特許第6576679号(P6576679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576679
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】エアベルト及びエアベルト装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/14 20060101AFI20190909BHJP
   B60R 21/18 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   B60R22/14
   B60R21/18
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-91012(P2015-91012)
(22)【出願日】2015年4月28日
(65)【公開番号】特開2016-203913(P2016-203913A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】村上 吉樹
(72)【発明者】
【氏名】礒▲崎▼ 広明
【審査官】 小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−247087(JP,A)
【文献】 特開2005−170248(JP,A)
【文献】 特開2013−028241(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3196880(JP,U)
【文献】 特開平06−262994(JP,A)
【文献】 特開2004−82762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/14
B60R 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の胴部を拘束するウェビングに配置されるとともに緊急時にガスが供給されて膨張するバッグを備えたエアベルトにおいて、
前記バッグは、下方に配置された膨張可能な第一チャンバと、上方に配置された膨張可能な第二チャンバと、前記第一チャンバ及び前記第二チャンバを連通可能に接続する一つ以上のガス流路と、前記バッグの長手方向に沿って配置され前記ウェビングを挿通するベルトガイドと、を備え、
前記第一チャンバは、略中央部に形成され前記ウェビング又は前記ベルトガイドを挿通するスリットを有する非膨張部を備え、
前記第二チャンバは、前記バッグの長手方向に沿って内部に配置されたテザーを備え、
前記ガス流路の膨張高さは、前記第一チャンバ及び前記第二チャンバの膨張高さよりも小さく、
前記バッグは、乗員側に配置される第一基布と車両構造物側に配置される第二基布とを縫合することによって形成される袋体であり、前記テザーは、略矩形形状を有する基布によって構成されており、前記テザーの横幅方向の両端部が前記第二基布に接続され、前記テザーの横幅方向中心部が前記第一基布に接続されている、
ことを特徴とするエアベルト。
【請求項2】
前記第一チャンバは前記乗員の腰部付近で膨張し、前記第二チャンバは前記乗員の肩部付近で膨張する、ことを特徴とする請求項1に記載のエアベルト。
【請求項3】
前記ガス流路の断面積又は横幅は、前記第一チャンバ及び前記第二チャンバの断面積又は横幅よりも小さい、ことを特徴とする請求項1に記載のエアベルト。
【請求項4】
前記ガス流路は、前記ウェビングの横幅と略同一の横幅を有する一つの流路である、ことを特徴とする請求項1に記載のエアベルト。
【請求項5】
乗員の胴部を拘束するウェビングに配置されるとともに緊急時にガスが供給されて膨張するバッグを有するエアベルトと、該エアベルトに前記ガスを供給するインフレータと、を備えたエアベルト装置において、
前記エアベルトは、請求項1〜4の何れか一項に記載のエアベルトである、ことを特徴とするエアベルト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアベルト及びエアベルト装置に関し、特に、乗員への負荷を低減することができるエアベルト及びエアベルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の乗物には、一般に、乗員が着座する腰掛部と乗員の背面に位置する背もたれ部とを備えた座席に乗員を拘束する三点式のシートベルト装置が設けられている。かかるシートベルト装置は、乗員を拘束するウェビングと、該ウェビングの巻き取りを行うシートベルトリトラクタと、車体側に設けられ前記ウェビングを案内するガイドアンカーと、前記ウェビングを車体側に固定するベルトアンカーと、座席側面に配置されたバックルと、前記ウェビングに配置されたタングと、を有し、前記タングを前記バックルに嵌着させることによって前記ウェビングで乗員を拘束している。
【0003】
近年、シートベルト装置の拘束性能の向上を図るため、衝突時等の緊急時に、乗員を拘束するウェビングをガスで膨張させることによって、乗員の胸部との接触面積を拡大し、胸部に生じる衝撃を分散させるエアベルト装置が実用化されつつある。かかるエアベルト装置は、例えば、特許文献1に記載されたように、内部に膨張可能なバッグを収納して一端が固定部に支持されたベルトと、このベルトの他端に設けられたタング装置と、固定部に支持されて前記タング装置が結合されるバックル装置と、高圧ガスを発生するインフレータと、を備えてなり、車両の衝突時にインフレータが発生した高圧ガスをバッグに供給することによりバッグを膨張させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−213256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載されたエアベルト装置では、ウェビングがタング近傍からベルトアンカー近傍まで略均等に膨張するように構成されていることから、乗員が正常に着座した状態(背もたれ部に背中を密着させた状態)において、エアベルトが膨張した場合に、胸部から腹部の広範囲にわたって負荷が高くなっていた。しかしながら、胸部や腹部は、肋骨によってのみ保護される部分であって肩部や腰部と比較して強度の低い部分であることから、この部分の負荷を低減する必要があった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、膨張時における乗員への負荷を低減することができるエアベルト及びエアベルト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、乗員の胴部を拘束するウェビングに配置されるとともに緊急時にガスが供給されて膨張するバッグを備えたエアベルトにおいて、前記バッグは、下方に配置された膨張可能な第一チャンバと、上方に配置された膨張可能な第二チャンバと、前記第一チャンバ及び前記第二チャンバを連通可能に接続する一つ以上のガス流路と、前記バッグの長手方向に沿って配置され前記ウェビングを挿通するベルトガイドと、を備え、前記第一チャンバは、略中央部に形成され前記ウェビング又は前記ベルトガイドを挿通するスリットを有する非膨張部を備え、前記第二チャンバは、前記バッグの長手方向に沿って内部に配置されたテザーを備え、前記ガス流路の膨張高さは、前記第一チャンバ及び前記第二チャンバの膨張高さよりも小さく、前記バッグは、乗員側に配置される第一基布と車両構造物側に配置される第二基布とを縫合することによって形成される袋体であり、前記テザーは、略矩形形状を有する基布によって構成されており、前記テザーの横幅方向の両端部が前記第二基布に接続され、前記テザーの横幅方向中心部が前記第一基布に接続されている、ことを特徴とするエアベルトが提供される。
【0008】
また、本発明によれば、乗員の胴部を拘束するウェビングに配置されるとともに緊急時にガスが供給されて膨張するバッグを有するエアベルトと、該エアベルトに前記ガスを供給するインフレータと、を備えたエアベルト装置において、前記エアベルトは、前記バッグが、下方に配置された膨張可能な第一チャンバと、上方に配置された膨張可能な第二チャンバと、前記第一チャンバ及び前記第二チャンバを連通可能に接続する一つ以上のガス流路と、前記バッグの長手方向に沿って配置され前記ウェビングを挿通するベルトガイドと、を備え、前記第一チャンバが、略中央部に形成され前記ウェビング又は前記ベルトガイドを挿通するスリットを有する非膨張部を備え、前記第二チャンバが、前記バッグの長手方向に沿って内部に配置されたテザーを備え、前記ガス流路の膨張高さは、前記第一チャンバ及び前記第二チャンバの膨張高さよりも小さく、前記バッグは、乗員側に配置される第一基布と車両構造物側に配置される第二基布とを縫合することによって形成される袋体であり、前記テザーは、略矩形形状を有する基布によって構成されており、前記テザーの横幅方向の両端部が前記第二基布に接続され、前記テザーの横幅方向中心部が前記第一基布に接続されている、ことを特徴とするエアベルト装置が提供される。

【0009】
上述したエアベルト及びエアベルト装置において、例えば、前記第一チャンバは前記乗員の腰部付近で膨張し、前記第二チャンバは前記乗員の肩部付近で膨張する。
【0010】
また、前記ガス流路の断面積又は横幅は、前記第一チャンバ及び前記第二チャンバの断面積又は横幅よりも小さくてもよい。
【0011】
また、前記ガス流路は、前記ウェビングの横幅と略同一の横幅を有する一つの流路であってもよい。
【0012】
また、前記バッグは、乗員側に配置される第一基布と車両構造物側に配置される第二基布とを縫合することによって形成される袋体であり、前記第二チャンバを構成する部分の前記第一基布及び前記第二基布を連結するテザーを備えていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明に係るエアベルト及びエアベルト装置によれば、ガス流路の膨張高さを第一チャンバ及び第二チャンバの膨張高さよりも小さく形成したことにより、第一チャンバ及び第二チャンバの膨張によってガス流路がリフトアップされ、バッグの膨張時に第一膨張部及び第二膨張部により乗員の胴部の下方及び上方を拘束することができる。したがって、本発明を採用することにより、身体のうち比較的強度の高い部分(腰部及び肩部付近)で乗員を拘束することができ、比較的強度の低い部分(胸部や腹部)への負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一実施形態に係るエアベルトの膨張展開の初期段階を示す概略構成図であり、(A)は長手方向断面図、(B)は図1(A)におけるB−B断面図、(C)は図1(A)におけるC−C断面図、である。
図2図1(A)に示したエアベルトの使用状態を示すイメージ図である。
図3図1(A)に示したバッグを構成するパーツを示す平面図である。
図4】本発明の他の実施形態に係るエアベルトのバッグを示す平面図であり、(A)は第二実施形態、(B)は第三実施形態、を示している。
図5】本発明の一実施形態に係るエアベルト装置を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図1(A)〜図5を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の第一実施形態に係るエアベルトの膨張展開の初期段階を示す概略構成図であり、(A)は長手方向断面図、(B)は図1(A)におけるB−B断面図、(C)は図1(A)におけるC−C断面図、である。図2は、図1(A)に示したエアベルトの使用状態を示すイメージ図である。図3は、図1(A)に示したバッグを構成するパーツを示す平面図である。
【0016】
本発明の第一実施形態に係るエアベルト1は、図1(A)〜図3に示したように、乗員Mを拘束するウェビングWに配置されるとともに緊急時にガスが供給されて膨張するバッグ2を備え、バッグ2は、相対的に下方に配置された膨張可能な第一チャンバ21と、相対的に上方に配置された膨張可能な第二チャンバ22と、第一チャンバ21及び第二チャンバ22を連通可能に接続する一つ以上のガス流路23と、を備え、ガス流路23の膨張高さh3は、第一チャンバ21の膨張高さh1及び第二チャンバ22の膨張高さh2よりも小さく形成されている。
【0017】
図2に示した乗員Mは、例えば、50パーセンタイル男性(AM50)を想定したものであるが、エアベルト1の具体的な形状や構成は、通常、50パーセンタイル男性(AM50)及び5パーセンタイル女性(AM05)のバランスを考慮して設計される。なお、図2において、説明の便宜上、乗員Mを一点鎖線で図示している。また、エアベルト1にガスを供給するインフレータ(図5参照)の図を省略してある。
【0018】
バッグ2は、図2に示したように、ウェビングWを挿通するベルトガイド24を有している。ベルトガイド24は、ウェビングWの長手方向に沿った筒形状を有しており、バッグ2の表面に縫合され固定されている。具体的には、図3に示したように、ベルトガイド24は、一対の基布(第一冊状基布24a及び第二冊状基布24b)を縫合することによって形成される。なお、図3において、縫合線を一点鎖線で図示し、対応(縫合)する縫合線を点線で表示している。
【0019】
また、ベルトガイド24内にウェビングWの圧力を分散するためのガイドシート24cを挿入するようにしてもよい。ガイドシート24cは、例えば、樹脂製の板材であり、その弾性力によってウェビングWを乗員から引き離す方向に力を付加する。なお、ガイドシート24cは、必要に応じて省略することができる。
【0020】
また、ベルトガイド24は、例えば、一端側(ここでは上端側)がバッグ2の表面側(車両空間側)に配置されており、他端側(ここでは下端側)がバッグ2に形成されたスリット25に挿通されて裏面側(乗員側)に配置されている。したがって、バッグ2はウェビングWの長手方向に沿って相対移動可能に構成されている。なお、図1(A)では、説明の便宜上、ベルトガイド24の図を省略してある。
【0021】
バッグ2は、図1(A)及び図2に示したように、一端(ここでは下端)に内部にガスを吹き込むためのガス供給口26を有し、第一チャンバ21、ガス流路23、第二チャンバ22の順にガスが供給される。ここで、図2に示したように、第一チャンバ21は乗員Mの腰部付近で膨張し、第二チャンバ22は乗員Mの肩部付近で膨張するように構成されている。
【0022】
バッグ2は、図3に示したように、例えば、乗員M側に配置される第一基布2aと車両構造物側に配置される第二基布2bとを縫合することによって形成される袋体である。ここで、第二基布2bの外形は、第一チャンバ21、ガス流路23及び第二チャンバ22の形状に沿うように形成され、第一基布2aの外形は、ガス流路23の両脇に余肉を有する形状に形成されているが、かかる形状に限定されるものではない。例えば、第一基布2aを図示した第二基布2bと同じ形状に形成してもよいし、第二基布2bを図示した第一基布2aと同じ形状に形成してもよい。
【0023】
バッグ2の膨張展開形状は、図3に示したように、縫合線2cによって規定される。具体的には、バッグ2の縫合線2cは、基布を平面展開した状態で、横幅B4を有しガス供給口26を構成する部分と、横幅B1を有し第一チャンバ21を構成する部分と、横幅B3を有しガス流路23を構成する部分と、横幅B2を有し第二チャンバ22を構成する部分と、を有している。なお、本実施形態において、「横幅」とはウェビングWの短手方向と同じ方向の幅を意味する。
【0024】
ここで、ガス流路23は、ウェビングWの横幅と略同一の横幅B3を有する一つの流路であり、この横幅B3は、第一チャンバ21を構成する部分の横幅B1及び第二チャンバ22を構成する部分の横幅B2よりも小さく形成されている。ガス流路23をウェビングWの横幅と略同一の横幅B3に形成することにより、膨張時にウェビングWの横幅方向に形成される曲率を大きくすることができ、ウェビングWの位置を安定させることができ、ウェビングWの片寄りを低減することができる。
【0025】
なお、横幅B3を横幅B1,B2よりも小さく形成することは、ガス流路23における流路断面積が、第一チャンバ21及び第二チャンバ22の流路断面積よりも小さくなることと実質的に同義である。
【0026】
また、ガス供給口26を構成する部分の横幅B4は、少なくとも第一チャンバ21を構成する部分の横幅B1よりも小さく形成されており、好ましくは、ガス流路23を構成する部分の横幅B3よりも小さく形成される。
【0027】
また、第一チャンバ21を構成する部分の横幅B1と第二チャンバ22を構成する部分の横幅B2との大小は任意であり、いずれか一方を大きく形成してもよいし、同じ大きさに形成してもよい。
【0028】
第一チャンバ21の略中央部には、縫合線2dによって第一基布2a及び第二基布2bが縫合された非膨張部27が形成されている。この非膨張部27には、ウェビングWやベルトガイド24を挿通するスリット25が形成される。
【0029】
また、バッグ2は、図1(B)及び図3に示したように、第二チャンバ22を構成する部分の第一基布2a及び第二基布2bを連結するテザー28を備え、テザー28の横幅方向の両端部を第二基布2bに接続し、テザー28の横幅方向中心部を第一基布2aに接続するようにしてもよい。
【0030】
具体的には、図3に示したように、テザー28は略矩形形状を有する基布によって構成されており、バッグ2の長手方向に沿って中心部に縫合線28aが形成され、縫合線28aに沿って両側に縫合線28bが形成される。縫合線28aは、テザー28と第一基布2aとを接続し、縫合線28bは、テザー28と第二基布2bとを接続する。
【0031】
かかるテザー28を第二チャンバ22に配置することにより、第二チャンバ22の高さ方向の膨張量を規制することができ、バッグ2の膨張展開形状を略扁平状に安定させることができる。ここでは、テザー28を一枚の平板形状の基布によって形成しているが、かかる構成に限定されるものではない。例えば、テザー28は、第一基布2aと第二基布2bとを接続する複数の紐状又は短冊状の基布によって形成するようにしてもよい。
【0032】
なお、テザー28は、縫合線28aと縫合線28bとの間に形成された切込線28cを有していてもよい。かかる切込線28cを形成することにより、テザー28の両端部を起立させやすくすることができ、バッグ2の膨張時にテザー28に無駄な張力が生じず、第二チャンバ22を安定して膨張展開することができる。
【0033】
また、第一基布2a及び第二基布2bの外側には、バッグ2を高温高圧のガスから保護するための補強パッチ29が配置されていてもよい。補強パッチ29は、例えば、ガス供給口26から非膨張部27の範囲までの部分を保護するように縫合される。なお、補強パッチ29は、必要に応じて、配置する範囲を拡張又は縮小してもよいし、省略するようにしてもよい。
【0034】
上述したバッグ2は、車両衝突時や急減速時等の緊急時にインフレータ(図5参照)からガスが噴出されると、ガス供給口26、第一チャンバ21、ガス流路23、第二チャンバ22の順にガスが供給され、ウェビングWに沿って膨張展開する。このとき、ガス流路23の横幅B3が第一チャンバ21の横幅B1及び第二チャンバ22の横幅B2よりも小さく形成されていることから、図1(A)に示したように、第一チャンバ21の膨張高さh1及び第二チャンバ22の膨張高さh2は、ガス流路23の膨張高さh3よりも大きくなる。
【0035】
したがって、図1(A)及び図1(C)に示したように、第一チャンバ21及び第二チャンバ22の膨張によってガス流路23はδだけ乗員Mの表面からリフトアップされ、第一チャンバ21及び第二チャンバ22の間でブリッジ状に膨張展開することとなる。その結果、図2に示したように、バッグ2の膨張時に第一チャンバ21及び第二チャンバ22により乗員Mの胴部の下方及び上方を拘束することができる。
【0036】
特に、第一チャンバ21を乗員Mの腰部付近に膨張展開するように構成し、第二チャンバ22を乗員Mの肩部付近に膨張展開するように構成することにより、身体のうち比較的強度の高い部分(腰部及び肩部付近)で乗員Mを拘束することができ、比較的強度の低い部分(胸部や腹部)への負荷を低減することができる。
【0037】
また、本実施形態に係るエアベルト1によれば、ガス流路23を形成したことにより、バッグ2の中央部におけるバッグ容量、すなわち、バッグ2全体のバッグ容量を低減することができ、バッグ2の膨張展開時における内圧を高めることができる。したがって、後述するインフレータの出力も必要に応じて低減することができ、装置の小型化及びコストダウンを図ることができる。また、バッグ2の内圧を高めることにより、ガイドシート24cを省略することができる。
【0038】
次に、本発明の他の実施形態に係るエアベルト1について、図4を参照しつつ説明する。ここで、図4は、本発明の他の実施形態に係るエアベルトのバッグを示す平面図であり、(A)は第二実施形態、(B)は第三実施形態、を示している。なお、上述した第一実施形態に係るエアベルト1と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0039】
図4(A)に示した第二実施形態に係るエアベルト1に使用されるバッグ2は、第二チャンバ22の両端部がガス流路23の両脇に沿って延設された延設部221を有するものである。かかる構成によっても、第一チャンバ21のD−D断面における断面積及び第二チャンバ22のU−U断面における断面積よりもバッグ2のF−F断面における断面積(ガス流路23の断面積と延設部221の断面積との総和)を小さくすることができ、バッグ2の膨張時にガス流路23をリフトアップすることができる。
【0040】
かかる第二実施形態において、延設部221の長さは任意である。また、図示しないが、第一チャンバ21からガス流路23の両脇に沿って延設部を形成するようにしてもよい。第一チャンバ21の延設部は、第二チャンバ22の延設部221の代わりに形成してもよいし、第二チャンバ22の延設部221と一緒に形成してもよい。
【0041】
図4(B)に示した第三実施形態に係るエアベルト1に使用されるバッグ2は、二つのガス流路23を有するものである。具体的には、第一チャンバ21と第二チャンバ22との間に、環状の縫合線2eによって略中央部に非膨張部20を形成したものである。かかる非膨張部20を形成することにより、第一チャンバ21及び第二チャンバ22の外形を規制する縫合線2cとの間、すなわち、バッグ2の長手方向の両則部に沿って二つのガス流路23を形成することができる。
【0042】
かかる構成によっても、第一チャンバ21の断面積及び第二チャンバ22の断面積よりもバッグ2の略中央部における断面積(ガス流路23の断面積の総和)を小さくすることができ、バッグ2の膨張時にガス流路23をリフトアップすることができる。また、かかる第三実施形態では、バッグ2の略中央部に窪みを形成することができることから、この窪みに沿ってウェビングWを配置することができ、バッグ2の膨張時におけるウェビングWの位置をより安定させることができる。
【0043】
なお、バッグ2の膨張時において、ガス流路23を第一チャンバ21及び第二チャンバ22に対してリフトアップさせることができれば、ガス流路23の本数は一つや二つに限定されるものではなく、三つ以上であってもよい。
【0044】
次に、上述したエアベルト1を備えたエアベルト装置について、図5を参照しつつ説明する。ここで、図5は、本発明の一実施形態に係るエアベルト装置を示す全体構成図である。なお、上述したエアベルト1と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。また、図5において、説明の便宜上、車両用シートを一点鎖線で図示している。
【0045】
本実施形態に係るエアベルト装置10は、例えば、乗員Mが着座する車両用シート11に配置される。エアベルト装置10は、図5に示したように、乗員Mを拘束するウェビングWと、ウェビングWの巻き取りを行うリトラクタ3と、車体側に設けられウェビングWを案内するガイドアンカー4と、ウェビングWを車体側に固定するベルトアンカー5と、車両用シート11の側面に配置されたバックル6と、ウェビングWに配置されたタング7と、乗員Mの胴部を拘束するウェビングWに配置されるとともに緊急時にガスが供給されて膨張するバッグ2を有するエアベルト1と、エアベルト1にガスを供給するインフレータ8と、を備えている。
【0046】
図示したエアベルト装置10は、いわゆる運転席用のエアベルト装置であり、車両に搭載された車両用シート11は、一般に、乗員の背面に位置する背もたれ部11aと、乗員Mが着座する腰掛部11bと、を備えている。リトラクタ3は、例えば、車両の側部に配置されたピラー(図示せず)の内部に配置され、ガイドアンカー4は、例えば、ピラー(図示せず)の表面に配置される。ベルトアンカー5は、ドア側の車両又は腰掛部11bの底部に固定される。バックル6は、車両中央側の腰掛部11bの側面部に配置される。なお、リトラクタ3は、車両用シート11の背もたれ部11aの内部に配置されていてもよい。
【0047】
また、バックル6には、インフレータ8が配置されており、タング7をバックル6に接続することにより、インフレータ8からエアベルト1にガスを供給することができるように、インフレータ8とエアベルト1とが接続される。なお、エアベルト1にガスを供給する方法は、従来から使用されている方法を任意に選択して使用することができる。
【0048】
エアベルト1は、乗員Mの胴部を拘束するウェビングW、すなわち、ガイドアンカー4とタング7との間に位置するウェビングWに挿通されている。エアベルト1は、図示したように、通常時はバッグ2が折り畳まれた状態で収容されており、車両衝突時や急減速時等の緊急時には図2に示したようにバッグ2が膨張展開する。バッグ2は、例えば、上述した第一実施形態〜第三実施形態に示した構成を有している。
【0049】
したがって、本実施形態に係るエアベルト装置10によれば、図1(A)に示したように、ガス流路23の膨張高さh3を第一チャンバ21及び第二チャンバ22の膨張高さh1,h2よりも小さく形成したことにより、第一チャンバ21及び第二チャンバ22の膨張によってガス流路23がリフトアップされ、バッグ2の膨張時に第一チャンバ21及び第二チャンバ22により乗員Mの胴部の下方(腰部付近)及び上方(肩部付近)を拘束することができ、比較的強度の低い部分(胸部や腹部)への負荷を低減することができる。
【0050】
本発明は上述した実施形態に限定されず、例えば、助手席用シート、後部座席等の他の座席にも適用することができる等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0051】
1 エアベルト
2 バッグ
2a 第一基布
2b 第二基布
2c,2d,2e 縫合線
3 リトラクタ
4 ガイドアンカー
5 ベルトアンカー
6 バックル
7 タング
8 インフレータ
10 エアベルト装置
11 車両用シート
11a 背もたれ部
11b 腰掛部
20 非膨張部
21 第一チャンバ
22 第二チャンバ
23 ガス流路
24 ベルトガイド
24a 第一冊状基布
24b 第二冊状基布
24c ガイドシート
25 スリット
26 ガス供給口
27 非膨張部
28 テザー
28a,28b 縫合線
28c 切込線
29 補強パッチ
221 延設部

図1
図2
図3
図4
図5