(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
質量%で、C:0.10%以下、Si:0.02〜4.0%、Mn:0.02〜4.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Cr:10.5〜30%、Ni:35%以下、N:0.001〜0.3%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成(以下「ステンレス鋼組成」という。)のステンレス鋼を用いた自動車排気系部品締結部品と、前記ステンレス鋼組成のステンレス鋼を用いた自動車排気系部品との組み合わせであって、下記条件の溶液中に10分間浸漬した後の自然電位を比較した際、自動車排気系部品締結部品の自然電位が自動車排気系部品の自然電位以上の自然電位を示すことを特徴とする、排ガス凝縮水環境に曝される自動車排気系部品締結部品と自動車排気系部品との組み合わせ構造。
ただし溶液はpH 2.0、80℃、濃度が[100ppm Cl-]+[1000ppm SO42-]+[1000ppm SO32-]の水溶液である。
前記自動車排気系部品締結部品のステンレス鋼組成はさらに質量%で、Mo:0.1〜8%、Cu:0.05〜1.5%、Nb:0.03〜1.0%、Al:0.001〜6.0%、Ti:0.001〜0.50%、W:0.01〜1.0%、V:0.01〜0.5%、Sn:0.001〜0.5%、Sb:0.001〜0.5%、B:0.0002〜0.003%、Mg:0.0002〜0.003%、Ca:0.0002〜0.002%、Zr:0.01〜0.3%、Co:0.01〜0.3%、Ta:0.0001〜0.001%、Ga:0.0001〜0.001%、REM:0.001〜0.2%のうち何れか1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排ガス凝縮水環境に曝される自動車排気系部品締結部品と自動車排気系部品との組み合わせ構造。
前記自動車排気系部品のステンレス鋼組成はさらに質量%で、Mo:0.1〜8%、Cu:0.05〜1.5%、Nb:0.03〜1.0%、Al:0.001〜6.0%、Ti:0.001〜0.50%、W:0.01〜1.0%、V:0.01〜0.5%、Sn:0.001〜0.5%、Sb:0.001〜0.5%、B:0.0002〜0.003%、Mg:0.0002〜0.003%、Ca:0.0002〜0.002%、Zr:0.01〜0.3%、Co:0.01〜0.3%、Ta:0.0001〜0.001%、Ga:0.0001〜0.001%、REM:0.001〜0.2%のうち何れか1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の排ガス凝縮水環境に曝される自動車排気系部品締結部品と自動車排気系部品との組み合わせ構造。
【背景技術】
【0002】
自動車の排気系部品間、特にパイプ間を締結する部品としては主にフランジが使用され、その材料には板厚が5mm以上の普通鋼が用いられることが多い。
【0003】
しかし車体重量の軽量化や寿命延命等のニーズから、自動車フランジ材料においても耐食性に優れた材料が要求され、フェライト系ステンレス鋼が使用されてきている。
【0004】
自動車フランジ用材料には板厚5mm以上の厚手の熱延鋼板を打ち抜き加工程度でそのまま使用する場合が多い。この場合しばしば材料の靭性が課題となり、製造時に板破断が起こることがあった。
【0005】
特許文献1には仕上げ圧延温度や巻取温度を規定することで靭性を改善する方法が開示されている。
【0006】
しかし近年コストダウンや軽量化を目的に、フランジの代替としてプレスフランジやパイプホルダーという部品を採用する例が増えている。またフランジやプレスフランジの間にはガスケットが使用される。
【0007】
プレスフランジとは従来用いられてきた厚板フランジに代わって、肉厚が3mm前後の鋼板を用いフランジアップ等により機械的強度を補強した比較的薄肉のフランジである。特許文献2には管に溶接された一般的なものや、溶接を用いない構造のもの、さらには溶接がなくさらにシール性が良好でかつ管軸方向の荷重に強固な抵抗性を発揮し、その上軽量化に有効な薄肉管に適した管継手構造が示されている。
【0008】
パイプホルダーとは別名パイプクランプとも呼ばれ、特許文献3や特許文献4に開示されているようにパイプやその他の筒状体を接合するために使用される筒状の構造物である。パイプホルダーはパイプと接触するバンドと、バンドのための締付機構からなり、用途に応じて二重管以上の構造とすることもできる。
【0009】
これらの部品はフランジよりも板厚の薄い材料で製造されるため、靭性やコスト、重量等の点でフランジよりも有利であり、また溶接箇所の減少にも繋がるため今後さらに需要が拡大することが予想される。以下、プレスフランジやパイプホルダーやその他の部品で、自動車排気系に使用されるパイプやその他のあらゆる部品間を溶接構造・締付構造の有無に限らず締結するすべての部品をまとめて「自動車排気系部品締結部品」とする。また対象とする自動車排気系部品締結部品用ステンレス鋼の板厚は5.0mm以下とする。さらに望ましくは3.5mm以下とする。
【0010】
特許文献5には鋼の表面に形成される不動態皮膜部におけるCr/Fe濃度(at%)と母相のCr/Fe濃度(at%)の比が1.2以上であり、JIS Z 8741「鏡面光沢度−測定方法」に準拠して測定角度60°で測定される圧延方向(L)、垂直方向(C)および圧延45度方向(D)の各々の光沢度(Gs(60))がいずれも50以上、平均Gs(60)=(Gs(60)
L+2×Gs(60)
D+Gs(60)
C)/4で算出される平均光沢度指標が60以上であり、さらにJIS G 0555に準拠して測定されるA
1系およびA
2系のA系介在物の清浄度が0.001〜0.030%であることを特徴とする耐食性に優れたステンレス鋼が開示されている。
【0011】
特許文献6には質量%で、C:0.05%以下、Si:0.02〜1.0%、Mn:0.5%以下、P:0.04%以下、S:0.02%以下、Al:0.1%以下、Cr:20〜25%、Cu:0.3〜1.0%、Ni:0.1〜3.0%、Nb:0.2〜0.6%、N:0.05%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、Nb炭窒化物が存在し、かつ前記炭窒化物の径が5μm以下であり、鋼板の表面粗度Raが0.4μm以下であることを特徴とする耐隙間腐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼板が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記の自動車排気系部品締結部品は前述のように一般にフランジよりも板厚の薄い材料で製造されるため、靭性やコスト、重量、溶接部減少等の点でフランジよりも有利であるが、一方でこれらの部品は構造上厚手フランジよりも隙間構造が増えた状態で他部品と接触することになるため、耐食性に関して留意する必要がある。ここで自動車排気系部品内部では排ガス凝縮水と呼ばれる排気ガスの結露水が生成することが知られており、自動車排気系部品締結部品−自動車排気系部品間でも排ガス凝縮水が生成する。そのため自動車排気系部品締結部品−自動車排気系部品間では隙間腐食や異種金属接触腐食といった腐食現象が起こりやすくなる。
【0014】
ここで異種金属接触腐食とは、二つの異種金属が一連の電解質中におかれて電解質中のイオン回路で接続され、かつ直接に接触あるいは導電性の物質で結ばれて電子回路でも接続されているときに、その環境下で単独状態で示す自然電位が卑な金属がアノード、貴な金属がカソードとなり、アノード側の金属が溶解して腐食する現象である。この異種金属接触腐食は特に、アノード側の金属の面積が小さくカソード側の金属の面積が大きい場合に、アノード反応である溶解反応が小面積の金属に集中し、小面積金属の著しい腐食を引き起こす可能性があり危険である。
【0015】
異種金属接触腐食は基本的には他素材が接触する際に生じ、ステンレス鋼同士が接触する際には鋼種が違ってもほとんど起こらないとされてきた。しかしそれはステンレス鋼の表面に安定な不働態皮膜が存在している場合であり、排ガス凝縮水という溶液中にSO
32-という還元性のイオンが含まれており、ステンレス鋼表面の不働態皮膜が還元され自然電位が変化しやすい環境では、考慮すべき現象であることが判明してきた。
【0016】
そして異種金属接触腐食が発生した際には、自動車排気系部品締結部品が板厚の薄い材料を使用しているために、厚手材のものよりも穴あきや割れに到達する時間が短くなるというリスクがある。そのため自動車排気系部品締結部品には異種金属接触腐食が起こらない材料を使用する必要がある。
【0017】
また自動車排気系部品締結部品は隙間構造が増えた状態で他部品と接触することになるため、排気ガスのシール性の問題が発生する。シール性を向上させるためには部品に使用される材料の表面粗度を小さくすることが有効であるが、一方で材料の表面粗度を小さくすることは表面の光沢度を増加させることに繋がる。しかし自動車の排気系部品は過度に目立つことを避けるため、光沢度の高い材料を避ける傾向にある。そのため自動車排気系部品締結部品には表面粗度が小さく且つ光沢度の低い材料を用いる必要がある。
【0018】
特許文献5は最終製品の表面特性を制御することで耐食性を改善させているが、排ガス凝縮水環境での耐食性に関して言及していない。特許文献6はNb炭窒化物の径や表面粗さを規定し耐隙間腐食性を向上させているが、光沢度や隙間環境での異種金属接触腐食については言及されていない。さらに高Crのフェライト系ステンレス鋼に限られている。
【0019】
本発明は自動車排気系部品締結部品に使用される場合において、優れたシール性と耐食性を有し、自動車排気系部品として適正な光沢度を有するステンレス鋼を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、前述の課題を解決すべく、凝縮水中でのステンレス鋼の自然電位の異種金属接触腐食への影響、さらには材料の表面粗度と光沢度の関係に着目し鋭意検討を行った。その結果耐食性に関しては、鋼成分に加えて、凝縮水中での表面電位を、接続相手の自動車排気系部品に使用される材料の自然電位以上に制御することで、異種金属接触腐食を抑制することが可能であることを見出した。また表面粗度と光沢度に関しては、自動車排気系部品締結部品に適正な表面粗度と光沢度の範囲があることを見出した。
【0021】
上記課題を解決することを目的とした本発明の要旨は、以下のとおりである
。
【0022】
[
1]質量%で、C:0.10%以下、Si:0.02〜4.0%、Mn:0.02〜4.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Cr:10.5〜30%、Ni:35%以下、N:0.001〜0.3%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成(以下「ステンレス鋼組成」という。)のステンレス鋼を用いた自動車排気系部品締結部品と、前記ステンレス鋼組成のステンレス鋼を用いた自動車排気系部品との組み合わせであって、下記条件の溶液中に10分間浸漬した後の自然電位を比較した際、自動車排気系部品締結部品の自然電位が自動車排気系部品の自然電位以上の自然電位を示すことを特徴とする、排ガス凝縮水環境に曝される自動車排気系部品締結部品と自動車排気系部品との組み合わせ
構造。
ただし溶液はpH 2.0、80℃、濃度が[100ppm Cl
-]+[1000ppm SO
42-]+[1000ppm SO
32-]の水溶液である。
[
2]前記自動車排気系部品締結部品は、表面粗度Raが0.1μm以上0.6μm以下であり、測定角度45°で測定される圧延方向の光沢度Gs(45)
Lが500以下であることを特徴とする上記[
1]に記載の排ガス凝縮水環境に曝される自動車排気系部品締結部品と自動車排気系部品との組み合わせ
構造。
[
3]前記自動車排気系部品締結部品のステンレス鋼組成はさらに質量%で、Mo:0.1〜8%、Cu:0.05〜1.5%、Nb:0.03〜1.0%、Al:0.001〜6.0%、Ti:0.001〜0.50%、W:0.01〜1.0%、V:0.01〜0.5%、Sn:0.001〜0.5%、Sb:0.001〜0.5%、B:0.0002〜0.003%、Mg:0.0002〜0.003%、Ca:0.0002〜0.002%、Zr:0.01〜0.3%、Co:0.01〜0.3%、Ta:0.0001〜0.001%、Ga:0.0001〜0.001%、REM:0.001〜0.2%のうち何れか1種または2種以上を含有することを特徴とする上記[
1]または[
2]に記載の排ガス凝縮水環境に曝される自動車排気系部品締結部品と自動車排気系部品との組み合わせ
構造。
[
4]前記自動車排気系部品のステンレス鋼組成はさらに質量%で、Mo:0.1〜8%、Cu:0.05〜1.5%、Nb:0.03〜1.0%、Al:0.001〜6.0%、Ti:0.001〜0.50%、W:0.01〜1.0%、V:0.01〜0.5%、Sn:0.001〜0.5%、Sb:0.001〜0.5%、B:0.0002〜0.003%、Mg:0.0002〜0.003%、Ca:0.0002〜0.002%、Zr:0.01〜0.3%、Co:0.01〜0.3%、Ta:0.0001〜0.001%、Ga:0.0001〜0.001%、REM:0.001〜0.2%のうち何れか1種または2種以上を含有することを特徴とする上記[
1]から[
3]までのいずれか
1つに記載の排ガス凝縮水環境に曝される自動車排気系部品締結部品と自動車排気系部品との組み合わせ
構造。
[
5]前記自動車排気系部品締結部品は、フランジ、プレスフランジ、パイプホルダー、ガスケットのいずれかであることを特徴とする上記[
1]から[
4]までのいずれか
1つに記載の排ガス凝縮水環境に曝される自動車排気系部品締結部品と自動車排気系部品との組み合わせ
構造。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
自動車排気系部品締結部品は異種金属に接触した状態で排ガス凝縮水環境に曝されるため、耐食性のみならず接触する金属との自然電位差が重要になる。本発明者等は後述の表3に示す種々の組成を有する1mm厚の冷延鋼板を作製した。冷延焼鈍条件として、フェライト系ステンレス鋼は950℃で、二相系、オーステナイト系ステンレス鋼は1050℃で30秒間の焼鈍を施し、さらに酸洗条件として、フェライト系は[HF 20g/L、HNO
3 50g/L、50℃]、2相、オーステナイト系は[HF 30g/L、HNO
3 60g/L、50℃]で酸洗を行った。
【0026】
上記鋼板から切り出した試験片を作用極とし、参照極としては飽和銀−塩化銀電極を用い、pH2.0、80℃、100ppmCl
-+1000ppmSO
42-+1000ppmSO
32-に浸漬して10分後の自然電位を測定した。自然電位測定結果を表3に示す。
【0027】
またそれぞれの鋼板から大試験片(30mm×30mm)と小試験片(20mm×20mm)の2種類を作製した。そして自然電位の異なる2鋼種を大試験片と小試験片の組み合わせでポリ塩化ビニル製のネジ・ボルトで固定し、異種金属接触腐食評価法として模擬凝縮水中で浸漬試験を行った。試験の詳細は実施例に記載した。
【0029】
表1に試験結果を示す。ここで表1に示す鋼種番号は後述の表3の各鋼種を示してある。また、表1に示す大試験片、小試験片の自然電位は、表3に記載した自然電位である。表1より、小試験片の電位が大試験片の電位よりも低い組み合わせの時に、小試験片の腐食減量が大きくなることがわかる。ここで浸漬試験の判定基準を目視レベルで全面腐食が確認可能な10g/m
2とする。表1より小試験片の電位が大試験片の電位よりも低い組み合わせの時に、腐食減量が10g/m
2を超えることがわかる。この結果より、小面積の鋼種は自然電位が大面積の鋼種の自然電位以上のものを選ぶことが好ましいことがわかる。つまり、自動車排気系部品締結部品に使用する材料は、パイプその他の締結される部品に使用される材料以上の電位を示すものを使用する必要があると言える。厳しい腐食環境であるためにステンレス鋼といえども異種金属接触腐食が顕著になったものと考えられる。
【0030】
この条件を満たすための手段としては、一つは自動車排気系部品締結部品に使用するステンレス鋼を、締結する相手の自動車排気系部品に使用されるステンレス鋼の自然電位と同等以上の自然電位を有する成分系のものを使用するということである。同等の自然電位であれば凝縮水環境で示す自然電位差が小さくなる。面積の小さい自動車排気系部品締結部品の自然電位が、面積の大きい自動車排気系部品の自然電位以上であれば、異種金属接触腐食を防止できる。より望ましくは面積の小さい自動車排気系部品締結部品の自然電位が面積の大きい自動車排気系部品の自然電位よりも高いことである。特に小面積の鋼種の電位が大面積の鋼種の電位よりも0.02V以上高い場合に有効である。すなわち、排気系部品と排気系部品締結部品を異なった成分とする場合、本発明を有効に用いることができる。
【0031】
また自動車排気系部品締結部品に使用するステンレス鋼と、締結する相手の自動車排気系部品に使用されるステンレス鋼間の成分系に差があり、締結部品の方が自然電位が低い場合でも、自動車排気系部品締結部品に使用される材料の表面を改質して自然電位を上昇させ、自然電位差を小さくすることさらには締結部品の自然電位を排気系部品の自然電位以上にすることで異種金属接触腐食を防止できる。具体的には冷延板酸洗時の硝酸濃度を高くする、冷延板焼鈍時に光輝焼鈍を行う、冷延板焼鈍後に真空熱処理を施す、その他あらゆる表面電位を上げる処理が挙げられる。
【0033】
表2に、表1の実験時よりも[1]冷延鋼板酸洗時の硝酸濃度を増加させた、[2]冷延板焼鈍時に光輝焼鈍を施した、[3]冷延板焼鈍後に真空熱処理を施した、A9鋼板を用いて同様の試験を行った結果を示す。表2より冷延板酸洗時の硝酸濃度を高くしたり、冷延板焼鈍時に光輝焼鈍を行ったり、冷延板焼鈍後に真空熱処理を施すことで自然電位が高くなり異種金属接触腐食を防止できていることがわかる。自然電位が高くなった理由は表面に緻密で耐食性が高く、排ガス凝縮水環境で電位が変化しにくい不働態皮膜を形成したためだと考えられる。このように表面に緻密で耐食性が高く、排ガス凝縮水環境で電位が変化しにくい不働態皮膜を形成することのできる処理を施すことで、自然電位を高くすることができ、異種金属接触腐食を防止することができる。
【0034】
また表面粗度及び光沢度は冷間圧延や焼鈍酸洗の条件設定によって制御可能である。冷間圧延では普通鋼用タンデム式冷間圧延機を通板することで表面粗度及び光沢度が低下する。ゼンジミアミルを通板する場合も使用するロールの粗さを変化させることによって鋼板表面の表面粗度及び光沢度を調整できる。また焼鈍酸洗では、例えば光輝焼鈍を施すことによって特に光沢度が増加する。さらには仕上圧延の有無や表面研削の有無によっても表面粗度及び光沢度の調整が可能である。
【0035】
以下に本発明で規定される鋼の化学組成についてさらに詳しく説明する。なお、%は質量%を意味する。以下に記載する化学組成は、本発明の自動車排気系部品締結部品に用いられる。また、本発明の自動車排気系部品締結部品の接続相手である自動車排気系部品についても、以下に記載する化学組成を適用することができる。
【0036】
C:耐粒界腐食性、加工性を低下させるため、その含有量を低く抑える必要がある。そのため、0.10%以下とした。より望ましくは0.005〜0.08%である。
【0037】
Si:脱酸元素として有用であると共に、耐食性に有効な元素であるが、加工性を低下させるため、その含有量を0.02〜4.0%とした。より望ましくは0.05〜3.0%である。
【0038】
Mn:脱酸元素として有用であるが、過剰に含有させると耐食性を劣化させるので、0.02〜4.0%とした。より望ましくは、0.1〜2.0%である。
【0039】
P:加工性・溶接性を劣化させる元素であり、その含有量を制限する必要がある。そのため0.05%以下とした。より望ましくは、0.04%以下である。
【0040】
S:耐食性を劣化させる元素であるため、その含有量を制限する必要がある。そのため0.01%以下とした。より望ましくは0.005%以下である。
【0041】
Cr:耐食性を確保するために、10.5%以上必要である。含有量を増加させるほど耐食性は向上するが、加工性、製造性を低下させるため、上限を30%以下とした。望ましくは10.6〜25%である。さらに望ましくは10.7〜23%である。
【0042】
Ni:耐食性、加工性を向上させる上で含有させることができるが、多量の添加はコスト増加につながるため、上限を35%以下とした。より望ましくは0.1〜25%である。そのうちフェライト系の場合は0.01〜3%以下、フェライト−オーステナイト二相系の場合は0.5〜9%、オーステナイト系の場合は4−25%である。さらに望ましくはフェライト系で0.03〜2%、フェライト−オーステナイト二相系で1.0〜8%、オーステナイト系で5−22%である。
【0043】
N:耐孔食性に有用な元素であるが、耐粒界腐食性、加工性を低下させるため、その含有量を低く抑える必要がある。そのため、0.3%以下とした。しかし過度の低下は精錬コストの増加に繋がるため、下限を0.001%とした。より望ましくは0.003%以上0.2%以下である。
【0044】
以上が本発明のステンレス鋼の基本となる化学組成であるが、本発明では、更に、次のような元素を必要に応じて含有させることができる。
【0045】
Mo:耐食性を向上させる上で、8%以下の範囲で含有させることができる。安定した効果が得られるのは0.1%以上である。したがって、0.1〜8%含有させるのが望ましい。より望ましくは0.1〜7.0%である。
【0046】
Cu:耐食性を向上させる上で、1.5%以下の範囲で含有させることができる。安定した効果が得られるのは0.05%以上である。したがって、0.05〜1.5%含有させるのが望ましい。より望ましくは0.1〜1.0%である。
【0047】
Nb:高温強度の向上や溶接部の粒界腐食性の向上に有用な元素であり、1.0%以下の範囲で含有させることができる。安定した効果が得られるのは0.03%以上である。したがって、0.03〜1.0%含有させるのが望ましい。より望ましくは0.1〜0.7%である。
【0048】
Al:脱酸効果等精練上有用な元素である。また、成形性を向上させる効果があり、6%以下の範囲で含有させることができる。安定した効果が得られるのは0.001%以上である。したがって、0.001〜6.0%含有させるのが望ましい。より望ましくは0.005〜5.5%である。
【0049】
Ti:C、Nを固定し、溶接部の耐粒界腐食性、加工性などを向上する効果があり、0.50%以下の範囲で含有させることができる。安定した効果が得られるのは0.001%以上である。したがって、0.001〜0.50%含有させるのが望ましい。より望ましくは0.005〜0.30%である。
【0050】
W:耐食性を向上させる上で、1.0%以下の範囲で含有させることができる。安定した効果が得られるのは0.01%以上である。したがって、0.01〜1.0%含有させるのが望ましい。
【0051】
V:耐食性を向上させる上で、0.5%以下の範囲で含有させることができる。安定した効果が得られるのは0.01%以上である。したがって、0.01〜0.5%含有させるのが望ましい。
【0052】
Sn:耐食性を向上させる上で、0.5%以下の範囲で含有させることができる。安定した効果が得られるのは0.001%以上である。したがって、0.001〜0.5%含有させるのが望ましい。
【0053】
Sb:耐全面腐食性を向上させる上で、0.5%以下の範囲で含有させることができる。安定した効果が得られるのは0.001%以上である。したがって、0.001〜0.5%含有させるのが望ましい。
【0054】
B:2次加工性を向上させるのに有用な元素であり、0.003%以下含有させることができる。含有させる場合は、安定した効果が得られる0.0002%以上が望ましい。
【0055】
Mg:脱酸効果等精練上有用な元素であり、また、組織を微細化し、加工性、靭性の向上にも有用であり、0.003%以下含有させることができる。含有させる場合は、安定した効果が得られる0.0002%以上が望ましい。
【0056】
Ca:脱硫のために添加されるが、過剰に添加すると水溶性の介在物CaSが生成して耐食性を低下させるため、0.0002〜0.002%添加させることができる。
【0057】
Zr:耐食性を向上させる上で、必要に応じて0.3%以下含有させることができる。含有させる場合は、安定した効果が得られる0.01%以上が望ましい。
【0058】
Co:二次加工性と靭性を向上させる上で、必要に応じて0.3%以下含有させることができる。含有させる場合は、安定した効果が得られる0.01%以上が望ましい。
【0059】
Ta:高温強度を向上させる上で、必要に応じて0.001%以下含有させることができる。含有させる場合は、安定した効果が得られる0.0001%以上が望ましい。
【0060】
Ga:耐食性を向上させる上で、必要に応じて0.001%以下含有させることができる。含有させる場合は、安定した効果が得られる0.0001%以上が望ましい。
【0061】
REM:脱酸効果等を有するので精練上有用な元素であり、必要に応じて0.2%以下含有させることができる。含有させる場合は、安定した効果が得られる0.001%以上が望ましい。
【0062】
以上、詳述したとおり、上記本発明のステンレス鋼組成のステンレス鋼を用いた自動車排気系部品締結部品と、ステンレス鋼を用いた自動車排気系部品とを組み合わせるに際し、前記条件の溶液中に10分間浸漬した後の自然電位を比較したときに、自動車排気系部品締結部品の自然電位が自動車排気系部品の自然電位以上の自然電位となる組み合わせを選択することにより、排ガス凝縮水環境に曝されても優れた耐食性を有する自動車排気系部品締結部品と自動車排気系部品との組み合わせとすることができる。ステンレス鋼を用いた自動車排気系部品としては、ステンレス鋼の範疇に含まれるものであればどのような成分組成であってもよい。上記本発明のステンレス鋼組成とすると好ましい。自動車排気系部品締結部品は、フランジ、プレスフランジ、パイプホルダー、ガスケットのいずれかであると好ましい。自動車排気系部品締結部品は、表面粗度Raが0.1μm以上0.6μm以下であり、測定角度45°で測定される圧延方向の光沢度Gs(45)
Lが500以下であると、優れたシール性と耐食性を有し、自動車排気系部品締結部品として適正な光沢度を有することができる。
【0063】
本発明の製造方法は基本的にはステンレス鋼を製造する一般的な方法により製造される。例えば、転炉又は電気炉で上記の化学組成を有する溶鋼とし、AOD炉やVOD炉などで精錬される。その後連続鋳造法又は造塊法で鋼片とした後、熱間圧延−熱延板の焼鈍−酸洗−冷間圧延−仕上げ焼鈍−酸洗の工程を経て製造される。必要に応じて、熱延板の焼鈍を省略してもよいし、冷間圧延−仕上げ焼鈍−酸洗を繰り返し行ってもよい。
【実施例】
【0064】
実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
【0065】
【表3】
【0066】
表3に示す組成の鋼を溶製し、4mmまで熱間圧延を施し、1050℃で1分間焼鈍を行った後酸洗を施した。その後1mmまで冷間圧延を施し、フェライト系ステンレス鋼は950℃で、二相系、オーステナイト系ステンレス鋼は1050℃で30秒間の焼鈍を施し、さらに酸洗条件として、フェライト系は[HF 20g/L、HNO
3 50g/L、50℃]、2相、オーステナイト系は[HF 30g/L、HNO
3 60g/L、50℃]で酸洗を行い、板厚1.0mmの鋼板を作製した。表3において、フェライト系は「F」、オーステナイト系は「A」、二相系は「2」と記載している。
【0067】
この鋼板から幅15mm、長さ20mmの自然電位測定用の試験片を切り出し、裏面に導線をはんだ付けした後に10mm×10mmの測定面を残して端面及び裏面をシーラント被覆した。この試験片を作用極とし、参照極としては飽和銀−塩化銀電極を用いることにより、自然電位測定試験によって自然電位を評価した。
【0068】
自然電位測定試験に使用した模擬凝縮水は、試薬に塩酸、硫酸、亜硫酸アンモニウムを用いて100ppmCl
-+1000ppmSO
42-+1000ppmSO
32-に調整したものとした。模擬凝縮水は試薬添加後硫酸を用いて、pH2.0に調整した。80℃に加熱したこの溶液に、シーラント被覆した試験片を浸漬して自然電位を測定した。浸漬後10分経過後の自然電位をその鋼種の自然電位とした。
【0069】
また異種金属接触腐食評価を行った。試験には浸漬試験を用いた。作製した鋼板から30mm×30mm、または20mm×20mmの試験片を切り出し、それぞれ中心部にφ6mmの穴をあけ質量を測定した。大きいサイズの物をパイプ、小さいサイズの物を自動車排気系部品締結部品と想定し、サイズの異なる2鋼種をポリ塩化ビニル製のネジ・ボルトを使用して、重ね合わせて固定した。その後ネジ・ボルトにて固定された試験片を前述の溶液内に浸漬させた。試験は168時間行い、平日は毎日溶液を更新した。腐食評価には腐食減量を用いた。試験終了後ネジ・ボルトを取りだし、くえん酸2水素アンモニウム水溶液を用いて腐食生成物を除去し、それぞれの試験片の重量を測定し腐食試験前後の質量変化を求めた。浸漬試験の判定基準は、目視レベルで全面腐食が確認可能な10g/m
2とした。また組み合わせた2鋼種のうち、小試験片の鋼種の腐食減量を、その組み合わせの腐食減量とした。
【0070】
【表4】
【0071】
表4に試験結果を示す。表4より、小試験片の電位が大試験片の電位よりも低い組み合わせの時に、小試験片の腐食減量が大きくなることがわかる。ここで浸漬試験の判定基準を目視レベルで全面腐食が確認可能な10g/m
2とする。表3より小試験片の電位が大試験片の電位よりも低い組み合わせの時に、腐食減量が10g/m
2を超えることがわかる。この結果より、小面積の鋼種は自然電位が大面積のものの自然電位以上のものを選ぶことが好ましいことがわかる。つまり、自動車排気系部品締結部品に使用する材料は、パイプその他の締結される部品に使用される材料以上の電位を示すものを使用する必要があると言える。厳しい腐食環境であるためにステンレス鋼といえども異種金属接触腐食が顕著になったものと考えられる。
【0072】
また表4下部に示す、[1]冷延鋼板酸洗時の硝酸濃度を2倍に増加させた、[2]冷延板焼鈍時に露点−60℃以下のアンモニア分解ガス雰囲気下で1020℃で光輝焼鈍を施した、[3]冷延板焼鈍後に1130℃で10分間の真空熱処理を施した、A9鋼板を用いて同様の試験を行った結果を示す。表4より冷延板酸洗時の硝酸濃度を高くしたり、冷延板焼鈍時に光輝焼鈍を行ったり、冷延板焼鈍後に真空熱処理を施すことで自然電位が高くなり異種金属接触腐食を防止できていることがわかる。
【0073】
また作製した表3の冷延鋼板について、鋼種ごとに圧延ロールの表面粗度を変化させることによって表面粗度を変化させ、表面粗度と光沢度を測定した。表面粗度はJIS B 0601−1994に準拠して圧延方向の算術平均粗さRaを測定した。測定長さは3.0mm、カットオフ波長は0.6mm、測定速度は0.30mm/sであった。光沢度はJIS Z 8741−1983に準拠して圧延方向のGs(45)
Lを測定した。測定角度は45°であった。
【0074】
光沢度はGs(45)
Lが500以下のものを○、500超のものを×とした。この基準は実際に使用されている数々の排気系部品の光沢度を調査した結果、特に排気系のパイプにおいてGs(45)
Lが500超のものが使用されている例が少ないことから判定基準とした。
【0075】
シール性は表3に示す各鋼種の3mm厚の冷延鋼板を作製し、模擬プレスフランジを作製して評価した。模擬プレスフランジを外径50mmのパイプに溶接したものを2つ作製し、フランジ間をボルト締めしてパイプ間に圧縮空気を送り込んだ。フランジ間で空気の漏れが確認されなかったものを○、漏れが確認されたものを×とした(表5)。
【0076】
【表5】
【0077】
表5に各鋼種の測定結果を示す。また
図1に表面粗度と光沢度の関係を示す。表5および
図1より、表面粗度Raが低くなるほど光沢度Gs(45)
Lが増加することがわかる。特にRaが0.1μm以下になるとGs(45)
Lが500を超えることがわかる。また表5に示すように、Raが0.6μm以上になるとシール性が悪くなることがわかる。この結果より、表面粗度Raが0.1μm以上0.6μm以下であり、測定角度45°で測定される圧延方向の光沢度Gs(45)
Lが500以下である鋼種を使用することが望ましいことがわかる。