特許第6576766号(P6576766)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576766
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】温度センサ
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/08 20060101AFI20190909BHJP
   G01K 1/18 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   G01K1/08 R
   G01K1/08 Q
   G01K1/18
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-189235(P2015-189235)
(22)【出願日】2015年9月28日
(65)【公開番号】特開2017-67458(P2017-67458A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 昭
(74)【代理人】
【識別番号】100116090
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 和彦
(72)【発明者】
【氏名】宮原 明宏
(72)【発明者】
【氏名】大矢 誠二
(72)【発明者】
【氏名】大矢 俊哉
【審査官】 平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−030030(JP,A)
【文献】 特開2006−234632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00−19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度によって電気的特性が変化する感温部と該感温部から後端側に延びる一対の素子電極線とを有する感温素子と、
前記感温素子の後端側に配置され、前記素子電極線に接続されるシース芯線と該シース芯線を絶縁材の間に内包するシース外管とを有するシース部材と、
先端側が閉塞して軸線方向に延びる筒状をなし、自身の内部空間に、少なくとも前記感温素子、及び前記素子電極線と前記シース芯線との接合部を収納する金属部材と、
を備える温度センサにおいて、
前記金属部材は、前記軸線方向に平行で前記感温部を収容するストレート部と、該ストレート部よりも先端側に位置し前記軸線方向の断面が円弧形状の先端部と、該先端部から後端側に延びて前記ストレート部に接続する接続部と、を有し、
前記感温部の先端向き面は平面形状をなし、
前記軸線方向に沿う断面において、前記ストレート部の外径と同一直径の仮想円であって、該ストレート部の両外縁又はそれらの延長線に接すると共に、自身の中心が前記感温部の最先端と前記軸線方向の同じ位置にある仮想円を描いたとき、
前記先端部の曲率半径は前記仮想円の曲率半径よりも小さいと共に、前記先端部の外縁は前記仮想円のうち前記中心よりも先端側の第1半円の内側に配置されていることを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
前記先端部の外縁は、前記中心から先端側へ向かって前記仮想円の半径の1/2の長さよりも先端側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の温度センサ。
【請求項3】
前記感温部の少なくとも一部は、前記仮想円のうち前記中心よりも後端側の第2半円の内側に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の温度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーミスタ素子やPt抵抗体素子等の感温素子を備えた温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の排気ガス等の温度を検出する温度センサとして、サーミスタやPt抵抗体等の抵抗の温度変化を利用したものが知られている。
図4に示すように、このような温度センサは、一般的にサーミスタ素子100Aとシース部材200とを溶接して金属チューブ300Aの内部に収容し、さらに金属チューブ300A内の隙間にアルミナ等のセメント400を充填して構成されている(特許文献1参照)。金属チューブ300Aは、軸線方向に平行な筒部本体301Aの先端側に半球状(断面が円弧状)の先端部302Aを一体に深絞り加工して形成されている。
又、図5に示すように、サーミスタ素子100Bの先端側を平面状とし、この形状に合わせて金属チューブ300Bの先端部302Bをほぼ平面形状とした温度センサも知られている(特許文献2参照)。さらに、図6に示すように、筒部本体301Cの先端側をテーパ状に尖らせ、テーパ部303Cの先端に小径の半球状(断面が円弧状)の先端部302Cを設けた金属チューブ300Cを有する温度センサも知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−286789号公報(図2
【特許文献2】特開2008−256471号公報(図2
【特許文献3】特開2006−30030号公報(図2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図4図6に示すような特許文献1、3記載の温度センサの場合、サーミスタ素子100A、100Cの先端側が丸い(断面が円弧状である)ため、各金属チューブの先端部302A、302Cの内面形状に各サーミスタ素子100A、100Cの先端形状が類似している。このため、各金属チューブの内面に各サーミスタ素子100A、100Cを軸線方向に距離G1まで近付けて収納することができ、センサの応答性を良好にすることができる。
しかしながら、図4の破線に示すように、サーミスタ素子100Aに代えて、先端側が平面状のサーミスタ素子100Bを用いた場合、金属チューブ300Aの先端部302Aの内面形状とサーミスタ素子100Bの先端形状とが大きく異なり、金属チューブ300Aの内面にサーミスタ素子100Bを近付けると両者が干渉してしまう。そのため、金属チューブ300Aとサーミスタ素子100Bとを離間させなければならず、両者の軸線方向の距離G2が距離G1よりも大きくなってセンサの応答性が低下するという問題がある。
【0005】
一方、図5に示した特許文献2記載の温度センサの場合、金属チューブ300Bの先端部302Bの内面形状とサーミスタ素子100Bの先端形状とが類似するので、金属チューブ300Bの内面にサーミスタ素子100Bを近付けて収納することができる。ところが、金属チューブ300Bの先端部302Bが平面状であると、半球状である場合に比べて強度が低くなるため、冷熱サイクルのような熱応力が加わったときに先端部302Bが変形して割れ易くなるという問題がある。
【0006】
従って、本発明は、センサの応答性と、感温素子を収納する筒状の金属部材の強度とを共に向上させた温度センサの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の温度センサは、温度によって電気的特性が変化する感温部と該感温部から後端側に延びる一対の素子電極線とを有する感温素子と、前記感温素子の後端側に配置され、前記素子電極線に接続されるシース芯線と該シース芯線を絶縁材の間に内包するシース外管とを有するシース部材と、先端側が閉塞して軸線方向に延びる筒状をなし、自身の内部空間に、少なくとも前記感温素子、及び前記素子電極線と前記シース芯線との接合部を収納する金属部材と、を備える温度センサにおいて、前記金属部材は、前記軸線方向に平行で前記感温部を収容するストレート部と、該ストレート部よりも先端側に位置し前記軸線方向の断面が円弧形状の先端部と、該先端部から後端側に延びて前記ストレート部に接続する接続部と、を有し、前記感温部の先端向き面は平面形状をなし、前記軸線方向に沿う断面において、前記ストレート部の外径と同一直径の仮想円であって、該ストレート部の両外縁又はそれらの延長線に接すると共に、自身の中心が前記感温部の最先端と前記軸線方向の同じ位置にある仮想円を描いたとき、前記先端部の曲率半径は前記仮想円の曲率半径よりも小さいと共に、前記先端部の外縁は前記仮想円のうち前記中心よりも先端側の第1半円の内側に配置されていることを特徴とする。


【0008】
この温度センサによれば、金属部材の先端部を比較的小さい曲率半径の球状(軸線方向の断面が円弧形状)とすることができるので、先端部を平面状とした場合に比べて強度が高くなり、冷熱サイクルのような熱応力が加わったときに先端部が変形して割れることを抑制することができる。
さらに、先端部の外縁が第1半円の内側に配置されているので、先端向き面が平面状の感温部であっても、この感温部を金属部材の先端部の内面に軸線方向に近付けて収納することができ、センサの応答性を良好にすることができる。なお、「第1半円の内側に配置されている」とは、第1半円の周上も含む。
【0009】
本発明の温度センサにおいて、前記先端部の外縁は、前記中心から先端側へ向かって前記仮想円の半径の1/2の長さよりも先端側に配置されていてもよい。
先端部の外縁が仮想円の半径の1/2の長さよりも後端側に配置されている場合、先端部とストレート部との間の接続部の軸線方向の長さが短くなる。このため、接続部が平面に近い形状になるので、接続部の強度が低下し、冷熱サイクルのような熱応力が加わったときに接続部から金属部材が変形して割れ易くなることがある。これに対し、この温度センサによれば、接続部の強度を向上させて金属部材が割れることをより一層抑制することができる。
【0010】
本発明の温度センサにおいて、前記感温部の少なくとも一部は、前記仮想円のうち前記中心よりも後端側の第2半円の内側に配置されていてもよい。
感温部が第2半円の後端側における外側に配置されている場合、金属部材の先端部の内面と感温部との軸線方向の距離が大きくなり、センサの応答性が低下することがある。これに対し、この温度センサによれば、センサの応答性をより一層向上させると共に、感温部の破損を抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、センサの応答性と、感温素子を収納する筒状の金属部材の強度とを共に向上させた温度センサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態に係る温度センサの一部を軸線方向に沿って破断した断面構造図である。
図2図1の部分拡大図である。
図3】本発明の第2の実施形態に係る温度センサの一部を軸線方向に沿って破断した断面構造図である。
図4】従来の温度センサの断面の部分拡大図である。
図5】従来の別の温度センサの断面の部分拡大図である。
図6】従来のさらに別の温度センサの断面の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る温度センサ1の一部を軸線O方向に沿って破断した断面構造を示す。なお、第1の実施形態に係る温度センサ1は、金属部材30の後端側からシース部材20が収納される態様である。
温度センサ1は、内燃機関の排気管の側壁の開口部(図示せず)に挿通して取付けられ、自動車の排気ガスの温度を検出する。そして、排気ガスの温度が0℃前後の低温域から1000℃前後の高温域まで急激に変化するのに伴って、温度センサ1も上記温度範囲内で上昇−冷却する冷熱サイクルを受ける。
【0014】
温度センサ1は、Pt抵抗体素子(感温素子)10と、Pt抵抗体素子10に接続されるシース部材20と、Pt抵抗体素子10及びシース部材20を収容する有底筒状の金属部材(本実施形態では、SUS310Sを使用)30と、金属部材30の外周に嵌合される取付け部50と、取付け部50の外周に遊嵌されるナット部60と、取付け部50の後端側に取付けられる筒状金属製の外筒70と、外筒70の後端に取付けられてリード線24を外部に引き出す耐熱ゴム製の補助リング26とを備えている。
なお、本発明の温度センサ1において、金属部材30は軸線O方向に延びており、金属部材30の底部側を「先端」とし、金属部材30の開放端側を「後端」とする。
【0015】
Pt抵抗体素子(感温素子)10は、温度を測定するためのPt抵抗体部(感温部)11と、Pt抵抗体部11の一端(後端側)から延びる一対の素子電極線12とを有する。
Pt抵抗体部11は、膜状の金属抵抗体をセラミック層で挟み込んだ構成をなし、全体として略板状であり、長手方向を温度センサ1(金属部材30)の軸線O方向と平行にして金属部材30内に配置される。金属抵抗体は、白金(Pt)を主体(50質量%以上)とする組成からなり、一対の素子電極線12が離間して接続されている。そして、金属抵抗体は温度変化に応じて電気抵抗値が変化するので、その変化を一対の素子電極線12間の電圧変化として検知できる。セラミック層としては、アルミナ純度99.9質量%以上の組成を用いることができる。又、感温部としては上記Pt等の抵抗体の他、サーミスタを用いることもできる。
シース部材20は、Pt抵抗体素子10の一対の素子電極線12にそれぞれ接続されるシース芯線21と、シース芯線21を収容する金属製のシース外管22とを有し、シース芯線21とシース外管22内面との間にSiOからなる絶縁材が充填されている。
通常、素子電極線12は高価なPt−Rh線等であるため、SUS等からなる安価なシース芯線21と接続することでコストダウンが図られている。
【0016】
取付け部50は、金属部材30を挿通するための中心孔が軸線O方向に開口する略円筒状をなし、温度センサ1の先端側から、大径の鍔部51、鍔部51よりも小径の筒状の鞘部52、鞘部52のうち先端側を構成する第1段部54、及び鞘部52のうち後端側を構成し第1段部54より小径の第2段部55がこの順に形成されている。鍔部51の先端面はテーパ状の座面53を有し、後述するナット部60を排気管に螺合する際、座面53が排気管の側壁の角部(図示せず)に押し付けられてシールを行うようになっている。
取付け部50は、金属部材30の後端部の外周に圧入され、第2段部55と金属部材30とを全周レーザ溶接して両者が固定されている。
又、第1段部54の外周に外筒70が圧入され、全周レーザ溶接によって両者が固定されている。外筒70は、シース部材20から引き出されたシース芯線21とリード線24との接続部分を収容して保持する。
【0017】
ナット部60は、外筒70の外周よりやや大径の中心孔を軸線O方向に有し、先端側から、ネジ部62、ネジ部62より大径の六角ナット部61が形成されている。そして、取付け部50の鍔部51の後面にネジ部62の前面を当接させた状態で、ナット部60が取付け部50(外筒70)の外周に遊嵌し、軸線O方向に回動自在になっている。
そして、ネジ部62が排気管の所定のネジ穴と螺合することにより、温度センサ1が排気管の側壁に取付けられる。
【0018】
シース部材20のシース外管22の後端からは2本のシース芯線21が引き出され、各シース芯線21の終端が加締め端子23に接続され、加締め端子23はリード線24に接続されている。なお、各シース芯線21及び加締め端子23はそれぞれ絶縁チューブ25で絶縁されている。
そして、各リード線24は、外筒70の後端内側に嵌合された補助リング26のリード線挿通孔を通って外部に引き出され、図示しないコネクタを介して外部回路と接続されている。
又、金属部材30の内面と、Pt抵抗体素子10及びシース部材20との隙間には、アルミナ等のセメント40が充填されており、Pt抵抗体素子10及びシース部材20を保持してその振動を抑制している。セメント40としては、熱伝導率が高く、高耐熱、高絶縁性の材料を用いてもよい。
【0019】
次に、図1の部分拡大図である図2を参照し、本発明の特徴部分である金属部材30の構成について説明する。
まず、上述のように、Pt抵抗体部11は略板状をなし、長手方向を軸線O方向と平行にして金属部材30内に配置される。このため、Pt抵抗体部11の先端向き面(端面)11aは軸線O方向に垂直な平面形状をなしている。本発明は、このようにPt抵抗体部11の先端向き面11aが平面形状であるものを対象とし、先端向き面が平面形状でないもの(例えば、球状)は含まない。
【0020】
一方、金属部材30は、後端側から順に筒部本体31、テーパ部35、ストレート部34、接続部33、及び先端部32を有しており、これらの各構成部分は金属板の深絞り加工により一体に形成されている。
筒部本体31は軸線O方向に平行なストレート形状をなし、筒部本体31の内径はシース部材20の外径よりも大きく、シース部材20を自身の内部に収納可能になっている。また、筒部本体31の外径は第2段部55の内面に嵌合するような寸法に設定されている。テーパ部35は筒部本体31から先端に向かってテーパ状に窄まり、金属部材30の後端側からシース部材20及びPt抵抗体素子10を挿入した際、テーパ部35にシース部材20の先端側が当接して挿入深さを位置決めするようになっている。又、これにより、シース部材20の先端側が金属部材30の開口部を閉塞し、金属部材30の内部空間に、少なくともPt抵抗体素子10、及び素子電極線12とシース芯線21との接合部Jが収納される。又、この内部空間にセメント40が充填されている。
ストレート部34は、テーパ部35から先端側に向かって軸線O方向に平行に延びている。ストレート部34の内径はPt抵抗体部11の最大外径よりも大きく、Pt抵抗体部11を自身の内部に収納可能になっている。
先端部32は軸線O方向の断面が円弧形状をなし、接続部33はストレート部34から先端へ向かって縮径して先端部32に接続している。
【0021】
さらに、図2において、ストレート部34の外径と同一直径の仮想円Cであって、ストレート部34の両外縁34e、34e又はそれらの延長線に接すると共に、自身の中心CeがPt抵抗体部11の最先端11fと軸線O方向の同じ位置にある仮想円Cを描く。このとき、先端部32の曲率半径は仮想円Cの曲率半径よりも小さいと共に、先端部32の外縁は仮想円Cのうち中心Ceよりも先端側の第1半円C1の内側に配置されている。
【0022】
金属部材30をこのように構成すると、先端部32を比較的小さい曲率半径の球状(軸線O方向の断面が円弧形状)とすることができるので、先端部32を平面状とした場合に比べて強度が高くなり、冷熱サイクルのような熱応力が加わったときに先端部32が変形して割れることを抑制することができる。
さらに、先端部32の外縁が第1半円C1の内側に配置されているので、先端向き面11aが平面形状のPt抵抗体部11であっても、このPt抵抗体部11を金属部材30の先端部32の内面に軸線O方向に近付けて収納することができ、センサの応答性を良好にすることができる。なお、「第1半円C1の内側に配置されている」とは、第1半円C1の周上も含む。
ここで、先端部32の曲率半径は仮想円Cの曲率半径よりも小さいので、先端部32をストレート部34に直接接続することはできない。そこで、先端部32とストレート部34との間に両者を繋ぐ接続部33を設けている。接続部33の形状は特に限定されないが、ストレート部34の先端から曲面状に縮径し、さらに先端側がテーパ状に窄まる形状が好ましい。
【0023】
また、Pt抵抗体部11の先端向き面11aが軸線O方向に垂直に配置されていることが好ましいが、製造時のブレ等により、図2に示すように、Pt抵抗体部11の先端向き面11aが軸線O方向に垂直な方向に対して斜めになる場合もある。そこで、このような場合も考慮し、Pt抵抗体部11の最先端11fを基準とし、最先端11fを通って軸線O方向に垂直な線分Lを引いたとき、線分L上の位置を仮想円Cの中心Ceと規定する。なお、図2では、先端向き面11aの右端が最先端11fとなっている。
また、後述するように、Pt抵抗体部11の先端向き面11aをストレート部34の先端よりも後端側に配置することが好ましいが、製造誤差等により、Pt抵抗体部11の先端向き面11aがストレート部34の先端よりも先端側に配置される場合もある。この場合には、中心Ceから描いた仮想円Cがストレート部34の両外縁34e、34eに接しないので、両外縁34e、34eの(軸線O方向の)延長線に仮想円Cが接すればよいものと規定した。
【0024】
なお、図2に示すように、先端部32の外縁は、第1半円C1の中心Ceから先端側へ向かって仮想円Cの半径rの1/2の長さであるr/2の位置か、又はr/2よりも先端側に配置されていることが好ましい。先端部32の外縁が長さr/2よりも後端側に配置されている場合、先端部32とストレート部34との間の接続部33の軸線O方向の長さが短くなる。このため、接続部33が平面に近い形状になり、上述の図5の場合と同様に、接続部33の強度が低下し、冷熱サイクルのような熱応力が加わったときに接続部33から金属部材30が変形して割れ易くなることがある。
【0025】
また、図2に示すように、Pt抵抗体部11の少なくとも一部は、仮想円Cのうち中心Ceよりも後端側の第2半円C2の内側に配置されていることが好ましい。Pt抵抗体部11が第2半円C2の後端側における外側に配置されている場合、金属部材30の先端部32の内面とPt抵抗体部11との軸線O方向の距離が大きくなり、センサの応答性が低下することがある。
一方、Pt抵抗体部11が第2半円C2の中心Ceよりも先端側に配置されている場合、製造時のブレ等により、Pt抵抗体部11が接続部33や先端部32の内面に当接して破損するおそれがある。
なお、「第2半円C2の内側に配置されている」とは、第2半円C2の周上も含む。
【0026】
次に、図3を参照し、本発明の第2の実施形態に係る温度センサ1Bについて説明する。図3は、温度センサ1Bの一部を軸線O方向に沿って破断した断面構造を示す。なお、温度センサ1Bは、シース部材20が金属部材30Bの後端側に露出する態様であり、金属部材30Bの構成が異なること以外は第1の実施形態に係る温度センサ1と同一であるので、温度センサ1と同一な部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0027】
温度センサ1Bにおいては、金属部材30Bはシース部材20の先端部に被せられるが、シース部材20の先端部より後端側は金属部材30Bに被せられずに露出している。そして、取付け部50は、金属部材30Bの代わりにシース部材20の後端部の外周にカシメ固定され、第2段部55とシース部材20とを全周レーザ溶接して両者が固定されている。
一方、金属部材30Bは、後端側から順に筒部本体31B、テーパ部35、ストレート部34、接続部33、及び先端部32を有しており、これらの各構成部分は金属板の深絞り加工により一体に形成されている。
筒部本体31Bの内径はシース部材20の外径よりもやや大きく、シース部材20を自身の内部に挿入可能になっている。テーパ部35は筒部本体31Bから先端に向かってテーパ状に窄まり、温度センサ1と同様に、金属部材30Bの後端側からシース部材20及びPt抵抗体素子10を挿入した際、テーパ部35にシース部材20の先端側が当接して挿入深さを位置決めするようになっている。
【0028】
そして、金属部材30Bの後端側からシース部材20及びPt抵抗体素子10を挿入すると、テーパ部35にシース部材20の先端側が当接して位置決めされる。又、これにより、シース部材20の先端側が金属部材30Bの開口部を閉塞し、金属部材30Bの内部空間に、少なくともPt抵抗体素子10、及び素子電極線12とシース芯線21との接合部J(図2参照)が収納される。
さらに、金属部材30Bの後端側を全周溶接して溶接部wを形成することで、金属部材30がシース部材20の先端側に接合される。
【0029】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。例えば、感温部として、上述のPt抵抗体部11の代わりにサーミスタ焼結体を用いてもよい。サーミスタ焼結体としては、(Sr,Y)(Al,Mn,Fe)Oをベース組成としたペロブスカイト型酸化物を用いることができるが、これに限定されない。
サーミスタ焼結体としては、例えば全体が六角柱状をなすものを用いることができる。この場合、六角柱の柱軸方向を軸線O方向と垂直にして金属部材30内に配置し、六角形の外縁を形成する六つの面のうち、1つの面を先端向き面とすると、サーミスタ焼結体の先端向き面が軸線O方向に垂直な平面形状となる。
感温部は、その先端向き面が平面形状であれば、全体形状は特に限定されず、上述の板状、六角柱の他、例えば四角柱であってもよい。又、円筒状の感温部の平面を先端向き面としてもよい。
また、上記実施形態では、シース芯線21とシース外管22内面との間にSiO2からなる絶縁材が充填されていたが、これに限られず、MgOやAl2O3からなる絶縁材が充填されていてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1、1B 温度センサ
10 感温素子
11 感温部
11a 感温部の先端向き面
11f 感温部の最先端
12 素子電極線
20 シース部材
21 シース芯線
22 シース外管
30、30B 金属部材
32 先端部
33 接続部
34 ストレート部
34e ストレート部の両外縁
J 接合部
O 軸線
C 仮想円
Ce 仮想円の中心
C1 第1半円
C2 第2半円
図1
図2
図3
図4
図5
図6