特許第6576837号(P6576837)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576837
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】可動部用長尺体
(51)【国際特許分類】
   H02G 11/00 20060101AFI20190909BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20190909BHJP
   F16G 13/16 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   H02G11/00 060
   H02G3/04 075
   F16G13/16
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-3445(P2016-3445)
(22)【出願日】2016年1月12日
(65)【公開番号】特開2017-127054(P2017-127054A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2018年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207089
【氏名又は名称】大電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】松永 大輔
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−255419(JP,A)
【文献】 特開2013−76452(JP,A)
【文献】 特表2006−507788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/00
H02G 3/04
F16G 13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心線及び/又は管を、一又は複数本有して可撓性のある一又は複数本のケーブル部と、
当該ケーブル部の外周の一部に一体に取り付けられて、ケーブル部長手方向へ所定間隔で多数並べて配設される弾性変形可能な材質製の連結片と、
前記ケーブル部長手方向へ多数密に並べて配置される、ケーブル部及び連結片より硬質で、且つ使用状態のケーブル部に加わり得る大きさの外力では変形しない剛性を有する材質製の規制用ブロック体とを備え
前記規制用ブロック体が、一つの規制用ブロック体で前記連結片の少なくともケーブル部長手方向の両端部を被覆する状態として、ケーブル部長手方向へ連結片毎に設けられることを
特徴とする可動部用長尺体。
【請求項2】
前記請求項1に記載の可動部用長尺体において、
前記各規制用ブロック体が、前記ケーブル部側に突出してケーブル部の側方に位置する突出部を形成され、
ケーブル部所定箇所を、当該所定箇所における複数の規制用ブロック体の突出部同士がケーブル部長手方向側の端部で当接し合う所定の曲率まで屈曲させると、前記所定箇所でのさらに曲率を大きくする向きへのケーブル部の動きが、前記突出部同士の当接に基づいて制限される、屈曲制限状態となることを
特徴とする可動部用長尺体。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の可動部用長尺体において、
前記規制用ブロック体が、ケーブル部長手方向の一方側で隣合う他の規制用ブロック体に向けて突出する凸部を一体に形成されると共に、ケーブル部長手方向の他方側で隣合う別の規制用ブロック体から突出する前記凸部を挿入可能となる凹部を穿設され、
前記凸部が、前記規制用ブロック体をケーブル部長手方向に密に並べて、隣合う他の規制用ブロック体における凹部に挿入されている状態を、前記ケーブル部の屈曲変形に伴う規制用ブロック体の他の規制用ブロック体に対する相対移動を経ても維持可能となる突出長さとして形成されることを
特徴とする可動部用長尺体。
【請求項4】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載の可動部用長尺体において、
前記規制用ブロック体が、前記連結片に対し係合させて取り付けられ、連結片との係合状態を維持しつつ、ケーブル部の変形に伴う連結片の変形を許容することを
特徴とする可動部用長尺体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械や産業用ロボット等、固定部分に対し可動部が所定範囲内で直線状に繰返し移動する装置において、固定部分と可動部との間で電力や制御信号を伝えるケーブル、あるいは空気圧等を送給する管として、屈曲を一部規制された状態で使用される可動部用長尺体に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械や産業用ロボット等では、固定状態の装置本体に対し移動する機構部分を用いて、加工や搬送、実装等の複雑な作業を実行する仕組みであり、こうした作業を実行する機構部分は、固定の装置本体に対して所定の範囲で動く可動部となっているが、こうした可動部に設けられた様々な機構を適切に動作させるために、可動部と固定状態の装置本体との間は、電力を送給したり制御信号を伝えるケーブルや、油圧や空気圧を送給する管等で接続されている。
【0003】
このような装置において、可動部と固定部分との間に設けられるケーブルやチューブ等は、適度な可撓性を有して、可動部の移動に追随する必要があるものの、これらが無秩序に動いて装置の動作に支障を与えることは避けなければならないため、こうしたケーブル類の動きを適切な状態に保つ保護案内ガイドが従来から提案されている。その一例として、特開2003−83473号公報に開示されるものがある。
【0004】
前記従来の保護案内ガイドは、複数のケーブル類を内包してケーブル移動端部とケーブル固定端部に連結される合成樹脂製の可撓性管と、この可撓性管に所定間隔で包囲嵌合されて設けられる多数の屈曲規制ユニットとを有する構成である。
【0005】
また、近年では、こうしたケーブル類の保護案内ガイドを使用することなく、一定の軌道上を問題なく移動する状態を維持できるケーブルが提案されており、このようなケーブルの例として、特開2009−259658号公報や特開2009−259659号公報に開示されるものがある。
【0006】
さらに、本出願人により、簡略な構造ながら従来の諸問題を解決して、保護案内ガイドを使用せずに適切な移動状態を維持可能なケーブル等が提案されており、それらの例が、特許第5438753号公報や特許第5674069号公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−83473号公報
【特許文献2】特開2009−259658号公報
【特許文献3】特開2009−259659号公報
【特許文献4】特許第5438753号公報
【特許文献5】特許第5674069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の保護案内ガイドは前記特許文献1に示される構成となっており、保護案内ガイドは所定の伸張姿勢及び屈曲姿勢を保持して、一定の移動領域内で移動することができ、この保護案内ガイド内にケーブル及びチューブ等を挿通させることによって、これらケーブル及びチューブ等の移動領域を適切に規制することができる。
【0009】
しかしながら、この特許文献1の例では、ケーブル以外に別途保護案内ガイドを用いる分、装置のコストが上昇すると共に、可動部の移動に伴う保護案内ガイドの移動によって、各屈曲規制ユニットが相互に当接し、各当接部分が磨耗することによって、粉塵発生を招いていた。また、各屈曲規制ユニットが相互に当接、離隔を繰り返すことにより、騒音も発生していた
【0010】
このような特許文献1の例に対し、前記特許文献2、3に示される従来のケーブルは、保護案内ガイドを使用しないことで、前記粉塵や騒音の面で有利な効果を得るものであった。一方、これら特許文献2、3の例では、使用状態でケーブルのU字形状の平行部分における平行度を維持可能とするために、ケーブル全体の可撓性を調整している結果として、移動に際し本来屈曲すべき箇所でのスムーズな屈曲が生じにくくなり、また、ケーブル内部の構造が複雑且つ特殊化することから、ケーブル製造コストが上昇するという課題を有していた。
【0011】
さらに、前記特許文献4、5に示される、本出願人により提案された従来のケーブル等の条材は、心線や管を内蔵する一又は複数本のケーブル部と、このケーブル部の外周の一部に、ケーブル部長手方向へ複数密に並べて配設されるブロック体とを備える構成を有して、ケーブル部のブロック体の存在する側を外側とする向き以外への屈曲に対する剛性が確保され、ケーブル部が外力を受けてもブロック体の存在する側を外側とする向きでのみ屈曲して、意図しない不要な屈曲が生じず、且つ可動部が移動する場合に屈曲部分の位置変化が安定したものとなる、という優れた特長を有している。
【0012】
ただし、前記特許文献4、5における、屈曲を規制するブロック体は、現実にはケーブル部のシースに近い材質が多く用いられるため、適度な厚さを付与して剛性を高めていても、弾性変形を完全には抑えられず、ケーブル部にそのブロック体配設側が内周側となる向きへ屈曲させようとする外力が加わった場合に、相互に密着して押し合うブロック体がわずかに弾性変形して、上記の向きへのケーブル部の若干の屈曲変形が生じ得るものとなっていた。こうした変形はごくわずかで、通常はほとんど問題とはならないものの、例えば可動部の移動距離が大きく、その分ケーブル部の直線部分の最大長さも大きくなる装置への適用の場合に、直線部分のたわみ量が大きくなって許容量を超えるおそれがあるという課題を有していた。
【0013】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、簡略な構造ながら意図しない不要な屈曲が生じず、また屈曲すべき向きには適度に屈曲でき、可動部の移動に支障を与えることがない、可動部用長尺体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る可動部用長尺体は、心線及び/又は管を、一又は複数本有して可撓性のある一又は複数本のケーブル部と、当該ケーブル部の外周の一部に一体に取り付けられて、ケーブル部長手方向へ所定間隔で多数並べて配設される弾性変形可能な材質製の連結片と、当該連結片の少なくともケーブル部長手方向の両端部を被覆する状態でケーブル部長手方向へ多数密に並べて配置される、ケーブル部及び連結片より硬質で、且つ使用状態のケーブル部に加わり得る大きさの外力では変形しない剛性を有する材質製の規制用ブロック体とを備えるものである。
【0015】
このように本発明においては、作動要素としての電気や光を通す心線、及び/又は作動要素としての空気や作動油等を通す管、を内蔵するケーブル部に対し、複数の弾性変形可能な連結片をケーブル部長手方向に並べて配設すると共に、連結片と組合わされる硬質で容易に変形しない規制用ブロック体を設け、連結片及び規制用ブロック体の存在する側を内周側とする向きへのケーブル部の屈曲に関しては、ケーブル部長手方向に密に並んだ規制用ブロック体同士が互いに当接して、それ以上は相互の距離を縮められない状態となることにより、仮にケーブル部をその連結片及び規制用ブロック体の存在する側を内周側とする向きに屈曲させようとする外力が加わったとしても、ケーブル部長手方向で各規制用ブロック体が互いに密着するだけでなく、密着する規制用ブロック体が互いに押し合う中で規制用ブロック体は弾性変形せず形状を維持して、ケーブル部の前記向きへ屈曲しようとして動く余地をほとんど生じさせないこととなり、ケーブル部の屈曲に係る変形を適切に規制でき、連結片及び規制用ブロック体の存在する側を内側とする向きの屈曲を確実に防止可能となる。
【0016】
また、ケーブル部を連結片及び規制用ブロック体の存在する側を外側とするような屈曲については、規制用ブロック体は互いに離隔して、この屈曲に係るケーブル部の動きを直接拘束することはない上、規制用ブロック体とケーブル部とを連結する弾性変形可能な連結片が、少なくともケーブル部への取付部分でケーブル部の変形に追随して、ケーブル部の屈曲変形をストレスなく許容できることから、ケーブル部は規制用ブロック体の影響を受けずに屈曲でき、結果として、ケーブル部は外力を受けて、連結片及び規制用ブロック体の存在する側を外側とする向きでのみ屈曲されることとなり、別途保護案内ガイド等を用いなくても、所定の移動領域内での可動部用長尺体一端部分の移動に際し、意図しない不要な屈曲が生じず、全体では屈曲部分以外を直線状とする略U字状の形態を維持しつつ、前記一端部分の移動を安定して行わせることができる。
【0017】
また、本発明に係る可動部用長尺体は必要に応じて、前記各規制用ブロック体が、前記ケーブル部側に突出してケーブル部の側方に位置する突出部を形成され、ケーブル部所定箇所を、当該所定箇所における複数の規制用ブロック体の突出部同士がケーブル部長手方向側の端部で当接し合う所定の曲率まで屈曲させると、前記所定箇所でのさらに曲率を大きくする向きへのケーブル部の動きが、前記突出部同士の当接に基づいて制限される、屈曲制限状態となるものである。
【0018】
このように本発明においては、規制用ブロック体のケーブル部側への突出部分同士の当接で屈曲の曲率が規定されることにより、ケーブル部に所定の剛性を付加するような複雑な構造としなくても、屈曲部分では適度な屈曲状態が得られ、ケーブル部の屈曲を適切に制御しつつ、製造コストを抑えられる。
【0019】
また、本発明に係る可動部用長尺体は必要に応じて、前記規制用ブロック体が、ケーブル部長手方向の一方側で隣合う他の規制用ブロック体に向けて突出する凸部を一体に形成されると共に、ケーブル部長手方向の他方側で隣合う別の規制用ブロック体から突出する前記凸部を挿入可能となる凹部を穿設され、前記凸部が、前記規制用ブロック体をケーブル部長手方向に密に並べて、隣合う他の規制用ブロック体における凹部に挿入されている状態を、前記ケーブル部の屈曲変形に伴う規制用ブロック体の他の規制用ブロック体に対する相対移動を経ても維持可能となる突出長さとして形成されるものである。
【0020】
このように本発明においては、ケーブル部を屈曲させていない状態と屈曲状態のいずれでも、規制用ブロック体からケーブル部長手方向に突出する凸部が隣の他の規制用ブロック体の凹部への挿入状態を維持し、規制用ブロック体に対し隣合う他の規制用ブロック体のケーブル部屈曲に伴う相対移動以外のずれを生じにくくすることにより、規制用ブロック体全体としてケーブル部の屈曲する向き以外の横方向などへの変形を防止でき、あらかじめ設定された規制用ブロック体を外周側とする向きの屈曲以外の変形をケーブル部に生じさせず、ケーブル部の挙動を横揺れや蛇行等のない安定したものにできる。
【0021】
また、本発明に係る可動部用長尺体は必要に応じて、前記規制用ブロック体が、前記連結片に対し係合させて取り付けられ、連結片との係合状態を維持しつつ、ケーブル部の変形に伴う連結片の変形を許容するものである。
【0022】
このように本発明においては、連結片とは別部材である規制用ブロック体を連結片と係合させて、連結片を介したケーブル部との連結状態とし、規制用ブロック体が連結片との係合一体化状態を維持しつつ、連結片の変形を許容することにより、製造工程でケーブル部に対し連結片を取り付けるタイミングと、ケーブル部に対し連結片を介して規制用ブロック体を連結するタイミングとを別に設定でき、製造工程の自由度が高くなりより効率的な長尺体の製造が図れると共に、ケーブル部が屈曲可能な向きに屈曲変形する際に、規制用ブロック体とは別部材の連結片が規制用ブロック体から受ける拘束を少なくして、連結片にケーブル部に追随する変形を無理なく生じさせられ、連結片に不要な応力が発生するのを抑えてその耐久性を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施形態に係る可動部用長尺体の一部切欠側面図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る可動部用長尺体の直線状部分における要部の斜視図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る可動部用長尺体における規制用ブロック体の連結片係合状態での正面図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る可動部用長尺体における規制用ブロック体の連結片係合状態での右側面図である。
図5図4のA−A断面図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る可動部用長尺体における規制用ブロック体の平面図である。
図7図6のB−B断面図である。
図8図6のC−C断面図である。
図9】本発明の第1の実施形態に係る可動部用長尺体における規制用ブロック体及び連結片のケーブル部取付過程説明図である。
図10】本発明の第1の実施形態に係る可動部用長尺体の屈曲部分における規制用ブロック体突出部の相互の当接状態説明図である。
図11】本発明の第1の実施形態に係る可動部用長尺体における連結片とケーブル部の連結維持状態説明図である。
図12】本発明の第1の実施形態に係る可動部用長尺体における他の規制用ブロック体の連結片との係合過程説明図である。
図13】本発明の第1の実施形態に係る他の可動部用長尺体における規制用ブロック体の連結片係合状態での正面図である。
図14】本発明の第1の実施形態に係る他の可動部用長尺体における規制用ブロック体の連結片係合状態での右側面図である。
図15】本発明の第1の実施形態に係る他の可動部用長尺体における規制用ブロック体の連結片係合状態での底面図である。
図16】本発明の第1の実施形態に係るさらに他の可動部用長尺体における規制用ブロック体の連結片係合状態での正面図である。
図17】本発明の第2の実施形態に係る可動部用長尺体における規制用ブロック体の連結片係合状態での正面図である。
図18】本発明の第2の実施形態に係る可動部用長尺体における規制用ブロック体の側面図である。
図19】本発明の第2の実施形態に係る可動部用長尺体における連結片の側面図である。
図20】本発明の第2の実施形態に係る可動部用長尺体における規制用ブロック体の連結片との係合過程説明図である。
図21】本発明の第3の実施形態に係る可動部用長尺体における規制用ブロック体の連結片係合状態での正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る可動部用長尺体を前記図1ないし図11に基づいて説明する。
前記各図において、本実施形態に係る可動部用長尺体1は、心線及び/又は管を一又は複数本内蔵して可撓性を有する複数のケーブル部11、12、13、14、15、16と、これらケーブル部11、12、13、14、15、16の外周の一部に一体に取り付けられて、ケーブル部長手方向へ所定間隔で多数並べて配設される連結片17と、これら連結片17にそれぞれ係合して、ケーブル部長手方向へ多数密に並んだ状態として配設される規制用ブロック体18とを備える構成である。
【0025】
前記ケーブル部11、12、13、14、15、16は、それぞれ作動要素を送通させる作動用長尺材、すなわち作動要素としての電気や光を通す心線11a、12a、13a、14a、15a、及び/又は、作動要素としての空気や作動油を通す管16aを、シース11b、12b、13b、14b、15b、16bで被覆して一又は複数本内蔵する構成である。円断面形状として形成されたこれら六本のケーブル部11、12、13、14、15、16は、三本ずつ連結されると共に、最終的に連結片17と規制用ブロック体18と組み合わされた状態で、略帯状に並設されることとなる。なお、ケーブル部として管を有するものを用いる場合は、シースを省略して管を直接ケーブル部として他のケーブル部やブロック体と連結一体化するようにしてもよい。
【0026】
前記連結片17は、平面視矩形状の板状部表面に複数の突起部17aを突設した形状として形成されるものであり、ケーブル部11、12、13、14、15、16のシース11b、12b、13b、14b、15b、16bと同素材又はシースと接着しやすい別の弾性変形可能な材質製とされ、三本ずつ連結されたケーブル部の組に対し、三本のケーブル部のいずれにも隣接する横幅とされ、これら三本のケーブル部の外周に一体に取り付けられてケーブル部長手方向に多数並べて配設される構成である。
【0027】
この連結片17は、突起部17aのある表面側とは反対側の面をケーブル部外周に取り付けられ、複数の突起部17aのある側に規制用ブロック体18を配設される。突起部17aは、規制用ブロック体18との係合状態を生じさせるためのものであり、突起部17aの先端部分は前記板状部寄り部分より太い形状とされる構成である。
【0028】
なお、この連結片17は、ケーブル部への取付状態でケーブル部の屈曲変形を阻害しない十分な柔軟性を有するものとされ、ケーブル部のシースと同様の弾性変形特性を有するものが好ましいが、各ケーブル部の外周に無理なく一体に連結させられるものであれば、ケーブル部のシースとは異なる素材で形成されるものでもかまわない。
【0029】
前記規制用ブロック体18は、ケーブル部11、12、13、14、15、16、及び連結片17より硬質で、且つ使用状態のケーブル部11、12、13、14、15、16に加わり得る大きさの外力では変形しない剛性を有する材質(例えば、硬質プラスチックや金属、セラミック、ガラス、木材、石材などの単一材又は複合材)で形成され、連結片17の少なくともケーブル部長手方向の両端部を被覆する状態でケーブル部長手方向へ多数密に並べて配置される構成である。
【0030】
規制用ブロック体18は、連結片17の各突起部17a先端面やケーブル部に取り付けられる部分等を除く連結片17の要部をカバー状に覆う形状部分を二つ連結した構造とされ、二つの連結片17と係合させて配設される構成である。
【0031】
この規制用ブロック体18は、異なるケーブル部の組にそれぞれ取り付けられる二つの連結片17とそれぞれ係合することで、結果として六本のケーブル部11、12、13、14、15、16と連結一体化し、六本のケーブル部を並列配置した状態を生じさせることとなる。
【0032】
規制用ブロック体18は、連結片17の各突起部17aを挿入可能となる孔18aを複数設けられる。先端を太くされた連結片17の突起部17aを、これより入口部分を小さくされた規制用ブロック体18の孔18aに挿入して係合させた状態とすることで、規制用ブロック体18はケーブル部の屈曲変形に伴う連結片17の変形を許容しつつ(図11参照)、外力が加わっても連結片17から外れにくい一体構造を維持できる。
【0033】
この規制用ブロック体18と連結片17との係合状態は、部品製造段階において、あらかじめ成形済みの規制用ブロック体18を組み込んだ型内キャビティに連結片となる樹脂材を充填し、連結片17を成型した結果として得られるものである。すなわち、個別に成形された規制用ブロック体18と連結片17とを係合させる過程を経ずに、連結片17の成型当初から係合一体化状態とされる。そして、連結片17をケーブル部外周に取り付ける際は、この規制用ブロック体18と一体化された状態の連結片17を、ケーブル部外周に取り付けることとなる。
【0034】
なお、規制用ブロック体18のケーブル部11、12、13、14、15、16に近い部分は、矩形ブロック形状における角部分を面取りした形状とされており、規制用ブロック体と一体化した連結片17を接着剤でケーブル部に接着一体化する場合に、面取り部分により生じる規制用ブロック体18とケーブル部間の空間部により、ケーブル部と規制用ブロック体18間のわずかな隙間に、連結片17とケーブル部との間からしみ出た接着剤が到達してケーブル部と規制用ブロック体18とを誤って接着状態としてしまうことを防止でき、規制用ブロック体18の存在する側を外側とするようにケーブル部を屈曲させる場合に、規制用ブロック体18がケーブル部の屈曲変形を阻害しない状態を、適切且つ容易に確保できる。
【0035】
また、この規制用ブロック体18は、連結片17と係合する二箇所に挟まれる中間部分で、係合状態の連結片17のケーブル部取付位置よりケーブル部側に突出してケーブル部の側方に位置する、側面視略台形状となる板状の突出部18bを形成される構成である。
【0036】
ケーブル部所定箇所を所定の曲率まで屈曲させると、この所定箇所に沿って存在する複数の隣り合う規制用ブロック体18の突出部18b同士が、台形状の突出部18bにおける斜辺部分でそれぞれ当接し合うことで(図10図11参照)、この所定箇所でのさらに曲率を大きくする向きへのケーブル部の動きを制限する屈曲制限状態となる。
【0037】
規制用ブロック体18ごとのケーブル部の屈曲度合いを定義する突出部18bの台形斜辺部分の傾斜角度は、ケーブル部がU字状に屈曲して向きを180°変えるまで所定数の規制用ブロック体18の突出部18bが当接した状態で、ケーブル部の屈曲半径が所定値となるように、それぞれ設定される。
【0038】
こうして、規制用ブロック体18のケーブル部側に突出させた突出部18b同士の当接で、ケーブル部の屈曲の曲率が制限されることで、ケーブル部に所定の剛性を付加するような複雑な構造としなくても、屈曲部分では適度な屈曲状態が得られ、ケーブル部の過度の屈曲を防いで耐久性や信頼性を向上させられる。
【0039】
さらに、この規制用ブロック体18におけるケーブル部長手方向の一方側の部位に、突出する凸形状とされる凸部18cが一体に配設される。また、規制用ブロック体18におけるケーブル部長手方向の他方側の部位には、別の規制用ブロック体の凸部18cを挿入可能となる凹部18dが穿設される構成である。
【0040】
この凹部18dは、ケーブル部長手方向及びケーブル部並設方向(規制用ブロック体長手方向)とはいずれも直角をなす規制用ブロック体18厚さ方向については、凸部18cを拘束しない溝状の凹形状とされる。そして、前記凸部18cは、一体の規制用ブロック体18他部分からケーブル部長手方向の一方側へ延長されて、隣合う他の規制用ブロック体18における凹部18dに挿入されている状態を、ケーブル部の屈曲変形に伴う規制用ブロック体18の他の規制用ブロック体18に対する相対移動を経ても維持可能となる十分な長さとして形成される。すなわち、凹部18dは、凸部18cを常に挿入された状態とされる。
【0041】
次に、本実施形態に係る可動部用長尺体の使用状態について説明する。可動部用長尺体1は、U字状に屈曲させた状態(図1参照)で所定の領域内に配設される。可動部用長尺体1はその一端が移動端とされ、また他端が固定端とされ、移動端の移動に対応して屈曲部分の位置が変化する。
【0042】
この時、重力などの外力がケーブル部11、12、13、14、15、16を連結片17及び規制用ブロック体18の存在する側を内側とする向きに屈曲させようとしていると仮定する。この場合は、ケーブル部を直線状態から屈曲させようとしても、規制用ブロック体18がケーブル部長手方向で互いに当接し、押し合う中で、硬質の規制用ブロック体が通常加わる力では変形しないことで、隣り合う規制用ブロック体同士が互いに近付く向きにはそれ以上相対移動できなくなる。これにより、ケーブル部に規制用ブロック体18の存在する側を内側とするような屈曲変形の余地を与えず、ケーブル部11、12、13、14、15、16の屈曲を阻止することとなる。こうして、U字状をなす可動部用長尺体各部のうち、中間の屈曲部分以外の直線状部分は、上記の各規制用ブロック体18による規制で、わずかに湾曲するようなこともなく直線状態を維持できる。
【0043】
一方、前記屈曲の向きとは逆向きの、ケーブル部11、12、13、14、15、16を連結片17及び規制用ブロック体18の存在する側を外側とするように屈曲する場合(図1図10参照)は、規制用ブロック体18同士の間隔が広がるようにケーブル部が変形することで、各規制用ブロック体18はケーブル部の屈曲部分外周に沿う向きに互いに相対移動でき、ケーブル部のさらなる屈曲変形に対する障害とはならない。これにより、ケーブル部11、12、13、14、15、16は、連結片17及び規制用ブロック体18の存在する側を外側とする向きで屈曲可能となり、可動部用長尺体1の移動端の移動動作に際して、長尺体中間部分を適度に屈曲させて前記U字状に屈曲させた状態を生じさせ、移動動作を安定して行えるようにしている。
【0044】
ただし、この場合、規制用ブロック体18のうち、ケーブル部の側方に位置する突出部18bは、ケーブル部を所定の曲率まで屈曲させると、隣り合う規制用ブロック体18の突出部18b同士がそれぞれ当接して、さらに曲率を大きくする向きへのケーブル部の動きを制限する屈曲制限状態となる。これにより可動部用長尺体1は、あらかじめ設定された適度な屈曲状態を越えてさらに曲率を大きくするように屈曲することはない。
【0045】
こうして、可動部用長尺体1の移動端の移動動作に際して、U字状に大きく向きを変えるように屈曲する一箇所以外の可動部用長尺体1各部で、意図しない不要な屈曲が生じず、移動動作が安定して行われる。
【0046】
また、各規制用ブロック体18においては、規制用ブロック体18の突出する凸部18cを、隣の他の規制用ブロック体に穿設された凹部18dに対し常時挿入状態としている。これにより、ケーブル部11、12、13、14、15、16を屈曲させている部位か、直線状として屈曲させていない部位かに関わりなく、凸部18cと凹部18dの係合による拘束で、所定の規制用ブロック体18に対し隣合う他の規制用ブロック体の、前記屈曲可能な向きへのケーブル部屈曲に伴う相対移動以外のずれ、特に、ケーブル部並設方向と一致する規制用ブロック体長手方向へのずれを生じにくくしている。
【0047】
そのため、可動部用長尺体1の移動端の移動動作に際し、規制用ブロック体同士のずれにくさに基づいて、ケーブル部11、12、13、14、15、16の屈曲する向き以外の横方向などへの変形を防止でき、特に、U字状の屈曲形態を採るケーブル部11、12、13、14、15、16の直線状部分について、その直線状の形状を維持しやすく、ケーブル部11、12、13、14、15、16の挙動を安定化できる。
【0048】
なお、円断面形状のケーブル部11、12、13、14、15、16では、連結片17との連結部分がごく小さい領域に限られるが、このような状態でも、ケーブル部11、12、13、14、15、16に対し、連結片17の隣接する部分を接着剤との親和性に優れる材質(同素材又は接着しやすい材質)として連結一体化していることで、両者は無理なく一体化して確実に連結状態を維持できる。さらに、ケーブル部11、12、13、14、15、16と弾性変形可能な連結片17との相互に隣接する部分は、ケーブル部の屈曲に伴う変形を経ても連結状態を維持可能である。
【0049】
そして、連結片17に規制用ブロック体18を係合させて、ケーブル部11、12、13、14、15、16と規制用ブロック体18とを連結することで、ケーブル部と比べて容易に変形しない硬質材製の規制用ブロック体18でも、移動に伴う屈曲の繰返しによる応力で規制用ブロック体18がケーブル部側から分離することはなく、連結片17を介してケーブル部との連結一体化した状態を確実に維持でき、連結片17及び規制用ブロック体18はケーブル部11、12、13、14、15、16の寿命程度まで屈曲の向きを制限する機能を維持できる。
【0050】
このように、本実施形態に係る可動部用長尺体においては、心線及び/又は管を内蔵するケーブル部11、12、13、14、15、16に対し、複数の弾性変形可能な連結片17をケーブル部長手方向に並べて配設すると共に、連結片17と組合わされる硬質で容易に変形しない規制用ブロック体18を設け、連結片17及び規制用ブロック体18の存在する側を内周側とする向きへのケーブル部の屈曲に関しては、ケーブル部長手方向に密に並んだ規制用ブロック体18同士が互いに当接して、それ以上は相互の距離を縮められない状態となることから、仮にケーブル部をその連結片17及び規制用ブロック体18の存在する側を内周側とする向きに屈曲させようとする外力が加わったとしても、ケーブル部長手方向で各規制用ブロック体18が互いに密着するだけでなく、密着する規制用ブロック体18が互いに押し合う中で弾性変形を伴わずその形状を維持して、ケーブル部の前記向きへ屈曲しようとして動く余地をほとんど生じさせないこととなり、ケーブル部の屈曲に係る変形を適切に規制でき、連結片17及び規制用ブロック体18の存在する側を内側とする向きの屈曲を確実に防止して、本来屈曲すべきでない部位を直線状の形状に維持できる
【0051】
また、ケーブル部11、12、13、14、15、16を連結片17及び規制用ブロック体18の存在する側を外側とするような屈曲については、規制用ブロック体18は互いに離隔して、この屈曲に係るケーブル部の動きを直接拘束することはない上、弾性変形可能な連結片17が、ケーブル部への取付部分でケーブル部の変形に追随して、ケーブル部の屈曲変形をストレスなく許容できることから、ケーブル部は規制用ブロック体18の影響を受けずに屈曲でき、結果として、ケーブル部は外力を受けて、連結片17及び規制用ブロック体18の存在する側を外側とする向きでのみ屈曲されることとなり、別途保護案内ガイド等を用いなくても、所定の移動領域内での可動部用長尺体一端部分の移動に際し、意図しない不要な屈曲が生じず、全体では屈曲部分以外を直線状とする略U字状の形態を維持しつつ、前記一端部分の移動を安定して行わせることができる。
【0052】
なお、前記実施形態に係る可動部用長尺体においては、六本のケーブル部11、12、13、14、15、16を略帯状に並設し、この並設されるケーブル部11、12、13、14、15、16に各連結片17及び規制用ブロック体18を隣接させて配設する構成としているが、これに限らず、ケーブル部を一本のみとしたり、ケーブル部を六本以外の複数本として並設する構成とすることもできる。また、ケーブル部を複数並設する場合に全てのケーブル部に各連結片17及び規制用ブロック体18を隣接させる構成としているが、これに限らず、複数並設した中の一部のケーブル部外周にのみ各連結片17及び規制用ブロック体18が隣接して配設される構成としてもかまわない。加えて、複数並設するケーブル部をいずれも同じ外径の円断面形状として用いる構成に限られるものはなく、複数のケーブル部の一部又は全部の外径を異なるものとして並設し、これらをそれぞれ各連結片17及び規制用ブロック体18と連結一体化させる構成とすることもできる。
【0053】
また、前記実施形態に係る可動部用長尺体においては、各ケーブル部11、12、13、14、15、16に対し、連結片17及び規制用ブロック体18を一体化してこれらがそれぞれケーブル部に隣接する状態とされ、特に、ケーブル部を複数並設した組に対し、あらかじめ係合状態として製造した連結片17及び規制用ブロック体18を一まとめで取り付けて一体化する構成としているが、この一体化させる手法についてはこれに限られるものではなく、例えば、連結片17と規制用ブロック体18とを別々に製造した上で、可動部用長尺体の組立段階で、図12に示すように、ケーブル部にまず連結片17のみをケーブル部長手方向に所定間隔で複数並べて取り付けた状態とした後で、各連結片17に規制用ブロック体18をそれぞれ係合させて、連結片17と規制用ブロック体18とが共にケーブル部長手方向に並んでケーブル部と一体化した状態を得るようにすることもできる。
【0054】
また、前記実施形態に係る可動部用長尺体において、規制用ブロック体18の突出部18bは、規制用ブロック体18の連結片17と係合する二つの部分の中間位置に設けられて、ケーブル部11、12、13の組と別のケーブル部14、15、16の組との間に挟まれるように配置された状態で、ケーブル部の屈曲部分が所定の曲率を超えて屈曲しないよう制限する構成としているが、これに限らず、図13図14、及び図15に示すように、規制用ブロック体18の突出部18eを、規制用ブロック体の側端部に設けて、突出部18eがケーブル部の外側に現れるようにすることもできる。この場合も、前記実施形態同様、突出部18eは、ケーブル部を所定の曲率まで屈曲させると、隣り合う規制用ブロック体18の突出部18e同士がそれぞれ当接して、さらに曲率を大きくする向きへのケーブル部の動きを制限できることとなる。
【0055】
また、前記実施形態に係る可動部用長尺体において、規制用ブロック体18には突出部18bが突設され、この突出部18bを隣り合う他の規制用ブロック体18の突出部18bと当接可能として、ケーブル部の屈曲の曲率を制限する構成としているが、ケーブル部の屈曲の曲率を突出部以外の手段、例えば、ケーブル部自体の剛性などで適度に規制できる場合には、図16に示すように、規制用ブロック体18に突出部を設けない構成としてもかまわない。
【0056】
また、前記実施形態に係る可動部用長尺体において、規制用ブロック体18は二つの連結片17と係合可能とされ、この規制用ブロック体18を、異なるケーブル部の組にそれぞれ取り付けられる二つの連結片17とそれぞれ係合させることで、結果として六本のケーブル部11、12、13、14、15、16と連結一体化し、六本のケーブル部を並列配置した状態を生じさせる構成としているが、これに限らず、図13図16に示すように、並列状態の六本のケーブル部に一つの連結片17のみ取り付けるようにすると共に、規制用ブロック体18もこの一つの連結片のみと係合可能として、一つの連結片で規制用ブロック体とケーブル部との連結一体化を図る構成とすることもできるなど、連結片の取付対象となるケーブル部の数や、規制用ブロック体と係合する連結片の数は適宜設定してかまわない。
【0057】
(本発明の第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る可動部用長尺体を前記図17ないし図20に基づいて説明する。
前記各図において、本実施形態に係る可動部用長尺体は、前記第1の実施形態同様、複数のケーブル部21、22、23、24、25、26と、連結片27と、規制用ブロック体28とを備える一方、異なる点として、連結片27と規制用ブロック体28を独立した別部材として形成し、あらかじめケーブル部21、22、23、24、25、26に取り付けた各連結片27と、各規制用ブロック体28とを係合させて、ケーブル部21、22、23、24、25、26と規制用ブロック体28とを連結一体化させる構成を有するものである。
【0058】
なお、前記ケーブル部21、22、23、24、25、26は、前記第1の実施形態同様、それぞれ作動要素を送通させる心線及び/又は管をシースで被覆して一又は複数本内蔵するものであり、詳細な説明を省略する。
【0059】
前記連結片27は、ケーブル部21、22、23、24、25、26のシースと同素材又はシースと接着しやすい別の弾性変形可能な材質で形成されるものであり、六本のケーブル部21、22、23、24、25、26のうち、三本ずつ連結されたケーブル部の組に対し、三本のケーブル部のいずれにも隣接する横幅とされ、これら三本のケーブル部の外周に一体に取り付けられてケーブル部長手方向に多数並べて配設される構成である。
【0060】
この連結片27のケーブル部外周に取り付けられる側とは反対側の部分には、規制用ブロック体28との係合状態を生じさせるための突条部27aが設けられる(図19参照)。この突条部27aは先端側部分がケーブル部寄り部分より太い形状とされる。
【0061】
前記規制用ブロック体28は、ケーブル部21、22、23、24、25、26及び連結片27より硬質で、且つ使用状態のケーブル部21、22、23、24、25、26に加わり得る大きさの外力では変形しない剛性を有する材質で形成され、連結片27のケーブル部長手方向の両端部を被覆する状態でケーブル部長手方向へ多数密に並べて配置される構成である。
【0062】
この規制用ブロック体28は、連結片27の一方の側部やケーブル部に取り付けられる部分等を除く連結片27の要部を覆う形状とされ、連結片27と係合した状態をなすように取り付けられる構成である。前記第1の実施形態同様、規制用ブロック体28は、異なるケーブル部の組にそれぞれ取り付けられる二つの連結片27とそれぞれ係合することで、結果として六本のケーブル部21、22、23、24、25、26と連結一体化し、六本のケーブル部を並列配置した状態を生じさせることとなる(図17参照)。
【0063】
詳細には、規制用ブロック体28は、連結片27の突条部27aを挿入可能となる溝28aをそれぞれ設けられる(図18参照)。連結片27のケーブル部近傍部分より大きく形成された突条部27aを、これより溝開口部分を小さくされた規制用ブロック体28の溝28aに横から挿入した形態の係合状態とすることで、規制用ブロック体28はケーブル部の変形に追随する連結片27の変形を許容しつつ、連結片27が規制用ブロック体28から外れにくい一体化構造を実現する。この規制用ブロック体28と連結片27との係合状態は、これら二つの部材を別々に製造し、実際に係合させて一体化するようにされる(図20参照)。
【0064】
この規制用ブロック体28は、前記第1の実施形態同様、連結片25のケーブル部取付位置よりケーブル部側に突出してケーブル部の側方に位置する突出部28bを形成される構成である。
【0065】
ケーブル部所定箇所を所定の曲率まで屈曲させると、この所定箇所における規制用ブロック体28の突出部28b同士がそれぞれ当接し合うことで、この所定箇所でのさらに曲率を大きくする向きへのケーブル部の動きを制限する屈曲制限状態となる。
【0066】
こうして、規制用ブロック体28のケーブル部側への突出させた突出部28b同士の当接で、ケーブル部の屈曲の曲率が規定されることで、ケーブル部に所定の剛性を付加するような複雑な構造としなくても、屈曲部分では適度な屈曲状態が得られ、ケーブル部の過度の屈曲を防いで耐久性や信頼性を向上させられ、コストを抑えられる。
【0067】
次に、本実施形態に係る可動部用長尺体の使用状態について説明する。可動部用長尺体は、前記第1の実施形態同様、U字状に屈曲させた状態で所定の領域内に配設され、その一端を移動端、他端を固定端とされて、移動端の移動に対応して屈曲部分の位置を変化させる。この時、外力等がケーブル部21、22、23、24、25、26を規制用ブロック体28の存在する側を内側とするように屈曲させようとしても、硬質の規制用ブロック体28が互いに当接して相対移動せず、ケーブル部21、22、23、24、25、26の屈曲は阻止される。
【0068】
その一方で、前記U字状に屈曲させた状態に対応する、ケーブル部21、22、23、24、25、26を規制用ブロック体28の存在する側を外側とするように屈曲する場合は、各規制用ブロック体28はケーブル部の屈曲部分外周に沿う向きに互いに相対移動でき、ケーブル部のさらなる屈曲変形に対する障害とはならず、ケーブル部21、22、23、24、25、26は屈曲可能である。結果としてケーブル部21、22、23、24、25、26は、規制用ブロック体28の存在する側を外側とする向きでのみ屈曲されることとなる。こうして、可動部用長尺体の移動端の移動動作に際して、可動部用長尺体各部で意図しない不要な屈曲が生じず、移動動作が安定して行われる。
【0069】
ただし、この場合も、前記第1の実施形態同様、規制用ブロック体28の突出部28bが、ケーブル部を所定の曲率まで屈曲させると、隣り合うもの同士でそれぞれ当接して、さらに曲率を大きくする向きへのケーブル部の動きを制限する状態となり、可動部用長尺体はあらかじめ設定された適度な屈曲状態を越えてさらに曲率を大きくするように屈曲することはない。
【0070】
このように本実施形態に係る可動部用長尺体においては、連結片25とは別部材である規制用ブロック体28を連結片27と係合させて、連結片27を介したケーブル部との連結状態とし、規制用ブロック体28が連結片27との係合一体化状態を維持しつつ、連結片27の変形を許容することにより、製造工程でケーブル部に対し連結片27を取り付けるタイミングと、ケーブル部に対し連結片27を介して規制用ブロック体28を連結するタイミングとを別に設定でき、製造工程の自由度が高くなりより効率的な長尺体の製造が図れると共に、ケーブル部が屈曲可能な向きに屈曲変形する際に、規制用ブロック体28とは別部材の連結片27が規制用ブロック体28から受ける拘束を少なくして、連結片27にケーブル部に追随する変形を無理なく生じさせられ、連結片27に不要な応力が発生するのを抑えられる。
【0071】
(本発明の第3の実施形態)
前記第1及び第2の各実施形態に係る可動部用長尺体においては、円断面形状として形成された複数本のケーブル部を、略帯状に並設し、相互に連結して一体化させた状態で用いる構成としているが、これに限らず、第3の実施形態に係る可動部用長尺体として、図21に示すように、心線及び/又は管を複数本内蔵して可撓性を有する一本の平帯状のケーブル部31を用い、このケーブル部31の外周の一部に、連結片37をケーブル部31長手方向へ複数並べて配設する構成とすることもできる。
【0072】
具体的には、前記ケーブル部31は、所定の厚さ寸法を有する平帯状に形成され、作動要素を送通させる作動用長尺材、すなわち作動要素としての電気や光を通す心線31a、31b、31c、31d、31e及び/又は、作動要素としての空気や作動油を通す管31fを、シース31gで被覆して複数本内蔵する構成である。各心線及び/又は管は、その種類や機能等ごとに分けてケーブル部幅方向へ並設される。
【0073】
平帯状のケーブル部31と連結片37は十分な接触領域を確保できるため、ケーブル部31と連結片37とを接着等で一体化した状態では、より強固にこの一体化した状態を維持でき、移動に伴う屈曲の繰返しによる応力で連結片37がケーブル部31から分離することはなく、連結片37により連結一体化する規制用ブロック体38はケーブル部31の寿命程度まで屈曲の向きを制限する機能を維持できる。
【0074】
なお、このように平帯状のケーブル部31を採用する場合をはじめとして、前記各実施形態で示した各ケーブル部には、心線や管といった作動用長尺材以外の線状体、例えばケーブル部の剛性や弾性を強化調整するテンションメンバー等を配設する構成とすることもでき、規制用ブロック体と合せて屈曲の向きを制限して、可動部用長尺体に意図しない不要な屈曲を生じさせないと共に、ケーブル部の剛性を調整して、屈曲部分を所望の曲率に設定することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 可動部用長尺体
11、12、13 ケーブル部
11a、12a、13a 心線
11b、12b、13b シース
14、15、16 ケーブル部
14a、15a 心線
14b、15b、16b シース
16a 管
17 連結片
17a 突起部
18 規制用ブロック体
18a 孔
18b 突出部
18c 凸部
18d 凹部
18e 突出部
21、22、23 ケーブル部
24、25、26 ケーブル部
27 連結片
27a 突条部
28 規制用ブロック体
28a 溝
28b 突出部
31 ケーブル部
31a、31b、31c 心線
31d、31e 心線
31f 管
31g シース
37 連結片
38 規制用ブロック体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21