特許第6576689号(P6576689)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576689
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】等速自在継手用ブーツの締結バンド
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/08 20060101AFI20190909BHJP
   F16D 3/84 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   F16B2/08 S
   F16D3/84 R
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-107447(P2015-107447)
(22)【出願日】2015年5月27日
(65)【公開番号】特開2016-223464(P2016-223464A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】友上 真
(72)【発明者】
【氏名】高部 真一
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 実公平04−049335(JP,Y2)
【文献】 特許第5188163(JP,B2)
【文献】 特開2011−112118(JP,A)
【文献】 特開平10−226865(JP,A)
【文献】 特開2014−162957(JP,A)
【文献】 特開平08−159108(JP,A)
【文献】 特開2012−237333(JP,A)
【文献】 特開2003−176890(JP,A)
【文献】 特開2005−290551(JP,A)
【文献】 特開2013−036071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B2/00−2/26
F16D1/00−9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき層を施した鋼板を母材に用いた締結バンドであって、
前記めっき層は、溶け出した成分によって、加工時や締付時に発生するめっき剥離部位における錆に対して保護被膜を形成する自己修復機能を有し、かつ、使用する鋼板は、引張強度270MPa以上でかつ破断時伸び30%以上に設定されて、等速自在継手用ブーツの締付が可能で締付けた際の締付力による破断を防止する機械的性質を呈することを特徴とする等速自在継手用ブーツの締結バンド。
【請求項2】
亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金めっき鋼板を母材に用いたことを特徴とする請求項1に記載の等速自在継手用ブーツの締結バンド。
【請求項3】
アルミニウムを4.0〜14.0質量%、マグネシウムを1.0〜10.0質量%とし、残りの成分を亜鉛としたことを特徴とする請求項2に記載の等速自在継手用ブーツの締結バンド。
【請求項4】
アルミニウムとマグネシウムとの含有量を15質量%以下として、亜鉛を85質量%以上としたことを特徴とする請求項3に記載の等速自在継手用ブーツの締結バンド。
【請求項5】
両端部が重ね合わされてリング状に丸められる帯状部材からなり、帯状部材の重なり部の外側部位に係合孔が設けられるとともに、帯状部材の重なり部の内側部位に前記係合孔と係合する突起が設けられ、かつ、帯状部材の一部に締付け用耳部を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の等速自在継手用ブーツの締結バンド。
【請求項6】
両端部が重ね合わされてリング状に丸められる帯状部材からなり、帯状部材の一端側に係合爪及び第1工具爪を設けるとともに、帯状部材の他端側に係合孔及び第2工具爪を設け、帯状部材をリング状に丸めて両端部を重ね合わせた状態から、前記第1工具爪と第2工具爪とを近接させることにより、縮径させて、係合爪を係合孔に係合させることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の等速自在継手用ブーツの締結バンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばドライブシャフトやプロペラシャフトに組み込まれる固定式および摺動式等速自在継手に取り付けられ、継手外部からの異物侵入や継手内部からの潤滑剤漏洩を防止するためのブーツを締め付ける締結バンドに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のエンジンから車輪に回転力を等速で伝達する手段として使用される等速自在継手には、固定式等速自在継手と摺動式等速自在継手の二種がある。これら両者の等速自在継手は、駆動側と従動側の二軸を連結してその二軸が作動角をとっても等速で回転トルクを伝達し得る構造を備えている。
【0003】
自動車のエンジンから駆動車輪に動力を伝達するドライブシャフトは、エンジンと車輪との相対的位置関係の変化による角度変位と軸方向変位に対応する必要があるため、一般的にエンジン側(インボード側)に摺動式等速自在継手を、駆動車輪側(アウトボード側)に固定式等速自在継手をそれぞれ装備し、両者の等速自在継手を中間シャフトで連結した構造を具備する。
【0004】
これら摺動式等速自在継手あるいは固定式等速自在継手では、継手内部に封入されたグリース等の潤滑剤の漏洩を防ぐと共に継手外部からの異物侵入を防止するため、等速自在継手の外側継手部材と中間シャフトとの間にブーツを装着している。この種のブーツは、金属製のブーツバンド(例えば、特許文献1〜特許文献4参照)で締め付けて外側継手部材および中間シャフトに固定することによりシール性が確保されている。
【0005】
特許文献1に記載の締結バンドは、図7に示すように、帯状部材1をリング状に丸めてその両端部を互いに内側と外側に重ねた状態で使用されるホースバンドである。このバンドは、帯状部材1の外側重なり部分1aに係止孔2を設けるとともに、帯状部材1の内側重なり部分1bに前記係止孔2に係合する突起3を設け、さらには、帯状部材1の長手方向の一部に締付け耳部4を設けたものである。また、内側重なり部分1aの先端部5が、先端側の板厚が減少するテーパ状に形成され、かつ、この先端部5には打ち抜き孔や切欠孔を設けたものである。そして、耳部4を塑性変形させることによって、縮径させるものである。
【0006】
また、引用文献2に記載のバンドは、図8に示すように、金属製の帯状のバンド6を両端部が重なるように丸め、そのバンド6の外側重なり部分6aに、係合孔9及び折り曲げによって外径方向に盛り上がる加締め突起7を設け、バンド6の内側重なり部分6bに係合孔9と係合する切り起こしの突起10を設けたものである。また、外側重なり部分6aの内面に内側重なり部分6bの先端と加締め突起7の加締め量に相当する間隔をおいて対向する突出部11を、その内面がバンド6の円筒形内面と連続するように設け、その突出部11の先端における高さをバンド6の板厚以上としている。この場合も、加締め突起7を塑性変形させることによって、縮径させるものである。
【0007】
引用文献3に記載のバンドは、図9(a)に示すように、帯状部材15の内側重なり部分15aに係合爪16及び第1の工具爪17を設けるとともに、帯状部材15の外側重なり部分15bに係合孔19及び第2の工具爪20を設けたものである。そして、図9(b)に示すように、第1の工具爪17と第2の工具爪20とを強制的に近接させることにより係合爪16と係合孔19を係止させるものである。
【0008】
特許文献4に記載のバンドは、図10(a)(b)に示すように、帯状部材15のブーツの外周に巻き付けた仮止め状態を保持する仮止め突起22と、仮止め状態から縮径方向に締め付けられた帯状部材15の締め付け状態を保持するロック突起23とを備えたものであり、さらには、ブーツに対する帯状部材15の空回りを規制する突起部24が内側重なり部の長さ方向に沿って形成されている。この場合も、内側重なり部分15bに設けられた第1の工具爪17と外側重なり部分15aに設けられる第2の工具爪20とを強制的に近接させることにより縮径させることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平3−51925号公報
【特許文献2】特開平8−159108号公報
【特許文献3】特開2012−237333号公報
【特許文献4】特開2012−237421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、前記文献に記載のバンドの材質(素材)としては、特許文献1ではステンレス鋼等の金属であり、特許文献2及び特許文献3では金属製と記載され、特許文献4では、材質(素材)についての記載はない。
【0011】
特許文献1に記載のようにステンレス鋼を用いれば、耐食性に優れて安定するが、コスト高となる。また、特許文献2及び特許文献3に記載されている金属についての特定はない。このようなものでは、強度や腐食性を考慮すれば、めっき鋼板が考えられる。しかしながら、一般的に知られるめっき鋼板を用いた場合、締結バンドを加工する際に母材を切断して形成するため切断端面部が露出し、その部位が腐食するため耐食性に劣る。すなわち、めっき鋼板を用いた場合、切断やプレスした際にめっきが剥がれ、その剥がれた部位が酸化する(錆びる)ことになる。また、締結バンドを加工後にめっき処理や塗装処理を施した場合、コストが高くなると共に、係合孔に突起を係合させるタイプの締結バンドでは、その接触部のめっきまたは塗装が剥がれ、耐食性に劣ることになる。
【0012】
そこで、本発明は、必要なシール性、防錆性、及び耐食性を確保できるとともに、低コスト化を図ることが可能な等速自在継手用ブーツの締結バンドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の等速自在継手用ブーツの締結バンドは、めっき層を施した鋼板を母材に用いた締結バンドであって、前記めっき層は、溶け出した成分によって、加工時や締付時に発生するめっき剥離部位における錆に対して保護被膜を形成する自己修復機能を有し、かつ、使用する鋼板は、引張強度270MPa以上でかつ破断時伸び30%以上に設定されて、等速自在継手用ブーツの締付が可能で締付けた際の締付力による破断を防止する機械的性質を呈するものである。
【0014】
等速自在継手用ブーツの締結バンドによれば、めっき層は自己修復機能を有するのであって、めっき層から溶け出した成分によって形成される保護被膜にてめっき剥離部位を覆うことができる。使用する鋼板の機械的性質が、引張強度270MPa未満かつ破断時伸び30%未満であれば、等速自在継手用ブーツを締付けた際に、その締付力によって破断するおそれがある。これに対して、本ブーツの締結バンドの使用する鋼板は、引張強度270MPa以上でかつ破断時伸び30%以上に設定されて、等速自在継手用ブーツの締付が可能で締付けた際の締付力による破断を防止する機械的性質を呈するものである。このため、この締付バンドにて等速自在継手用ブーツを締付けた際に、安定した締付力によって、等速自在継手用ブーツを固定することができる。
【0015】
亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金めっき鋼板を母材に用いるものが好ましい。この場合、アルミニウム−マグネシウムが溶け出すことになり、保護被膜として、アルミニウム−マグネシウムを含む緻密な亜鉛系保護被膜となる。
【0016】
この場合、アルミニウムを4.0〜14.0質量%、マグネシウムを1.0〜10.0質量%とし、残りの成分を亜鉛とすることができ、また、アルミニウムとマグネシウムとの含有量を15質量%以下として、亜鉛を85質量%以上とすることができる。
【0017】
両端部が重ね合わされてリング状に丸められる帯状部材からなり、帯状部材の重なり部の外側部位に係合孔が設けられるとともに、帯状部材の重なり部の内側部位に前記係合孔と係合する突起が設けられ、かつ、帯状部材の一部に締付け用耳部を設けたものとできる。
【0018】
両端部が重ね合わされてリング状に丸められる帯状部材からなり、帯状部材の一端側に係合爪及び第1工具爪を設けるとともに、帯状部材の一端側に係合孔及び第2工具爪を設け、帯状部材をリング状に丸めて両端部を重ね合わせた状態から、前記第1工具爪と第2工具爪とを近接させることにより、縮径させて、係合爪を係合孔に係合させるものであってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、切断端面部や係合接触部位において、めっき層が剥離した場合に、めっき層から溶け出した成分によって形成される保護被膜にてこの外部に露出した切断端面部や係合接触部位を覆うことができ、優れた防錆性及び耐食性を示すことになる。
【0021】
特に、アルミニウムを4.0〜14.0質量%、マグネシウムを1.0〜10.0質量%とし、残りの成分を亜鉛とすれば、アルミニウムとマグネシウムを含む緻密な亜鉛系保護被膜がめっき剥離部分を覆うことになる。
【0022】
締付バンドとして、加締め突起(締付け耳部)を有するいわゆるオメガバンド、係合孔に突起を係合させる引掛けバンド等の既存の種々の形態のものとすることができ、使用時に特殊な装着方法を採用する必要がなく、従来の締付バンドと同様の装着方法にて装着できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1の締結バンドを示し、(a)はリング状に丸めた状態での締付前の側面図であり、(b)はリング状に丸めた状態での締付後の側面図である。
図2】本発明の第2の締結バンドを示し、(a)はリング状に丸める前の平面図であり、(b)はリング状に丸める前の側面図である。
図3】本発明の第2の締結バンドを示し、(a)はリング状に丸めた状態での締付前の側面図であり、(b)はリング状に丸めた状態での締付後の側面図である。
図4】本発明の第3の締結バンドの側面図である。
図5】ドライブシャフトの断面図である。
図6】めっき層の作用を示し、(a)は切断端面部のめっき層が剥離した状態の拡大断面図であり、(b)が切断端面部に保護被膜が形成された状態の断面図であり、(c)は(b)の要部拡大断面図である。
図7】従来の第1の締結バンドの側面図である。
図8】従来の第2の締結バンドの側面図である。
図9】従来の第3の締結バンドを示し、(a)は締付前の側面図であり、(b)は締付後の側面図である。
図10】従来の第4の締結バンドを示し、(a)は締付前の側面図であり、(b)は締付後の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下本発明の実施の形態を図1図6に基づいて説明する。図5は、本発明に係る図1に示す等速自在継手用ブーツの締結バンドを用いたドライブシャフトである。このドライブシャフトは、固定式等速自在継手51と、摺動式等速自在継手52と、これらの等速自在継手を連結するシャフト50とを備える。この図例では、固定式等速自在継手51にバーフィールド型等速自在継手を用い、摺動式等速自在継手52にトリポード型等速自在継手を用いている。
【0026】
固定式等速自在継手51は、軸方向に延びる複数のトラック53が内球面54に形成された外側継手部材55と、軸方向に延びる複数のトラック56が外球面57に形成された内側継手部材58と、外側継手部材55のトラック53と内側継手部材58のトラック56との間に介在してトルクを伝達する複数のボール59と、外側継手部材55の内球面54と内側継手部材58の外球面57との間に介在してボール59を保持するケージ60とを備えている。
【0027】
摺動式等速自在継手52は、内周に軸線方向に延びる三本の溝61を設けると共に各溝61の内側壁に互いに対向するローラ案内面61aを設けた外側継手部材62と、半径方向に突出した3つの脚軸63を備えた内側継手部材としてのトリポード部材64と、前記脚軸63に回転自在に支持されると共に外側継手部材の溝61に転動自在に挿入されたトルク伝達手段としてのローラ65とを備える。この場合、ローラ65は脚軸63の外径面に周方向に沿って配設される複数のころ66を介して外嵌されている。なお、トリポード部材64は、ボス部67と、このボス部67から径方向に伸びる前記脚軸63とからなる。
【0028】
シャフト50は、その両端部に雄スプライン50a、50bが形成され、一方の雄スプライン50aが固定式等速自在継手51の内側継手部材58に嵌入され、他方の雄スプライン50bが摺動式等速自在継手52のトリポード部材64に嵌入される。内側継手部材58の軸心孔71に雌スプライン72が形成され、シャフト50の一方の雄スプライン50aが内側継手部材58の軸心孔71に嵌入されて、雌スプライン72に噛合する。また、シャフト50の他方の雄スプライン50bがトリポード部材64のボス部67の軸心孔73に嵌入されて、この軸心孔73の雌スプライン74に噛合する。
【0029】
そして、固定式等速自在継手51には外側継手部材55の開口部を密封するためのブーツ80Aが付設され、摺動式等速自在継手52には外側継手部材62の開口部を密封するためのブーツ80Bが付設されている。ブーツ80A,80Bは、大径の取付部80aと、小径の取付部80bと、大径の取付部80aと小径の取付部80bとを連結する屈曲部を構成する蛇腹部80cとからなる。ブーツ80A,80Bの大径の取付部80aは外側継手部材55,62の開口部側の外径面に形成されるブーツ装着部85,85で締結バンド82(82A,82B)により締め付け固定され、その小径の取付部80bはシャフト50の所定部位(ブーツ装着部86,86)で締結バンド83(83A、83B)により締め付け固定されている。
【0030】
締結バンド82(83)としては、図1から図4に示す種々のタイプのものを用いることができる。図1に示す第1の締結バンド82(83)は、両端部が重ね合わされてリング状に丸められる帯状部材90からなる。そして、帯状部材90の重なり部の外側部位90aに係合孔91を設けるとともに、帯状部材90の重なり部の内側部位90bに前記係合孔91と係合する突起92を設けている。また、帯状部材90の一部に締付け用耳部93を設けている。
【0031】
このため、図1(a)に示すように、リング状に丸めた状態において、耳部93を図1(b)に示すように、加締めることによって、リング状に丸めた帯状部材90が縮径し、係合孔91に突起92が係合し、大径の取付部80aと小径の取付部80bを締め付けた状態で等速自在継手51,52の外側継手部材55,62やシャフト50に装着できる。
【0032】
図2図3に示す締結バンド82(83)は、第2の締結バンドを示し、両端部が重ね合わされてリング状に丸められる帯状部材100からなり、帯状部材100の一端部100aに係合爪101及び第1工具爪102を設けるとともに、帯状部材100の他端部100bに係合孔103及び第2工具爪104を設けたものである。
【0033】
図3に示すように、帯状部材100をブーツにリング状に巻回して帯状部材100の一端部と他端部とを重ね合わせた状態から、図3(b)に示すように、第一の工具爪102と第二の工具爪104とを工具(図示せず)で強制的に近接させることにより係合爪101を係合孔103に嵌め込んでそれぞれの周縁部に係止させることでブーツ82,83を締め付けて等速自在継手51,52の外側継手部材55,62やシャフト50に固定するようにしている。
【0034】
また、図4に示す締結バンドは、いわゆる円環バンド105であり、円環状の帯を繋ぎ合わせたものである。
【0035】
そして、本願発明では、締結バンドとして、図6に示すように、めっき層110を施した鋼板111を母材に用いた。すなわち、図1に示す締結バンドでは帯状部材90にめっき層を施した鋼板111を用い、図2図3に示す締結バンドでは帯状部材100にめっき層を施した鋼板111を用い、図4に示す締結バンドでは、繋ぎあわせる円環状の帯にめっき層を施した鋼板111を用いた。
【0036】
めっき層110にめっき剥離部位(切断端面部等)が形成された場合、図6(a)に示すように、酸化して錆113が発生する。しかしながら、めっき層110では、図6(b)(c)に示すように、溶け出した成分によって切断端面部(めっき剥離部位)に保護被膜112を形成するものである。このように、このめっき層110は、自己修復性を具備するものである。ここで、めっき剥離部位とは、締結バンドを加工する際に母材を切断した切断端面部、プレスした際にめっきが剥がれた部位、また、係合孔に突起を係合させるタイプでは突起が係合孔に接触する接触部位、等である。
【0037】
このため、本発明では、切断端面部及び係合接触部位等のめっき剥離部位において、めっき層110から溶け出した成分によって形成される保護被膜にてこの外部に露出しためっき剥離部位を覆うことができ、優れた防錆性及び耐食性を示すことになる。
【0038】
めっき層110は、例えば、亜鉛にアルミニウム及びマグネシウムを添加したものであるZAM(日新製鋼株式会社の登録商標)で構成されている。すなわち、JIS G 3316に規定する質量分率で、5.0%から13.0%のアルミニウム、2.0%から4.0%のマグネシウム,その他元素の合計1.0%以下及び残部亜鉛からなるめっき浴において,両面等厚の溶融めっきを行った鋼板及び鋼帯(以下,板及びコイルという。)を用いることができる。
【0039】
すなわち、めっき層110は、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金であり、本願発明では、アルミニウムを4.0〜14.0質量%、マグネシウムを1.0〜10.0質量%とし、残りの成分を亜鉛としている。また、アルミニウムとマグネシウムとの含有量を15質量%以下として、亜鉛を85質量%以上とするのが好ましい。
【0040】
アルミニウムを4.0〜14.0質量%、マグネシウムを1.0〜10.0質量%とし、残りの成分を亜鉛とすれば、アルミニウムとマグネシウムを含む緻密な亜鉛系保護被膜が切断端面部を覆うことになる。このため、極めて優れた防錆性及び耐食性を示すことになる。アルミニウムとマグネシウムとの含有量を15質量%以下として、亜鉛を85質量%以上とすることによって、亜鉛系保護被膜を安定して形成することができる。
【0041】
なお、めっき層に、シリコン、チタン、ボロン等を含有していてもよい。この場合、シリコンは0.3質量%以下とし、チタンは0.1質量%以下とし、ボロン0.05質量%以下とするのが好ましい。
【0042】
めっき層に含まれるマグネシウムは、めっき層の最表層にマグネシウムを含む亜鉛系腐食生成物を形成させ、めっき層中のアルミニウムとともにめっき層の腐食速度を減少させる効果がある。この作用は、マグネシウムを含む亜鉛系腐食生成物が長期間安定にめっき層上に存在し、耐食性を劣化させる酸化亜鉛の形成が抑制されることによるものである。
【0043】
めっき層中の亜鉛,マグネシウムがマグネシウムを含む亜鉛系腐食生成物を形成するのに対し、めっき層中のアルミニウムは固着性の極めて強い亜鉛−アルミニウム系腐食生成物を形成し、耐食性の向上に寄与する。また、アルミニウムをめっき層中に含有させることでめっき層の凝固組織に亜鉛/アルミニウム/Zn2Mg三元共晶が出現する。この三元共晶組織は亜鉛/Zn2Mg二元共晶組織より組織が微細であるため、耐食性およびめっき層硬さの観点からも三元共晶組織の方が好ましい。
【0044】
チタン、ボロン等を含有させることによって、Ti,Bの添加により表面外観を害するZn11Mg2相の生成を抑制し、めっき層中に晶出するZn−Mg系金属間化合物を実質的にZn2Mgのみにすることができる。具体的には、Tiを0.001質量%以上含有させると効果的にZn11Mg2相の生成を抑制することができる。しかし、Tiが0.1質量%を超えるとめっき層中にTi−Al系析出物が成長し、めっき層に凹凸(プツ)が生じ、外観を損ねるようになる。好ましくは、0.002質量%以上とするのが良い。また、Bを0.001質量%以上含有させると効果的にZn11Mg2相の生成を抑制することができる。しかし、Bが0.05質量%を超えるとめっき層中にTi−B系析出物、AlB系析出物が成長し、めっき層に凹凸が生じ、外観を損ねるようになる。好ましくは、0.001質量%以上とするのが良い。また、シリコンは、めっき層と素地鋼との界面におけるAl−Fe合金層の成長を抑制する作用がある。この場合、シリコンとしては0.3質量%以下とするのが好ましい。
【0045】
鋼板の機械的性質として、引張強度270MPa以上でかつ破断時伸び30%以上とするのが好ましい。このように、設定することによって、この締付バンドにて等速自在継手用ブーツを締め付けた際に、安定した締付力によって、等速自在継手用ブーツを固定することができる。
【0046】
締付バンド82(83)として、加締め突起(締付け耳部93)を有するいわゆるオメガバンド、係合孔103に突起101を係合させる引掛けバンド等の既存の種々の形態のものとすることができ、使用時に特殊な装着方法を採用する必要がなく、従来の締付バンドと同様の装着方法にて装着できる。
【0047】
めっき層110を形成した後に、後処理として、無機系、有機系、リン酸処理等のクロムフリーの被膜成分による化成処理を行うのが好ましい。このような化成処理を行うことによって、耐食性がさらに向上し、疵付防止などの加工性、塗装後密着性が向上する、特に、無機系の被膜成分が、耐食性や加工性に対して優れる。
【0048】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、前記実施形態では、等速自在継手として、ドライブシャフトに用いるものであったが、プロペラシャフトに用いられる等速自在継手であってもよい。また、固定式等速自在継手として、ツェッパ型やバーフィールド型に限らずアンダーカットフリー型であってもよく、摺動式等速自在継手として、トリポード型に限らず、ダブルオフセット型、クロスグルーブ型等であってもよい。また、トリポード型等速自在継手の場合、シングルローラタイプであっても、ダブルローラタイプであってもよい。
【0049】
クロロプレンゴム、ウレタンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、アクリルエチレンゴム、シリコーンゴム等のゴムブーツであっても、ポリエステル系などの熱可塑性エラストマー等の樹脂ブーツであってもよい。
【0050】
また、材料として、ZAM材に限るものではなく、他の亜鉛めっき鋼板を用いることができる。すなわち、めっき層に含まれる亜鉛(Zn)が鉄(Fe)よりもイオン化傾向が大きいため、水中などの腐食環境下において、Feよりも先にZnが溶け出すことで、原板であるFeの腐食を防止するものであればよい。めっき処理の方法として、例えば、電気めっきや無電解めっき等を種々の従来の公知公用に方法を採用することができる。
【符号の説明】
【0051】
90 帯状部材
91 係合孔
92 突起
93 耳部
100 帯状部材
101 係合爪
102、104 工具爪
103 係合孔
105 円環バンド
110 めっき層
111 鋼板
112 保護被膜
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