(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576663
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】家庭用薄葉紙のガイド体
(51)【国際特許分類】
A47K 10/42 20060101AFI20190909BHJP
B65D 83/08 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
A47K10/42 C
B65D83/08 G
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-69292(P2015-69292)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-187490(P2016-187490A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2018年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】篠原 忍
【審査官】
油原 博
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3120241(JP,U)
【文献】
実開平04−100480(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0174834(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/20、10/42
B65D 83/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前板部と、前板部に対面して位置する背板部と、前板部と背板部との間の底側に位置し、前後方向中央部において幅方向に延在する取出口を有する底板部と、前記前板部及び背板部から各々対面する方向に突出する既設ガイド部とを有する家庭用薄葉紙ディスペンサーに取付けて使用する家庭用薄葉紙のガイド体であって、
前記ガイド体は、前板部又は背板部に対する取付け面を有する取付け部材と、この取付け部材に対して、回動自在に連結されて前記取付け面に対する倒立状態と倒伏状態とが選択可能でありかつ前記倒立状態において取付け面からの突出長さが前記既設ガイド部の前板部又は背板部からの突出長さよりも長い後付ガイド部を有するガイド部材と、を有し、
前記取付け面を介して取付け部材を前板部又は背板部に取付けた状態で、前記ガイド部材を倒立状態とすることで、前記前板部又は背板部からの突出長さが、前記既設ガイド部の突出長さより長い後付ガイド部が形成され、かつ、前記ガイド部材を倒伏状態とすることで、前記ガイド部材が既設ガイド部より各板部に近接され、前記ガイド部材の倒立状態と倒伏状態の選択によって、既設ガイド部と後付ガイド部とが選択される機能を前記ディスペンサーに付与する、ことを特徴とする家庭用薄葉紙のガイド体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用薄葉紙のガイド体、特に家庭用薄葉紙ディスペンサーに取り付けて使用するガイド体に関する。
【背景技術】
【0002】
複数枚の家庭用薄葉紙を折り畳んで積層した束を、交換可能に内部に収め、底部の取出口から一枚ずつ引き出せるようにする家庭用薄葉紙ディスペンサーがある。このようなディスペンサーによく用いられる家庭用薄葉紙は、ペーパータオルが代表的である。そして、このペーパータオルでは、大判、中判、小判やS,M、Lサイズ又は小サイズ、中サイズ、大サイズなど製造業者において呼び方や、それら種別毎の大きさに若干の差はあるものの、概ね三規格程度の大きさに分けられている。
【0003】
そして、近年、ペーパータオルの紙質の向上による吸水性等の機能向上が図られ、またエコ意識の高まりなどから、大判や中判等の紙面の大きいペーパータオルから、小判等のより紙面の小さいペーパータオルへの移行が進んでいる。
【0004】
しかし、従来のディスペンサーは、その大判用、中判用、小判用等のペーパータオルの束の大きさに合わせたガイド材が内部に配されて、その束の大きさ専用に作られており、そのディスペンサーが想定するペーパータオルより小さいサイズのペーパータオルを用いると、ガイド材のガイド機構が働かず、引き出しがスムーズに行えないという問題があった。
【0005】
このため、大判、中判等の紙面の大きいペーパータオル用のディスペンサーの設置者や所有者が、小判等の紙面の小さいペーパータオルに移行しようとするとディスペンサーそのものを新たに購入して設置替えする必要があり、コストや手間がかかるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4228083号
【特許文献2】特許第4180334号
【特許文献3】特許第4615550号
【特許文献4】特許第5579519号
【特許文献5】特許第5301824号
【特許文献6】特許第4847626号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の主たる課題は、家庭用薄葉紙ディスペンサーに取り付けることで、ディスペンサーを異なる大きさの家庭用薄葉紙の束に対応できるようにするガイド体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した本発明は以下のとおりである。
【0009】
〔請求項1記載の発明〕
前板部と、前板部に対面して位置する背板部と、前板部と背板部との間の底側に位置し、前後方向中央部において幅方向に延在する取出口を有する底板部と、前記前板部及び背板部から各々対面する方向に突出する既設ガイド部とを有する家庭用薄葉紙ディスペンサーに取付けて使用する家庭用薄葉紙のガイド体であって、
前記ガイド体は、前板部又は背板部に対する取付け面を有する取付け部材と、この取付け部
材に対して、回動自在に連結されて前記取付け面に対する倒立状態と倒伏状態とが選択可能でありかつ前記倒立状態において取付け面からの突出長さが前記既設ガイド部の前板部又は背板部からの突出長さよりも長い後付ガイド部を有するガイド部材と、を有し、
前記取付け面を介して取付け部材を前板部又は背板部に取付けた状態で、前記ガイド部材を倒立状態とすることで、前記前板部又は背板部からの突出長さが、前記既設ガイド部の突出長さより長い後付ガイド部が形成され、かつ、前記ガイド部材を倒伏状態とすることで、前記ガイド部材が既設ガイド部より各板部に近接され、前記ガイド部材の倒立状態と倒伏状態の選択によって、既設ガイド部と後付ガイド部とが選択される機能を前記ディスペンサーに付与する、ことを特徴とする家庭用薄葉紙のガイド体。
【発明の効果】
【0010】
以上のとおり、本発明によれば、家庭用薄葉紙ディスペンサーに取り付けることで、ディスペンサーを異なる大きさの家庭用薄葉紙の束に対応できるようにするガイド材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】家庭用薄葉紙ディスペンサーの正面図である。
【
図2】家庭用薄葉紙ディスペンサーの側面図であり、開閉構造を説明する図である。
【
図3】家庭用薄葉紙ディスペンサーの縦断面図である。
【
図4】家庭用薄葉紙ディスペンサーの横断面図である。
【
図6】ガイド体の動きを説明するための斜視図である。
【
図7】ガイド体が取付けられている家庭用薄葉紙ディスペンサーの他の正面図である。
【
図8】ガイド体が取付けられている家庭用薄葉紙ディスペンサーの横断面図である。
【
図9】ガイド体が取付けられている家庭用薄葉紙ディスペンサーの他の横断面図である。
【
図10】ガイド体が取付けられている家庭用薄葉紙ディスペンサーの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次いで、本発明の実施の形態を
図1〜10を参照しながら以下に詳述する。
【0013】
まず、本発明にかかるガイド体の取付け対象となる家庭用薄葉紙ディスペンサーの例を説明する。この家庭用薄葉紙ディスペンサー100(以下、単にディスペンサーという)は、その素材が例えばABS樹脂等の合成樹脂や金属素材等で形成された筐体1の内部に、略直方体形状の家庭用薄葉紙2の束2Aを収め、底板部30に形成された取出口13から、束2Aを構成する家庭用薄葉紙2を一枚ずつ引き出すようにして使用されるものである。
【0014】
その筐体1は、前板部10と、前板部10に対面して位置する背板部20と、前板部10と背板部20との間の底側に位置し、前後方向中央部において幅方向に延在する取出口13を有する底板部30と、を有しており、前記前板部10が、図示されない軸を介してハッチ式に取付けられ、
図2中一点鎖線で示すようにその前板部10を手前に引き下げることにより、筐体1が前面開放状態となり、筺体内部に家庭用薄葉紙2の束2Aが収納可能となる。なお、図示の形態では、背板部20と底板部30とが別体となっているが、これらは一体的な構造であってもよい。
【0015】
一方、このディスペンサー100には、前記前板部10及び背板部20から各々対面する方向に突出し、上下方向に延在する薄板状の既設のガイド部50が設けられており、
図3、
図4に示すように、そのガイド部50の底板部側の端部51が、内部に収納された束2Aに一部食い込むことで、束2Aの上方側の一部を支持し、取出口13にかかる束の荷重を軽減するとともに、束の下方側を底部側へ適切に案内して、束最下位の家庭用薄葉紙がスムーズに分離されて取出口13から引き出せるようになっている。
【0016】
したがって、対面するガイド部50の間隔(先端51間の間隔)は、そのディスペンサー100が想定する規格の家庭用薄葉紙2によって形成される束2Aの大きさ(前後方向長さ)に応じて設定されており、対面する既設のガイド部50の間隔より、短い前後方向長さの束は、底板部30側に落ち込み引き出しがスムーズに行えなくなる。
【0017】
なお、家庭用薄葉紙の束の前後方向長さは、ペーパータオルを例にとれば、規格によって異なるが、大判、中判などと称されるペーパータオルによる束で105〜125mm程度、小判などと称されるペーパータオルによる束で75〜95mm程度である。なお、図示の形態では、ガイド部50の底板部側の端部51が対面する前板側、背板側にやや突出する凸部を有する形状となっているが、このような凸部51がなく、単に上方から下方に向かって下り傾斜する形状で先端又は先端部分が形成される形状であってもよい。なお、一般にガイド部50は、このような端部を有しており、ガイド部間の間隔は、束に食い込む部分の先端間の間隔であり、本発明においても同様である。
【0018】
一方、このようなディスペンサー100に取付ける本実施形態のガイド体6は、
図5に示すように、前板部10又は背板部20に対する取付け面61を有する取付け部材と、この取付け部
材60Aに対して、回動自在に連結されて前記取付け面61に対する倒立状態と倒伏状態とが選択可能でありかつ前記倒立状態において取付け面61からの突出長さL1が、ディスペンサー100の既設ガイド部50における前板部10又は背板部20からの突出長さL2よりも長い後付ガイド部62を有するガイド部材60Bとを有している。
【0019】
取付け部材60A及びガイド部材60Bは薄板状であり、ガイド体6全体として、その厚みが少なくともディスペンサー100に既設のガイド部50の突出長さL2よりも薄くなっている。また、図示の形態のガイド体6は、取付け部材60Aとガイド部材60Bとが各々軸心63に回動自在に連結されて平蝶番の形状をなし、それによって、ガイド部材60Bが取付け部材60Aの取付け面61に対して倒立状態と倒伏状態とが選択可能となっている。但し、ガイド部材60Bと取付け部材60Aとは平蝶番を構成するように連結する必要はなく、ガイド部材60Bが取付け部材60Aに、その取付け面61に対して倒立状態と倒伏状態とが選択可能であれば、特に限定されない。例えば、ガイド部材60Bと取付け部材60Aとを塑性変形素材で連結するようにしてもよい。また、取付け部材60Aとガイド部材60Bとを軸によって回動自在に連結する場合には、公知のラチェット機構やその解除機構を組み込んで、取付け部材60Aの取付け面61に対して、ガイド部材60Bが倒立状態で仮固定されるようにしてもよい。
【0020】
取付け面61は、ディスペンサー100の前板部10又は背板部20にガイド体6を取付ける際に、各板部10,20に面接し、図示の形態のガイド体6は、その取付け面61に粘着剤64が配されていて、その粘着剤64によって、ガイド体6が、取付け面61を前板部10又は背板部20に面接させた状態で取付けられるようになっている。なお、ガイド体6をディスペンサー100に取付ける取付け手段は、前記粘着剤64に限られず、接着剤、その他公知の係止機構により行なわれるようにしてもよい。例えば、図示はしないが、ディスペンサー側に係止溝或いは凹部を設け、その一方でガイド体に、その取付け面から凸となる係止爪部を設け、この爪部を係止溝等に係止するようにして、取付けるようにしてもよい。また、粘着剤や接着剤を用いるのであれば、ガイド体やディスペンサーに応じて適宜の粘着剤や接着剤を選択すればよい。
【0021】
ガイド体6における後付ガイド部62は、ディスペンサー100に既設のガイド部50と同様に、一方端部65がやや凸となっており、前記取付け面61を介して前板部10又は背板部20に取付け、前記ガイド部材60Bを倒立状態とした際に、前記前板部10又は背板部20からの突出長さL1が、前記既設ガイド部50の突出長さL2より長くなるように設定されている。図示の形態では、前記軸心63からの距離L1が既設ガイド部50の突出長さL2より長くなっており、これにより上記の突出長さを達成されるようになっている。後付ガイド部62の突出方向に直交する方向の長さ、図示の形態であれば、軸方向の長さは適宜に設定でき、例えば、ディスペンサー100に既設のガイド部50の上下方向長さと同程度とすることができる。
【0022】
取付け部材60Aの大きさについては、ガイド体6をディスペンサー100に取付け可能な適宜の大きさであればよく、必ずしも限定されない。図示の形態のように粘着剤64によってディスペンサー100に取付けるようにするのであれば、十分な粘着性を確保できる粘着剤面積が得られる程度の大きさとすればよい。したがって、図示の形態では、軸方向の長さが、後付ガイド部62と同等である形状になっているが、必ずしも後付ガイド部62の長さに合わせる必要はない。
【0023】
ここで、ガイド体6のディスペンサー100への取付け及び使用態様について具体的に説明すると、このガイド体は、上記ディスペンサー100に対して、特に、
図7、
図8に示されるように、前記粘着剤64等によって取付け面61を介して、その取付け面61を前板部10又は背板部20に面接するようにして取付ける。その際、ガイド体6が、既設ガイド部50を覆うような位置とはしない。また、ガイド部材60Bが倒立状態と倒伏状態とを選択可能な位置、好ましくは、ガイド部材60Bが前板部10又は背板部20と平行となるまで倒伏状態となる位置とする。さらに、ガイド部材60Bを倒立状態とした際に、ディスペンサー100の上下方向に沿って後付ガイド部62が構成される方向で取付ける。図示の形態は、ガイド体6の軸方向がディスペンサー100の上下方向に沿う方向として、既設ガイド部50の幅方向外側位置にガイド体6を取付けている。
【0024】
このように本実施形態に係るガイド体6が取付けられたディスペンサー100では、ガイド部材60Bを倒伏状態とした際には、
図7、
図8に示すように、ガイド部材65Bが前板部10又は背板部20に近接し、ガイド体6が平板状をなして前板部10又は背板部20に対して平行に位置して、各板部10,20からは既設のガイド部50のみが突出する状態となり、その既設ガイド部50が支持可能な家庭用薄葉紙の束2A、例えば大判、中判等のペーパータオルの束が支持可能となる。そして、
図9及び
図10に示すように、ガイド体6のガイド部材60Bを倒立状態とした際には、その後付ガイド部62の突出長さL1が、前記既設ガイド部50の突出長さL2より長いことから後付ガイド部62の先端が、既設ガイド部50の先端を超えて、ディスペンサー100の前後方向中央側に位置することになり、これによって、前記既設のガイド部50が支持する束2Aよりも小さい規格の家庭用薄葉紙の束2B、例えば小判等のペーパータオルの束が支持可能となる。
【0025】
このように、本実施形態のガイド体6は、ディスペンサー100に取付けて、そのガイド部材60Bの倒立状態と倒伏状態とを選択することによって、既設ガイド部50と後付ガイド部62とが選択される機能がディスペンサー100に付与される。そして、既設ガイド部50と後付ガイド部62の各板部10,20からの突出長さが異なるため、異なる大きさの規格のペーパータオルの束2A,2Bに対応できるようになる。なお、このガイド体6は、既に設置されて使用されているディスペンサーに使用すべくガイド体のみで供してもよいし、ディスペンサーとセットで供するようにしてもよい。また、ディスペンサーに予め取付けて供してもよい。ガイド体の提供の態様は本発明を限定されるものではない。また、本発明における家庭用薄葉紙は、この種のディスペンサーに用いられるものであれば、特に限定されるものではなく、上記のとおり手拭き用途が主であるペーパータオルが代表的であるが、その他、清掃用途を主とするワイプ、工業製品や機具、用具の拭き取りを主とするウェス、厨房での使用を主とするキッチンペーパー、食材に使用することを主とするミートペーパーなどが例示される。
【符号の説明】
【0026】
100…家庭用薄葉紙ディスペンサー、1…筐体、2…家庭用薄葉紙、2A,2B…家庭用薄葉紙の束、13…取出口、10…前板部、20…背板部、30…底板部、50…既設ガイド部、51…ガイド部の端部(凸部)、6…ガイド体、60A…取付け部
材、61…取付け面、62…後付ガイド部、60B…ガイド部材、63…軸心、64…粘着剤、65…後付ガイド部の端部、L1…後付ガイド部の突出長さ、L2…既設ガイド部の突出長さ。