特許第6576905号(P6576905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576905
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20190909BHJP
   B60H 3/06 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   B60H1/00 102P
   B60H3/06 611B
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-508604(P2016-508604)
(86)(22)【出願日】2015年2月18日
(86)【国際出願番号】JP2015054358
(87)【国際公開番号】WO2015141359
(87)【国際公開日】20150924
【審査請求日】2018年1月11日
(31)【優先権主張番号】特願2014-53104(P2014-53104)
(32)【優先日】2014年3月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(72)【発明者】
【氏名】押見 春樹
(72)【発明者】
【氏名】生沼 利幸
(72)【発明者】
【氏名】古泉 友啓
【審査官】 久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−192830(JP,A)
【文献】 特開2006−248441(JP,A)
【文献】 特開2013−136259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
B60H 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内気・外気を切り替えて取り込む内外気切替ユニット(14)と、空気の流通する流路を有した空調ユニット(32)とを備えた車両用空調装置(10)において、
前記内外気切替ユニット(14)において、前記空気が内部を流れる際に送風抵抗を増加させる送風抵抗増加手段を備え、
前記送風抵抗増加手段は、ケーシング(40)の内壁面(46a、46b)に対して膨出し内部に空間を有した膨出部(48、50)であり、前記膨出部(48、50)は、乱流を発生させることで送風抵抗を増加させており、
前記内外気切替ユニット(14)には、前記空気中の塵埃等を除去するためのフィルタ(52)が前記ケーシング(40)に対して着脱自在に収納され、
前記フィルタ(52)を装着することで該フィルタ(52)が前記膨出部(48、50)を閉塞、又は、該膨出部(48、50)に挿入され、前記膨出部(48、50)における前記乱流の発生が停止することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用空調装置において、
前記膨出部(48、50)は、互いに向かい合うように一組設けられることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両用空調装置において、
前記膨出部(48、50)は、前記内外気切替ユニット(14)の内部を流れる空気の流れ方向と略直交方向に膨出して形成されることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項1記載の車両用空調装置において、
前記膨出部(48、50)には、前記ケーシング(40)の外部と連通する開口が設けられることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項1記載の車両用空調装置において、
前記内外気切替ユニット(14)における内外気導入口(42、44)の開口方向と、前記空調ユニット(32)側へ前記空気が供給される吸入口(38)の開口方向とが交差するように配置されることを特徴とする車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、熱交換器によって温度調整のなされた空気を車室内へと送風して車室内の温度調整を行う車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載される車両用空調装置は、送風機によって内外気切替装置を通じて内気・外気を空気通路を有した空調ケースへと取り込み、冷却手段であるエバポレータにより冷却された空気と、加熱手段であるヒータコアにより加熱された空気とを前記空調ケース内においてダンパを作動させることで所望の混合比率で混合した後、前記空調ケースに設けられた複数の吹出口から送風ダクトを通じて車室内へと送風することで前記車室内の温度及び湿度の調整を行っている。
【0003】
このような車両用空調装置に用いられる内外気切替装置では、一般的に、外気中に含まれる塵埃等を除去する目的でフィルタが装着されているが、前記車両用空調装置の搭載される車両の仕向地や廉価版の車両においては、前記フィルタを装着しないで使用する場合がある。
【0004】
本出願人は、このようなフィルタが装着されない車両用空調装置において、該フィルタを装着した場合と略同等の送風量を維持するために用いられる空気抵抗部材を提案している(特開2012−111337号公報参照)。
【0005】
この空気抵抗部材は、複数の通風開口を有した抵抗板の周りを略矩形状に枠体で囲むように形成され、フィルタの装着される部位に配置されることで、内外気切替装置に取り込まれた空気は通風開口を通過して空気抵抗が増加するため、その流量が低下して下流側へと流れる。これにより、フィルタを装着していない場合に、その代わりとして空気抵抗部材を装着することで、該フィルタを装着している場合と略同等の送風量が維持される。
【0006】
一方で、近年、車両用空調装置における製造コスト削減の観点から部品点数の削減を図りたいという要請がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一般的な目的は、フィルタの代わりとなる部材を用いることなく、フィルタの装着有無による送風量の変化を抑制することが可能な車両用空調装置を提供することにある。
【0008】
本発明は、内気・外気を切り替えて取り込む内外気切替ユニットと、空気の流通する流路を有した空調ユニットとを備えた車両用空調装置において、
外気切替ユニットにおいて、空気が内部を流れる際に送風抵抗を増加させる送風抵抗増加手段を備え、
送風抵抗増加手段は、ケーシングの内壁面に対して膨出し内部に空間を有した膨出部であり、膨出部は、乱流を発生させることで送風抵抗を増加させており、
内外気切替ユニットには、空気中の塵埃等を除去するためのフィルタがケーシングに対して着脱自在に収納され、
フィルタを装着することでフィルタが膨出部を閉塞、又は、膨出部に挿入され、膨出部における乱流の発生が停止することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、車両用空調装置において、空気が内部を流れる際に送風抵抗を増加させる送風抵抗増加手段が設けられ、この送風抵抗増加手段がケーシングの内壁面に対して膨出し内部に空間を有した膨出部から構成される。
【0010】
従って、フィルタを装着せずに車両用空調装置を使用する場合には、内外気切替ユニットの内外気導入口からケーシング内へと取り込まれた空気の一部が膨出部へと流入することで送風抵抗が増加して空調ユニット側への送風量が低下することとなる。その結果、フィルタを装着せずに送風抵抗のない状態での送風量を意図的に減少させることで、フィルタが送風抵抗となる該フィルタを装着した場合の送風量と略同等とすることが可能となるため、前記フィルタを装着しない場合に空気抵抗部材等を設置する必要がなく、該空気抵抗部材を別に設ける場合と比較して部品点数の削減並びに製造コストの削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る車両用空調装置の全体正面図である。
図2図1のII−II線に沿った断面図である。
図3図3Aは、図1のIIIA−IIIA線に沿った内外気切替ユニットにフィルタが装着された場合の断面図であり、図3Bは、図3Aの内外気切替ユニットにフィルタが装着されていない場合の断面図である。
図4図4Aは、第1及び第2膨出部を設けていない場合における送風機の電圧と空調ユニット側への送風量との関係を示す特性曲線図であり、図4Bは、第1及び第2膨出部を設けた場合における送風機の電圧と前記送風量との関係を示す特性曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この車両用空調装置10は、図1及び図2に示されるように、空気の各通路を構成する空調ケース12と、前記空調ケース12の一部を含み、外気・内気を取り込む内外気切替ユニット14と、前記空調ケース12の内部に配設される送風機16とを有する。そして、空調ケース12の内部には、空気を冷却・加熱する熱交換器(図示せず)と、各通路内を流通する空気の流れを切り換えるダンパ機構(図示せず)が収納されている。
【0013】
空調ケース12は、幅方向(矢印A方向)に分割可能な第1〜第3分割ケース18、20、22と、前記第1分割ケース18と第2分割ケース20の一部の下方を覆うように設けられたロアケース24とからなる。なお、上述した第1〜第3分割ケース18、20、22、ロアケース24は、樹脂製材料から形成される。
【0014】
第1分割ケース18は、例えば、車両搭載時において運転席側(矢印A1方向)に配置され、幅方向(矢印A方向)に沿った一端部側(矢印A1方向)が閉塞され他端部側(矢印A2方向)が開口した中空状に形成される。そして、第1分割ケース18の他端部には第2分割ケース20が連結される。
【0015】
第2分割ケース20は、第1分割ケース18と第3分割ケース22との間に挟持され、幅方向に沿った一端部側(矢印A1方向)に形成され前記第1分割ケース18に接続される第1接続部26と、前記幅方向に沿った他端部側(矢印A2方向)に形成され前記第3分割ケース22に接続される第2接続部28とを有している。この第1接続部26と第2接続部28との間には分離壁30が形成される。
【0016】
そして、開口した第1接続部26は、第1分割ケース18が接続されることで閉塞され、開口した第2接続部28は第2分割ケース20が接続されることで閉塞されると共に、分離壁30に開口した吸入口38を通じて第1接続部26の内部と第2接続部28の内部とが連通している。
【0017】
この第1分割ケース18と第2分割ケース20とが接続された状態で、該第2分割ケース20における第1接続部26と前記第1分割ケース18の内部に、送風機16、図示しないエバポレータ、ヒータコア及びダンパ機構が収納されると共に、空気の流通する各通路が形成される。すなわち、空調ケース12における第1分割ケース18と第2分割ケース20の第1接続部26が空調ユニットの第1ケーシング32として機能する。
【0018】
この第1ケーシング32には、図1に示されるように、上方に向かって開口したベント送風口34及びデフロスタ送風口36が形成される。このベント送風口34は、乗員の顔近傍に送風を行うために設けられ、デフロスタ送風口36はベント送風口34と隣接し車両のフロントウィンドウ近傍に送風を行うために設けられている。
【0019】
一方、第2分割ケース20の第2接続部28は、第3分割ケース22が接続された状態で、その内部に内外気切替ユニット14の一部が収納され、分離壁30に開口した吸入口38を通じて内外気切替ユニット14と空調ユニット(第1ケーシング32)とが連通する。
【0020】
第3分割ケース22は、例えば、車両搭載時において助手席側(矢印A2方向)に配置され、第2分割ケース20の第2接続部28に連結され、該第2接続部28の開口部を閉塞すると共に、その内部には内外気切替ユニット14の一部が収納される。すなわち、空調ケース12における第2分割ケース20の第2接続部28及び第3分割ケース22が内外気切替ユニット14を構成する第2ケーシング(ケーシング)40として機能する。
【0021】
内外気切替ユニット14は、図2及び図3Aに示されるように、第2分割ケース20と第3分割ケース22とに跨るように外気を取り込む外気導入口42及び内気を取り込む内気導入口44が開口している。外気導入口42は、第2及び第3分割ケース20、22の上方(矢印C1方向)に開口し、車両のエンジンルーム内まで延在した図示しない吸入ダクトが接続される。一方、内気導入口44は、外気導入口42と略直交し、且つ、車両前方側(図3A中、矢印B方向)に開口するように形成される。
【0022】
また、第2ケーシング40の内部には、図3A及び図3Bに示されるように、内気導入口44と略直交し、上方(矢印C1方向)及び下方(矢印C2方向)となる内壁面46a、46bに対してそれぞれ膨出した第1及び第2膨出部48、50が形成される。この第1及び第2膨出部48、50は、内壁面46a、46bに対してそれぞれ上方及び下方へと断面矩形状で膨出するように形成されると共に、第2ケーシング40の幅方向(図2中、矢印A方向)に沿って一直線状に形成される。この第2膨出部50は、図3A及び図3Bに示されるように、下方に向かって開口するように形成され、該開口部位を通じてフィルタ52を挿入・取り出し可能となると共に、前記開口部位は蓋部材51によって閉塞される。そして、第1及び第2膨出部48、50の内部にフィルタ52が収納された際、その上端部及び下端部が前記第1及び第2膨出部48、50によって保持される。
【0023】
すなわち、第1膨出部48と第2膨出部50とが互いに対向して略一直線状となるように形成されている。
【0024】
換言すれば、第1及び第2膨出部48、50は、互いに離間する方向(矢印C1、C2方向)に膨出した凹状に形成され、外気導入口42及び内気導入口44からフィルタ52側へと流れる空気の流通方向(図3A中、矢印F方向)と略直交方向に窪んだ空間を内部に有している。
【0025】
この第2ケーシング40の内部には、図3Aに示されるように、外気導入口42と内気導入口44の開口状態を切り替える切替ダンパ54と、内部を流通する空気に含まれる塵埃等を除去するフィルタ52とが設けられる。
【0026】
切替ダンパ54は、例えば、断面扇形状に形成され、その開口端部にダンパシャフト56が挿通され、該ダンパシャフト56は第2ケーシング40の幅方向(図1中、矢印A方向)に沿って延在し、その端部が第2分割ケース20の分離壁30及び第3分割ケース22に対して回動自在に設けられる。そして、切替ダンパ54は、図示しないアクチュエータの駆動作用下に回動することで、開口端部とは反対側に形成された壁部58によって外気導入口42及び内気導入口44のいずれか一方が選択的に閉塞される。
【0027】
フィルタ52は、例えば、不織布が波状に複数回折曲させたフィルタ部(図示せず)の周りを略矩形状の枠体60で囲んで構成される。そして、フィルタ52は、第2ケーシング40である第3分割ケース22の側方に開口したフィルタ挿入口(図示せず)から内部へと挿入されることで、その上端部が第1膨出部48に挿通され、下端部が第2膨出部50に挿通される。すなわち、フィルタ挿入口が、第1及び第2膨出部48、50に臨むように形成されている。
【0028】
そして、フィルタ52は、第1及び第2膨出部48、50へと挿通されることで第2ケーシング40の幅方向(矢印A方向)に沿って案内され、外気導入口42及び内気導入口44と吸入口38との間に配置される。
【0029】
本発明の実施の形態に係る車両用空調装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【0030】
先ず、図示しない乗員が、車両用空調装置10の搭載された車両の車室内に配置された操作レバーを操作することで、該操作レバーの操作に応じて図示しないダンパ機構が冷房運転又は暖房運転に対応するように切り替わると共に、図示しないコントローラからの制御信号に基づき、送風機16が回転駆動することで、内外気切替ユニット14の内気導入口44又は外気導入口42のいずれか一方を通じて空気が第2ケーシング40内へと吸い込まれる。この空気は、図3Aに示されるように、フィルタ52を通過することで塵埃等が除去されると共に、整流され下流側へと比較的直線状となるように流通する(矢印F方向)。
【0031】
そして、フィルタ52を通過して整流された空気は、第2ケーシング40の曲面部に当たって第1ケーシング32側(図1及び図2中、矢印A1方向)へと略直角に向きを変え、吸入口38を通じて前記第1ケーシング32へと取り込まれる。この空気は、熱交換器を通過して熱交換がなされた後、所望の温度でベント送風口34等から車室内へと送風される。
【0032】
次に、上述した車両用空調装置10における内外気切替ユニット14からフィルタ52を取り外した場合(フィルタ未装着状態)の動作について図3Bを参照しながら説明する。この場合、フィルタ52の装着されていない第1及び第2膨出部48、50は、その内部が流路と連通した空間となっている。
【0033】
送風機16の駆動作用下に内外気切替ユニット14の内気導入口44又は外気導入口42のいずれか一方を通じて空気が第2ケーシング40内へと吸い込まれた際、この空気が下流側へ向かって流通するが、その一部が流路に対して外側へ膨出した第1及び第2膨出部48、50の内部へと流れ込むことで渦を巻くように乱流となる。この乱流の発生によって吸入口38を通じて第1ケーシング32(空調ユニット)側へと流れる空気の送風量が低下することとなる。その結果、フィルタ52を装着せずに送風抵抗の少ない場合では、第1及び第2膨出部48、50で乱流を意図的に発生させることで、前記フィルタ52を装着して送風抵抗が生じている場合と略同等の送風量とすることが可能となる。
【0034】
すなわち、第1及び第2膨出部48、50は、空気の一部を内部へと流入させることで乱流を発生させ、送風抵抗を増加させる送風抵抗増加手段として機能する。
【0035】
換言すれば、フィルタ52を装着しない場合に、乱流の発生によって送風量を意図的に低下させることで、フィルタ52を装着した場合に該フィルタ52が送風抵抗となって低下した場合の送風量と略同一となるように設定している。
【0036】
なお、第1及び第2膨出部48、50は、上述したように断面矩形状に形成される場合に限定されるものではなく、フィルタ52の上端部及び下端部を保持可能な形状であれば、特にその形状は限定されるものではない。
【0037】
次に、第1及び第2膨出部48、50を設けた場合におけるフィルタ52の装着有無による空調ユニット側へ供給される送風量の変化と、前記第1及び第2膨出部48、50を設けていない場合におけるフィルタ52の装着有無による送風量の変化とを図4A及び図4Bの特性曲線図を参照しながら説明する。
【0038】
なお、図4A及び図4Bは、送風機16を駆動させる際の電圧と、内外気切替ユニット14から空調ユニット(第1ケーシング32)側へと供給される空気の送風量との関係を示すものであり、フィルタ52を装着していない場合の特性曲線L1を破線で示し、前記フィルタ52を装着している場合の特性曲線L2を実線で示している。
【0039】
先ず、図4Aに示される内外気切替ユニット14の第2ケーシング40に第1及び第2膨出部48、50を設けていない場合には、フィルタ52を装着していない場合の送風量(破線)が、前記フィルタ52を装着した場合の送風量(実線)に対して増加していることが諒解される。この理由としては、フィルタ52を装着しておらず空気が流通する際に送風抵抗が生じないのに対し、該フィルタ52を装着した場合には、空気が前記フィルタ52を通過する際に送風抵抗が生じるため、該送風抵抗によって前記空気の送風量が若干低下し、両者の送風量に差が生じているためである。
【0040】
これに対して、上述した本実施の形態のように、図4Bに示される内外気切替ユニット14の第2ケーシング40に第1及び第2膨出部48、50を設けた場合には、フィルタ52を装着していない場合の送風量(破線)と、前記フィルタ52を装着した場合の送風量(実線)とが略同等になっていることが諒解される。
【0041】
すなわち、内外気切替ユニット14を構成する第2ケーシング40の内部に、外気導入口42又は内気導入口44から取り込まれる空気の流れと略直交した第1及び第2膨出部48、50を設けることで、該第1及び第2膨出部48、50によって乱流が発生するフィルタ52を装着していない場合の送風量と、フィルタ52を装着した場合の送風量とを略同等とすることができることが諒解される。
【0042】
本実施の形態のように、内外気切替ユニット14の外気導入口42及び内気導入口44の開口方向と第2分割ケース20の吸入口38の開口方向とが略直交するように配置された車両用空調装置10では、前記内外気切替ユニット14の第2ケーシング40内における空気の流れが複雑となる。そのため、外気導入口42及び内気導入口44の開口方向と吸入口38の開口方向とが略同一方向である場合と比較し、前記第2ケーシング40における乱流の発生しやすさが該第2ケーシング40における内壁面46a、46bの形状に依存しやすい傾向がある。
【0043】
そこで、内外気切替ユニット14において、第2ケーシング40の内壁面46a、46bに対して上方及び下方へと膨出した一組の第1及び第2膨出部48、50を設け、前記第1及び第2膨出部48、50に対してフィルタ52を保持可能な構成としている。これにより、フィルタ52を装着せずに車両用空調装置10を使用する場合には、内外気切替ユニット14の外気導入口42又は内気導入口44から第2ケーシング40内へと取り込まれた空気の一部が空間となった第1及び第2膨出部48、50へと流れ込むことで好適に乱流を発生させ、送風抵抗が増加することで送風量が低下することとなる。
【0044】
その結果、フィルタ52を装着せずに送風抵抗の少ない状態での送風量を、送風抵抗となる前記フィルタ52が装着された状態の送風量と略同等とすることが可能となるため、前記フィルタ52を装着しない場合に空気抵抗部材等を設置することなく、送風量変化を抑制することができる。そのため、空気抵抗部材を別に設ける場合と比較して部品点数の削減並びに製造コストの削減を図ることが可能となり、しかも、空気抵抗部材を装着する場合の組み付け工数の削減も可能となる。
【0045】
すなわち、送風抵抗増加手段である第1及び第2膨出部48、50を第2ケーシング40の内部に設けることで、前記第2ケーシング40内にフィルタ52を装着した場合の送風抵抗と、該フィルタ52を装着しない場合の送風抵抗とを略同等とすることができる。
【0046】
また、第1及び第2膨出部48、50は、フィルタ52の上端部及び下端部を保持可能な保持手段も兼ねているため、前記フィルタ52の保持手段と送風抵抗増加手段とを別に設けた場合と比較し、構成の簡素化を図ることができ、しかも、前記フィルタ52を第2ケーシング40に装着することで第1及び第2膨出部48、50を好適に閉塞して乱流の発生を停止させることができる。換言すれば、フィルタ52の装着有無によって送風抵抗増加手段の作用・非作用を容易に切り替えることができる。
【0047】
なお、第1及び第2膨出部48、50の深さ(膨出量)は、例えば、従来の通り、フィルタを保持する保持溝としてのみ機能させるのであれば、それぞれ5mm程度で問題ないが、乱流を発生させる送風抵抗増加手段として機能させるために、上述した実施の形態においては、少なくともそれぞれ20mm程度となるように設定される。
【0048】
さらに、フィルタ52の非装着時の送風量とフィルタ52の装着時における送風量との差分(図4A中、ΔG参照)に基づいて第1及び第2膨出部48、50の形状及び位置を適宜設定することで、前記フィルタ52の装着有無による送風量変化を抑制することができる。
【0049】
なお、本発明に係る車両用空調装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
図1
図2
図3
図4