特許第6576966号(P6576966)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576966
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】III−Nテンプレート
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/38 20060101AFI20190909BHJP
   C23C 16/34 20060101ALI20190909BHJP
   H01L 21/205 20060101ALN20190909BHJP
【FI】
   C30B29/38 D
   C23C16/34
   !H01L21/205
【請求項の数】9
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2017-9080(P2017-9080)
(22)【出願日】2017年1月23日
(62)【分割の表示】特願2015-500921(P2015-500921)の分割
【原出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2017-124968(P2017-124968A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2017年1月23日
(31)【優先権主張番号】102012204553.8
(32)【優先日】2012年3月21日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102012204551.1
(32)【優先日】2012年3月21日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】61/614,161
(32)【優先日】2012年3月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/614,190
(32)【優先日】2012年3月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500562905
【氏名又は名称】フライベルガー・コンパウンド・マテリアルズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】FREIBERGER COMPOUND MATERIALS GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】リプスキー,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ショルツ,フェルディナンド
(72)【発明者】
【氏名】クライン,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ハベル,フランク
【審査官】 今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2003/063215(WO,A1)
【文献】 特開2010−132473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/38
C23C 16/34
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サファイアを含む基板と、少なくとも1つのIII−N結晶層とを含むテンプレートであって、
IIIがAl、GaおよびInの群から選択される元素周期表第3主族の少なくとも1つの元素を表し、
テンプレートのIII−N結晶層においてマスク材料が中間層として、前記基板に成長中のIII−N層上または任意に形成されるIII−N核生成層上に付与され、
前記マスク材料から前記基板までの距離は、最大で300nmであり、
前記マスク材料は、Si(式中、xおよびyはそれぞれ独立して化学量論的または非化学量論的SiN化合物を導く正数を示す)、TiN、Al(式中、xおよびyはそれぞれ独立して化学量論的または非化学量論的AlO化合物を導く正数を示す)、Si(式中、xおよびyはそれぞれ独立して化学量論的または非化学量論的SiO化合物を導く正数を示す)、WSiおよびWSiNからなる群から選択され、
テンプレートのIII−N結晶層は、歪みεXXの下記値(i)/(ii)のうち1つまたは両方によって定義される
(i)室温下、値εXXは<0の範囲にある、
(ii)成長温度下、値εXXは≦0の範囲にある、
ことを特徴とするテンプレート。
【請求項2】
前記テンプレートのIII−N結晶層において、
前記値εXXは、
(i)室温下、0>εxx≧−0.003の範囲内にある、
(ii)成長温度下、0>εxx>−0.0006の範囲内にある、
ことを特徴とする請求項1に記載のテンプレート。
【請求項3】
前記テンプレートのIII−N結晶層において、
前記値εXXは、
(i)室温下、−0.0015>εxx≧−0.0025の範囲内にある、
(ii)成長温度下、−0.0003>εxx>−0.0006の範囲内にある、
ことを特徴とする請求項2に記載のテンプレート。
【請求項4】
前記テンプレート用に、基板として厚さ(dsapphire)が430μm±20μmのサファイアと、III−N結晶層として厚さ(dGaN)が7μm±0.5μmのGaNとが使用または設定され、
III−N結晶において、前記テンプレートの曲率(K)が、
(i)成長温度では、0〜−150km−1の範囲内で特定される、および/または
(ii)室温では、−200〜−400km−1の範囲内で特定され、
異なる層厚(dsapphire/dGaN)を使用または設定するとき、曲率値は、ストーニーの方程式に基づく以下の式で各層厚に応じて特定される:
T(dGaN;dsapphire)
=KT(7μm;430μm)×(430μm/dsapphire×(dGaN/7μm)
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載のテンプレート。
【請求項5】
前記テンプレートのIII−N結晶において、前記テンプレートの曲率(K)が、
(i)成長温度では、−25〜−75km−1の範囲内で特定される、および/または
(ii)室温では、−300〜−400km−1の範囲内で特定される、
ことを特徴とする請求項4に記載のテンプレート。
【請求項6】
サファイアを含む基板が除去される、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載のテンプレート。
【請求項7】
その後任意に個々のIII−Nウエハーに分離されるより厚いIII−N層またはIII−N結晶ブールもしくは各III−Nバルク結晶を製造するために使用される
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載のテンプレート。
【請求項8】
半導体素子、電子または光電子素子を製造するために使用される
ことを特徴とする請求項7に従って製造されるIII−Nウエハーまたは請求項1乃至6のいずれか1つに記載のテンプレート。
【請求項9】
サファイアを含む基板とIII−N結晶層とを含むテンプレートにおける中間層としてのマスク材料であって、
IIIがAl、GaおよびInの群から選択される元素周期表第3主族の少なくとも1つの元素を表し、
特定の曲率値および/または特定の応力を設定した後、基板上に少なくとも1つの更なるIII−N結晶層を堆積させるためにテンプレートの曲率値および/または応力を制御するために使用され、
前記基板に成長中のIII−N層上または任意に形成されるIII−N核生成層上に付与され、前記マスク材料から前記基板までの距離は、最大で300nmであり、
Si(式中、xおよびyはそれぞれ独立して化学量論的または非化学量論的SiN化合物を導く正数を示す)、TiN、Al(式中、xおよびyはそれぞれ独立して化学量論的または非化学量論的AlO化合物を導く正数を示す)、Si(式中、xおよびyはそれぞれ独立して化学量論的または非化学量論的SiO化合物を導く正数を示す)、WSiおよびWSiNからなる群から選択される
ことを特徴とするマスク材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III−N単結晶の製造に用いる複合基板(以下、「(1以上の)テンプレート」と称する)に関する。IIIは、Al、GaおよびInからなる群から選択される元素周期表の第III主族の少なくとも1つの元素を表す。
【背景技術】
【0002】
III−N単結晶は、技術的に極めて重要なものである。多数の半導体素子および光電素子(電力成分、高周波成分、発光ダイオードおよびレーザーなど)は、これらの材料をもとにしている。出発基板上でのエピタキシャル結晶成長がこのような素子を製造する際に頻繁に行われる、または、最初にテンプレートが出発基板上に形成され、次いでその上にIII−N層またはIII−Nブール(boules)が更なるエピタキシャル成長によって堆積され得る。III−N基板または特に異種基板を出発基板として使用することができる。異種基板を使用する際、成長中、出発基板とエピタキシャル層との熱膨張係数の差により、III−N層内に応力および亀裂が生じ得る。WSiN、TiNまたはSiOから構成され、外的プロセスで堆積される部分的に構造化された中間層を活用して、より厚い層を成長させることもできる。ここで、前記より厚い層を後に自立層として分離することができ、これらの自立層は、典型的には、可塑性の凹形に湾曲したc格子面および表面を有する。出発基板とエピタキシャルIII−N層との間の界面にまたはその上に、縦方向および横方向の微小亀裂が生じ得る。これらの微小亀裂は時間をかけて広がり、冷却プロセス中または後のGaN層の破損の原因となり得る。
【0003】
Hearne et al.,Applied Physics Letters 74,356−358(1999)による調査から、サファイア基板上へのGaNの堆積中に内因性の引張応力が増大し、これが成長と共に大きくなることが知られている。in situでの応力監視は、成長により生じた引張応力がアニーリングまたは熱サイクルによって適度に緩和され得ないことを示している。これはとりわけ、GaN層の成長末期に得られた応力が、冷却して同じ(成長)温度まで再加熱した後に再度同じ値を有することを意味する。Hearne et al.ではまた、外因性(すなわち、サファイア基板とGaN層との熱膨張係数差により生じる)および内因性(すなわち、成長により生じる)応力の観察に関する背景、関係および可能性が説明されている。
【0004】
US2008/0217645 A1において、III−N層構造の成長が増大するのに伴い、異種基板上でのIII−N層の多層構造において、応力すなわち引張応力が生成されるのを妨げるために、以下の措置が講じられる:まず、核形成層上にAlGaN勾配層を堆積し、次に弛緩したGaAl(In)N中間層を窒化層の間に付与する。更に、幾つかのエピタキシャル層の後に、エピタキシャル層構造において転位密度が過剰に増大すると、US2008/0217645 A1では、SiN、MgNおよび/またはBNマスク材料などを伴うマスク層を使用して転位密度を低下させる。更なる例および他の関連文献(connection)においても、転位密度の変化に対するマスク層の影響が記載されている。例えば、Tanaka et al.,Jpn.J.Appl.Phys. Vol.39,L831−L834(2000)(特に、SiC異種基板の使用に関する)、WO2012035135 A1(特に、Si異種基板の使用に関する)ならびに以下で更に検討するHertkorn et al.(2008)による文献などである。
【0005】
Napieralaらは、Journal of Crystal Growth 289,445−449(2006)において、GaN/サファイアテンプレートの製造方法を記載しており、薄層における応力が屈曲によって解放され得るように窒化ガリウム結晶子の密度の設定を行って窒化ガリウムにおける内因性応力を制御することができることによって、亀裂のない薄いGaN層がGaN/サファイアテンプレート上に成長される。しかしながら、この方法において、厚い層は成長中に圧力を補償することができず、屈曲するにもかかわらず破損する傾向にある。Richter et al.(E. Richter,U.Zeimer,S.Hagedorn,M.Wagner,F.Brunner,M.Weyers,G.Trankle,Journal of Crystal Growth 312,[2010]2537)には、水素化物気相成長(HVPE)によりGaN結晶を製造する方法が記載されており、この製造方法では、塩化ガリウムの部分圧を設定することによって厚さ2.6mmのGaN層を亀裂がないように成長させることができ、得られたGaN層は複数のV字穴をその表面に呈する。この方法で成長させた結晶は5.8mmの厚さを有するが、より長い亀裂を呈する。Brunnerらは、Journal of Crystal Growth 298,202−206(2007)において、エピタキシャルIII−N層の湾曲に対する層厚の影響を示している。GaN−サファイアテンプレート上でのGaNおよびAlGaN(任意にInGaNコンプライアンス層を伴う)の成長が調査されている。Alモル分率が2.8%および7.6%であるGaNおよびAlGaNについて、成長の間に凹形湾曲が増大することが判明した。更に、アルミニウム含量が増えるにつれ、凹形湾曲も増大する。加えて、GaNバッファー層上でのAlモル分率が7.6%であるAlGaN層の成長に対するSiドープ窒化インジウムガリウム層の影響が示されている。この目的のため、一方では、Alモル分率7.6%のAlGaN層をGaNバッファー層上に直接成長させ、他方では中間層としてSiドープ窒化インジウムガリウム層をGaNバッファー層上に成長させ、次いで、Alモル分率7.6%のAlGaN層を中間層上に成長させる。そうすると、Siドープ窒化インジウムガリウム層のGaNバッファー層上への堆積により結晶中に圧縮応力が生じることが示された。この方法において、GaNバッファー層の当初の凹形湾曲が温度低下の過程でわずかに凹形の湾曲に変換され、この凹形湾曲が同方法においてIn0.06Ga0.94N層をエピタキシャル成長させることによって更なる成長の間に増大する。その後Al0.076Ga0.924N層がこのIn0.06Ga0.94N層上へ堆積する間、In0.06Ga0.94N中間層がない場合に生じた湾曲と比較してより低い凹形湾曲が最終的に得られる。
【0006】
E.Richter,M.Grunder,B.Schineller,F.Brunner,U.Zeimer,C.Netzel,M.WeyersおよびG.Trankle(Phys.Status Solidi C8,No.5(2011)1450)は、HVPEによりGaN結晶を製造する方法を記載しており、この方法において、厚さは最大6.3mmに到達し得る。これらの結晶は、傾斜した側壁と、表面上のV字穴とを呈する。更に、結晶格子は、およそ5.4mの凹形湾曲および6×10cm−2の転位密度を有する。
HertkornらはJ.Cryst. Growth 310(2008),4867−4870において、in situで堆積されたSiNマスクを用いて有機金属気相エピタキシー(MOVPE)により2〜3μmのGaN薄層を形成するための方法条件について記載している。SiNの様々な配置または位置(特定的には0(すなわち、AlN核形成層上に直接)または15、50、100、350および1000nmの成長後)に関する、欠陥または転位密度の発生に作用し得る影響との関係が調査される。結果として、SiNが100nmのGaN成長後に位置付けられる際、欠陥の終結または転位密度の低下が最も効果的であると推測される。他方、それは負の応力を受け、AlN核形成層上に直接または近傍にSiNを堆積させるとGaN層に強い圧縮応力がかかり、層変形−いわゆる積層欠陥(透過型電子顕微鏡において見ることができ、更にDX線幅およびX線ピークの広がりを伴う)−が生じたという点で問題である。故に、このような問題を回避するために、第2SiNマスクを1.5μmの後に堆積させて欠陥をスクリーニングした。転位密度の低下とは別に(しかしながら、また、不利な影響と関連するものとして記載された)、著者らは、いずれのパラメーターがテンプレートの更なる加工にとって重要であるのか、SiNの堆積によってどのように影響を受け得るのか、および特に、更なるIII−N層およびIII−Nバルク結晶の成長の間に亀裂形成への後の傾向が抑制され得るのか否かおよびどのように抑制され得るのかについて認識していなかった。
【0007】
DE102006008929 A1は、シリコン基板をベースとする窒化物半導体素子およびシリコン基板上にアルミニウム含有窒化物核形成層を堆積させることを含むその製造について記載している。特にシリコン基板の使用をベースとする方法が記載されており、この方法において、サファイア基板上での半導体層の成長が、シリコン基板上での成長と比較して、全く異なる境界条件に供されることが認められる。実際、結果として、室温まで冷却した後、DE102006008929 A1のシステムに従って成長されたIII−N層は全くまたはほとんど圧縮応力を受けていないが、シリコン基板上に成長された従来のIII−N層と比較してそれほど引張応力を受けていないというだけにすぎない。
【0008】
米国特許出願第2009/0092815A1は、1〜2mmの厚さを有する窒化アルミニウム結晶ならびに5mmの厚さを有する窒化アルミニウム層の製造について記載している。これらの層は、亀裂のないものとして記載され、素子および成分の製造における適用に関して90%を超える有効面積を有する無色かつ光学的に透明なウエハーを切断するのに使用可能である。
【0009】
上述の従来技術における方法は、成長および冷却後にIII−N結晶が得られ、これらが強い外因性および内因性応力を受けることにより、材料の品質およびIII−N基板に対する加工性を制限する亀裂または他の材料欠点が発生し得るという共通点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願第2008/0217645A1
【特許文献2】国際公開公報WO2012035135A1
【特許文献3】独国特許出願第102006008929A1
【特許文献4】米国特許出願第2009/0092815A1
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Applied Physics Letters 74,356−358(1999)
【非特許文献2】Jpn.J.Appl.Phys. Vol.39,L831−L834(2000)
【非特許文献3】Journal of Crystal Growth 289,445−449(2006)
【非特許文献4】Journal of Crystal Growth 312,[2010]2537
【非特許文献5】Journal of Crystal Growth 298,202−206(2007)
【非特許文献6】Phys.Status Solidi C8,No.5(2011)1450
【非特許文献7】Growth 310(2008),4867−4870
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、材料が有する欠点を最小にし、かつ、結晶の品質および加工性を向上させる条件下でのIII−N結晶の成長を可能にするテンプレートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、クレーム1に記載のテンプレートによって解決される。更なる実施形態が対応するサブクレームに記載される。
【0014】
本発明によれば、テンプレート(すなわち、サファイアを含む異種基板と、比較的薄いIII−N結晶層とを有するユニットであって、そのようなテンプレートユニットは、その一部が(on its part)後続のIII−N結晶ブール/インゴットまたはIII−N素子製造用の出発生成物としての役割を果たす)において、臨界パラメーターであるテンプレートの曲率および応力の正しい影響が、テンプレートの有利な特性およびその更なる加工にとって特に重要なものとして代替的に認識された。驚くべきことに、これらのパラメーターが注意深く選択される要因によって非常に好ましい影響を受けることができ、これは特に、テンプレート内での位置または層配置に従うマスク材料の付与および層状堆積を含み、それにより、特に本発明のテンプレートを使用する後続の亀裂形成を効果的に妨げることができる、ということが判明した。代替の技術的解決策によれば、本発明に関連し、かつ、テンプレートの更なる加工にとって好ましい設定に関し、以下のことを確認すべきである:(i)後に更に特定される曲率差(K−K)が、テンプレート製造中の少なくとも1つの成長段階において、≧0、特定的には>0の範囲内にあること、または(ii)成長温度での状況下で製造されたテンプレートは本質的に湾曲(bowed)しない、または反対に(凸状に)湾曲する。本発明によれば、エピタキシャル結晶成長条件下で、全くもしくはほぼ湾曲を呈さない、または反対の(negative)湾曲を呈するため、ごくわずかな内因性応力(更なる加工用の出発状況として有利であることが立証されている)しか呈さないテンプレートを製造することができる。本発明により実験的に示されるように、上述の技術的解決策(i)および(ii)は、テンプレートのIII−N層にドーパントを配合することなく実現可能である。つまり、マスク材料の中間層の成分は別にして、いずれの異種成分もテンプレートには付与されない(「異種」とは、III−N層のIIIおよびN成分以外を意味する)。本発明によれば、テンプレートのIII−N層の形成がマスク材料の中間層の形成と共にin situで行われることに注意を払うことができるため、更に上述の技術的解決策(i)および(ii)を、付与されたサファイア基板の表面構造化とは別個に実現することができる。後者は、すなわちex situで行われる従来のパターニング、例えば、窓の開放、例えば(フォト)リソグラフィーなどによる縞または点および他のマスク構造物の形成、故に、望ましい湾曲挙動を本発明によるようには設定できない従来の場合にも適用する。
【0015】
本発明によるマスクパターンを任意に呈し得るサファイア基板それ自体にこのように任意に付与される表面構造化が行われる場合、更に、追加的に中間層としてのマスク材料が、サファイア基板上もしくはその上に任意に存在するIII−N核形成層上に少なくとも部分的に直接(すなわち、直近)、または、テンプレートの結晶性III−N材料中においてサファイア基板もしくはその上に任意に存在するIII−N核形成層の主表面に対して好適な距離をもって(すなわち、基板またはIII−N核形成層との接触が生じる限り)堆積されることに注目する。更に、寸法も異なる:ex situで行われる表面マスキングおよびパターニングは、μm範囲の厚さ寸法を呈するが、一方、本発明によれば、関連のin situマスク材料の中間層は、典型的には、サブμm範囲の厚さ寸法を呈する。
【0016】
本発明によれば、所望であれば更なる加工にとって好ましい特定の応力値内で意図的に応力を量的に設定することができる。特に、本発明によれば、テンプレートは、応力を受けない(任意には圧縮応力範囲内の応力さえ受けない)ものとなり得る。好ましい実施形態において、これは、本書で述べるようなマスク材料の中間層を好適に付与することによってのみ達成可能である。
【0017】
したがって、本発明の方法は、より有意には本発明の方法の好ましい特徴の観察により、室温で(あるいはまたは更には、成長温度で)のεXX値εXX≦0、特にεXX<0、さらに加えて特に好適な負のεXX値を有するテンプレートのIII−N結晶層における歪みを有利に設定することができ、この値は、本発明のテンプレートの更なる加工に対して非常に好ましい効果を有するため、本発明のテンプレートの代替関連生成物の特徴を構成する。
【0018】
従来のおよび通常行われる関連方法はこれまでのところ異なる挙動を示している、または、認識されている有用な関係はここでは明らかにされていない。異種基板とIII−N層との熱膨張係数の差ならびに更なる要因により、例えば標準的な基板サファイアを成長温度で使用する従来の方法において、典型的には、成長表面の凹形湾曲が形成され、次いで更なる結晶成長の過程において、すなわち、III−N層の厚さが増すにつれ、その湾曲も更に増大する。驚くべきことに、テンプレートのIII−N材料層の特定の成長段階において、III−N材料層の更なる成長にもかかわらず、所与の湾曲が著しく減少するように本発明による方法を構成することができる。
【0019】
更に、従来の方法において湾曲が連続して増大した結果として、結晶内の対応する増大する内因性−典型的には引張−応力が増大し、任意には既に更なる成長中、特にテンプレートの更なる使用または更なる加工の間、遅くともエピタキシャル成長温度からの冷却の間、微小亀裂、更には破損までもすぐに引き起こす可能性がある。対照的に、本発明の方法では、制御して設定される内因性−典型的には圧縮−応力をエピタキシャル結晶成長中、意図的に制御することができる、または、曲率をゼロまたはほぼゼロに設定することによって、III−N結晶の後続の成長の間、例えば、III−Nバルク結晶を形成するために−任意には成長を中断しない継続的な成長の間または中断を伴う別個の成長プロセスにおいて−および更には最終的な冷却の間でさえ、亀裂が生じることを回避することができる。
【0020】
このようなIII−N結晶において、更に、材料の品質および/またはIII−N基板に対する加工性を制限する亀裂の発生を回避する。本発明による「亀裂のないIII−N結晶」とは、30mmの各画像片を光学顕微鏡で検査したときに、当該結晶が15cmの面積に亀裂を呈さないことを示す。
【0021】
更に、本発明によれば、格子定数aの変形(歪み)εXXの微視的特性も影響を受ける可能性がある。力学では、変形εは一般に、歪みテンソルと呼ばれ、εXXはその第1成分を示す。
結晶格子について、歪みεXXは以下のように定義される。
εXX=(格子定数a−格子定数a)/格子定数a
式中、aは結晶中の実際の格子定数であり、aは理論的な理想格子定数を表し、aについては、典型的には3.18926±0.00004Aの文献値(literature value)が想定される(V.Darakchieva,B.Monemar,A.Usui,M.Saenger,M.Schubert,Journal of Crystal Growth 310(2008)959−965による)。
【0022】
したがって、実際に存在する結晶格子定数は、外因性応力下での結晶層のエピタキシャル成長により影響を受ける可能性がある。例えば、圧縮応力は、外因性応力により成長中の結晶に移送または付与され、それにより、応力なしでの成長と比較して、格子定数が縮小される可能性がある。よって、内因性応力は結晶内で制御されかつ意図したように増大し、前記応力は、変形および応力の上記特性に好ましい影響を及ぼす。
【0023】
本発明によれば、本発明のテンプレートのIII−N結晶のεXX値は、好ましくは≦0、より好ましくは<0である。このようなテンプレートは、III−N系の更なるエピタキシャル層を成長させるため、特に厚いIII−N層およびIII−Nブール(バルク結晶)を生成するための出発生成物として非常に適する。
【0024】
本発明を制限することなく、以下に、本発明の態様、更なる実施形態および特定の特徴を説明する一連の項目を示す。
【0025】
1.基板と、少なくとも1つのIII−N結晶層とを含むテンプレートを製造するための方法であって、
基板と、少なくとも1つのIII−N結晶層とを含むテンプレートを製造するための方法であって、IIIがAl、GaおよびInから選択される元素周期表第3主族の少なくとも1つの元素を表し、
サファイアを含む異種基板を付与する工程と、
基板上で結晶性III−N材料を成長させる工程であって、マスク材料を異種基板上に中間層(任意にIII−N核形成層を含む)として、または、結晶性III−N材料において基板からまたは任意に付与されたIII−N核形成層から距離をもって堆積され、次いで、結晶性III−N材料の成長が行われるまたは継続され、マスク材料の中間層と異種基板またはその上に任意に形成される各III−N核形成層との可能な距離が最大で300nmである工程と、
を含み、
結晶成長中、第1の比較的早い時点でのIII−N結晶の成長表面の曲率をKと表し、第2の比較的遅い時点でのIII−N結晶の成長表面の曲率をKと表すとき、曲率差が、K−K≧0となる、
ことを特徴とする方法。
(K−K)の範囲は、>0であるのが好ましい。
当該基板は異種基板として形成される。すなわち、それはテンプレートのIII−N材料とは異なる材料であり、特に、異種基板はサファイアを含む、またはサファイアからなる。
当該マスク材料は、好適には基板材料およびIII−N材料とは異なる材料として定義され、その上でIII−N成長が阻害され、妨害されまたは防止される。マスク材料の例が更に以下に記載される。「比較的早い」および「比較的遅い」という用語は、結晶成長中の第1または第2の時点を示し、III−N結晶層の全結晶成長の開始および終了時点であり得るが、またIII−N結晶層の全結晶成長の特定段階を定義し得るにすぎない。後者の場合、湾曲挙動が第1時点の前または、第2時点の後でどうであるかは問わない。比較的早い第1時点は、例えばマスク材料の中間層のコーティングの時点であるが、これに限定されず、比較的遅い第2時点は、例えばテンプレートの製造段階の終了時点であるが、やはりこれに限定されない。各時点のあり得る変形は、K−Kの特定された関係を順守しない(non−observance)場合と比較して、形成されるIII−N結晶の歪み/応力、ならびに/または、成長温度および/もしくは室温でのテンプレートの湾曲挙動もしくは湾曲状態に好ましい影響を及ぼすという共通点を有する。
「中間層」という用語は、より広範な意味で、一般にはマスク材料を含み、任意にはマスク材料に加えてIII−N材料などの更なる材料を含む、または材料を含まない空隙を呈する材料層として理解されるべきである。「中間層」の厚さは可変であるが、一般には薄い〜非常に薄い、好適にはナノメートル範囲(例えば、最大で50nm、好ましくは5nm未満)またはサブナノメートル範囲(例えば、最大で1nm未満、特に最大で1単分子層(monolayer)未満(すなわち、0.2〜0.3nm以下))である。
「基板上での」中間層のマスク材料の堆積は、サファイアまたはサファイア上にある任意のIII−N核形成層の表面に直接隣接していることを意味し、「基板から距離をもって」は、この表面からマスク材料の中間層の配置/位置の距離を表す。
【0026】
2.曲率差(K−K)が少なくとも5km−1であり、好ましくは少なくとも10km−1であり、より好ましくは少なくとも20km−1であり、特に50km−1である、項目1に記載の方法。
【0027】
3.テンプレートが、1または複数の更なるIII−N結晶層をコーティングするために、任意にはIII−Nバルク結晶を製造するために更に使用される、項目1または2に記載の方法。
本発明によれば、製造されるテンプレートは、曲率差K−Kを観察することによって好ましい影響を受けるので、III−N結晶の成長表面の更なる湾曲挙動は、更なる半導体材料の任意の後続のコーティングまたはエピタキシャル成長の間には特定されない。
【0028】
4.III−N単結晶を製造する方法であって、
IIIがAl、GaおよびInから選択される元素周期表第3主族の少なくとも1つの元素を表し、
aa)サファイアを含む出発基板と、III−N結晶層とを含むテンプレートを付与する工程であって、成長温度範囲内にあるテンプレートが全くもしくは本質的に湾曲されないか、または反対に(negatively)湾曲される工程と、
bb)エピタキシャル結晶成長を行うことによって、aa)によるテンプレート上に更なるIII−N結晶を形成し、任意にはIII−Nバルク結晶を生成する工程と、
cc)任意に、III−N単結晶またはIII−Nバルク結晶と異種基板とを分離する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
本発明によれば、規定されかつ制限された高さレベルでマスク材料の中間層を異種基板上に意図的に配置することによって、テンプレートが、初期状態において(すなわち、工程bb)による更なる成長が生じる前)、加熱中に、所望の好ましい湾曲していない状態または(圧縮を受けてもしくは凸形に)反対に湾曲している状態とされることが好ましい。この点に関し、「中間層」という用語については上記項目1および2を参照。この方策が規定された条件にとって十分でないまたは個々に十分でない場合、テンプレートのIII−N層の成長の限られた段階中に成長温度の変動(異種基板としてのサファイアの選択に基づく低下)が生じ、それによって関係K−K≧0に対する補助的および/または代替的な寄与が与えられたという点で、更なる追加のパラメーターを観察かつ設定することができる。
「成長温度」という用語は、所望のIII−N結晶の堆積、特にエピタキシャル成長が可能となる温度を言う。
【0029】
5.テンプレート用に、異種基板として厚さ(dsapphire)がおよそ430μm(つまり、±20μm)のサファイアと、III−N結晶層として厚さ(dGaN)7μm(つまり、±0.5μm)のGaNとが使用または設定され、III−N結晶において、成長表面でのテンプレートの曲率(K)が、
(i)成長温度では、0〜−150km−1の範囲内、好ましくは−25〜−75km
−1の範囲内で特定される、および/または
(ii)室温では、<−200km−1の範囲内、好ましくは−200〜−400km
−1の範囲内、より好ましくは−300〜−350km−1の範囲内で特定され、
異なる層厚(dsapphire/dGaN)を使用または設定するとき、曲率値が以下の範囲内でストーニーの方程式に類似する各層厚に応じる:
T(dGaN;dsapphire)=KT(7μm;430μm)x(430μm/dsapphirex(dGaN/7μm)
前述の項目の1つに記載の方法。
【0030】
6.テンプレートのIII−N単結晶が、室温で−2〜−6mの範囲内の曲率半径を呈する、前述の項目の1つに記載の方法。
【0031】
7.結晶性III−N材料において圧縮応力が生成される、前述の項目の1つに記載の方法。
圧縮応力は、主にサファイア基板または核形成層から距離を持たずにまたは意図的に特定された距離をもってマスク材料の中間層を堆積させることによって作成される。
【0032】
8.テンプレートのIII−N単結晶が、室温でσXX<−0.70GPaの圧縮応力を呈する、前述の項目の1つに記載の方法。
【0033】
9.マスク材料の中間層が、異種基板から300nm、好ましくは250nm未満、より好ましくは100nm未満、より好ましくは最大で50nmの最大距離をもって堆積される、前述の項目の1つに記載の方法。
【0034】
10.マスク材料の中間層が、異種基板上のIII−N核形成層上に堆積され、次いでIII−N結晶成長が行われる、前述の項目の1つに記載の方法。
この実施形態において、凝集(coalescence)が終了し、その後テンプレートのIII−N単結晶の実際の成長が始まる前に、マスク材料の中間層が異種基板のIII−N核形成層上に直接およびその直上に堆積されることが好ましい。
【0035】
11.マスク材料が、同一の反応器において、異種基板上またはテンプレートのIII−N層中にテンプレートの製造中in situで堆積される、および/または、マスク材料の堆積直後にIII−N成長プロセスが継続される、前述の項目の1つに記載の方法。
【0036】
12.テンプレートにおけるマスク材料が平面に均質に分配されるが、好ましくは不連続的に堆積される、前述の項目の1つに記載の方法。この可能な実施形態によれば、テンプレートにおけるマスク材料は本質的には平面に存在するが、堆積の形状は様々であり得る。マスク材料の層は完全な層を形成し得るが、別法としておよび好ましくは、途断を呈し、層中に不連続的に分配される。特に、それは網状構造の形態および/またはマスク材料のナノプレートレットまたはナノアイランドの形態(マスク材料を有するナノマスク)で存在し得、不連続的なマスク層における微視的またはナノ寸法の空隙から、III−Nの後続の成長が続いて起こり得る。マスク材料の層の厚さもまた可変である。異なる可能な堆積形態は、形成されるIII−N結晶における歪み/応力に対して、ならびに/または、成長温度および/もしくは室温でのテンプレートの湾曲挙動または状態に対してそれぞれ好ましい影響を共通に有する。所望の形態は適切なパラメーター、例えば相当する出発材料の流量、反応器の圧力、堆積温度またはマスク材料の堆積時間によって好適に設定できる。
13.1.5μmの距離をもって第2SiNマスクが堆積されない、または第2SiNマスクが全く堆積されない、前述の項目の1つに記載の方法。
【0037】
14.テンプレートにおいて、マスク材料の単一層のみが堆積される、前述の項目の1つに記載の方法。
【0038】
15.マスク材料が、III−N堆積が阻害または防止される材料である、前述の項目の1つに記載の方法。
【0039】
16.マスク材料が、Si(式中、xおよびyはそれぞれ独立して化学量論的または非化学量論的SiN化合物、特定的にはSiを導く正数を示す)、TiN、Al(式中、xおよびyはそれぞれ独立して化学量論的または非化学量論的AlO化合物、特定的にはAlを導く正数を示す)、Si(式中、xおよびyはそれぞれ独立して化学量論的または非化学量論的SiO化合物、特定的にはSiOを導く正数を示す)、WSiおよびWSiNからなる群から選択される、前述の項目に記載の方法。
マスク材料の堆積において、マスク材料は、好ましくはガス相からの各元素の相当する反応種から反応器内においてin situで直接堆積され、好ましくはその直後にテンプレートの実際のIII−N結晶の堆積が開始または継続される。
【0040】
17.異種基板がサファイアからなる、前述の項目の1つに記載の方法。
【0041】
18.テンプレートのIII−N結晶の湾曲が、成長温度を変更することによって少なくとも1つの成長段階において更に変化する、前述の項目の1つに記載の方法。
【0042】
19.テンプレートのIII−N結晶の少なくとも1つの堆積段階において、先のIII−N堆積の温度と比較して低下された成長温度で成長が生じる、前述の項目の1つに記載の方法。
【0043】
20.温度低下が、少なくとも10℃、好ましくは少なくとも20℃、好ましくは20〜50℃の範囲内にあり、より好ましくは25〜40℃の範囲内にあり、および特に好ましくは30℃である、項目19に記載の方法。
【0044】
21.付与された基板が研磨された表面を有する、前述の項目の1つに記載の方法。
【0045】
22.付与された基板が、リソグラフィー、または湿式化学エッチングもしくは乾式化学エッチング(例えば、ICP)によって構造化された表面を呈する、前述の項目の1つに記載の方法。
【0046】
23.テンプレートまたはその上にエピタキシャル成長されたIII−N結晶上に、相当する更なるIII−N層またはIII−N結晶を製造するための、少なくとも1つのおよび任意にはそれ以上のGaN、AlN、AlGaN、InN、InGaN、AlInNまたはAlInGaN層が堆積される、前述の項目の1つに記載の方法。
【0047】
24.テンプレートのIII−N結晶層ならびにその上にエピタキシャル成長されたIII−N結晶が同一のIII−N材料から構成される、前述の項目の1つに記載の方法。
【0048】
25.異種基板上のIII−N結晶層ならびにその上にエピタキシャル成長されたIII−N結晶がそれぞれ二成分系を形成する、前述の項目の1つに記載の方法。
【0049】
26.マスク材料の中間層の堆積後、0.1〜10μmの範囲内にある合計厚さ、好ましくは3〜10μmの範囲内にある厚さを有するIII−N結晶の形成のための、更なるin situ結晶成長が生じ、テンプレートが得られ、マスク材料の中間層を含むテンプレートのIII−N層の合計厚さが計算される、前述の項目の1つに記載の方法。
【0050】
27.MOVPEが成長方法として使用される、前述の項目の1つに記載の方法。
【0051】
28.テンプレート上で、III−N単結晶が、少なくとも1mm、好ましくは少なくとも5mm、より好ましくは少なくとも7mmおよび最も好ましくは少なくとも1cmの層厚で成長される、前述の項目の1つに記載の方法。
【0052】
29.少なくともテンプレート形成完了後の工程において、任意には開始からおよび全結晶成長工程において、結晶成長がHVPEにより行われる、前述の項目の1つに記載の方法。
【0053】
30.結晶成長完了後、成長されたIII−N単結晶と異種基板とが、自己分離によって、好ましくは結晶成長温度からの冷却中に互いに分離される、前述の項目の1つに記載のIII−N単結晶を製造する方法。
【0054】
31.結晶成長完了後、成長されたIII−N単結晶とサファイアを含む異種基板とが、研削、挽切またはリフトオフ法によって互いに分離される、前述の項目の1つに記載のIII−N単結晶を製造する方法。
【0055】
32.III−N結晶ウエハーを製造する方法であって、
IIIがAl、GaおよびInの群から選択される元素周期表第3主族の少なくとも1つの元素を表し、
a)項目3〜31の1つに記載の方法を実施することによってIII−Nバルク結晶を形成する工程、および
b)バルク結晶を個別に分けることによってウエハーを形成する工程、
を含む方法。
【0056】
33.サファイアを含む基板と、少なくとも1つのIII−N結晶層とを含むテンプレートであって、IIIがAl、GaおよびInの群から選択される元素周期表第3主族の少なくとも1つの元素を表し、テンプレートの異種基板より上の領域またはテンプレートのIII−N結晶層においてマスク材料が中間層として付与され、テンプレートのIII−N結晶層において、室温での値εXXがεXX<0である、テンプレート。
【0057】
34.サファイアを含む基板と、少なくとも1つのIII−N結晶層とを含むテンプレートであって、IIIがAl、GaおよびInの群から選択される元素周期表第3主族の少なくとも1つの元素を表し、テンプレートの異種基板より上の領域またはテンプレートのIII−N結晶層においてマスク材料が中間層として付与され、テンプレートのIII−N結晶層において、成長温度での値εXXがεXX≦0である、テンプレート。
【0058】
35.テンプレートのIII−N結晶層において、室温での値εXXが、0>εxx≧−0.003の範囲内、特に−0.0015>εxx≧−0.0025の範囲内、特に−0.0020≧εxx≧−0.0025の範囲内に設定される、項目33または34に記載のテンプレート。
【0059】
36.テンプレートのIII−N結晶層において、成長温度での値εXXが、0>εxx>−0.0006の範囲内、好ましくは−0.0003>εxx>−0.0006の範囲内にある、項目33〜35の1つに記載のテンプレート。
【0060】
37.0.1〜10μm、好ましくは2〜5μmの範囲内にあるIII−N単結晶の層厚を有するテンプレートの形態において、マスク材料の中間層を含んで計算される、項目33〜36の1つに記載のテンプレート。
【0061】
38.室温でのIII−N単結晶が、σXX<−0.70GPaの圧縮応力を有する、項目33〜37の1つに記載のテンプレート。
【0062】
39.テンプレート用に、異種基板として厚さ(dsapphire)がおよそ430μm(つまり、±20μm)のサファイアと、III−N結晶層として厚さ(dGaN)がおよそ7μm(つまり、±0.5μm)のGaNとが使用または設定され、III−N結晶において、テンプレートの曲率(K)が、
(i)成長温度では、0〜−150km−1の範囲内、好ましくは−25〜−75km−1の範囲内で特定される、および/または
(ii)室温では、−200〜−400km−1の範囲内、より好ましくは−300〜−400km−1、より好ましくは−300〜−350km−1の範囲内で特定され、
異なる層厚(dsapphire/dGaN)を使用または設定するとき、曲率値がストーニーの方程式に基づく以下の式で各層厚に応じて特定される:
T(dGaN;dsapphire)=KT(7μm;430μm)x(430μm/dsapphirex(dGaN/7μm)
項目33〜38の1つに記載のテンプレート。
【0063】
40.IIIがGaを表し、成長方向の結晶が、0.31829nm<a<0.318926nmの範囲内の格子定数を呈する、項目33〜39の1つに記載のテンプレート。
【0064】
41.サファイアを含む基板が除去される、項目33〜40の1つに記載のテンプレート。
【0065】
42.項目1〜32に記載の方法の1つに従って製造されるまたはそれにおいて使用される、項目33〜41の1つに記載のテンプレート。
【0066】
41.その後任意に個々のIII−Nウエハーに分離されるより厚いIII−N層またはIII−N結晶ブールもしくはバルク結晶を製造するための、項目32に従って製造されるIII−Nウエハーの使用または項目33〜42の1つに記載のテンプレートの使用。
【0067】
44.半導体素子、電子または光電子素子を製造するための、項目32に従って製造されるIII−Nウエハーの使用または項目33〜42の1つに記載のテンプレートの使用。
【0068】
45.電力成分、高周波成分、発光ダイオードおよびレーザーを製造するための項目44に記載の使用。
【0069】
46.特定の曲率値および/または特定の応力を設定した後、基板上に少なくとも1つの更なるIII−N結晶層を堆積させるべくテンプレートの曲率値および/または応力を制御するための、サファイアを含む基板と、III−N結晶層とを含むテンプレートにおける中間層としてのマスク材料の使用であって、IIIがAl、GaおよびInの群から選択される元素周期表第3主族の少なくとも1つの元素を表す、使用。
【0070】
47.特定の曲率値および/または特定の応力が、更なるIII−N層の後続の更なる成長における亀裂形成を回避する、項目46に記載の使用。
【0071】
現在示された温度は、特記されない限り、加熱装置で設定された相当する温度すなわち各工程用に名目上設定された温度(工程(process)温度)を言う。テンプレート/ウエハーでの温度は、典型的には僅かに低く、反応器の種類に応じて異なり得るが、例えば最大で75K低い。実施例で使用される反応器の種類について、テンプレート/ウエハーでの温度は、工程温度よりも約30〜50K低い(LayTec社(ドイツ、ベルリン)製のin situ測定装置EpiTTで測定)。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1図1Aおよび1Bは、本発明によるそれぞれ異なる実施形態において、サファイア基板を有するIII−Nテンプレートを形成するための成長方法の段階を概略的に示す図である。
図2図2は、サファイア上でのGaNの典型的な成長(距離15nm)中の経時的な温度、反射および曲率プロファイルを示す図である。
図3図3は、サファイア上でのGaNの成長(距離300nm)中の経時的な温度、反射および曲率プロファイルを示す図である。
図4図4は、異なる原理に従った成長表面の曲率の変化を示す図であり、任意に、マスク材料を伴う中間層の堆積が、テンプレートのIII−N層の成長中のIII−N成長温度の変化と組み合わさっている。
図5A図5Aは、本発明の異なる可能な実施形態による、主にマスク材料を伴う中間層の付与および配置/位置に応じた成長表面の曲率の変化を示す図である。
図5B図5Bは、本発明の異なる可能な実施形態による、主にマスク材料を伴う中間層の付与および配置/位置に応じた成長表面の曲率の変化を示す図である。
図5C図5Cは、図5Aおよび図5Bに従って規定されるテンプレートを、より厚い層を生成するための更なるIII−N(GaN)層成長に供する際の成長表面の曲率に関する結果を示す図である。
図6図6は、サファイア上でのGaNの従来の成長中の経時的な温度、反射および曲率プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
したがって、本発明を制限することなく、以下の図面、態様、実施形態および特定の特徴の詳細な説明は、本発明を例証し、特定の実施形態を詳細に説明するものである。
【0074】
III−N出発基板を製造するための方法において、驚くべきことに、マスク材料の中間層を適切に配置することによって、テンプレートは、テンプレートでの成長表面の曲率および/またはテンプレートにおける好適な応力という関連パラメーターに関して著しく好ましい影響を受けることができるので、優れた特性を有するIII−N単結晶の後続の成長が可能になり、特に、III−N単結晶において亀裂が形成されるという後の傾向が著しく低減されることが判明した。
【0075】
テンプレートを製造するために、まず、サファイアを含むまたはサファイアからなる出発基板ならびにその上に構造(例えば、特定の外的に(ex situで)形成されるマスク構造)が形成されたこのような出発基板から選択される基板が付与される。好適な出発基板を付与する更なる可能性は、後の出発基板からの分離をサポートするために中間層または中間構造を形成すること、および/または、WO2006035212 A1、WO2008096168 A1、WO2008087452 A1、EP2136390 A2およびWO2007107757 A2などに記載されるように、ナノコラム構造を有するGaNコンプライアンス層をその上に形成した基板をベースとするいわゆるGaN「ナノガラス」を形成することを含み得る。
【0076】
故に、ex situで任意に行われるパターニング(例えば、窓の開放および他のマスク構造)は、本発明の方法と関連して以下に述べるように、せいぜい出発基板を付与する工程に属するものであって、マスク中間層を挿入する実際の工程に属するものではない。
【0077】
出発基板を付与するためには、サファイアを含む、好ましくはサファイアからなる異種基板が使用される。より好ましくはc配向を有するサファイア基板が使用され、これは、0.1〜0.5°だけ(1−100)または(11−20)へ傾斜しており、片面がエピレディ研磨され、裏面が研磨および/または好ましくはラッピングされている。更なる実施形態によれば、出発基板は、リソグラフィー、または湿式化学エッチングもしくは乾式化学エッチング方法(例えば、ICPエッチング)によって構造化された表面を呈する。
【0078】
図1Aおよび図1Bをもとに、非限定的であるがそれぞれ変形された代表的な実施形態を説明する。現段階では、基板(参照符号100Aおよび100B)の厚さがIII−N材料およびその上に形成されるIII−N層の厚さよりも実質的に大きく、更に、テンプレートのエピタキシャル成長されたIII−N層(参照符号105Aおよび105B)の主要部分が、マスク材料を有する中間層(参照符号102Aおよび102B)の下にあるIII−N材料(参照符号103Aおよび103B)の厚さよりも実質的に大きく、これは層100A/100Bおよび105A/105Bの各左側境界にある各破断(breaks)によって示されることに留意されたい。
図1Aおよび図1Bにおいて、同じ工程(1)において、最初に、各基板100Aおよび100Bの付与が示される。各基板には任意に上述のような前処理を施すことができ、特に前記基板をそれぞれ脱離工程および核形成工程に供することができる。このような任意の脱離工程では、例えば、炭化水素残基だけでなく他の揮発性汚染物質を出発基板または構造化もしくはその他の方法で前処理された基板から除去することができる。本方法において、脱離工程の間、出発基板は、高温、好ましくは1100〜1300℃の温度まで、より好ましくは1150〜1250℃の温度まで、例えばおよそ1200℃まで加熱される。それにより、基板における温度勾配に起因して、基板は、典型的には、後にIII−N材料が堆積される表面について、通常は凹形湾曲を伴う屈曲(曲がり、湾曲)を受ける。任意に、脱離工程の後にアンモニアによる窒化を更に行ってもよい。更なる任意の工程は、脱離が起こった後、例えば、400〜600℃の温度まで、好ましくは450〜550℃の温度まで温度を低下させることからなる。この冷却の間、−典型的には凹形−湾曲は、例えば脱離工程までの加熱開始時と同様のレベルまで再度低下する。
【0079】
本発明のテンプレートを製造するための方法における基板の付与および前処理は、好ましくは、核形成工程を更に含んでいてもよく、この工程において、結晶性III−N材料、特に微細なIII−N結晶子を出発基板上に成長させる。この工程は、この点に関して図1Aおよび図1Bの同一工程(2)に概略的に例証されている。結晶性III−N材料101Aおよび101B、特にIII−N結晶子は、後の更なるIII−N結晶成長において種結晶としての役割を果たす。III−N結晶子は、例えば、不規則な形状で1〜40nmのサイズを呈し、一般には出発基板上に無秩序に存在し、好適には非連続的な核形成層を最初に形成する。低温GaN核形成の場合、この核形成工程は、典型的には、400〜600℃、好ましくは450〜550℃およびより好ましくは500〜540℃の温度で行われる。
【0080】
AlN核形成は、典型的には、850〜1050℃、好ましくは900〜1000℃、およびより好ましくは950〜960℃の温度で行われる。低温核形成工程の間、任意には後続の成長温度への加熱の間、任意に再結晶化が生じ得る。
【0081】
基板を付与した後、任意には上述の任意手段を用いて、本発明による各実施形態の更なる工程は、図1Aおよび図1Bにそれぞれ別個に例証されるように、時点およびマスク材料層の位置/配置および生じたその結果に関して変化し得る。
【0082】
図1Aに示した実施形態において、マスク材料102Aから作成される中間層は、結晶子の凝集が始まる前に、核形成層101A上に既に直接堆積されている。更なる変形(ここでは具体的に示されていない)において、この中間層の堆積は、核形成層上に直接ではなく、非常に短いIII−N成長段階の後にのみ行われるが、やはり、ナノメートル範囲(例えば最大30nmの範囲内の距離)で核形成層と非常に近い。核形成層と非常に近くなるように選択されたこの距離範囲において、実際には図1Aに示される形態と同様に後続の工程が行われる。
【0083】
図1Bに示される実施形態において、最初に、核形成層100B上で、特定の概してやはり比較的短い間、例えば30nm以上、好適には最大300nm、好ましくは最大およそ100nm、より好ましくは最大およそ50nmの小さい厚さの結晶性III−N層103Bが形成されるまでIII−N成長が行われ、そうすることによって初めて、マスク材料102Bから作成される中間層が基板の核形成層から相当する距離で堆積される。
【0084】
好適におよび有利には、示される中間層102Aまたは102Bの堆積は、III−N層を成長させるための技術と適合可能な方法と同一の反応器内で行われる。この目的のために、適切な出発材料またはマスク材料の反応性誘導生成物もしくは種が反応器内で適切な温度およびマスク材料の堆積に好適な更なるパラメーターにて互いに反応する。最も単純な形態では、窒化シリコンなどの窒化物マスク材料の堆積が行われるが、その理由は、その堆積がIII−N堆積技法と良好に適合可能であるからである。この堆積のために、反応器の圧力および温度に関してしばしば同じもしくは同様の、または少なくとも適合可能な条件をIII−N堆積について選択することができる。それとは別に、この方法の修正が処理しやすいように、好適なガス組成およびガス流量だけを適合させる必要がある。例えば、シランガスおよびアンモニアを反応器に流入し、好適な圧力および例えば800℃〜1200℃、好ましくは約1050℃〜1150℃の好適な温度で共に反応させ、Siおよび任意には更に化学量論的または過剰もしくは準化学量論的Si組成物の形態で調製された基板上に堆積させる(100A;101A)。TiN、Al、SiO、WSiおよびWSiNなどの、SiN以外のマスク材料を堆積させる工程は、容易かつそれに応じて調節することができる。
【0085】
このように、マスク層(102Aおよび102B)は、核形成層(図1A;101Aを参照)、または、核形成層とやはり非常に近い、まさに成長中のIII−N層(図1B;101Bを参照)上に形成される。マスク層は異なる形状を呈し得る。それは一般に、表面上に均質に分配されることができ、連続層を形成してもよく、あるいは、しかしながら、やや微細な/ナノ構造化された空隙を呈する。これらの可能性は破線で表された層102Aまたは102Bの形状で概略的に図示されている。
それぞれマスク材料を含む「中間層」102Aまたは102Bの厚さは非常に薄く、相当するガス流量および短い処理時間によって設定でき、前記厚さは、好適にはナノメートルまたはサブナノメートルの範囲内、例えば5nm未満、より好ましくは1nm未満、特に単分子層よりも小さい(すなわち、0.2〜0.3nm以下)ものである。
基板からの、中間層102Aまたは102Bの距離は小さく、好適には最大で300nm、例えば1〜200nm、特に数十ナノメートル、好ましくは30〜90nm、より好ましくは40〜60nmの範囲内にある。
【0086】
マスク材料を備えた中間層を堆積させた後、III−N層104A、104Bの(継続的な)成長(図1A/1Bにおける段階(4))がその直後に、成長終了時(図1A/1Bにおける段階(5))のテンプレートが、0.1〜10μmの範囲内、好ましくは3〜10μmの範囲内における所望の厚さ(マスク材料の中間層および任意に核形成層を含むテンプレートのIII−N層の合計厚さ)を有するIII−N層105A、105Bを呈するまで行われる。本発明によれば、テンプレートのIII−N層の特性である曲率(成長表面で測定される)および/または応力が好ましい影響を受け、かつ、後続のプロセスに有利に使用されることが確認される。典型的には成長表面の凹形湾曲が形成され、次いで、更なる結晶成長の過程において、III−N層の厚さが増大するにつれて更に増大する従来の方法とは対照的に、本発明によれば、図1A/1Bの各工程(4)において概略的に示されるように、成長しているIII−N層104Aまたは104Bが後に更に成長する間にテンプレートの湾曲の減少が生じる。図1Aの特定の場合、マスク材料101Aの中間層を堆積させた直後、成長中のIII−N層は−非典型的には−このIII−N層の凝集に伴って反対に/凸形に曲がり、よってテンプレートにおける所望の圧縮応力が増大されることが確認される。図1Bの工程(3)の特定の場合、最初にIII−N結晶103Bが引張応力により僅かに凹形に湾曲するが、マスク層102Bが好適な配置/位置に堆積していない状況と比較して、少なくとも湾曲の増大は著しく少なく、任意には、湾曲の減少さえも達成され、よって、曲率差K−K≧0が認められることが確認される。
【0087】
所望の湾曲挙動が、異種基板または核形成層の表面に対して好適な距離をおいたマスク材料を有する中間層の位置/配置によって達成されない、またはそのままでは達成されない場合、この挙動は、関係K−K≧0に対する補足的な寄与が付与されるように、または、成長温度でのテンプレートが本質的に曲がらないまたは反対に曲がるように、他の方法パラメーターを更にかつ意図的に設定することによって制御することができる。III−N成長温度の調節および任意には変動はこの目的のために特に好適な更なる新たな方法パラメーターである。成長されるべきIII−N結晶よりも高い熱膨張係数を有するサファイアを異種基板として使用する場合、先の成長温度と比較して低下された成長温度で成長/堆積が生じる。この温度変化は、テンプレートのIII−N層の成長の、限定された、好ましくは比較的早い段階で最も効果的に行われ、成長はこの低下された温度で継続される。例えば先の成長の温度と比較して少なくとも10℃低下された成長温度でテンプレートのIII−N結晶の少なくとも1つの成長段階において成長を行うことによって、K−K≧0という実質的な曲率の低下が捕捉的に達成される。成長温度の低下は、好ましくは少なくとも20℃であり、より好ましくは20〜50℃の範囲内、特に25〜40℃の範囲内にある。
【0088】
GaNの場合、典型的な成長温度は、例えば、900℃〜1200℃、好ましくは約1020〜1150℃、より好ましくはおよそ1100℃±20℃の範囲内にある。Al分率が30%〜最大90%であるAlGaNの場合、典型的な成長温度は、例えば、1070℃〜1250℃の範囲内、好ましくは約1090〜1270℃、より好ましくは1170℃である。他のIII−N材料の堆積温度は、一般常識をもとに調節される。
【0089】
任意に使用しかつ任意に所望される場合、先に示した特定実施形態に記載されるように、まず、系が相当する所定の(第1)温度に供される。この第1温度では、任意には再結晶化のみが生じる。次いでこの温度が変更される(しかし、結晶成長および好ましくはエピタキシャル結晶成長が生じ得る変更された(第2)温度までしか変更されない)ことにより、最終的に、任意には湾曲挙動が更に影響を受ける。任意に使用する場合、これは、好ましくは成長しているIII−N結晶子の凝集開始時もしくはその間、またはテンプレートの成長しているIII−N層の初期段階に行われる。異種基板としてサファイアを選択することにより、成長温度の低下が生じる。相応して変更される第2成長温度の範囲内での−すなわち各第1温度未満で−(好ましくはエピタキシャル)結晶成長が継続している間、成長表面の各湾曲が継続的または断続的に更に減少する。十分な補足的な湾曲の減少が、この任意の温度変動工程によって達成されると、III−N層の更なる成長温度を再び自由に、たとえば上述の典型的なGaNおよびAlGaNなどに関する成長温度の範囲内で選択することができる。
【0090】
先の工程−上述のような基板上での最初のIII−N結晶子または核形成層の形成中など−に基づくIII成分は、実際のエピタキシャルIII−N層の成長工程への移行時、同じに維持され得るまたは変更され得る。核形成層(図1A/1Bの102Aまたは102Bを参照)は、例えばGaNまたはAlNで構成され得、テンプレートのエピタキシャルIII−N層(図1A/1Bの104A−105Aまたは104B−105Bを参照)はそれとは別個にGaNまたはAlGaNで構成され得る(好ましくはGaNから作成される)。特定実施形態において、III成分は変更されない。
【0091】
ここで特定的に記載される図1Aおよび図1Bの実施形態を再び参照すると、本発明に従って、マイクロメートル範囲(典型的には最大10μm)内でのテンプレートの全III−N層105Aまたは105Bの更なる成長の過程において、マスク材料の単一の中間層102Aまたは102Bを適切に堆積させることによって曲率が更に継続して減少し、図1Aの場合には、更に反対の曲率値への傾向を有するが、図1Bの場合には、段階(3)における僅かに正の/凸形の曲率から開始して−本質的に無曲率の状態となる(図1A/1Bの段階(5)を参照)ことが確認される。
【0092】
III−N層の結晶成長の開始時またはマスク材料の中間層の堆積の直後(図1のおよそ段階(3)など)の曲率値を「K」または「K」(Kstart)と表し、後の時点(図1の段階(4)など)および特にテンプレートのIII−N層の成長終了までの時点(図1の段階(5)など)の曲率値を「K」または「K」(Kend)と表す場合、成長温度で測定されたテンプレートの曲率差(K−K)は正符号を呈する。好ましくは、K−Kは少なくとも5km−1、より好ましくは少なくとも10km−1であ
る。他方、曲率差(K−K)はあまり大きくないように選択されるのが好ましい。よって、好ましくは50km−1以下、より好ましくは20km−1以下であるべきである。
【0093】
この挙動およびそれと関連する相関性を認識することによって、本発明の方法によりエピタキシャル成長温度で前記テンプレートが湾曲されない、どのような場合でも本質的に湾曲されない(例えば、図1Bの段階(5)に例証される)、または反対に湾曲される(例えば、図1Aの段階(5)に例証される)第1のIII−N層を含むテンプレートを製造することができる。破線で分離された段階(5)および(6)は、成長温度での(段階(5))または室温まで冷却した後(段階(6))の、完全に製造されたテンプレートの各最終状態を例証する。
【0094】
本発明の好ましい実施形態において、任意に行われる核形成工程を含めた第1実施形態における上述の全結晶成長工程は、有機金属気相エピタキシー(Metal−Organic Vapor Phase Epitaxy(MOVPE))により行われる。しかしながら、あるいはまたは組み合わせて、先に述べた結晶成長工程はまたHVPEによって行うこともできる。
【0095】
少なくとも0.1μm、例えば0.1〜10μm、好ましくは2〜7.5μmの範囲内の層厚を有する上述のように製造されたIII−N層を基板上に堆積させる場合、本発明によりテンプレートが付与され、前記テンプレートは更なる層および特に更なるIII−N層のエピタキシャル成長を行うための更なる使用もしくは加工用出発テンプレートとして非常に適し、特にIII−Nバルク結晶(インゴット、ブール)などの著しく厚いIII−N層が後に成長または堆積される際の亀裂形成への傾向という問題を防止する。III−Nバルク結晶などのより厚いIII−N層を成長または堆積させるための好適な技法は、気相エピタキシー(VPE)、特に水素化物気相エピタキシー(EVPE)、アモノサーマル法、昇華などから選択され得る。
【0096】
可能な実施形態による本発明の方法の代表的な過程が、図2に示されている。ここで、下記のパラメーターが経時的プロファイルとしてプロットされている。成長表面の変化(図の下部に任意の単位a.u.で反射の下降振幅のプロファイルによって識別可能)ならびに温度(左縦軸、上側の線は工程温度に相当し、下側の線はウエハー温度に相当する)および成長表面の曲率の変化(右縦軸)。成長表面の曲率の測定は、in situで行われ、LayTec社(ベルリン、ドイツ)製のEpicurveTT曲率測定装置で実行可能である。前記装置により、成長表面の温度、反射および曲率に関するデータを同時に得ることができる。
個々の方法工程または段階が図2に示されている。これらは、図1に示されるものと相応に類似している。図2において「脱離」および「GaN核形成」と示される段階は、図1A/1Bに(1)および(2)と示される段階、故にサファイア基板の付与に相当する。マスク材料を伴う中間層は、図2に示されるように、距離または時間的遅延なしに、故に核形成(GaNまたはAlN核形成:図1Aの段階(3)を参照)直後に、またはそれと近くもしくはごく短い(任意には、非常に短い)成長時間(図1Bの段階(3)を参照)の後で堆積される。「GaN層」という用語で示される段階は、図1の段階(4)〜(5)のエピタキシャルIII−N「結晶成長」に相当する。後に中間層が堆積されるエピタキシャル結晶成長の過程において、Kから始まる曲率は、テンプレートのIII−N(GaN)層の成長終了時により低い曲率K(Kと比較しておよそ20〜30km−1低い)が達成されるまで経時的過程において減少するという技術の実現が、認識される。最終的に、室温まで冷却され得る(図1A/Bの段階(6)を参照)。このような手順により、成長温度での終了時の、つまり、数マイクロメートルの範囲内での厚さで、テンプレートのIII−N(GaN)層は本質的には湾曲しないということが可能になり、例えば、エピタキシャル成長温度での曲率値(K)は、最大で±30km−1、より正確には約±20km−1〜約0の範囲内である。所望であれば、成長温度での終了時のKが負であり、それ故テンプレートが凸形湾曲を呈するように手順を変更することもできる。室温までの冷却後、テンプレートは明らかに凸形湾曲ひいては著しい圧縮応力が増大している。例えば、厚いIII−Nバルク結晶を成長させるために、このテンプレートを所望の時点で再度成長温度まで加熱すると、本質的に湾曲していないまたは反対に湾曲した状態が再び得られ、本発明の驚くべき知見によれば、亀裂形成への傾向が低減された更なるエピタキシャルIII−N成長のための優れた基礎を形成する。
【0097】
図3は、図2とは異なり、出発基板としてのサファイアサンプルをベースとする相当する過程(図2に付与されているような解説およびラベリング)を示しており、マスク材料から作成される中間層がかなり後に(すなわち300nm)堆積される。マスク材料の中間層が15nmの非常に小さい距離で堆積された図2の場合とは対照的に、図3の場合、凹形湾曲が実際に増大する(すなわち、K−Kが<0)。しかしながら、図3による実施形態でも、所与の距離の特定により、得られたテンプレートの曲率度を所望するように意図的に設定することができることを示している。従って、室温まで冷却した後の図3のテンプレートは、図2のテンプレートよりも著しく低い凸形湾曲を有する。特により厚いIII−N層の場合の、更なるエピタキシャルIII−N成長中の亀裂形成を回避することを鑑みると、非常に小さい距離(およそ0nm〜およそ50nm、典型的には代表的な距離15nmの図2を参照)をもってマスク材料の中間層を堆積することは、約300nmの距離をもった図3による結果と比較して非常に有利である。
【0098】
図4は、可能な変形において、本発明の可能な更なる実施形態の場合の、成長表面の曲率(右側の縦軸)および適用温度(左縦軸、上側の線は工程温度に相当し、下側の線はウエハー温度に相当する)の予想されるべき変化を概略的に示す。ここでは、任意に、マスク材料を有する中間層の堆積が、テンプレートのIII−N層の成長中のIII−N成長温度の低下と組み合わさっている。この可能なかつ任意の実施形態において、サファイア異種基板を付与した後(非常に薄いGaNまたはAlN核形成層(初期の高温段階および後続の低温段階における図において識別可能)の堆積も含む)、最初に、成長温度への加熱が再び行われ、次いで任意に−ここでは示されない−再結晶化段階が行われ、その後上述のようにマスク材料を伴う中間層が堆積される。これは、記載されるように、例えば、50nmを超える、または約100nmを超えるおよび/または例えば300nmのIII−N層が既に成長した時点で行われる。更におよび図1および2に例証される基本的な実施形態と対照的に、しかしながら、この中間層堆積と同時にまたは特定の好ましくは短い時間の前もしくは後に、およそ30℃の温度低下(図4に示される成長温度への上昇後およそ30℃の温度ランプ)が適用され、次いでテンプレートのIII−N層の成長がこの低下した温度で継続されて、湾曲の減少に対する更なる寄与が得られる。この組み合わせの全体的な結果において、成長表面でのテンプレートの曲率は、更なる成長の過程において低下することが予想される。すなわち、K−Kは、図4に原則的に示されるように0を著しく超える。
【0099】
テンプレートのIII−N層の継続的な成長に関する温度低下に替えて、更なる方法パラメーターを適用して、関係K−K>0の観測を与え得る。
【0100】
図5A、5Bおよび5Cから、テンプレートのIII−N層において曲率および/または応力を制御して、この基礎上にテンプレート上での亀裂形成に対する傾向が低下された少なくとも1つの更なるIII−N層および任意には厚いバルク結晶を成長させるための更なる可能性および異なる実施形態が明らかになる。図5Bおよび5Cはまた、中間層のない比較例に関する結果(それぞれ線(B)および(E))も包含する。図5A〜Cにおいて、成長温度でのテンプレートのIII−N層の湾曲挙動がその厚さに対してプロットされている。この関連において、図5Aおよび5Bは、相当するテンプレートの製造段階を示しており、ここでは代表的に、成長技術MOVPEが使用されたが、図5Cは、これらの相当するテンプレートを使用するより厚いIII−N(ここではGaN)層の製造における後の段階を示しており、ここではHVPE成長技術が使用されており、これはバルク結晶までのより厚い層を製造するのに非常によく適している。
【0101】
結果は、マスク材料の単一中間層の距離がサファイア出発基板またはその上にある任意の核形成層に対してどのように設定されるかによって湾曲挙動が著しく影響を受けるという一貫した傾向を示している。ここで使用されるサファイア/GaN系において用いられる一連の実験(experimental constellation)に関し、距離がない場合(すなわち、線「0nm」)および距離が「15nm」および「30nm」の場合には条件K−K>0が確実に認められることが明らかであり、約50nmまでの距離の場合もやはり明らかである。50nmを超えるより大きな距離の場合(つまり、60nm、90nmおよび300nmで示されるような場合)、この条件は主として満たされず、しかし驚くべきことに、曲率の増大が比較的強く減衰され、結果として、このような増大をマスク材料の中間層が堆積されない場合(図5Bおよび5Cの比較線(B)および(E))、および特に低温で堆積された核形成層上で成長が行われる場合(LT−GaN−Nucl)(図5Bおよび5Cの比較線(E))よりも小さく維持することができる。本発明による手順は、好ましいテンプレート特性を著しく良好に制御可能であり、かつ、更なるIII−Nエピタキシャル成長のために使用することができるテンプレートの曲率を所望であるように正確に設定することができることを示している。
【0102】
故に、図5Aは、サファイア出発基板(任意にその上に形成された核形成層を任意に有する)に対して制御されて設定される距離でマスク材料の単一の中間層のみが付与されることにより、所望の曲率値を非常に正確に設定かつ制御できることを裏付けている。更に、マスク材料の中間層の距離および成長されたIII−N層の厚さおよび故に成長時間などの関連する要因を観察すると、それぞれ完成された基板に結合されたIII−Nテンプレートにおけるこのような条件は、成長温度での亀裂形成を回避するための代替の解決原理に従ったテンプレートは湾曲されないもしくは本質的に湾曲されない、または反対に湾曲される、つまり、曲率が最大30km−1、より良好には最大20km−1または更に良好には最大10km−1に限定され得ることが分かる。更に、記載されるように、テンプレートのIII−N層の成長の間の温度変動などの更なる方法パラメーターで補足的に差異に影響を及ぼすこと、および所望であれば特定の関係K−K>0が確実に認められることを確認することができる。
【0103】
本発明により得られたテンプレートは、以下に更に記載される有利な特定および特徴を呈する。従って、当該テンプレートは、興味深い商業的な目的であるが、付与、保存または出荷の後直接的または間接的に、以下に記載される更なる工程においてテンプレートとして更に加工することができる。
【0104】
本発明に従って更なるIII−N単結晶を製造するためのテンプレートは、エピタキシャル結晶成長の温度範囲内で湾曲されない、または本質的に湾曲されない、または反対に湾曲する。例えば、テンプレートの基板用に厚さ(dsapphire)430μm(およそ、つまり±20μm)のサファイアと、テンプレートのIII−N層用に厚さ(dGaN)7μm(およそ、つまり±0.5μm)のGaNとを使用または設定する場合、エピタキシャル結晶成長温度で「本質的に湾曲されない」という用語は、エピタキシャル成長温度での曲率値(K)が最大で±30km−1、好ましくは約±10km−1〜約0の範囲内であるように好ましく規定される。「湾曲されない」という用語は、およそ0、例えば0±5km−1、特に0±2km−1のK値を示す。「反対に湾曲される」という用語は、0km−1未満の範囲内、例えば、最大で−150km−1、より好ましくは−25〜−75km−1の範囲内にある成長温度での湾曲値によって規定される。
【0105】
GaN以外の他のIII−N用材料を使用する際、正確な曲率値は変化し得ることに留意されたい。しかしながら、本発明によれば、(本質的に)無曲率または負の曲率の意図した設定が維持される。更に、異なる層厚を設定する場合、曲率値は以下の簡略化されたストーニーの方程式に基づき各層厚に応じて変化してもよく、それによれば、−フィルム(dIII−N)が基板(dsubstrate)よりも著しく薄い場合に限り−以下の関係が当てはまる[式中、R=湾曲半径およびεxx=歪み]:
1/R=6(dIII−N/dsubstrateεxx
非常に薄い層を仮定する場合、εxxは一定であると考えられ、すなわち、層厚が変化する際、系はRの変化と反応する(湾曲の変化から生じるεxxの変化は無視される)。よって、代表的な材料であるサファイアとGaNを使用する場合、上述のもの以外の層厚(dsapphire/dGaN)を設定しなければ、曲率値はストーニーの方程式に基づき以下の式で各層厚に応じて特定される。
T(dGaN;dsapphire)
=KT(7μm;430μm)×(430μm/dsapphire×(dGaN/7μm)
ここで、他の材料を選択する場合、この方程式はdsubstrate/dIII−Nのそれぞれの値により計算される。
【0106】
本発明のテンプレートに関し、これは例えば、430μmのサファイアおよび3.5〜4μm厚のGaN層に対して250km−1の曲率が存在する際、同じプロセスでは330μm厚のサファイアウエハーに対して425km−1の曲率となることを更に意味する。
【0107】
更に、室温での湾曲が、成長温度での湾曲に比べて変化し、おそらくは著しく異なり得ることにも留意されたい。例えば、異種基板としてサファイアを使用すると、テンプレート−主に、異なる結晶性材料の熱膨張係数の差に起因する、成長温度から室温までの冷却の間に起こる塑性変形の結果として−には更に応力(外因性応力によってのみ生成される)がかかる。これは、室温で本発明に従って製造されるテンプレートの最終段階(6)の状況において図1Aおよび図1Bに概略的に例証されており、成長温度での最終段階(5)と比較して、著しく強い負の曲率が存在する。したがって、補足的または代替的に、例えば、サファイアおよびGaNの材料の場合、室温での曲率は、KT(7μm;430μm)<−200km−1、好ましくは−200〜−400km−1、好ましくは−300〜―350km−1の範囲内に特定されることが観察され、ここで再び他の層厚の場合、簡略化されたストーニーの方程式が参照される。
T(dGaN;dsapphire)
=KT(7μm;430μm)×(430μm/dsapphire×(dGaN/7μm)
【0108】
更なる好ましい実施形態において、室温でのテンプレートは、dsapphire=430μmおよびdGaN=3.5μmの場合に−4〜−6mの範囲内の曲率半径を呈する。
本発明に従って得られたテンプレートの製品特性または構造特性を特徴的に記載する別の可能性は、格子定数の歪みまたは応力を特定することである。
【0109】
歪みεxxは、以下のように定義される。
εxx =(格子定数a−格子定数a)/格子定数a
式中、aは結晶における実際の格子定数を表し、aは理論的な理想格子定数を表す。
絶対格子定数を決定するためのX線法は、M.A.MoramおよびM.E.Vickers,Rep.Prog.Phys.72,036502(2009)において詳細に検討されている。それにより、まず、格子定数cに関して、例えば004の対称反射における3軸ジオメトリによる2θスキャンからブラッグの法則を使用して決定が行われる。
【数1】
V.Darakchieva,B.Monemar,A.Usui,M.Saenger,M.Schubert,Journal of Crystal Growth 310(2008)959−965による理想格子定数は、c=5.18523±0.00002Aである。次いで、格子定数aの決定が、例えばM.A.MoramおよびM.E.Vickers,Rep.Prog.Phys.72(2009)036502にも記載される以下の方程式を用いて、2θスキャンにおいて例えば−105の非対称反射hklから行われる。
【数2】
V.Darakchieva,B.Monemar,A.Usui,M.Saenger, M.Schubert,Journal of Crystal Growth 310(2008)959−965によれば、応力を受けていないGaNに関する理想格子定数aは、a=3.18926±0.00004Aであると仮定することができる。内因性および外因性応力の現象の背景について、とりわけ格子定数についての考慮については、Hearne et al.,Appl.Physics Letters74,356−358(2007)を参照。
【0110】
更に、以下の応力σxxによって特性を付与することができる。

σxx=M・εXX (フックの式)

式中、Mは二軸弾性係数を表す。応力σxxの決定は、I.Ahmad,M.Holtz,N.N.FaleevおよびH.Temkin,J.Appl.Phys.95,1692(2004)などに記載されるように、ラマン分光法により容易に可能である。ここでは、362GPaの二軸弾性係数が値として文献から得られ、359GPaという非常に似た値をJ.Shen,S.Johnston,S.Shang,T.Anderson,J.Cryst.Growth 6(2002)240から導き出すことができる。よって、二軸弾性係数Mの好適かつ一貫した値は、約360GPaである。
本発明のテンプレートは、エピタキシャル結晶成長の温度範囲内でεXX≦0(すなわち、εXX=0を含む)、しかし特にεXX<0の値を呈する。この値は、曲率のin situ測定から直接決定することができる。
【0111】
マスク材料を伴う中間層の存在に加え、本発明によるテンプレートは更に、室温で圧縮応力σXX<−0.70GPaを呈することができ、および/または室温でのテンプレートの歪みεXXは、εXX<0の値、好ましくは0>εxx≧−0.003の範囲内、より好ましくは−0.0015≧εXX≧−0.0025(または−0.0015>εXX≧−0.0025)の範囲内、特に−0.0020≧εXX≧−0.0025の範囲内に設定することができる。
【0112】
気相エピタキシー用装置と組み合わせて適用できる好適な曲率測定装置は、例えば、Laytec AG(ドイツ、ベルリン、ゼーゼーナーストラッセ(Seesener Strasse))の曲率測定装置である(例えば、DE102005023302 A1およびEP000002299236 A1を参照)。これらの曲率測定装置は、MOVPE、HVPEまたはMBE(分子線エピタキシー)などの利用可能な気相エピタキシー用装置と組み合わせるようによく適合され、更にウエハー表面での温度測定を可能にする。
【0113】
従って、エピタキシャル結晶成長後、上述の特性に基づき、更なるエピタキシャル成長工程において傑出した品質および特徴を有する結晶を製造するのに適するテンプレートが得られる。よって、本発明によるテンプレートは更なる使用に非常に適しており、更なる使用のために付与、保存または出荷されてもよいし、方法全体において直接更に使用されてもよい。
【0114】
本発明の更なる態様は、III−N単結晶を製造する方法であって、IIIがAl、GaおよびInから選択される元素周期表第3主族の少なくとも1つの元素を表し、前記方法が、 aa)サファイアを含む異種基板と、少なくとも1つのIII−N結晶層とを含むテンプレートを付与する工程であって、エピタキシャル結晶成長の温度範囲内にあるテンプレートが全くもしくはほぼ湾曲を呈さないか、または反対の湾曲を呈するように出発基板と少なくとも1つのIII−N結晶層が形成される工程、
bb)エピタキシャル結晶成長を行うことによって、aa)によるテンプレート上に更なるIII−N結晶を形成し、任意にはIII−Nバルク結晶を製造する工程、
cc)任意に、III−N単結晶またはIII−Nバルク結晶と異種基板とを分離する工程、
を含む方法である。
【0115】
本発明のこの態様は、工程aa)およびbb)において特定される前提条件により亀裂形成の危険性を最小限に抑えるまたは完全に排除するという代替の解決原理から始まる。
好ましい実施形態において、工程aa)で付与されるテンプレートは、上述のマスク材料を伴う中間層を含み、この点に関し、このような中間層を呈するテンプレートの形成についての上述の説明が参照される。しかしながら、代替の解決原理に従う本発明のこの態様において、このような中間層の存在は必ずしも必須ではない。その理由は、本書の他の部分に記載されるように、工程aa)で規定される湾曲条件が代替的に他の条件、特定的にはテンプレートのIII−N成長中の好適な温度制御および温度変動によっても調節できるからである。
【0116】
本発明による格子変形および圧縮応力を加えた結果として、工程aa)において付与されるテンプレートの状態は、成長温度でのテンプレートのIII−N結晶がεXX≦0(すなわち、εXX=0を含む)の値、しかし特にεXX<0の値を呈するという点で規定することができ、ここで、当該値は好ましくは0>εxx>−0.0006の範囲内、より好ましくは−0.0003>εxx>−0.0006にある。室温ではσxx<−0.70GPaの圧縮応力が存在し得る。本発明のテンプレートの室温での歪みεxxは、好ましくは0>εxx≧−0.003の範囲内、より好ましくは−0.0015≧εxx≧−0.0025(または−0.0015>εxx≧−0.0025)の範囲内、特に−0.0020≧εxx≧−0.0025の値を呈する。
【0117】
本発明の更なる実施形態において、更なるIII−N結晶を形成するために本発明に従って得られたテンプレート上で更なるエピタキシャル結晶成長を行うことによって−工程aa)およびbb)の間に中断なしまたはあり−得られるIII−N単結晶が製造される。更に、エピタキシャルIII−N結晶成長は、上述の結晶成長温度とは別個に選択し得る成長温度で行うことができる。
【0118】
また、テンプレート上での更なる結晶成長の他の条件もここで自由に選択できる。よって、III成分が所望のように選択および変更できるIII−N材料を成長させることができる。したがって、少なくとも1つ(任意にはそれ以上)のGaN、AlN、AlGaN、InN、InGaN、AlInNまたはAlInGaN層を堆積させ、それによってより厚いIII−N層またはIII−N単結晶を製造することができる。好ましくは、テンプレートのIII−N結晶層ならびにその上にエピタキシャル成長されたIII−N結晶は完全な二成分系、例えばGaN、AlNまたはInNを形成するか、またはテンプレートのIII−N結晶層は二成分系、特にGaN(少なくとも主に、核形成層が異なる材料、例えばAlNなどから任意に構成され得るため)であり、その上にエピタキシャル成長されたIII−N結晶は、自由に選択できる二成分系または三成分系III−N材料、やはり特に二成分系GaNである。
【0119】
工程bb)は工程aa)のすぐ後に行われてもよく、あるいは、工程aa)とbb)の間で本方法を中断してもよい。これらの工程間で反応器を変更することが可能である。これにより、各工程に最適な条件を選択するために、工程aa)に従って付与されるテンプレートの製造に使用される方法とは異なる成長方法によって工程bb)においてIII−N結晶を成長させることが可能になる。よって、本発明により製造されたテンプレート上での更なるエピタキシャル結晶成長は、HVPEにより行われるのが好ましい。HVPE条件下での工程bb)の有利な選択によって成長率が向上し、それに応じてより厚い層を得ることができる。しかしながら、テンプレートの形成および後続の更なるエピタキシャルIII−N層の堆積を含む成長全体に関連する方法工程は全て、工程aa)およびbb)が同一の反応器内で行われるように、単一の装置内において特定の成長技術を用いて、例えばHVPEによってのみ行われることができる。
【0120】
本発明によれば、上述の実施形態によるIII−N単結晶を製造する方法において、付与されたテンプレート上でのエピタキシャル結晶成長は、エピタキシャル成長完了後に亀裂形成の危険性が著しく低減された状態で、少なくとも1mm、好ましくは少なくとも5mm、より好ましくは少なくとも7mmおよび最も好ましくは少なくとも1cmの層厚を有する非常に良好な結晶品質の厚いIII−N単結晶が得られるように行うことができる。亀裂がないので、バルク結晶の厚さ全体を有利に使用することができる。
【0121】
III−N単結晶を製造するためのエピタキシャル結晶成長完了後、任意に、亀裂のないIII−N単結晶を基板から分離することができる(任意工程cc))。好ましい実施形態において、これは、結晶成長温度からの冷却中などに、自己分離によって行われる。更なる実施形態において、III−N単結晶と基板との分離は、研削、挽切またはリフトオフ法によって行うことができる。
【0122】
エピタキシャル成長されたIII−N単結晶が十分に大きい厚さを呈し、いわゆるIII−Nブールまたはインゴットが得られる場合、好適な方法を使用することによってこの単結晶を分離して複数の個々の薄いディスク(ウエハー)を形成することができる。単結晶分離は、III−N単結晶を切断または挽切するための一般的な方法を含む。このようにして得られたウエハーは、光電成分および電子成分などの半導体素子および成分を製造するための基礎として非常に適している。本発明に従って製造されるウエハーは、電力成分、高周波成分、発光ダイオードおよびレーザーとしての使用に良好に適している。
【0123】
全ての方法段階において、特にIII−Nブールまたはインゴットの実際のエピタキシャル成長されたIII−N層のために、および、それに応じて得られたウエハーのIII−N単結晶中に、ドーパントを包含させることができる。好適なドーパントは、n−ドーパントならびにp−ドーパントを含み、Be、Mg、Si、Ge、Sn、Pb、SeおよびTeからなる群から選択される元素を含み得る。半単離材料のために、好適なドーパントは、C、Fe、MnおよびCrからなる群から選択される元素を含み得る。
【0124】
更に好ましい実施形態において、亀裂のないIII−N単結晶は窒化ガリウムから構成され、この結晶は成長方向に、<aの範囲内、特に0.31829nm<a≦0.318926nmの範囲の格子定数aを呈する。GaNの格子定数aの参照値として、ここで、a=0.318926nmの値を想定することができる(V.Darakchieva,B.Monemar,A.Usui,M.Saenger,M.Schubert,Journal of Crystal Growth 310(2008)959−965を参照)。これは、およそ0≦εzz<+0.0001の範囲内の格子定数cに相当する。
【実施例1】
【0125】
前処理した(脱離および核形成に供した)サファイア上での成長技法としてMOVPEを使用し、以下に詳細に説明する。ここで付与される温度は、ヒーターの公称設定温度に関連する。テンプレートまたは結晶での温度はより低く、幾つかの場合においては最大で約70K低い。(図2および3を参照。ここでは、ヒーター温度が上側の線で示され、ウエハー支持体の測定温度が下側の先で示されている)。
【0126】
反応器:
MOVPE反応器 Aixtron200/4RF−S、単一ウエハー、水平

異種基板:
c面サファイア基板、m方向にオフカット0.2°
430μm厚
未構造化

脱離工程(図1(1);100)
反応器圧力:100mbar
加熱:7分で400℃から1200℃
反応器温度:1200℃
プロセス温度時間:H雰囲気中10分
960℃まで冷却

核形成工程(図1(2);101)
ガス流量:25sccm トリメチルアルミニウム(TMAl)、バブラー:5℃、250sccm NH
960℃まで冷却
バルブの開放
核形成:10分
1.6slmへのアンモニア流量の増大

Tランプ:任意の結晶成長(図1(2)〜(3)前;103)
40秒で960℃から1100℃まで加熱
反応器圧力:150mbar、H雰囲気
ガス流量:任意に16〜26sccm トリメチルガリウム(TMGa)、2475sccm NH
結晶成長時間:0〜10分(0〜300nmに相当)

SiN堆積(図1(3);102)
ガス流量:0.113μmol/分 シラン、1475sccm NH
TMGaなし
圧力:150mbar
温度:1100℃
時間:3分

更なる結晶成長:(図1(4);104)
1100℃
反応器圧力:150mbar、H雰囲気
ガス流量:26sccm TMGa、 2000sccm NH
結晶成長時間:90〜240分(3〜10μmのGaN厚に相当)

成長終了および冷却:(図1(5)〜(6))
加熱およびTMGa流のスイッチングオフ
NHの低下:40秒で2000sccmから500sccmまで
スイッチングオフ:700℃下でNH
スイッチングオーバー:NH流からN流へ
【0127】
図5Aは、成長温度(1350°K)での湾曲の過程が示されており、これは成長されたGaN層の厚さに対してプロットされており、よって、時間的経過において、AlN核形成層に対するSiN(Si)の距離に従って識別されている。この点に関し、ゼロ点はIII−N層104A、104Bの継続的な成長の開始(すなわち、図1A/1Bにおける段階(3)の後であって段階(4)の前または間)に関連する。湾曲挙動は、意図的かつ正確に制御できる。以下の表1は、各々が約7μmの厚さを有するテンプレートの製造終了時の、in situのすなわち成長温度で測定されたεXX値、室温で測定された曲率値C(km−1)、およびCから決定された室温でのεXX値を示す。
【0128】
【表1】
【0129】
実施例2および比較例
核形成層上に直接(サンプルA)または非常に短い(15〜30nm;サンプルD)もしくはより大きい(300nm;サンプルC)距離でSiN中間層を有するGaN層が堆積される実施例1に従って、またはGaNがSiNなしに(サンプルB)または低温GaN核形成層上に(サンプルE)成長された比較例に従って製造された、選択されたテンプレート上に、実施例1と同様に、すなわち、図5Bに示されるようにおよそ7μmまでのMOVPE成長の範囲内で、または図5Cに示されるようにおよそ25μmまでの更なるHVPE成長を行っている間、湾曲を形成した(followed)。図5Bおよび5Cの結果は、SiN中間層のない比較例のテンプレート(B)および(E)に比べて本発明によるテンプレート(A)、(C)および(D)の湾曲の設定および挙動に関して著しく良好な結果を重ねて示している。
【0130】
更なる比較例
更なる比較例においても、マスク材料の中間層が堆積されないことを除き、同様の実験条件を使用することができる。
【0131】
図6は、更なる比較例におけるサファイア上でのGaNのMOVPE成長の典型的なin situデータを示す。ここでは、3つの異なるサファイア基板についてのプロセス中の湾曲の生成が下図に示されている(Brunner et al.、J.Crystal Growth 298,202−206(2007)を参照)。矢印は読み取るべき曲率値KおよびKを示している。曲率Kが50km−1、曲率Kが70km−1であるときに、K−K<0となる。すなわち、GaN層は成長温度で内因的に引張応力を受ける。冷却によって、GaN層のこの応力に外因性圧縮応力が加えられる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6