特許第6576952号(P6576952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576952
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】唾液バイオセンサ及びバイオ燃料セル
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20190909BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20190909BHJP
   G01N 27/327 20060101ALI20190909BHJP
   G01N 27/30 20060101ALI20190909BHJP
   G01N 27/28 20060101ALI20190909BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20190909BHJP
   H01M 8/16 20060101ALI20190909BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20190909BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   A61B5/00 N
   G01N27/416 336G
   G01N27/416 338
   G01N27/327 353J
   G01N27/30 A
   G01N27/28 Z
   G01N33/50 G
   G01N33/50 A
   A61B5/00 102A
   H01M8/16
   H01M4/90 Y
   H01M4/86 B
【請求項の数】42
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2016-565134(P2016-565134)
(86)(22)【出願日】2015年1月21日
(65)【公表番号】特表2017-512604(P2017-512604A)
(43)【公表日】2017年5月25日
(86)【国際出願番号】US2015012309
(87)【国際公開番号】WO2015112638
(87)【国際公開日】20150730
【審査請求日】2018年1月19日
(31)【優先権主張番号】61/929,946
(32)【優先日】2014年1月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100101063
【弁理士】
【氏名又は名称】松丸 秀和
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】メルシエ,パトリック
【審査官】 湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02682745(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0176271(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/130145(WO,A2)
【文献】 特表2009−518113(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0308742(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0197890(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/117357(WO,A2)
【文献】 特表2007−518469(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0228239(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0101498(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/039455(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
G01N 27/28
G01N 27/30
G01N 27/327
G01N 27/416
G01N 33/50
H01M 4/86
H01M 4/90
H01M 8/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの口内に適合する口装着デバイス内に構成され、電気絶縁性材料を含む基板と、
第1の位置において前記基板上に配置され、唾液内の分析物に対応する触媒又は反応物を含む化学物質を含む表面を含む第1の電極と、
間隔領域によって前記第1の電極から分離された第2の位置において前記基板上に配置された第2の電極であって、前記第1の電極と共に前記化学物質及び分析物を含む酸化還元反応を継続し、電気信号を生成することができる第2の電極とを備え、
前記口装着デバイスは、前記ユーザの口内に嵌合するように適応化されたマウスガードを含み、
前記第1及び第2の電極の第1及び第2の位置は、前記マウスガードの内側領域において、前記ユーザの舌に隣接するように配置されて唾液と接し、
前記ユーザの口内に配置され、電気回路に電気的に接続されているとき、前記ユーザの唾液内の分析物を検出する電気化学センサデバイス。
【請求項2】
前記第1の電極の前記表面は、ポリマ膜又は選択的浸透性骨格内の電子重合捕捉によって前記第1の電極の前記表面に固定化された化学物質を含むように構造化されている請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
前記ポリマ膜は、ポリ(o−フェニレンジアミン)を含む請求項2記載のデバイス。
【請求項4】
前記選択的浸透性骨格は、ナフィオン又はキトサンを含む請求項2記載のデバイス。
【請求項5】
前記第1の電極の前記表面は、前記第1の電極を形成する材料内に分散された化学物質を含むように構造化されている請求項1記載のデバイス。
【請求項6】
前記第1の電極の前記表面は、静電的に又は共有結合によって表面に付着された化学物質を含む層を含むように構造化されている請求項1記載のデバイス。
【請求項7】
前記化学物質は、乳酸オキシダーゼ(LOx)を含み、前記デバイスが検出する分析物は、乳酸塩を含む請求項1記載のデバイス。
【請求項8】
前記化学物質は、グルコースオキシダーゼ(GOx)を含み、前記デバイスが検出する分析物は、グルコースを含む請求項1記載のデバイス。
【請求項9】
前記化学物質は、尿酸オキシダーゼ(ウリカーゼ)を含み、前記デバイスが検出する分析物は、尿酸を含む請求項1記載のデバイス。
【請求項10】
前記第1の電極、前記第2の電極又は両方は、電解触媒を含む導電性材料を含む請求項1記載のデバイス。
【請求項11】
前記第1の電極、前記第2の電極又は両方は、プルシアンブルーカーボンを含む導電性材料を含む請求項10記載のデバイス。
【請求項12】
前記基板上に配置され、導電性の第1の接続体によって前記第1の電極に電気的に接続される第1の電極インターフェース要素と、
前記基板上に配置され、導電性の第2の接続体によって前記第2の電極に電気的に接続される第2の電極インターフェース要素とを更に備え、
前記第1及び第2の電極インターフェース要素は、前記電気回路に電気的に接続される請求項1記載のデバイス。
【請求項13】
前記第1の電極は、アンペロメトリ測定のための作用電極として動作し、前記第2の電極は、対電極として動作し、前記デバイスは、更に、
前記基板上の前記作用電極と前記対電極の間に位置し、前記化学物質を含む表面を有する基準電極を更に備える請求項1記載のデバイス。
【請求項14】
前記基板上に配置され、前記唾液から電気化学的にエネルギを抽出し、前記デバイスに電力を供給するバイオ燃料セルを更に備え、前記バイオ燃料セルは、
前記基板に配置され、導電性材料を含むアノードであって、前記アノードにおいて捕捉されている電子を放出する酸化プロセスにおいて、前記唾液内の燃料物質の第1の生成物への変換を促進することによって、前記燃料物質からエネルギを抽出する燃料セル触媒を含むアノードと、
前記基板に配置され、前記アノードに近接すると共に前記アノードから分離されているカソードであって、導電性を有し、還元プロセスにおいて、前記唾液内の酸素化物質を第2の生成物に還元し、前記第2の生成物に電子を獲得させる材料を含むカソードと、
電気相互接続を介して、前記バイオ燃料セルと、前記第1及び第2の電極との間に電気的に接続され、バイオ燃料セルから抽出されたエネルギを電気エネルギとして取得し、前記電気エネルギを前記デバイスの前記第1及び第2の電極に供給する電気回路とを備える請求項1記載のデバイス。
【請求項15】
前記燃料セル触媒は、前記アノードの表面の導電性ポリマにより形成された多孔質骨格構造内に収容されている請求項14記載のデバイス。
【請求項16】
前記導電性ポリマは、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフエン)、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリピレン、ポリアズレン、ポリナフタレン、ポリ(アセチレン)、ポリ(p−フェニレンビニルエン)及びポリフェニルジアミンの少なくとも1つを含む請求項15記載のデバイス。
【請求項17】
前記燃料セル触媒は、前記アノードの表面に結合された選択的浸透性膜に捕捉されている請求項14記載のデバイス。
【請求項18】
前記選択的浸透性膜は、ナフィオン又はキトサンの少なくとも1つを含む請求項17記載のデバイス。
【請求項19】
前記燃料セル触媒は、静電的に又は共有結合によって、前記アノードの表面に付着されている請求項14記載のデバイス。
【請求項20】
前記アノードは、前記燃料セル触媒の活性部位と前記アノードの表面との間の電子移動を促進する電気活性仲介物を含むように構造化されている請求項14記載のデバイス。
【請求項21】
前記燃料セル触媒は、LOx、GOx又はウリカーゼを含む請求項14記載のデバイス。
【請求項22】
前記カソードは、前記第2の生成物が電子を獲得する前記還元プロセスにおいて、前記唾液内の非酸素化物質を第2の生成物に還元することができる電気活性仲介物を含む請求項14記載のデバイス。
【請求項23】
前記電気回路は、前記バイオ燃料セルによって抽出された電気エネルギを修正し、又は前記第1及び第2の電極によって検出された電気信号を増幅し、又はこの両方を行う信号調整回路を含む請求項14記載のデバイス。
【請求項24】
前記電気回路は、前記検出された電気信号に基づいてデータを処理するプロセッサと、前記データを保存又はバッファリングするメモリとを含むデータ処理ユニットを含む請求項14記載のデバイス。
【請求項25】
唾液内の分析物を検出し、前記唾液からデバイスに電力を供給する方法において、
ユーザの口内において着用可能な口ベースのデバイスに取り付けられたバイオ燃料セルのアノード及びカソード電極において、前記アノードに捕捉されている電子を解放する酸化プロセスによって、唾液に存在するバイオ燃料物質から、前記バイオ燃料物質を第1の生成物に変換し、及び還元プロセスによって、前記唾液内の化学物質を第2の生成物に還元し、第2の生成物が前記カソードにおいて電子を獲得することによって、電気エネルギを抽出することと、
前記抽出した電気エネルギを前記口ベースのデバイスに取り付けられた、請求項1〜13のいずれか一項に記載の電気化学センサデバイスの電極に供給し、前記電気化学センサデバイスを駆動することと、
前記ユーザの口の唾液に接触する前記駆動された電気化学センサデバイスの電極において、前記唾液内の分析物と、前記電気化学センサデバイスの電極に結合された化学薬剤とに関係する酸化還元反応の結果として生成される電気信号を検出することとを含む方法。
【請求項26】
前記電気信号は、アンペロメトリ、ボルタンメトリ又はポテンシオメトリを用いて検出される請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記電気信号を処理し、前記分析物のパラメータを判定することを更に含む請求項25記載の方法。
【請求項28】
前記パラメータは、前記分析物の濃度レベルを含む請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記検出された電気信号を外部デバイスに無線で送信することを更に含む請求項25記載の方法。
【請求項30】
唾液内の分析物を検出し、前記唾液からデバイスに電力を供給するデバイスにおいて、 ユーザの口内に適合する口装着デバイスに取り付けられるように構成された電気絶縁性材料を含む基板と、
唾液分析物を検出する電気化学センサと、を備え、
前記電気化学センサは、
第1の位置において前記基板上に配置され、前記唾液分析物に対応する触媒又は反応物を含む化学物質を含む表面を含む第1の電極と、
間隔によって前記第1の電極から分離された第2の位置において前記基板上に配置されている第2の電極であって、前記第1の電極と共に、前記化学物質及び前記唾液分析物を含む酸化還元反応を継続し、前記第1及び第2の電極において検出可能な電気信号を生成する第2の電極と、を備え、
前記デバイスは更に、前記唾液から電気化学的にエネルギを抽出し、前記デバイスに電力を供給するバイオ燃料セルを備え、
前記バイオ燃料セルは、
前記基板に配置され、導電性材料を含むアノードであって、前記アノードにおいて捕捉されている電子を放出する酸化プロセスにおいて、前記唾液内の燃料物質の第1の生成物への変換を促進することによって、前記燃料物質からエネルギを抽出する燃料セル触媒を含むアノードと、
前記基板に配置され、前記アノードに近接すると共に前記アノードから分離されているカソードであって、導電性を有し、還元プロセスにおいて、前記唾液内の酸素化物質を第2の生成物に還元し、前記第2の生成物に電子を獲得させる材料を含むカソードと、を備え、
前記デバイスは、更に、電気相互接続を介して、前記バイオ燃料セルと、前記電気化学センサとの間に電気的に接続され、前記バイオ燃料セルから抽出されたエネルギを電気エネルギとして取得し、前記電気エネルギを前記電気化学センサに供給する電気回路を備え、
前記口装着デバイスは、前記ユーザの口内に嵌合するように適応化されたマウスガードを含み、
前記第1及び第2の電極の第1及び第2の位置は、前記マウスガードの内側領域において、前記ユーザの舌に隣接するように配置されて唾液と接し、
前記デバイスは、前記ユーザの口内に存在するとき、前記ユーザの唾液内の唾液分析物を検出するデバイス。
【請求項31】
前記電気回路は、前記バイオ燃料セルによって抽出された電気エネルギを修正し、又は前記第1及び第2の電極によって検出された電気信号を増幅し、又はこの両方を行う信号調整回路を含む請求項30記載のデバイス。
【請求項32】
前記電気回路は、前記検出された電気信号に基づいてデータを処理するプロセッサと、前記データを保存又はバッファリングするメモリとを含むデータ処理ユニットを含む請求項30記載のデバイス。
【請求項33】
前記電気回路は、前記検出された電気信号を外部デバイスに無線送信する無線通信ユニットを含む請求項30記載のデバイス。
【請求項34】
前記第1の電極の表面は、
ポリマ膜内の電子重合捕捉又は選択的浸透性骨格によって前記第1の電極面に固定化された化学物質、又は
前記第1の電極を形成する材料内に分散された化学物質、又は
前記表面に静電的に又は共有結合により付着された化学物質を含む層を含む請求項30記載のデバイス。
【請求項35】
前記ポリマ膜は、ポリ(o−フェニレンジアミン)を含み、又は前記選択的浸透性骨格は、ナフィオン又はキトサンを含む請求項34記載のデバイス。
【請求項36】
前記化学物質は、乳酸オキシダーゼ(LOx)を含み、前記電気化学センサが検出する分析物は、乳酸塩を含み、又は
前記化学物質は、グルコースオキシダーゼ(GOx)を含み、前記電気化学センサが検出する分析物は、グルコースを含み、又は
前記化学物質は、尿酸オキシダーゼ(ウリカーゼ)を含み、前記電気化学センサが検出する分析物は、尿酸を含み、又は
前記化学物質は、コルチゾールの抗体を含み、前記電気化学センサが検出する分析物は、コルチゾールを含み、又は
前記化学物質は、GOx及びグルコシダーゼ(GD)を含み、前記電気化学センサが検出する分析物は、アルファアミラーゼを含み、又は
前記化学物質は、LOx又はピルビン酸オキシダーゼ(PyOx)を含み、
前記電気化学センサが検出する分析物は、リン酸塩を含む請求項30記載のデバイス。
【請求項37】
前記第1の電極は、アンペロメトリ測定のための作用電極として動作し、前記第2の電極は、対電極として動作し、前記電気化学センサは、更に、
前記基板上の前記作用電極と前記対電極の間に位置し、前記化学物質を含む表面を有する基準電極を更に備える請求項30記載のデバイス。
【請求項38】
前記燃料セル触媒は、前記アノードの表面の導電性ポリマにより形成された多孔質骨格構造内に収容されており、又は
前記燃料セル触媒は、前記アノードの表面に結合された選択的浸透性膜に捕捉されており、又は
前記燃料セル触媒は、静電的に又は共有結合によって、前記アノードの表面に付着されている請求項30記載のデバイス。
【請求項39】
前記導電性ポリマは、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフエン)、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリピレン、ポリアズレン、ポリナフタレン、ポリ(アセチレン)、ポリ(p−フェニレンビニルエン)及びポリフェニルジアミンの少なくとも1つを含む請求項38記載のデバイス。
【請求項40】
前記選択的浸透性膜は、ナフィオン又はキトサンの少なくとも1つを含む請求項38記載のデバイス。
【請求項41】
前記アノードは、前記燃料セル触媒の活性部位と前記アノードの表面との間の電子移動を促進する電気活性仲介物を含むように構造化されている請求項30記載のデバイス。
【請求項42】
前記燃料セル触媒は、LOx、GOx又はウリカーゼを含む請求項30記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2014年1月21日に出願された米国仮出願番号第61/929,946号、発明の名称「MOUTH-BASED BIOSENSORS AND BIOFUEL CELLS」の利益及び優先権を主張する。この特許文献の内容の全ては、参照によって本願の一部として援用される。
【0002】
連邦政府資金による研究開発の記載
本発明は、全米科学財団(National Science Foundation:NSF)による承認番号CBET−1066531に基づく国庫補助を受けて達成された。米国政府は、本発明について一定の権利を有する。
【0003】
本特許文献は、生物学的物質、化学物質及び他の物質を検知する分子センサ技術及び燃料セル技術に関する。
【背景技術】
【0004】
電気化学的プロセスに基づくセンサを使用し、変換素子を用いて検出イベントを処理及び/又は表示のための信号に変換することによって、化学物質又は生物学的物質(例えば、組織)を検出することができる。バイオセンサは、生物学的感受性を有するコンポーネントとして、生物学的材料、例えば、例えば酵素、抗体、核酸等を含む生体分子、並びに生体細胞を使用することができる。例えば、分子バイオセンサは、特定の化学的特性又は分子認識メカニズムを使用して、標的因子を特定するように構成することができる。バイオセンサは、トランスデューサ素子を使用して、生物学的感受性を有するコンポーネントによる分析物の検出から生じる信号を異なる信号に変換してもよく、この信号は、光学的、電子的又は他の手段でアドレッシングしてもよい。例えば、トランスダクションメカニズムは、物理化学的手段、電気化学的手段、光学的手段、圧電手段、並びに他のトランスダクション手段を含むことができる。
【0005】
燃料セルは、物質(例えば、燃料と呼ばれる。)からの化学エネルギを電気エネルギ(例えば、電気)に変換するデバイスである。通常、エネルギ変換は、酸素又は他の酸化剤との化学反応を含む。例えば、水素は、一般的な燃料の1つであり、天然ガス及びアルコール等の炭化水素も燃料セルにおいて使用できる。例えば、燃料セルは、動作のために燃料及び酸素の一定の供給源を要求するが、燃料及び酸素入力が燃料セルに供給される限り、継続的に電気を生成することができる点がバッテリとは異なる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
バイオセンサ及びバイオ燃料セル(biofuel cell:BFC)として機能する口ベースのデバイス及びシステムを開示する。幾つかの具体例では、マウスガードに統合され、高い感度、選択性及び安定性を示す印刷可能な酵素電極を含む着用可能な唾液代謝物質バイオセンサデバイスは、人間の唾液サンプル全体を使用して、着用者の健康、パフォーマンス及びストレスレベルに関する非侵襲性のリアルタイム情報を提供する。幾つかの具体例では、着用可能な口着用型バイオ燃料セルデバイスは、マウスガードの表面に形成され、唾液から電力を生成する構造を含む。ここに開示するデバイス及びシステムの用途は、医学的及びフィットネス監視、並びに様々な着用可能な/携帯用デバイスを駆動するための着用可能なBFCを含む。
【0007】
一側面においては、唾液内の分析物を検出する電気化学センサデバイスは、電気絶縁性材料を含む基板と、第1の位置において基板上に配置され、唾液内の分析物に対応する触媒又は反応物を含む化学物質を含む表面を含む第1の電極と、間隔領域によって第1の電極から分離された第2の位置において基板上に配置された第2の電極であって、第1の電極と共に化学物質及び分析物を含む酸化還元反応を継続し、電気信号を生成することができる第2の電極とを備え、ユーザの口内に配置され、電気回路に電気的に接続されているとき、ユーザの唾液内の分析物を検出する。
【0008】
一側面において、唾液内の分析物を検出し、唾液からデバイスに電力を供給する方法は、ユーザの口内において着用可能な口ベースのデバイスに取り付けられたバイオ燃料セルのアノード及びカソード電極において、アノードに捕捉されている電子を解放する酸化プロセスによって、唾液に存在するバイオ燃料物質から、バイオ燃料物質を第1の生成物に変換し、及び還元プロセスによって、唾液内の化学物質を第2の生成物に還元し、第2の生成物がカソードにおいて電子を獲得することによって、電気エネルギを抽出することと、抽出した電気エネルギを口ベースのデバイスに取り付けられた電気化学センサの電極に供給し、電気化学センサを駆動することと、ユーザの口の唾液に接触する駆動された電気化学センサの電極において、唾液内の分析物と、電気化学センサの電極に結合された化学薬剤とに関係する酸化還元反応の結果として生成される電気信号を検出することとを含む。
【0009】
一側面において、唾液内の分析物を検出し、唾液からデバイスに電力を供給するデバイスは、ユーザの口内に適合する口装着デバイスに取り付けられるように構成された電気絶縁性材料を含む基板と、唾液分析物を検出する電気化学センサと、唾液から電気化学的にエネルギを抽出し、デバイスに電力を供給するバイオ燃料セルと、電気相互接続を介して、バイオ燃料セルと、電気化学センサとの間に電気的に接続され、バイオ燃料セルから抽出されたエネルギを電気エネルギとして取得し、電気エネルギを電気化学センサに供給する電気回路とを備える。電気化学センサは、第1の位置において基板上に配置され、唾液分析物に対応する触媒又は反応物を含む化学物質を含む表面を含む第1の電極と、間隔によって第1の電極から分離された第2の位置において基板上に配置されている第2の電極であって、1の電極と共に、化学物質及び唾液分析物を含む酸化還元反応を継続し、第1及び第2の電極において検出可能な電気信号を生成する第2の電極とを備える。バイオ燃料セルは、基板に配置され、導電性材料を含むアノードであって、アノードにおいて捕捉されている電子を放出する酸化プロセスにおいて、唾液内の燃料物質の第1の生成物への変換を促進することによって、燃料物質からエネルギを抽出する燃料セル触媒を含むアノードと、基板に配置され、アノードに近接すると共にアノードから分離されているカソードであって、導電性を有し、還元プロセスにおいて、唾液内の酸素化物質を第2の生成物に還元し、第2の生成物に電子を獲得させる材料を含むカソードとを備える。このデバイスは、ユーザの口内に存在するとき、ユーザの唾液内の唾液分析物を検出することができる。
【0010】
この特許文献に記述されている主題は、以下の特徴の1つ以上を提供する特定の手法で実現することができる。例えば、ここに開示するシステム及びデバイスは、唾液内の代謝物質及び電気活性要素の実時間監視を行うことができ、及び口内の電子回路を駆動するための連続的なエネルギ供給を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】マウスガード内に採用されるここに開示する技術の例示的な唾液電気化学センサデバイスの概略を示す図である。
図1B】唾液乳酸塩監視のために設計された図1Aのデバイスの例示的な電極構成の概略を示す図である。
図1C】本技術のバイオ燃料セルデバイスの例示的な実施形態のブロック図である。
図1D】マウスガード内に採用されるここに開示する技術の統合型唾液バイオセンサ及び燃料セルデバイスの概略を示す図である。
図2】乳酸塩の検出における例示的な唾液電気化学バイオセンサデバイスの動的範囲を表す例示的な結果のクロロアンペログラムのデータプロットを示す図である。
図3】生理的に関連する電気活性合成物の存在下での例示的な唾液電気化学バイオセンサデバイスの選択性を示す例示的な結果のデータプロットを示す図である。
図4】例示的なマウスガードバイオセンサの乳酸塩に対する電気化学的応答の経時的な安定性を示す例示的な結果のデータプロットを示す図である。
図5】人間の唾液サンプルにおける例示的なマウスガードバイオセンサの乳酸塩に対する応答を示す例示的な結果のクロロアンペログラムのデータプロットを示す図である。
図6】人間の唾液サンプルに対する例示的なマウスガードバイオセンサの応答安定性を示す例示的な結果のデータプロットを示す図である。
図7】マウスガードに採用される例示的な唾液電気化学センサデバイスの概略を唾液グルコース監視のために設計されたデバイスの例示的な電極構成の拡大図と共に示す図である。
図8】グルコース濃度を上昇させて取得された例示的な唾液電気化学バイオセンサデバイスによる例示的な結果のクロロアンペログラムのデータプロットを示す図である。
図9】例えば、図1A及び図7Aに示すような例示的なマウスガードデバイス内で実現できるここに開示する技術の例示的な電気化学センサデバイスのブロック図である。
図10A】マウスガード内に採用される例示的な統合型バイオセンサ、バイオ燃料セル及び電子デバイスプラットフォームの略図である。
図10B】統合型プラットフォームの例示的な電子処理及び通信ユニットのブロック図である。
図11A】マウスガードに統合されるここに開示する技術の例示的なスクリーン印刷された電気化学センサの写真を示す図である。
図11B】基板上の作用電極の試薬層を含む例示的な唾液尿酸バイオセンサの例示的な電極構成の概略を示す図である。
図12A】尿酸濃度を上昇させて取得された例示的な尿酸バイオセンサの応答を表すクロロアンペログラムのデータを示す図である。
図12B】一般の電気活性生理的干渉物の存在下での例示的なバイオセンサの尿酸に対する応答の例示的な結果を示す図である。
図12C】複数の間隔でサンプリングされた、尿酸に対する例示的なバイオセンサの経時的な電気化学的応答安定性の例示的な結果を示す図である。
図13A】希釈なしの人間の唾液内の例示的な尿酸バイオセンサの電気化学的応答を表すクロノアンペロメトリデータを示す図である。
図13B】人間の唾液内の応答データの安定性を表すデータプロットを示す図である。
図14A】例示的なバイオセンサを使用して、健常者及び高尿酸血症患者の連続監視によって取得された唾液尿酸値のデータプロットを示す図である。
図14B】治療の間の複数の日に亘って例示的なバイオセンサによって監視された高尿酸血症患者の唾液尿酸値のデータプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
着用可能なバイオセンサ(wearable biosensors)は、生医学、スポーツ、軍事等の広範囲に亘るシナリオにおける着用者の健康及びフィットネスの実時間監視の期待のために関心を集めている。着用可能なバイオセンサデバイス及びシステムの初期の研究は、一般的に、例えば、心電図記録法及び脈酸素測定法等、身体的信号からバイタルサインを監視することに焦点を当てていた。非侵襲的な着用可能な電気化学センサは、更に、身体的パラメータのみではなく、全体的な健康状態及び個人のパフォーマンスに関する有用な洞察を行うことができる。
【0013】
着用可能なバイオセンサを用いて、非侵襲的に取得できるヒトの体液、例えば、涙、汗又は唾液等の化学バイオマーカを検出することができる。これらの例示的な流体のうち、唾液は、継続的且つ容易に入手可能であることもあり、このような非侵襲性の監視のために特に注目に値する。更に、唾液は、多数の分析物の血中濃度との相関性が高い。このような相関関係は、経細胞又は傍細胞経路を介する血液から唾液への複数の成分の浸透性を反映している。例えば、唾液化学(sialochemistry)は、個人のホルモン、ストレス及び代謝の状態を監視するための血液分析の有効な非侵襲性の代替的手法になり得る。既存の唾液センサシステム、例えば義歯ベースのpH及び温度センサ又はバクテリアサイトセンサ(bacteria cytosensor)は、留置ユニット(indwelling units)であり、例えば、唾液代謝物質の濃度と、これらに対応する血液中濃度の間に確立された高い相関関係にもかかわらず、唾液代謝物質を監視するための非侵襲性の着用可能なバイオセンサとしては使用できない。
【0014】
更に、マウスガード(mouthguard)状のデバイスは、着用可能なデバイス内に検知及び電子回路を3D統合する試みの一例である。このようなデバイスは、唾液内のバイオマーカをリアルタイムで検知し、着用者の健康について複雑で継続的な情報を生成する能力を有する固有の可能性を提供する。現在、衝撃監視マウスガード(impact monitoring mouthguards)が市販されている。但し、これらの衝撃監視マウスガードデバイスは、主にスポーツにおける衝撃関連の負傷に関心を置き、化学検知又は環境発電(power harvesting)を含むものではない。
【0015】
ユーザの口内の唾液内の代謝物質を検出及び利用する着用可能な電気化学センサ及びエネルギ生成技術、システム及びデバイスを開示する。
【0016】
ここに開示する技術の着用可能なバイオセンサ及びバイオ燃料セル(biofuel cell:BFC)デバイスは、マウスガードに組み込まれ、高い感度、選択性及び安定性を示す印刷可能な酵素電極を含み、人間の唾液サンプルの全部を使用し、着用者の健康、パフォーマンス及びストレスレベルに関する非侵襲性のリアルタイム情報を提供する。ここに開示する口着用バイオセンサ及びBFCデバイスは、唾液から発電を行うための構造がマウスガードの表面に形成される。ここに開示するデバイス及びシステムの用途は、生医学的な及びフィットネス監視と、様々な着用可能/携帯用デバイスを駆動するための着用可能BFCとを含む。
【0017】
一側面において、ここに開示する技術は、マウスガード又は他のユーザの口に着用可能なアイテムに採用され、唾液代謝物質の継続的監視を提供する非侵襲性の電気化学バイオセンサを含む、以下では、ここに開示する電気化学センサデバイスの例示的な実施形態を説明し、例えば、乳酸塩を含む唾液分析物の非侵襲性の監視のために、容易に取り外し可能なマウスガードプラットフォームに組み込まれた、例示的な印刷可能な電流測定酵素バイオセンサを含む口内バイオセンサの概念を示す例示的な実施例を記述する。例えば、例示的な電気化学センサデバイスは、唾液内の目標分析物(例えば、対応する酵素基質)とインタラクトするように選択された1種類以上の酵素を電極上で使用することができる。ここに開示する電気化学バイオセンサデバイスを使用するマウスガードは、唾液内の化学成分からエネルギを抽出し、電気化学バイオセンサデバイス、並びにマウスガードに組み込まれた電気回路及び/又は電子デバイスを駆動するために使用することができる唾液ベースのバイオ燃料セルデバイスを含むことができる。
【0018】
マウスガードは、競技及びレクリエーションスポーツにおいてスポーツ関連の歯の怪我から選手を保護するために、アスリートによって広く使用されている。マウスガードは、通常、歯に固定的に密着して嵌合するように設計されたポリマ製品であり、小型化されたセンサ、制御/取得電子回路及び無線送信機を取り付けるための十分な体積を有する魅力的なプラットフォームである。ここに開示する技術は、これまでに提案されている恒久的に留置される唾液センサとは異なり、専門的な補助なしで、容易に着脱可能なマウスガード内に採用された電気化学センサデバイスを含む。重要な点として、例示的な着用可能なセンサ及び駆動デバイスは、常に唾液に直接接触するように構成されるため、生理的情報を中断なくリアルタイムで測定でき、これによって、動的な代謝物質変化の継続評価の新たな可能性が広がる。
【0019】
以下、唾液内に自然に存在する代謝物質、電気活性種(electroactive species)及びバイオ燃料を用いる本技術のマウスガードベースの電流測定バイオセンサ及びバイオ燃料セルの例示的なデバイス及びシステム設計及び動作技術について説明する。
【0020】
図1Aは、ユーザの口に装着されるマウスガードに組み込まれる本技術の唾液電気化学センサデバイス(salivary electrochemical sensor device)100の概略を示している。電気化学センサ100は、電気絶縁性材料を含む基板101を含む。電気化学センサ100は、基板101上に配置された2個以上の電極を含む電極集合体(electrode contingent)102を含む。例えば、電極集合体102の電極は、導電性材料を含むことができ、この材料は、電極触媒材料を含むことができる。一実施形態においては、電極集合体102は、作用電極及び対電極を含む。作用電極は、基板101上に配置され、対電極は、(例えば、間隔によって)作用電極から分離された基板101上の位置に配置されている。作用電極は、図1Bに示すような電極構造102aに構成されている。電極構造102aは、基板101上に配置された導電性材料106を含み、導電性材料106は、電極集合体102の電極において検出可能な電気化学反応を引き起こす化学物質を含む電気化学変換層107によってコーティングされている。例えば、幾つかの実現例では、この化学物質は、唾液内の対応する分析物に選択的に触媒作用を及ぼし、電極102において検出可能な信号を生成する反応を引き起こし又は促進する触媒を含む。例えば、幾つかの実現例では、層107に含まれる化学物質は、唾液内の対応する分析物と化学的に反応し、電極102において検出可能な信号を発生させる化学反応物を含む。電極102は、酸化還元反応を継続して、電極において電気信号に変換できる帯電した分子種を生成することができ、これにより、電気化学センサデバイス100がユーザの口内に存在し、電気回路に電気的に接続されているとき、センサデバイス100を使用してユーザの口内の唾液に含まれる化学分析物を検出することができる。図1Bに示す例では、電気化学変換層107に含有される化学物質は、電極102において電気信号を発生させる乳酸塩(例えば、検出すべき唾液内の選択された分析物)との酸化還元反応の触媒となる乳酸オキシダーゼ(LOx)を含む。
【0021】
図1A及び図1Bに示す唾液バイオセンサデバイス100の例示的な実施形態においては、電極集合体102は、電極構造102aを有する作用電極と、対電極と、作業電極及び対電極の間に位置する電極構造102aを有する基準電極との3個の電極を含む。例えば、幾つかの実施形態においては、電気化学センサデバイス100は、電極集合体102のアレイ、例えば、作用電極、対電極及び/又は基準電極のアレイを含むことができる、
幾つかの側面では、マウスガード又は他の口ベースのプラットフォーム上で、ここに開示する唾液バイオセンサデバイス100に唾液バイオ燃料セル及び(例えば、データ処理及び通信電子回路を含む)電気回路を統合することができ、これにより、電気回路及びバイオセンサデバイスに供給される電力を発生させ、統合されたデバイスは、ユーザの唾液内の物質を自立的且つ継続的に監視することができる。バイオ燃料セルは、燃料セルデバイスの一種である酵素又は微生物をバイオ処理集合体(bioprocessing contingent)として使用して、様々な燃料物質、例えば様々な生体媒体において検出できる有機化合物、生化学化合物及び/又は生体化合物から発電を行うことができる。本技術のバイオ燃料セルは、マウスガード又は他の口内装着デバイスにおいて採用される全体的なデバイスプラットフォームのフットプリントの増加を最小限にしながら、唾液バイオセンサ及び電子機器に電力を供給する安全で持続可能なエネルギ供給源を提供することができる。本技術のバイオ燃料セルは、使用される環境からの化学エネルギを、同じ環境を継続的に監視するセンサデバイスに供給される電気エネルギに安全に変換するための生体適合性材料を含む。ここに開示するバイオ燃料セルは、(例えば、バッテリ及び光電池に比べて)エネルギ密度が高く、(例えば、バッテリに比べて)耐用年数が長く、軽量であるため、バッテリ又はこの分野で使用可能な他の電源に対して有利である場合がある。例えば、口ベースのデバイス内の唾液センサ及び電子回路を駆動するために本開示のバイオ燃料セルデバイスを使用することによって、バッテリユニットからの化学浸出に関連する危険性をなくすことができる。ここに開示する技術は、唾液内の選択された生体触媒からの電子移動を直接行うことができるバイオ燃料セルデバイスを含み、バイオ燃料セルデバイスは、口ベースのプラットフォーム内でバイオセンサデバイスと統合されている。
【0022】
図1Cは、本技術のバイオ燃料セルデバイス120の例示的な実施形態のブロック図を表している。バイオ燃料セルデバイス120は、基板(例えば、電気化学センサデバイス100の基板101)上にアノード電極122及びカソード電極123を含み、アノード電極122及びカソード電極123は、互いに隣り合い、間隔領域によって隔てられるように配置されている。アノード電極122は、(例えば、唾液内にある)バイオ燃料物質への触媒を含有する触媒層127を含み、触媒層127は、以下の構成の少なくとも1つによって、陽極122に構成することができる。(1)触媒層127をアノード電極122内に統合し、すなわち、触媒をアノード電極122のアノード材料内に分散させてもよい。(2)触媒をアノード電極122の表面にコーティングして触媒層127を形成し、これは、アノード電極122の表面に静電的に付着させてもよく、共有結合によって結合してもよい。(3)触媒層127は、アノード電極122の表面に形成され、ポリマ膜内に触媒を捕捉(entrap)する電解重合された導電性ポリマを含むように構造化してもよく、及び/又は、触媒層127は、アノード電極122に形成され、骨格内に触媒を捕捉する選択的浸透性骨格構造(selectively permeable scaffold structure)、例えば、ナフィオン又はキトサンを含むように構造化してもよい。バイオ燃料デバイス120は、個々の相互接続124を含み、これらは、それぞれ、アノード電極122及びカソード電極123を、抽出されるエネルギが供給される負荷、例えば、電気化学センサデバイス100に電気的に接続する。
【0023】
動作時には、燃料物質を含む電解唾液流体がバイオ燃料セル120の表面に接触し、唾液は、アノード電極122とカソード電極123の間の間隙に浸透する。触媒は、アノードにおいて捕捉された電子を解放する酸化プロセスにおいて、唾液内の対応する燃料物質(例えば、バイオ燃料成分)の第1の生成物への変換を促進するように選択され、これによって、燃料物質からエネルギを抽出し、カソードは、化学還元プロセスにおいて、生体流体内の酸素を含む物質を還元して、第2の生成物を生成することができ、第2の生成物は、電子を獲得し、バイオ燃料セルデバイス120は、電気エネルギとしてエネルギを抽出する。電解流体は、例えば、グルコース、乳酸、尿酸又はこの他の様々なバイオ燃料成分を含むことができる。例えば、触媒層127に含有される触媒は、LOx、GOx、又はウリカーゼ、又は唾液内のバイオ燃料物質に対応する他の触媒(例えば、オキシダーゼ又はデヒドロゲナーゼ)を含むことができる。バイオ燃料セルデバイス120の幾つかの実施形態では、バイオ燃料セルデバイスは、間隔領域に設けられ、電解媒体を介する電子の伝導を妨げる、基板101に取り付けられた陽子−交換膜セパレータを含むことができる。
【0024】
図1Dは、ここに開示する技術のユーザの口に装着することができるマウスガード内に採用される、統合された唾液バイオセンサ及び燃料セルデバイスの概略を示している。統合されたセンサ−燃料セルデバイスは、電気回路150に電気的にインターフェースされた電気化学センサデバイス100(例えば、2電極構成であっても3電極構成であってもよい。)と、バイオ燃料セルデバイス120とを含むことができる。回路150は、電気回路要素(例えば、インピーダンス要素、ダイオード、トランジスタ等)及び/又は電子部品(例えば、プロセッサ、A/Dコンバータ、無線送信機/受信機、計装エレクトロニクス等)を含むことができ、信号条件付け、信号及びデータ処理、保存及び/又は通信を提供する。例えば、回路150は、例えば、以下に限定されるわけではないが、クロノアンペロメトリ(chronoamperometry)、クロノポテンシオメトリ(chronopotentiometry)、ボルタンメトリ(voltammetry)、サイクリックボルタンメトリ(cyclic voltammetry)、線形掃引電気化学技術(linear sweep electrochemical technique)、ポーラログラフィ(polarography)、パルス式電気化学分析技術(pulsed electrochemical analysis technique)、インピーダンス分光法(impedance spectroscopy)等の電気化学的分析技術を制御して、センサ100によって唾液分析物又は関心分析物を検出するように構成することができる。
【0025】
図1Dに示す例では、例示的なバイオ燃料セルデバイス120は、基板101上に構成されたアノード電極122及びカソード電極123の櫛形アレイを含む。アノード電極122及びカソード電極123は、回路150に電気的に接続された接続体124に接続されている。バイオ燃料セルデバイス120の幾つかの具体例では、バイオ燃料セルアレイは、基板101上であって、及びアノード電極122及びカソード電極123の櫛形アレイ及び接続体124の下に、例えば、銀又は銅等の導電性材料から形成された導電下層を更に含むことができる。幾つかの実現例では、バイオ燃料セルデバイス120は、基板101上のアノード電極122及びカソード電極123の櫛形アレイを取り囲む領域内に生体流体を貯留するように構成された貯留領域を更に含むことができる。
【0026】
例示的な乳酸塩バイオセンサ
一実施形態として、電流測定監視を用いた唾液代謝物質である乳酸(又は乳酸塩)の継続的な唾液監視のための非侵襲マウスガードベースのバイオセンサデバイスを記述する。例えば、唾液乳酸塩濃度は、血液乳酸塩レベルに良好に一致し、フィットネスレベルを監視するために試験管内で使用されてきた。したがって、唾液は、スポーツ活動の間の乳酸塩濃度の継続的非侵襲監視のための流体に適している。ここに記述される例示的な着用可能な口内バイオ検知のシステムは、印刷可能なプルシアンブルー(Prussian-Blue:PB)トランスデューサ及びポリオルトフェニレンジアミン(ポリオルトフェニレンジアミン:PPD)/乳酸オキシダーゼ(lactate-oxidase:LOx)試薬層を含む。例えば、プルシアンブルートランスデューサは、オキシダーゼ生体触媒反応の過酸化水素生成物を高度に選択的に検出する「人工ペルオキシダーゼ」として機能することができる。PBは、例えば、タリウム及びセシウム等の重金属による中毒の経口投与治療のために使用することができ、その使用は、高用量の経口投与後でも生理的条件下で安全性が高いと考えられる。ポリオルトフェニレンジアミン(PPD)は、オキシダーゼの電子重合捕捉(electropolymeric entrapment)、潜在的干渉の防止及びバイオセンサ面の保護のために使用される。PBトランスデューサによる過酸化物生成物の超低電位検出(extremely low-potential detection)及び唾液全体の電気活性成分の除外の組合せにより、高い選択性及び安定性が実現される。例示的な唾液乳酸塩センサデバイスの実施形態は、図1A及び図1Bに示す電気化学センサデバイス100を含むことができる。
【0027】
以下、乳酸塩の継続的な口内監視の実現例で使用される例示的なマウスガードベースのバイオセンサの例示的な設計及び試験管内の特徴付けを記述する。固定化された乳酸オキシダーゼを含む印刷可能な酵素電極を含む例示的なマウスガード酵素バイオセンサは、人間の唾液サンプル全体を使用して、過酸化物生成物の低電位を検出でき、高い感度、選択性及び安定性を示す。例示的なデバイスを用いて、着用者の健康、パフォーマンス及びストレスレベルに関する有用なリアルタイム情報を提供することができ、したがって、多様な生医学的な及びフィットネス用途における活用が大いに期待される。ここに開示するバイオセンサデバイスの他の例示的な具体例では、唾液に存在する他のバイオ化学物質を使用することもできる。
【0028】
例示的なマウスガード乳酸塩バイオセンサの例示的な具体例は、以下の化学物質及び試薬を含む。L−乳酸オキシダーゼ(LOx)(活性:101U/mg)が得られた。1,2−フェニレンジアミン(o−Pd)、L−乳酸、L−アスコルビン酸(AA)、尿酸(UA)、硫酸ナトリウム、一塩基リン酸カリウム、二塩基性リン酸カリウム及び塩化ナトリウムを取得し、更なる精製又は修飾なしで使用した。例示的な具体例では、超高純度の水(18.2MΩ・cm)を使用した。
【0029】
例示的なマウスガード乳酸塩バイオセンサの例示的な具体例は、以下の計装を含む。電気化学的測定のために、CH計装モデル440アナライザを使用した。クロノアンペロメトリ検査を行って、マウスガードセンサの反応を評価した。例えば、例示的な具体例で印加された電位は、室温(例えば、22℃)において、スクリーン印刷された疑似Ag/AgCl基準電極に対するものとした。電極は、MPM SPM半自動スクリーンプリンタを使用して印刷した。例示的なセンサパターンは、AutoCADを用いて設計され、75μm厚のステンレス鋼ステンシルにステンシルをパターン化した。
【0030】
図1A及び図1Bに示す例示的な口ベースの電気化学センサデバイスは、以下の製造技術を用いて作成し、マウスガードに統合することができる。ある例では、マウスガードバイオセンサは、例えば、ポリエチレンテレフタレートであるフレキシブルPET基板上に3個の独立した層をスクリーン印刷することによって作成した。第1の層では、Ag/AgCl導電インク(例えば、米国マサチューセッツ州のクリエイティブマテリアルズ社(Creative Materials Inc.)製の124−36、医療用グレード)を最初に印刷し、基準電極と、電気化学的アナライザに3個の電極を接続するためのコンタクトとを設けた。第2の層は、例えば、差動電極及び補助電極に適用され、プルシアンブルー黒鉛インク(Prussian-Blue-graphite ink)(例えば、英国、トルヴァエン(Torfaen)のGwent社のC2070424P2)によって印刷した。幾つかの具体例では、第3の層は、絶縁体層として機能し、電極の特定の領域を露出して、電気化学的検出を容易にするための絶縁体層内に開口部が形成されるように(例えば、デュポン(DuPont)5036誘電体ペーストを用いて)基板101上に印刷することができる。例えば、絶縁体層は、露出した銀エポキシ及びAg/AgClコンタクトをコーティングするために使用された。各印刷ステップの後、印刷された層を20分間、80℃で硬化した。この後、図1Aに示すように、両面接着剤を用いて、マウスガードの内部領域において、印刷された電極システムをマウスガード本体のPET基板に取り付けた。この例示的な具体例では、電気化学的アナライザは、銀エポキシを介してAg/AgClコンタクトに取り付けられた、マウスガード本体の内側に開設された貫通孔に挿入されたワイヤに接続した。
【0031】
乳酸オキシダーゼ(LOx)は、ポリ(o−フェニレンジアミン)(PPD)膜における電子重合捕捉によって、作用電極面上で固定化された。これは、例えば、10mMのo−Pd、5mMの硫酸ナトリウム及び800u/mLのLOxを含有し、窒素によって20分間パージされた0.1Mのリン酸塩バッファ(pH7.0)溶液を用いて達成された。マウスガードに印刷可能なトランスデューサを重合溶液に含浸した。この例では、(Ag/AgClに対して)0.55Vの電位を1分間印加して、LOxが捕捉されたPPD膜を成長させた。電子重合プロセスの後、例示的なセンサをすすぎ、0.1Mのリン酸塩緩衝液(pH7.0)に20分間浸漬して、電極面並びに非結合酵素からモノマ残渣を除去した。図1Bは、唾液乳酸塩監視のためのマウスガードプラットフォーム上の例示的な変更された作用電極トランスデューサを表している。
【0032】
バッファマトリックスにおいて例示的な唾液電気化学センサデバイスを用いて例示的な電気化学的特徴付けを行った。例えば、(人間の唾液のCl濃度を模倣する)20mMのNaClを含有する0.1Mのリン酸塩バッファ(pH7.0)溶液(PBS)内で例示的なマウスガード乳酸塩センサの電気化学的性能を評価した。試料溶液の2分間の培養の後、60秒間0.042V(対Ag/AgCl)まで電位をステッピングすることによって、例示的なPB−PPD−LOxバイオセンサデバイスにおいて乳酸塩のクロノアンペロメトリ測定を実行した。60秒後、電流をサンプリングした。これらの具体例では、PB−カーボントランスデューサのサイクリックボルタンメトリに基づき、過酸化水素の還元が最大の電流をもたらす印加電位を選択した。0.5mMの乳酸塩において、2時間の動作に亘って10分間隔でバイオセンサの安定性を調べた。例示的なセンサは、このような連続した測定の間で、0.1MのPBS内に維持した。
【0033】
(例えば、少なくとも8時間の)絶食条件の健康な被験者から、例えば、「受動的唾液採取法(passive drool method)」を用いて、人間の唾液サンプルを収集した。収集したサンプルを室温に保ち、沈殿物を沈殿させ、上澄みを直接(希釈なしで)使用して電気化学的測定を行った。唾液サンプル全体の高い粘度のために、希釈されていない50μLの唾液アリコートを異なる乳酸塩濃度に混合し、1分間ボルテックスした。標準的な添加法によって唾液サンプルの乳酸塩の濃度を判定した。
【0034】
バッファマトリックスで使用された条件と同じ条件(例えば、EAPP=0.042V、60秒間)を用いて、添加された唾液サンプルの電気化学的測定を行った。サンプルを10分毎に交換することによって、補充される唾液の口内の流れを模倣し(刺激なし:1mL/分、刺激あり:2mL/分)、このような唾液サンプル全体の長期測定を実行した。例示的なセンサは、このような連続した測定の間、唾液内に維持した。
【0035】
これらの具体例の例示的な結果を記述する。人間の唾液の乳酸塩濃度は、ヒトの代謝及び身体的パフォーマンスに応じて変化し、血液(最大17.3±1.9mM)と唾液乳酸塩濃度(最大1.6±0.4)の間で高い相関性が観察された。このように、唾液内の乳酸塩の継続的な口内監視を実現するためには、広い線形乳酸塩検出範囲及び速い応答時間が重要である。複雑な生の唾液サンプルに対する潜在的干渉を解決するために、例えば、一般的に用いられるLOx酵素を、PPD膜内への捕捉によって、印刷可能なPBベースのトランスデューサ上に固定化した。まず、マウスガードに取り付けられた例示的なPB−PPD−LOxバイオセンサをリン酸塩バッファ媒体内で評価した。
【0036】
0.042V(対Ag/AgCl)の低電位を用いて、0.1−1.0mMの乳酸塩範囲に亘り、乳酸塩濃度の上昇に応じた動的な濃度範囲を調べた。図2は、PBS媒体内で0.1mM刻みで乳酸塩の濃度を上昇させた場合のクロノアンペログラム(chronoamperograms)を示している(データプロットによる波形200b〜200kによって示す)。これらの例示的なデータは、例示的なPB−PPD−LOxマウスガードバイオセンサが、よく定義されたクロノアンペログラム及び乳酸塩濃度に比例する電流信号によって乳酸塩に対する非常に高い感度を有することを示している。結果として得られる較正プロット(図2の挿入図)は、高い線形性を示している(傾斜0.553μA/mM;相関係数0.994)。非常に低い動作電位に関連するバックグラウンド電流(データプロットにおいて波形200aによって示す。)が著しく低い点も注目に値する。これにより、0.1mMの乳酸塩についての応答の好ましい信号−雑音特性から約0.050mMの低い検出が推定できる(例えば、波形200b)(S/N=3)。このように、例示的なPB−PPD−LOxマウスガードセンサは、唾液乳酸塩の生理的範囲に亘って乳酸塩を効果的に検出することができる。図2のクロノアンペログラムにおいて表される例示的なデータ波形について、EAPP=0.042V(対Ag/AgCl)及び60秒の電流サンプリング時間によって、例示的な試験を行った。
【0037】
例示的なマウスガードバイオセンサは、現実の実施例では、複雑な生唾液媒体に露出されるので、乳酸塩の電流測定検出に干渉することが多い電気活性成分(例えば、L−アスコルビン酸、尿酸)の存在下で選択的な反応を提供する必要がある。例示的なPB−PPD−LOxトランスデューサ試薬層システムは、例えば、PB面によって提供される非常に低い検出電位をPPD層の効果的選択透過性挙動に組合せることによって、潜在的電気活性干渉を最小にするように設計される。図3は、このような生理的濃度のアスコルビン酸及び尿酸の存在及び不在の条件下での0.5mMの乳酸塩のクロノアンペロメトリ応答を示している。人間の唾液に関連する電気活性成分の生理的濃度の存在、例えば、100μMの尿酸(図3内の波形340)及び20μMのアスコルビン酸(図3内の波形330)の条件下で乳酸塩の選択性を評価した。また、AA及びUAが不在の条件下でも乳酸塩の選択性を評価した(図3内の波形320)。波形310は、PBSのみの反応を示している。これらの例示的なデータは、乳酸塩反応に対する潜在的干渉の影響が無視できる程度(AA及びUAの両方について約5%)であり、したがって、マウスガードバイオセンサシステムが高い選択性を提供することを明らかに示している。図3のデータプロットでは、例示的な結果は、図2と同様の例示的な条件下における0.1PBS内及び一般的な電気活性生理的干渉物AA及びUAの存在下の0.5mMの乳酸塩への例示的な応答を示している。
【0038】
新しいマウスガード乳酸塩バイオセンサの継続的な口内動作の他の重要な必要条件は、高い安定性である。図4は、例示的なマウスガードバイオセンサの0.5mMの乳酸塩に対する電気化学的応答の安定性を示す例示的な結果のデータプロットである。これらの例示的な具体例では、まず、連続2時間の動作について、0.5mMの反復的な測定を10分毎に実行して安定性を評価した。挿入図は、元の電流応答に基づく相対的電流の経時変化プロファイルを示している(t=0分における最初の結果を100%に正規化している)。例示的な具体例では、このような連続的な測定の間、例示的なセンサを0.1MのPBS内に維持した。これらの例示的なデータは、2時間の動作の全体に亘る非常に安定した電流応答を示している。他の試験は、センサの長期安定性を示した。
【0039】
合成バッファマトリックス内のマウスガードバイオセンサの評価の後、人間の唾液サンプルを用いて例示的な試験を実行した。刺激なしの人間の唾液が添加された0.1〜0.5mMの乳酸塩を用いて、マウスガードにおいて採用される例示的なバイオセンサの乳酸塩濃度の変化に対する応答を調べた。例えば、図5のよく定義されたクロノアンペログラムに示すように、例示的なセンサは、(例えば、波形500b〜500fによって示すように)乳酸塩レベルのこのような変化に良好に応答した。結果として得られる較正プロット(挿入図)は、高い線形性を示している(傾斜0.202μA/mM;相関係数0.988)。他の例示的な条件は、図2の場合と同じとした。これにより、内因性乳酸塩レベルは、0.010mMに推定でき、これは、刺激なしで静置された人間の唾液の正常範囲内である。乳酸塩添加に起因する(バッファ媒体内で観察される電流に対する)僅かな電流増加は、例えば、拡散を遅らせる唾液サンプルの粘性に起因している可能性がある。37℃(例えば、体温、図示せず)でセンサを検査した場合、感度又は線形範囲の明らかな変化は、観察されなかった。
【0040】
例示的な具体例は、複雑な唾液媒体への例示的な口内バイオ検知システムの継続的露出の安定性及び共存するタンパク質によるセンサ応答の潜在的劣化の評価を含む。図6は、0.5mMの乳酸塩に添加された人間の唾液サンプルへの例示的なマウスガードバイオセンサの経時的な応答安定性を示すデータプロットを表している。この具体例では、動的な口内環境を模倣して、測定毎に唾液を取り替え、2時間に亘って、反復的な測定を10分間隔で行った。図6の挿入図は、元の電流応答(t=0)に基づく相対電流を示している。例示的なセンサは、このような連続的な測定の間、唾液内に維持した。他の例示的な条件は、図2の場合と同じとした。例えば、この例示的な実験では、電流信号の小さな変化(例えば、最初の応答の90%と106%の間の範囲)のみが観察された。このような良好な安定性は、共存する汚れ成分(co-existing fouling constituents)に対するPPDコーティングの保護作用を反映している。ここに開示するマウスガードセンサシステムは、実際の口内動作の間に、唾液マトリックスによるセンサ応答の更なる劣化に対処するために、必要に応じて容易に交換することができる。
【0041】
非侵襲性のマウスガードバイオセンサデバイス(図1A及び1Bに示す。)の例示的な実施形態の例示的な具体例は、口内の唾液代謝物質の継続的な監視を示している。このような具体例においては、例示的なPB−PPD−LOxバイオ検知プラットフォームを用いて乳酸塩の電流測定を実行した。ここに開示する技術は、例えば、共存する電気活性及びタンパク質成分の低電位信号の伝達及び遮断を反映する非常に高感度で、選択的で、安定した唾液サンプルの乳酸塩応答を提供する。例えば、希釈されていない人間の唾液サンプル内の乳酸塩の検出におけるマウスガードベースのバイオ検知プラットフォームのこのような魅力的なパフォーマンスは、個人のフィットネス状態の継続的な非侵襲性の生理的監視のための実用的な着用可能デバイスとしての可能性を高める。
【0042】
ここに開示するバイオセンサデバイスの他の例示的な具体例では、唾液内に存在する他のバイオ化学物質も使用することができる。幾つかの具体例では、印刷されたバイオ燃料セルアプリケーションにおいて、グルコースを電気化学的に検出し、利用することができる。
【0043】
例示的なグルコースバイオセンサ
図7は、マウスガードに採用される例示的な唾液電気化学センサデバイス100の略図及び唾液グルコース監視のためのバイオセンサデバイス100の例示的な電極構成702の拡大図を示している。図7に示すように、例示的なバイオセンサデバイス100の作用電極及び基準電極は、電極構造702として構成されている。電極構造702は、基板101上に配置されている導電性材料106を含み、導電性材料106は、グルコースに対応し、電極102において検出可能な電気化学応答を引き起こす触媒を含む電気化学変換層707によってコーティングされている。例えば、幾つかの具体例では、化学物質は、唾液内の対応する分析物に選択的に触媒作用を及ぼして、電極102において検出可能な信号を生成する応答を発生又は促進する触媒を含む。図7に示す例では、電気化学変換層707に含まれる触媒化学物質は、電極102において電気信号を発生させるグルコース(例えば、検出すべき唾液内の選択された分析物)との酸化還元反応を引き起こすことができるグルコースオキシダーゼ(GOx)を含む。
【0044】
図8は、グルコース濃度を増加して得られる増分毎の例示的なクロノアンペログラムのデータプロット(波形800a〜800i)を示している。データを取得するために実行される例示的な具体例では、トランスデューサ層702は、PPD膜内への捕捉によって、印刷可能なPBベースのトランスデューサ上に固定化されたGOx酵素を含む。これらの例示的な具体例の例示的な条件は、図2に関連する条件と同様とした。図8に示すように、例示的なPB−PPD−GOxマウスガードセンサは、唾液乳酸塩の生理的範囲に亘って、グルコースを有効に検出することができる。
【0045】
例示的な統合型電気化学センサ、バイオ燃料セル及び電子回路
図9は、例えば、図1A図1B及び図7に示すようなマウスガード内に実現できる例示的な電気化学センサデバイス100のブロック図である。電気化学センサデバイス100は、絶縁材料を含み、形状フィッティングされたマウスガード又は他のマウスガードデバイス内に構成することができる基板101を含む。図9に示す例では、電気化学センサデバイス100は、基板101上に配置された作用電極172及び第2の電極173を含み、作用電極172及び第2の電極173は、間隔179によって互いに分離されている。電気化学センサデバイス100は、絶縁体層又は構造176を含むことができ、これにより、例えば、デバイス100の構造を更に支持し、電極及び相互接続又は接続体175を介して伝導される電気信号の健全性を保護することができる。例えば、ここに開示する電気化学センサデバイスの電極構成は、検知すべき目標分析物のタイプ、並びに検出法、例えば、アンペロメトリ、ボルタンメトリ、ポテンシオメトリ及び/又は電気化学的インピーダンス分光法、又は採用される他の電気化学的分析技術に基づいて設計してもよい。幾つかの具体例では、電気化学センサデバイス100は、例えば、ポテンシオメトリを使用して、電荷を有する分析物を検出するように構成することができる。幾つかの具体例では、電気化学センサデバイス100は、露出された作用電極172上の自己酸化分析物(self-oxidizing analytes)を検出するように構成することができ、この場合、デバイス100は、作用電極172と第2の電極173の間に配置された第3の電極を含み、第2の電極173及び第3の電極は、それぞれ対電極及び基準電極として機能することができる。幾つかの実施形態においては、例えば、電気化学センサデバイスは、電極集合体のアレイ、例えば、作用電極及び基準電極及び/又は対電極のアレイを含む。
【0046】
幾つかの具体例では、図9に示すように、作用電極172は、酸化還元反応を維持し、例えば、アンペロメトリ及び/又はボルタンメトリを使用して検出可能な電気信号を生成する電気化学的検知層174を含む。電気化学的検知層174は、作用電極172において検知される電荷担体を生成する流体(例えば、唾液)内の目標分析物(例えば、特定の分子又は物質)との酸化還元反応を促進することができる反応剤(例えば、触媒)を提供する。電気化学的検知層174は、触媒及び電気活性酸化還元媒体を含むように構成してもよい。幾つかの具体例では、目標分析物は、触媒によって酸化させることができ、このプロセスにおいて電子を放出し、この電子が電流を発生させ、この電流を作用電極172と第2の電極173の間で測定することができる。例えば、電気活性酸化還元媒体は、作用電極172と触媒の活性部位の間の電子の移動を促進することができる。電気化学的検知層174は、例えば、以下のようにして作用電極172に形成してもよい。(i)触媒を作用電極172の材料内に分散させてもよい。(ii)触媒を作用電極172の表面の上の層としてコーティングしてもよく、この場合、触媒は、例えば、表面に共有結合させてもよく、静電的に付着させてもよい。(iii)作用電極172の表面に形成された電子重合された導電性ポリマ及び/又は作用電極172の表面に形成された選択的浸透性骨格構造、例えば、例えばナフィオン又はキトサンによって触媒を捕捉してもよい。電気活性酸化還元媒体を含む例示的な具体例では、例えば、電気活性酸化還元媒体は、同じ例示的な構成によって、触媒とともに電気化学的検知層174内に構成することができる。
【0047】
図9に示すように、電気化学センサデバイスは、電気相互接続175を介して、電気センサ回路150を電極に電気的に接続してもよい。例えば、センサ回路150は、励起波形を適用し及び/又は励起に応じて電気化学センサデバイス100の電気化学的電極で発生する電気信号を変換するように構成することができる。幾つかの具体例では、センサ回路150は、信号調整ユニット及び取得したデータを外部デバイスに送信する通信ユニットを含むことができ、外部デバイスは、例えば、マウスガードの着用者又は他のユーザ、例えば、コーチ、トレーナ又は医師等に結果をリアルタイムで表示するディスプレイ又は他のインターフェースを含むことができる。回路150は、以下に限定されるわけではないが、(例えば、アンペロメトリ及びボルタンメトリ測定を実現する)ポテンシオスタット又は(例えば、電位差測定を実現する)ガルバノスタットを含むように構成してもよい。幾つかの実施形態においては、例えば、電気化学センサデバイス100は、相互接続175に接続され、外部回路又はデバイスを電気化学センサデバイス100の電極に電気的にインターフェースする導電面を提供する導電コンタクトパッドを含むことができる。
【0048】
ここに開示する技術を用いて、統合型プラットフォームにおいて口内の唾液分析物を継続的に監視でき、これは、電流測定回路と、データ収集、処理及び無線伝送、並びに全ての潜在的毒性及び生体適合性に関する問題の精密評価のための電子回路との小型化及び統合を含むことができる。電流測定マウスガードバイオ検知の概念は、他の臨床関連の代謝物質及びストレスマーカの唾液監視に容易に応用でき、着用者の健康及びパフォーマンスについての有用な洞察を提供し、したがって、多様な生医学的な及びフィットネス用途における活用が大いに期待される。
【0049】
例えば、ここに開示する統合されたセンサ−燃料セル電子プラットフォームは、リアルタイムの電気化学的パフォーマンス監視のために利用してもよい。幾つかの実施形態においては、例えば、ここに開示する統合型プラットフォームは、マウスガード内に進化した着用可能なバイオ検知タグを含み、人体に適合するフォームファクタ内に機能的部品が統合され、これらの機能的部品は、例えば、これは機能的な要素を支持し、検知された項目を送信する構造、センサ自体、センサ信号を処理及び送信するマイクロエレクトロニクス回路、電源、様々な構成要素を相互接続する配線を含む。幾つかの具体例では、このようなデバイスにおいて、個別の電子回路及び微細加工された電極を使用することができる。
【0050】
図10Aは、マウスガードに採用される例示的な統合型バイオセンサ、バイオ燃料セル、及び電子回路プラットフォーム1000の概略を示している。プラットフォーム1000は、電気化学バイオセンサデバイス100の例示的な実施形態及びバイオ燃料セルデバイス120の例示的な実施形態を含み、これらは、例示的な電気回路150によって電気的に接続されている。幾つかの具体例では、例えば、電気回路150は、例えば、バイオセンサ100によって検知される基底にある分析物濃度に関連を有するバイオ燃料セル150から供給される電力を追跡するDC/DCコンバータを含むことができ、これにより、統合型センサ−燃料セルプラットフォーム1000の自己発電動作を達成する。例えば、例示的なバイオセンサデバイス100及びバイオ燃料セルデバイス120は、上述したように、(例えば、グルコース、乳酸塩及び/又は尿酸等を検出する)1つ以上の唾液分析物バイオセンサ及び1つ以上の唾液化学燃料物質からエネルギを抽出するバイオ燃料セルを作成することによって、マウスガード内に統合してもよい。例示的な統合型設計では、このような製造プロセスの間に、トランスデューサインク材料及びバイオ電子試薬層を最適化することができる。例示的な統合型バイオセンサ、バイオ燃料セル、及び電子デバイスプラットフォーム1000は、個別の構成要素ベースのデバイス及びインターフェースを含むことができ、例えば、解剖学的に小型化された電気化学的アナライザ、関連する電子インターフェース、デジタル化回路、及び通信のための電子回路の設計を含む。電子回路の全体的な組立体をマウスガードフォームファクタに組み込んでもよい。
【0051】
図10Bは、統合型プラットフォーム1000の例示的な電子処理及び通信ユニット1050のブロック図である。例えば、図10Bの処理及び通信ユニット1050は、例えば、図10Aに示す電気回路150内に含ませてもよく、電気回路150として使用してもよい。図10Bに示すように、処理及び通信ユニット1050は、アナログ−デジタル変換器及び信号調整及び処理回路を含み、ユニット1050のための電源として、バイオ燃料セルデバイス120に接続することができる。処理及び通信ユニット1050は、信号処理及び(例えば、外部デバイスとの)通信を行うことができるデータ処理ユニットと、DC/DCコンバータ及び/又は信号調整回路を含む。データ処理及び通信ユニット1050は、データ処理ユニットによって処理され又は信号調整回路によって調整されたデータを外部デバイスに無線伝送する無線送信機/受信機ユニットを含む。
【0052】
ユニット1050のデータ処理ユニットは、データを処理するプロセッサ及びこのプロセッサと通信してデータを保存するメモリを含むことができる。例えば、プロセッサは、中央演算処理ユニット(central processing unit:CPU)又はマイクロコントローラユニット(microcontroller unit:MCU)を含むことができる。例えば、メモリは、プロセッサ実行可能コードを格納することができ、プロセッサがこれを実行すると、データ処理ユニットは、様々な動作、例えば、情報、命令及び/又はデータの受信、情報及びデータの処理、並びに他のエンティティ又はユーザへの情報/データの送信又は提供を実行するように構成される。幾つかの具体例では、データ処理ユニットは、1つ以上の遠隔演算処理デバイス(例えば、クラウド内のサーバ)を含むインターネット(「クラウド」と呼ばれる)によってアクセスできるコンピュータシステム又は通信ネットワークによって実現してもよい。データ処理ユニットの様々な機能をサポートするために、メモリは、例えば、命令、ソフトウェア、値、イメージ、予備プロセッサによって処理又は参照される他のデータ等の情報及びデータを格納することができる。例えば、様々なランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)デバイス、読出専用メモリ(Read Only Memory:ROM)デバイス、フラッシュメモリデバイス、及び他の適切な記憶媒体を用いて、メモリデバイスの格納機能を実現することができる。データ処理ユニットは、外部インターフェース、データストレージ又は表示デバイスに接続することができる入出力ユニット(I/O)を含むことができる。データ処理ユニットの通信では、無線送信機/受信機ユニットを介して、例えば、以下に限定されるわけではないが、ユニバーサルシリアルバス(Universal Serial Bus:USB)、IEEE1394(FireWire)、ブルートゥース(登録商標)、IEEE802.111、無線ローカルエリアネットワーク(Wireless Local Area Network:WLAN)、無線パーソナルエリアネットワーク(Wireless Personal Area Network:WPAN)、無線ワイドエリアネットワーク(Wireless Wide Area Network:WWAN)、WiMAX、IEEE802.16(Worldwide Interoperability for Microwave Access:WiMAX)、3G/4G/LTEセルラ通信方式及びパラレルインターフェースを含む典型的なデータ通信規格に互換性を有する様々な有線又は無線インターフェースを使用することができる。データ処理ユニットの入出力(I/O)は、他の外部インターフェース、データストレージ及び/又は視覚情報又は音声情報提供デバイス等に接続し、プロセッサが処理し、メモリデバイスに保存し、又は外部デバイスの出力ユニットに出力することができるデータ及び情報を読み出し、伝送することができる。例えば、視覚的表示デバイス、音声出力デバイス及び/又はセンサデバイスを含む外部表示デバイスは、例えば、I/Oを介して、データ処理ユニットとデータ通信を行うように構成することができ、これは、例えば、スマートフォン、タブレット及び/又は着用可能な技術デバイスを含むことができる。
【0053】
幾つかの具体例では、例えば、データ処理ユニットは、電気化学的アナライザオンボード処理及び通信ユニット1050を含むことができる。例えば、電気化学的アナライザは、ポテンシオスタットデバイス又はガルバノスタットデバイスから供給されるデータを取得及び処理する能力を有する電気又は電子部品を含むことができる。例えば、処理及び通信ユニット1050の幾つかの具体例では、ユニット1050は、内部の又は更なる電源、例えば、ユニット1050のモジュールを駆動するバッテリを含むことができる。
【0054】
統合型プラットフォーム1000の2つの例示的な実施形態の幾つかの例示的な仕様を表1に示す。統合型バイオセンサ、バイオ燃料セル及びエレクトロニクスデバイスプラットフォーム1000の他の実施形態は、表1に示す例示的な仕様の1つ以上によって構成してもよく、又は表1に示していない他の仕様によって構成してもよい。
【0055】
【表1】
ここに開示する統合型プラットフォームは、ここに開示する技術の例示的なマウスガードデバイスの付加的な製造のプロセスを用いて、着用者及び望ましいバイオ検知タスクのための正確な形状及び構成に形成することができる。例えば、付加的な製造プラットフォームは、要求に応じて任意のフォームファクタ及び構成に形成される様々な着用可能なデバイスに適用することができる。例えば、デジタルの付加的な組立が可能な汎用製造プラットフォームは、着用可能なシステムの範囲を広げることができる。このような製造プラットフォームは、設計から多くの異なる種類のセンサのためのデバイスへの速やかな移行並びに個人化を可能にする。
【0056】
例示的な尿酸バイオセンサ
幾つかの具体例では、ここに開示する着用可能な口ベースの唾液バイオセンサは、高尿酸血症の診断及び監視治療のための唾液尿酸の検出に使用できる。以下では、尿酸の継続的な口内監視の具体例で使用される例示的な設計及び例示的なマウスガードベースのバイオセンサの試験管内の特徴付けを記述する。
【0057】
図11Aは、マウスガードに組み込まれる例示的なスクリーン印刷された電気化学センサの写真である。図11Aに示す例では、電気化学センサ100は、マウスガードに取り付け又は組み込むことができる基板101上にスクリーン印刷された電気化学センサとして作成される。図11Aに示すように、バイオセンサデバイス100の作用電極及び基準電極は、電極構造1102内に形成される。
【0058】
図11Bは、デバイス100の電極102の作用電極として使用できる例示的な電極構成1102の略図である。図11Bに示す例は、ここに開示する技術の唾液尿酸バイオセンサの実施形態に含ませることができる。変更された電極1102の構造は、基板(例えば、PET基板)上に配置された電気化学的に不活性である導電性材料、例えば、プルシアンブルーカーボンを含む電極1105を含むことができる。変更された電極1102は、固定化酵素(例えば、BSA及びGlutに混合されたウリカーゼ)電極1105上での試薬層1107を含むことができる。変更された電極1102は、固定化酵素を電極に維持する捕捉層1109(例えば、OPD)を含むことができる。
【0059】
例示的なマウスガード尿酸バイオセンサの例示的な具体例は、以下の化学物質及び試薬を含む。ウリカーゼ、1,2−フェニレンジアミン(o−Pd)、L−乳酸、L−アスコルビン酸(AA)、尿酸(UA)、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、クエン酸、カリウムチオシアン酸塩、塩化アンモニウム、一塩基カリウム、二塩基カリウム、ウシ血清アルブミン(BSA)及びグルタルアルデヒド(Glut)溶液を取得し、更なる精製又は修飾なしで使用した。例示的な具体例では、超高純度の水(18.2MΩ・cm)を使用した。
【0060】
例示的なマウスガード乳酸塩バイオセンサの例示的な具体例は、以下の計装を含む。MPM SPM半自動スクリーンプリンタを用いて電極を印刷した。センサパターンは、AutoCADを用いて設計され、75μm厚のステンレス鋼ステンシルにステンシルをパターン化した。電気化学的測定のために、CH計装モデル621A電気化学アナライザを使用した。
【0061】
図11A及び図11Bに示す例示的なマウスガードベースの唾液電気化学センサデバイスは、上述の製造技術を用いて作成し、マウスガードに統合することができる。この実施形態では、例えば、作用電極は、酵素及び生物付着防止膜(anti-biofouling membrane)によって化学的に修飾される。例えば、ウリカーゼ酵素は、以下の手法で固定化される。まず、リン酸カリウムバッファ(例えば、200μL)内で、ウリカーゼ(例えば、3.0mg)をBSA(例えば、2mg)及びグルタルアルデヒド(例えば、1μLの貯蔵液)に混合する。混合溶液(例えば、3μLの混合溶液)を作用電極上にドロップキャストし、(例えば、30分間)乾燥させた。次に、o−フェニレンジアミン(OPD)を電子重合し、唾液からの生物付着及び干渉効果を防止した。これは、10mMのo−Pd及び窒素によって(例えば、使用前の20分間)パージされた5mMの硫酸ナトリウムを含有する0.1Mのリン酸塩バッファ(pH7.0)溶液に(Ag/AgClに対し)0.6Vを5分間印加することによって達成された。図11Bは、マウスガードプラットフォーム上の例示的な変更された作用電極の化学構造を示している。
【0062】
人間の唾液と同程度の電解質濃度を有する人工唾液を用いて、マウスガードに組み込まれた例示的な唾液尿酸バイオセンサの電気化学的性能を評価した。例えば、通常の唾液尿酸値は、250μMから350μMまでである。高尿酸血症患者の尿酸値をカバーするために、0〜1mMの尿酸に亘って、−0.3V(対Ag/AgCl)のステップの測定により、電流応答における動的濃度範囲を調べた。例えば、5mMのNaCl、1mMのCaCl2、15mMのKCl、1mMのクエン酸、1.1mMのKSCN、4mMのNH4Clを蒸留水に溶解することによって人工唾液を準備した。試料溶液の1分間の培養の後、60秒間、−0.3V(対Ag/AgCl)まで電位をステッピングすることによって、例示的なPB−PPD−ウリカーゼバイオセンサにおいて尿酸のクロノアンペロメトリ測定を実行した。例示的な具体例では、印加電位は、唾液の生理的範囲内で尿酸の応答が弁別可能な電流応答を示したバイオセンサのサイクリックボルタンメトリから選択した。2時間の動作に亘って、10分間隔で、350μM尿酸において、バイオセンサの安定性を調べた。例示的なセンサは、このような連続した測定の間、人工唾液に維持された。関連する電気活性生理的干渉物の存在下で、人工唾液内の350μM尿酸において、選択性を評価した。
【0063】
図12Aは、尿酸濃度を50μM刻みで1mMまで上昇させることによって取得された例示的なバイオセンサの応答を表すクロノアンペログラムのデータプロットを示している(波形1200a〜1200uによって示す)。図12Aの挿入図は、この結果の較正カーブを示している。図12Bは、一般的な電気活性生理的干渉物の存在下の350μM尿酸への応答を表す選択性テストの例示的な結果を示している。図12Cは、2時間の動作に亘る10分間隔の350μM尿酸への電気化学的応答安定性を表す例示的な結果を示している。図12Cの挿入図は、元の電流応答(t=0s)に基づく相対的電流を示している。例示的なセンサは、このような連続的な測定の間、人口唾液内に維持した。この実験は、Eapp=−0.3V(対Ag/AgCl)及び60秒間の電流サンプリング時間によって実行した。
【0064】
例示的なデータは、よく定義されたクロノアンペログラム及び(図12Aの挿入図である較正プロットに示すように)尿酸濃度に比例する電流応答によって、例示的なPB−PPD−ウリカーゼバイオセンサが尿酸に非常に敏感であり、広い線形範囲を有することを示している。例えば、唾液マトリックスは、多くの干渉物を有するため、人間の唾液サンプルの現実のアプリケーションについて選択性を確保する必要がある。グルコース、乳酸塩、アスコルビン酸及びアセトアミノフェンを含む人間の唾液の生理的レベルの関連する電気活性種の存在下で選択性を評価した。図12Bに示すように、例示的なバイオセンサは、0.35mMの尿酸に対して好ましい応答を示し、他の電気活性干渉種への応答は無視できる程度であった。幾つかの具体例では、例えば、急性痛風の治療の効果を継続的に監視するために、2時間に亘って10分間隔で0.35mMの尿酸に応答するバイオセンサの安定性を調べた。図12Cは、2時間の動作の後も維持される応答を示しており、安定した応答は、BSA及びグルタルアルデヒド架橋反応、並びに2時間の測定によっても酵素の完全な固定化を補助するPPD層によるものと考えられる。
【0065】
例示的なマウスガード尿酸バイオセンサの例示的な具体例により、希釈なしの人間の唾液の測定も行った。例えば、未処理の人間の唾液のムチン等のタンパク質及び粘性のために、電気化学的測定において、電極面に生物付着を防止することは極めて困難である。健康な被験者から、「受動的唾液採取法(passive drool method)」を用いて、サンプルを収集し、希釈なしの人間の唾液において例示的な測定を行った。収集したサンプルは、如何なる処理も行わず、電気化学的測定のために直接使用した。人工唾液で用いた条件と同じ条件(例えば、60秒間、EAPP=−0.3V)を適用して、標準的な添加法によって唾液サンプルの尿酸の濃度を判定した。口内の唾液の流量を考慮し(例えば、刺激なし:1mL/分、刺激あり:2mL/分)、20分毎にサンプルを交換して信号を測定し、実際の唾液サンプルの継続的な測定を行った。例えば、センサは、このような連続した動作の間、唾液に浸漬させた。標準的な添加法によって0.1〜0.5mMの尿酸を添加することによって、人間の唾液内の尿酸へのクロノアンペロメトリ応答を取得した。
【0066】
図13Aは、希釈なしの人間の唾液において0.2mM刻みで増加させた異なる濃度の尿酸に対する例示的なPB−PPD−ウリカーゼバイオセンサの電気化学的応答を表すクロノアンペロメトリデータを示している(波形1300a〜1300fによって示す)。図13Aの挿入図は、この結果の較正カーブを示している。図13Bは、350μMの尿酸が添加された人間の唾液サンプルにおける応答の安定性を表すデータプロットを示している。2時間に亘って、反復的な測定を20分間隔で行った。図13Bの挿入図は、元の電流応答(t=0)に基づく相対電流を示している。例示的なセンサは、このような連続的な測定の間、唾液内に維持し、例示的な条件は、EAPP=−0.3V(対Ag/AgCl)及びt=60秒とした。
【0067】
図13Aに示すように、希釈なしの人間の唾液内の異なる濃度の尿酸へのバイオセンサ応答は、良好であった。例えば、図13Aの挿入図に示す結果の較正プロットは、高い感度及び線形性を示している。唾液尿酸値は、刺激なしの人間の唾液において正常範囲内で推定された。唾液内のタンパク質等の干渉物のために、実際の唾液の感度は、人工唾液の場合と比較して、僅かに減少したものの、電流応答は、よく定義されており、尿酸の生理的濃度を弁別可能である。更に、図13Bに示すように、人間の唾液内で安定性を評価し、唾液タンパク質からの生物付着防止を確認し、例示的な結果は、この尿酸バイオセンサの用途を、例えば、急性痛風の治療の監視に拡張できることを示している。例えば、急性痛風は、リアルタイム監視及び速やかな治療が必要であるが、これは、例示的なPB−PPD−ウリカーゼバイオセンサによって行うことができる。特に、唾液尿酸値は、血液におけるレベルより速い薬物への応答を示す。例示的なマウスガード唾液尿酸バイオセンサは、希釈なしの人間の唾液内で良好な線形応答及び安定した応答を示し、これは高尿酸血症患者のための実用的な臨床用途を意味する。
【0068】
更に、PB−PPD−ウリカーゼバイオセンサの例示的な試験として、薬物治療中の高尿酸血症患者の唾液尿酸値の監視を行った。開発されたマウスガードバイオセンサを用いて、健康な被験者と(既に医師の診断済みの)高尿酸血症の被験者との間で唾液尿酸値を比較した。日中の唾液尿酸値の変動を検証するために、各被験者(健常者及び高尿酸血症患者)から5時間に亘って、1時間毎に唾液サンプルを収集し、唾液サンプルに如何なる処理も施さずに測定を行った。各サンプルは、標準的な添加法によって測定し、唾液サンプル内の尿酸の量を判定した。
【0069】
正常な唾液尿酸値は、250μMから350μMの間にあると考えられ、350μMを超える被験者は、高尿酸血症であるとみなすことができる。臨床における実用性を確認するために、健常者と、医師から既に高尿酸血症と診断されている患者の唾液尿酸値を測定し、比較した。高尿酸血症患者が正常レベルより高い唾液尿酸値を有する場合、薬物治療法に従ってアロプリノール(Allopurinol:登録商標)を4日間連続投与し、日々の唾液尿酸値を測定して、薬物(例えば、アロプリノール)の治療効果を確認した。アロプリノール(登録商標)は、キサンチンオキシダーゼを阻害し、高尿酸血症と、痛風を含むその症状を治療することができる薬物である。これらの例示的な試験では、唾液を、1日に3回、毎日回収し、標準的な添加法を実行した。
【0070】
図14Aは、5時間に亘って、健常者(黒い丸)及び高尿酸血症患者(赤い正方形)について、例示的なバイオセンサを用いた継続的な監視によって取得された唾液尿酸値のデータプロットを示している。図14Bは、アロプリノール(登録商標)による高尿酸血症の治療を行いながら、5日間に亘って、例示的なバイオセンサを用いて監視された高尿酸血症患者の唾液尿酸値のデータプロットを示している。例示的な結果は、3回の測定の平均値である。
【0071】
図14Aのデータプロットに示すように、例示的なPB−PPD−ウリカーゼバイオセンサを用いて、安定した唾液尿酸値が継続的に監視された。例示的な結果は、健常者であるか患者であるかに関わらず、唾液尿酸値のレベルが時間的に変動しないことを示している。また、患者からの唾液内の高く、再現可能な尿酸値は、例示的なマウスガードセンサを高尿酸血症のための診断ツールとして実用できることを示している。
【0072】
アロプリノールは、尿酸値を正常範囲に戻すために使用される。なお、この薬物は、高尿酸血症患者の尿酸値をコントロールするために使用された。図14Bに示すように、初日(すなわち、0日目)では、高レベルの唾液尿酸が確認され、患者は、アロプリノールを4日間摂取し続けた。この薬物を4日間摂取した後、唾液尿酸値は、正常レベルに戻り、これらの全てが例示的なPB−PPD−ウリカーゼバイオセンサによって監視された。
【0073】
ここに開示する口ベースのバイオセンサ及びバイオ燃料セルデバイスプラットフォームによって、唾液に存在する他のバイオ化学物質を検出することもでき、エネルギを抽出するために使用することもできる。ある例では、ここに開示する唾液バイオセンサを用いて、コルチゾールを(例えば、0.05μg/dL〜0.5μg/dLの範囲で)電気化学的に検出でき、このデータを用いて、身体的又は精神的ストレスマーカ又は障害、例えば、クッシング症候群(Cushing's Syndrome)を診断又は判定することができる。唾液コルチゾールバイオセンサの1つの例示的な実施形態では、バイオセンサ100の変更された電極構造102aは、電極106に捕捉されたコルチゾール(例えば、コルチゾールAg−Ab/AP)の抗体を含む層(例えば、層107)を含むことができる。
【0074】
別の例では、ここに開示する唾液バイオセンサを用いて、アルファアミラーゼを(例えば、10U/mLから250U/mLの範囲で)電気化学的に検出でき、このデータを用いて、身体的な又は精神的ストレスマーカ又は障害を診断又は判定することができる。唾液アルファアミラーゼ(alpha-amylase)バイオセンサの1つの例示的な実施形態では、バイオセンサ100の変更された電極構造102aは、グルコースオキシダーゼ(GOx)を含む層(例えば、層107)を含むことができ、グルコシダーゼ(GD)が電極106に捕捉される。
【0075】
他の例では、ここに開示する唾液バイオセンサを用いて、唾液リン酸塩を(例えば、マイクロモルの範囲で)電気化学的に検出でき、このデータは、例えば、高リン酸血症等の容態又は排卵を判定するために使用することができ、或いは、デンタルケアの間に使用することができる。唾液リン酸塩バイオセンサの1つの例示的な実施形態では、バイオセンサ100の変更された電極構造102aは、電極106(例えばプルシアンブルーカーボン)に捕捉される乳酸オキシダーゼ(LOx)又はピルビン酸オキシダーゼ(PyOx)を含む層(例えば、層107)を含むことができる。
【0076】
他の例では、ここに開示する唾液バイオセンサを用いて、カドミウムを(例えば、100μg/L以上のレベルで)電気化学的に検出でき、このデータは、例えば、ユーザの環境に存在する環境因子又は喫煙のバイオ監視等、様々な用途に使用できる。他の例では、ここに開示する唾液バイオセンサを用いて、唾液フッ化物又はカルシウムを(例えば、0.05ppm〜0.01ppmの範囲、更には0.01ppm未満の範囲で)電気化学的に検出でき、このデータは、デンタルケア(例えば、空洞の存在の特定等)において使用できる。他の例では、ここに開示する唾液バイオセンサを用いて、pHレベルを検出でき、このデータは、口腔衛生に関係する様々な状況を判定するため、又はストレスマーカの存在を判定するために使用することができる。
【0077】
実施例
以下の実施例は、本技術の幾つか実施形態を例示するものである。本技術の他の例示的な実施形態は、以下にリストする実施例の前に、又は以下にリストする実施例の後に示す実施形態も含まれる。
【0078】
本技術の実施例(実施例1)は、唾液内の分析物を検出する電気化学センサデバイスであって、電気絶縁性材料を含む基板と、第1の位置において基板上に配置され、唾液内の分析物に対応する触媒又は反応物を含む化学物質を含む表面を含む第1の電極と、間隔領域によって第1の電極から分離された第2の位置において基板上に配置された第2の電極であって、第1の電極と共に化学物質及び分析物を含む酸化還元反応を継続し、電気信号を生成することができる第2の電極とを備え、ユーザの口内に配置され、電気回路に電気的に接続されているとき、ユーザの唾液内の分析物を検出する。
【0079】
実施例2は、第1の電極の表面が、ポリマ膜又は選択的浸透性骨格内の電子重合捕捉によって第1の電極の表面に固定化された化学物質を含むように構造化されている実施例1のデバイスを含む。
【0080】
実施例3は、ポリマ膜が、ポリ(o−フェニレンジアミン)を含む実施例2のデバイスを含む。
【0081】
実施例4は、選択的浸透性骨格が、ナフィオン又はキトサンを含む実施例2のデバイスを含む。
【0082】
実施例5は、第1の電極の表面が、第1の電極を形成する材料内に分散された化学物質を含むように構造化されている実施例1のデバイスを含む。
【0083】
実施例6は、第1の電極の表面が、静電的に又は共有結合によって表面に付着された化学物質を含む層を含むように構造化されている実施例1のデバイスを含む。
【0084】
実施例7は、化学物質が、乳酸オキシダーゼ(LOx)を含み、デバイスが検出する分析物が、乳酸塩を含む実施例1のデバイスを含む。
【0085】
実施例8は、化学物質が、グルコースオキシダーゼ(GOx)を含み、デバイスが検出する分析物が、グルコースを含む実施例1のデバイスを含む。
【0086】
実施例9は、化学物質が、尿酸オキシダーゼ(ウリカーゼ)を含み、デバイスが検出する分析物が、尿酸を含む実施例1のデバイスを含む。
【0087】
実施例10は、第1の電極、第2の電極又は両方が、電解触媒を含む導電性材料を含む実施例1のデバイスを含む。
【0088】
実施例11は、第1の電極、第2の電極又は両方が、プルシアンブルーカーボンを含む導電性材料を含む実施例10のデバイスを含む。
【0089】
実施例12は、基板が、ユーザの口内に嵌合するように適応化されたマウスガードに含まれ、第1及び第2の電極の第1及び第2の位置が、マウスガードの内側領域において、ユーザの舌に隣接するように配置される実施例1のデバイスを含む。
【0090】
実施例13は、基板上に配置され、導電性の第1の接続体によって第1の電極に電気的に接続される第1の電極インターフェース要素と、基板上に配置され、導電性の第2の接続体によって第2の電極に電気的に接続される第2の電極インターフェース要素とを更に備え、第1及び第2の電極インターフェース要素が、電気回路に電気的に接続される実施例1のデバイスを含む。
【0091】
実施例14は、第1の電極が、アンペロメトリ測定のための作用電極として動作し、第2の電極が、対電極として動作し、デバイスが、更に、基板上の作用電極と対電極の間に位置し、化学物質を含む表面を有する基準電極を更に備える実施例1のデバイスを含む。
【0092】
実施例15は、基板上に配置され、唾液から電気化学的にエネルギを抽出し、デバイスに電力を供給するバイオ燃料セルを更に備え、バイオ燃料セルが、基板に配置され、導電性材料を含むアノードであって、アノードにおいて捕捉されている電子を放出する酸化プロセスにおいて、唾液内の燃料物質の第1の生成物への変換を促進することによって、燃料物質からエネルギを抽出する燃料セル触媒を含むアノードと、基板に配置され、アノードに近接すると共にアノードから分離されているカソードであって、導電性を有し、還元プロセスにおいて、唾液内の酸素化物質を第2の生成物に還元し、第2の生成物に電子を獲得させる材料を含むカソードと、電気相互接続を介して、バイオ燃料セルと、第1及び第2の電極との間に電気的に接続され、バイオ燃料セルから抽出されたエネルギを電気エネルギとして取得し、電気エネルギをデバイスの第1及び第2の電極に供給する電気回路とを備える実施例1のデバイスを含む。
【0093】
実施例16は、燃料セル触媒が、アノードの表面の導電性ポリマにより形成された多孔質骨格構造内に収容されている実施例15のデバイスを含む。
【0094】
実施例17は、導電性ポリマが、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフエン)、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリピレン、ポリアズレン、ポリナフタレン、ポリ(アセチレン)、ポリ(p−フェニレンビニルエン)及びポリフェニルジアミンの少なくとも1つを含む実施例17のデバイスを含む。
【0095】
実施例18は、燃料セル触媒が、アノードの表面に結合された選択的浸透性膜に捕捉されている実施例15のデバイスを含む。
【0096】
実施例19は、選択的浸透性膜が、ナフィオン又はキトサンの少なくとも1つを含む実施例18のデバイスを含む。
【0097】
実施例20は、燃料セル触媒が、静電的に又は共有結合によって、アノードの表面に付着されている実施例15のデバイスを含む。
【0098】
実施例21は、アノードが、燃料セル触媒の活性部位とアノードの表面との間の電子移動を促進する電気活性仲介物を含むように構造化されている実施例15のデバイスを含む。
【0099】
実施例22は、燃料セル触媒が、LOx、GOx又はウリカーゼを含む実施例15のデバイスを含む。
【0100】
実施例23は、カソードが、第2の生成物が電子を獲得する還元プロセスにおいて、唾液内の非酸素化物質を第2の生成物に還元することができる電気活性仲介物を含む実施例15のデバイスを含む。
【0101】
実施例24は、電気回路が、バイオ燃料セルによって抽出された電気エネルギを修正し、又は第1及び第2の電極によって検出された電気信号を増幅し、又はこの両方を行う信号調整回路を含む実施例15のデバイスを含む。
【0102】
実施例25は、電気回路が、検出された電気信号に基づいてデータを処理するプロセッサと、データを保存又はバッファリングするメモリとを含むデータ処理ユニットを含む実施例15のデバイスを含む。
【0103】
本技術の実施例(実施例26)は、唾液内の分析物を検出し、唾液からデバイスに電力を供給する方法において、ユーザの口内において着用可能な口ベースのデバイスに取り付けられたバイオ燃料セルのアノード及びカソード電極において、アノードに捕捉されている電子を解放する酸化プロセスによって、唾液に存在するバイオ燃料物質から、バイオ燃料物質を第1の生成物に変換し、及び還元プロセスによって、唾液内の化学物質を第2の生成物に還元し、第2の生成物がカソードにおいて電子を獲得することによって、電気エネルギを抽出することと、抽出した電気エネルギを口ベースのデバイスに取り付けられた電気化学センサの電極に供給し、電気化学センサを駆動することと、ユーザの口の唾液に接触する駆動された電気化学センサの電極において、唾液内の分析物と、電気化学センサの電極に結合された化学薬剤とに関係する酸化還元反応の結果として生成される電気信号を検出することとを含む。
【0104】
実施例27は、電気信号が、アンペロメトリ、ボルタンメトリ又はポテンシオメトリを用いて検出される実施例26の方法を含む。
【0105】
実施例28は、電気信号を処理し、分析物のパラメータを判定することを更に含む実施例26の方法を含む。
【0106】
実施例29は、パラメータが、分析物の濃度レベルを含む実施例28の方法を含む。
【0107】
実施例30は、検出された電気信号を外部デバイスに無線で送信することを更に含む実施例26の方法を含む。
【0108】
本技術の実施例(実施例31)は、唾液内の分析物を検出し、唾液からデバイスに電力を供給するデバイスにおいて、ユーザの口内に適合する口装着デバイスに取り付けられるように構成された電気絶縁性材料を含む基板と、唾液分析物を検出する電気化学センサと、唾液から電気化学的にエネルギを抽出し、デバイスに電力を供給するバイオ燃料セルと、電気相互接続を介して、バイオ燃料セルと、電気化学センサとの間に電気的に接続され、バイオ燃料セルから抽出されたエネルギを電気エネルギとして取得し、電気エネルギを電気化学センサに供給する電気回路を備える。電気化学センサは、第1の位置において基板上に配置され、唾液分析物に対応する触媒又は反応物を含む化学物質を含む表面を含む第1の電極と、間隔によって第1の電極から分離された第2の位置において基板上に配置されている第2の電極であって、第1の電極と共に、化学物質及び唾液分析物を含む酸化還元反応を継続し、第1及び第2の電極において検出可能な電気信号を生成する第2の電極とを備える。バイオ燃料セルは、基板に配置され、導電性材料を含むアノードであって、アノードにおいて捕捉されている電子を放出する酸化プロセスにおいて、唾液内の燃料物質の第1の生成物への変換を促進することによって、燃料物質からエネルギを抽出する燃料セル触媒を含むアノードと、基板に配置され、アノードに近接すると共にアノードから分離されているカソードであって、導電性を有し、還元プロセスにおいて、唾液内の酸素化物質を第2の生成物に還元し、第2の生成物に電子を獲得させる材料を含むカソードとを備える。デバイスは、ユーザの口内に存在するとき、ユーザの唾液内の唾液分析物を検出する。
【0109】
実施例32は、電気回路が、バイオ燃料セルによって抽出された電気エネルギを修正し、又は第1及び第2の電極によって検出された電気信号を増幅し、又はこの両方を行う信号調整回路を含む実施例31のデバイスを含む。
【0110】
実施例33は、電気回路が、検出された電気信号に基づいてデータを処理するプロセッサと、データを保存又はバッファリングするメモリとを含むデータ処理ユニットを含む実施例31のデバイスを含む。
【0111】
実施例34は、電気回路が、検出された電気信号を外部デバイスに無線送信する無線通信ユニットを含む実施例31のデバイスを含む。
【0112】
実施例35は、第1の電極の表面が、ポリマ膜内の電子重合捕捉又は選択的浸透性骨格によって第1の電極面に固定化された化学物質、又は第1の電極を形成する材料内に分散された化学物質、又は表面に静電的に又は共有結合により付着された化学物質を含む層を含む実施例31のデバイスを含む。
【0113】
実施例36は、ポリマ膜が、ポリ(o−フェニレンジアミン)を含み、又は選択的浸透性骨格が、ナフィオン又はキトサンを含む実施例35のデバイスを含む。
【0114】
実施例37は、電気化学センサが、以下の1つ以上によって構成され、すなわち、化学物質が、乳酸オキシダーゼ(LOx)を含み、電気化学センサが検出する分析物が、乳酸塩を含み、化学物質が、グルコースオキシダーゼ(GOx)を含み、電気化学センサが検出する分析物が、グルコースを含み、化学物質が、尿酸オキシダーゼ(ウリカーゼ)を含み、電気化学センサが検出する分析物が、尿酸を含み、化学物質が、コルチゾールの抗体を含み、電気化学センサが検出する分析物が、コルチゾールを含み、化学物質が、GOx及びグルコシダーゼ(GD)を含み、電気化学センサが検出する分析物が、アルファアミラーゼを含み、及び/又は化学物質が、LOx又はピルビン酸オキシダーゼ(PyOx)を含み、電気化学センサが検出する分析物が、リン酸塩を含む実施例31のデバイスを含む。
【0115】
実施例38は、基板が、ユーザの口内に嵌合するように適応化されたマウスガードに含まれ、第1及び第2の電極の第1及び第2の位置が、マウスガードの内側領域において、ユーザの舌に隣接するように配置される実施例31のデバイスを含む。
【0116】
実施例39は、第1の電極が、アンペロメトリ測定のための作用電極として動作し、第2の電極は、対電極として動作し、電気化学センサが、更に、基板上の作用電極と対電極の間に位置し、化学物質を含む表面を有する基準電極を更に備える実施例31のデバイスを含む。
【0117】
実施例40は、燃料セル触媒が、アノードの表面の導電性ポリマにより形成された多孔質骨格構造内に収容されており、又は燃料セル触媒が、アノードの表面に結合された選択的浸透性膜に捕捉されており、又は燃料セル触媒が、静電的に又は共有結合によって、アノードの表面に付着されている実施例31のデバイスを含む。
【0118】
実施例41は、導電性ポリマが、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフエン)、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリピレン、ポリアズレン、ポリナフタレン、ポリ(アセチレン)、ポリ(p−フェニレンビニルエン)及びポリフェニルジアミンの少なくとも1つを含む実施例40のデバイスを含む。
【0119】
実施例42は、選択的浸透性膜が、ナフィオン又はキトサンの少なくとも1つを含む実施例40のデバイスを含む。
【0120】
実施例43は、アノードが、燃料セル触媒の活性部位とアノードの表面との間の電子移動を促進する電気活性仲介物を含むように構造化されている実施例31のデバイスを含む。
【0121】
実施例44は、燃料セル触媒が、LOx、GOx又はウリカーゼを含む実施例31のデバイスを含む。
【0122】
本明細書に開示した主題の具体例及び機能的動作、例えば様々なモジュールは、デジタル電子回路で実現してもよく、本明細書に開示した構造及びこれらの構造的な均等物を含むコンピュータソフトウェア、ファームウェア又はハードウェアで実現してもよく、これらの1つ以上の組合せで実現してもよい。ここに開示した主題の具体例は、1つ以上のコンピュータプログラム製品、例えば、実体がある不揮発性の媒体内に符号化され、データ処理装置によって実行され、又はデータ処理装置の動作を制御するコンピュータプログラム命令の1つ以上のモジュールとして実現することもできる。コンピュータが読取可能な媒体は、機械可読のストレージデバイス、機械可読のストレージ基板、メモリデバイス、機械可読の伝播信号に作用する組成物又はこれらの1つ以上の組合せであってもよい。用語「データ処理装置」は、データを処理するための全ての装置、デバイス及び機械を包含し、一例としてプログラミング可能なプロセッサ、コンピュータ、複数のプロセッサ又はコンピュータがこれに含まれる。装置は、ハードウェアに加えて、当該コンピュータプログラムの実行環境を作成するコード、例えば、プロセッサファームウェアを構成するコード、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム又はこれらの1つ以上の組合せを含むことができる。
【0123】
コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト又はコードとも呼ばれる。)は、コンパイラ言語又はインタープリタ言語を含む如何なる形式のプログラミング言語で書いてもよく、例えば、スタンドアロンプログラムとして、若しくはモジュール、コンポーネント、サブルーチン又は演算環境での使用に適する他のユニットとして、如何なる形式で展開してもよい。コンピュータプログラムは、必ずしもファイルシステム内のファイルに対応していなくてもよい。プログラムは、他のプログラム又はデータを含むファイル(例えば、マークアップ言語文書内に保存された1つ以上のスクリプト)の一部に保存してもよく、当該プログラムに専用の単一のファイルに保存してもよく、連携する複数のファイル(例えば、モジュール、サブプログラム又はコードの一部を保存する1つ以上のファイル)に保存してもよい。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で実行されるように展開してもよく、1つの場所に設けられた又は複数の場所に亘って分散され、通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように展開してもよい。
【0124】
本明細書に開示したプロセス及びロジックフローは、入力データを処理し、出力を生成することによって機能を実現する1つ以上のコンピュータプログラムを実行する1つ以上のプログラミング可能なプロセッサによって実現してもよい。プロセス及びロジックフローは、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array:FPGA)又は特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit:ASIC)等の専用論理回路等として実現できる装置によって実行してもよい。
【0125】
コンピュータプログラムの実行に適するプロセッサには、一例として、汎用マイクロプロセッサ及び専用マイクロプロセッサの両方、例えば、デジタルシグナルプロセッサ(digital signal processor:DSP)並びにあらゆる種類のデジタルコンピュータの1つ以上のプロセッサの何れかを含ませてもよい。プロセッサは、通常、読出専用メモリ若しくはランダムアクセスメモリ、又はこれらの両方から命令及びデータを受け取る。コンピュータの基本的な要素は、命令を実行するプロセッサと、命令及びデータを保存する1つ以上のメモリデバイスである。また、コンピュータは、通常、データを保存するための1つ以上の大容量記憶装置、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク又は光ディスクを含み、若しくは、大容量記憶装置からデータを受信し、大容量記憶装置にデータを送信し、又はこの両方の動作を行うように大容量記憶装置に動作的に接続されている。但し、コンピュータは、必ずしもこのような装置を有する必要はない。コンピュータプログラム命令及びデータの格納に適するコンピュータ可読媒体には、一例として挙げれば、半導体記憶デバイス、例えば、EPROM、EEPROM及びフラッシュメモリデバイスを含む全ての形式の不揮発性メモリが含まれる。プロセッサ及びメモリは、専用論理回路によって補ってもよく、専用論理回路に組み込んでもよい。
【0126】
本明細書は、多くの詳細事項を含んでいるが、これらの詳細事項は、特許請求している又は特許請求することができる本発明の範囲を限定するものとは解釈されず、本発明の特定の実施形態の特定の特徴の記述として解釈される。本明細書において、別個の実施形態の文脈で開示した幾つかの特徴を組合せて、単一の実施形態として実現してもよい。逆に、単一の実施形態の文脈で開示した様々な特徴は、複数の実施形態に別個に具現化してもよく、適切な如何なる部分的組合せとして具現化してもよい。更に、以上では、幾つかの特徴を、ある組合せで機能するものと説明しているが、初期的には、そのように特許請求している場合であっても、特許請求された組合せからの1つ以上の特徴は、幾つかの場合、組合せから除外でき、特許請求された組合せは、部分的組合せ又は部分的な組合せの変形に変更してもよい。
【0127】
同様に、図面では、動作を特定の順序で示しているが、このような動作は、所望の結果を達成するために、図示した特定の順序又は順次的な順序で行う必要はなく、また、図示した全ての動作を行う必要もない。更に、上述した実施形態における様々なシステムの構成要素の分離は、全ての実施形態においてこのような分離が必要であることを意図してはいない。
【0128】
幾つかの具体例及び実施例のみを開示したが、この特許文献に記述し例示した内容に基づいて、他の具体例、拡張例及び変形例を想到することができる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図14A
図14B