特許第6576730号(P6576730)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6576730-クランクプレスの制御方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576730
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】クランクプレスの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/14 20060101AFI20190909BHJP
   B30B 1/26 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   B30B15/14 N
   B30B1/26 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-153954(P2015-153954)
(22)【出願日】2015年8月4日
(65)【公開番号】特開2017-30025(P2017-30025A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】木下 裕次
(72)【発明者】
【氏名】中谷 京治
(72)【発明者】
【氏名】寺川 智道
(72)【発明者】
【氏名】志井 里衣
【審査官】 石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−091682(JP,A)
【文献】 実開昭59−190500(JP,U)
【文献】 特開2004−025191(JP,A)
【文献】 特開2013−027910(JP,A)
【文献】 特開平10−263900(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0007141(US,A1)
【文献】 特開2001−300794(JP,A)
【文献】 特許第5474998(JP,B2)
【文献】 特許第5529013(JP,B2)
【文献】 特許第3162150(JP,B2)
【文献】 実開昭55−17675(JP,U)
【文献】 特許第5934673(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/14
B30B 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータで回転駆動されるフライホイールと、プレス本体に両端部を回転自在に支持されたクランクシャフトとをクラッチで連結することにより、前記フライホイールの回転エネルギーで前記クランクシャフトを回転させてプレス作業を行うクランクプレスの制御方法において、
前記モータで回転駆動されているフライホイールとクランクシャフトとをクラッチで連結したときは、前記クランクシャフトとの連結により減速したフライホイールの回転数クランクシャフトとの連結前の回転数に戻るまで増速する間、前記モータのトルクが予め設定した上限値を超えないように制御することを特徴とするクランクプレスの制御方法。
【請求項2】
前記フライホイールの回転数がクランクシャフトとの連結前の回転数に戻るまでの間に前記モータのトルクが前記上限値に達したときは、前記モータを一時的に停止させ、前記モータ停止から一定時間経過後にモータを再起動することを特徴とする請求項1に記載のクランクプレスの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータで回転駆動されるフライホイールとクランクシャフトとをクラッチで連結することにより、クランクシャフトを回転させてプレス作業を行うクランクプレスの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クランクプレスは、図1に示すように、モータ1で回転駆動されるフライホイール2と、プレス本体3に両端部を回転自在に支持されたクランクシャフト4とをクラッチ5で連結して、フライホイール2の回転エネルギーでクランクシャフト4を回転させることにより、クランクシャフト4にコネクティングロッド6を介して連結されたスライド7を上下に往復動させて、スライド7とその下方のボルスタ8にそれぞれ取り付けられた上下の金型(図示省略)でワークの加工(プレス作業)を行うものが多い(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
ところで、上記のようなクランクプレスでは、フライホイールとクランクシャフトとをクラッチで連結すると、その瞬間にモータがフライホイールとともにクランクシャフトも回転駆動するようになり、モータの駆動対象物のGD(GDスクエア)が急に大きくなるので、フライホイールは減速することになる。
【0004】
そして、フライホイールが減速すると、通常は、モータの電流値を上昇させて、フライホイールの回転数(回転エネルギー)をクランクシャフトとの連結前の回転数に復帰させるように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−27910号公報
【特許文献2】特開2013−27911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記のような従来の制御方法を採用しているクランクプレスでは、フライホイールがクランクシャフトとの連結によって大きく減速した場合に、モータの電流値が急激に上昇して、モータの発熱の程度を表す指標(例えば、電流値と時間の積の累積値)がモータ毎に設定されている上限値を超えることにより、モータがオーバーヒートして熱的な問題を生じ、モータ自体やその周りの制御機器に不具合が発生することがある。
【0007】
これに対し、モータの発熱程度を表す指標の上限値を大きくすれば、モータのオーバーヒートを防止することができるが、そのためにはモータのサイズアップが必要となる。また、フライホイールの容量を大きくすれば、クランクシャフトとの連結による減速が小さくなるので、モータの電流値の上昇が抑えられ、モータのオーバーヒートが生じにくくなるが、この場合はフライホイールのサイズが大きくなってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、クランクプレスのフライホイールとクランクシャフトとをクラッチで連結したときのモータのオーバーヒートを防止できる制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、モータで回転駆動されるフライホイールと、プレス本体に両端部を回転自在に支持されたクランクシャフトとをクラッチで連結することにより、前記フライホイールの回転エネルギーで前記クランクシャフトを回転させてプレス作業を行うクランクプレスの制御方法において、前記モータで回転駆動されているフライホイールとクランクシャフトとをクラッチで連結したときは、前記フライホイールの回転数がクランクシャフトとの連結前の回転数に戻るまでの間、前記モータのトルクが予め設定した上限値を超えないように制御するようにした。
【0010】
すなわち、モータで回転駆動されているフライホイールとクランクシャフトとをクラッチで連結した時点から、クランクシャフトとの連結によって減速されたフライホイールの回転数がクランクシャフトとの連結前の回転数に戻るまでの間、モータのトルクを所定の上限値以下に抑えることにより、フライホイールが大きく減速した場合でも、モータの電流値が大きく上昇することがなく、モータのオーバーヒートを防止できるようにしたのである。
【0011】
ここで、前記フライホイールの回転数がクランクシャフトとの連結前の回転数に戻るまでの間に前記モータのトルクが前記上限値に達したときは、前記モータを一時的に停止させ、前記モータ停止から一定時間経過後にモータを再起動するようにすれば、モータの電流値が一時的にゼロになるので、より確実にモータのオーバーヒートを防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のクランクプレスの制御方法は、上述したように、モータで回転駆動されているフライホイールとクランクシャフトとをクラッチで連結したときは、その連結の時点からフライホイールの回転数がクランクシャフトとの連結前の回転数に戻るまでの間、モータのトルクを制限することにより、モータの電流値の上昇を抑えるようにしたものであるから、モータのサイズアップやフライホイールの容量アップを行うことなく、モータのオーバーヒートを防止することができ、クランクプレスの運転を従来よりも安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一般的なクランクプレスの構成概略図
図2】第1実施形態のクランクプレスの制御方法によるモータ電流の挙動を示すグラフ
図3】第2実施形態のクランクプレスの制御方法によるモータ電流の挙動を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。本発明の第1および第2の実施形態の制御方法では、前述の図1に示したクランクプレスを制御の対象とする。このクランクプレスは、モータ1で回転駆動されるフライホイール2と、プレス本体3に両端部を回転自在に支持されたクランクシャフト4と、フライホイール2とクランクシャフト4の接続(連結)と切断を切り換えるクラッチ5と、クランクシャフト4の制動を行うブレーキ9とを備えている。
【0015】
前記モータ1は、ベルト10を介してフライホイール2を回転駆動するようになっている。このモータ1には、サーボモータやインバータモータを用いることができる。
【0016】
前記プレス本体3は、上部フレーム11と下部フレーム12とが、クランクシャフト4の両端部を支持する両側のサイドフレーム13を挟んだ状態で、タイロッド14とナット15によって連結されている。また、前記クランクシャフト4の長手方向中央部にはスライド7がコネクティングロッド6で連結され、下部フレーム12の上面にはボルスタ8が固定されている。
【0017】
前記クラッチ5は、エア圧供給装置16からエア圧を付与されるピストン式のシリンダ5aと、クランクシャフト4の一端に取り付けられる摩擦プレート5bとからなり、エア圧供給装置16が所定値以上のエア圧を付与すると(クラッチ5を入れると)、シリンダ5aでフライホイール2を摩擦プレート5bに押し付けることにより、フライホイール2とクランクシャフト4とを連結して、フライホイール2の回転エネルギーをクランクシャフト4に伝達するものである。そして、エア圧供給装置16が付与するエア圧を所定値より小さくすると(クラッチ5を切ると)、フライホイール2が摩擦プレート5bから離れ、フライホイール2とクランクシャフト4とが切断されるようになっている。
【0018】
このクランクプレスは、上記の構成であり、ブレーキ9を切った状態で、フライホイール2とクランクシャフト4とをクラッチ5で連結して、フライホイール2の回転エネルギーでクランクシャフト4を回転させることにより、クランクシャフト4に連結されたスライド7を上下に一定のストロークで往復動させて、スライド7とボルスタ8にそれぞれ取り付けられた上下の金型(図示省略)でワークの加工(プレス作業)を行うようになっている。
【0019】
次に、上記のクランクプレスにおいて、モータ1で回転駆動されているフライホイール2とクランクシャフト4とをクラッチ5で連結したときに行う実施形態の制御方法について説明する。
【0020】
まず、第1実施形態の制御方法では、クラッチ5を入れてフライホイール2とクランクシャフト4を連結した時点から、フライホイール2の回転数がクランクシャフト4との連結前の回転数に戻るまでの間、モータ1のトルクが予め設定した上限値を超えないように制御する。
【0021】
すなわち、モータ1の電流値は、図2に示すように、クラッチ5を入れた直後は、クランクシャフト4との連結により減速したフライホイール2の回転数を連結前の回転数に復帰させるために、従来の制御方法(図中の点線)と同様に上昇していくが、これに比例して上昇したモータ1のトルクが前記の上限値に達すると(図中のT)、その後はトルクが上限値を超えないように一定に保たれる。そして、この一定の電流値(トルク)で増速されるフライホイール2の回転数が所定値に達した時点(図中のT)から電流値は低下していき、フライホイール2の回転数が連結前の回転数に復帰すると、この制御は終了する。
【0022】
したがって、このクランクプレスの制御方法では、従来の制御方法に比べて、フライホイール2の回転数の復帰に多少時間はかかるが、フライホイール2が大きく減速した場合でも、モータ1の電流値の上昇を抑えてオーバーヒートを防止することができる。
【0023】
また、第2実施形態の制御方法では、第1実施形態の制御に加えて、フライホイール2の回転数がクランクシャフト4との連結前の回転数に戻るまでの間に、モータ1のトルクが前記上限値に達したときは、モータ1を一時的に停止させ、モータ1停止から一定時間経過後にモータ1を再起動する。すなわち、図3に示すように、モータ1のトルクが上限値に達したときに電流値を一時的にゼロにするので、第1実施形態よりも確実にモータ1のオーバーヒートを防止できる。
【0024】
そして、上述した第1実施形態または第2実施形態の制御方法を適用したクランクプレスは、モータ1のオーバーヒートに起因するトラブルが生じにくく、安定性の高い運転ができるものとなるし、モータ1のオーバーヒート防止のためにモータ1のサイズアップやフライホイール2の容量アップを行う必要がないので、全体としてコンパクトなものとすることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 モータ
2 フライホイール
3 プレス本体
4 クランクシャフト
5 クラッチ
9 ブレーキ
図1
図2
図3