特許第6576953号(P6576953)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6576953リファキシミンの新規溶媒和物結晶形、生成物、組成物及びそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576953
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】リファキシミンの新規溶媒和物結晶形、生成物、組成物及びそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 498/22 20060101AFI20190909BHJP
   A61K 31/439 20060101ALI20190909BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20190909BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20190909BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20190909BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20190909BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20190909BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20190909BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20190909BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20190909BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20190909BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20190909BHJP
   A61P 15/02 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   C07D498/22 301
   A61K31/439
   A61K9/20
   A61K9/48
   A61K9/107
   A61K9/10
   A61P31/04
   A61P1/00
   A61P1/12
   A61P1/04
   A61P1/18
   A61P1/16
   A61P15/02
【請求項の数】12
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-566935(P2016-566935)
(86)(22)【出願日】2015年5月7日
(65)【公表番号】特表2017-515821(P2017-515821A)
(43)【公表日】2017年6月15日
(86)【国際出願番号】IB2015053342
(87)【国際公開番号】WO2015173697
(87)【国際公開日】20151119
【審査請求日】2018年4月20日
(31)【優先権主張番号】61/992,017
(32)【優先日】2014年5月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】317013544
【氏名又は名称】アルファシグマ ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(72)【発明者】
【氏名】ヴィスコミ, ジュゼッペ クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】マッフェイ, パオラ
(72)【発明者】
【氏名】スフォルツィーニ, アンナリサ
(72)【発明者】
【氏名】グレピオニ, ファブリツィア
(72)【発明者】
【氏名】ケラッツィ, ラウラ
【審査官】 谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−184902(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/150561(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/109605(WO,A2)
【文献】 特表2013−511569(JP,A)
【文献】 特表2010−502584(JP,A)
【文献】 特開昭57−011987(JP,A)
【文献】 特表2012−524060(JP,A)
【文献】 特表2013−527246(JP,A)
【文献】 VISCOMI G. C. et al.,CrystEngComm,2008年,VOl.10,p.1074-81
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 498/22
A61K 9/10
A61K 9/107
A61K 9/20
A61K 9/48
A61K 31/439
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リファキシミンとジエチレングリコールモノエチルエーテルとの溶媒和物形であって、正方晶結晶系を有し、空間群がP42であり、かつ単位格子定数が、a=b=16.51(1)Å;c=36.80(1)Å;α=β=γ=90°;V=10027(1)Åであることを特徴とするリファキシミンτ晶。
【請求項2】
角度2θ±0.1°の値が、5.9°;9.0°及び12.9°;又は5.9°;12.9°及び18.8°;又は5.9°;15.4°及び23.4°;又は9.0°;15.4°及び23.4°又は12.9°22.8°及び23.4°にピークを有するX線回折スペクトルを特徴とする請求項1記載のリファキシミンτ晶。
【請求項3】
角度2θ±0.1°の値が、5.9°;9.0°;12.9°;15.4°;18.8°;22.8°及び23.4°にピークを有するX線回折スペクトルを特徴とする請求項1又は2記載のリファキシミンτ晶。
【請求項4】
ファキシミンとジエチレングリコールモノエチルエーテルとの化学量論比(モル比)が1:1であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のリファキシミンτ晶。
【請求項5】
以下の工程を含む方法:
・ジエチレングリコールモノエチルエーテルをリファキシミンに10:1〜100:1のモル比で、室温〜100℃の温度で5分〜5時間の間添加してリファキシミンをジエチレングリコールモノエチルエーテルに溶解し、リファキシミン溶液を得る工程;
・この溶液を室温〜−20℃の温度であって、前記溶解温度よりも低い温度に冷却する工程;
・得られた沈殿物を濾過する工程;及び
・得られた沈殿物を室温〜40℃の温度、周囲圧力〜真空圧力下で5分〜1日間の間乾燥する工程
を含み、
燥工程前の沈殿物を、必要に応じて、無極性溶媒であるC−C直鎖状又は環状又は芳香族炭化水素で洗浄する、方法
若しくは以下の工程を含む方法:
・前記リファキシミン溶液を得る工程;及び
・この溶液を室温で蒸発させて結晶を得る工程;
を含む、方法により、
請求項1〜4のいずれかに記載のリファキシミンτ結晶を製造する方法
【請求項6】
沈殿物を凍結乾燥又は真空乾燥によって乾燥する請求項記載の方法。
【請求項7】
有効量の請求項1〜のいずれかに記載のリファキシミンτ晶と薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項8】
感染症又は炎症の治療又は予防に有効な20〜1200mgの量でリファキシミンτ晶を含む請求項記載の医薬組成物。
【請求項9】
錠剤、カプセル剤、クリーム剤、又は懸濁剤用顆粒剤の形態である請求項7又は8記載の医薬組成物。
【請求項10】
錠剤又は顆粒剤であって、この錠剤又は顆粒剤が、アクリルポリマー、メタクリル酸とアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとのコポリマー、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートフタレート及びヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートからなる群より選択される少なくとも一種を含むコーティング剤でコーティングされており、4.5よりも高いpH値で放出制御性、時限放出性又は速放性を有する請求項7〜9のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項11】
細菌エシェリキア コリ又はクロストリジウム ディフィシルによって生じる腸感染症旅行者下痢症感染性下痢症クローン病、過敏性腸症候群(IBS)、腸炎、全腸炎、憩室炎、小腸における細菌の過剰増殖の症候群(SIBO)、大腸炎、膵不全、慢性膵炎、肝性脳症、機能性胃腸障害及び下痢症を伴う機能性消化不良から選択された腸障害;並びに膣感染症の治療又は予防のための請求項7〜10のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項12】
X線分析における解析基準としての請求項1〜のいずれかに記載のリファキシミンτ晶の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
リファキシミン(INN;メルクインデックス第13版(The Merck Index, XIII ed.), 8304, CAS No. 80621-81-4(非特許文献1)参照)、IUPAC命名法(2S,16Z,18E,20S,21S,22R、23R,24R,25S,26S,27S,28E)−5,6,21,23,25 ペンタヒドロキシ−27−メトキシ−2,4,11,16,20,22,24,26−オクタメチル−2,7−(エポキシペンタデカ−(1,11,13)トリエンイミノ)ベンゾフロ(4,5−e)ピリド(1,2,−a ベンズイミダゾール−1,15(2H)ジオン,25−アセテート)は、リファンピシン群に属する半合成抗生物質である。より正確には、リファキシミンは、イタリア国特許第1154655号(特許文献1)に記載のピリド−イミダゾ−リファマイシンであり、欧州特許第0161534号(特許文献2)には、リファマイシンO(メルクインデックス第13版(The Merck Index, XIII ed.), 8301(非特許文献2))を出発物質としてリファキシミンを製造する方法が記載されている。
【0002】
リファキシミンは、商標Normix(ノルミックス)(登録商標)、Rifacol(リファコール)(登録商標)及びXifaxan(キシファクサン)(登録商標)の名で市販されている。リファキシミンは、局所的に使用できる抗生物質であり、グラム陽性細菌及びグラム陰性細菌並びに好気性生物及び嫌気性生物に対する広範囲の作用を有する。リファキシミンは、低い全身性吸収を特徴とし、胃腸管に局在化した細菌、例えば、エシェリキア コリ(大腸菌(Escherichia coli))及びクロストリジウム ディフィシル(Clostridium difficile)に対する抗菌作用でよく知られている。リファキシミンはまた、旅行者下痢症、感染性下痢症及び他の下痢症、「過敏性腸疾患」として知られる過敏性腸症候群(IBS)、「小腸細菌過剰増殖」(SIBO)としても知られる小腸における細菌の過剰増殖、クローン病(CD)、大腸炎、膵不全、腸炎、線維筋肉痛、肝性脳症、機能性胃腸障害、下痢症を伴う機能性消化不良及び他の感染症(例えば、膣感染症)などの腸障害の治療又は予防のために使用される。リファキシミンは、結腸の外科的処置の前及び/若しくは後の抗菌又は予防薬として、並びに赤痢、不全症(paucities)、消化性潰瘍疾患及び細菌性腸内毒素症(bacterial dysbiosis)のために有用である。
【0003】
固体リファキシミンは、結晶形であってもよく、無定(アモルファス)形であってもよい。結晶形は、多形、水和物形、無水物形又は溶媒和物形であってもよく、異なる溶解度を有していてもよく、in vivo吸収性が異なっていてもよい。
【0004】
いくつかの特許出願には、リファキシミンの多形形態が記載されている。例えば、米国特許第7,045,620号(特許文献3)、米国特許出願公開第2008/0262220号(特許文献4)、米国特許第7,612,199号(特許文献5)、米国特許出願公開第2009/0130201号(特許文献6)(リファキシミンα形、β形及びγ形)、WO2006/094662(特許文献7)(リファキシミンδ形及びε形)、WO2009/108730(特許文献8)(特徴的なX線回折ピークを有するリファキシミンのζ形、γ−1(ζ)形、η形、α−乾燥形、ι形、β−1形、β−2形、ε−乾燥形及び種々の無定形)。米国特許第7,709,634号(特許文献9)及びWO2008/035109(特許文献10)には、リファキシミンのさらなる無定形が記載されている。
【0005】
溶解度、固有溶出性(intrinsic dissolution)、バイオアベイラビリティなどのいくつかの技術的及び/又は薬学的特性は、文献に記載されたリファキシミンの結晶形の一部についてのみ報告されている。特に、このような情報は、リファキシミン多形α、β、γ、δ、ε及び無定形に利用できる。
【0006】
有機溶媒を含むリファキシミンの結晶形は公知であり、例えば、WO2009/108730(特許文献8)には、リファキシミンのエタノール和物/三水和物であるβ−1形が記載されている。
【0007】
WO2012/150561(特許文献11)には、リファキシミンのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒和物が記載されている。
【0008】
WO2012/156951(特許文献12)には、1,2−ジメチルエーテル(DME)の存在下において得られたリファキシミンκの結晶が記載されている。
【0009】
リファキシミンの結晶形中の有機溶媒の存在は、医療品において注意深く監視されるべきである。一部の有機化合物はヒト及び動物の両方に有毒であることが証明されており、保健機関によって、これらの物質についてヒトに投与される生成物(製品)中の最大許容限度が設定されている。
【0010】
例えば、エタノール及びDMFは有機溶媒であり、医薬化合物におけるそれらの使用は、残留溶媒についての欧州ガイドライン(European Guideline for residual solvent)(CPMP/ICH/283/95)(非特許文献3)によって規制されている。これらの指針により、有機溶媒は次の3つのクラスに分類される。クラス1、避けなければならない溶媒;クラス2、投与上限を有する溶媒;クラス3、潜在的に低毒性だが最大許容1日用量(医薬品中に残留する溶媒の1日当たりに摂取が許容される最大量(permitted daily exposure)、PDE)を有する溶媒。
【0011】
WO2012/150561(特許文献11)に記載されるリファキシミンκ中に含まれるDMFは、クラス3に属し、PDEが8.8mgである。リファキシミンベースの医薬品が、ある場合に2400mg/日までの用量で投与できるということを考慮に入れると(ロレンツェッティ R.(Lorenzetti R.)ら、Clin. Invest 2013, 3(12), 1187-1193(非特許文献4))、DMFの曝露を8.8mg/日の限度未満に抑えるためには、約23:1よりも大きなリファキシミン−DMFモル比に対応する量を含まなければならない。
【0012】
WO2012/150561(特許文献11)は、リファキシミンとDMFとのモル比を明白には述べていないが、記載された結晶は、リファキシミン1モルあたり少なくとも1モルのDMFを含む。この場合、2つの成分の重量比は11:1であるので、リファキシミンの1日投薬量2400mgに対して、DMF量はこの化合物に許容される安全性限度よりもはるかに大きくなる。
【0013】
類似の事例は、WO2009/108730(特許文献8)に記載のエタノール含有結晶形β−1によって示される。エタノールのPDEは50mg/日である。β−1結晶形中のリファキシミン:エタノールで示されるモル比は1:1であるので、リファキシミンが2400mg/日で投与される場合、投与されたエタノール量は約141mg/日、すなわち、クラス3の許容量よりも多い。従って、この結晶形もまた、潜在的に有毒である。
【0014】
リファキシミンκの調製についてWO2012/156951(特許文献12)に記載されるDMEは、室温で気体の化合物であり、通常、噴射剤(propeller)及び燃料として使用され、工業プロセスにおいて避けられるべきである。また、DMEへの曝露は中毒作用を有するおそれがあり、妊娠ラットを1000ppmのDMEを含む環境へ曝露すると胎児及び母親の両方に中毒作用が現れたこと、並びにラット及びイヌの曝露に関する研究から、1,2−ジメチルエーテル(Dymel(ダイメル)(登録商標))についてのDupon Technical Information(非特許文献5)に報告されるように、心臓の不整脈及び鎮静作用が示されたことが報告されている。
【0015】
これらのすべての知見により、DMEは潜在的に有毒な化合物であり、医薬製剤におけるDMEの使用は避けなければならないという結論に至る。DMEは可燃性が高くかつ爆発しやすいので、リファキシミン多形製剤のためのDMEの潜在的な工業的使用には問題がある。
【0016】
固形形態の医薬化合物の多形及びモルフォロジー(morphology)は、その物理化学的及び生物学的特性に影響を及ぼすことがある。従って、より少ない投薬量で医療用途のために効果的にかつ安全に投与でき、及び/又はヒト及び動物において異なる吸収プロファイルを有する公知化合物の新規形態を調査することは、重要かつ有用である。また、工業プロセスによって得ることができる医薬製剤を見出すことも重要である。
【0017】
本発明には、リファキシミンτと称されるリファキシミンの新規結晶形態が記載され、この結晶形は、その結晶構造中に、IUPAC命名法によって2−(2−エトキシエトキシ)エタノールとして特定された化合物を含む。この化合物は、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DEGME)としても知られ、商品名Transcutol(トランスクトール)(登録商標)又はCarbitol(カルビトール)(登録商標)の名で製品として市販されている。
【0018】
新規結晶形(又は形態)は、リファキシミン:DEGMEのモル比が1:1であるリファキシミンの化学量論的な溶媒和物の形態である。
【0019】
DEGMEは、製薬工業において慣用の化合物であり、その安全性から薬学的賦形剤として認可されているので、容易に用いることができる。いくつかの研究から、経口経路につき、DEGMEに対するNOAEL(No Observed Adverse Effect Level(最大無作用量))値は、体重1kg当たり約160mgよりも高いことが明らかにされている(European Commission, Health & Consumer Protection Directorate - General; Scientific Committee on Consumer Products [SCCP], Opinion on Diethylene Glycol Monoethyl ether [DEGME], 19 Dec. 2006(非特許文献6))。要するに、体重70kgの患者の場合、最大無作用量で1日に投与可能なDEGME量は約11200mgということである。安全注意事項として、有毒物質は、NOAELよりも少なくとも10倍低い投薬量で投与されることが一般的に推奨される。従って、DEGMEの場合、1110mg/日未満の用量が安全範囲内であるとみなされる。リファキシミンτとDEGMEとのモル比が1:1である場合、この量は6500mg/日のリファキシミン用量に相当し、リファキシミンで治療される病状に必要とされる典型的な投薬量よりも高い。
【0020】
リファキシミンτは安定な形態であり、種々の湿度レベルで湿潤環境に曝露されてもその結晶構造は変化しない。
【0021】
リファキシミンτは、他の結晶形と比較して溶解度が増大したリファキシミンの結晶形態であり、水溶液中の高いリファキシミン濃度を与え、低い吸収性を維持して全身性曝露を回避する。前記リファキシミンτは、水溶液中の溶解度とin vivoでのバイオアベイラビリティ値との間に比例関係を示さない。本発明には、リファキシミンτの結晶形を得るための方法、前記結晶形(又は形態)を含む医薬組成物、並びに感染症及び炎症の治療及び/又は予防におけるそれらの使用も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】イタリア国特許第1154655号
【特許文献2】欧州特許第0161534号
【特許文献3】米国特許第7,045,620号
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/0262220号
【特許文献5】米国特許第7,612,199号
【特許文献6】米国特許出願公開第2009/0130201号
【特許文献7】WO2006/094662
【特許文献8】WO2009/108730
【特許文献9】米国特許第7,709,634号
【特許文献10】WO2008/035109
【特許文献11】WO2012/150561
【特許文献12】WO2012/156951
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】メルクインデックス第13版(The Merck Index, XIII ed.), 8304, CAS No. 80621-81-4
【非特許文献2】メルクインデックス第13版(The Merck Index, XIII ed.), 8301
【非特許文献3】残留溶媒についての欧州ガイドライン(European Guideline for residual solvent)(CPMP/ICH/283/95)
【非特許文献4】Clin. Invest 2013, 3(12), 1187-1193
【非特許文献5】1,2−ジメチルエーテル(Dymel(ダイメル)(登録商標))についてのDupon Technical Information
【非特許文献6】European Commission, Health & Consumer Protection Directorate - General; Scientific Committee on Consumer Products [SCCP], Opinion on Diethylene Glycol Monoethyl ether [DEGME], 19 Dec. 2006
【発明の概要】
【0024】
(発明の概要)
第1の態様によると、本発明は、リファキシミンとジエチレングリコールモノエチルエーテル(DEGME)との溶媒和物の形態(solvated form)であることを特徴とするリファキシミンの新規結晶形(又は形態)に関し、この結晶形はリファキシミンτと称される。
【0025】
リファキシミンτ形は、空間群P42に属する正方格子(tetragonal cell)及び単位格子定数a=b=16.51(1)Å;c=36.80(1)Å;α=β=γ=90°;V=10027(1)Åを特徴とする。
【0026】
リファキシミンτ形は、角度2θ±0.1°の値が、5.9°;9.0°及び12.9°;又は5.9°;12.9°及び18.8°;又は5.9°;15.4°及び23.4°;又は9.0°;15.4°及び23.4°又は12.9°;22.8°及び23.4°にピークを有するX線回折スペクトルを示す。
【0027】
リファキシミンτ形はまた、角度2θ±0.1°の値が、5.9°;9.0°;12.9°;15.4°;18.8°;22.8°及び23.4°にピークを有するX線回折スペクトルを特徴とする。
【0028】
リファキシミンτは、溶媒がジエチレングリコールモノエチルエーテル(DEGME)であり、リファキシミンとの化学量論比が1:1である溶媒和物形であることを特徴とする。
【0029】
リファキシミンは、長期間にわたり安定であり、その固体中に存在する水及び/若しくは他の残留溶媒を除去するために乾燥に供される場合又は湿気に曝露される場合にも他の形態に変形しない。リファキシミンτが約1時間〜10日間にわたって10%〜90%の湿度レベルに曝露されても、その化学構造は変わらない。
【0030】
リファキシミンτは、0.12mg/分/cmよりも高い固体溶出値を特徴とする。
【0031】
リファキシミンτは、中性pHでの水溶液中の濃度値が30分後に90μg/mlよりも高いことを特徴とする。
【0032】
本発明の他の態様は、以下の工程を含むリファキシミンτを製造する方法である:
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DEGME)をリファキシミンに約4:1〜約500:1のモル比で、室温〜100℃の温度で5分〜5時間の間添加してリファキシミン溶液を得る工程;
・この溶液を室温〜−20℃の温度に冷却する工程;
・得られた沈殿物を濾過する工程;
・得られた沈殿物を室温〜40℃の温度、周囲圧力(大気圧)〜真空圧力下で5分〜1日間の間乾燥する工程。
【0033】
固体沈殿物は、無極性溶媒であるC−C直鎖状又は環状又は芳香族アルキルで洗浄してもよい。
【0034】
リファキシミンτを製造する方法は、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DEGME)をリファキシミンとのモル比約10:1〜約100:1、好ましくは約50:1〜100:1で添加することを含む。
【0035】
リファキシミンτを製造する方法は、さらに、この固体を乾燥するための凍結乾燥工程を含んでもよく、凍結乾燥される溶液は、可溶性炭水化物、好ましくはトレハロース(trealose)を含んでいてもよい。
【0036】
本発明の他の態様は、有効量のリファキシミンτと1又は複数の薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物である。
【0037】
20〜1200mgの量でリファキシミンτを含む医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、クリーム剤又は懸濁剤用顆粒剤の形態であってもよい。本発明の医薬組成物は、放出制御性を示してもよい。
【0038】
リファキシミンτを含む医薬組成物は、例えば、エシェリキア コリ(大腸菌(Escherichia coli))、クロスリトジウム ディフィシル(Clostridium difficile)によって生じる腸感染症、旅行者下痢症、感染性下痢症及び他の腸障害、例えば、クローン病、過敏性腸症候群(IBS)、腸炎、全腸炎、憩室炎、小腸における細菌の過剰増殖の症候群(SIBO)、大腸炎、膵不全、慢性膵炎及び/又は肝性脳症、機能性胃腸障害、下痢症を伴う機能性消化不良及び他の感染症(例えば、膣感染症)の治療又は予防のための薬剤として有用である。リファキシミンτはまた、結腸の外科的処置の前及び後の抗菌又は予防薬として、並びに赤痢、不全症、消化性潰瘍疾患及び細菌性腸内毒素症のために有用である。
【0039】
リファキシミンτは、リファキシミンの複雑な混合物について、X線分析での解析基準(解析基準物質(analytical standard))として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
(図面の簡単な説明)
添付の図面は、本明細書に組み入れられて本明細書の一部を構成するものであり、本開示の1又は複数の実施形態を例示し、そして実施例の記載とともに本開示の原理及び実施を説明する役割を果たす。
図1図1は、リファキシミンτの単結晶格子定数によって得られた粉末X線回折スペクトル(XRPD)を示す。
図2図2は、粉末リファキシミンτのX線回折スペクトル(XRPD)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
(詳細な説明)
本開示には、リファキシミン結晶形並びに関連する組成物、方法及び系(システム)が記載されている。
【0042】
第1の態様によると、本発明は、本明細書においてリファキシミンτと記載される新規リファキシミン結晶形(又は形態)に関し、この結晶形は、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DEGME)との溶媒和物形であることを特徴とする。
【0043】
リファキシミンτは、関連する結晶系及び関連する単位格子定数によって特徴付けられ、このリファキシミンτにおいて、結晶系は正方晶であり、空間群はP42であり、単位格子定数はa=b=16.51(1)Å;c=36.80(1)Å;α=β=γ=90°;V=10027(1)Åである。
【0044】
リファキシミンτは、角度2θ±0.1の値が、5.9°;9.0°及び12.9°又は5.9°;12.9°及び18.8°又は5.9°;15.4°及び23.4°又は9.0°;15.4°及び23.4°又は12.9°;22.8°及び23.4°にピークを有するX線回折スペクトルを示す。
【0045】
いくつかの実施形態において、リファキシミンτは、角度2θ±0.1の値が、5.9°;9.0°;12.9°及び18.8°又は5.9°;12.9°;15.4°及び18.8°又は9.0°;12.9°;15.5°及び18.8°にピークを有するX線回折スペクトルを特徴としてもよい。
【0046】
いくつかの実施形態において、リファキシミンτは、角度2θ±0.1の値が、5.9°;9.0°;12.9°;15.4°;18.8°;22.8°及び23.4°にピークを有するX線回折スペクトルを特徴としてもよい。
【0047】
リファキシミンτは、IUPAC命名法によって2−(2−エトキシエトキシ)エタノールとして特定された化合物と溶媒和している。この化合物は、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DEGME)としても知られ、Transcutol(登録商標)又はCarbitol(登録商標)などの商標と関連して特定できる。
【0048】
本明細書において用いられる用語「溶媒和物」は、化合物と溶媒とを含む結晶形を特定しており、溶媒和物において、溶媒は成分として結晶形中に組み入れられ、結晶形を形成する2つの成分のモル比は化学量論的であってもよく、化学量論的でなくてもよい。化学量論的な溶媒和物は分子化合物とみなされてもよく、溶媒は構造の一部であってもよく、結晶形又は溶媒和物の結晶格子の維持に寄与してもよい。
【0049】
リファキシミンτは、リファキシミン及びDEGMEの化学量論的な溶媒和物形として記載することができ、この形態(溶媒和物形)において、リファキシミン及びDEGMEは、化学量論的モル比で存在する。いくつかの実施形態において、リファキシミン:DEGMEの化学量論的モル比は、1:1である。
【0050】
リファキシミンτは安定であり、他の形態に変形しない。特に、いくつかの実施形態において、リファキシミンτは、長期間にわたり安定である。例えば、リファキシミンτは、その固体中に存在する水及び/若しくは他の残留溶媒を除去するために乾燥に供される場合、又はリファキシミンτが湿潤環境に置かれる場合であっても、その結晶構造を維持できる。従って、いくつかの実施形態において、リファキシミンτの物理化学的特性は、医薬組成物の調製のために有効成分τを保管する間維持することができる。
【0051】
いくつかの実施形態において、リファキシミンτは、水溶液中においてリファキシミンの他の結晶形よりも高い濃度に達し、いくつかの場合において、リファキシミンτの溶出値(dissolution values)は、リファキシミン無定形の溶出値に匹敵してもよい。さらに、リファキシミンτは、リファキシミンの水和物結晶形について報告された固有溶出値よりも高い固有溶出値を有してもよく、その値は、無定形リファキシミンの値に匹敵してもよい。リファキシミンτは、0.10mg/分/cmよりも高い固有溶出値を有してもよい。
【0052】
いくつかの実施形態において、リファキシミンτは、当該技術分野において公知の形態のリファキシミンと比較して、予期せぬ溶解特性を示す。例えば、pH6.8、1時間未満の時間では、リファキシミンτは、リファキシミン無定形又はリファキシミンαと比較して、より高い濃度を示す。例えば、約30分後、リファキシミンτは、90μg/mlよりも高い濃度を示す。当業者が理解するように、このような濃度は、無定形リファキシミンによって示される濃度よりも約5倍高く、例えば、リファキシミン多形α又はβによって示される濃度よりも約20倍高い。例えば、いくつかの実施形態において、リファキシミンτは、リファキシミン多形αで得られる濃度よりも約25倍高い濃度に達する。
【0053】
いくつかの実施形態において、リファキシミンτは、リファキシミンαとリファキシミン無定形との間の薬物動態学的値(pharmacokinetic values)を示す。
【0054】
いくつかの実施形態において、リファキシミンτは、0〜35ng/mlのCmax値、0〜35ng・h/mlのAUC0−8h値、及び20〜325ng・h/mlのAUC0−tlast値を示す。
【0055】
いくつかの実施形態において、リファキシミンτは、3〜7時間のtmax値で、リファキシミンα及び無定形リファキシミンと比較して、より長い時間でCmax値に達する。
【0056】
いくつかの実施形態において、リファキシミンτは、水溶液中において他の固体形態のリファキシミンよりも高い濃度に達するが、バイオアベイラビリティは比例的に増大しない。
【0057】
リファキシミンの公知の形態と比較すると、リファキシミンτの溶出速度(dissolution rate)の増大は、水溶液への溶解後の溶液中に存在するDEGMEの量によって影響されない。無定形のリファキシミンと比較して、結晶形τはより安定であり、様々なかつ制御されていない物理化学的特性を有する他のリファキシミン形態に変形しない。いくつかの実施形態において、リファキシミンτが約10%〜約90%の湿度レベルに約1時間〜約10日間の間供されたとき、その結晶学的パラメータ及びX線回折図(diffractogram)は変化せず、より低い可溶性の他のリファキシミン形態に変形されない。
【0058】
リファキシミンτは、in vivoでのバイオアベイラビリティが比例的に変化することなく、他のリファキシミン多形と比較して水溶液中のリファキシミン濃度を増大させる。リファキシミンτが様々な湿度の環境に曝露された場合に他の結晶形に変形しないことは、リファキシミンτの薬学的使用に影響を及ぼす。リファキシミンτは、様々な物理化学的特性を有する他の形態に変形しないので、溶解度、バイオアベイラビリティ、局所性及び全身性効果並びに非毒性の特徴のような、出発化合物の同じ特性を維持する安定な形態を与える。
【0059】
第2の態様によると、本発明は、再現可能な方法において90%よりも高いモル収率でリファキシミンτを得ることができる方法に関する。このリファキシミンτを得る方法は、DEGME:リファキシミンのモル比約4:1〜約500:1で、リファキシミン出発材料が完全に溶解するまで、室温〜100℃の温度で5分〜5時間の間DEGMEをリファキシミンに添加する工程を含む。
【0060】
いくつかの実施形態において、DEGMEを、DEGME:リファキシミンのモル比約50:1〜約100:1でリファキシミンに添加してもよい。
【0061】
いくつかの実施形態において、固体リファキシミンへのDEGMEの添加は、DEGME:リファキシミンのモル比約4:1〜約500:1で行ってもよく、特に、DEGME:リファキシミンのモル比は、約10:1〜約100:1の範囲であってもよい。
【0062】
いくつかの実施形態において、添加工程はリファキシミンをDEGME中に溶解することによって行われてもよく、この方法は、リファキシミンをDEGME中に溶解して溶液を得る工程、及びこの溶液を室温〜−20℃の温度に冷却して沈殿した固体を溶液から濾過し、そしてこの固体を乾燥する工程を含んでもよい。
【0063】
いくつかの実施形態において、リファキシミンに対してDEGMEを添加することにより、DEGME中にリファキシミンが懸濁した懸濁液が生じ、リファキシミンが完全に溶解するまで、室温〜100℃の温度で5分〜5時間の間攪拌してもよい。この溶液は、室温で、又は室温〜60℃の温度で維持してもよい。
【0064】
いくつかの実施形態において、n−ペンタン、n−ヘキサン又はn−ヘプタンなどの無極性溶媒を、リファキシミン−DEGME溶液に添加してもよい。リファキシミンτは、1時間〜20時間のうちに、色の濃い(intensely colored)固体として沈殿してもよい。次いで、この固体を濾過して乾燥してもよい。それらの実施形態において、この固体を、n−ペンタン、n−ヘキサン又はn−ヘプタンなどの無極性有機溶媒で洗浄してもよい。
【0065】
いくつかの実施形態において、過剰のDEGME及び/又は他の溶媒(単数又は複数)を、濾過、不活性な吸収材料への吸収、蒸発、真空蒸発又はこれらの方法の組み合わせによって除去してもよい。乾燥工程は、例えば、室温〜70℃の温度で、かつ周囲圧力〜約0.001Torrの減圧下で行ってもよい。乾燥時間は、必要に応じて脱水剤の存在下で、約10分〜約1日の範囲であってもよい。いくつかの実施形態において、乾燥は真空下で行われてもよく、それらの実施形態のいくつかにおいて、コンデンサを、室温〜40℃の温度で真空システムとともに用いてもよい。
【0066】
いくつかの実施形態において、リファキシミン結晶形を得る方法は、以下の工程を含む:
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DEGME):リファキシミンのモル比約4:1〜約500:1で、室温〜100℃の温度で5分〜5時間の間リファキシミンをDEGME中に溶解させてリファキシミン溶液を得る工程;
・この溶液を室温〜−20℃の温度で1時間〜20時間にわたって冷却する工程;
・この溶液を濾過してリファキシミン沈殿物を得る工程;
・この沈殿物を、必要に応じて脱水剤の存在下で、室温〜40℃の温度で周囲圧力〜0.001Torrの圧力下、10分〜1日間の間乾燥する工程。
【0067】
固体沈殿物を、無極性有機溶媒、例えば、C−C直鎖状又は環状又は芳香族アルキルで洗浄してもよい。
【0068】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載の方法は、90%よりも高いプロセス収率で結晶形のリファキシミン溶媒和物を提供できる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のリファキシミンτを得る方法は、再現可能な方法において30%〜99%のモル収率でこの結晶形を得ることができる。
【0069】
本明細書に記載の方法で得られたリファキシミンτは、約95%よりも高い純度を有していてもよく、約40%〜約90%の実験収率で得てもよい。
【0070】
本明細書に記載の方法は、角度2θ±0.1の値が、5.9°;9.0°及び12.9°又は5.9°;12.9°及び18.8°又は5.9°;15.4°及び23.4°又は9.0°;15.4°及び23.4°又は12.9°;22.8°及び23.4°にピークを有するX線回折スペクトルを特徴とするリファキシミン結晶形を生成する(図1を参照のこと)。
【0071】
従って、いくつかの実施形態において、本開示は、リファキシミンτの製造方法においてリファキシミンを可溶化するためのDEGMEの使用及びリファキシミン関連組成物に関する。
【0072】
特に、いくつかの実施形態において、DEGMEを、リファキシミンに対して4〜100倍のモル比で用いてもよい。いくつかの実施形態において、DEGMEを、リファキシミンに対して4〜500倍、特に、リファキシミンに対して10〜100倍のモル比で用いて、出発物質リファキシミンを可溶化してもよい。本明細書に記載のDEGMEの使用において、結晶表面上の過剰のDEGMEは、無極性有機溶媒、好ましくはC−C直鎖状又は環状アルキルによる洗浄及び/又は乾燥によって除去される。DEGME残渣は、中毒作用がなく、製品(finished)医薬組成物に含まれてもよい。いくつかの実施形態において、新規結晶形の調製に使用されるリファキシミンは、多形、無定形若しくは原形(raw form)又はその混合物であってもよい。
【0073】
いくつかの実施形態において、DEGMEは、DEGMEとリファキシミン成分とが1:1のモル比であるリファキシミン結晶の化学量論的溶媒和物のリファキシミンτを得るために用いられてもよい。
【0074】
本発明の第3の態様は、治療的に有効な量のリファキシミンτを含む医薬組成物に関する。特に、いくつかの実施形態において、炎症及び感染症(例えば、腸、膣又は肺の感染症など)の治療及び/又は予防のために、治療的に有効な量のリファキシミンτ又はその誘導体と、1又は複数の薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物が記載されている。
【0075】
リファキシミンτに関連して本明細書において用いられる用語「誘導体」は、塩、鏡像異性体(エナンチオマー)、共結晶(co-crystal)及び当業者によって特定可能なさらなる誘導体を示す。
【0076】
用語「薬学的に許容可能な賦形剤」は、有効成分として組成物に含まれるリファキシミンのための溶媒、担体、結合剤又は希釈剤として通常作用する種々の媒体のいずれかを示す。本開示の意味において代表的な薬学的に許容可能な賦形剤としては、滑沢剤、流動促進剤(glidants)、希釈剤、緩衝剤、乳白剤、可塑剤及び着色剤、放出制御性付与剤(agents capable of providing a controlled release)、並びに生体接着性付与剤(agents capable of providing bio-adhesive properties)が挙げられる。
【0077】
いくつかの実施形態において、リファキシミンτを含む組成物は、他の結晶形のリファキシミンと比較して、水溶液中でリファキシミン濃度がより高くてもよく、in vivoで低量のリファキシミンを与えてもよい。
【0078】
いくつかの実施形態において、リファキシミンτは、低い全身性吸収で局所濃度を増大させる。
【0079】
いくつかの実施形態において、リファキシミンτが薬学的賦形剤とともに固体組成物中(例えば、錠剤中)にある場合、放出される可溶なリファキシミンの量は、水和物結晶リファキシミン又は無定形リファキシミンを含む組成物によって放出される量よりも高い割合である。
【0080】
いくつかの実施形態において、リファキシミンτを含む医薬組成物は、可溶なリファキシミンとして、より多量のリファキシミンを放出でき、可溶なリファキシミンの放出は急速であると考えられる。実施例15を参照すると、リファキシミンτを含む錠剤が別の結晶形のリファキシミンを含む錠剤によって放出される量と比較して、ほぼ5倍のリファキシミン量を放出することを実証する。いくつかの実施形態において、リファキシミンτを含む錠剤は、45分後に、無定形リファキシミンを含む錠剤によって放出されるリファキシミン量よりも40%高いリファキシミン量を放出する。
【0081】
リファキシミンの濃度の増大は、局所的な感染症又は炎症に有用である。
【0082】
公知の形態のリファキシミンと比較して中間的でかつ様々な溶出プロファイルを与えることを特徴とする形態のリファキシミンは、バランスがとれかつ調整された局所的及びin vivo吸収性を与えるのに有用である。
【0083】
いくつかの実施形態において、放出は、これらの組成物によって治療される病態に応じて変更されてもよい。
【0084】
いくつかの実施形態において、リファキシミンτはまた、α形、β形、γ形、δ形、ε形、β−1形、ζ形、η形、ι形、κ形、θ形、μ形、ο形、π形、λ形、ξ形などの他のリファキシミン結晶形、メシラート形、無定形若しくは固体分散体、又はその混合物と関連させることができる。これらの形態とリファキシミンτとを所定の比率で含む混合物を用いると、リファキシミンが様々なバイオアベイラビリティを有し、それにより様々な種類の感染症及び/又は様々な種類の腸障害において多様に使用できるようになる。
【0085】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物は、約20mg〜約3300mgの量でリファキシミンτを含んでもよい。
【0086】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、散剤、ペースト剤、顆粒剤(granulates)、錠剤、カプセル剤、膣坐剤、クリーム剤、軟膏剤、坐剤、懸濁剤又は液剤の形態であってもよい。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、ヒトに使用するために処方されてもよい。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、動物に使用するために処方されてもよい。
【0087】
本明細書に記載の医薬組成物は、リファキシミンτを基にして、医薬組成物を得るためにリファキシミンτと1又は複数の薬学的賦形剤とを混合することによって調製されてもよい。
【0088】
混合は、本開示を読んで当業者によって特定可能な方法及び技術に従って行われてもよい。特に、混合は、所定の剤形において、リファキシミンτと少なくとも1つの賦形剤とを含む医薬組成物を得るために行ってもよい。
【0089】
本開示の意味において用語「剤形」は、医薬品に関しており、この医薬品は、有効薬物成分と非薬物成分(賦形剤)との混合物を、他の再使用不可能な材料(原料(ingredient)とも包装(例えば、カプセル剤皮など)ともみなすことができない材料)とともに含む。投与の方法/経路に応じて、剤形はいくつかのタイプで提供される。これらのタイプとしては、液体、固体及び半固体の剤形が挙げられる。
【0090】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物は、固体又は液体中、懸濁液中、ゲル中にあってもよく、クリームとして、泡として又はスプレーとしてであってもよい。例えば、本明細書に記載の医薬組成物は、丸剤、錠剤、カプセル剤、軟カプセル剤、顆粒剤、浣腸剤、シロップ剤、ゲル剤、乳剤、坐剤の形態、及び治療される病態及び投与の経路をも考慮して当業者によって特定可能なさらなる形態であってもよい。例えば、いくつかの実施形態において、リファキシミンτは、直腸用又は膣用の製剤のために、灌注器(douches)、錠剤、膣坐剤などの形態で使用されてもよい。
【0091】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物は、即放性(immediate release)又は徐放性(slow release)又は時限(遅延)放出性(delayed release)などの放出制御性組成物であってもよく、腸内に有効成分を放出するための胃抵抗性組成物であってもよい。医薬組成物中のリファキシミンτの量は、投与方法に応じてかつ所望の治療的又は予防的効果を得るため必要な量に対応して変化する剤形を与えてもよい。例えば、リファキシミンτの量は、製品組成物の重量と比較して0.1%〜99%であってもよい。本開示のいくつかの態様によると、有効成分は、製品組成物の重量の1%〜80%、好ましくは10%〜70%の重量である。
【0092】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、錠剤の重量に対して20%〜70%の重量割合でリファキシミンτを含む錠剤の形態であってもよい。
【0093】
いくつかの実施形態において、1又は複数の賦形剤は、滑沢剤、流動促進剤、崩壊剤、希釈剤、緩衝剤、乳白剤(pacifiers)、可塑剤及び着色剤、放出制御性付与剤並びに生体接着性付与剤を含んでもよい。
【0094】
これらの組成物において、リファキシミンτは、固体形態(例えば、放出制御性を与えるために適切なコーティング剤(被覆物)でコーティングされてもよい錠剤など)とするための医薬分野で公知の賦形剤と直接的に混合してもよい。放出は、投与の目的に応じて、即放性、時限放出性又は胃抵抗性であってもよい。
【0095】
いくつかの実施形態において、リファキシミンτは、賦形剤と混合してそれ自体で使用できる顆粒剤を形成してもよく、顆粒外賦形剤(付加的な賦形剤、extragranular excipients)と混合して固体組成物(例えば、錠剤など)を形成してもよい。いくつかの実施形態において、顆粒賦形剤(granular excipients)は、放出制御性の付与に適した、医薬分野で公知の賦形剤の中から選択してもよい。リファキシミンτを含む顆粒剤は、製品組成物の20%〜90重量%を有していてもよい。
【0096】
いくつかの実施形態において、リファキシミンτは、顆粒剤の重量に対して10%〜80%の量で、5%〜20%の量の崩壊剤(単数又は複数)、5%〜70%の量の希釈剤(単数又は複数)、0.1〜5%の量の流動促進剤(glydant(s))(単数又は複数)とともに顆粒剤中に含有されていてもよい。
【0097】
いくつかの実施形態において、リファキシミンτの顆粒剤を含む錠剤は、適切なコーティング剤で連続的にコーティングして剤形を安定化させてもよく、例えば、腸溶性コーティング剤で、リファキシミンの放出制御を保証してもよい。
【0098】
いくつかの実施形態において、リファキシミンτを含む顆粒剤をコーティングして、放出制御性顆粒剤(例えば、4.5よりも高いpHで放出する)を形成してもよい。放出制御性顆粒剤は、固体形態で使用でき、例えば、錠剤又は経口懸濁剤用の小袋(サシェ(sachets))などの形態で使用できる。水性液剤用の小袋(サシェ)組成物において、これらの顆粒剤の量は、製品組成物の5重量%及び50重量%であってもよい。
【0099】
本開示による医薬組成物は、担体又は1若しくは複数の賦形剤とともに、あるいは他の有効成分と関連して、医薬分野で公知の方法に従って調製されてもよい。リファキシミン結晶の投薬量は、本開示の医薬組成物に導入され、疾患及び治療スケジュールに依存してもよい。
【0100】
いくつかの実施形態において、リファキシミンτの組成物は錠剤の形態であってもよく、この錠剤において、リファキシミンは、例えば、薬学的に許容可能な賦形剤と混合された粉末形態又は顆粒形態であってもよい。
【0101】
リファキシミンτが顆粒剤の形態である実施形態において、顆粒剤は、例えば、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤及び流動促進剤などの顆粒賦形剤を含んでもよい。リファキシミンτ顆粒剤は、滑沢剤、流動促進剤、希釈剤及び崩壊剤を含む顆粒外賦形剤と連続的に混合されてもよい。本明細書に記載の医薬組成物のいくつかの実施形態において、顆粒賦形剤は、デンプングリコール酸、ステアリン酸グリセリル、タルク、微結晶セルロース及び顆粒外賦形剤から選択される物質を含み、顆粒外賦形剤は、パルミトステアリン酸グリセリル、タルク、微結晶セルロース及びシリカから選択される。
【0102】
いくつかの実施形態において、錠剤は、錠剤の重量に対してリファキシミン顆粒剤を20%〜90%の量で含んでもよい。
【0103】
いくつかの実施形態において、顆粒外賦形剤は、錠剤の重量に対して、5%〜10%の量の希釈剤(単数又は複数)、1%〜5%の量の崩壊剤(単数又は複数)及び0.1%〜1%の量の流動促進剤(単数又は複数)を含んでもよい。
【0104】
いくつかの実施形態において、粉末又は顆粒形態のリファキシミンτと適切な賦形剤とを混合することによって得られる錠剤などの組成物は、次いで、適切なコーティング剤でコーティングしてリファキシミンの放出制御性を与えてもよい。
【0105】
いくつかの実施形態において、リファキシミンτを含む錠剤は、リファキシミンτと賦形剤とを直接的に混合し、圧縮又は圧縮成形(compacting)によって得られたコア(核)を適切にコーティングして所望の放出性を与えるように調製してもよい。
【0106】
いくつかの実施形態において、錠剤は、4.5よりも高いpH値でリファキシミンを放出するのに適した胃抵抗性コーティング剤でコーティングしてもよい。これらのコーティング剤は、市販の胃抵抗性ポリマーを含んでもよい。
【0107】
いくつかの実施形態において、リファキシミンτを含む組成物は、水性懸濁剤を生成する小袋(サシェ)を調製するための、溶媒和物リファキシミンと、甘味料、矯味剤、希釈剤、可塑剤及び/又は消泡剤などの賦形剤との顆粒剤の形態であってもよい。
【0108】
本明細書に記載の実施形態において、崩壊剤は、例えば、カルボキシメチルセルロース(カルメロースとも称される)ナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロース(クロスカルメロースとも称される)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースフタレートなどのセルロース誘導体、ポリビニルアセテートフタレート、ポビドン、コポビドン又はデンプングリコール酸ナトリウムから選択してもよい。
【0109】
本明細書に記載の実施形態において、滑沢剤は、例えば、ステアリン酸マグネシウム又はカルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、硬化植物油、鉱物油、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリド、安息香酸ナトリウム又はその混合物から選択してもよい。
【0110】
本明細書に記載の実施形態において、希釈剤は、例えば、セルロース、微結晶セルロース、リン酸カルシウム、デンプン、カオリン、硫酸カルシウム無水物又は水和物、炭酸カルシウム、ラクトース、スクロース、マンニトール、デンプン、天然ガム、麦芽(モルト)又はゼラチンから選択してもよい。
【0111】
本明細書に記載の実施形態において、流動促進剤は、例えば、タルク、微結晶セルロース又は炭酸マグネシウムから選択してもよい。
【0112】
本明細書に記載の実施形態において、可塑剤は、例えば、アジペート(アジピン酸エステル又は塩)、アゼレート(アゼライン酸エステル又は塩)、ベンゾエート(安息香酸エステル又は塩)、シトレート(クエン酸エステル又は塩)、フタレート(フタル酸エステル又は塩)、セバケート(セバシン酸エステル又は塩)、ステアレート(ステアリン酸エステル又は塩)及びグリコール[アセチル化モノグリセリド、ブチルグリコール、酒石酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸エチル、エチルグリコール、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、クエン酸トリアセチン、フタル酸ジブチル、ポリエチレングリコール、ヒマシ油、多価アルコール、酢酸エステル、三酢酸グリセロール、フタル酸ジベンジル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ブチルオクチル、カプリレート(カプリル酸エステル又は塩)又はカプレート(カプリン酸エステル又は塩)など]から選択してもよい。組成物に使用される可塑剤の量は、例えば、約5%〜約50%で変動してもよい。
【0113】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は保護層を含んでもよい。保護層は、腸溶層上に用いてもよく、腸溶層を被覆して水の浸透を低減させるか又はリファキシミンを放出する時間範囲を増大させることができる半透性ポリマーを含む他の層上に用いてもよい。ポリマーを水又は有機溶媒中に溶解する流動床などの装置を、これらのポリマーでコーティングするために使用してもよい。
【0114】
本明細書に記載の実施形態において、組成物はまた、消泡剤、緩衝剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、パイロジェン(発熱物質)フリーの水、等張生理食塩水、エチルアルコール、リン酸緩衝液及び薬学的使用に適合した非毒性物質などを含んでもよい。
【0115】
本明細書に記載の実施形態において、タルク、コロイダルシリカ、ポリビニルアルコール、モノステアリン酸グリセロール、三ケイ酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム及びその混合物などの他の物質を溶液に添加して、そのプロセス可能性を増大させてもよい。
【0116】
本明細書に記載の実施形態において、所望の放出特性を有する組成物を得るために使用されるポリマーの量は、所望の目的を達成するために調整してもよい。
【0117】
本明細書に記載の実施形態において、錠剤又はサシェに入れられた顆粒剤の組成物は、スクロース、マンニトール、ソルビトール、サッカリン、アセスルファム若しくはネオヘスペリジン又はその混合物などの甘味料を含んでもよい。本明細書に記載の組成物の実施形態において、着色剤及び矯味剤は組成物中に含有されていてもよい。
【0118】
本明細書に記載の組成物の実施形態において、アスコルビン酸、システイン、重亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム又は亜硫酸ナトリウムなどの防腐剤及び酸化防止剤並びにクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸又はリン酸などのキレート剤を含んでいてもよい。
【0119】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物の他の成分は、デンプン、キトサン、硫酸コンドロイチン、デキストラン、グアーガム、キシログルカン、キサンタン、イヌリン、ペクチンなどの多糖、アジペート(アジピン酸エステル又は塩)、アゼレート(アゼライン酸エステル又は塩)、ベンゾエート(安息香酸エステル又は塩)、シトレート(クエン酸エステル又は塩)、フタレート(フタル酸エステル又は塩)、ステアレート(ステアリン酸エステル又は塩)及びグリコール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、エチルセルロース、脂肪酸及びそのエステル、ワックス並びにゼインなどの安定剤を含んでいてもよい。
【0120】
本明細書に記載の実施形態において、必要に応じて、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースなどの親水性ポリマーを添加してもよい。
【0121】
本明細書に記載の実施形態において、組成物に粘膜接着性を付与する物質を、必要に応じて添加してもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の錠剤及び顆粒剤は、例えば、微結晶セルロース、ヒドロキシメチル若しくはヒドロキシプロピルメチルセルロース、乳白剤(二酸化チタンなど)、可塑剤(プロピレングリコールなど)並びに必要に応じて着色剤、矯味剤及び/又は緩衝剤を含むフィルム形成性(filmogen)コーティング剤でコーティングしてもよい。
【0122】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の錠剤及び顆粒剤は、例えば、速放性(quick release)又は遅放性(late release)又は腸放出性などの放出制御性を付与するために適したコーティング剤でコーティングしてもよい。
【0123】
いくつかの実施形態において、組成物は、リファキシミンτ顆粒剤又は錠剤が4.5よりも高いpH値(例えば、約4.9〜7.7のpH値)でリファキシミンを放出するのに適した物質でコーティングされている胃抵抗性物質を含んでもよい。代表的な物質は、アクリルポリマー、メタクリル酸とアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとのコポリマー[例えば、メタクリル酸の(1:1)コポリマー及びメタクリル酸とメタクリル酸メチルとの(1:2)コポリマー、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート及びセルロースアセテートフタレート]、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルアセテートフタレートを含む。これらの製品は、商標EUDRAGIT(オイドラギット)(登録商標)、EUDRAGIT(登録商標)RL、EUDRAGIT(登録商標)40、AQUATERIC(アクアテリック)(登録商標)、AQUACOAT(アクアコート)(登録商標)の名で市販されている。
【0124】
本明細書に記載の医薬組成物のいくつかの実施形態において、腸溶性又は胃抵抗性ポリマーは高いpH値で可溶であるので、特定の結腸放出のために使用できる。それらの実施形態のいくつかにおいて、腸溶性又は胃抵抗性ポリマーは、記載されるような胃抵抗性処方物のために用いてもよいが、記載される処方物に限定されない。使用される胃抵抗性ポリマーは、pHに敏感でない他のコーティング製品(アクリル酸エステル、メタクリル酸と少量のメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルとのエステル、アミロース、キトサン、硫酸コンドロイチン、デキストラン、グアーガム、イヌリン及びペクチンなどの多糖を含む製品など)を添加することによって改変されてもよい。
【0125】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物中の胃抵抗性ポリマーは、製品組成物の約5重量%〜約75重量%の濃度であってもよい。本開示の特定の態様によると、濃度は、約20%〜約60%の範囲にあってもよい。
【0126】
いくつかの実施形態において、胃抵抗性細粒剤(microgranules)は、生体接着性を有していてもよい。生体接着性とは、胃抵抗性細粒剤が粘膜に接着(付着)できることを意味する。本明細書に記載の細粒剤に含まれてもよい代表的なポリマー及びオリゴマー又はその混合物は、ペクチン、ゼイン、カゼイン、ゼラチン、アルブミン、コラーゲン、キトサン、オリゴ糖及び多糖(セルロース、デキストラン、タマリンド種子由来の多糖、キサンタンガム、アラビアガム、ヒアルロン酸、アルギン酸及び/又はアルギン酸ナトリウムなど)である。
【0127】
生体接着性ポリマーが合成ポリマーである実施形態において、ポリマーは、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリル酸とメタクリル酸エステルとのポリマー、メタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー、ポリラクチド、ポリバルビツール酸(poly acids barbiturates)、ポリ無水物、ポリオルソエステル及びその混合物から選択してもよい。
【0128】
本明細書に記載の組成物中に含まれてもよい他のポリマーとしては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、カルボキシメチルセルロース、セルローストリアセテート、硫酸セルロースナトリウム塩、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸イソプロピル、ポリアクリル酸イソブチル、ポリアクリル酸オクタデシル、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンテレフタレート、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルフェノール及び/又はその混合物が挙げられる。
【0129】
本明細書に記載の組成物において生体接着性に有用なポリマーの別の群としては、少なくとも1つの疎水性連結基を含む分岐を有するポリマーが挙げられ、疎水性基は、一般に非極性基である。これらの疎水性基の例は、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基を含む。疎水性基は、ポリマーの生体接着性を増大させるために選択してもよい。他のポリマーは、カルボン酸、スルホン酸及びホスホン酸、中性及び正電荷を有するアミン、アミド並びにイミンなどの少なくとも親水性基を有する疎水性分岐を特徴とし、この親水性基は、ポリマーの生体接着性を増大させるようなものである。
【0130】
いくつかの実施形態において、錠剤の組成物は、当該分野で公知の方法で、例えば、リファキシミン顆粒剤を用いて調製してもよい。錠剤は、多層錠においてリファキシミンコア又はリファキシミン層を含んでもよく、多層錠における他の層は、併用投与のための他の有用な有効成分、又はリファキシミン放出を制御するのに適した物質を含んでもよい。
【0131】
いくつかの実施形態において、溶媒和物形のリファキシミンを含む組成物は、経口投与に有用であってもよく、有効量の新規リファキシミン形態を含む錠剤、丸剤、水溶液若しくは水性アルコール溶液懸濁剤用顆粒剤又はエリキシル剤の形態であってもよい。
【0132】
いくつかの実施形態において、本開示のリファキシミン形態を含む組成物は、当該分野で公知の任意の方法によって調製される局所使用、直腸使用又は坐剤のためのクリームの形態であってもよい。それらの実施形態において、リファキシミンτの量は、治療効果を生じる担体と組み合わせてもよい。
【0133】
いくつかの実施形態において、製剤は、例えば、白色ワセリン、白蝋、ラノリン及びその誘導体、ステアリルアルコール、プロピレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸エステル、ステアレート(ステアリン酸エステル又は塩)、セルロース、コロイダルアルミニウム、ケイ酸マグネシウム並びにアルギン酸ナトリウムなどの当該分野で公知の賦形剤を含んでもよいクリームの形態である。
【0134】
本発明の他の態様としては、医療用途のためのリファキシミンτ含有医薬組成物が挙げられる。リファキシミンτの医薬組成物は、腸感染症(例えば、エシェリキア コリ(大腸菌(Escherichia coli))、クロストリジウム ディフィシル(Clostridium difficile))並びに旅行者下痢症、感染性下痢症及び他の腸障害(例えば、クローン病、過敏性腸症候群(IBS)、腸炎、全腸炎、憩室炎、小腸における細菌の過剰増殖の症候群(SIBO)、大腸炎、膵不全、慢性膵炎、肝性脳症、機能性胃腸障害、下痢症を伴う機能性消化不良)及び他の感染症(例えば、膣感染症)の治療又は予防に有用である。リファキシミンτの医薬組成物は、結腸の外科的処置の前及び後の抗菌若しくは予防治療として、又は赤痢、不全症及び/若しくは消化性潰瘍疾患のために有用である。
【0135】
リファキシミンτを含む医薬組成物は、リファキシミンの局所濃度を増大できるので、より少量のリファキシミンで効果があるか、又は重篤な感染症又は炎症に有効である。
【0136】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物は、リファキシミンτを1日20〜3300mgの投薬量で与えるように投与してもよい。
【0137】
いくつかの実施形態において、投与された有効成分リファキシミンτの投薬量は、約20〜2400mg/日、好ましくは50〜1200mg/日の範囲であってもよい。それらの実施形態のいくつかにおいて、組成物は、例えば、1日1回、2回又は3回投与してもよい。
【0138】
いくつかの実施形態において、リファキシミンτは、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回又は必要に応じてそれ以上の頻度で、20mg〜3300mg/日の用量で投与してもよい。代表的な用量は、100、200、400、550、600、800mg/日〜1100mg/日までである。いくつかの実施形態において、100、200、400、550、600、800mg/日又はそれ以上のリファキシミンτは、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回又は必要に応じてそれ以上の頻度で投与してもよい。
【0139】
リファキシミンτを含む医薬組成物は、リファキシミンの局所濃度を増大でき、より少量のリファキシミンでも効果があるか、又は重篤な感染症又は炎症にも有効である。
【0140】
リファキシミンτ及び関連する組成物は、個体の病態の治療及び/又は予防のために使用できる。
【0141】
本明細書において用いられる用語「治療」(又は「処置」)は、医学的に又は外科的に、病態に施す医療的ケアの一部であるか又は病態に対処する、任意の活動を表す。用語「治療する(こと)」(又は「処置する(こと)」)及び「治療」(又は「処置」)とは、症状の重篤度及び/又は頻度の低減、症状及び/又は根本的な原因の除去、症状及び/又はそれらの根本的な原因の発生の予防、並びに損傷の改善又は矯正をいう。従って、例えば、患者を「治療する」には、罹患しやすい個体における症状又は有害な生理学的事象を予防すること、並びに障害若しくは疾患を阻害するか又は後退させることによって臨床的に症候性の個体の状態をモジュレーション(modulation)及び/又は回復(amelioration)することが含まれる。
【0142】
病態に関連して、本明細書において用いられる用語「予防」は、個体における病態に由来する死亡率又は罹病率の負担(burden)を低減する任意の活動を表す。予防は、一次、二次及び三次予防レベルで行われ、(a)一次予防は、疾患の発生を回避し、(b)二次予防活動は、初期の疾患の治療を目的とし、それによって疾患の進行及び症状の出現を予防するための介入の機会を増やし、そして(c)三次予防は、機能の回復及び疾患に関連する合併症の低減によって、すでに定着した疾患の悪影響を低減する。
【0143】
用語「病態」は、個体にとっての完全な身体的、精神的及び社会的健康(幸福)状態によってもたらされる標準的な身体状態に一致しない個体の身体(全体又はその1若しくは複数の部分、例えば、身体系など)の身体的状態を表す。本明細書に記載される病態としては、障害及び疾患が挙げられる。用語「障害」は、身体又はその任意の一部が機能性異常を伴う生存個体の病態を表し、用語「疾患」は、身体又はその任意の一部が正常に機能することを害し、かつ典型的には個体の徴候又は症状を識別することによって明らかにされる、生存個体の病態を表す。
【0144】
治療(又は処置)の文脈で、本明細書において用いられる用語「個体」又は「被験体」又は「患者」としては、個々の動物、特に、高等動物(特に哺乳類、特にヒトなどの脊椎動物)が挙げられる。一般に、本開示による「個体」は、胃腸(本明細書においてGIとも称する)系を有し、かつ胃及び腸の潰瘍形成を受けやすく、呼吸器系及び生殖器系をも有する動物を表す。
【0145】
特に、本明細書に記載の実施形態において、リファキシミンτ及び関連する組成物は、炎症及び感染症(例えば、全身、腸、膣、皮膚及び肺などの炎症及び感染症)における種々の病態の治療に有用である。特に、当該分野で公知の他の形態のリファキシミンと比較して、リファキシミンτは溶解性がより高いので、より高い局所濃度で効果がある炎症及び感染症(例えば、腸、膣及び肺などの炎症及び感染症)における種々の病態の治療に有用であってもよい。リファキシミンτは、低いin vivo吸収性での高い局所的効果を特徴とし、このことは、低い毒性及び他の有効成分との相互作用に非常に重要である。
【0146】
他の医薬品と同様に、本開示の1又は複数の医薬組成物の毎日の総使用量は、患者の治療をする医師によって正しい医学判断の範囲内で決定されるものである。各患者についての特定の治療的に有効な又は予防的に有効な用量レベルは様々な要因に依存するものであり、その要因としては、治療される障害及び障害の重篤度;使用される特定の化合物の活性;使用される特定の組成物;患者の年齢、体重、全身の健康、性別及び食生活;使用される特定の化合物の投与時間、投与経路及び排泄率;治療の期間;使用される特定の化合物と併用又は同時使用される薬物;並びに医療分野の当業者に公知の他の要因が挙げられる。
【0147】
他の実施形態において、本発明は、X線分析における内部標準としてリファキシミンτの単結晶を使用することに関する。
【0148】
本明細書において用いられる用語「混合物」は、各物質がそれ自身の化学的同一性を保持するように組み合わせられた2又はそれ以上の物質を表す。特に、混合物は、混合されるが化学的に結合されない2又はそれ以上の異なる物質で構成される物質系であってもよく、溶液、懸濁液及びコロイドの形態であってもよい。混合物は、均質又は不均質のいずれであってもよい。均質な混合物は、組成物が均一でありかつ溶液のあらゆる部分が同一の特性を有するタイプの混合物である。不均質な混合物は、成分が2又はそれ以上の相に存在するとみられるタイプの混合物である。
【0149】
いくつかの実施形態において、リファキシミンτの単結晶を用いて、リファキシミンの他の結晶形及び無定形をさらに含んでいる可能性のあるリファキシミン混合物中のリファキシミンτを検出できる。
【0150】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、混合物の粉末X線回折パターンを得る工程、及び複雑な混合物の粉末X線回折パターンとリファキシミンτ単結晶の粉末X線回折パターンとを比較する工程を含んでもよい。
【0151】
いくつかの実施形態において、X線回折パターンを得る工程は、X線回折計に混合物を入れて、混合物に通常単波長(単色X線)の激しいX線ビームを与え、反射の規則的なパターンを生じさせ、そのようにして混合物のX線回折パターンを与えることによって行われてもよい。
【0152】
いくつかの実施形態において、混合物のX線回折パターンをリファキシミンτについてのX線回折パターンと比較して、リファキシミンの他の形態を含む他の化合物に対してリファキシミンτの特徴となる共通のピークを同定してもよい。特に、いくつかの実施形態において、混合物中のリファキシミンτの同定は、混合物の粉末X線回折パターンにおいてリファキシミンτ単結晶の粉末X線回折パターン由来のピークを検出することによって行われる。
【0153】
いくつかの実施形態において、本開示は、リファキシミンの他の結晶形及び無定形の混合物においてτ形の存在を決定するための標準品としてリファキシミンτ単結晶を使用することに関する。いくつかの実施形態において、標準品は、単結晶リファキシミンτのX線回折パターンによって与えてもよい。いくつかの実施形態において、単結晶リファキシミンτのX線回折パターンは、構造細部に基づいて算出してもよい。いくつかの実施形態において、単結晶リファキシミンτのX線回折パターンは、実験的に与えてもよい。
【0154】
いくつかの実施形態において、リファキシミンの存在は、混合物の粉末X線回折パターンと標準とを比較して混合物中のリファキシミンτを検出することによって同定してもよい。
【0155】
いくつかの実施形態において、構造における構造細部、結晶学的系、空間群、格子定数及び原子の分率座標を与えると、粉末X線回折パターンを算出して、このパターンと任意の実験から得たパターンとを比較することが可能である。2つのパターンの関連するピークの一致により、混合物中又は無定形固体の存在下のリファキシミンτが同定できる。算出されたパターンを用いて、実験から得たパターンとの比較によって固体混合物中のリファキシミンτの存在を検出でき、ピーク値を標準化することもできる。
【0156】
本開示のさらなる効果及び特徴は、実施例を例示する目的のみで開示された以下の詳細な内容から、より明らかとなるであろう。実施例は、単に例示の目的で示されるものであって、決して本開示の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0157】
(実施例)
本明細書に記載の組成物、方法及びシステムは、以下の実施例においてさらに説明されるが、これらの実施例は、例示の目的として提供されるものであって、限定を意図するものではない。
【0158】
特に、以下の実施例は、本開示の代表的な組成物並びに関連する方法及びシステムを説明する。当業者が認識するであろうことだが、本開示の実施形態に従って当業者は、本項に詳細に記載される特徴を、さらなる組成物、方法及びシステムに適合させるために、適用及び必要な変更をすることができる。
【0159】
(実施例1)
(リファキシミンτの調製方法(I))
ジエチレングリコールモノエチルエーテル(2−(2−エトキシエトキシ)エタノールとも称される。以下、DEGME)2300mgに相当する量を、20mgのリファキシミン多形αに添加し、この懸濁液を完全に溶解するまで室温で攪拌した。この溶液を室温で蒸発させ、4日後、着色した結晶が形成され、この結晶を単離して分析した。
【0160】
(実施例2)
(リファキシミンτの結晶構造の決定)
実施例1に従って得られたリファキシミンτの構造決定を、MoKα(λ=0,71073Å)放射線を用いるCCD領域検出器とグラファイト単色光分光器とを備えたOxford Diffraction Xcaliburによって行い、データを室温で収集した。構造を、プログラムSIR2008(M. C. Burla, R. Caliandro, M. Camalli, B. Carrozzini, G. L. Cascarano, L. De Caro, C. Giacovazzo, G. Polidori, D. Siliqi, R. Spagna (2007);Il Milione: a suite of computer programs for crystal structure solution of proteins J. Appl. Cryst. (2007), 40, 609-613)によって直接法により解明し、パッケージWingX(L. J. Farrugia, J. Appl. Cryst. (2012), 45, 849-854)によって実行されたプログラムSHELX97(Sheldrick, G.M. SHELX97, Program for Crystal Structure Determination; University of Gottingen: Gottingen, Germany, 1997)によって精緻化した。表1に、本開示の結晶の構造細部及び測定の詳細を示す。
【0161】
【表1】
【0162】
図1に、単結晶データに基づいて得られたリファキシミンτのX線回折図を示す。
【0163】
(実施例3)
(リファキシミンτの調製方法(II))
リファキシミンに対してモル比64:1の量のDEGMEを固体リファキシミンに添加した。この懸濁液を、透明な溶液が得られるまで60℃で攪拌し続けた。この溶液を室温まで放冷して一晩攪拌し続けた。固体沈殿物を濾過して、吸収紙を用いて過剰な溶媒を除去し乾燥した。結晶粉末を100μmの篩にかけて結晶生成物を得た。この生成物をHPLCにより一度分析して69.9%のリファキシミン含有量(滴定量)が得られ、GCにより一度分析して28.53%のDEGME含有量が得られ、カール・フィッシャー(Karl Fisher)法により一度分析して1.58%の含水量が測定された。
【0164】
生成物の粉末X線回折(XRPD)パターンは、図2に示されるのと同じ2θ値の様々なピークにより特徴付けられ、実施例1の単結晶データに基づいて算出された図1のX線回折パターンに対応している。
【0165】
この調製の収率は、47.3%であった。
【0166】
(実施例4)
(リファキシミンτの調製方法(III))
実施例3と同様に実施した後、生成物を、約8×10−3atmの真空下でさらに真空乾燥し、この真空乾燥では、前記生成物を30℃で約30分ごとにプレート上に置き、この系を温度−82℃のコンデンサに接続した。
【0167】
結晶粉末を100μmの篩にかけて結晶生成物を得た。この生成物をHPLCにより一度分析して87.4%のリファキシミン含有量が得られ、GCにより一度分析して12.1%のDEGME含有量が得られ、カール・フィッシャー法により一度分析して0.48%の含水量が測定された。生成物の粉末X線回折(XRPD)パターンは、実施例1の単結晶データに基づいて算出された図1のX線回折パターンに対応している。
【0168】
(実施例5)
(リファキシミンτの調製方法(IV))
リファキシミンに対してモル比10:1の量のDEGMEを固体リファキシミンに添加した。この懸濁液を、透明な溶液が得られるまで60℃で約2時間攪拌した。この溶液を室温まで放冷して沈殿物を得た。この沈殿物を単離し、真空下65℃で一晩乾燥して結晶生成物を得た。生成物をHPLCにより一度分析して85.4%のリファキシミン含有量が得られ、GCにより一度分析して14.9%のDEGME含有量が得られ、カール・フィッシャー法により一度分析して0.3%の含水量が測定された。この粉末X線回折(XRPD)パターンは、実施例1の単結晶データに基づいて算出された図1のX線回折パターンに対応している。
【0169】
この調製の収率は、93.7%であった。
【0170】
(実施例6)
(リファキシミンτの調製方法(V))
リファキシミンに対してモル比10:1の量のDEGEEを固体リファキシミンに添加した。この懸濁液を、透明な溶液が得られるまで60℃で約2時間攪拌し続けた。この溶液を室温まで放冷して沈殿物を得た。DEGEEと同体積の量のヘプタンをこの溶液に添加した。
【0171】
次いで、生成物を単離し、真空下65℃で一晩乾燥して結晶生成物を得た。生成物をHPLCにより一度分析して83.2%のリファキシミン含有量が得られ、GCにより一度分析して15.9%のDEGEE含有量が得られ、カール・フィッシャー法により一度分析して0.8%の含水量が得られた。生成物の粉末X線回折(XRPD)パターンは、実施例1の単結晶データに基づいて算出された図1のX線回折パターンに対応している。
【0172】
この調製の収率は、74.7%であった。
【0173】
(実施例7)
(異なる湿度環境におけるリファキシミンτの安定性)
(a)実施例1に従って得られたリファキシミンτを、室温で、塩化リチウム(LiCl)飽和溶液による11%の湿度レベルに10日間の間曝露した。
【0174】
(b)別のリファキシミンτ結晶を、塩化カリウム(KCl)過飽和水溶液による84%の湿度レベルに10日間曝露した。
【0175】
異なる湿度に曝露されたリファキシミンτ結晶の粉末X線回折(XRPD)パターンは、実施例1の単結晶データに基づいて算出された図1のX線回折パターンに対応している。
【0176】
(実施例8)
(固有溶出性の決定)
実施例5に記載の方法に従って得られた粉末の固有溶出性の決定を、欧州薬局方第7.0版(European Pharmacopeia Ed. 7.0)、2010、2.9.3、第256頁(この文献の開示は、参照することによりその全体が本明細書に組み入れられる)に準じて行い、新規結晶のリファキシミンτと、無定形リファキシミンと、リファキシミン多形βとを比較した。
【0177】
表2に、得られた固有溶出値を示す。
【0178】
【表2】
【0179】
同じ実験条件下で、無定形リファキシミンの錠剤を含む溶液にDEGMEをそれぞれ0.1ml及び1.25ml添加しても、リファキシミン溶出の測定値は変化しない。
【0180】
(実施例9)
(中性pHにおけるリファキシミンτの溶出速度の決定)
500mgのリファキシミンτ、500mgのリファキシミン多形α及び500mgの無定形リファキシミンを、それぞれ、pH6.8、30±0.5℃の温度で750mlのリン酸緩衝液中に懸濁した。これらの溶液を、攪拌速度250rpmで120分間攪拌した。等容量のサンプルを所定の時間間隔で取り出し、濾過し、波長430nmで分光光度計によって分析した。サンプル中のリファキシミン濃度を、既知の濃度を有する溶液と比較して算出した。
【0181】
得られた値を表3に示す。
【0182】
【表3】
【0183】
(実施例10)
(リファキシミンτを含む錠剤形態の医薬組成物の調製(組成物A))
実施例5で得られた2340mgの結晶粉末リファキシミンτと、デンプングリコール酸、ジステアリン酸グリセロール、タルク及び微結晶セルロースとを混合した。この混合物をV−ミキサー中で30分間攪拌した後、圧縮成形して顆粒剤を得た。次いで、篩にかけた顆粒剤と、顆粒外物質であるパルミトステアリン酸グリセリル、タルク、微結晶セルロース、シリカとを混合し、均質な混合物を圧縮して固形を得た。次いで、この錠剤を、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、二酸化チタン、エデト酸ナトリウム及び酸化鉄を含むフィルムコーティング剤でコーティングした。
【0184】
錠剤の単位組成を表4に示す。
【0185】
【表4】
【0186】
(実施例11)
(リファキシミンτを含む錠剤形態の医薬組成物の調製(組成物B))
実施例5で得られた2340mgの結晶粉末リファキシミンτと、微結晶セルロース、アルファー化デンプン、タルク及びステアリン酸マグネシウムとを、ミキサー中、16rpmで20分間混合した。次いで、この混合物を打ち抜き機(punch)で圧縮して錠剤を得た。次いで、この錠剤をコーティングした。錠剤の単位組成を表5に示す。
【0187】
【表5】
【0188】
(実施例12)
(リファキシミンτを含む錠剤形態の医薬組成物の調製(組成物C))
実施例5に従って調製された2340mgのリファキシミンτと、微結晶セルロース、パルミトステアリン酸グリセリル、タルク及びデンプングリコール酸ナトリウムとをV−ミキサー中で混合した。均質な混合物を、3.15及び1.45mmメッシュで乾燥造粒し、造粒物と、微結晶セルロース、パルミトステアリン酸グリセリル、タルク及び無水コロイダルシリカによって形成された顆粒外賦形剤とを混合した。この混合物を16rpmで20分間攪拌し、次いで圧縮した。得られた錠剤をフィルムコーティング剤でコーティングした。水溶液中に懸濁したフィルムコーティング剤を、温度45℃で錠剤上に噴霧(sprayed)した。得られた錠剤の単位組成を表6に示す。
【0189】
【表6】
【0190】
(実施例13)
(放出制御性リファキシミンτを含む錠剤形態の医薬組成物の調製)
実施例5に従って得られた2340mgのリファキシミンτと、微結晶セルロース、パルミトステアリン酸グリセリル、タルク及びデンプングリコール酸ナトリウムとをV−ミキサー中で混合した。次いで、この混合物を、3.15及び1.45mmメッシュで乾燥造粒プロセスによって造粒した。次いで、この造粒物と、顆粒外賦形剤(微結晶セルロース、パルミトステアリン酸グリセリル、タルク及び無水コロイダルシリカ)とを混合した。この混合物を圧縮した後、得られたコアを、メタクリル酸とアクリル酸エチルとのコポリマー(Eudargit L30 D−55)、クエン酸トリエチル、ポリソルベート80及びモノステアリン酸グリセリルを水溶液中に懸濁させたコーティング剤でコーティングした。次いで、コーティング溶液を、45℃で予熱したリファキシミンコア上に噴霧(sprayed)した。リファキシミンτ錠剤の単位組成を表7に示す。
【0191】
【表7】
【0192】
(実施例14)
(放出制御性顆粒剤中にリファキシミンτを含むサシェ形態の医薬組成物の調製)
流動床装置に、実施例5に従って得られた468gのリファキシミンτを、2.5gのコロイダルシリカとともに導入した。同時に、ミキサーで攪拌しながら、1385gの脱塩水中に267.3gのメタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー(Kollicoat(コリコート)(登録商標)MAE100P)、40.1gのプロピレングリコール、71gのタルク及び18gの二酸化チタンを含む懸濁液を調製した。この懸濁液を流動装置に仕込み、供給通気量(incoming air flow)15m/hを温度65℃で適用することによってリファキシミン造粒物上に噴霧(nebulised)した。次いで、得られた胃抵抗性顆粒剤を、温度75℃で1時間乾燥した。
【0193】
次いで、コロイダルシリカ、アスパルテーム、ソルビトール及びチェリーフレーバーを、リファキシミンτの胃抵抗性顆粒剤に添加した。400mgのリファキシミンに相当するサシェの単位組成を表8に示す。
【0194】
【表8】
【0195】
(実施例15)
(リファキシミンτを含む錠剤の溶出の決定)
リファキシミン錠剤の溶出の決定を、欧州薬局方第8.0版(European Pharmacopeia ED. 8.0);2.9.3、第288頁、2014に準じて行った。200mgのリファキシミン多形αを含むNormix(登録商標)の錠剤を、実施例10に従って調製したリファキシミンτを含む錠剤及び無定形リファキシミンを含む錠剤と比較した。無定形リファキシミン錠剤は、リファキシミンτ代わりに無定形リファキシミンを用いたこと以外は実施例10の記載と同じ条件下で調製した。
【0196】
リファキシミンα、リファキシミンτ及び無定形リファキシミンを含む錠剤を、それぞれ、100rpm、37℃で攪拌しながら1リットルのリン酸緩衝液(pH7.4)に入れ、所定の時間間隔で溶液のサンプルを取り出した。リファキシミン濃度を、239nmでの分光学的分析によって決定し、リファキシミンの標準溶液と比較した。この試験を、他の一連の錠剤について繰り返した。
【0197】
これらの2つの試験において得られたリファキシミンの平均濃度を表9に示す。
【0198】
【表9】
【0199】
(実施例16)
(噴霧乾燥によって調製されたリファキシミンを用いるイヌへのPK試験)
リファキシミン無定形及びリファキシミン多形αと比較したリファキシミンτのバイオアベイラビリティ試験を、4匹の雄性ビーグル犬に、これらの多形又は無定形の1つを100mg/kgの用量で与えることによって行った。各動物に、リファキシミンτ、無定形リファキシミン及びリファキシミンαの1つの経口カプセルを投与し、各形態を同じ動物に投与する間に7日間の洗い流し(washout)期間を設けた。投薬は、サイズ13のゼラチンカプセルの後に10mlの飲料水を与えることにより行った。
【0200】
投薬後24時間まで6つの時点で採血し、リチウムヘパリン抗凝血剤を入れたチューブに採集した。
【0201】
血漿を、有効LC−MS/MS(液体クロマトグラフィ−質量分析/質量分析)法によってリファキシミンについて分析し、測定された最高血漿中濃度(Cmax)、(Cmax)に達する時間(tmax)及び血漿中濃度−時間曲線下面積(AUC)を算出した。
【0202】
リファキシミンは、100mg/kgで投薬されたすべてのイヌの血漿中で投薬後1時間〜5時間の間に観察され、1時間後、リファキシミン値はすべての動物において検出可能であった。表10に薬物動態学的パラメータを示す。
【0203】
【表10】
【0204】
max:観察された最高血漿中濃度;
max:投与からCmaxを得るまでの時間(中央値として表す);
AUC0−8h:0時間(最初の実験時点)から8時間までの濃度−時間曲線下面積;
AUC0−tlast:0時間(最初の実験時点)から最後の定量可能濃度までの濃度−時間曲線下面積。
【0205】
上記の実施例は、本開示のリファキシミンτ、組成物、システム及び方法の実施形態を作製及び使用する方法の完全な開示及び記載を当業者に与えるために提供されるものであって、本発明者らがそれらの開示とみなすものの範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に記載のすべての特許及び出版物は、本開示の属する分野における当業者の技術のレベルを示している。
【0206】
背景、概要、詳細な説明及び実施例で引用された各文献(特許、特許出願、雑誌、要約、実験マニュアル、書籍又は他の開示を含む)の全体の開示は、参照することによりその全体が本明細書に組み入れられる。本開示において引用されたすべての文献は、あたかも各文献が個々に参照されることによりその全体が組み入れられているのと同じ程度に、参照されることにより組み入れられる。しかし、引用された文献と本開示との間で矛盾が生じる場合は、本開示が優先される。
【0207】
本明細書において使用されている用語及び表現は、限定用語ではなく記述用語として用いられ、このような用語及び表現の使用には、表示及び記載された特徴又はその一部の任意の等価物を除外する意図はないが、特許請求の範囲の開示の範囲内で種々の修正が可能であることが認められる。それゆえ、理解されるべきことは、本開示は実施形態によって具体的に開示されているが、本明細書に開示された典型的な実施形態並びに概念の任意の特徴、修正及び変更が当業者によって講じられてもよいこと、並びにこのような修正及び変更が添付の特許請求の範囲に規定される本開示の範囲内にあると考えられることである。
【0208】
本明細書において使用される用語は、個々の実施形態を説明するためだけのものであって、限定することを意図するものではないことも理解されるべきである。文脈において特に明らかに規定されない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」及び「the」には複数の指示物も含まれる。文脈において特に明らかに規定されない限り、用語「複数」には、2又はそれ以上の指示物が含まれる。特に規定されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0209】
マーカッシュ群又は他の群分けが本明細書において使用される場合、その群のすべての個々の要素並びにその群のすべての組み合わせ及び可能なサブコンビネーションが独立して本開示に含まれることが意図される。特に記載されない限り、本明細書に記載又は例示の成分又は材料のあらゆる組み合わせを用いて本開示を実施してもよい。当業者は、具体的に例示された以外の方法、デバイス要素(device element)及び材料を、過度の実験を講じることなく、本開示の実施において用いてもよい。任意のこのような方法、デバイス要素及び材料の当該分野で公知の等価物はすべて、本開示に含まれることが意図される。本明細書において範囲(例えば、温度範囲、頻度範囲、時間範囲又は組成範囲)が与えられるときは常に、与えられた範囲に含まれるすべての中間範囲及びすべての部分的範囲並びにすべての個々の値が本開示に含まれることが意図される。本明細書に開示される範囲又は群の任意の1又は複数の個々の要素は、本開示の請求から除外されるかもしれない。本明細書に例示を挙げて適切に記載された本開示は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素(単数又は複数)又は限定(単数又は複数)が存在しない場合において実施されてよい。
【0210】
本開示の多くの実施形態が記載されている。本明細書に提供された具体的な実施形態は、本発明の有用な実施形態の例であり、本開示が、本明細書に記載のデバイス、デバイス成分、方法、工程の多数の変更を用いて実施できることは当業者に明らかであろう。当業者に明らかなように、本発明の方法に有用な方法及びデバイスは、多数の任意の組成物及びプロセス要素及び工程を含んでもよい。
【0211】
特に、本開示の精神及び範囲から逸脱しない種々の修正がなされ得ることは、理解されるであろう。従って、他の実施形態も、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
図1
図2