特許第6576661号(P6576661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6576661-画像処理装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576661
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20190909BHJP
   G01N 21/90 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   G06T7/00 610C
   G01N21/90 C
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-64953(P2015-64953)
(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公開番号】特開2016-184338(P2016-184338A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2018年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】394000873
【氏名又は名称】株式会社エム・アイ・エル
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 茂
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸弘
【審査官】 岡本 俊威
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−192133(JP,A)
【文献】 特開平08−210991(JP,A)
【文献】 特開平09−091485(JP,A)
【文献】 特開昭60−159637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
G06T 7/00
G01N 21/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像された画像の各画素位置に対応した各アドレスの記憶領域に、撮像された画像の各画素の輝度データが記憶される第1の輝度データ記憶手段と、
物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域を備えた第2の輝度データ記憶手段と、
撮像された画像における円周上又は放射線上の各画素のアドレスに対応する第1の輝度データ記憶手段のアドレスの記憶領域に記憶されていた輝度データを、第2の輝度データ記憶手段の物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域に記憶させるアドレス変換手段と、
前記第2の輝度データ記憶手段の物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域から出力される輝度データを入力して当該輝度データに基づく情報を強調する処理を行う演算回路とを備え
撮像された画像中の検査対象部分が、良品状態において円周上で輝度差がない非特徴部分と円周上で当該非特徴部分との輝度差がある特徴部分とを有している場合において、
撮像された画像における円周上の特徴部分が位置する画素のアドレスを開始位置として、撮像された画像における円周上の各画素のアドレスに対応する第1の輝度データ記憶手段のアドレスの記憶領域に記憶されていた輝度データを、第2の輝度データ記憶手段の物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域に記憶させることを特徴とする画像処理装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像画像における円周上の各画素の輝度データの記憶処理方法を用いた画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品検査において、検査対象を撮像した検査対象画像を基準画像と比較するパターンマッチングによって、検査対象の傷、汚れ等の欠陥を判定する場合、検査対象画像を基準画像に合わせるために回転補正を行うようにしている(例えば特許文献1等参照)。
また、検査対象を撮像した画像の各画素の輝度データをメモリに記憶させ、当該輝度データに基づく情報を強調して得られた判定値を閾値と比較することにより、精度の高い欠陥検査を行えるようした装置が知られている(例えば特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−113225号公報
【特許文献2】特許第4576187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のようなパターンマッチングによる検査方法では、検査対象画像を回転補正する処理が必要となる。この処理は、全画素を1画素毎に回転補正しなければならない。即ち、1画素分の回転補正計算を全画素分行わなくてはならないため、当該回転補正処理に要する時間が長くなり、検査速度が遅くなってしまう。
そこで、回転補正処理を行わずに、検査対象画像中の検査対象物の中心を基準画像中の検査対象物の中心に一致させて、当該検査対象画像中の検査対象物上における中心を中心とした円周上の画素の輝度データを読み取って、円周上の隣接する画素の輝度データに基づく情報を強調して得られた判定値を閾値と比較する方法もある。
しかしながら、当該方法によれば、ソフトウエアによる処理によって、円周上の画素の輝度データを読み取り、円周上の隣接する画素の輝度データに基づく情報を強調する処理を行うため、画像処理装置のプロセッサが行う、円周上の画素の輝度データを読み取る処理、および、円周上の隣接する画素の輝度データに基づく情報を強調した判定値を計算する処理に要する時間が長くなり、検査速度が遅くなってしまう。
即ち、この方法の場合、画像処理装置のプロセッサが、円周上の画素の輝度データを読み取る際には、画像上においてスキャンする円周の径を決めて、円周上の画素のアドレスを計算して求め、さらに、当該アドレスに対応する画像メモリのアドレスの記憶領域から円周上の隣接する複数画素の輝度データをRAMに逐一読み込んで輝度データに基づく情報を強調する処理を行って判定値を求めるため、閾値と比較するための判定値を得るまでの処理に要する時間、即ち、撮像された画像における円周上の各画素の輝度データに基づく情報を強調する処理に要する時間がかかりすぎるという問題があった。
本発明は、撮像された画像における円周上又は放射線上の各画素の輝度データに基づく情報を強調する処理に要する時間を短縮できる輝度データの記憶処理方法を用いた画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明に係る輝度データの記憶処理方法を使用した画像処理装置は、撮像された画像の各画素位置に対応した各アドレスの記憶領域に、撮像された画像の各画素の輝度データが記憶される第1の輝度データ記憶手段と、物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域を備えた第2の輝度データ記憶手段と、撮像された画像における円周上又は放射線上の各画素のアドレスに対応する第1の輝度データ記憶手段のアドレスの記憶領域に記憶されていた輝度データを、第2の輝度データ記憶手段の物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域に記憶させるアドレス変換手段と、前記第2の輝度データ記憶手段の物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域から出力される輝度データを入力して当該輝度データに基づく情報を強調する処理を行う演算回路とを備え、撮像された画像中の検査対象部分が、良品状態において円周上で輝度差がない非特徴部分と円周上で当該非特徴部分との輝度差がある特徴部分とを有している場合において、撮像された画像における円周上の特徴部分が位置する画素のアドレスを開始位置として、撮像された画像における円周上の各画素のアドレスに対応する第1の輝度データ記憶手段のアドレスの記憶領域に記憶されていた輝度データを、第2の輝度データ記憶手段の物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域に記憶させるので、当該第2の輝度データ記憶手段の物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域からの出力を入力して、撮像された画像における円周上の各画素の輝度データに基づく情報を強調する処理を、ハードウエア(演算回路)で実現できるようになるため、撮像された画像における円周上の各画素の輝度データに基づく情報を強調する処理に要する時間を短縮でき、検査対象を撮像した画像に基づいて欠陥有無の検査を行う場合の検査時間等を短縮できるとともに、撮像された画像中の検査対象部分における特徴部分の位置が基準画像に対してずれていても、特徴部分の位置を基準画像に合わせるための回転補正を行うことなく、特徴部分の輝度データを特定できるようになり、非特徴部分のみにおいて前記演算回路の強調処理に基づく欠陥検査などの検査を行い、特徴部分においては検査感度を弱めるなどの検査を行うことが可能となる画像処理装置を提供できるようになる
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】撮像画像における円周上の各画素の輝度データの記憶処理方法を用いた画像処理装置を含む検査装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
図1に示すように、実施形態1による検査装置1は、検査対象部分Xを撮像するエリアセンサカメラ等の撮像手段2と、画像処理装置3とを備えて構成される。
画像処理装置3は、撮像された画像の各画素位置に対応した各アドレスの記憶領域に、撮像された画像の各画素の輝度データが記憶される第1の輝度データ記憶手段としてのフレームメモリ4と、物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域を備えた第2の輝度データ記憶手段としてのラインメモリ5と、フレームメモリ4のアドレスとラインメモリ5のアドレスとが対応付けされたルックアップテーブル6と、前記第2の輝度データ記憶手段の物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域から出力される輝度データを入力して当該輝度データに基づく情報を強調する処理を行う回路としての演算回路7と、判定手段8と、プロセッサ10と、を備える。
【0008】
撮像手段2は、コンベアB等で搬送されてきて光源Lからの光で照射された検査対象部分Xとしての例えば缶蓋の円形部分を撮像する。
フレームメモリ4には、撮像手段2で撮像された検査対象画像A全体の各画素の輝度データ(撮像手段2のCCDにより検査対象部分Xの光学的な像が電気的な信号に変換された輝度データ)が記憶される。
ラインメモリ5には、検査対象画像Aにおける円周上の画素の輝度データが物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域に記憶される。
演算回路7は、ラインメモリ5の物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域から出力される検査対象画像Aの円周上の画素の輝度データを入力して当該輝度データに基づく情報を強調した判定値を演算する。
演算回路7は、例えば、FPGA(field-programmable gate array)により構成される。
判定手段8は、演算回路7から出力された判定値と閾値とを比較して検査対象部分Xの欠陥の有無を判定する。
【0009】
画像処理装置3は、検査対象画像Aにおける円周上の画素のアドレスに対応するフレームメモリ4のアドレスの記憶領域に記憶されている輝度データを、ラインメモリ5の物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域に記憶させるアドレス変換処理手段を備える。
当該アドレス変換処理手段は、ルックアップテーブル6と、当該ルックアップテーブル6を参照して、検査対象画像Aにおける円周上の画素のアドレスに対応するフレームメモリ4のアドレスの記憶領域に記憶されている輝度データを、ラインメモリ5の物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域に記憶させる画像処理装置3のプロセッサ10とにより実現される。
【0010】
まず、検査を行う前の事前準備として以下のことを行う。
撮像範囲のXY座標で指定される各画素のアドレスとフレームメモリ4のXY座標で指定されるアドレスとを対応付けておき、撮像手段2により検査対象部分Xが撮像された場合に、当該撮像された検査対象画像Aの各画素の輝度データがフレームメモリ4に記憶されるようにしておく。
基準画像(図示せず)は、撮像範囲のXY座標の中心と検査対象部分Xとしての円形部分の中心とを一致させた画像とする。
基準画像上の円形部分の中心を中心とした円周上の画素のアドレスに対応するフレームメモリ4のアドレスと、ラインメモリ5の物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスと、を対応付けしたルックアップテーブル6を作成する。
即ち、検査対象画像Aにおける検査対象部分Xである円形部分上において、円形部分の中心Cを中心とした径の異なる複数の円周(円形部分の中心Cを中心とした同心円上の半径が異なる円周)上の各画素のアドレスをスキャン(指定)するために、各円周毎の画素のアドレスに対応するフレームメモリ4のアドレスと、ラインメモリ5の物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスと、を対応させたルックアップテーブル6を作成しておく。この場合、円周の径が大きいほど、円周上の画素数が多くなるため、円周上の画素の輝度データを記憶するラインメモリ5のアドレス数も多く必要となる。
円形部分の中心Cを中心とした同心円上の半径が異なる円周は、円形部分の径方向に沿って隣接する画素間を隔てて設定された複数の円周としても良いが、例えば、円形部分の径方向に沿って2〜3画素分の間隔を隔てた円周とすることが好ましい。
つまり、検査対象画像Aにおける検査対象部分Xである円形部分上に設定される円周毎に、円周の画素の輝度データが記憶されたフレームメモリ4のアドレスとラインメモリ5の物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスとを対応付けたルックアップテーブル6を作成しておく。
また、FPGAにより、ラインメモリ5の物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域から出力される検査対象画像Aの円周上の画素の輝度データを入力して判定値を演算する演算回路7を作成する。
尚、ルックアップテーブル6、及び、演算回路7は、検査対象部分Xが異なれば、検査対象部分X毎に作成することになる。
【0011】
検査装置1を用いた検査方法について説明する。
コンベアB等で搬送されてきた検査対象部分Xが撮像手段2で撮像され、撮像された検査対象画像Aの各画素の輝度データがフレームメモリ4に記憶される。
フレームメモリ4に記憶された輝度データから、検査対象部分Xである円形部分の中心Cを求める。即ち、円形部分の外周縁における互いに180度離れた一対のエッジ部分をつなぐ直線を2本引いて当該2本の直線が交差する点を円形部分の中心Cとする。当該検査対象画像Aにおいて求めた円形部分の中心Cと基準画像の円形部分の中心とのxy座標上のずれ量を求める。求めたxy座標上のずれ量を用いて、検査対象画像Aの円形部分の中心Cと基準画像の円形部分の中心とを一致させる様に検査対象画像Aをx、y移動させ、ずれ量に対応してフレームメモリ4の各アドレスの記憶領域に記憶されている輝度データを書き替える。
【0012】
次に、画像処理装置3のプロセッサ10が、検査対象画像Aにおける検査対象部分Xである円形部分上において、円形部分の中心Cを中心とした同心円上の半径が異なる複数の円周上の画素のアドレスをスキャンするためのスキャン開始位置のアドレスを求める。
そして、ルックアップテーブル6の機能により、検査対象画像Aの円周上の画素のアドレスに対応するフレームメモリ4のアドレスの記憶領域に記憶されている輝度データが、ラインメモリ5の物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域に転送されて記憶される。
尚、フレームメモリ4で基準画像の検査対象部分Xの中心と検査対象画像の検査対象部分Xの中心の位置ずれを求めて位置補正を行うが、その時に検査対象部分X内において円形スキャンの開始位置となる輝度変化模様(例えばプルトップの様な凹凸特徴部分)の位置も合わせて求める。その位置が基準画像のスキャン開始位置となりラインメモリ5の物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域に転送されて記憶される。
このラインメモリ5に記憶された輝度データが検査に使うラインメモリ5の基準画像となる。
つまり、このスキャン開始位置からスキャンしたデータをラインメモリ5の物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域に転送して記憶する。
即ち、画像処理装置3のプロセッサ10が、ルックアップテーブル6を参照して、検査対象画像Aの各円周上の画素のアドレスを特徴部分の位置であるスキャン開始位置のアドレスから順番に指定することにより、指定されたアドレスに対応したフレームメモリ4のアドレスの記憶領域に記憶されている輝度データが、ラインメモリ5の物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域に転送されて記憶される。
このように、撮像された画像における円周上の特徴部分をスキャン開始位置として、撮像された画像における円周上の各画素のアドレスに対応するフレームメモリ4のアドレスの記憶領域に記憶されていた輝度データを、ラインメモリ5の物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域に記憶させるので、撮像された画像中の検査対象部分Xにおける特徴部分の位置が基準画像に対してずれていても、特徴部分の位置を基準画像に合わせるための回転補正を行うことなく、回転補正した場合と同一の判定結果が得られ、また、特徴部分の輝度データを特定できるようになる。
【0013】
演算回路7は、例えば、ラインメモリ5の物理的に一直線上に隣り合う例えば3アドレス分(3画素分)の輝度データの値を1アドレス(1画素)ずつずらしていきながら加算し、そして、前後に計算された3アドレス分の輝度データの加算値同士を比較した差を出力するように作成されたFPGAにより構成される。
即ち、演算回路7は、ラインメモリ5の物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域から出力される輝度データを入力して当該輝度データに基づく情報を強調する処理を行って判定値を出力するFPGA(ハードウエア)により構成される。
【0014】
判定手段8は、専用のソフトウエアの命令に従って、演算回路7から出力された判定値としきい値とを比較して検査対象部分Xの欠陥の有無を判定するプロセッサ10により実現される。
【0015】
実施形態1の画像処理装置3によれば、基準画像上の検査対象部分Xである円形部分の中心Cを中心とした円周上の画素のアドレスに対応するフレームメモリ4のアドレスと、ラインメモリ5の物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスと、を対応付けしたルックアップテーブル6を備えていることにより、検査対象画像Aにおける検査対象部分Xである円形部分上において、円形部分の中心Cを中心とした径の異なる複数の円周上の各画素のアドレスをスキャンする際に、従来のようなソフトウエアによる計算処理によってスキャンするアドレスを求める必要がなくなるため、検査対象画像Aの円周上の画素のアドレスをスキャンするために要する処理時間を短縮できる。
また、実施形態1の画像処理装置3によれば、ルックアップテーブル6を備え、検査対象画像Aの円周上の画素のアドレスに対応するフレームメモリ4のアドレスに格納されている輝度データが、ラインメモリ5の物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域に転送されて記憶されるため、検査対象画像Aの円周上の画素の輝度データに基づく情報を強調して判定値を求める処理をハードウエア(演算回路7)によって行えるようになる。従って、従来のようなソフトウエアによる計算処理によって閾値と比較するための判定値を求める必要がなくなるため、判定値を求めるために要する処理時間(撮像された画像における円周上の各画素の輝度データに基づく情報を強調する処理に要する時間)を大幅に短縮できるようになり、検査時間を短縮できて、検査の高速化が可能となる。
【0016】
即ち、従来のように、検査対象画像の画素の輝度データをフレームメモリに記憶させただけでは、検査対象画像の円周上の画素の輝度データに基づく情報を強調して判定値を求める処理を行うためのハードウエアを構成することは不可能であるため、画像処理装置のプロセッサが専用のソフトウエアの命令に従って、判定値を求めるために必要な検査対象画像の円周上の画素の輝度データをフレームメモリからRAMに逐一読み込んで演算処理を行わなくてはならなかったため、判定値を求めるために要する処理時間が長くなるという課題があった。
一方、実施形態1のように、検査対象画像Aの円周上の画素の輝度データを、ラインメモリ5の物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域に記憶させるようにすれば、ラインメモリ5の当該アドレスの記憶領域からの輝度データを入力して当該輝度データに基づく情報を強調する判定値を演算する演算回路7を構成することができるようになり、判定値を求める処理をハードウエアで行うことが可能となるため、判定値を求めるための処理時間を大幅に短縮できるようになる。
【0017】
尚、例えば検査対象画像A中の検査対象部分Xである円形部分が、良品状態において円形部分の中心Cを中心とした円周上で輝度差がない検査対象部分Xである場合、検査対象画像Aにおける検査対象部分Xである円形部分上において円形部分の中心Cを中心とした同心円上の半径が異なる複数の円周上の画素のアドレスをスキャンするためのスキャン開始位置は、任意の位置に設定すればよい。
即ち、良品状態において円形部分の中心Cを中心とした円周上で輝度差がない検査対象部分Xの場合、スキャン開始位置がどこであろうと、検査対象部分Xである円形部分の円周上の画素のアドレスをスキャンして、円周上の画素のアドレスの輝度データをラインメモリ5の物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域に記憶させ、ラインメモリ5の物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域から出力される検査対象画像Aの円周上の画素の輝度データに基づく情報を強調した判定値を演算回路7で演算して、当該輝度データに基づく情報を強調した判定値を所定の閾値と比較することにより、円周上で比較的小さな輝度差が生じている場合であっても、当該輝度差を検出できて、検査対象部分Xの円周上の傷、汚れ等の欠陥を検出できるようになる。
しかしながら、検査対象画像A中の検査対象部分Xである円形部分が、良品状態において円周上で輝度差がない非特徴部分と円周上で当該非特徴部分との輝度差がある特徴部分とを有する検査対象部分Xである場合、例えば、検査対象部分Xである円形部分上に例えば図1に示すプルトップPのような特徴部分がある場合においては、当該特徴部分が存在する範囲は、非特徴部分との輝度の差が大きいため、円周上の画素のアドレスを円周を1周するようにスキャンして演算回路7によって特徴部分の輝度データに基づく情報を強調した判定値を求めた場合、特徴部分の輝度データが演算回路7によって強調されて当該特徴部分が傷、汚れ等の欠陥と判定されてしまう。
そこで、このような特徴部分が存在する範囲は、検査強度を弱めて検査を行うようにする。つまり、プルトップPのような特徴部分が存在する範囲は、演算回路7による輝度データに基づく情報を強調した判定値を用いた処理を行わず、本実施形態による非特徴部分の検査に用いる閾値とは異なる閾値を用いて検査を行う。
即ち、検査対象部分Xである円形部分上に特徴部分がある場合においては、特徴部分が存在する範囲では、演算回路7による輝度データに基づく情報を強調した判定値を用いた処理を行わないようにする。
この場合、例えば、まず、基準画像を作成する際、プルトップPの左右両側のエッジE,E間の中間位置と円形部分の中心Cとを通る半径線上のアドレスを基準として複数の円周上の各画素のアドレスをスキャンした場合の、特徴部分を含むアドレス範囲をあらかじめ求めておく。
そして、検査時においては、画像処理装置3のプロセッサ10が、検査対象画像Aにおける検査対象部分Xの中心を基準画像の検査対象部分Xの中心に合わせた後、検査対象画像Aにおける検査対象部分XのプルトップPの左右両側のエッジE,E間の中間位置と円形部分の中心Cとを通る半径線上のアドレスをスキャン開始アドレスとし、スキャンする円周上において当該スキャン開始アドレスから特徴部分を含むアドレス範囲を加算したアドレスに記憶されている輝度データは特徴部分の輝度データであるから、当該特徴部分の輝度データは検査感度を弱めて検査する。
このように、撮像された画像中の検査対象部分Xが、良品状態において円周上で輝度差がない非特徴部分と円周上で当該非特徴部分との輝度差がある特徴部分とを有している場合において、撮像された画像における円周上の特徴部分が位置する画素のアドレスを開始位置として、撮像された画像における円周上の各画素のアドレスに対応するフレームメモリ4のアドレスの記憶領域に記憶されていた輝度データを、ラインメモリ5の物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域に記憶させるので、撮像された画像中の検査対象部分における特徴部分の位置が基準画像に対してずれていても、特徴部分の位置を基準画像に合わせるための回転補正を行うことなく、特徴部分の輝度データを特定できるようになり、そして、非特徴部分のみにおいて演算回路7の強調処理に基づく欠陥検査などの検査を行い、特徴部分においては検査感度を弱めるなどの検査を行うことが可能となる。
【0018】
実施形態2
缶蓋等の圧延加工した製品は、円形部分のエッジ部(円形部分の円形外周縁部)に所謂ドローマーク(放射状の引っ張りシワ模様)が出来るが、これは不良ではない。
そこで、実施形態1で説明した検査を行った後に、検査対象画像Aにおける検査対象部分Xである円形部分の画素を円形部分の中心Cから放射線上にスキャンするようにする。
即ち、この場合、基準画像上の円形部分の中心から放射線上の画素のアドレスに対応するフレームメモリのアドレスと、ラインメモリの物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスと、を対応付けしたルックアップテーブルを作成する。
つまり、この場合の画像処理装置は、当該ルックアップテーブルと、当該ルックアップテーブルを参照して、検査対象画像Aにおける円形部分の中心から複数の放射線上の画素のアドレスに対応するフレームメモリのアドレスの記憶領域に記憶されている輝度データを、ラインメモリの物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域に記憶させる画像処理装置のプロセッサと、からなるアドレス変換処理手段を備えた構成とする。
複数の放射線は、例えば、検査対象画像Aにおける円形部分の中心Cを基準として円周方向に1°間隔毎に360本設定する。
さらに、この場合の画像処理装置は、ラインメモリの物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域から出力される輝度データを入力して当該輝度データに基づく情報を強調する処理を行って判定値を出力するFPGA(ハードウエア)による演算回路を備えた構成とする。
尚、実施形態2においても、ルックアップテーブル、及び、演算回路は、検査対象部分Xが異なれば、検査対象部分X毎に作成することになる。
【0019】
実施形態2の画像処理装置によれば、検査対象画像の放射線上の画素の輝度データを、ラインメモリの物理的に一直線上に並ぶ連続したアドレスの記憶領域に記憶させるため、ラインメモリの当該アドレスの記憶領域からの輝度データを入力して当該輝度データに基づく情報を強調する判定値を算出する演算回路(ハードウエア)を構成することができるようになるので、判定値を求めるために要する処理時間(撮像された画像における放射線上の各画素の輝度データに基づく情報を強調する処理に要する時間)を大幅に短縮できるようになり、検査対象である円形部分の円形外周縁部の欠陥の有無を高速かつ正確に判定できるようになる。
【0020】
尚、上記では、輝度データに基づく情報を強調する処理として、前後に計算された3アドレス分の輝度データの加算値同士を比較した差を出力する処理を例示したが、輝度データに基づく情報を強調する処理は、輝度データを微分して強調する処理、その他の強調処理であっても良く、このような強調処理を行う回路を、例えばFPGAにより作成すればよい。
【0021】
本発明の検査装置では、缶詰や飲料缶の缶蓋等の円形部分だけではなく、その他の円形部分を備えた物品の検査が可能である。例えば、自動車部品(丸形ベアリング、コロ型ベアリング、プレーキパット等)の円形部分のキズ、汚れ、異物付着等の検査も可能となる。
【0022】
また、本発明の検査装置では、円形部分以外の部品であっても、円周上又は放射線上の各画素の輝度データに基づく情報を強調する処理、判定する処理に要する時間を短縮でき、高速かつ精度の高い検査を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0023】
3 画像処理装置、4 フレームメモリ(第1の輝度データ記憶手段)、
5 ラインメモリ(第2の輝度データ記憶手段)、
6 ルックアップテーブル(アドレス変換手段)、7 演算回路、8 判定手段、
10 プロセッサ(アドレス変換手段)。
図1