(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576692
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】FOTのシールドケース
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20190909BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
H05K9/00 C
G02B6/42
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-108591(P2015-108591)
(22)【出願日】2015年5月28日
(65)【公開番号】特開2016-225400(P2016-225400A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】山形 智枝美
(72)【発明者】
【氏名】工藤 剛通
【審査官】
征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−071823(JP,A)
【文献】
実開昭56−096684(JP,U)
【文献】
特開2012−009749(JP,A)
【文献】
特開2002−023022(JP,A)
【文献】
特開2005−266130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K9/00
H05K5/00−5/06
G02B6/26−6/27;6/30−6/34;6/42−6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側を開放部とした方形筒状に形成されて、FOTに対して前記開放部から外嵌挿入して組付けられる金属製のシールドケースであって、
前記シールドケースは、その開放部と相対する閉止端をケース胴部の周壁の少なくとも1つの側壁の端縁に延設されて、該延設の根元となる基部から略直角に折り曲げた折曲片で構成し、
前記ケース胴部の周壁の他の側壁の端縁に、前記折曲片の自由端部を拘束する押え部が設けられ、
前記ケース胴部の周壁の前記折曲片を備えた側壁は、その周方向中央部で2分割してそれぞれ前記折曲片を備えた側壁要素として構成され、
前記側壁要素の双方の周方向端縁に略同一長さの袖片を延設して、前記袖片をケース内方向に略直角に折り曲げて重ね合わせることで隔壁を構成する
ことを特徴とするFOTのシールドケース。
【請求項2】
前記押え部は、前記ケース胴部の周壁の他の側壁の端縁に延設されて、該延設の根元となる基部から前記閉止端を構成する折曲片の自由端部上に亘って略直角に折り曲げて重ね合わされた押え片で構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のFOTのシールドケース。
【請求項3】
前記押え片は、前記折曲片の延設幅よりも短い延設幅に設定されている
ことを特徴とする請求項2に記載のFOTのシールドケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信に用いられるFOT(Fiber Optic Transceiver)のシールドケースに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信に用いられるFOTは、その周辺にある電気機器などから発生する電磁波などの電磁ノイズによって、動作が阻害されないように電磁ノイズ遮断用の金属製のシールドケースに収納するようにしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−266130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のシールドケースは、方形の扁平ブロック状に形成したFOTを収納可能なように一側を開放部とした方形の筒状に形成されており、この開放部からFOTに対して外嵌挿入して組付けるようにしている。
【0005】
このシールドケースは、ケース素材を順次折り曲げて構成されている。詳細にケース素材は、シールドケースの胴部に相当する周壁が一方向につながるような展開形状となっており、この一方向と直交する方向に延びる折曲片(開放部と反対側の閉止端となる片)が付加されたものとなっている。このようなケース素材は、金属プレートから打ち抜き加工により形成される。
【0006】
ところが、シールドケースの閉止端を構成する折曲片がスプリングバックしてその自由端部が浮き上がる傾向にあり、この折曲片の浮き上がりにより万一閉止端に隙間が発生すると、この隙間から外部電磁ノイズがケース内に侵入してFOTの電磁的耐性が損なわれる可能性がある。
【0007】
そこで、本発明はシールドケースの閉止端を構成する折曲片の浮き上がりによる隙間の発生を防止して、FOTの電磁的耐性を高めることができるシールドケースを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るFOTのシールドケースは、一側を開放部とした方形筒状に形成されて、FOTに対して前記開放部から外嵌挿入して組付けられる金属製のシールドケースであって、前記シールドケースは、その開放部と相対する閉止端をケース胴部の周壁の少なくとも1つの側壁の端縁に延設されて、該延設
の根元となる基部から略直角に折り曲げた折曲片で構成し、前記ケース胴部の周壁の他の側壁の端縁に、前記折曲片の自由端部を拘束する押え部が設けられ
、前記ケース胴部の周壁の前記折曲片を備えた側壁は、その周方向中央部で2分割してそれぞれ前記折曲片を備えた側壁要素として構成され、前記側壁要素の双方の周方向端縁に略同一長さの袖片を延設して、前記袖片をケース内方向に略直角に折り曲げて重ね合わせることで隔壁を構成することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るFOTのシールドケースによれば、折曲片の自由端部が押え部により拘束されてスプリングバックによる浮き上がりが抑制され、シールドケースの閉止端に隙間が発生するのを防止することができて、FOTの電磁的耐性を良好に維持することができる。
さらに、受光側と発光側の2つの独立したFOTを1つのシールドケースに収納して並設する場合に、隔壁によりそれぞれのFOTの受・発光信号の相互干渉を回避することができて信頼性を高めることができる。しかも、2分割した側壁要素に延設した袖片で隔壁を構成できるため設計が容易で、特にシールドケースを1枚の金属プレートをもって所要の展開形状のケース素材として打ち抜き成形して構成する場合に有効である。
【0010】
また、本発明に係るFOTのシールドケースにおいて、前記押え部は、前記ケース胴部の周壁の他の側壁の端縁に延設されて、該延設
の根元となる基部から前記閉止端を構成する折曲片の自由端部上に亘って略直角に折り曲げて重ね合わされた押え片で構成されていることが好ましい。
【0011】
このFOTのシールドケースによれば、押え部がケース胴部の周壁の他の側壁の端縁に延設されているため、押え部をシールドケースの他の部位と一体化でき、別部材からなる専用の押え部を不要としてコスト的に有利とすることができる。また、押え部は、折曲片の自由端部上に亘って略直角に折り曲げて重ね合わされた押え片で構成されるため、自由端に亘って押え機能を発揮できると共に、自由端側のケース隙間を塞ぐこととなりシールド機能の向上を図ることができる。
【0012】
また、本発明に係るFOTのシールドケースにおいて、前記押え片は、前記折曲片の延設幅よりも短い延設幅に設定されていることが好ましい。
【0013】
このFOTのシールドケースによれば、シールドケースを1枚の金属プレートをもって所要の展開形状のケース素材として打ち抜き成形して構成する場合に、金属プレートの折曲片を打ち抜く側部の面積内で該折曲片と共に押え片を打ち抜き成形できるため、金属プレートの拡幅を伴うことがなく製造コストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、折曲片の自由端部が押え部により拘束されてスプリングバックによる浮き上がりが抑制され、シールドケースの閉止端に隙間が発生するのを防止することができて、FOTの電磁的耐性を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係るFOTとそのシールドケースの第1実施形態を分解して示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すシールドケースの展開説明図である。
【
図3】シールドケースの第2実施形態を示す斜視図である。
【
図5】
図3に示すシールドケースの展開説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明するが、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係るFOTとそのシールドケースの第1実施形態を分解して示す斜視図である。
図2は、
図1に示すシールドケースの展開平面図である。
図1に示す第1実施形態のFOT1は、発光側と受光側とにそれぞれ独立して構成されている。
【0020】
発光側,受光側の各FOT1は、方形の扁平ブロック状に形成した樹脂製のパッケージ2を主体として、その相対する一対の端部にリードフレームを構成する複数本のリードピン3とアース用の導電金属プレートの耳片4とを外方に突出させた状態で一体にモールド成形している。
【0021】
パッケージ2の前面側には図外の光ファイバが接続される導光部材の光軸上に透光孔5が開設されている。また、該パッケージ2には発光素子又は受光素子が搭載されたサブ回路基板が内蔵されており、サブ回路基板上の受光素子又は発光素子が透光孔5を通して光信号を受発光するようになっている。
【0022】
図1に示す例では、FOT1を図外のメイン回路基板上に電磁ノイズ遮断用の金属製のシールドケース6と共に直立して実装する仕様としている。このため、パッケージ2の下端部に上述のリードピン3を下方に突出して配置してこれをメイン回路基板上に半田付けするようにしている。一方、FOT1は、パッケージ2の上端部の長さ方向両側部に離間して上述の一対の耳片4を上方に突出して配置した構成となっている。耳片4は、製造上の関係から、パッケージ2の上端面から上方に突出する。
【0023】
一方、シールドケース6は下側が開放した方形の筒状に形成されている。また、このシールドケース6は、FOT1に対してパッケージ2の耳片4を突出配置した上端部側から外嵌挿入される。これにより、FOT1をシールドケース6内に収納して全体的に被覆し、周辺で発生する外部電磁ノイズを遮断するようにしている。
【0024】
なお、シールドケース6の前面には、FOT1の透光孔5に対応した透光孔7が開設され、下側の開放部周縁にはメイン回路基板に対する固定を兼ねた複数のアース用の脚部8を設けてある。
【0025】
また、
図1及び
図2に示すように、シールドケース6の下側の開放部と相対する上側の閉止端10は、ケース胴部の周壁11の少なくとも1つの側壁11aの端縁に延設されて、該延設基部から略直角に折り曲げた折曲片12で構成している。
【0026】
一方、ケース胴部の周壁11の他の側壁11bの端縁には、前記折曲片12の自由端部を拘束する押え部13が設けられている。
【0027】
本実施形態において、上述の折曲片12はケース胴部の周壁11の前側壁11aの上端縁に延設されている。一方、押え部13は、後側壁11bの上端縁に延設されている。このため、押え部13は、該延設基部から前記折曲片12の自由端部上に亘って略直角に折り曲げて重ね合わされた押え片14で構成されていることとなる。
【0028】
この押え片14の延設幅W2は、折曲片12の延設幅W1よりも短く(W1>W2)設定されている(
図2参照)。
【0029】
このようなシールドケース6は、1枚の帯状の金属プレート20から打ち抜き加工によって形成されたケース素材21を順次折り曲げることによって構成される。このようなケース素材21は、ケース胴部の周壁11である前側壁11a、後側壁11b、左右の側壁11c、11dが一方向に展開された形状となっており、これにケース閉止端10となる折曲片12と押え片14等が付加された形状となっている。そして、このケース素材21から前記周壁11と折曲片12及び押え片14とを順次ロール加工等によって
図2に一点鎖線で示す区分位置から略直角に折り曲げて、一側を開放部とした方形筒状に形成することができる。
【0030】
図2に示す例では、ケース胴部の周壁11の後側壁11bに板ばね片15を切り起こし成形し、シールドケース6をFOT1に外嵌挿入して組付けた際にこの板ばね片15により前述のパッケージ2の背面を透光孔5側へ押し付けて保持するようにしている。
【0031】
このようにして、本実施形態に係るFOT1のシールドケース6によれば、前側壁11aの折曲片12の自由端部が押え部13により拘束されてスプリングバックによる浮き上がりが抑制される。従って、シールドケース6の閉止端10に隙間が発生するのを防止することができて、FOT1の電磁的耐性を良好に維持することができる。
【0032】
また、押え部13がケース胴部の周壁11の他の側壁11bの端縁に延設されているため、押え部13をシールドケース6の他の部位10,11と一体化でき、別部材からなる専用の押え部を不要としてコスト的に有利とすることができる。また、押え部13は、折曲片12の自由端部上に亘って略直角に折り曲げて重ね合わされた押え片14で構成されるため、自由端に亘って押え機能を発揮できると共に、自由端側のケース隙間を塞ぐこととなりシールド機能の向上を図ることができる。
【0033】
また、押え片14は、折曲片12の延設幅W1よりも短い延設幅W2に設定されているため、シールドケース6を1枚の金属プレートをもって所要の展開形状のケース素材21として打ち抜き成形して構成する場合に、金属プレート20の折曲片12を打ち抜く側部の面積内で該折曲片12と共に押え片14を打ち抜き成形できるため、金属プレートの拡幅を伴うことがなく製造コストを抑えることができる。
【0034】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態に係るシールドケースは、第1実施形態のものと同様であるが、構成が一部異なっている。以下、第1実施形態との相違点を説明する。
【0035】
図3は、シールドケースの第2実施形態を示す斜視図であり、
図4は、
図3のA−A線に沿う断面図である。また、
図5は、
図3に示すシールドケースの展開説明図である。
【0036】
まず、第1実施形態においてシールドケース6は、受光側と発光側のFOT1のそれぞれを収納する独立した構成となっていた。これに対して、第2実施形態に係るシールドケース6Aは、
図3〜
図5に示すように、1つのシールドケース6Aにこれら受・発光側の2つのFOT1を収納する横長構造とされている。
【0037】
このため、第2実施形態のシールドケース6Aではケース胴部の周壁11の2つの前側壁11aに、受・発光側の2つのFOT1の透光孔5、5に対応する2つの透光孔7、7が設けられている。
【0038】
また、特に本実施形態ではこの前側壁11aを長さ方向(周壁11の周方向)中央部で2分割してそれぞれ上端縁に折曲片12を備えた2つの側壁要素11a
1、11a
2として構成し、それらの分割端縁(周方向端縁)のそれぞれに袖片16を延設している(
図5参照)。そして、これら2つの袖片16をケース内方向に略直角に折り曲げて背合わせ状に重ね合わせて、受・発光側の2つのFOT1の収納部を区画する隔壁17を構成している(
図4参照)。
【0039】
このようにして、第2実施形態に係るシールドケース6Aによれば、第1実施形態と同様に、FOT1の電磁的耐性を良好に維持することができる。また、別部材からなる専用の押え部を不要としてコスト的に有利とすることができ、自由端側のケース隙間を塞ぐこととなりシールド機能の向上を図ることができる。さらに、金属プレートの拡幅を伴うことがなく製造コストを抑えることができる。
【0040】
加えて、第2実施形態によれば、受光側と発光側の2つの独立したFOT1を1つのシールドケース6Aに収納して並設する場合に、隔壁17によりそれぞれのFOT1の受・発光信号の相互干渉を回避することができて信頼性を高めることができる。しかも、2分割した側壁要素に延設した袖片16で隔壁17を構成できるため設計が容易で、特にシールドケース6Aを1枚の金属プレート20をもって所要の展開形状のケース素材21として打ち抜き成形して構成する場合に有効である。
【0041】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能な範囲で各実施形態に記載の技術を組み合わせてもよい。
【0042】
例えば、上記実施形態において折曲片12を前側壁11aの上端縁に、及び押え片14を後側壁11bの上端縁に延設した例を説明したが、これに限らず、前側壁11a及び後側壁11b以外にそれぞれが延設されていてもよい。加えて、折曲片12は、複数の側壁11から延設されてもよいし、押え部13についても複数の側壁11から延設されてもよい。一例を挙げると、折曲片12を前側壁11aの上端縁と左右の側壁11c,11dの上端縁に延設してこれらで閉止端10を構成し、後側壁11bの上端縁に延設した1つの押え片14で3つの折曲片12の自由端部を同時に拘束するようにしてもよい。さらには、押え部13は、別体の素材により構成してもよい。
【0043】
また、第2実施形態において、袖片16は2つ設けられているが、これに限らず、1つであってもよい。さらに、上記実施形態において、FOT1は、受光側と発光側とでそれぞれ独立したタイプのものを示しているが、これに限らず、受・発光部併設タイプとして構成したものに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0044】
1…FOT
2…パッケージ
3…リードピン
5…透光孔
6、6A…シールドケース
7…透光孔
8…アース用の脚部
10…閉止端
11…ケース胴部の周壁
11a…前側壁(1つの側壁)
11a
1、11a
2…分割した側壁要素
11b…後側壁(他の側壁)
12…折曲片
13…押え部
14…押え片
16…袖片
17…隔壁
20…金属プレート
21…ケース素材
W1…折曲片の延設幅
W2…押え片の延設幅