え、金属薄膜の厚みは0nmよりも大きくかつ150nm以下である。
この配線回路基板においては、第1の絶縁層上に配線パターンが形成される。配線パターン上に0nmよりも大きくかつ150nm以下の厚みを有する金属薄膜が形成される。金属薄膜を覆うように第1の絶縁層上に第2の絶縁層が形成される。配線パターンと電気的に接続されかつ第2の絶縁層から露出するように第1の絶縁層上に接続端子が形成される。
この構成によれば、配線パターン上に形成される金属薄膜の厚みは小さい。本発明者の上記の実験および検討の結果、金属薄膜の厚みが150nm以下と小さいことにより、電気信号の伝送損失が低減する。これにより、高い周波数帯域においても電気信号の伝送損失を低減することができる。
(8−2)金属薄膜の厚みは100nmより小さくてもよい。この場合、高い周波数帯域においても電気信号の伝送損失をより低減することができる。
(8−3)金属薄膜の厚みは50nmより小さくてもよい。この場合、高い周波数帯域においても電気信号の伝送損失をさらに低減することができる。
(8−4)金属薄膜の厚みは10nm以上であってもよい。この場合、配線パターンと第2の絶縁層との密着性がほとんど低下しない。これにより、第2の絶縁層が配線パターンから剥離することを十分に防止することができる。
(8−5)第2の絶縁層に対する金属薄膜の密着力は、第2の絶縁層に対する配線パターンの密着力よりも高くてもよい。
この場合、金属薄膜により配線パターンと第2の絶縁層との密着性を確実に向上させることができる。
(8−6)配線パターンは銅を含み、金属薄膜はニッケル、金、白金、銀または錫を含んでもよい。
この場合、銅を含む配線パターンと第2の絶縁層との間にニッケル、金、白金、銀または錫を含む金属薄膜が介在することにより、配線パターンと第2の絶縁層との密着性が十分に向上する。
(8−7)接続端子は、配線パターンと一体的に接続された第1の導体層と、第1の導体層上に形成された第2の導体層とを含み、第1の導体層の厚みは配線パターンの厚みよりも小さくてもよい。
配線回路基板の製造工程においては、一体的に接続された配線パターンおよび第1の導体層上に金属薄膜が形成される。また、第1の導体層上の金属薄膜が除去された後に、第1の導体層上に第2の導体層が形成されることにより接続端子が形成される。この工程において、第1の導体層上の金属薄膜が除去される際に、金属薄膜に接する第1の導体層の表面が除去される。そのため、第1の導体層の厚みが配線パターンの厚みよりも小さくなる。
この構成によれば、第1の導体層上に金属薄膜が残存することが確実に防止される。これにより、第2の導体層を均一に形成することが可能となる。
(8−8)第2の参考形態に係る配線回路基板の製造方法は、第1の絶縁層上に配線パターンを形成する工程と、配線パターン上に0nmよりも大きくかつ150nm以下の厚みを有する金属薄膜を形成する工程と、金属薄膜を覆うように第1の絶縁層上に第2の絶縁層を形成する工程と、配線パターンと電気的に接続されかつ第2の絶縁層から露出するように第1の絶縁層上に接続端子を形成する工程とを含む。
この配線回路基板の製造方法においては、第1の絶縁層上に配線パターンが形成される。配線パターン上に0nmよりも大きくかつ150nm以下の厚みを有する金属薄膜が形成される。金属薄膜を覆うように第1の絶縁層上に第2の絶縁層が形成される。配線パターンと電気的に接続されかつ第2の絶縁層から露出するように第1の絶縁層上に接続端子が形成される。
この構成によれば、配線パターン上に形成される金属薄膜の厚みは小さい。本発明者の上記の実験および検討の結果、金属薄膜の厚みが150nm以下と小さいことにより、電気信号の伝送損失が低減する。これにより、高い周波数帯域においても電気信号の伝送損失を低減することができる。
(8−9)金属薄膜の厚みは100nmより小さくてもよい。この場合、高い周波数帯域においても電気信号の伝送損失をより低減することができる。
(8−10)金属薄膜の厚みは50nmより小さくてもよい。この場合、高い周波数帯域においても電気信号の伝送損失をさらに低減することができる。
(8−11)金属薄膜の厚みは10nm以上であってもよい。この場合、配線パターンと第2の絶縁層との密着性がほとんど低下しない。これにより、第2の絶縁層が配線パターンから剥離することを確実に防止することができる。
(8−12)配線パターンを形成する工程は、配線パターンと一体的に接続された第1の導体層を形成することを含み、金属薄膜を形成する工程は、配線パターン上および第1の導体層上に金属薄膜を形成することと、第1の導体層上に形成された金属薄膜を除去することとを含み、接続端子を形成する工程は、第1の導体層上に第2の導体層を形成することを含んでもよい。
この場合、配線パターンと第2の絶縁層との間にのみ容易に金属薄膜を形成することができる。
(8−13)金属薄膜を除去することは、金属薄膜に接する第1の導体層の表面を除去することを含んでもよい。
この場合、第1の導体層上に金属薄膜が残存することが確実に防止される。これにより、接続端子における電気信号の損失が増加することを確実に防止することができる。
(8−14)金属薄膜を形成する工程は、無電解めっきにより金属薄膜を形成することを含んでもよい。この場合、配線パターン上に金属薄膜を容易に形成することができる。