特許第6576785号(P6576785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576785
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】無菌店舗システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/74 20180101AFI20190909BHJP
   F24F 1/0073 20190101ALI20190909BHJP
   F24F 7/00 20060101ALI20190909BHJP
   F24F 120/10 20180101ALN20190909BHJP
【FI】
   F24F11/74
   F24F1/0073
   F24F7/00 A
   F24F120:10
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-204240(P2015-204240)
(22)【出願日】2015年10月16日
(65)【公開番号】特開2017-75747(P2017-75747A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2018年8月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】591186176
【氏名又は名称】株式会社 ゼンショーホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 友博
【審査官】 石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−216370(JP,A)
【文献】 特開2014−231925(JP,A)
【文献】 特開昭61−072947(JP,A)
【文献】 特開2004−340395(JP,A)
【文献】 特開2002−070344(JP,A)
【文献】 特開2011−021931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00−11/89
F24F 1/0073
F24F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
店舗内の空間に設置して除菌後の空気を店舗内に吹き出す複数のフィルタユニットと、
店舗内に設置して店舗内の空気の無菌状態を検出するモニタと、
を備え、
前記モニタは、
店舗内の無菌状態を、店舗内の来店者の着座又は店舗の出入口の開閉により検出し、
店舗内の空気の無菌状態に応じて前記複数のフィルタユニットの稼働台数を制御する、無菌店舗システム。
【請求項2】
前記複数のフィルタユニットの少なくとも1つは、
店舗外に設置した室外機と、
前記室外機から店舗外の空気を店舗内へと案内するダクトと、
前記ダクトに連通して店舗外の空気を店舗内へと吹き出す吹出部を有する室内機と、
前記室外機又は前記室内機の少なくとも一方に設置して店舗外の空気を前記室外機から強制的に吸い込むファンと、
前記室内機の内部であって前記吹出部よりも上流側に配置した除菌フィルタと、
を備える外気取入型フィルタユニットである、
ことを特徴とする請求項1に記載の無菌店舗システム。
【請求項3】
前記複数のフィルタユニットの少なくとも1つは、
店舗内の空気を吸い込む吸込部と、
前記吸込部から吸い込んだ空気を店舗内に吹き出す吹出部と、
前記吸込部から店舗内の空気を強制的に吸い込みかつ吸い込んだ空気を前記吹出部から強制的に吹き出させるファンと、
前記吸込部と前記吹出部との間に配置した除菌フィルタと、
を備える循環型フィルタユニットである、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無菌店舗システム。
【請求項4】
前記複数のフィルタユニットの少なくとも1つは、
椅子部と衝立部とを一体に備え、
前記椅子部は、
座部の下方に店舗内の空気を取り入れる取込部と、
背凭部の上端と前記衝立部の高さ方向中途部とに跨ることで前記座部及び前記背凭部と協働してダクト部を形成する天板と、
を備え、
前記衝立部は、
前記ダクト部と連通するように前記天板よりも下方に配置して前記ダクト部内の空気を吸い込む吸込部と、
前記吸込部から吸い込んだ空気を前記天板よりも上方から吹き出す吹出部と、
前記吸込部から前記ダクト部内の空気を強制的に吸い込みかつ吸い込んだ空気を前記衝立部の内部を通って前記吹出部から強制的に吹き出させるファンと、
前記吸込部と前記吹出部との間に配置した除菌フィルタと、
を備える循環椅子型フィルタユニットである、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1の請求項に記載の無菌店舗システム。
【請求項5】
店舗内は、
提供する飲食物を調理する調理室と、
来店者が飲食物を食する客席室と、
店舗の出入口付近の店舗内に設置した待合室と、
を備え、
調理室には、
店舗外の空気を強制的に吸い込んで除菌したうえで調理室内へと空気を吹き出す外気取入型フィルタユニットが設置され、
客席室には、
店舗外の空気を強制的に吸い込んで除菌したうえで客席室内へと吹き出す1台以上の外気取入型フィルタユニット及び店舗内の空気を吸い込んで除菌したうえで客席室へと吹き出す複数台の循環型フィルタユニットが設置され、
待合室には、
来店者が座る椅子部及び待合室と客席室とを区画する衝立部を一体に備えて、待合室内の空気を強制的に吸い込んで除菌したうえで待合室へと吹き出す複数台の循環椅子型フィルタユニットが設置され、
前記モニタは、
客席室又は待合室に設置の前記フィルタユニットに対して空気の無菌状態に応じて前記フィルタユニットの稼働台数を制御する、
ことを特徴とする請求項乃至請求項4のいずれか1の請求項に記載の無菌店舗システム。
【請求項6】
前記循環型フィルタユニットは、
客席室の通路に沿って複数設置した、
ことを特徴とする請求項5に記載の無菌店舗システム。
【請求項7】
前記モニタは、
店舗内の無菌状態が所定の条件を満たしたときに、前記ファンの駆動を停止する、
ことを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれか1の請求項に記載の無菌店舗システム。
【請求項8】
前記モニタは、
客席室又は待合室に設置の前記フィルタユニットの個々に設置するとともに、当該個々の前記フィルタユニットにおける無菌状態が所定の条件を満たしたときに、前記ファンの駆動を停止する、
ことを特徴とする請求項2乃至請求項7のいずれか1の請求項に記載の無菌店舗システム。
【請求項9】
前記モニタは、
店舗内の無菌状態を、店舗内の空気に含まれる菌により検出する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1の請求項に記載の無菌店舗システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無菌店舗システムに関し、特に、店舗内の空気を除菌しつつ無菌化する無菌店舗システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、所定の空間内の空気を清浄化するために、空気清浄機が周知である。この空気清浄機は、空気中に存在する塵埃等を除去することを主たる目的とするものである。
【0003】
また、このような空気清浄器には、流入した空気中の塵埃を除去する除塵部と、除塵部の下流側において空気中の細菌を除去する除菌部とを有し、除塵部は空気中に除塵用液を噴霧する噴霧装置を有し、除菌部は流入した空気に殺菌力を有する殺菌用液を接触させる除菌装置を有する、ものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、このような空気中に除塵用液を噴霧したり、殺菌作用を有する殺菌用液を空気に接触させた場合、その空気中に各液が混入してしまうため、飲食用の店舗に対して用いることは困難であった。
【0005】
このような不具合を解消するものとして、大空間の店舗に隣接する機械室内に空気調和機と空気除菌装置とを隣接して設置し、空気調和機の天面の吹出部から吹き出す調和空気を空気除菌装置の天面から空気除菌装置の内部に導いて除菌したうえで、店舗内の高所に配管した天面吹出部から調和空気を店舗内に吹き出すようにした空気調和システムが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−106739公報
【特許文献2】特開2010−236742公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような空気調和システムにあっては、店舗用空間とは別に機械室が必要となるうえ、空気調和機と空気除菌装置とを必要とするなど、食品を調理するための調理場を確保する必要のある飲食店のような店舗に対してレイアウト上の制約を受けるなどの汎用性が低い、という問題が生じていた。
【0008】
本発明は、上述のような課題を解決するために、店舗の種類に応じた空気調和を可能とし得て、汎用性を向上することができる無菌店舗システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る無菌店舗システムは、上記目的を達成のため、店舗内の空間に設置して除菌後の空気を店舗内に吹き出す複数のフィルタユニットと、店舗内に設置して店舗内の空気の無菌状態を検出するモニタと、を備え、モニタは、店舗内の空気の無菌状態に応じて複数のフィルタユニットの稼働台数を制御する、ものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、店舗内の空気の無菌状態に応じて複数のフィルタユニットの稼働台数を制御することにより、店舗の種類に応じた空気調和を可能とし得て、汎用性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態に係る無菌店舗システムを示すフィルタユニットの配置例を示す説明図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る無菌店舗システムに適用される循環型フィルタユニットの断面図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る無菌店舗システムに適用される室内機の側面図である。
図4】本発明の一実施の形態に係る無菌店舗システムに適用される循環椅子型フィルタユニットの正面図である。
図5】本発明の一実施の形態に係る無菌店舗システムに適用される循環椅子型フィルタユニットの平面図である。
図6】本発明の一実施の形態に係る無菌店舗システムに適用される循環椅子型フィルタユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係る一実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本発明に係る無菌店舗システムにおける「除菌」とは、空気中に含まれる菌を「殺菌(滅菌)」することまでは含まないものとする。
【0013】
ここで、「殺菌」とは、病原性や有害性を有する糸状菌・細菌・ウイルスなどの微生物を死滅させる作用そのものを意味するものとする。
【0014】
また、「滅菌」とは、上記「殺菌」により、すべての菌(微生物やウイルスなど)を死滅・除去することを意味しており、医薬品の規格基準書である日本薬局方では微生物の生存する確率が100万分の1以下になることをもって滅菌と定義している。
【0015】
したがって、以下の説明において、「除菌」とは、これら粒子の小さいウイルスまでを「殺菌」することは含まず、細菌や真菌を空気中から除去することを意味する。また、「無菌」とは、店舗内の空気を「除菌」しつつ所定回数以上循環させ、店舗内の空気が(来店者の出入りがない状態で)所定値以上の割合で菌が存在しない状態を意味するものとする。なお、「無菌」と判断するための所定値は後述する。
【0016】
(フロア構造)
まず初めに、食品提供を主たる目的とする店舗(飲食店)の一例として大型の回転寿司店を例に、店舗フロアの構造例を説明する。
【0017】
図1に示すように、店舗1は、出入口室2、待合室3、客席室4、調理室5、加熱調理室6、スタッフ室7、勝手口室8、女性用トイレ室9A,男性用トイレ室9B,多目的トイレ室9C、に区画又は出入り可能に隔絶している。
【0018】
なお、以下の説明において、「区画」とは、例えば、パーテーション等の天井との隙間等を有する簡易的な壁によって隣接する部屋(室)と仕切られている状態を意味するものとする。また、「隔絶」とは、例えば、人が出入りする際に扉(ドア)の開閉をするときを除く限りにおいて(以下、「通常時」と称する)床と天井とに跨る壁面によって仕切られている状態を意味するものとする。なお、「隔絶」には、人の出入りや食品の出し入れ等の特定の理由のために一部を常に開放している場合を含むものとする。
【0019】
出入口室2は、外扉2a及び内扉(スライドドア)2bと外壁2cとによって、通常時は店内と店外とを隔絶している。したがって、この外扉2aと内扉2bとの2重の扉構造によって、雨・雪・風や塵埃・虫等が店内に入り難くなるようになっている。
【0020】
待合室3は、出入口側を開放する内壁10によって客席室4と区画している。待合室3には、後述する循環椅子型フィルタユニット50を複数設置している。
【0021】
客席室4は、商品(食品)を提供する提供口(図示せず)を有する内壁11によって調理室5と隔絶している。また、客席室4は、例えば、調理室5で職人等が握った寿司等の食品を皿に載せて来店者前を巡回させるコンベア12と、コンベア12に隣接するカウンタ13及び複数のテーブル14と、を備える。したがって、来店者は、このカウンタ13又はテーブル14に配置した椅子15に座って飲食をするようになっている。なお、カウンタ13やテーブル14には、店舗システムに応じた各種機器、例えば、店員呼び出しボタン、給茶ノズル、皿回収機、注文モニタ、等を設置するのは任意である。また、客席室4には、例えば、サラダバーコーナやドリンクバーコーナ等を任意に設置することができ、必要に応じて区画又は隔絶することができる。さらに、客席室4には、後述する外気取入型フィルタユニット30と循環型フィルタユニット40とを複数設置している。本実施の形態において、循環型フィルタユニット40は、客席室4の通路に沿って複数設置している。
【0022】
調理室5は、例えば、コンベア12ごとに、提供する寿司等の食品の調理や盛り付け等をすることができるようになっており、そのために必要な調理器具等が適宜配置してある。調理室5の床面には、複数の排水溝等を配置することができる。調理室5には、例えば、回収した食器の洗浄を行う洗い場等、その他適宜の必要なコーナ等を配置することができる。さらに、調理室5には、後述する外気取入型フィルタユニット30と循環型フィルタユニット40とを複数設置している。なお、調理室5は、外部との人の出入りが少ないため、例えば、外気取入型フィルタユニット30のみを複数設置するのでもよい。
【0023】
加熱調理室6は、例えば、扉を有さずに常に調理室5と人の出入りが可能となるように開放した状態で内壁16によって調理室5と隔絶している。加熱調理室6は、例えば、加熱調理用の大型(業務用など)ガスコンロ(図示せず)等を適宜設置している。また、加熱調理室6は、火気が発生するため、必要に応じて外部に熱気を排気する換気扇(図示せず)や排煙窓17など、必要に応じた設備を設置している。なお、加熱調理室6は、調理関係者のみの出入りであるため、外気取入型フィルタユニット30や循環型フィルタユニット40は設置していないが、設置は可能である。
【0024】
スタッフ室7は、例えば、店舗全体の外壁18に設けた出入扉18Aから店員等の出入りを可能としており、必要に応じて更衣室等を設置してもよい。スタッフ室7は、内壁19によって調理室5及び加熱調理室6と隔絶している。内壁19には、扉19Aを設けて調理室5とで出入りを可能としている。このため、店舗外部との直接の出入りを許容していることから、外気取入型フィルタユニット30や循環型フィルタユニット40を設置してもよい。本実施の形態では、これら外気取入型フィルタユニット30や循環型フィルタユニット40をスタッフ室7に設置するかわりに、調理室5に配置した循環型フィルタユニット40の一つをスタッフ室7の室内側の扉19Aの近傍に設置することで対応している。
【0025】
勝手口室8は、例えば、店舗全体の外壁18に設けた勝手口扉18Bから店員等の出入りを可能としており、内壁20によって調理室5と隔絶している。勝手口室8は、例えば、従業員用トイレ8Aや生ごみ収集室8Bを従業員が利用するために設けたものである。ここで、生ごみ収集室8Bは店舗外部から業者によって回収可能とする必要があることから、ゴミ捨てのために調理室5と店舗外部との間の出入りを許容しているものの、所謂ゴミ捨てのタイミングは、例えば、営業時間外などの限られたタイミングや時間である。したがって、外気取入型フィルタユニット30や循環型フィルタユニット40を勝手口室8に設置するかわりに、調理室5に配置した外気取入型フィルタユニット30の一つを近傍に設置することで対応している。
【0026】
このように、本実施の形態では、外気取入型フィルタユニット30、循環型フィルタユニット40、循環椅子型フィルタユニット50を、店舗内の来店者又は従業員等の出入りに応じて、適宜箇所に複数設置している。
【0027】
具体的には、主として、店舗内は、店舗の出入口付近の店舗内に設置した待合室3と、来店者が飲食物を食する客席室4と、提供する飲食物を調理する調理室5と、を備える。そして、待合室3には、待合室3内の空気を強制的に吸い込んで除菌したうえで待合室3へと吹き出す複数台の循環椅子型フィルタユニット50を設置している。客席室4には、店舗外の空気を強制的に吸い込んで除菌したうえで客席室4内へと吹き出す1台以上の外気取入型フィルタユニット30及び店舗内(客席室4)の空気を吸い込んで除菌したうえで客席室4へと吹き出す複数台の循環型フィルタユニット40を設置している。調理室5には、店舗外の空気を強制的に吸い込んで除菌したうえで調理室5内へと空気を吹き出す外気取入型フィルタユニット30及び店舗内(調理室5)の空気を吸い込んで除菌したうえで調理室5へと吹き出す複数台の循環型フィルタユニット40を設置している。
【0028】
次に、外気取入型フィルタユニット30の具体例を説明する。外気取入型フィルタユニット30は、例えば、店舗外に設置して公知の冷暖房機(所謂、エアコン)と同一の構成又は機能を有する室外機31と、室外機31から店舗外の空気を店舗内へと案内するダクト32(図1では調理室5に設置の方のみ図示)と、ダクト32に連通して店舗外の空気を店舗内へと吹き出す室内機33と、を備える。
【0029】
図2に示すように、室内機33は、ダクト32の一端を接続した筐体34と、筐体34の内部に設置した吸引型のファン35と、筐体34の底面に設けた吹出部36と、筐体34の内部であって吹出部36よりも上流側に配置した除菌フィルタ37と、を備える。
【0030】
筐体34は、建物の躯体天井21に長さ調整可能な取付具38を介して吊り下げ状態で支持されている。この際、筐体34は、吹出部36を有する底面のみを店舗内天井22から店舗内に露出させている。なお、ファン35を室内機33に設置した場合、室外機31にはファン(図示せず)を設置しなくてもよいし、ダクト32の経路長に応じて併用してもよい。また、室外機31にファンを設置した場合、室内機33にファン35を設置しなくてもよい。
【0031】
図3に示すように、循環型フィルタユニット40は、躯体41と、躯体41の上面に形成した吸込部42から吸い込んだ空気を躯体41の底面から店舗内に吹き出す吹出部43と、モータ44の駆動により吸込部42から店舗内の空気を強制的に吸い込みかつ吸い込んだ空気を吹出部43から強制的に吹き出させるファン45と、吸込部42と吹出部43との間に配置した除菌フィルタ46と、を備える。
【0032】
躯体41は、店舗内天井22の底面にブラケット47を介して吊り下げ状態で支持されている。店舗内の空気は、このブラケット47により、店舗内天井22と躯体41との間から店舗内の空気を吸込部42で取り入れるようになっている。また、躯体41の側面等には、周辺の空気中に含まれる菌(粒子)の存在を検出するモニタ80を固定している。なお、モニタ80の機能(性能)に関しては後述する。
【0033】
吸込部42と吹出部43とファン45とは、一つの躯体41に2つ並列して配置している。この際、躯体41には、隣りあった吸込部42と吹出部43とファン45とを機能的に分離する隔壁41aを形成している。なお、除菌フィルタ46は、ファン45の下方にそれぞれ別個に配置してもよいし、一つを配置してもよい。
【0034】
図4図6に示すように、循環椅子型フィルタユニット50は、来店者が座る椅子部60及び待合室3と客席室4とを区画する衝立部70を一体に備えて、待合室3内の空気を強制的に吸い込んで除菌したうえで待合室3へと吹き出すようになっている。なお、本実施の形態では、待合室3と客席室4とを内壁10で隔絶しているが、衝立部70の高さを適宜に設定することで内壁10を廃止し、衝立部70により待合室3と客席室4とを区画してもよい。また、店舗内天井22から鴨居状の壁(図示せず)を設け、この壁と衝立部70との協働により待合室3と客席室4とを隔絶又は区画してもよい。
【0035】
椅子部60は、座部61の下方に待合室3内の空気を取り入れる取込部63と、背凭部62の上端と衝立部70の高さ方向中途部とに跨ることで座部61及び背凭部62と協働してダクト部64を形成する天板65と、を備える。
【0036】
座部61と背凭部62とは、例えば、略Lの字形状の側板66に座板67A及び背板67Bを介して固定されている。したがって、ダクト部64の側面は、この側板66によって待合室3と隔絶している。この際、側板66の一部に取込部63を配置してもよい。
【0037】
取込部63は、座部61の前方側下方空間を塞ぐように配置しており、複数のルーバ63aによって待合室3からダクト部64に空気を上向きに取り込むようになっている。
【0038】
衝立部70は、ダクト部64と連通するように天板65よりも下方に配置してダクト部64内の空気を吸い込む吸込部71と、吸込部71から吸い込んだ空気を天板65よりも上方から吹き出す吹出部72と、モータ73の駆動によって吸込部71からダクト部64内の空気を強制的に吸い込みかつ吸い込んだ空気を衝立部70の内部を通って吹出部72から強制的に吹き出させるファン74と、吸込部71と吹出部72との間に配置した除菌フィルタ75と、を備える。なお、衝立部70は、例えば、矩形のフレーム枠76の厚さによって内部にモータ73、ファン74、除菌フィルタ75を設置するとともに空気の流路を形成している。
【0039】
フレーム枠76は、例えば、金属製若しくは木製の角柱体を矩形に組み付けたもので、待合室3に面した正面側をパネル状の吸込部71と吹出部72とで覆い、客席室4に面した裏面側を化粧板77で塞いでいる。また、フレーム枠76は、側板66を、溶接又は接着等の接合構造、或は、ボルトナット等の締結具を介した結合構造、により椅子部60の背面側全体を支持するように組み付けている。
【0040】
一方、吹出部72には、例えば、モータ73の駆動のオン・オフや、モータ73の駆動力、すなわち、ファン74の吸引力を手動で調整する操作パネル78を設けている。この操作パネル78は、例えば、吹出部72に設けたモニタ80の無菌状態の検出結果に応じたモータ73の駆動制御とは独立して人為操作が可能となっている。なお、操作パネル78はなくてもよい。
【0041】
ところで、本実施の形態において、上述した除菌フィルタ37,46,75には、へパフィルターを用いている。へパフィルターは、例えば、0.1μm以上の細菌(例えば、ブドウ球菌は直径約0.8〜1.0μmの球状)や真菌(カビ)を99,9%除去することができる。但し、ノロウイルス等のウイルスに関しては0.1μm以下(例えば、ノロウイルスは直径約30nm)であるため、へパフィルターでは除去することはできない。したがって、本実施形態における「無菌」にウイルスは含まないことを意味する。
【0042】
また、循環型フィルタユニット40及び循環椅子型フィルタユニット50は、それぞれ1台につき、1時間に周辺空気を30回以上の割合で、へパフィルターを通過するような台数や配置としている。したがって、店舗内に来店者が1時間いなければ、店舗内を理論上の無菌状態とすることができる。
【0043】
このような基本構成において、本実施の形態に係る無菌店舗システムは、店舗内の空間に設置して除菌後の空気を店舗内に吹き出す複数のフィルタユニット30,40,50と、店舗内に設置して店舗内の空気の無菌状態を検出するモニタ80と、を備え、モニタ80は、店舗内の空気の無菌状態に応じて複数のフィルタユニット30,40,50の稼働台数を制御することにより、店舗の種類に応じた空気調和を可能とし得て、汎用性を向上することにある。
【0044】
次に、本実施の形態に係る無菌店舗システムの作用を説明する。上記の構成において、待合室3には、来店者が座る椅子部60及び待合室3と客席室4とを区画する衝立部70を一体に備えて、待合室3内の空気を強制的に吸い込んで除菌したうえで待合室3へと吹き出す循環椅子型フィルタユニット50を8台設置している。
【0045】
また、客席室4には、店舗外の空気を強制的に吸い込んで除菌したうえで客席室4内へと吹き出す外気取入型フィルタユニット30を2台設置し、客席室4内の空気を吸い込んで除菌したうえで客席室4へと吹き出す循環型フィルタユニット40を9台設置している。
【0046】
調理室5には、店舗外の空気を強制的に吸い込んで除菌したうえで調理室5内へと空気を吹き出す外気取入型フィルタユニット30を2台設置し、客席室4寄りの調理室5内の空気を吸い込んで除菌したうえで調理室5へと吹き出す循環型フィルタユニット40を3台設置している。
【0047】
以上の店舗内における各フィルタユニット30,40,50の設置状態において、例えば、外気取入型フィルタユニット30は、店舗内の無菌状態がどの状態であるかにかかわらず、常時駆動して外気を除菌済の空気としたうえで店舗内に取り入れる。この際、外気取入型フィルタユニット30は、例えば、タイマの設定により、調理室5に設置のものは仕込み開始時間又は従業員の出勤時間の1時間前から稼働を開始し、客席室4に設置のものは開店する1時間前から稼働を開始するなどのタイマ制御が可能である。
【0048】
一方、循環型フィルタユニット40及び循環椅子型フィルタユニット50は、例えば、ユニットごとに設置したモニタ80による無菌状態の検出結果に応じて駆動制御される。したがって、モニタ80は、フィルタユニット単位で稼働制御することにより、店舗全体として無菌状態に応じた台数制御が可能となっている。なお、外気取入型フィルタユニット30においても、モニタ80の監視による稼働制御としてもよい。
【0049】
モニタ80は、客席室4及び調理室5にそれぞれ設置した循環型フィルタユニット40に対して、並びに、待合室3に設置した循環椅子型フィルタユニット50に対して、空気の無菌状態に応じた稼働台数の制御を実現している。
【0050】
本実施の形態において、モニタ80は、例えば、清浄度に関するISOのクラス7未満である場合に無菌状態であると判定し、報知ランプ(LED)の点灯色を青(又は緑)とするとともにモータ44,73の駆動を停止し、クラス7以上である場合に無菌状態であると判定せず、報知ランプ(LED)の点灯色を赤(又は緑)とするとともにモータ44,73を駆動させる。
【0051】
したがって、除菌フィルタ37,46,75を通過した空気に関しては、99.9%の無菌の空気を吹き出しているが、店舗内の全体(或は、来店者の周辺)の空気としての無菌(無菌店舗)は、モニタ80の検出能力に依存することとなる。
【0052】
なお、客席室4に設置の循環型フィルタユニット40は、通路に沿って配置しているため、来店者の案内を出入口に近い通路から順次案内していけば、出入口から離れた通路の付近は無菌状態、或は、無菌状態に近い状態を維持しているものと推定することができる。
【0053】
したがって、出入口から離れた通路に沿って配置した循環型フィルタユニット40のモニタ80は、無菌状態を検出している限りにおいてモータ44の駆動を停止する。これにより、出入口付近の通路に配置した循環型フィルタユニット40は稼働状態、出入口から離れた通路に配置した循環型フィルタユニット40は停止状態、の台数制御を実現する。
【0054】
なお、上述したような来店者の案内順によっては、通路単位である程度の割合で無菌状態であるか否かを人為的に操作することも可能となる。したがって、モニタ80を各通路の出入口付近等に一つだけ設置(ユニットに固定しなくてもよい)し、通路単位で循環型フィルタユニット40の台数制御を行うことも可能である。
【0055】
一方、待合室3にあっては、来店者が一時的ではあるものの、混雑時等に客席室4に案内されるまで待機している場所であり、店舗外からの塵埃等を含む菌を持ち込んでいる可能性が高いのが一般的である。
【0056】
そこで、椅子部60に座っている来店者の近傍の空気を除菌することによって待合室3の空気をできるだけ早く無菌化するのが望ましい。この際、モニタ80は、来店者の出入口から待合室3への移動や着席動作による空気の流れによって空気中に含まれる菌を検出し、特に、来店者が座っている付近の循環椅子型フィルタユニット50を稼働する。
【0057】
また、隣接する循環椅子型フィルタユニット50のモニタ80も、空気中の菌の検出数が所定の数を上回った場合には稼働を開始し、空気中の菌の数が所定の数を下回った場合には稼働を停止する。
【0058】
これにより、待合室3の全体として、循環椅子型フィルタユニット50の稼働が無菌状態に応じて制御される。
【0059】
ところで、上記実施の形態では、モニタ80を、客席室4又は待合室3に設置のフィルタユニット40,50の個々に設置するとともに、これら個々のフィルタユニット40,50における無菌状態が所定の条件を満たしたとき(例えば、クラス7に達したとき)に、ファン45,74(モータ44,73)の駆動を停止していた。
【0060】
しかしながら、無菌状態の検出としては、モニタ80に限定されるものではなく、例えば、来店者の着席を検出する着座スイッチ(圧力スイッチ)を椅子15や座部61に設け、来店者の着座をモニタ(検出)したら店外からの新たな来店者であるとして対応する循環型フィルタユニット40や循環椅子型フィルタユニット50のモータ44,73を駆動させてもよい。
【0061】
そして、着座スイッチが所定時間(例えば、1時間)以上、着座を検出していない状態が継続したときに、無菌状態が所定の条件を満たしたとして循環型フィルタユニット40や循環椅子型フィルタユニット50のモータ44,73の駆動を停止させることで台数制御してもよい。
【0062】
また、モニタ80に替えて、店舗内の無菌状態を店舗の出入口に設置した外扉2a,2bの開閉をモニタ(監視)することにより検出するようにしてもよい。これにより、外扉2aが開放を検知してから内扉2bを検知した場合には、新たな来店者があったとして、例えば、循環椅子型フィルタユニット50のモータ73を駆動させるとともに、出入口に近い通路の循環型フィルタユニット40のモータ44を駆動させてもよい。
【0063】
そして、内扉2bが開放を検知してから外扉2aを検知した場合には、来店者が飲食を終了したとして、例えば、来店者数と退店者数とが一致してから所定時間経過後(例えば、1時間)に循環型フィルタユニット40や循環椅子型フィルタユニット50のモータ44,73の駆動を停止させることで台数制御してもよい。
【0064】
以上説明したように、本発明に係る無菌店舗システムは、店舗の種類に応じた空気調和を可能とし得て、汎用性を向上することができるという効果を有し、店舗内の空気を除菌しつつ無菌化する無菌店舗システム全般に有用である。
【符号の説明】
【0065】
1 店舗
3 待合室
4 客席室
5 調理室
30 外気取入型フィルタユニット
40 循環型フィルタユニット
50 循環椅子型フィルタユニット
80 モニタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6