【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例に記載の濃度は、特に断りのない限り質量濃度とする。
【0033】
[実施例1]本発明の残香性向上剤の効果 フローラル調香料組成物(1)
様々なロタンドンおよびMPFの質量比および濃度範囲における残香性向上効果を確認した。
【0034】
(1)様々な質量比における残香性および香気特性
市販のローズ精油に、下記表1の濃度となるようにロタンドンおよびMPFを配合して、香料組成物を調製した。各香料組成物について、10名のよく訓練されたパネラーによる残香性および香気特性に関する評価を行った。評価では以下の基準に従って点数付けを行った。
(残香性の評価基準)
調合直後の各香料組成物を匂い紙に含浸させ、その匂い紙を室温放置して1日後の、市販のローズ精油(すなわち、ロタンドンおよびMPFを配合していないもの、以下、このようなものを無添加品とも称する)と比べた各香料組成物の香気の強さについて、
−:変わらない
+:やや強い
++:強い
+++:非常に強い
のいずれかを選択した。
(香気特性の評価基準)
調合直後の各香料組成物を匂い紙に含浸させ、その匂い紙を室温放置して1日後の、市販のローズ精油(無添加品)と比べた各香料組成物の香気について、
5点:ローズ精油と比べて天然感が顕著に増強されており、バラ生花をはっきりと想起させる
4点:ローズ精油と比べて天然感が増強されており、バラ生花によく似た香りを感じる
3点:ローズ精油と比べて天然感がやや増強されており、バラ生花にやや似ている
2点:ローズ精油と大差ない
1点:ローズ様香気のバランスが崩れて違和感がある
のいずれかの点数を選択した。
すなわち、残香性については「+」の数が多いほど高いことを意味し、香気特性については点数が高いほど、バラ生花様の天然感を明確に感じられる優れた香気特性であることを意味する。10名のよく訓練されたパネラーの平均的な評価結果を下記表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
上記表1に示すように、1:100〜100:1において、無添加品のローズ精油より残香性も天然感も向上されたと評価され、さらには、1:50〜50:1の範囲内が好ましく、1:5〜30:1の範囲内がより好ましいと評価された。
【0037】
(2)様々な濃度における残香性および香気特性
次いで、上記(1)で残香性および天然感が向上したと評価されたロタンドン:MPF=1:1の質量比において、ロタンドンおよびMPFの濃度を下記表2に示すように様々に変えて、上記した市販のローズ精油に配合して香料組成物を調製した。そして、各香料組成物の残香性と香気特性について、上記(1)と同様の評価を行った。結果を下記表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
上記表2に示すように、濃度1pptにおいても残香性が向上されて天然感も感じられると評価され、一方で5000ppmではロタンドンおよびMPFの香気の影響が大きく違和感があるという評価であった。
【0040】
[実施例2] 本発明の残香性向上剤の効果 フローラル調香料組成物(2)
下記表3に示す一般的な処方にて、ローズ様香気を有する基本調合香料組成物を調製した。
【0041】
【表3】
【0042】
この基本調合香料組成物(比較品1)に、本発明の残香性向上剤として、ロタンドンとMPFとを、ロタンドンの質量濃度およびMPFの質量濃度が下記表4に示す数値となる量で配合して、本発明に係る高残香性香料組成物(本発明品1、2)を調製した。また、比較品として、ロタンドンまたはMPFを単独で下記表4に示す質量濃度となるように添加した香料組成物(比較品2〜5)も調製した。
【0043】
次いで、得られた各香料組成物の残香性および香気特性について評価を行った。具体的には、匂い紙の先端に含浸させた調合直後の各香料組成物に対して、10名のよく訓練されたパネラーによって、香気の強さの評価および香気特性の官能評価を行ない、さらに、これらの匂い紙を室温にて1日間放置した後、前記パネラー10名によって香気の強さの評価および官能評価を再度行なった。香気の強さについては、匂い紙含浸直後の本発明品1の香気の強さを10点満点、香りを感じられない場合を1点(最低点)として、10名のパネラーの点数の平均値を算出した。1日間の室温放置後の点数が大きくかつ匂い紙への含浸直後との差が小さいほど、残香性が高いことを意味する。10名のパネラーの平均的な評価結果を、表4に示す。
【0044】
【表4】
【0045】
上記表4に示すように、本発明品はいずれも、どの比較品と比べても、匂い紙室温放置1日後の香気の強さが格段に高く、よって本発明の残香性向上剤が残香性を顕著に向上することが確認された。すなわち、匂い紙放置1日後において、比較品1(無添加品)の香気の強さが5.0であり、それに対して本発明品1の香気の強さは8.0(すなわち残香性向上効果としての点数差が3.0)であり、ロタンドンまたはMPFを単独で使用した比較品の残香性向上効果の合計より有意に高く、ロタンドンおよびMPFの併用によって相乗効果があることが確認された。本発明品2についても同様である。本発明品1および2はまた、室温放置1日後において匂い紙含浸直後の香気特性をよく維持していた。加えて、本発明品1も2も、華やかで甘いフローラルな香気が感じられてバラ生花の花弁を想起させる天然感に優れており、匂い紙への含浸直後および室温1日間放置後のどちらにおいても、どの比較品と比べても優れた香気特性を有することが確認された。
【0046】
[実施例3]本発明の残香性向上剤の効果 フローラル調香料組成物(3)
市販のローズ精油に、本発明の残香性向上剤として、ロタンドンおよびMPFを下記表5に示す濃度となるように配合して、本発明に係る高残香性香料組成物(本発明品3、4)を調製し、さらに、前記ローズ精油に、ロタンドンまたはMPFを単独で下記表5に示す濃度となるように配合して、比較品としての香料組成物を調製した(比較品7〜10)。
【0047】
次いで、市販のローズ精油(無添加品、比較品6)および得られた各香料組成物について、よく訓練されたパネラー10名による残香性評価および香気の官能評価を行った。残香性の評価は、実施例2と同様に行った(ただし、本発明品3の匂い紙含浸直後の香気の強さを10とした)。香気の官能評価は、実施例2と同様に、匂い紙含浸直後および室温での1日間の放置後の香気特性について、前記パネラー10名による官能評価を行い、各香気について、下記の基準に従って点数付けを行った。点数が高いほど、バラ生花様などの天然感を明確に感じられ、優れた香気特性であることを意味する。
(香気の評価基準)
5点:バラ生花をはっきりと想起させ、フレッシュな天然感を感じる
4点:バラ生花によく似た香りを感じて、天然感がある
3点:バラ生花にやや似ている
2点:ローズ調の香気は感じるが、バラ生花様とはいえない
1点:ローズ調の香気を感じられない
評価結果を下記表5に示す。
【0048】
【表5】
【0049】
上記表5に示すように、ロタンドンおよびMPFを併用する本発明品3、4は、比較品6(無添加品)より残香性が格段に高く、さらには、併用による相乗効果によってロタンドンまたはMPFを単独で使用する比較品7〜10と比べても残香性が格段に高く、さらに天然感にも優れていることが確認された。
【0050】
[実施例4]本発明の残香性向上剤の効果 フローラル調香料組成物(4)
下記表6に示す一般的な処方にて、ジャスミン様香気を有する基本調合香料組成物を調製した。
【0051】
【表6】
【0052】
この基本調合香料組成物(比較品11)に、本発明の残香性向上剤として、ロタンドンおよびMPFを下記表7に示す濃度となるように配合して、本発明に係る高残香性香料組成物(本発明品5、6)を調製した。また、比較品として、ロタンドンまたはMPFを下記表7に示す濃度となるように配合して、香料組成物を調製した(比較品12、13)。
【0053】
そして、本発明品および比較品の残香性および香気特性について、実施例2と同様にして、10名のよく訓練されたパネラーによる官能評価を行なった(ただし、本発明品5の匂い紙含浸直後の香気の強さを10とした)。その結果を下記表7に示す。
【0054】
【表7】
【0055】
上記表7に示すように、ロタンドンおよびMPFを併用する本発明品5、6は、比較品11(無添加品)より残香性が格段に高く、さらには、併用による相乗効果によってロタンドンまたはMPFを単独で使用する比較品12、13と比べても残香性が格段に高く、さらに香気特性も優れていることが確認された。
【0056】
[実施例5]本発明の残香性向上剤の効果 柑橘調香料組成物
下記表8に示す一般的な処方にて、ライム様の香気を有する基本調合香料組成物を調製して、比較品とした(比較品14)。
【0057】
【表8】
【0058】
また、下記表9に示す一般的な処方にて、オレンジ様の香気を有する基本調合香料組成物を調製して、比較品とした(比較品17)。
【0059】
【表9】
【0060】
次いで、これらの比較品に、本発明の残香性向上剤として、ロタンドンおよびMPFを下記表10に示す濃度となるように配合して、本発明に係る高残香性香料組成物を調製した(本発明品7〜10)。また、比較品として、ロタンドンまたはMPFを単独で下記表10に示す濃度となるように配合して香料組成物を調製した(比較品15、16、18、19)。
【0061】
各香料組成物の残香性および香気特性について、実施例2と同様にして、よく訓練されたパネラー10名による評価を行った(ただし、香調がライムの場合は本発明品7、香調がオレンジの場合は本発明品9の匂い紙含浸直後の香気の強さを10とした)。パネラー10名の平均的な評価結果を表10に示す。
【0062】
【表10】
【0063】
上記表10に示すように、ライム様香料組成物において、ロタンドンおよびMPFを併用する本発明品7、8はいずれも、比較品14(無添加品)より残香性が格段に高く、さらには、併用による相乗効果によってロタンドンまたはMPFを単独で使用する比較品15、16と比べて残香性が格段に高く、さらに香気特性も優れていることが確認された。同様に、オレンジ様香料組成物においても、ロタンドンおよびMPFを併用する本発明品9、10は比較品17〜19のいずれと比べても残香性が格段に高く、香気特性も優れたものであった。
【0064】
[実施例6]本発明の残香性向上剤の効果 フルーツ調香料組成物
下記表11に示す一般的な処方にて、パイナップル様の香気を有する基本調合香料組成物を調製して、比較品とした(比較品20)。
【0065】
【表11】
【0066】
また、下記表12に示す一般的な処方にて、ピーチ様の香気を有する基本調合香料組成物を調製して、比較品とした(比較品23)。
【0067】
【表12】
【0068】
これらの比較品に、本発明の残香性向上剤として、ロタンドンおよびMPFを下記表13に記載の濃度となるように配合して、本発明に係る高残香性香料組成物を調製した(本発明品11〜14)。また、比較品として、ロタンドンまたはMPFを単独で下記表13に示す濃度となるように配合して香料組成物を調製した(比較品21、22、24、25)。そして、各調合香料組成物の残香性および香気特性について、実施例2と同様にして、よく訓練されたパネラー10名による評価を行った(ただし、香調がパイナップルの場合は本発明品11、香調がピーチの場合は本発明品13の匂い紙含浸直後の香気の強さを10とした)。パネラー10名の平均的な評価結果を下記表13に示す。
【0069】
【表13】
【0070】
上記表13に示すように、パイナップル様香料組成物において、ロタンドンおよびMPFを併用する本発明品11、12はいずれも、比較品20(無添加品)より残香性が格段に高く、さらには、併用による相乗効果によってロタンドンまたはMPFを単独で使用する比較品21、22と比べて残香性が格段に高く、さらに香気特性も優れていることが確認された。同様に、ピーチ様香料組成物においても、ロタンドンおよびMPFを併用する本発明品13、14は比較品23〜25のいずれと比べても残香性が格段に高く、香気特性も優れたものであった。
【0071】
[実施例7]本発明の残香性向上効果 洗浄剤用香料組成物
本発明の残香性向上剤を配合した香料組成物で賦香した衣類用洗浄剤を用いて洗濯の模擬実験を行い、残香性を確認した。
【0072】
(衣類用洗浄剤を用いた洗濯の模擬実験)
市販の衣類用液体洗浄剤に、下記表14に示すように、実施例2、4で調製したフローラル調の本発明品1および5(それぞれ、ローズ様の高残香性香料組成物およびジャスミン様の高残香性香料組成物)、または本発明の残香性向上剤を配合していない無添加品の比較品1および11(それぞれ、ローズ様基本調合香料組成物およびジャスミン様基本調合香調組成物)を、それぞれ、衣類用液体洗浄剤全体量に対して1質量%となるように配合して当該洗浄剤を賦香し、4種類の被験洗浄剤を調製した。
【0073】
【表14】
【0074】
一方で、サラシ布を35cm×70cm(24.85〜25.05g)に裁断し、アルコール・アセトン・水洗乾燥したものをさらにエーテル洗浄・乾燥した。次いで、2リットルのビーカーに温度計と回転子を入れ、水2Lを入れて29℃に調整し、各被験洗浄剤2.8gを入れ、攪拌溶解して洗浄剤溶液を得た。この溶液に上記のサラシ布を秤量し、投入し、5分間手で撹拌し、その後流水で2分間すすぎ、布を絞って重量を測定し、水分量が50gとなるように調整してからハンガーに掛け、6時間、恒温恒湿の室内で乾燥させた。
【0075】
乾燥させた布の香気について、よく訓練されたパネラー10名による官能評価を行った。官能評価は、以下に説明するように残香性および香気特性について行った。
(残香性の確認)
衣類用洗浄剤の賦香時点での当該洗浄剤の香りの強さを5点満点として、その香りの強さと比較して、乾燥させた布の香りの強さを以下の基準に従って点数付けした。
5点:同等であった
4点:やや弱くなった
3点:弱くなった
2点:かなり弱くなった
1点:香りが感じられない
(香気特性の確認)
乾燥させた布の香りを嗅ぎ、生花様の天然感を感じられるかについて、下記の基準で点数付けした。
5点:バラまたはジャスミンの生花をはっきりと想起させ、フレッシュな天然感を感じる
4点:バラまたはジャスミンの生花によく似た香りを感じて、天然感がある
3点:バラまたはジャスミンの生花にやや似た、ローズまたはジャスミン調の香気を感じる
2点:ローズまたはジャスミン調の香気は感じるが、バラまたはジャスミン生花様とはいえない
1点:ローズまたはジャスミン調の香気を感じられない
すなわち、残香性、香気特性ともに、評価点数が高いほど優れていることを意味する。10名のパネラーの平均的な評価結果を下記表15に示す。
【0076】
【表15】
【0077】
上記表15に示すように、本発明品はいずれも、衣類用洗浄剤に配合した際にも、比較品と比べて、高い残香性と優れた天然感を付与できることが確認された。
【0078】
以上の実施例1〜7で確認されたように、本発明の残香性向上剤は、残香性を格段に向上し、かつ優れた天然感を付与可能な香料組成物として、種々の調合香料組成物や消費財への応用が可能となる優れた特性を有するものである。