特許第6576928号(P6576928)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6576928-独立気泡発泡シート 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576928
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】独立気泡発泡シート
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/06 20060101AFI20190909BHJP
【FI】
   C08J9/06CES
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-541458(P2016-541458)
(86)(22)【出願日】2016年3月30日
(86)【国際出願番号】JP2016060416
(87)【国際公開番号】WO2016159094
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2018年9月11日
(31)【優先権主張番号】特願2015-73805(P2015-73805)
(32)【優先日】2015年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】土肥 彰人
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−168727(JP,A)
【文献】 特開2009−242811(JP,A)
【文献】 特開2014−028925(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/052557(WO,A1)
【文献】 米国特許第06030696(US,A)
【文献】 特表2002−511917(JP,A)
【文献】 特開2013−053179(JP,A)
【文献】 特開2001−293789(JP,A)
【文献】 特開2005−068203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00− 9/42
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが0.05〜0.35mmである独立気泡発泡シートであって、
25%圧縮応力が30〜100kPa、MDにおける引張強さが3,000〜15,000kPa、TDにおける引張強さが1,800〜9,800kPaであり、
ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂材料を発泡及び架橋してなるものであり、
独立気泡率が96〜100%であり、
5Nで5秒間押圧した後解放したときの回復時間が0.1秒以下である独立気泡発泡シート。
【請求項2】
ZDの気泡数が2〜8個である請求項1に記載の独立気泡発泡シート。
【請求項3】
ZDに沿う断面における単位面積当たりの気泡数が60〜300個/mm2である請求項1又は2に記載の独立気泡発泡シート。
【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン系樹脂である請求項1〜3のいずれか1項に記載の独立気泡発泡シート。
【請求項5】
密度が90〜400kg/m3である請求項1〜のいずれか1項に記載の独立気泡発泡シート。
【請求項6】
ZDの平均気泡径に対するTDの平均気泡径の比が2〜6であるとともに、ZDの平均気泡径に対するMDの平均気泡径の比が2〜6である請求項1〜のいずれか1項に記載の独立気泡発泡シート。
【請求項7】
表示パネルの衝撃吸収材である請求項1〜のいずれか1項に記載の独立気泡発泡シート。
【請求項8】
前記表示パネルがタッチパネルである請求項に記載の独立気泡発泡シート。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載の独立気泡発泡シートと、その独立気泡発泡シートの上に配置された表示パネルとを備える表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、タッチパネル等の表示装置の衝撃吸収シートとして使用される独立気泡発泡シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型パーソナルコンピューター、携帯電話、スマートフォン、タブレット等の携帯機器において、表示装置は、破損や故障の防止のために、背面側に衝撃吸収シートが配置されることがある。衝撃吸収シートは、高い柔軟性が求められており、従来、発泡シートが広く使用されている。衝撃吸収シートとして使用される発泡シートとしては、例えば、特許文献1に記載されるように、多数の独立気泡を内包したポリエチレン系架橋発泡シートが知られている。また、ウレタン系発泡シートやゴム系発泡シート等も広く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-214205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、スマートフォン等の携帯機器の表示装置としては、タッチパネル式のものが多く採用されるようになってきている。タッチパネル式の液晶パネルは、その操作時の押圧が強くなると液晶の滲み(プーリング)が発生することがある。また、スマートフォンは、携帯ゲームの普及等により、表示装置が高速で繰り返し強い力で押圧されることがあるが、そのような場合、プーリングが目立つことがあり、プーリングを抑制する要求が高まりつつある。そのため、表示装置に使用される発泡シートは、高い衝撃吸収性のみならず、プーリングを早期に消失できる特性(すなわち、耐プーリング性)が求められるようになってきている。
一方で、表示装置は、長期間使用することが前提であるため、発泡シートには、長い期間にわたって一定の物性を維持する耐久性も求められている。さらに、携帯機器の小型化に伴い、発泡シートの厚さを薄くすることも求められている。
【0005】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、厚さが薄く高い耐久性を有しながらも、プーリングを抑制可能な発泡シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討の結果、厚さが薄く高い耐久性を有しながらもプーリングを抑制するためには、引張強さを高くする一方で圧縮応力を低くし、さらには、発泡シートを押圧しその押圧から解放したときの回復速度を速くすることで、上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。
本発明は、以下の(1)〜(11)を提供する。
(1)厚さが0.05〜0.35mmである独立気泡発泡シートであって、
25%圧縮応力が30〜100kPa、MDにおける引張強さが3,000〜15,000kPa、TDにおける引張強さが1,800〜9,800kPaであり、
5Nで5秒間押圧した後解放したときの回復時間が0.1秒以下である独立気泡発泡シート。
(2)ZDの気泡数が2〜8個である上記(1)に記載の独立気泡発泡シート。
(3)ZDに沿う断面における単位面積当たりの気泡数が60〜300個/mm2である上記(1)又は(2)に記載の独立気泡発泡シート。
(4)ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂材料を発泡及び架橋してなるものである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の独立気泡発泡シート。
(5)前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン系樹脂である上記(4)に記載の独立気泡発泡シート。
(6)独立気泡率が90〜100%である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の独立気泡発泡シート。
(7)密度が90〜400kg/m3である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の独立気泡発泡シート。
(8)ZDの平均気泡径に対するTDの平均気泡径の比が2〜6であるとともに、ZDの平均気泡径に対するMDの平均気泡径の比が2〜6である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の独立気泡発泡シート。
(9)表示パネルの衝撃吸収材である上記(1)〜(8)のいずれかに記載の独立気泡発泡シート。
(10)前記表示パネルがタッチパネルである上記(9)に記載の独立気泡発泡シート。
(11)上記(1)〜(10)のいずれかに記載の独立気泡発泡シートと、その独立気泡発泡シートの上に配置された表示パネルとを備える表示装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、厚さが薄く耐久性が高いながらも、プーリングを抑制することが可能な独立気泡発泡シートを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】回復時間の測定方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[独立気泡発泡シート]
本発明の独立気泡発泡シート(以下、単に“発泡シート”ともいう)は、以下の要件(a)〜(d)を満たすものである。
(a)厚さが0.05〜0.35mmである。
(b)25%圧縮応力が30〜100kPaである。
(c)MDにおける引張強さが3,000〜15,000kPa、及びTDにおける引張強さが1,800〜9,800kPaである。
(d)5Nで5秒間押圧した後解放したときの回復時間が0.1秒以下となる。
【0010】
なお、要件(b)及び(c)の圧縮応力及び引張強さは、JIS K 6767に準拠して測定したものであり、それぞれ発泡シートの柔軟性と機械強度を示す指標である。
また、要件(d)の回復時間とは、所定の荷重を作用させた状態からその荷重を取り除いた際に、元の形状に回復する速度を示すものであり、時間が短いほど、その回復速度が速いことを示す。回復時間の測定方法の詳細は、後述する実施例に記載する。
さらに、MDは、Machine directionを意味し、押出方向等と一致する方向であるとともに、TDは、Transverse directionを意味し、MDに直交しかつ発泡シートに平行な方向である。また、後述するZDは、発泡シートの厚さ方向であり、MD及びTDのいずれにも垂直な方向である。
【0011】
本発明の発泡シートは、要件(a)のように厚さが薄いながらも、要件(b)及び(d)のように、適度な柔軟性を有しつつ、かつ回復速度が速いことで、表示装置に発生するプーリングを防止することが可能になる。そして、これらいずれか一方の要件((b)又は(d))を充足しないとプーリングが十分に防止できなくなるものである。
【0012】
ここで、要件(b)で規定した圧縮応力は、耐プーリング性を高めるためには、低いほうがよい。したがって、圧縮応力は、上記のように100kPa以下となるが、80kPa以下であることがより好ましい。
また、要件(d)で規定した回復時間(回復速度)は、耐プーリング性を高めるために、速いほうがよく、0.09秒以下であることが好ましく、0.08秒以下であることがより好ましい。ただし、回復時間は、発泡シートに適度な柔軟性を付与するために、速くなり過ぎないほうがよい。具体的には、回復時間は、0.02秒以上が好ましく、0.03秒以上がより好ましい。
【0013】
また、本発明の発泡シートは、上記のように、耐プーリング性を良好にしながら耐久性を高めるために、要件(c)のように機械強度を高くする必要がある。すなわち、発泡シートは、MDにおける引張強さが3,000kPa以上、かつTDにおける引張強さが1,800kPa以上となり機械強度が高くなることで、耐久性が高まり早期破損が防止される。例えば表示装置において、発泡シートの下側にCPU等があり、凹凸があるような場合、発泡シートには局所的な応力が作用されるが、そのような場合でも、発泡シートが早期に破損されにくくなる。
一方で、MDにおける引張強さが15,000kPa以下、かつTDにおける引張強さが9,800kPa以下となると、機械強度が適切な大きさとなり、要件(b)のように圧縮応力を100kPa以下にしやすくなる。
本発明では、耐プーリング性及び柔軟性を良好にしつつ、耐久性を適度なものとするために、MDにおける引張強さは、3,000〜12,000kPaであることが好ましく、3,100〜11,000kPaであることがより好ましい。また、TDにおける引張強さは、1,800〜8,500kPaであることが好ましく、1,800〜7,500kPaであることがより好ましい。
【0014】
また、本発明の発泡シートは独立気泡体となるものである。なお、独立気泡体であるとは、独立気泡率が70%以上であることを意味する。すなわち、発泡シートの内部に包含された気泡は概ね独立気泡となり、押圧に対する反発力が大きいため、上記回復速度が速くなりやすくなる。発泡シートの独立気泡率は、回復速度をより早くするために高ければ高いほうがよく、好ましくは80%以上、より好ましくは90〜100%である。
【0015】
なお、独立気泡率は、下記の要領で測定できる。
まず、発泡体から一辺が5cmの平面正方形状の試験片を切り出す。そして、試験片の厚さを測定して試験片の見掛け体積V1を算出すると共に、試験片の重量W1を測定する。
次に、気泡の占める体積V2を下記式に基づいて算出する。なお、試験片を構成している樹脂材料の密度はρ(g/cm3)とする。
気泡の占める体積V2=V1−W1/ρ
続いて、試験片を23℃の蒸留水中に水面から100mmの深さに沈めて、試験片に15kPaの圧力を3分間に亘って加える。その後、水中で加圧から解放し、1分間静置した後、試験片を水中から取り出して試験片の表面に付着した水分を除去して試験片の重量W2を測定し、下記式に基づいて連続気泡率F1及び独立気泡率F2を算出する。
連続気泡率F1(%)=100×(W2−W1)/V2
独立気泡率F2(%)=100−F1
【0016】
本発明の発泡シートの厚さは、要件(a)のように、0.05〜0.35mmである。発泡シートの厚さが0.35mm以下となると、厚さが必要以上に大きくならないので、発泡シートが適用される携帯装置の小型化及び薄型化を達成しやすくなる。また、0.05mmより厚くすることで、衝撃吸収性能及び耐プーリング性を十分に発揮しやすくなる。
発泡シートは、携帯装置の小型化及び薄型化を達成しやすくし、かつ衝撃吸収性能及び耐プーリング性をより良好にしやすくするためには、厚さが0.06〜0.30mmであることが好ましい。
【0017】
本発明において上記(b)〜(d)の要件は、発泡シートを構成する材料、発泡シートの密度(すなわち、発泡倍率)、発泡シートにおける気泡数、気泡の扁平率、独立気泡率等を適宜変更することで充足させることが可能である。
例えば、発泡シートは、厚さ方向(ZD)に沿う圧縮に対して、反発力により早期に回復することでプーリングを防止するものであるが、ZDにおける気泡数を多くすると、その気泡数を多くした分だけ反発力が得られ、回複速度を速くすることが可能である。すなわち、本発明では、厚さ方向における気泡数を調整することで、要件(d)の回複速度を調整すしやすくなる。
ZDにおける気泡数は、回復速度の向上、及び製造の容易さ等の観点から、2〜8個とすることが好ましく、3〜7個であることがより好ましい。
【0018】
また、発泡シートは、ZDに沿う断面においてもある程度の数の気泡が存在することが好ましく、具体的には、ZDに沿う断面における単位面積当たりの気泡数が、60〜300個/mm2であることが好ましい。60個/mm2以上とすることで要件(d)の回復速度を速くしやすくなる。一方で、300個/mm2以下とすることで、各気泡がある程度の大きさの気泡となるため、各気泡が厚さ方向の圧縮に対して反発しやすくなり、回復速度を速くしやすくなる。このような観点から、単位面積当たりの気泡数は、80〜300個/mm2であることがより好ましい。
【0019】
なお、発泡シートにおける気泡数は、後述する発泡剤の配合部数、発泡剤の種類等を変更することで調整可能である。また、ZDにおける気泡数は、延伸する前の樹脂シートの厚さを変更することでも適宜調整可能である。例えば比較的厚さの大きい樹脂シートを製造すると、その樹脂シートにおいて厚さ方向における気泡数が必然的に多くなる。そのため、そのような樹脂シートをMD及びTD方向に高い延伸率で延伸すると、ZDにおける気泡数の多い発泡シートを得ることが可能である。さらに、発泡シートの厚さそのものを変更するだけでも調整可能である。
【0020】
また、上記要件(b)及び(d)の圧縮応力及び回復速度は、気泡の形状によっても調整可能である。例えば、気泡を扁平させ、その扁平率を一定の範囲とすると、圧縮応力及び回復速度を上記(b)及び(d)の要件を充足しやすくなる。
具体的には、気泡のZDの平均気泡径に対するTDの平均気泡径の比(以下、“TD/ZD”ともいう)を2〜7とするとともに、ZDの平均気泡径に対するMDの平均気泡径の比(以下、“MD/ZD”ともいう)を2〜7とすることが好ましい。さらには、TD/ZDが2〜6であるとともに、MD/ZDが2〜6であることがより好ましい。
また、これら範囲内では、TD/ZD及びMD/ZDを大きくすると、圧縮応力が低くなる傾向にある。
【0021】
発泡シートにおける気泡の平均気泡径は、通常、MDにおいて30〜300μm、TDにおいて30〜330μm、ZDにおいて10〜80μmとなるものである。また、発泡シートにおける気泡の平均気泡径は、好ましくは、MDにおいて60〜250μm、TDにおいて90〜280μm、ZDにおいて15〜70μmとなるものである。
【0022】
また、発泡シートは、その密度を大きくすると(すなわち、発泡倍率を小さくすると)、引張強さ及び圧縮応力が大きくなり、回復速度が速くなる傾向にあり、要件(b)〜(d)を充足するためには、密度の調整も有効である。具体的には、上記要件(b)及び(c)を充足しやすくするために、発泡シートの密度は、90〜400kg/m3であることが好ましく、100〜350kg/m3であることがより好ましい。
ただし、密度を大きくすると、回復速度が速くなるとともに、引張強さ、圧縮応力も大きくなる傾向にあるが、本発明の発泡シートは、回復速度を速くする一方で、圧縮応力を小さくする必要がある(要件(b)及び(d)参照)。そのため、密度の調整のみによって、要件(b)〜(d)の全てを充足させることは難しく、回復速度は、例えば上記した発泡シートの気泡数や扁平率(TD/ZD,MD/ZD)で調整する必要がある。
【0023】
発泡シートは、樹脂シート等の樹脂材料を架橋、発泡することで得られたものである。
発泡シートの架橋度は、通常、5〜60質量%程度となるものであるが、好ましくは10〜40質量%がより好ましい。
なお、架橋度は、以下の測定方法で測定する。発泡シートから約100mgの試験片を採取し、試験片の重量A(mg)を精秤する。次に、この試験片を120℃のキシレン30cm3中に浸漬して24時間放置した後、200メッシュの金網で濾過して金網上の不溶解分を採取、真空乾燥し、不溶解分の重量B(mg)を精秤する。得られた値から、下記式により架橋度(質量%)を算出する。
架橋度(質量%)=100×(B/A)
【0024】
なお、本発明において、樹脂材料の発泡は、後述するように、熱分解型発泡剤を用いて行うことが好ましいが、その他の方法で発泡してもよい。また、ポリオレフィン系樹脂の架橋は、後述する電離性放射線の照射により行うことが好ましいが、その他の方法で行ってもよい。
【0025】
さらに、本発明では、発泡シートの材料としては、ポリオレフィン系樹脂を使用することで上記要件(b)〜(d)を充足させやすくなる。ポリオレフィン系樹脂は、機械的強度や柔軟性が比較的高いためである。すなわち、本発明の発泡シートは、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂材料を架橋、発泡したものであることが好ましい。その場合、樹脂材料においてポリオレフィン系樹脂は、主成分となるものであり、通常、50質量%以上含有され、好ましくは80〜100質量%含有される。
【0026】
[ポリオレフィン系樹脂]
発泡シートを形成するために使用されるポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、またはこれらの混合物が挙げられ、要件(b)〜(d)を充足させやすくする観点から、これらの中ではポリエチレン系樹脂が好ましい。より具体的には、チーグラー・ナッタ化合物、メタロセン化合物、酸化クロム化合物等の重合触媒で重合されたポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、又はこれらの混合物が挙げられ、これらの中では、メタロセン化合物の重合触媒で重合されたポリエチレン系樹脂が好ましい。
ポリエチレン系樹脂は、エチレン単独重合体でもよいが、エチレンと必要に応じて少量(例えば、全モノマーの30質量%以下、好ましくは1〜10質量%)のα−オレフィンとを共重合することにより得られるポリエチレン系樹脂が好ましく、その中でも、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
メタロセン化合物の重合触媒により得られた、ポリエチレン系樹脂、特に直鎖状低密度ポリエチレンを用いることにより、柔軟性、機械強度、耐プーリング性を向上させた発泡シートを得やすくなる。また、後述するように、発泡シートを厚さが薄くても高い性能を維持しやすくなる。
ポリエチレン系樹脂を構成するα−オレフィンとして、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、及び1−オクテン等が挙げられる。なかでも、炭素数4〜10のα−オレフィンが好ましい。
また、ポリエチレン系樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体も好ましく用いられる。エチレン−酢酸ビニル共重合体は、通常、エチレン単位を50質量%以上含有する共重合体である。
メタロセン化合物の重合触媒により得られたポリエチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、又はこれらの混合物は、発泡シートにおいて樹脂全量に対して好ましくは50質量%以上含有され、さらに好ましくは60質量%以上、最も好ましくは100質量%含有される。
【0027】
また、ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン単位を50質量%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
プロピレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等が挙げられ、これらの中では、炭素数6〜12のα−オレフィンが好ましい。
【0028】
<メタロセン化合物>
好適なメタロセン化合物としては、遷移金属をπ電子系の不飽和化合物で挟んだ構造を有するビス(シクロペンタジエニル)金属錯体等の化合物が挙げられる。より具体的には、チタン、ジルコニウム、ニッケル、パラジウム、ハフニウム、及び白金等の四価の遷移金属に、1又は2以上のシクロペンタジエニル環又はその類縁体がリガンド(配位子)として存在する化合物が挙げられる。
このようなメタロセン化合物は、活性点の性質が均一であり各活性点が同じ活性度を備えている。メタロセン化合物を用いて合成した重合体は、分子量、分子量分布、組成、組成分布等の均一性が高くなるため、メタロセン化合物を用いて合成した重合体を含むシートを架橋した場合には、架橋が均一に進行する。均一に架橋されたシートは、均一に延伸しやすくなるため、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの厚さを均一にしやすくなり、厚さが薄くても高い性能を維持しやすくなる。
【0029】
リガンドとしては、例えば、シクロペンタジエニル環、インデニル環等が挙げられる。これらの環式化合物は、炭化水素基、置換炭化水素基又は炭化水素−置換メタロイド基により置換されていてもよい。炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種アミル基、各種ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種セチル基、フェニル基等が挙げられる。なお、「各種」とは、n−、sec−、tert−、iso−を含む各種異性体を意味する。
また、環式化合物をオリゴマーとして重合したものをリガンドとして用いてもよい。
更に、π電子系の不飽和化合物以外にも、塩素や臭素等の一価のアニオンリガンド又は二価のアニオンキレートリガンド、炭化水素、アルコキシド、アリールアミド、アリールオキシド、アミド、アリールアミド、ホスフィド、アリールホスフィド等を用いてもよい。
【0030】
四価の遷移金属やリガンドを含むメタロセン化合物としては、例えば、シクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、メチルシクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルアミドジルコニウムジクロリド等が挙げられる。
メタロセン化合物は、特定の共触媒(助触媒)と組み合わせることにより、各種オレフィンの重合の際に触媒としての作用を発揮する。具体的な共触媒としては、メチルアルミノキサン(MAO)、ホウ素系化合物等が挙げられる。なお、メタロセン化合物に対する共触媒の使用割合は、10〜100万モル倍が好ましく、50〜5,000モル倍がより好ましい。
【0031】
<チーグラー・ナッタ化合物>
チーグラー・ナッタ化合物は、トリエチルアルミニウム−四塩化チタン固体複合物であって、四塩化チタンを有機アルミニウム化合物で還元し、更に各種の電子供与体及び電子受容体で処理して得られた三塩化チタン組成物と、有機アルミニウム化合物と、芳香族カルボン酸エステルとを組み合わせる方法(特開昭56−100806号、特開昭56−120712号、特開昭58−104907号の各公報参照)、及びハロゲン化マグネシウムに四塩化チタンと各種の電子供与体を接触させる担持型触媒の方法(特開昭57−63310号、特開昭63−43915号、特開昭63−83116号の各公報参照)等で製造されたものが好ましい。
【0032】
上記ポリエチレン系樹脂としては、発泡シートの柔軟性、機械強度、及び回復速度を高めるために、低密度であることが好ましい。上記ポリエチレン系樹脂の密度は、具体的には、0.920g/cm3以下が好ましく、より好ましくは0.880〜0.915g/cm3、特に好ましくは0.885〜0.910g/cm3である。なお、密度はASTM D792に準拠して測定したものである。
【0033】
なお、ポリオレフィン系樹脂としては、上記したポリオレフィン系樹脂以外の樹脂も使用可能であり、ポリエチレン系樹脂およびポリプロピレン系樹脂以外の樹脂を、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂にさらに混合して使用してもよい。
さらに、ポリオレフィン系樹脂には、後述する各種添加剤やその他の成分を混合してもよく、発泡シートは、添加剤、その他の成分等を含むポリオレフィン系樹脂を架橋、発泡されたものであることが好ましい。
発泡シートに含有されるその他の成分としては、ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂、ゴムが挙げられ、これらは合計で、ポリオレフィン系樹脂よりも含有量が少なく、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、通常50質量部以下、好ましくは30質量部以下程度である。
【0034】
なお、本発明の発泡シートは、いずれか一方の面又は両面に粘着剤層を設けたものであってもよい。粘着剤層の厚さは、5〜200μm、より好ましくは7〜150μmである。
発泡シートの一方の面又は両面に設けられる粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に制限はなく、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等を用いる。
発泡シートに粘着剤を塗布して、粘着剤層を発泡シート上に積層する方法としては、例えば、発泡シートの少なくとも一方の面にコーター等の塗工機を用いて粘着剤を塗布する方法、発泡シートの少なくとも一方の面にスプレーを用いて粘着剤を噴霧、塗布する方法、発泡シートの一方の面に刷毛を用いて粘着剤を塗布する方法等が挙げられる。
【0035】
本発明の発泡シートは、具体的には、液晶パネル等の表示パネルの衝撃吸収材として使用される。表示パネルの衝撃吸収材は、表示パネルの背面側に配置され、表示パネルに作用される衝撃を吸収して、表示パネルの破損、故障を防止する。また、本発明の発泡シートは、表示パネルの背面側に配置されることで、表示パネルの表面が押圧されることで生じるプーリングの発生を防止する。
【0036】
本発明の発泡シートは、例えば、表示装置に組み込まれて使用されるものである。
表示装置は、例えば、支持部材の上に配置された発泡シートと、その発泡シートの上に配置された表示パネルとを備えるものがある。なお、支持部材は、例えば、各種携帯装置の筺体等の一部を構成するものである。また、支持部材と発泡シートの間や、発泡シートと表示パネルの間には、樹脂フィルム等の他のシート部材が配置されていてもよい。
表示装置に使用される発泡シートは、上記したように粘着剤層が設けられたものであってもよく、粘着剤層によって表示パネル、支持部材、又は他の樹脂フィルムに貼り合わせられてもよい。
なお、本発明において、発泡シートが使用される表示パネルは、タッチパネルであることが好ましい。タッチパネルの表面は、高速で繰り返し押圧されるが、発泡シートがプーリングの発生を抑制するので、表示装置の表示性能が改善される。
【0037】
[発泡シートの製造方法]
本発明の発泡シートの製造方法は、特に限定されないが、例えば以下の工程(1)〜(4)を含む方法が挙げられる。
工程(1):原料樹脂、熱分解型発泡剤等の添加剤、及び必要に応じて添加されるその他任意成分を、熱分解型発泡剤の分解温度未満の温度で溶融、混練して公知の成形方法により樹脂シートに成形する工程
工程(2):工程(1)で得られた樹脂シートを架橋する工程
工程(3):樹脂シートを、熱分解型発泡剤の分解温度以上に加熱して発泡させる工程
工程(4):樹脂シートを、所望のTD/ZD,MD/ZDが得られるようにMD及びTDに延伸する工程
なお、以上の工程(1)〜(4)は、この工程順に行ってもよいが、必ずしもこの工程順に行う必要はなく、例えば工程(4)の後に工程(3)を行ってもよい。さらには、2つの工程を同時に行ってもよく、例えば工程(3)と(4)を同時に行ってもよい。
【0038】
(工程(1))
工程(1)では、原料樹脂、熱分解型発泡剤等の添加剤、及びその他任意成分を、単軸押出機、二軸押出機等の押出機等に供給して、熱分解型発泡剤の分解温度未満の温度で溶融、混練して、押出成形等により押し出して、樹脂材料をシート状の樹脂シートとする。
ここで、熱分解型発泡剤以外の添加剤としては、分解温度調節剤、架橋助剤、酸化防止剤、気泡核剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、充填材等が挙げられる。また、原料樹脂は、上記したようにポリオレフィン系樹脂が挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂とポリオレフィン系樹脂以外の樹脂成分との混合物でもよいし、ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂成分であってもよい。
【0039】
<熱分解型発泡剤>
熱分解型発泡剤としては、例えば、原料樹脂の溶融温度より高い分解温度を有するものを使用する。例えば、分解温度が160〜270℃の有機系又は無機系の化学発泡剤を用いる。
有機系発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸金属塩(アゾジカルボン酸バリウム等)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、ヒドラゾジカルボンアミド、4,4'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体、トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物等が挙げられる。
無機系発泡剤としては、酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等が挙げられる。
これらの中では、微細な気泡を得る観点、及び経済性、安全面の観点から、アゾ化合物、ニトロソ化合物が好ましく、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンがより好ましく、アゾジカルボンアミドが更に好ましい。
これらの熱分解型発泡剤は、単独で又は2以上を組み合わせて使用する。
熱分解型発泡剤の添加量は、原料樹脂(例えば、ポリオレフィン系樹脂)100質量部に対して1〜10質量部が好ましく、1.5〜5質量部がより好ましく、1.5〜3質量部が更に好ましい。
【0040】
<その他の添加剤>
分解温度調節剤は、熱分解型発泡剤の分解温度を低くしたり、分解速度を速めたり調節するものとして配合されるものであり、具体的な化合物としては、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、尿素等が挙げられる。分解温度調節剤は、発泡シートの表面状態等を調整するために、例えば原料樹脂100質量部に対して0.01〜5質量部配合する。
架橋助剤としては、多官能モノマーを使用することができる。架橋助剤をポリオレフィン系樹脂に添加することによって、後述する工程(2)において照射する電離性放射線量を低減して、電離性放射線の照射に伴う樹脂分子の切断、劣化を防止する。
架橋助剤としては具体的には、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート等の1分子中に3個の官能基を持つ化合物や、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、ジビニルベンゼン等の1分子中に2個の官能基を持つ化合物、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、エチルビニルベンゼン、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等が挙げられる。 これらの架橋助剤は、単独で又は2以上を組み合わせて使用する。
架橋助剤の添加量は、原料樹脂100質量部に対して0.2〜10質量部が好ましく、0.3〜5質量部がより好ましく、0.5〜5質量部が更に好ましい。該添加量が0.2質量部以上であると発泡シートが所望する架橋度を安定して得ることが可能となり、10質量部以下であると発泡シートの架橋度の制御が容易となる。
また、酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等のフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0041】
(工程(2))
工程(2)では、工程(1)で得た樹脂シートを架橋する。工程(2)における架橋は、電離性放射線を樹脂シートに照射して行うことが好ましい。電離性放射線としては、α線、β線、γ線、電子線等が挙げられるが、電子線がより好ましい。樹脂シートに対する電離性放射線の照射量は、1〜10Mradが好ましく、1.5〜8Mradがより好ましい。また、架橋助剤を用いる場合の電離性放射線の照射量は0.3〜8Mradが好ましく、0.5〜5.5Mradがより好ましい。
電離性放射線の照射量は、上記下限値以上とすることで、樹脂シートの発泡に必要な剪断粘度を付与しやすくなる。また、上記上限値以下とすることで樹脂シートの剪断粘度が高くなりすぎず発泡性が良好になる。そのため、上記した密度の発泡シートを得やすくなり、さらには発泡シートの外観も良好となる。
ただし、架橋の進行度は、通常、原料樹脂、添加剤の種類等により影響されるため、電離性放射線の照射量は、通常は架橋度を測定しながら調整し、上記した架橋度となるようにする。
【0042】
(工程(3))
工程(3)では、樹脂シートを、熱分解型発泡剤の分解温度以上に加熱して発泡する。通常、本工程(3)は、上記工程(2)の後に実施する。
加熱発泡させる温度は、熱分解型発泡剤の分解温度によるが、通常140〜300℃、好ましくは160〜260℃である。また、樹脂シートを発泡させる方法としては、特に制限はなく、例えば、熱風により加熱する方法、赤外線により加熱する方法、塩浴による方法、オイルバスによる方法等が挙げられ、これらは併用してもよい。
【0043】
(工程(4))
工程(4)では、樹脂シートを、得られる発泡シートのTD/ZD及びMD/ZD、気泡数、並びに発泡シートの厚さが所定の範囲となるようにMD及びTDに延伸する。延伸は、樹脂シートを発泡させた後に行ってもよいし、樹脂シートを発泡させつつ行ってもよい。延伸は、例えば一軸延伸機、二軸延伸機等の公知の装置で行うとよい。
なお、樹脂シートを発泡させた後に延伸を行う場合には、樹脂シートを冷却することなく発泡時の溶融状態を維持したまま続けて延伸したほうがよいが、樹脂シートを冷却した後、再度、加熱して溶融又は軟化状態とした上で延伸してもよい。
【0044】
また、上記では架橋を電離性放射線を使用して行う例を説明したが、ポリオレフィン系樹脂に、添加剤として有機過酸化物等の架橋剤を配合しておき、ポリオレフィン系樹脂を加熱して有機過酸化物を分解させる方法等で行ってもよい。そのような有機過酸化物としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等が挙げられる。
有機過酸化物の添加量は、原料樹脂100質量部に対し、0.01〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。有機過酸化物の添加量が上記範囲内であると、樹脂材料の架橋が進行しやすく、また、発泡シート中における有機過酸化物の分解残渣の量を抑制する。
また、樹脂材料は、上記発泡剤を使用する代わりに、炭酸ガスやブタンガスに代表されるガス発泡により発泡させてもよいし、メカニカルフロス法により発泡させてもよい。
【実施例】
【0045】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、本明細書における各種物性、評価方法は、以下のとおりである。
<圧縮応力>
JIS K6767の方法に従って測定した。
<引張強さ>
JIS K6767の方法に従って測定した。
<厚さ>
JIS K6767の方法に従って測定した。
<密度>
JIS K6767の方法に従って測定した。
<独立気泡率>
発泡シートの独立気泡率は、明細書記載の方法で測定したものである。
【0046】
<回復時間>
図1(A)に示すように、アクリル板20の上にサンプルサイズ10mm×10mmに切断した発泡シート21を配置した。次いで、フォースゲージ(株式会社イマダ製、製品名「普及型デジタルフォースゲージDS2シリーズ」、型式:DS2−50N)を使用し、アタッチメント22によって、図1(B)に示すように、発泡シート21の上方から荷重5Nを作用させた。なお、アタッチメントとしては、発泡シート21に対する接触面が円形でかつ直径が16.3mmの平型アタッチメントを使用した。そして、荷重を作用させてから5秒後に、図1(C)に示すように荷重を取り除き、その除去から初期厚さまでに完全回復するまでの時間を測定した。
なお、完全回復するまでの時間は、サンプルを側面から高速カメラ(フォトロン社製、商品名「FASTCAM SA5」)によって観察し、観察画像において、初期厚さのときの発泡シート21の上面21Aが配置される位置に線を引いておき、アタッチメント22を取り除いた後、上面21Aがその線の位置に戻ったときの時間を計測する。
【0047】
<ZDの気泡数>
発泡シートのZD及びMDに平行な断面、及びZD及びTDに平行な断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)(日立テクノロジーズ社製、製品名.S−3400N)により撮影した。それぞれの撮影画像上にZDに平行にランダムに3本の直線を引き、その直線と交差する気泡数を目視で数え、すべての平均値の小数点以下をくり上げて整数とし、その値をZDの気泡数とした。
<ZDに沿う断面における単位面積当たりの気泡数>
発泡シートのZD及びMDに平行な断面、及びZD及びTDに平行な断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した。それぞれの撮影画像において、1mm2に存在する気泡数を目視で数え、全ての平均値の小数点以下をくり上げて整数とし、その値を単位面積あたりの気泡数とした。
【0048】
<平均気泡径>
発泡シートは50mm四方にカットし、液体窒素に1分間浸した後にMD及びTDそれぞれに沿って厚さ方向に切断して、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、製品名VHX-900)を用いて200倍の拡大写真を撮り、MD、TDそれぞれにおける長さ2mm分の切断面に存在する全ての気泡についてMD,ZDの気泡径、及びTD,ZDの気泡径を測定し、その操作を5回繰り返した。そして、全ての気泡のMD、TDそれぞれの気泡径の平均値をMD、TDの平均気泡径とするとともに、以上の操作によって測定された全てのZDの気泡径の平均値をZDの平均気泡径とした。
【0049】
[耐プーリング性評価]
50mm×70mmの発泡シートの上に4.7インチの液晶パネルを配置させ、液晶パネルの表面に重さ32gの鉄球を、高さ200mmから落とした。5回鉄球を同一の場所に落下させ、5回目に落としたときの液晶パネルのプーリングの発生状態を確認した。プーリングが抑えられ、消失速度の速いものを“A”とし、プーリングが抑えられないが消失速度が速いものを“B”とし、プーリングが抑えられず、消失速度も遅いものを“C”とした。
【0050】
[実施例1]
ポリエチレン系樹脂としてのメタロセン化合物を用いて得られた直鎖状低密度ポリエチレン[エクソン・ケミカル社製、商品名.EXACT3027]100質量部と、発泡剤としてのアゾジカルボンアミド2質量部と、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.3質量部と、酸化亜鉛1質量部とを押出機に供給して130℃で溶融混練し、その後、厚さ約0.2mmの樹脂シートとして押出した。
次に、樹脂シートを、その両面に加速電圧800kVの電子線を5Mrad照射して架橋した後、熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された発泡炉内に連続的に送り込んで加熱して発泡させるとともに、発泡させながらMDの延伸倍率1.3倍、TDの延伸倍率2.0倍で延伸させて、厚さ0.06mmの発泡シートを得た。得られた発泡シートの架橋度は25%であった。得られた発泡シートの評価結果を表1に示す。
[実施例2〜6、比較例1、2]
表1の密度、MD、TD、ZDの気泡径となるように、発泡剤の質量部、MDの延伸倍率及びTDの延伸倍率を調整した点以外は、実施例1と同様に実施した。ただし、実施例6においては、さらに、照射される電子線を7Mradに変更した。
【0051】
[比較例3、4]
比較例3、4では、発泡シートとして市販品であるSCF400(日東電工社製)、Poron(株式会社ロジャースイノアック社製)をそれぞれ評価した。
【0052】
【表1】
【0053】
以上の実施例1〜6から明らかなように、25%圧縮応力、引張強さ、及び回復時間が、所定の範囲内とすることで、厚さが薄い発泡シートにもかかわらずプーリング性を良好にすることができた。それに対して、比較例1〜4では、25%圧縮応力、引張強さ、及び回復時間のいずれかがが、所定の範囲内とはならなかったため、耐プーリング性を良好にすることができなかった。
なお、比較例1、2は、実施例1〜6と同じ原料樹脂を使用したものの、気泡の扁平率(TD/ZD,MD/ZD)があまり大きくなく、さらに密度が比較的高かったため、圧縮応力が高くなりすぎ、耐プーリング性が不十分であった。また、比較例3、4では、発泡シートの原料樹脂がポリオレフィン系樹脂を主成分とするものではなく、さらに、独立気泡率が低すぎたり、気泡数が多すぎたりしたため、回復速度(回復時間)が遅くなり、十分な耐プーリング性を得ることができなった。さらに比較例3、4は、引張強さ(機械的強度)が低すぎるため、耐久性が不十分である。
図1