(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板を収納可能な容器本体と、この容器本体の開口部を閉鎖する蓋体と、容器本体の開口部と蓋体との間に介在されてシールする変形可能なガスケットとを備え、容器本体の開口部周縁が幅方向外側に屈曲することにより、容器本体の開口部内周に蓋体用の段差受面が形成され、蓋体に、ガスケット用の取付溝が形成された基板収納容器であって、
ガスケットは、蓋体の取付溝に嵌め入れられる基材部と、この基材部から突き出て取付溝の内面に接触する固定用の嵌合突起と、基材部から突き出て容器本体の開口部内周の段差受面に接触するシール片と、基材部における容器本体の開口部内周の段差受面に対向する対向面と反対側の面に形成されて蓋体の取付溝の内面に接触する接触突起とを含み、
基材部が拡幅に形成されて容器本体の開口部を蓋体が閉鎖する場合に基材部の少なくとも周縁が容器本体の開口部内周の段差受面に対向可能とされ、
嵌合突起は、基材部から突き出て基材部の取付溝に対する反嵌め入れ方向に傾斜する第一の傾斜辺と、基材部から第一の傾斜辺方向に突き出る第二の傾斜辺と、この第二の傾斜辺から傾きながら伸びて第一の傾斜辺の先端部に接続される第三の傾斜辺とを含み、基材部から第一、第三の傾斜辺の接続部分までの高さが0.3〜3.0mmとされ、第一、第三の傾斜辺の形成する角度が45°〜135°の範囲とされるとともに、第一、第二の傾斜辺の形成する角度が30°〜43°の範囲とされており、
シール片が幅方向外側に先細りに突出することを特徴とする基板収納容器。
【背景技術】
【0002】
従来における基板収納容器は、
図6に部分的に示すように、複数枚の半導体ウェーハを収納可能なフロントオープンボックスの容器本体1と、この容器本体1の開口した正面2を着脱自在に閉鎖する蓋体10と、容器本体1の正面2の内周部6と蓋体10との間に介在してシールする変形可能なガスケット20とを備えて構成されている(特許文献1、2参照)。
【0003】
容器本体1と蓋体10は、それぞれ入れ子構造の専用の金型により射出成形される。また、容器本体1の正面2の周縁部は、幅方向外側に屈曲形成されることにより、内周部6に蓋体10支持用の段差受面7が形成されている。また、蓋体10の裏面周縁部には、ガスケット20用の取付溝13が形成されている。
【0004】
ガスケット20は、蓋体10の取付溝13に嵌入される平面枠形の基材部21Aと、この基材部21Aから突出して取付溝13の内面に圧接する固定用の複数の嵌合リブ23Aと、基材部21Aから突出して取付溝13の内面に圧接する断面半円形の接触突起28と、基材部21Aから突出して容器本体1の内周部6の段差受面7に弾接する屈曲可能なシール片29とから成形されている。
【0005】
係るガスケット20は、所定の弾性エラストマー等を用いた金型成形により一体化され、その基材部21Aから嵌合リブ23Aまでの高さが蓋体10の取付溝13の高さよりも高く形成されている。各嵌合リブ23Aは、例えば断面三角形や湾曲して先端部27Aが先細る刃形等に形成され、基材部21Aの表面全周からエンドレスに突出する。
【0006】
このような基板収納容器は、容器本体1の開口した正面2に蓋体10が圧入して嵌合されると、容器本体1の内周部6の段差受面7に蓋体1の周縁部が接触し、これら容器本体1の内周部6の段差受面7と蓋体10の周縁部との間にガスケット20のシール片29が屈曲して挟持され、このシール片29の挟持により、ガスケット20のシール機能が発揮されて半導体ウェーハの汚染が防止されることとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来における基板収納容器は、以上のように容器本体1の開口した正面2に蓋体10が嵌合される際、容器本体1の内周部6の段差受面7と蓋体10の周縁部との間にガスケット20のシール片29が挟持されるので、容器本体1の正面2に蓋体10が過剰な力で圧入されると、ガスケット20のシール片29が段差受面7の角部等により引き千切られたり、蓋体10を後から取り外すことがきわめて困難になるという問題が生じる。
【0009】
係る問題を解消するため、従来においては、蓋体10の裏面周縁部に、容器本体1の内周部6の段差受面7に接触するストッパ30を設け、このストッパ30により、蓋体10の過剰な圧入を規制する方法が提案されている。
しかしながら、この方法の場合、蓋体10の過剰な圧入を規制することができるものの、蓋体10の裏面周縁部にストッパ30を設ける必要があるので、蓋体10やその成形用の金型の構造が複雑になるという問題が新たに生じる。
【0010】
また、従来における基板収納容器は、ガスケット20の嵌合リブ23Aが断面三角形や刃形に形成されるが、嵌合リブ23Aの先端部27Aを基材部21Aの表面全周に亘って先細りに形成するのは容易ではなく、部分的にショートショットとなることがあり、その結果、嵌合リブ23Aの形状が不均一になるという問題が生じる。
【0011】
係る問題を解消するため、従来においては、ガスケット20の嵌合リブ23Aの先端部27Aを半球形の丸いR形状にして成形不良を防止する方法が提案され、実施されている。
しかしながら、この方法の場合、嵌合リブ23Aの形状を均一化することはできるものの、嵌合リブ23Aの先端部27AをR形状に形成するので、嵌合リブ23Aが肉厚となる。
【0012】
その結果、蓋体10の取付溝13に基材部21Aを嵌入する際、取付溝13の内面に嵌合リブ23Aの先端部27Aが十分に追従せず、金型の入れ子線等で取付溝13に生じる僅かな凹凸により、気密性が低下するおそれがある。取付溝13の内面に嵌合リブ23Aの先端部27Aが十分に密接せず、気密性が低下してシール性が損なわれると、容器本体1内に外部の気体が流入するので、容器本体1内に収納された半導体ウェーハの汚染を招くこととなる。
【0013】
本発明は上記に鑑みなされたもので、ガスケットの損傷を防止し、困難な蓋体の取り外しを容易にすることのできる基板収納容器を提供することを目的としている。また、ガスケットの嵌合突起の形状の均一化に資することができ、しかも、気密性やシール性の低下を防ぐことにより、容器本体内の基板の汚染を排除することを他の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明においては上記課題を解決するため、基板を収納可能な容器本体と、この容器本体の開口部を閉鎖する蓋体と、容器本体の開口部と蓋体との間に介在されてシールする変形可能なガスケットとを備え、容器本体の開口部周縁が幅方向外側に屈曲することにより、容器本体の開口部内周に蓋体用の段差受面が形成され、蓋体に、ガスケット用の取付溝が形成されたものであって、
ガスケットは、蓋体の取付溝に嵌め入れられる基材部と、この基材部から突き出て取付溝の内面に接触する固定用の嵌合突起と、基材部から突き出て容器本体の開口部内周の段差受面に接触するシール片
と、基材部における容器本体の開口部内周の段差受面に対向する対向面と反対側の面に形成されて蓋体の取付溝の内面に接触する接触突起とを含み、
基材部が拡幅に形成されて容器本体の開口部を蓋体が閉鎖する場合に基材部の少なくとも周縁が容器本体の開口部内周の段差受面に対向可能とされ、
嵌合突起は、基材部から突き出て基材部の取付溝に対する反嵌め入れ方向に傾斜する第一の傾斜辺と、基材部から第一の傾斜辺方向に突き出る第二の傾斜辺と、この第二の傾斜辺から傾きながら伸びて第一の傾斜辺の先端部に接続される第三の傾斜辺とを含み、基材部から第一、第三の傾斜辺の接続部分までの高さが0.3〜3.0mmとされ、第一、第三の傾斜辺の形成する角度が45°〜135°の範囲とされるとともに、第一、第二の傾斜辺の形成する角度が30°〜43°の範囲とされており、
シール片が幅方向外側に先細りに突出することを特徴としている。
【0018】
ここで、特許請求の範囲における基板には、少なくともφ200、300、450mmの半導体ウェーハ、ガラスウェーハ、マスクガラス等が必要数含まれる。容器本体は、正面の開口したフロントオープンボックスが主ではあるが、上面の開口したトップオープンボックスでも良く、透明、不透明、半透明のいずれでも良い。
【0019】
蓋体については、容器本体の開口部内に嵌め合わされる蓋本体と、この蓋本体の開口した表面を被覆する表面プレートとから形成し、これら蓋本体と表面プレートとの間に蓋体施錠用の施錠機構を介在することができる。この蓋体の取付溝は、容器本体の開口部に対する蓋体の取り付け取り外し方向と略垂直の方向に形成されることが好ましい。また、ガスケットの基材部、固定用の嵌合突起、シール片は、平面枠形等のエンドレスに形成することができる。固定用の嵌合突起は、基材部の表裏両面の少なくともいずれか一方の面の全周から必要数突き出ることが好ましい。
【0020】
本発明によれば、基板を収納した容器本体の開口部を蓋体により閉鎖する場合、容器本体の開口部に蓋体が所定の加圧力で嵌め合わされ、容器本体内の段差受面に蓋体の周縁部が接触するとともに、これら容器本体の段差受面と蓋体の周縁部との間にガスケットのシール片が挟み持たれ、ガスケットのシール機能が発揮されて基板の汚染等が有効に防止される。この際、容器本体の段差受面にガスケットの少なくとも周縁が接触して蓋体の過度な嵌め合わせを規制する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、基材部を拡幅に形成して容器本体の開口部を蓋体が閉鎖する場合に基材部の少なくとも周縁を容器本体の開口部内周の段差受面に対向可能とするので、ガスケットのシール片等の損傷を防止し、困難な蓋体の取り外しを容易にすることができるという効果がある。
【0022】
また、ガスケットの基材部における容器本体の段差受面に対向する対向面と反対側の面に、取付溝の内面に接触する接触突起を形成すれば、基材部の大きな変形を防ぐことができ、基材部が蓋体の取付溝から位置ずれするのを防止することができる。
【0023】
また、ガスケットの嵌合突起の形状の均一化を図ることができ、気密性やシール性の低下を防ぐことにより、容器本体内の基板の汚染を排除することができる。また、ガスケットの基材部から嵌合突起の第一、第三の傾斜辺の接続部分までの高さが0.3〜3.0mmの範囲なので、蓋体の取付溝にガスケットの基材部を強固に固定し、ガスケットの位置ずれや脱落を有効に防ぐことが可能になる。また、優れた成形性や固定性を得ることが可能になる。
【0024】
さらに、ガスケットの嵌合突起の第一、第三の傾斜辺の形成する角度が45°〜135°の範囲であり、第一、第二の傾斜辺の形成する角度が30°〜43°の範囲なので、嵌合突起の先端部の先端が細く、先端部の根元が太くなり、蓋体の取付溝に嵌合突起の第一の傾斜辺やその先端を隙間なく一様に密接させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、
図1ないし
図5に示すように、複数枚の半導体ウェーハを整列収納する容器本体1と、この容器本体1の開口した正面2に嵌合される蓋体10と、容器本体1の正面2と蓋体10との間に介在されてシールする変形可能なガスケット20とを備え、ガスケット20の基材部21の外周縁22を容器本体1の正面2の段差受面7に対向接触可能とするようにしている。
【0027】
各半導体ウェーハは、図示しないが、例えば775μmの厚さを有するφ300mmのシリコンウェーハからなり、半導体部品の製造工程(500〜600工程にも及ぶ)で各種の加工や処理が適宜施され、容器本体1に25枚が水平に挿入して収納されるとともに、容器本体1の上下方向に整列する。
【0028】
容器本体1や蓋体10は、所要の樹脂を含有する成形材料により複数の部品がそれぞれ射出成形され、この複数の部品の組み合わせで構成される。この成形材料に含まれる樹脂としては、例えばポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、液晶ポリマーといった熱可塑性樹脂やこれらのアロイ等があげられる。
【0029】
これらの樹脂には、カーボン繊維、カーボンパウダー、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー等からなる導電物質やアニオン、カチオン、非イオン系等の各種帯電防止剤が必要に応じて添加される。また、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、シアノアクリレート系、オキザリックアシッドアニリド系、ヒンダードアミン系の紫外線吸収剤が添加されたり、剛性を向上させるガラス繊維や炭素繊維等も選択的に添加される。
【0030】
容器本体1は、
図1、
図3、
図4に示すように、フロントオープンボックスタイプに形成されてその開口した正面2の周縁部3が幅方向外側に屈曲して張り出し形成され、開口した正面2を水平横方向に向けた状態で半導体製造工場の天井搬送機構に把持して工程間を搬送されたり、半導体加工装置に付属のロードポート上に位置決めして搭載される。この容器本体1は、その内部両側、換言すれば、両側壁の内面に、半導体ウェーハを略水平に支持する左右一対の支持片4がそれぞれ対設され、両側壁の内面後部に、半導体ウェーハの過剰な挿入を規制する位置規制部がそれぞれ一体形成される。
【0031】
左右一対の支持片4は、上下方向に所定のピッチで配列され、上下方向に隣接する支持片4と支持片4との間に、支持片4から浮上した半導体ウェーハの周縁部側方を支持する支持溝が区画形成される。各支持片4は、半導体ウェーハの側部周縁を支持する細長い板形に形成され、前部表面に、半導体ウェーハの前方への飛び出しを規制する段差部が一体形成される。
【0032】
容器本体1の底板裏面における前部両側と後部中央とには、容器本体1を位置決めする位置決め具がそれぞれ配設される。また、容器本体1の底板裏面には、別体のボトムプレートが螺子具を介して水平に螺着され、このボトムプレートが複数の位置決め具をそれぞれ露出させる。
【0033】
容器本体1の区画された天板中央部には、半導体製造工場の天井搬送機構に把持される搬送用のトップフランジ5が着脱自在に装着され、容器本体1の幅方向外側に張り出した正面2の周縁部3の内周部6には、蓋体10支持用の段差受面7が形成されており、容器本体1の正面内周部6における上下部の両側には、蓋体10の施錠機構16用の施錠穴がそれぞれ穿孔される。
【0034】
容器本体1の背面壁内面の左右両側には、半導体ウェーハの周縁部後方を支持可能な左右一対のリアリテーナが並べて形成され、この一対のリアリテーナが容器本体1の上下方向に所定のピッチで配列される。また、容器本体1の両側壁中央部には、略H字形の装着部8がそれぞれ区画形成され、各装着部8に、握持操作用に機能するグリップ部が着脱自在に装着される。
【0035】
蓋体10は、
図1、
図3、
図4に示すように、容器本体1の開口した正面2内に圧入して嵌合される蓋本体11と、この蓋本体11の開口した正面を被覆する複数の表面プレート14と、これら蓋本体11と複数の表面プレート14との間に介在配備される施錠用の施錠機構16とを備え、蓋本体11の周壁が容器本体1の開口した正面2の内周部6に接触する。蓋本体11は、基本的には底の浅い断面略皿形に形成され、内部に補強用や取付用のリブが複数配設されるとともに、内部の中央が開口方向に正面矩形に隆起しており、半導体ウェーハに対向する対向面である裏面に、半導体ウェーハを弾発的に保持するフロントリテーナ12が装着される。
【0036】
フロントリテーナ12は、例えば蓋本体11の裏面中央部に装着される縦長の枠体を備え、この枠体の左右両側部の間に、複数の弾性片が上下に並べて架設されており、各弾性片に、可撓性や弾性が付与される。各弾性片には、半導体ウェーハの前部周縁をV溝等で保持する保持ブロックが一体形成されるが、この保持ブロックには、V溝の代わりにU字溝が必要に応じて形成される。
【0037】
蓋本体11の裏面周縁部には、蓋体10や蓋本体11の嵌合方向(
図3の矢印方向)とは直交する方向に開口した枠形の取付溝13が凹み形成され、この取付溝13内には、容器本体1の段差受面7に圧接するガスケット20が密嵌される。取付溝13は、蓋体10が容器本体1の正面2に嵌合されたり、取り外される場合の移動方向と垂直の方向に形成されることが好ましい。
【0038】
これは、移動方向と垂直の方向に形成されれば、容器本体1の正面2に蓋体10が圧入嵌合される際、取付溝13からガスケット20の基材部21がずれるのをきわめて有効に防止することができるからである。これに対し、移動方向と平行の方向に形成されると、蓋体10が取り外され、基材部21の圧縮が開放される際、取付溝13の開口側に基材部21がずれやすくなる。特に、容器本体1の段差受面7に基材部21の外周縁22が接触して圧縮される際、基材部21の変形量が大きく、ずれ易さも顕著となる。
【0039】
蓋本体11の周壁における上下の両側部には、容器本体1の施錠穴に対向する施錠機構16用の出没孔が貫通して穿孔される。
各表面プレート14は、縦長の板に形成され、補強用や取付用のリブ、螺子孔等が複数配設されており、蓋本体11の正面側方に覆着される。この表面プレート14には、施錠機構16用の操作孔15がそれぞれ穿孔される。
【0040】
施錠機構16は、蓋本体11の左右両側部にそれぞれ軸支されて外部から回転操作される左右一対の回転プレート17と、各回転プレート17の回転に伴い蓋体10の上下方向にスライドする複数の進退動プレート18と、各進退動プレート18のスライドに伴い蓋本体11の出没孔から出没して容器本体1の施錠穴に接離する複数の施錠爪19とを備えて構成される。この施錠機構16は、容器本体1や蓋体10と同様の成形材料により射出成形される。各回転プレート17は、蓋体10の表面プレート14の操作孔15に対向し、この操作孔15を貫通したロードポートの操作キーにより回転操作される。
【0041】
ガスケット20は、
図1ないし
図5に示すように、蓋体10の取付溝13内に嵌入される平面枠形の基材部21と、この基材部21の表裏両面からそれぞれエンドレスに突出して取付溝13の内面に圧接変形する固定用の複数の嵌合リブ23と、基材部21の少なくとも表裏いずれかの面から複数突出して取付溝13の内面に圧接する接触突起28と、基材部21から突出して容器本体1の正面内周部6に弾接する屈曲可能なエンドレスのシール片29とから一体成形される。このガスケット20は、例えば耐熱性や耐候性等に優れるポリエステル系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系の熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム等を成形材料として弾性変形可能な平面略枠形に射出成形される。
【0042】
基材部21は、断面矩形に形成され、表裏両面が取付溝13の一対の内面にそれぞれ対向する。この基材部21は、従来よりも幅方向外側(
図3、
図4の左右方向)に拡幅に形成され、容器本体1の開口した正面2を蓋体10が嵌合閉鎖する場合、周縁である外周縁22が容器本体1の内周部6の段差受面7、換言すれば、シール形成面にオーバーラップして対向接触し、この対向接触により、蓋体10の過剰な圧入を規制するよう機能する。基材部21の表面あるいは裏面から嵌合リブ23の先端部27までの高さH(厚さ)は、蓋体10の取付溝13内の高さ(長さ)よりも高く形成される。
【0043】
各嵌合リブ23は、
図3ないし
図5に示すように、基材部21の表面あるいは裏面から長く突出して基材部21の取付溝13に対する反嵌入方向、換言すれば、シール片29方向に40°〜45°程度の角度で傾斜する第一の傾斜辺24と、基材部21の表面あるいは裏面から第一の傾斜辺24の先端部27方向に略垂直に起立して長く突出する第二の傾斜辺25と、この第二の傾斜辺25の自由端部から傾きながら伸びて第一の傾斜辺24の先端部27に接続される短い第三の傾斜辺26とを備え、根元部が広く太く、先端部27が切り欠き状態の薄く細い断面略鋸刃形(略縦挽鋸の刃形状)に形成される。
【0044】
基材部21の表面あるいは裏面から嵌合リブ23までの高さH、より具体的には第一、第三の傾斜辺24・26の接続部分までの高さHは、成形性や固定性を確保する観点から、0.3〜3.0mm、好ましくは0.4〜2.0mm、より好ましくは0.5〜1.5mmの範囲とされる。
【0045】
第一、第三の傾斜辺24・26は、嵌合リブ23の先端部27の先端を薄く細く形成し、先端部27の根元を太く形成する。これら第一、第三の傾斜辺24・26が形成する頂角の角度θ1は、第一の傾斜辺24と第二の傾斜辺25の延長線とが形成する角度θ2よりも大きく形成される。
【0046】
θ1の角度を形成する先端部(頂部)27の高さは、0.05〜0.2mm程度に形成される。これは、0.05mm以上であれば、シール性能の維持が期待できるからである。また、0.2mm以下であれば、ショートショット等の成形性の問題がなく、嵌合リブ23の根元にかけての肉厚が大きくならないので、
図5に示すような嵌合リブ23の柔軟性を確保することができ、シール性能を維持することができるからである。
【0047】
第一、第三の傾斜辺24・26の形成する角度θ1は、具体的には、嵌合リブ23の先端部27の十分な気密性やシール性を確保し、良好な成形性を得る観点から、45°〜135°、好ましくは80°〜100°、より好ましくは85°〜95°の範囲とされる。これに対し、第一の傾斜辺24と第二の傾斜辺25の延長線とが形成する角度θ2は、30°〜43°、好ましくは33°〜42°、より好ましくは35°〜40°の範囲とされる。
【0048】
複数の接触突起28は、基材部21の少なくとも表裏いずれかの面に断面略半円形に突出形成されるが、一部の接触突起28は、基材部21における容器本体1の段差受面7に対向する対向面とは反対側の面に突出形成され、シール片29の根元部付近に位置することが好ましい。これは、反対側の面に突出形成されれば、基材部21の大きな変形を防止することができ、基材部21が取付溝13から位置ずれすることを防止することができるからである。
【0049】
シール片29は、基材部21の外周縁22から幅方向外側にやや円弧形に湾曲しながら先細りになるよう突出し、容器本体1の開口した正面2に蓋体10が圧入して嵌合される場合に、容器本体1の正面内周部6の段差受面7に屈曲しながら弾接することにより、シール機能を発揮する。このシール片29は、基材部21の外周縁22の角部から容器本体1の段差受面7方向に突出することが好ましい。
【0050】
上記構成において、蓋体10にガスケット20を取り付ける場合には、蓋本体11の取付溝13にガスケット20の基材部21を嵌入し、ガスケット20のシール片29を蓋本体11の周壁方向に指向させて屈曲可能とすれば、蓋体10にガスケット20を取り付けることができる。
【0051】
この際、ガスケット20の各嵌合リブ23や各接触突起28が取付溝13の内面に圧接して潰れるよう変形し、各嵌合リブ23の第一の傾斜辺24やその先端部27が取付溝13の内面に隙間なく追従しながら一様に密接する(
図4参照)。このような嵌合リブ23や接触突起28の変形により、蓋体10の取付溝13にガスケット20が固定され、ガスケット20の位置ずれや脱落が有効に防止される。
【0052】
また、容器本体1の開口した正面2を蓋体10により嵌合閉鎖する場合には、容器本体1の正面2に蓋体10が圧入して嵌合され、容器本体1の内周部6の段差受面7に蓋体10の周縁部が接触するとともに、これら容器本体1の内周部6の段差受面7と蓋体10の周縁部との間にガスケット20のシール片29が屈曲して挟持され、このシール片29の挟持により、ガスケット20のシール機能が発揮されて半導体ウェーハの汚染が防止される。
【0053】
この際、容器本体1の段差受面7の角部付近にガスケット20の外周縁22が接触するので、例え容器本体1の正面2に蓋体10が過剰な力で圧入されても、蓋体10が必要以上に押圧して嵌合されることがない。したがって、ガスケット20のシール片29が段差受面7により引き千切られることがなく、蓋体10を後から簡単に取り外すこともできる。
【0054】
上記構成によれば、ガスケット20の外周縁22が従来のストッパ30として機能するので、例え容器本体1の正面2に蓋体10が過剰な力で圧入されても、ガスケット20のシール片29が損傷することが全くなく、嵌合した蓋体10を簡易に取り外すことができ、しかも、基材部21の嵌合抜けの防止が期待できる。また、蓋体10の裏面周縁部に、ガスケット20とは別の箇所に位置して容器本体1の段差受面7に接触するストッパ30を設ける必要がないので、蓋体10や金型の構造の複雑化を防止することができ、部品点数の削減や蓋体10の組立作業の効率化を図ることができる。
【0055】
また、嵌合リブ23の先端部27先端が狭く細いものの、先端部27の根元が広く太い断面略鋸刃形なので、きわめて良好な成形性を得ることができ、嵌合リブ23の形状の均一化を図ることもできる。また、嵌合リブ23の第一、第三の傾斜辺24・26が形成する角度θ1が第一の傾斜辺24と第二の傾斜辺25の延長線とが形成する角度θ2よりも大きいので、嵌合リブ23の先端部27が肉厚となることがない。
【0056】
したがって、取付溝13の内面に嵌合リブ23の先端部27が十分に追従するので、金型の入れ子線等で取付溝13に生じる僅かな凹凸により、気密性やシール性が低下するおそれを確実に排除することが可能になる。さらに、気密性やシール性を有効に維持することができるので、容器本体1内に外部の気体が流入することがなく、容器本体1内に収納された半導体ウェーハの汚染を防止することが可能になる。
【0057】
なお、上記実施形態においては容器本体1の段差受面7の角部にガスケット20の外周縁22を接触させたが、容器本体1の段差受面7にガスケット20の表裏いずれかの面の中央部付近から外周縁22に亘る箇所を接触させ、蓋体10の過剰な嵌合を規制しても良い。
【0058】
また、ガスケット20の基材部21の表面あるいは裏面から嵌合リブ23をエンドレスに突出させても良い。また、基材部21の少なくとも表裏いずれかの面から突出する複数の接触突起28を平面枠形に形成しても良いし、基材部21の少なくとも表裏いずれかの面に複数の接触突起28を所定の間隔で配列形成しても良い。さらに、ガスケット20のシール片29の先端部を断面円形等に湾曲形成することもできる。