特許第6576973号(P6576973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576973
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】残香性向上剤
(51)【国際特許分類】
   C11B 9/00 20060101AFI20190909BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20190909BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20190909BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20190909BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20190909BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   C11B9/00 P
   A61Q13/00 101
   A61K8/35
   A61K8/49
   C11B9/00 Z
   A23L27/00 Z
   A61L9/01 Q
   A61L9/01 V
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-85853(P2017-85853)
(22)【出願日】2017年4月25日
(65)【公開番号】特開2018-184507(P2018-184507A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2018年9月10日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年10月30日に第60回香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】000214537
【氏名又は名称】長谷川香料株式会社
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】大橋 輝久
(72)【発明者】
【氏名】中西 啓
(72)【発明者】
【氏名】小西 俊介
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−025182(JP,A)
【文献】 特開2016−198025(JP,A)
【文献】 特開2016−198026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 1/00−15/00
C11C 1/00− 5/02
A23L 9/00− 9/20
A23D 7/00− 9/06
A23L27/00−27/60
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
FSTA(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロタンドンおよび4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンを有効成分として含有する、残香性向上剤。
【請求項2】
請求項1に記載の残香性向上剤を、ロタンドンとして質量濃度で0.1ppt〜1000ppm、および4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンとして質量濃度で0.1ppt〜1000ppm含有する、香料組成物。
【請求項3】
香調がフローラル調、シトラス調、またはフルーツ調である、請求項2に記載の香料組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の残香性向上剤を、ロタンドンとして質量濃度で0.001ppt〜10ppm、および4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンとして質量濃度で0.001ppt〜10ppm含有する、消費財。
【請求項5】
香調がフローラル調、シトラス調、またはフルーツ調である、請求項4に記載の消費財。
【請求項6】
請求項1に記載の残香性向上剤を香料組成物または消費財に添加することを含む、香料組成物または消費財の残香性向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロタンドンおよび4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンを有効成分として含有する残香性向上剤に関し、さらには、当該残香性向上剤を配合した残香性の高い香料組成物、および当該残香性向上剤または当該香料組成物を配合した残香性の高い消費財に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食品、香粧品、医薬品、保健衛生品など様々な消費財に対する消費者の要求は、製品の香気にも及んでいる。これまで、消費者の天然志向の高まりによって天然感やフレッシュ感に富む香気が求められてきたが、昨今、これらに加えてさらに、香気が長時間持続する、残香性の高い製品への要求が高まっている。
【0003】
これまで、高い残香性を得るために、様々な処方の香料組成物が提案されている。例えば、香料化合物の揮発を抑制するなどの効果を有する化合物、いわゆる香料保留剤を香料組成物に配合することが提案されてきた(特許文献1〜3)。しかし、各香料保留剤は、香料保留剤が有する香気によって香料組成物の香気特性の劣化が起こる、適用できる香調が限られている、などの問題がある。また、柔軟剤用の高残香性香料組成物として、特定のLogP値を有する香料化合物を採用した処方の、持続性香料素材が提案されている(特許文献4)。また、LogP値だけでは残香性の高い香料化合物の組み合わせは特定できないとして、洗濯試験と香気官能評価とを行って残香性の高い香料化合物の組み合わせを特定して得られた処方の香料組成物も提案されている(特許文献5)。しかし、これらの香料組成物は柔軟剤に好まれる香調に限られ、かつ衣類に残った際の残香性のみに着目したものであり、限定的な用途であって消費者の多様な要求に広くかつ十分に対応できるものではない。
【0004】
従って、残香性向上効果が高く、かつ汎用性のある残香性向上剤の開発が待たれている。
【0005】
一方で、本発明の残香性向上剤の有効成分であるロタンドン(Rotundone、(3S,5R,8S)−3,8−dimethyl−5−(prop−1−en−2−yl)−3,4,5,6,7,8−hexahydroazulen−1(2H)−one)は生薬として香附子(こうぶし)と呼ばれるカヤツリグサ科のハマスゲの塊茎より単離・構造決定された化合物であり(非特許文献1)、中国では漢方薬、日本では香道で用いられる沈香(Agarwood)中の成分としても知られている(非特許文献2)。また、虫に対して忌避効果を持つことから、害虫忌避剤(特許文献6)、害虫防除剤(特許文献7)としての利用も報告されている。近年では、ロタンドンはスパイシー、コショウ様香気が特徴であるシラーズワインおよびそのワイン用のブドウの、スパイシー、コショウ様香気の原因成分であること、黒コショウや白コショウには数ppm含有され、それらの重要香気成分であること、マジョラム、オレガノ、ローズマリー、バジル、タイムなどのスパイス中にも微量含まれていることが報告されている(非特許文献3)。また近年、ロタンドンの柑橘香味の増強効果(特許文献8)および果実香味の増強効果(特許文献9)が確認されている。
【0006】
本発明のもうひとつの有効成分である4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノン(4−(4−methyl−3−pentenyl)−2(5H)−furanone)は、コナダニの分泌物(非特許文献4)などとして知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許5645389号公報
【特許文献2】特許5829438号公報
【特許文献3】特許5911480号公報
【特許文献4】特許3102893号公報
【特許文献5】特許4220233号公報
【特許文献6】特開平4−321613号公報
【特許文献7】特開平6−16516号公報
【特許文献8】特開2016−198025号公報
【特許文献9】特開2016−198026号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Tetrahedron Letters、1967年、8巻47号、p.4661−4667
【非特許文献2】Phytochemistry、1991年、30巻10号、p.3343−3347
【非特許文献3】Journal of Agricultural and Food Chemistry、2008年、56巻10号、p.3738−3744
【非特許文献4】Biosci. Biotechnol. Biochem. 2002年、66巻1号、p.135−140
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、香料組成物や、飲食品、香粧品などの消費財に配合することでこれらの残香性を向上することのできる、新規な残香性向上剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意研究するなかで、ロタンドンと4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンとを香料組成物に配合したところ、高い残香性が得られ、かつ、それぞれ単独で配合した場合よりも顕著に高い残香性が得られるという、これまで示唆も報告もない全く予想外の結果が得られた。本発明者らは更に研究を重ね、ロタンドンと4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンとを有効成分とする香料組成物を、残香性向上剤として様々な香調の香料組成物や飲食品、香粧品などの各種消費財に配合することで、これらの残香性を格段に向上させ、かつ、天然感、フレッシュ感、ボリューム感などの増強によって香気特性も向上できることを見出した。
【0011】
かくして、本発明は以下のものを提供する。
[1] ロタンドンおよび4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンを有効成分として含有する、残香性向上剤。
[2] [1]に記載の残香性向上剤を、ロタンドンとして質量濃度で0.1ppt〜1000ppm、および4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンとして質量濃度で0.1ppt〜1000ppm含有する、香料組成物。
[3] 香調がフローラル調、シトラス調、またはフルーツ調である、[2]に記載の香料組成物。
[4] [1]に記載の残香性向上剤を、ロタンドンとして質量濃度で0.001ppt〜10ppm、および4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンとして質量濃度で0.001ppt〜10ppm含有する、消費財。
[5] 香調がフローラル調、シトラス調、またはフルーツ調である、[4]に記載の消費財。
[6] [1]に記載の残香性向上剤を香料組成物または消費財に添加することを含む、香料組成物または消費財の残香性向上方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ロタンドンと4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノンとを有効成分とする新規な残香性向上剤を提供するものである。本発明の残香性向上剤は、様々な香調の香料組成物や各種消費財に配合することで、その香料組成物や各種消費財の残香性を格段に向上させることができ、さらには、その香料組成物や各種消費財の香気特性を、天然感、フレッシュ感、ボリューム感などの増強によって向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本発明の残香性向上剤の有効成分)
本発明の残香性向上剤は、ロタンドンと、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−2(5H)−フラノン(4−(4−methyl−3−pentenyl)−2(5H)−furanone、以下、MPFとも略称する)と、の2つの化合物を有効成分とすることを特徴とする。ロタンドンは下記式(1)で、MPFは下記式(2)で表される化合物である。
【0014】
【化1】
【0015】
【化2】
【0016】
本発明の2つの有効成分は、様々な方法によって入手することができる。ロタンドンについては、例えば、前記非特許文献3に記載の方法により合成するか、市販のコショウ精油から蒸留法、カラムクロマトグラム法を単独あるいは組み合わせる分画方法で得ることができる。MPFについては、例えば、前記非特許文献4に記載の、α−ブロモ−γ−ブチロラクトンを原料として用いた5工程での合成法によって得ることができる。
【0017】
本発明の残香性向上剤におけるロタンドンおよびMPFの質量比は、特に限定されず、本発明の残香性向上剤の配合対象の香調や所望の残香性の程度などに応じて、本発明の効果が得られる範囲で任意に決定することができる。例えば、ロタンドン対MPFの好適な質量比の例として、500:1、300:1、100:1、80:1、60:1、50:1、40:1、30:1、20:1、10:1、5:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:5、1:10、1:20、1:30、1:40、1:50、1:60、1:80、1:100、1:300、1:500のうちいずれか2つの組み合わせの範囲内が挙げられ、好適な質量比の具体例として、1:50〜50:1、1:5〜30:1、20:1〜1:20、15:1〜1:15、10:1〜1:10の範囲内が例示されるが、これに限定されない。なお、本明細書において、「〜」はすべて、下限値および上限値を含む数値範囲を意味する。
【0018】
ここで、本発明において、残香性向上効果とは、香料組成物や、飲食品、香粧品などの各種消費財に本発明の残香性向上剤を配合することによって、配合しない場合に比べて、香料組成物や消費財の香気特性および香気の強さの程度がより長時間維持される効果を意味する。香気特性および香気の強さの確認方法は特に限定されず、例えば、ヒトの嗅覚による官能評価に基づいて判定してもよいし、ガスクロマトグラフ−質量分析計などの任意の香気化合物定量手段によって香料組成物から放出される香気化合物量を測定して、その測定値に基づいて判定してもよい。
【0019】
(本発明の残香性向上剤を配合した香料組成物)
本発明の残香性向上剤は、香料組成物に配合することでその香料組成物の残香性を顕著に高めることができ、さらには、その香料組成物の香気特性、例えば天然感、フレッシュ感、ボリューム感なども向上できるものである。すなわち、本発明の残香性向上剤を配合した香料組成物は、高残香性の香料組成物となり、さらには天然感、フレッシュ感、ボリューム感などに富む優れた香気特性を有するものである。
【0020】
本発明の残香性向上剤の香料組成物における濃度は特に限定されず、配合対象の香料組成物の香調や所望の残香性の程度などに応じて、本発明の効果が得られる範囲で任意に決定できるが、例えば、香料組成物中の質量濃度範囲の下限として0.05ppt、0.1ppt、1ppt、5ppt、10ppt、50ppt、75ppt、100ppt、250ppt、500ppt、750ppt、1ppb、5ppb、10ppb、50ppb、100ppb、250ppb、500ppb、750ppb、1ppm、5ppm、10ppm、50ppm、100ppm、500ppmのいずれか、および上限として3000ppm、2000ppm、1000ppm、500ppm、100ppm、80ppm、70ppm、50ppm、30ppm、10ppm、5ppm、1ppm、750ppb、500ppb、250ppb、100ppb、80ppb、50ppb、30ppb、10ppb、5ppb、1ppb、750ppt、500ppt、250ppt、100ppt、80ppt、70ppt、50ppt、10ppt、5ppt、1ppt、0.5pptのいずれかの組み合わせからなる範囲内の濃度で含有するように、本発明の残香性向上剤を、香料組成物に配合することができる。なお、配合対象の香料組成物の香調や香気特性にも依存するが、ロタンドン、MPFともに、0.05ppt以下ではごく微量なため配合による効果が得られないおそれがあり、3000ppmを超えるとロタンドンおよびMPFの有する香気が強く、配合対象の香料組成物の香気特性を変質させ違和感を与えるおそれがある。好適な濃度の例として、ロタンドン、MPFともに100ppt〜1000ppm、1ppb〜500ppm、および10ppb〜100ppmの範囲内が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
本発明の残香性向上剤を配合する香料組成物の形態は特に限定されず、例えば、水溶性香料組成物、乳化香料組成物、粉末香料組成物が挙げられ、液体でも固体でもよい。
【0022】
かかる香料組成物は特に限定されず、以下に例示する合成香料化合物および/または天然香料を任意に組み合わせて混合した香料組成物であってよい。
【0023】
合成香料化合物としては、例えば、α−ピネン、β−ピネン、ミルセン、カンフェン、オシメン、リモネン、α−フェランドレン、テルピネン、3−カレン、ビサボレン、バレンセン、セドレン、カリオフィレン、ロンギフォレン、1,3,5−ウンデカトリエンなどの炭化水素類;ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、3−ヘプタノール、1−ウンデカノール、2−ウンデカノール、1−ドデカノール、(Z)−3−ヘキセン−1−オール、2,6−ノナジエノール、プレノール、ジヒドロリナロール、10−ウンデセン−1−オール、リナロール、ネロール、ゲラニオール、シトロネロール、ミルセノール、ジヒドロミルセノール、テトラヒドロミルセノール、ファルネソル、ネロリドール、セドロール、オシメノール、テルピネオール、ベンジルアルコール、3−ツヤノール、β−フェニルエチルアルコール、α−フェニルエチルアルコール、シンナミックアルコール、オイゲノール、イソオイゲノール、ジメチルベンジルカルビノールなどのアルコール類;アセトアルデヒド、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、2−メチルオクタナール、3,5,5−トリメチルヘキサナール、デカナール、ウンデカナール、2−メチルデカナール、ドデカナール、トリデカナール、テトラデカナール、トランス−2−ヘキセナール、トランス−4−デセナール、シス−4−デセナール、トランス−2−デセナール、10−ウンデセナール、トランス−2−ウンデセナール、トランス−2−ドデセナール、3−ドデセナール、トランス−2−トリデセナール、2,4−ヘキサジエナール、2,4−デカジエナール、2,4−オクタジエナール、2,4−ドデカジエナール、5,9−ジメチル−4,8−デカジエナール、シトラール、シトロネラール、リリアール、ジメチルオクタナール、α−メチレンシトロネラール、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、ミルテナール、ネラール、マイラックアルデヒド、α−あるいはβ−シネンサール、フェニルアセトアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナミルアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピンなどのアルデヒド類;オクタナールジメチルアセタール、ノナナールジメチルアセタール、デカナールジメチルアセタール、デカナールジエチルアセタール、2−メチルウンデカナールジメチルアセタール、シトラールジメチルアセタール、シトラールジエチルアセタール、シトラールプロピレングリコールアセタールなどのアセタール類;2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、3−オクタノン、1−オクテン−3−オン、2−ノナノン、2−ウンデカノン、2−トリデカノン、メチルヘプテノン、ジメチルオクテノン、ゲラニルアセトン、2,3,5−トリメチル−4−シクロヘキセニル−1−メチルケトン、ネロン、ヌートカトン、ジヒドロヌートカトン、アセトフェノン、4,7−ジヒドロ−2−イソペンチル−2−メチル−1,3−ジオキセピン、αあるいはβ−イオノン、α−イソメチルイオノン、アセトイン、ジアセチル、2,3−ペンタンジオン、マルトール、エチルマルトール、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン、ヒドロキシケトン、カルボン、メントン、β−ダマセノンなどのケトン類;ギ酸プロピル、ギ酸オクチル、ギ酸リナリル、ギ酸シトロネリル、ギ酸ゲラニル、ギ酸ネリル、ギ酸テルピニル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸シス−3−ヘキセニル、酢酸トランス−2−ヘキセニル、酢酸オクチル、酢酸ノニル、酢酸デシル、酢酸ドデシル、酢酸ジメチルウンデカジエニル、酢酸オシメニル、酢酸ミルセニル、酢酸ジヒドロミルセニル、酢酸リナリル、酢酸シトロネリル、酢酸ゲラニル、酢酸ネリル、酢酸テトラヒドロムゴール、酢酸ラバンジュリル、酢酸ネロリドール、酢酸ジヒドロクミニル、酢酸テルピニル、酢酸シトリル、酢酸ノピル、酢酸ジヒドロテルピニル、酢酸2,4−ジメチル−3−シクロヘキセニルメチル、酢酸ミラルディル、酢酸ベチコール、酢酸ベンジル、プロピオン酸デセニル、プロピオン酸リナリル、プロピオン酸リナリル、プロピオン酸ゲラニル、プロピオン酸ネリル、プロピオン酸テルピニル、プロピオン酸トリシクロデセニル、プロピオン酸スチラリル、酪酸アミル、酪酸オクチル、酪酸ネリル、酪酸シンナミル、吉草酸アミル、イソ酪酸イソプロピル、イソ酪酸オクチル、イソ酪酸リナリル、イソ酪酸ネリル、イソ吉草酸リナリル、イソ吉草酸テルピニル、イソ吉草酸フェニルエチル、2−メチル吉草酸2−メチルペンチル、カプロン酸エチル、3−ヒドロキシヘキサン酸メチル、3−ヒドロキシヘキサン酸エチル、へプタン酸エチル、オクタン酸メチル、オクタン酸オクチル、オクタン酸リナリル、ノナン酸メチル、ウンデシレン酸メチル、安息香酸リナリル、桂皮酸メチル、アンゲリカ酸イソプレニル、ゲラン酸メチル、クエン酸トリエチル、サリチル酸メチル、などのエステル類;チモール、カルバクロール、β−ナフトールイソブチルエーテルなどのフェノール類;γ−デカラクトン、γ−ドデカラクトン、δ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトン、7−デセン−4−オリド、2−デセン−5−オリドなどのラクトン類;酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、2−デセン酸、ゲラン酸などの酸類;スカトール、ピリジン、アントラニル酸メチル、アントラニル酸エチル、N−メチルアントラニル酸メチル、N−2′−メチルペンチリデンアントラニル酸メチル、リガントラール、ドデカンニトリル、2−トリデセンニトリル、ゲラニルニトリル、シトロネリルニトリル、3,7−ジメチル−2,6−ノナジエノニトリル、インドール、5−メチル−3−ヘプタノンオキシム、チオゲラニオール、リモネンチオール、p−メンチル−8−チオール、メタンチオール、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、アリルイソチオシアネートなどの含窒素・含硫化合物類;フルフリルアルコール、フルフラール、ローズオキシド、リナロールオキシド、メントフラン、テアスピランなどのフラン・エーテル化合物類;が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
また、フローラル調に好適に使用できる合成香料化合物例としては、ローズ調であれば、フェニルエチルアルコール、β−ダマセノン、ローズオキサイド、ローズフラン、β−イオノン、α−イソメチルイオノン、カルボン、ネロールオキサイド、β−ダマスコン、δ−ダマスコン、3−(4,8−ジメチル−3,7−ノナジエニル)チオフェン、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−1,2ジチアシクロヘキセ−4−エン、1、2−エピチオフムレン、4、5−エピチオフムレン、4、5−エピチオカリオフィレン、オイゲノール、ゲラニオール、リナロール、ネロール、リリアール、ネリルアセテート、シトロネリルアセテート、α−ターピネオール、ファルネソル、ベンズアルデヒド、シトロネロール、シトロネラール、酢酸ゲラニル、フェニル酢酸メチル、酢酸ベンジル、酢酸イソアミル、ヒドロキシシトロネラールなど;ジャスミン調であれば、フェニルエチルアルコール、ジャスモン酸メチル、cis−ジャスモン、ジャスミンラクトン、ベンジルアセテート、ゲラニルリナロール、ヒドロキシシトロネラール、桂皮酸ベンジル、シンナミックアルコール、アンスラニル酸メチル、酢酸リナリル、ベンジルブチレート、ベンジルサリシレート、テルピネオール;リリー調であれば、p−クレゾール、フェニルエチルアセテート、フェニルエチルシンナメート、リナリルシンナメート、安息香酸アミル、サリチル酸ベンジル、フェニル酢酸イソブチル、サリチル酸イソブチル、イソオイゲノール、フェニルプロピルアルコール、フェニルプロピルアルデヒド;ライラック調であれば、シンナミックアルコール、フェニルエチルアルコール、アニシックアルデヒド、リナロール、ヘリオトロピン、ターピネオール、ヒドロキシシトロネラール、シクラメンアルデヒド;ラベンダー調であれば、リナロール、酢酸リナリル、カンファー、カリオフィレン、ターピネオール、γ−テルピネン;イランイラン調であれば、リナロール、ベンジルベンゾエート、ファルネソル、メチルベンゾエート、酢酸ベンジル、酢酸ゲラニル、p−クレジルメチルエーテル、カリオフィレンなど;などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
また、天然香料の例として、圧搾法、溶剤抽出法、水蒸気蒸留法などにより得られる天然香料が挙げられ、より具体的には、スイートオレンジ、ビターオレンジ、プチグレン、レモン、ベルガモット、マンダリン、ネロリ、ペパーミント、スペアミント、ラベンダー、カモミール、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ゼラニウム、ジャスミン、リリー、ライラック、ヒヤシンス、イランイラン、アニス、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、スギ、ヒノキ、サンダルウッド、シダーウッド、ガルバナム、ベチバー、パチョリ、ラブダナム、シトロネラ、ゼラニウム、ラバンジンなどの天然精油が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
加えて、本発明の残香性向上剤を配合した香料組成物には、上記の各種素材を溶解するのに適当な溶剤、例えば、エチルアルコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、ミリスチン酸イソプロピル、フタル酸ジエチル、アジピン酸ジイソブチル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ヘキシレングリコール、中鎖脂肪酸グリセリンエステル、食用植物油などの食用油脂、あるいは動物性油脂などを配合することができる。
【0027】
(本発明の残香性向上剤を配合した各種消費財)
本発明の残香性向上剤は、香粧品、飲食品、医薬品、保健衛生品などの任意の消費財に配合して、それらの残香性を向上し、さらにはそれらの香気特性を向上することができる。香気特性の向上とは、例えば、天然感、フレッシュ感、ボディ感などにあふれる香気または香味を付与することである。本発明の残香性向上剤は、有効量を消費財に直接配合してもよいが、好ましくは、本発明の残香性向上剤を配合した高残香性の香料組成物を消費財に有効量配合する。
【0028】
本発明の残香性向上剤またはそれを配合した香料組成物の香粧品や飲食品などの消費財への配合量は、配合対象の香料組成物の香調や所望の残香性の程度などに応じて、本発明の効果が得られる範囲で任意に決定できる。例えば、ロタンドンおよびMPFの質量濃度として、香粧品や飲食品などの消費財の全体質量に対して、例えば、下限として0.0005ppt、0.001ppt、0.01ppt、0.05ppt、1ppt、5ppt、10ppt、25ppt、50ppt、75ppt、100ppt、1ppb、5ppb、10ppb、50ppb、100ppb、250ppb、500ppb、750ppb、1ppm、5ppmのいずれか、および上限として10ppm、5ppm、1ppm、750ppb、500ppb、250ppb、100ppb、80ppb、50ppb、30ppb、10ppb、5ppb、1ppb、750ppt、500ppt、250ppt、100ppt、80ppt、70ppt、50ppt、10ppt、5ppt、1ppt、0.5ppt、0.1ppt、0.05ppt、0.01pptのいずれかの組み合わせからなる範囲内の濃度で含有するように、本発明の残香性向上剤またはそれを配合した香料組成物を、消費財に配合することができる。消費財、例えば香粧品または飲食品の香調にも依存するが、ロタンドン、MPFともに、0.0005ppt以下ではごく微量なため配合による効果が得られないおそれがあり、10ppmを超えるとロタンドンおよびMPFの有する香気が強く、配合対象の香料組成物の香気特性を変質させて違和感を与えるおそれがある。好適な濃度の例として、ロタンドンおよびMPFの質量濃度として、香粧品や飲食品などの消費財の全体質量に対して、0.001ppt〜1ppm、0.01ppt〜100ppb、および0.1ppt〜100ppbの範囲内が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
かかる香粧品および飲食品は特に限定されず、広い分野の各種香粧品または飲食品に本発明の残香性向上剤を配合利用することができる。香粧品としては、例えば、香水、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロンなどのフレグランス製品;シャンプー、リンス、ヘアクリーム、ポマード、ヘアースプレー、養毛剤などのヘアケア製品;洗顔クリーム、マッサージクリーム、乳液、化粧水、美容液、ファウンデーション、おしろい、口紅、リップクリームなどの基礎またはメーキャップ化粧品;石鹸、洗濯用洗剤、消毒用洗剤、防臭洗剤などの洗浄剤類;歯みがき、ティッシュー、トイレットペーパーなどの保健衛生品類;室内芳香剤、カーコロンなどの芳香製品;などを挙げることができる。また、飲食品としては、例えば、果汁飲料、野菜飲料などの果実飲料類;コーラ飲料、果汁入炭酸飲料、乳類入炭酸飲料などの炭酸飲料類;スポーツドリンク、ハチミツ飲料、豆乳、ビタミン補給飲料、ミネラル補給飲料、栄養ドリンク、滋養ドリンクなどの食系飲料類;乳酸菌飲料などの乳飲料類;緑茶、紅茶、ウーロン茶、ハーブティー、コーヒー飲料、ノンアルコールチューハイ、ノンアルコールカクテル、ノンアルコールワイン、ノンアルコールビールなどの嗜好飲料類;チューハイ、カクテルドリンク、発泡酒、果実酒、薬味酒などのアルコール飲料類;アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓、ヨーグルト、プリン、ゼリー、デイリーデザートなどのデザート類;キャラメル、キャンディー、錠菓、クラッカー、ビスケット、クッキー、パイ、チョコレート、スナックなどの菓子類;パン、ケーキミックス、デザートミックス、スープなどの各種インスタント食品;などの飲食品を挙げることができる。
【0030】
本発明の残香性向上剤によって残香性を向上可能な香料組成物または消費財の香調は、特に限定されない。例として、「特許庁公報 周知・慣用技術集(香料) 第II部 食品用香料 (平成12.1.14発行)」および「特許庁公報 周知・慣用技術集(香料) 第III部 香粧品用香料 (平成13.6.15発行)」に記載の香調が挙げられる。より具体的には、香粧品、医薬品、保健衛生品またはそれに配合する香料組成物の香調としては、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ライム、ユズ、スダチ、ベルガモット、タンジェリン、みかんなどのシトラス調;アップル、バナナ、パイナップル、ストロベリー、グレープ、ピーチ、ナシ、トロピカルフルーツなどのフルーツ調;ガルバナム、バイオレットリーフなどのグリーン調;ローズ、ジャスミン、イランイラン、ヒヤシンス、ミュゲ、ライラック、ラベンダー、リリーなどのフローラル調;アルデヒド調;クローブ、コショウ、カシア、ナツメグなどのスパイス調;サンダルウッド、セダーウッドなどのウッディ調;エチルバニリン、マルトールなどのスイート調;オークモスなどのモス調;クマリン、バニリンなどのパウダリー調;ペルーバルサム、トルーバルサムなどのバルサム調;ムスコン、ニトロムスク類などのムスク調;アンブロキサンなどのアンバー調;シベットなどのアニマル調;スターアニスなどのアニス調;マリン調;ペパーミント、スペアミントなどのミント調;レザー調;ハニー調;アーシー調;などが例示でき、なかでも、フローラル調、シトラス調、およびフルーツ調が好ましい香調例として挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
飲食品またはそれに配合する香料組成物の香調としては、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ライム、ユズ、スダチ、みかんなどのシトラス調;アップル、グレープ、ストロベリー、パイナップル、バナナ、ピーチ、メロン、アンズ、ウメ、ラズベリー、ブルーベリー、クランベリー、ブラックベリー、ナシ、プラム、トロピカルフルーツなどのフルーツ調;ミルク、バター、チーズ、クリーム、ヨーグルトなどのミルク調;バニラ調;緑茶、紅茶、ウーロン茶などの茶調;コーヒー調;ココア、チョコレートなどのカカオ調;ペパーミント、スペアミント、ハッカなどのミント調;シナモン、カモミール、カルダモン、キャラウェイ、クミン、クローブ、コショウ、コリアンダー、サンショウ、シソ、ショウガ、スターアニス、タイム、トウガラシ、ナツメグ、バジル、マジョラム、ローズマリー、ローレル、ワサビなどのスパイス調またはハーバル調;アーモンド、カシューナッツ、クルミなどのナッツ調;ビーフ、ポーク、チキンなどのミート調;サケ、イワシ、アサリ、シジミ、ホタテなどの魚介類調;エビ、カニなどの甲殻類調;鰹節、鯖節などの節類調;コンブ、ワカメ、ノリなどの海藻類調;ワイン、ブランデー、ウィスキー、ラム、ジン、リキュール、日本酒、焼酎、ビールなどの酒類調;オニオン、ガーリック、ネギ、トマト、ニンジン、キャベツ、ゴボウ、シイタケ、マツタケ、セロリ、ミツバなどの野菜類調;ローズ、ジャスミン、ラベンダーなどのフラワー調;などの香調が例示でき、なかでもシトラス調、フルーツ調が好ましい香調例として挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例に記載の濃度は、特に断りのない限り質量濃度とする。
【0033】
[実施例1]本発明の残香性向上剤の効果 フローラル調香料組成物(1)
様々なロタンドンおよびMPFの質量比および濃度範囲における残香性向上効果を確認した。
【0034】
(1)様々な質量比における残香性および香気特性
市販のローズ精油に、下記表1の濃度となるようにロタンドンおよびMPFを配合して、香料組成物を調製した。各香料組成物について、10名のよく訓練されたパネラーによる残香性および香気特性に関する評価を行った。評価では以下の基準に従って点数付けを行った。
(残香性の評価基準)
調合直後の各香料組成物を匂い紙に含浸させ、その匂い紙を室温放置して1日後の、市販のローズ精油(すなわち、ロタンドンおよびMPFを配合していないもの、以下、このようなものを無添加品とも称する)と比べた各香料組成物の香気の強さについて、
−:変わらない
+:やや強い
++:強い
+++:非常に強い
のいずれかを選択した。
(香気特性の評価基準)
調合直後の各香料組成物を匂い紙に含浸させ、その匂い紙を室温放置して1日後の、市販のローズ精油(無添加品)と比べた各香料組成物の香気について、
5点:ローズ精油と比べて天然感が顕著に増強されており、バラ生花をはっきりと想起させる
4点:ローズ精油と比べて天然感が増強されており、バラ生花によく似た香りを感じる
3点:ローズ精油と比べて天然感がやや増強されており、バラ生花にやや似ている
2点:ローズ精油と大差ない
1点:ローズ様香気のバランスが崩れて違和感がある
のいずれかの点数を選択した。
すなわち、残香性については「+」の数が多いほど高いことを意味し、香気特性については点数が高いほど、バラ生花様の天然感を明確に感じられる優れた香気特性であることを意味する。10名のよく訓練されたパネラーの平均的な評価結果を下記表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
上記表1に示すように、1:100〜100:1において、無添加品のローズ精油より残香性も天然感も向上されたと評価され、さらには、1:50〜50:1の範囲内が好ましく、1:5〜30:1の範囲内がより好ましいと評価された。
【0037】
(2)様々な濃度における残香性および香気特性
次いで、上記(1)で残香性および天然感が向上したと評価されたロタンドン:MPF=1:1の質量比において、ロタンドンおよびMPFの濃度を下記表2に示すように様々に変えて、上記した市販のローズ精油に配合して香料組成物を調製した。そして、各香料組成物の残香性と香気特性について、上記(1)と同様の評価を行った。結果を下記表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
上記表2に示すように、濃度1pptにおいても残香性が向上されて天然感も感じられると評価され、一方で5000ppmではロタンドンおよびMPFの香気の影響が大きく違和感があるという評価であった。
【0040】
[実施例2] 本発明の残香性向上剤の効果 フローラル調香料組成物(2)
下記表3に示す一般的な処方にて、ローズ様香気を有する基本調合香料組成物を調製した。
【0041】
【表3】
【0042】
この基本調合香料組成物(比較品1)に、本発明の残香性向上剤として、ロタンドンとMPFとを、ロタンドンの質量濃度およびMPFの質量濃度が下記表4に示す数値となる量で配合して、本発明に係る高残香性香料組成物(本発明品1、2)を調製した。また、比較品として、ロタンドンまたはMPFを単独で下記表4に示す質量濃度となるように添加した香料組成物(比較品2〜5)も調製した。
【0043】
次いで、得られた各香料組成物の残香性および香気特性について評価を行った。具体的には、匂い紙の先端に含浸させた調合直後の各香料組成物に対して、10名のよく訓練されたパネラーによって、香気の強さの評価および香気特性の官能評価を行ない、さらに、これらの匂い紙を室温にて1日間放置した後、前記パネラー10名によって香気の強さの評価および官能評価を再度行なった。香気の強さについては、匂い紙含浸直後の本発明品1の香気の強さを10点満点、香りを感じられない場合を1点(最低点)として、10名のパネラーの点数の平均値を算出した。1日間の室温放置後の点数が大きくかつ匂い紙への含浸直後との差が小さいほど、残香性が高いことを意味する。10名のパネラーの平均的な評価結果を、表4に示す。
【0044】
【表4】
【0045】
上記表4に示すように、本発明品はいずれも、どの比較品と比べても、匂い紙室温放置1日後の香気の強さが格段に高く、よって本発明の残香性向上剤が残香性を顕著に向上することが確認された。すなわち、匂い紙放置1日後において、比較品1(無添加品)の香気の強さが5.0であり、それに対して本発明品1の香気の強さは8.0(すなわち残香性向上効果としての点数差が3.0)であり、ロタンドンまたはMPFを単独で使用した比較品の残香性向上効果の合計より有意に高く、ロタンドンおよびMPFの併用によって相乗効果があることが確認された。本発明品2についても同様である。本発明品1および2はまた、室温放置1日後において匂い紙含浸直後の香気特性をよく維持していた。加えて、本発明品1も2も、華やかで甘いフローラルな香気が感じられてバラ生花の花弁を想起させる天然感に優れており、匂い紙への含浸直後および室温1日間放置後のどちらにおいても、どの比較品と比べても優れた香気特性を有することが確認された。
【0046】
[実施例3]本発明の残香性向上剤の効果 フローラル調香料組成物(3)
市販のローズ精油に、本発明の残香性向上剤として、ロタンドンおよびMPFを下記表5に示す濃度となるように配合して、本発明に係る高残香性香料組成物(本発明品3、4)を調製し、さらに、前記ローズ精油に、ロタンドンまたはMPFを単独で下記表5に示す濃度となるように配合して、比較品としての香料組成物を調製した(比較品7〜10)。
【0047】
次いで、市販のローズ精油(無添加品、比較品6)および得られた各香料組成物について、よく訓練されたパネラー10名による残香性評価および香気の官能評価を行った。残香性の評価は、実施例2と同様に行った(ただし、本発明品3の匂い紙含浸直後の香気の強さを10とした)。香気の官能評価は、実施例2と同様に、匂い紙含浸直後および室温での1日間の放置後の香気特性について、前記パネラー10名による官能評価を行い、各香気について、下記の基準に従って点数付けを行った。点数が高いほど、バラ生花様などの天然感を明確に感じられ、優れた香気特性であることを意味する。
(香気の評価基準)
5点:バラ生花をはっきりと想起させ、フレッシュな天然感を感じる
4点:バラ生花によく似た香りを感じて、天然感がある
3点:バラ生花にやや似ている
2点:ローズ調の香気は感じるが、バラ生花様とはいえない
1点:ローズ調の香気を感じられない
評価結果を下記表5に示す。
【0048】
【表5】
【0049】
上記表5に示すように、ロタンドンおよびMPFを併用する本発明品3、4は、比較品6(無添加品)より残香性が格段に高く、さらには、併用による相乗効果によってロタンドンまたはMPFを単独で使用する比較品7〜10と比べても残香性が格段に高く、さらに天然感にも優れていることが確認された。
【0050】
[実施例4]本発明の残香性向上剤の効果 フローラル調香料組成物(4)
下記表6に示す一般的な処方にて、ジャスミン様香気を有する基本調合香料組成物を調製した。
【0051】
【表6】
【0052】
この基本調合香料組成物(比較品11)に、本発明の残香性向上剤として、ロタンドンおよびMPFを下記表7に示す濃度となるように配合して、本発明に係る高残香性香料組成物(本発明品5、6)を調製した。また、比較品として、ロタンドンまたはMPFを下記表7に示す濃度となるように配合して、香料組成物を調製した(比較品12、13)。
【0053】
そして、本発明品および比較品の残香性および香気特性について、実施例2と同様にして、10名のよく訓練されたパネラーによる官能評価を行なった(ただし、本発明品5の匂い紙含浸直後の香気の強さを10とした)。その結果を下記表7に示す。
【0054】
【表7】
【0055】
上記表7に示すように、ロタンドンおよびMPFを併用する本発明品5、6は、比較品11(無添加品)より残香性が格段に高く、さらには、併用による相乗効果によってロタンドンまたはMPFを単独で使用する比較品12、13と比べても残香性が格段に高く、さらに香気特性も優れていることが確認された。
【0056】
[実施例5]本発明の残香性向上剤の効果 柑橘調香料組成物
下記表8に示す一般的な処方にて、ライム様の香気を有する基本調合香料組成物を調製して、比較品とした(比較品14)。
【0057】
【表8】
【0058】
また、下記表9に示す一般的な処方にて、オレンジ様の香気を有する基本調合香料組成物を調製して、比較品とした(比較品17)。
【0059】
【表9】
【0060】
次いで、これらの比較品に、本発明の残香性向上剤として、ロタンドンおよびMPFを下記表10に示す濃度となるように配合して、本発明に係る高残香性香料組成物を調製した(本発明品7〜10)。また、比較品として、ロタンドンまたはMPFを単独で下記表10に示す濃度となるように配合して香料組成物を調製した(比較品15、16、18、19)。
【0061】
各香料組成物の残香性および香気特性について、実施例2と同様にして、よく訓練されたパネラー10名による評価を行った(ただし、香調がライムの場合は本発明品7、香調がオレンジの場合は本発明品9の匂い紙含浸直後の香気の強さを10とした)。パネラー10名の平均的な評価結果を表10に示す。
【0062】
【表10】
【0063】
上記表10に示すように、ライム様香料組成物において、ロタンドンおよびMPFを併用する本発明品7、8はいずれも、比較品14(無添加品)より残香性が格段に高く、さらには、併用による相乗効果によってロタンドンまたはMPFを単独で使用する比較品15、16と比べて残香性が格段に高く、さらに香気特性も優れていることが確認された。同様に、オレンジ様香料組成物においても、ロタンドンおよびMPFを併用する本発明品9、10は比較品17〜19のいずれと比べても残香性が格段に高く、香気特性も優れたものであった。
【0064】
[実施例6]本発明の残香性向上剤の効果 フルーツ調香料組成物
下記表11に示す一般的な処方にて、パイナップル様の香気を有する基本調合香料組成物を調製して、比較品とした(比較品20)。
【0065】
【表11】
【0066】
また、下記表12に示す一般的な処方にて、ピーチ様の香気を有する基本調合香料組成物を調製して、比較品とした(比較品23)。
【0067】
【表12】
【0068】
これらの比較品に、本発明の残香性向上剤として、ロタンドンおよびMPFを下記表13に記載の濃度となるように配合して、本発明に係る高残香性香料組成物を調製した(本発明品11〜14)。また、比較品として、ロタンドンまたはMPFを単独で下記表13に示す濃度となるように配合して香料組成物を調製した(比較品21、22、24、25)。そして、各調合香料組成物の残香性および香気特性について、実施例2と同様にして、よく訓練されたパネラー10名による評価を行った(ただし、香調がパイナップルの場合は本発明品11、香調がピーチの場合は本発明品13の匂い紙含浸直後の香気の強さを10とした)。パネラー10名の平均的な評価結果を下記表13に示す。
【0069】
【表13】
【0070】
上記表13に示すように、パイナップル様香料組成物において、ロタンドンおよびMPFを併用する本発明品11、12はいずれも、比較品20(無添加品)より残香性が格段に高く、さらには、併用による相乗効果によってロタンドンまたはMPFを単独で使用する比較品21、22と比べて残香性が格段に高く、さらに香気特性も優れていることが確認された。同様に、ピーチ様香料組成物においても、ロタンドンおよびMPFを併用する本発明品13、14は比較品23〜25のいずれと比べても残香性が格段に高く、香気特性も優れたものであった。
【0071】
[実施例7]本発明の残香性向上効果 洗浄剤用香料組成物
本発明の残香性向上剤を配合した香料組成物で賦香した衣類用洗浄剤を用いて洗濯の模擬実験を行い、残香性を確認した。
【0072】
(衣類用洗浄剤を用いた洗濯の模擬実験)
市販の衣類用液体洗浄剤に、下記表14に示すように、実施例2、4で調製したフローラル調の本発明品1および5(それぞれ、ローズ様の高残香性香料組成物およびジャスミン様の高残香性香料組成物)、または本発明の残香性向上剤を配合していない無添加品の比較品1および11(それぞれ、ローズ様基本調合香料組成物およびジャスミン様基本調合香調組成物)を、それぞれ、衣類用液体洗浄剤全体量に対して1質量%となるように配合して当該洗浄剤を賦香し、4種類の被験洗浄剤を調製した。
【0073】
【表14】
【0074】
一方で、サラシ布を35cm×70cm(24.85〜25.05g)に裁断し、アルコール・アセトン・水洗乾燥したものをさらにエーテル洗浄・乾燥した。次いで、2リットルのビーカーに温度計と回転子を入れ、水2Lを入れて29℃に調整し、各被験洗浄剤2.8gを入れ、攪拌溶解して洗浄剤溶液を得た。この溶液に上記のサラシ布を秤量し、投入し、5分間手で撹拌し、その後流水で2分間すすぎ、布を絞って重量を測定し、水分量が50gとなるように調整してからハンガーに掛け、6時間、恒温恒湿の室内で乾燥させた。
【0075】
乾燥させた布の香気について、よく訓練されたパネラー10名による官能評価を行った。官能評価は、以下に説明するように残香性および香気特性について行った。
(残香性の確認)
衣類用洗浄剤の賦香時点での当該洗浄剤の香りの強さを5点満点として、その香りの強さと比較して、乾燥させた布の香りの強さを以下の基準に従って点数付けした。
5点:同等であった
4点:やや弱くなった
3点:弱くなった
2点:かなり弱くなった
1点:香りが感じられない
(香気特性の確認)
乾燥させた布の香りを嗅ぎ、生花様の天然感を感じられるかについて、下記の基準で点数付けした。
5点:バラまたはジャスミンの生花をはっきりと想起させ、フレッシュな天然感を感じる
4点:バラまたはジャスミンの生花によく似た香りを感じて、天然感がある
3点:バラまたはジャスミンの生花にやや似た、ローズまたはジャスミン調の香気を感じる
2点:ローズまたはジャスミン調の香気は感じるが、バラまたはジャスミン生花様とはいえない
1点:ローズまたはジャスミン調の香気を感じられない
すなわち、残香性、香気特性ともに、評価点数が高いほど優れていることを意味する。10名のパネラーの平均的な評価結果を下記表15に示す。
【0076】
【表15】
【0077】
上記表15に示すように、本発明品はいずれも、衣類用洗浄剤に配合した際にも、比較品と比べて、高い残香性と優れた天然感を付与できることが確認された。
【0078】
以上の実施例1〜7で確認されたように、本発明の残香性向上剤は、残香性を格段に向上し、かつ優れた天然感を付与可能な香料組成物として、種々の調合香料組成物や消費財への応用が可能となる優れた特性を有するものである。