(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6577032
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】燃料を噴射するシステムの高圧ランプのための圧力調整器
(51)【国際特許分類】
F02M 37/00 20060101AFI20190909BHJP
F02M 55/02 20060101ALI20190909BHJP
F02M 51/00 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
F02M37/00 R
F02M55/02 360H
F02M51/00 F
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-528178(P2017-528178)
(86)(22)【出願日】2015年12月22日
(65)【公表番号】特表2017-536500(P2017-536500A)
(43)【公表日】2017年12月7日
(86)【国際出願番号】EP2015080916
(87)【国際公開番号】WO2016102532
(87)【国際公開日】20160630
【審査請求日】2017年5月25日
(31)【優先権主張番号】1463194
(32)【優先日】2014年12月23日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】ブリエール,リオネル
【審査官】
松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−525697(JP,A)
【文献】
特開2007−040106(JP,A)
【文献】
特開2004−011448(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0282212(US,A1)
【文献】
特開2007−132337(JP,A)
【文献】
特表2005−532501(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0070028(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00
F02M 51/00
F02M 55/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に燃料を噴射するシステムの高圧ランプのための圧力調整器であって、該圧力調整器は電磁弁体(10)を有しており、該電磁弁体(10)が電磁石(40)を備えていて、該電磁石(40)が、バルブシート(30)を閉鎖するニードル(20)を制御し、前記バルブシート(30)が高圧入口に接続されていて放圧室(13)内に開口しており、前記放圧室(13)は出口開口(14)を通じて液体戻し循環路(S)と連通しており、
前記電磁弁体(10)が後端部(12)に電磁石(40)を備えており、該電磁石(40)がアーマチャ(41)に作用して前記ニードル(20)の開放運動を制御し、該アーマチャが前記ニードル(20)に堅固に接続されていて、閉鎖リターンスプリング(25)に支配されており、
前記電磁弁体(10)の前端部(11)が前記ニードル(20)の軸線(XX)上に、前記ニードルを包囲し中空室(15)を通って延在する放圧室(13)を有していて、前記中空室(15)が入口弁体(50)を受けていて、該入口弁体(50)が、前記バルブシート(30)内に開口する孔(51)によって軸方向に貫通されており、
前記中空室(15)の底部(151)には円筒状に凹んだ形状を有するショルダ(152)が設けられており、該ショルダの内径(D11)は前記放圧室(13)の内径(D2)よりも大きく形成されており、
前記ニードル(20)によって軸方向に貫通されている前記放圧室(13)と、前記液体戻し循環路に接続されている前記出口開口(14)とが、前記放圧室(13)の壁部(131)の上部(132)の下側で前記壁部(131)に横方向に開口している形式のものにおいて、
前記圧力調整器は、
前記放圧室(13)の底部を形成しかつ中央部でバルブシート(30)を有する前記弁体(50)の表面(54)の上方で、しかも前記バルブシート(30)を形成する円錐形の表面(31)の延長部で、前記出口開口(14)の下方に、前記放圧室(13)の環状の拡張部(70)を有しており、該拡張部(70)が環状のデッドボリューム(70)を形成し、
前記弁体(50)が、環状のワッシャ(60)が嵌め込まれている前記電磁弁体(10)の前記前端部(11)の前記中空室(15)内に受容されており、前記ワッシャ(60)の内径(D12)は前記ショルダの内径(D11)と等しく、前記ワッシャ(60)の高さは前記環状のデッドボリューム(70)の高さの少なくとも一部を形成している
ことを特徴とする圧力調整器。
【請求項2】
前記デッドボリューム(70)が次のような寸法的な特徴、即ち、前記デッドボリュームの直径D1(D11,D12)が前記放圧室の直径D2よりも大きく、前記デッドボリュームの軸方向長さ(L1)が、前記弁体(50)の上側の表面(54)と前記液体戻し循環路に連通する前記開口(14)との間の前記放圧室(13)の軸方向長さよりも小さいかまたは同じである、という寸法的な特徴を有している
ことを特徴とする請求項1記載の圧力調整器。
【請求項3】
前記弁体(50)が前記中空室(15)内に畳み折りによりつなぎ合わされている
ことを特徴とする請求項1記載の圧力調整器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に燃料を噴射するシステムの高圧ランプ“Hochdruckrampe”のための圧力調整器であって、該圧力調整器は電磁弁体を有しており、該電磁弁体が電磁石を受けていて、該電磁石が、バルブシートを閉鎖するニードルを制御し、バルブシートが高圧入口に接続されていて放圧室内に開口しており、放圧室は出口開口を通じて液体戻し循環路と連通しており、この場合、電磁弁体が後端部でコイルを受けており、該コイルが
アーマチャの開放を制御し、該
アーマチャがニードルに堅固に接続されていて、閉鎖リターンスプリングに支配されており、この場合、電磁弁体の前端部がニードルの軸線上に、中空室を通って延在する放圧室を有していて、中空室が入口弁体を受けていて、該入口弁体が、バルブシート内に開口する孔によって軸方向に貫通されており、この場合、この弁体は中空室内に畳み折りによってつなぎ合わされており、ニードルによって軸方向に貫通されている放圧室と、液体戻し循環路に接続されている出口開口とが、放圧室の壁部の上部の下側で壁部に横方向に開口している形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように規定された形式の圧力調整器は既に存在する。この公知の調整器は、理論上は線状であるが実際には放圧室の上部の静圧に基づいて勾配の突然の増大に晒される流量/圧力特性曲線を、最適化することができないという欠点を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、調整の効果的な運転のための流量/圧力特性曲線および液体戻し循環路を最適化することができる、燃料噴射システムの高圧ランプのための圧力調整器を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために、本発明は、上記のように規定された形式の圧力調整器が、放圧室の底部を形成しかつ中央部でバルブシートを有する弁体の表面の上方で、しかもバルブシートを形成する円錐形の表面の延長部に設けられた出口開口の下方に、環状のデッドボリュームを形成する放圧室の環状の拡張部を有している、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
本発明による圧力調整器は、放圧室の部分内でバルブシートの周囲に展開されたデッドボリュームを、液体の出口に直接配置し、従って、液体の運動エネルギーを吸収し、放圧室の上部内の静圧を減少させることができ、それによってこの圧力は、調整器に接続された液体戻し循環路の圧力に近くなる、という利点を有している。
【0006】
別の好適な特徴によれば、弁体が、環状のワッシャが嵌め込まれている電磁弁体の端部の中空室内に受容されており、ワッシャの内径はショルダを有していて、デッドボリュームの高さの少なくとも一部を画成する。
【0007】
別の好適な特徴によれば、弁体は調整器の電磁弁の中空室内に畳み折りによりつなぎ合わされている。
【0008】
調整器のこのような構成は、デッドボリュームの設計および製造を容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】圧力調整器の1実施例の軸方向断面図である。
【
図2A】組み立てられていない前部を示す図である。
【
図2B】ワッシャも備えた、組み立てられた前部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、添付の図面に示した圧力調整器の1実施例を用いて本発明を詳しく説明する。
【0011】
図1によれば、本発明は課題としての圧力調整電磁弁100を有しており、この圧力調整電磁弁は簡単に圧力調整器と称呼される。圧力調整器は、内燃機関の高圧噴射システムの共通噴射ランプ(コモンレール)に接続されている。
【0012】
圧力調整器100は、電磁弁体10より成っており、この電磁弁体10は、ニードル20の形のピストンに沿って延在する軸線XXを中心として回転する、全体として回転体の形を有しており、前記ニードル20は、このニードルによって操作されるボール21を介してバルブシート30と協働し、前記ニードル20は前記ボール21をバルブシート30に当接させる。
【0013】
電磁弁体10は電磁石40を備えており、この電磁石40は、ニードル20に堅固に結合された、ニードルの開放運動を制御するディスク状の
アーマチャ41に作用するために設けられている。ニードル20と同軸的なリターンスプリング25は、
アーマチャ41に作用し、かつ閉鎖方向に作用する。
【0014】
電磁弁体10の前端部11は、電磁弁を備えていて
アーマチャ41を受けている後端部12の反対側に位置している。戻し液体によって貫流される前端部11は、放圧室13を有しており、この放圧室13は、液体を戻し循環路に流出させるための開口14を有していて、前側で、中空室15が弁体50を受けており、この弁体50は中空室内に畳み折りによりつなぎ合わされている。
【0015】
放圧室13は、円筒形壁部131によって、軸線XXの回りを画定していて、この壁部131内に、放圧室13の軸線XXに対して概ね垂直の方向に横方向孔が開口14を通って貫通している。この開口14は、円筒形壁部131を貫通しており、この場合、開口14は、図面の向きに沿った放圧室の上部132内の体積に影響しない。弁体50は、軸方向の入口孔51によって貫通されており、この入口孔51は、共通ランプの高圧循環路と連通していて、減少された横断面を有する孔52を通って続いており、この孔52は、軸線XXに沿って全体が円錐台形のバルブシート30に開口している。
【0016】
液体の流入方向は、矢印Eによって示されていて、孔14を貫流する流出方向は矢印Sで示されている。
【0017】
弁体50はその円筒形の電磁弁体を通して、環状のワッシャ60を嵌め込んだ中空室15内に受容されており、このワッシャ60は、ニードル20の閉鎖位置およびその
アーマチャ41の閉鎖位置を電磁石40に関連して調節することができる。ワッシャ60は、ニードル20および
アーマチャ41が閉鎖された位置にあるときに、調整器の構成部分の製造公差および接合公差を補正するために残存するエアギャプを調整することができる。
【0018】
環状のワッシャ60の内側の円筒形の表面61、中空室15の底部151、ショルダ152は、デッドボリューム70を画成しており、このデッドボリューム70は、横断面で示されていて、円錐形の表面31の延長部内、またはバルブシート30の概ね円錐形の表面内に位置している。このデッドボリューム70は、デッドボリューム70を越えて軸線XXに沿って位置する放圧室13よりも大きい横断面を有している。
【0019】
中空室15の底部151内のショルダ152は、例えばデッドボリューム70の直径と同じ直径を有するフライス盤によって製造される。
【0020】
図2Aは、中空室15内に係合していない弁体50によって、様々な構成要素、放圧室13、底部151を備えた中空室15およびそのショルダ152、並びに入口弁体50を畳み折りによりつなぎ合わせるために縁部が折り返されている壁部153の形状を示す。
【0021】
弁体50は、その軸方向の入口孔51、入口孔51を延長する、減少された横断面を有する孔52、並びにバルブシート30の円錐形の表面31、およびボール21を受け、それによって弁30のシール段部を形成するドーム形32の入口と共に、示されている。弁体50の外側輪郭は、折り畳み突起53を形成する。弁体50の上側54はフラットであって、下側55はスリーブ56を有しており、このスリーブ56はストレーナ57(
図2B)を受ける。上側55は高圧ランプとのシールを確実にする。
【0022】
図2Bは、嵌め込まれたワッシャ60と共に中空室15内に畳み折りによりつなぎ合わされた弁体50と組み合わされた、電磁弁体10の端部11を示す。従ってデットボリューム70は、調整器の電磁弁体10の中空室、その切削加工されたショルダ152、環状のワッシャ60および弁体50の内側54によって画成されている。
【0023】
補助線は、直径D
1および軸線XXに沿った軸方向の長さL
1を備えた長方形の環状のデッドスペース70の特徴的な寸法を示す。デッドスペース70は、一般的に2つの直径D
11,D
12、つまり、ショルダ152のための直径D
11および、環状のワッシャ60の内径である直径D
12を有している。
【0024】
これら2つの直径は同じであってよいが、必ずしもそうでなくてよい。明細書および請求項の説明を簡単にするために、デットボリューム70の「直径」について記載されているが、この場合、この表現は2つの直径D
11,D
12を含むことが前提とされる。
【0025】
この「直径」は、いずれにしても、放圧室13の直径D
2よりも大きい。
【0026】
拡大された
図2Bは、デットボリューム70の環状の横断面を示しており、軸線XXに対して平行な線によって、および放圧室13の壁部の円筒形の表面131の幾何学的な延長部に従って強調されている。デットボリューム70の軸線XXに沿った軸方向の「高さ」L
1は、中空室の底部151のショルダ152およびワッシャ60の高さによって形成されている。このワッシャ60は、その厚さを容易に変えることができる(矢印XX)ことを指摘しておく。ワッシャ60の厚さを大きく変化させれば、ニードル20が開放したときに、特にバルブシート30の円錐形の表面31の延長部内に、しかもニードル20のボール21の下を通る円錐形の液体流の経路上に十分なデッドボリューム70が得られるように、中空室15の底部151のショルダ152の深さ(軸方向XX)を調節することができる。
【0027】
言い換えれば、デッドボリューム70は、バルブシート30の円錐形の表面31の延長部で出口開口14の下の放圧室13の下部に降下する。
【0028】
デットボリューム70は、放圧室13とは別個に、明確に出口開口14によって分離されている。放圧室13の体積の一部を形成する、放圧室13の上部132に対して、デッドボリューム70内には静圧が支配する。
【0029】
本発明によれば、デッドボリューム70は次のような寸法的特徴を有している。
D
11>D
2D
12>D
2
L
1≦L
2
D
11は、環状のワッシャ60の内径
D
12は、ショルダ152の直径
D
2は、放圧室13の直径
L
1は、デッドボリューム70の軸方向長さ
L
2は、弁体50の上側と出口開口14との間の軸方向の間隔、である。
【0030】
図2Bの拡大図によって、デッドボリューム70は、放圧室13の全体的な拡大によって同等に製造できないことが強調されなければならない。デッドボリューム70は放圧室13から明確に分離されていて、出口開口14の下または上にあることが絶対に必要である。
【0031】
図3は、比較として、弁230のバルブシート内に開口する孔内で終わっている電磁弁体210より成る公知の圧力調整器200の端部を示す。この孔はニードル220の形の電磁弁のピストンによって閉鎖され、このニードル220はここではボール221を介してバルブシート230と協働する。弁体250は、ワッシャ260が嵌め込まれた電磁弁体210によって中空室215の底部に当て付けられている。弁体250は、電磁弁体内に畳み折りによってつなぎ合わされている。環状のワッシャ260は、放圧室213の内径に等しい内径D
2、および放圧室213を画定する弁体250の上側254と戻し循環路に通じる出口開口214との間の軸線XXに沿った軸方向長さL
2を有している。
【符号の説明】
【0032】
10 電磁弁体
11 前端部
12 後端部
13 放圧室
131 円筒形壁部
132 上部
14 出口開口/孔
15 中空室
151 中空室の底部
152 ショルダ
153 壁部
20 ピストン/ニードル
21 ボール
25 リターンスプリング
30 バルブシート
31 円錐形の表面
32 ドーム
40 電磁弁/コイル
41
アーマチャ
50 入口弁体
51 入口孔
52 減少された横断面を有する孔
53 畳み折り突起
54 弁体の上側
55 下側の表面
56 スリーブ
57 ストレーナ
60 ワッシャ
61 内側の円筒形の表面
70 デッドボリューム
100 圧力調整器