特許第6577038号(P6577038)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6577038軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソームを含む軟骨細胞への分化誘導または軟骨組織再生用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6577038
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソームを含む軟骨細胞への分化誘導または軟骨組織再生用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/32 20150101AFI20190909BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20190909BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20190909BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   A61K35/32
   A61K35/28
   A61P19/00
   A61P43/00 105
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-538397(P2017-538397)
(86)(22)【出願日】2016年2月4日
(65)【公表番号】特表2018-508486(P2018-508486A)
(43)【公表日】2018年3月29日
(86)【国際出願番号】KR2016001230
(87)【国際公開番号】WO2016126122
(87)【国際公開日】20160811
【審査請求日】2017年8月4日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0017349
(32)【優先日】2015年2月4日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0013293
(32)【優先日】2016年2月3日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517146460
【氏名又は名称】株式会社エキソステムテック
【氏名又は名称原語表記】EXOSTEMTECH CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヨン ウ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジ スク
(72)【発明者】
【氏名】ウ,チャン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ヨン チャン
(72)【発明者】
【氏名】ジョ,ドン ギュ
【審査官】 鈴木 理文
(56)【参考文献】
【文献】 Osteoarthr. Cartil.,2011年,Vol.19 No.Suppl.1,p.S28
【文献】 Genes Dev.,2010年,Vol.24,pp.1173-1185
【文献】 Arthr. Rheum.,2009年,Vol.60 No.9,pp.2723-2730
【文献】 J. Tissue Eng. Regen. Med.,2013年,Vol.9,pp.714-723
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/32
A61K 35/28
A61P 19/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟骨細胞へ分化中の脂肪由来幹細胞由来のエキソソームを有効成分として含む軟骨細胞への分化誘導または軟骨組織再生用組成物であって、
前記軟骨細胞へ分化中の脂肪由来幹細胞は、前軟骨凝縮(precartilage condensation)が現れる時期から軟骨細胞に分化した状態になる直前までの時期の細胞を意味する、軟骨細胞への分化誘導または軟骨組織再生組成物
【請求項2】
前記脂肪由来幹細胞は、ヒトまたは動物由来の幹細胞である、請求項1に記載の軟骨細胞への分化誘導または軟骨組織再生用組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の組成物を含む軟骨細胞への分化誘導用培地組成物。
【請求項4】
前記培地組成物は、エキソソームが1〜100μg/mLの濃度で含まれるものである、請求項3に記載の軟骨細胞への分化誘導用培地組成物。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の組成物を含む軟骨組織再生用注射剤。
【請求項6】
前記注射剤は、エキソソームが1〜1000μg/mLの濃度で含まれるものである、請求項5に記載の軟骨組織再生用注射剤。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の組成物を含む軟骨疾患治療用薬剤学的組成物。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソームを有効成分として含む軟骨細胞への分化誘導または軟骨組織再生用組成物、前記組成物を含む軟骨細胞への分化誘導用培地組成物、軟骨組織再生用注射剤、軟骨疾患治療用薬剤学的組成物および軟骨疾患の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟骨組織の特性上、広い範囲が損傷した場合、自然治癒による組織再生が難しいので、人工関節、関節軟骨成形術、微細穿孔術などの外科的手術による治療が行われてきた。しかし、従来の方法は、切開による傷痕が残り、耐久性に劣る繊維軟骨への再生であり、困難な施術方法に比べて治療効果が劣るという問題点を有している。したがって、手術過程が簡便で迅速な治療効果を出すハイドロゲルを用いた注射剤であり、ヒアルロン酸のアルキレンジアミン架橋物ハイドロゲルを用いた関節内投与用注射液(特許文献1)、コラーゲンとヒアルロン酸が含まれる軟骨組織修復用組成物(特許文献2)、クロドロン酸およびヒアルロン酸を含む骨関節炎の治療用薬学的製剤(特許文献3)などが開発された。しかし、前記方法は、一時的な痛みの軽減はできるが、軟骨組織への再生誘導には不十分な点があるため、軟骨組織への分化を助ける有効因子が必要である。
【0003】
現在、細胞を用いた治療法の場合、体外で培養された細胞を再び欠損部位に移植して軟骨組織の再生を誘導する方法として、自家軟骨細胞(特許文献4)、臍帯由来幹細胞(特許文献5)などを用いた治療方法が開発された。しかし、自家軟骨細胞治療剤の場合、損傷した部位が大きいとき、患者から採取して培養された細胞だけでは治療には限界があり、移植手術までに基本的に2度にわたる手術による患者の苦痛と経済的負担が大きい。幹細胞治療の場合、一般的に、臍帯血、脂肪組織、滑膜、筋肉などの幹細胞を用いた細胞治療が行われているが、採取部位に応じた細胞数と分化能の差異、体外培養時の細胞の脱分化による細胞表現型の変化、体内移植後の軟骨細胞への低い分化率と、細胞肥厚と関連する遺伝子発現により細胞死滅とともに血管の浸透誘発から軟骨細胞の石灰化をもたらすという問題点がある。
【0004】
このように、従来技術では、患者から得られた軟骨細胞や成体幹細胞を体外で培養し、ハイドロゲルに分散させた後、再び欠損部位に移植する方法で治療を行った。直接細胞を注入するため、正常の軟骨に近い組織を再生させることができるが、細胞を得るための不可欠な手術過程と体外培養工程の難しさ、損傷組織部位の大きさによる細胞数の限界、体内における低い分化率の問題点を有している。また、一度の投与では、一時的な痛みの減少と関節の運動性を増加させることはできるが、最終的に損傷した軟骨組織の再生には困難があった。
【0005】
そこで、本発明者らは、従来の問題を解決するために、軟骨細胞に分化される幹細胞からエキソソームのみを分離し、分離したエキソソームを含む組成物の軟骨再生効果を確認して、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第2013−0028012号公報
【特許文献2】韓国登録特許第1279812号公報
【特許文献3】韓国公開特許第2008−0082657号公報
【特許文献4】韓国公開特許第2013−0072983号公報
【特許文献5】韓国公開特許第2013−0009651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソームを有効成分として含む軟骨細胞への分化誘導または軟骨組織再生用組成物を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、前記軟骨細胞への分化誘導または軟骨組織再生用組成物を含む軟骨細胞への分化誘導用培地組成物を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、前記軟骨細胞への分化誘導または軟骨組織再生用組成物を含む軟骨組織再生用注射剤を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、前記軟骨細胞への分化誘導または軟骨組織再生用組成物を含む軟骨疾患治療用薬剤学的組成物を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、前記軟骨細胞への分化誘導または軟骨組織再生用組成物の治療的に有効な量を哺乳動物に投与する段階を含む軟骨疾患の治療方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記のような目的を達成するために、本発明の一実施例は、軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソームを有効成分として含む軟骨細胞への分化誘導または軟骨組織再生用組成物を提供する。
【0013】
本発明で使用される用語、「軟骨細胞に分化されている幹細胞」とは、図1のように軟骨細胞に分化中の幹細胞を意味する。これから、軟骨細胞の遺伝情報、タンパク質、成長因子を含有しているエキソソームを分離することができる。
【0014】
具体的には、幹細胞が軟骨細胞に分化するとき、細胞の形状および特性が変化するが、このときエキソソームを分離するのである。したがって、通常の幹細胞からエキソソームを分離することと異なるとみることができる。
【0015】
本発明で使用される用語、「エキソソーム(exosome)」とは、様々な種類の細胞から分泌される膜構造の小胞体で、他の細胞および組織に結合して膜の構成要素、タンパク質、RNAを伝達するなど、様々な役割をすることが知られている。
【0016】
前記軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソームは、幹細胞の基本的な特性を有することができ、軟骨分化の際の重要な成長因子、様々な生体活性タンパク質および遺伝子情報などを含有することができる。
【0017】
前記エキソソームは、当業界に知られているエキソソーム分離方法を用いて製造することができ、例えば、
1)幹細胞を増殖する段階;
2)前記増殖された幹細胞を軟骨細胞に分化させる段階;および
3)軟骨細胞に分化されている幹細胞からエキソソームを分離および精製する段階;を含む方法を用いることができる。
【0018】
前記「軟骨細胞への分化誘導」とは、幹細胞(stem cell)が軟骨細胞に分化(differentiation)されるように誘導することを意味することができる。
【0019】
前記「軟骨組織再生」とは、損傷した軟骨組織を復元したり、または不足している軟骨組織の生成を誘導して軟骨組織を再生(regeneration)することを意味することができる。
【0020】
前記軟骨細胞に分化されている幹細胞は、軟骨細胞に分化可能な成体幹細胞であってもよい。
【0021】
前記軟骨細胞に分化可能な成体幹細胞は、骨髄幹細胞、臍帯血幹細胞または脂肪由来幹細胞であってよく、例えば、脂肪由来幹細胞であってもよい。
【0022】
前記骨髄幹細胞、臍帯血幹細胞または脂肪由来幹細胞は、ヒト、動物または植物由来の幹細胞であってもよい。
【0023】
本発明による軟骨再生用組成物は、効果的な軟骨再生のための効能物質として軟骨細胞に分化する幹細胞由来のエキソソームを使用するという点で従来技術と差別性がある。分離、精製されたエキソソームに担持された細胞の増殖および分化に関する様々な成長因子によって効果的に持続可能な軟骨組織の再生がなされ、従来の自家軟骨細胞や成体幹細胞の体外細胞培養の問題点、繊維軟骨への再生、または細胞死滅による組織の石灰化などの問題を解決することができる。
【0024】
本発明による軟骨細胞に分化される期間中に分離された幹細胞由来のエキソソームは、幹細胞の特性を有するだけでなく、軟骨細胞への分化に関する活性因子だけを効果的に伝達し、副作用を最小化しながら、既存の幹細胞を用いた治療のような効果を期待することができる。
【0025】
本発明による軟骨細胞に分化される期間中に分離された幹細胞由来のエキソソームは細胞から分泌される生体膜小胞体である。また、細胞膜と類似の脂質構造を持っているので、体内に注入されたとき周りの細胞への吸収率に優れ、効能物質の迅速な伝達に軟骨組織の効果的な再生誘導が可能である。
【0026】
本発明の他の具体例は、前記軟骨細胞への分化誘導または軟骨組織再生用組成物を含む軟骨細胞への分化誘導用培地組成物を提供する。
【0027】
前記培地組成物は、エキソソームが1〜100μg/mLの濃度、具体的には1〜60μg/mLの濃度、例えば50μg/mLの濃度で含まれてもよいが、これに限定されない。
【0028】
前記軟骨細胞への分化誘導用培地組成物は、幹細胞を軟骨細胞に分化させるためにデキサメタゾン(dexamethasone)、インスリン(insulin)、アスコルビン酸(ascorbate)、軟骨形成成長因子であるIGF(Insulin−like Growth Factor)、およびTGF−β1(Transforming Growth Factorβ1)などの分化誘導物質をさらに含むことができるが、これに限定されない。
【0029】
本発明のさらなる具体例は、前記軟骨細胞への分化誘導または軟骨組織再生用組成物を含む軟骨組織再生用注射剤を提供する。
【0030】
前記注射剤は、リン酸緩衝食塩水(phosphate−buffered saline、PBS)をさらに含むことができる。すなわち、前記注射剤は、リン酸緩衝食塩水に軟骨細胞への分化誘導または軟骨組織再生用組成物を担持して使用することができる。
【0031】
前記注射剤は、リン酸緩衝食塩水の代わりにハイドロゲルを含むことができる。
【0032】
前記ハイドロゲルは、ヒアルロン酸、ゼラチン、アルギン酸塩、キトサン、フィブリン、エラスチン、コラーゲン、およびメチルセルロースから構成された群から選択されたいずれか1つ以上であってもよく、具体的にヒアルロン酸ハイドロゲルであってもよいが、これに限定されない。
【0033】
前記注射剤は、エキソソームが1〜1000μg/mLの濃度、具体的には10〜900μg/mLの濃度で、より具体的には10〜800μg/mLの濃度、例えば500μg/mLの濃度で含まれてもよいが、これに限定されない。
【0034】
前記注射剤は、ラット、マウス、家畜、人間などの哺乳動物の軟骨などの損傷部位に注射して投与することができる。
【0035】
本発明による軟骨再生用組成物は、注射剤組成物として体内注入が容易であるため、手術時間とコストの面で経済的であり、これにより患者の苦痛、後遺症と経済的負担を軽減してくれる。また、幹細胞が軟骨細胞に分化されるとき分離されたエキソソームには細胞外基質誘導体、細胞の増殖および分化に関連する様々の成長因子が含まれており、損傷した軟骨組織の効果的な再生誘導が可能である。したがって、一度の施術で長期的な効果を期待することができ、持続的な効果を得るために周期的に施術をしなければならなかった既存の問題点を克服することができる。
【0036】
本発明のさらなる具体例は、前記軟骨細胞への分化誘導または軟骨組織再生用組成物を含む軟骨疾患治療用薬剤学的組成物を提供する。
【0037】
本明細書で使用される用語、「軟骨疾患」は、軟骨組織の損傷に由来する軟骨疾患であってもよく、具体的には骨関節炎、変形性関節症、軟骨形成異常症、退行性関節炎、リウマチ性関節炎、骨軟化症、繊維性骨炎および無形成骨疾患から構成される群から選択されたものであってもよいが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書で使用される用語、「軟骨疾患の治療」は、軟骨疾患治療用組成物を関節内注射して、損傷した軟骨を再生することにより、軟骨組織の損傷が治療されることを意味することができる。
【0039】
前記具体例による薬学的組成物は、経口または非経口の様々な剤形であってもよい。製剤化する場合には、通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調製される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、一つ以上の化合物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調製される。また、単純な賦形剤以外にステアリン酸マグネシウム、タルクなどの潤滑剤も使用される。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、よく使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれてもよい。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。
【0040】
前記具体例による薬学的組成物は、非水性溶剤、懸濁溶剤としてはプロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用されてもよい。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用されてもよい。
【0041】
前記具体例による薬学的組成物の投与形態は、それらの薬学的に許容可能な塩の形態でも使用することができ、また、単独で、または他の薬学的活性化合物と結合だけでなく、適切な集合で使用することができる。前記塩としては、薬学的に許容されるものであれば特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ギ酸、酢酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などを使用することができる。
【0042】
前記具体例による薬学的組成物は、目的とするところにより、非経口投与や経口投与することができ、一日に体重1kgあたり0.1〜500mg、1〜100mgの量で投与されるように1〜数回に分けて投与することができる。特定患者への投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食事、投与時間、投与方法、排泄率、疾患の重症度等により変化されてもよい。
【0043】
前記具体例による薬学的組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形、軟膏、クリームなどの外用剤、坐剤、および滅菌注射溶液などをはじめ、薬剤学的製剤に適したいかなる形態でも剤形化して使用することができる。
【0044】
前記具体例による薬学的組成物は、ラット、マウス、家畜、人間などの哺乳動物に非経口、経口などの多様な経路で投与することができ、投与のすべての方式は予想されうるが、好ましくは、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内膜または脳血管内(intracerebroventricular)注射によって投与することができる。
【0045】
前記具体例による薬学的組成物は、幹細胞を軟骨細胞に分化させるためにデキサメタゾン(dexamethasone)、インスリン(insulin)、アスコルビン酸(ascorbate)、軟骨形成成長因子であるIGF(Insulin−like Growth Factor)およびTGF−β1(Transforming Growth Factorβ1)などの分化誘導物質をさらに含むことができるが、これに限定されない。
【0046】
本発明のさらなる具体例は、前記軟骨細胞への分化誘導または軟骨組織再生用組成物の治療的に有効な量を哺乳動物に投与する段階を含む軟骨疾患の治療方法を提供する。
【0047】
前記組成物は、前記軟骨細胞への分化誘導または軟骨組織再生用組成物を含む軟骨疾患治療用薬剤学的組成物であるか、前記軟骨細胞への分化誘導または軟骨組織再生用組成物を含む軟骨再生注射剤であってもよい。したがって、前記軟骨疾患治療用薬剤学的組成物または軟骨再生注射剤について記載された内容は、治療方法にも同様に適用することができる。
【0048】
前記哺乳動物は、軟骨疾患を患っている哺乳動物であってよく、例えば、軟骨疾患を患っているラット、マウス、家畜、人間などであってもよい。
【0049】
前記「治療的に有効な量」とは、哺乳動物において軟骨疾患治療的反応を示すのに十分な組成物の量を意味する。
【0050】
前記投与形態は、非経口投与と経口投与の形態を含むが、例えば、哺乳動物の軟骨などの損傷部位に注射して投与することができる。
【0051】
本発明の一実施例において、増殖する幹細胞由来のエキソソーム(ASC−EXO)および軟骨細胞に分化する幹細胞由来のエキソソーム(Chondro−EXO)のサイズを確認した結果、それぞれの平均サイズが約88.17nm、83.6nmであることを確認することができた(図3a〜図3d)。
【0052】
本発明の他の一実施例において、幹細胞を軟骨細胞に分化させる実験で、本発明による軟骨細胞に分化される幹細胞由来のエキソソーム(Chondro−EXO)を含有する培地組成物を処理した結果、本発明によるエキソソーム処理時の21日目から陽性対照群と類似のレベルで細胞間に凝縮現象が現れ、軟骨特異的基質の発現を確認することができた。しかし、増殖する幹細胞由来のエキソソーム(ASC−EXO)および陰性対照群では、このような分化特徴が発見されず、二つのグループの場合、増殖のみ行われることを確認した(図5および6)。
【0053】
本発明のさらなる一実施例において、本発明による軟骨細胞に分化される幹細胞由来のエキソソーム(Chondro−EXO)を含む組成物は、生体内注入時の軟骨組織の再生効果に優れていることを確認した(図7および8)。
【発明の効果】
【0054】
本発明の具体例による軟骨細胞への分化誘導または軟骨再生用組成物は、軟骨細胞に分化する幹細胞由来のエキソソームを有効因子として含んでいる。幹細胞の分化過程で分泌されるエキソソームは、幹細胞の細胞増殖、再生に関連する遺伝子、タンパク質だけでなく軟骨細胞の分化に関連する成長因子を含有しており、損傷した軟骨組織の再生誘導に優れている。また、既存の細胞治療剤の副作用を最小限に抑えながら、細胞由来の伝達体として安定的かつ迅速に効能物質を細胞内に伝達することができる。したがって、軟骨疾患の予防および治療のための注射剤組成物による簡単な施術で患者の苦痛を軽減するだけでなく、施術後に継続的かつ効果的な軟骨疾患の治療が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソームとその応用に対する模式図である。
図2】軟骨細胞に分化されている幹細胞からエキソソームが分離される時期のもので、軟骨細胞に分化されている幹細胞の形態変化の観察、およびアルシアンブルー染色(alcian blue staining)による軟骨特異的基質の合成を確認した図である。
図3a】軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソーム(Chondro−Exo)と増殖する幹細胞由来のエキソソーム(ASC−Exo)の特性に対する図であり、Chondro−Exoの構造および形状(透過電子顕微鏡、transmission electron microscope)。
図3b】軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソーム(Chondro−Exo)と増殖する幹細胞由来のエキソソーム(ASC−Exo)の特性に対する図であり、Chondro−Exoのサイズ(ナノ粒子分析器、dynamic light scattering)。
図3c】軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソーム(Chondro−Exo)と増殖する幹細胞由来のエキソソーム(ASC−Exo)の特性に対する図であり、ASC−Exoの構造および形状(透過電子顕微鏡、transmission electron microscope)。
図3d】軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソーム(Chondro−Exo)と増殖する幹細胞由来のエキソソーム(ASC−Exo)の特性に対する図であり、ASC−Exoのサイズ(ナノ粒子分析器、dynamic light scattering)。
図4】軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソームのエキソソーム膜表面マーカー(Exo−CheckTM exosome antibody arrays)である。
図5】ヒト脂肪由来幹細胞を軟骨細胞に分化誘導した結果である; GM:幹細胞培養培地(growth medium)、ASC−EXO:増殖している幹細胞由来のエキソソーム、Chondro−EXO:軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソーム、DM:軟骨細胞への分化培地(differentiation medium)、点線表示:細胞間に凝縮現象が起きた部分。
図6】ヒト脂肪由来幹細胞を軟骨細胞に分化誘導21日後に分析した結果である;A:アルシアンブルー染色(alcian blue staining)による軟骨特異的基質である酸性粘液多糖類(acidic mucosubstance and acidic mucin)の合成確認、B:サフラニンO染色(safranin−o staining)による軟骨特異的基質であるプロテオグリカン(proteoglycan)の合成確認、GM:幹細胞培養培地(growth medium)、Chondro−EXO:軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソーム、DM:軟骨細胞への分化培地(differentiation medium)。
図7】骨関節炎(osteoarthritis)モデルマウスの関節腔内に軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソーム(Chondro−EXO)と対照群としてリン酸緩衝食塩水(phosphate−buffered saline、PBS)を注入した後、軟骨組織の再生程度を正常の軟骨(Normal cartilage)と比較確認するために、サフラニンO染色(safranin−o staining)を実施した結果である(knee joint、100x);T:脛骨(tibia)、F:大腿骨(femur)。
図8】表1に基づいて骨関節炎の誘発の程度を示したマンキンスコア(Mankin score)をグラフで表した図である;PBS:リン酸緩衝食塩水(陰性対照群)、Chondro−EXO:軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソーム、Femoral condyle:大腿顆、Tibial plateau:脛骨プラトー。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明を下記の実施例でより詳細に記述する。ただし、下記の実施例は、本発明の内容を例示するものに過ぎず、本発明の権利範囲を制限したり限定するものではない。本発明の詳細な説明および実施例から、本発明が属する技術分野の通常の技術者が容易に類推することができるものは、本発明の権利範囲に属するものと解釈される。
【0057】
<実施例1>軟骨細胞に分化されている幹細胞からエキソソームの分離
軟骨細胞に分化されている幹細胞からエキソソームを分離するために、ヒト脂肪由来幹細胞を一般培養培地[10%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するDMEM(Dulbecco Modified Eagle Medium high glucose)]で80〜90%程度増殖させた後、分化培地[5%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、100nM デキサメタゾン(dexamethasone)、0.15mM アスコルビン酸(ascorbic acid)、1X ITS(Insulin−Transferrin−Sodium selenite)、10ng/mL TGF−β1(Transforming Growth Factor β1)を含有するDMEM(Dulbecco Modified Eagle Medium high glucose)]に交換し、合計5週間培養することにより、軟骨細胞への分化を誘導した。
【0058】
分化培地に交換した後、エキソソームを分離する前に、幹細胞を無血清培地でありながらフェノールレッド(phenol red)がないDMEM培地に交換して24時間維持した後、細胞培養上清を回収した。回収した細胞培養上清を300xgで10分間遠心分離して細胞を除去し、2,000xgで30分間遠心分離して細胞の分泌物を除去した。その後、分子量3,000のフィルターが装着された遠心分離チューブ(molecular weight cut off=3000、amicon tube)を用いて、5,000xgで60分間遠心分離をして濃縮した。濃縮後、得られた上清は、エキソソーム分離試薬(exosome isolation reagent)と1:0.5の割合で混合し、4℃で1日保管した。その後、10,000xgで60分間遠心分離を介してエキソソームの沈殿物を得た後、0.22μmフィルター(exosome spin column)を介して濾過し、リン酸緩衝食塩水(phosphate−buffered saline、PBS)で洗浄した。洗浄したエキソソーム沈殿物は、10,000xgで60分間遠心分離した後、PBSに再懸濁した。上清を回収した後、再び分化培地を添加して、幹細胞の軟骨細胞分化を誘導し、このような過程を5週まで繰り返した。分化培地交換2週後から、軟骨細胞に分化時に観察される細胞間凝縮現象が現れ始めて5週後には、コロニーが生成されることを確認した(図2)。したがって、細胞の形状の変化が確実に現れる分化誘導後2週後から5週までの期間中に回収した上清からエキソソームを分離した。
【0059】
<比較例1>増殖する幹細胞からエキソソームの分離
軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソームの効能を比較するために増殖するヒト脂肪由来幹細胞からエキソソーム(Adipose tissue−derived stem cell、ASC−EXO)を分離して比較群として使用した。具体的には、分化培地を使用しないことを除いては、実施例1と同じ方法を実行して増殖するヒト脂肪由来幹細胞からエキソソームを分離した。
【0060】
<実施例2>エキソソームの顕微鏡分析
実施例1の軟骨細胞に分化されている幹細胞から分離されたエキソソームと増殖する幹細胞から分離されたエキソソームを透過電子顕微鏡(transmission electron microscope)とナノ粒子分析器(dynamic light scattering)を使用して大きさおよび形状を確認し、特定のタンパク質の発現有無を示すエキソソームアンチボディアレイ(Exo−CheckTM exosome antibody arrays)を用いて、エキソソーム膜表面タンパク質を確認した。
【0061】
その結果、分離されたエキソソームの形状を透過電子顕微鏡で確認することができ(図3aおよび3c)、それぞれの大きさは平均で約83.6nm(Chondro−EXO)、87.17nm(ASC−EXO)であることを確認した(図3bおよび3d)。
【0062】
また、エキソソームアンチボディアレイを用いて、エキソソーム膜表面マーカーとして知られている(CD63、CD81、ALIX、FLOT1、ICAM1、EpCam、ANXA5およびTSG101)エキソソーム特異的マーカーの発現を抗体反応を介して確認した(図4)。
【0063】
<実施例3>エキソソームを用いた軟骨細胞分化誘導
エキソソームを用いて、ヒト脂肪由来幹細胞の軟骨細胞への分化を誘導するために、増殖している幹細胞由来のエキソソーム(ACS−EXO)を含む培地組成物と、軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソーム(Chondro−EXO)を含む培地組成物を用いた。前記培地組成物は、10μg/mLの濃度のエキソソームを幹細胞培養培地[5%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するDMEM(Dulbecco Modified Eagle Medium high glucose)]に追加して使用した。
【0064】
陰性対照群(Growth medium、GM)として幹細胞培養培地[5%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するDMEM(Dulbecco Modified Eagle Medium high glucose)]を使用し、陽性対照群(Differentiation medium、DM)としては、軟骨細胞への分化培地[5%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、100nM デキサメタゾン(dexamethasone)、0.15mM アスコルビン酸、1X ITS(Insulin−Transferrin−Sodium selenite)、10ng/mL TGF−β1(Transforming Growth Factor β1)を含有するDMEM(Dulbecco Modified Eagle Medium high glucose)]を使用した。
【0065】
前記培地組成物は、3日に1回、35日間交換し、軟骨細胞に分化が誘導された幹細胞に対して顕微鏡を用いて細胞の形状の変化を確認した。
【0066】
その結果、軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソーム(Chondro−EXO)を処理した細胞で21日目から陽性対照群と類似するレベルで細胞間凝縮現象(precartilage condensation)が表れることを確認することができ、陰性対照群(GM)と、増殖する幹細胞由来のエキソソーム(ASC−EXO)を処理したグループでは、細胞間凝縮現象が起こらず増殖のみ行われることが確認できた(図5)。
【0067】
<実施例4>エキソソームを用いた軟骨細胞分化能の分析
エキソソームを用いた幹細胞の軟骨細胞への分化誘導を確認するために、軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソーム(Chondro−EXO)を含む培地組成物を用いた。前記培地組成物は、軟骨細胞に分化される幹細胞由来のエキソソームを5、10、30、50μg/mLの濃度で幹細胞培養培地[5%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するDMEM(Dulbecco Modified Eagle Medium high glucose)]に追加して使用した。
【0068】
陰性対照群として幹細胞培養培地[5%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するDMEM(Dulbecco Modified Eagle Medium high glucose)]を使用し、陽性対照群としては軟骨細胞への分化培地[5%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、100nM デキサメタゾン(dexamethasone)、0.15mM アスコルビン酸、1X ITS(Insulin−Transferrin−Sodium selenite)、10ng/mL TGF−β1(Transforming Growth Factor β1)を含有するDMEM(Dulbecco Modified Eagle Medium high glucose)]を使用した。
【0069】
その後、21日間培地組成物を3日に1回ずつ交換し、軟骨細胞に分化された幹細胞についてアルシアンブルー染色(alcian blue staining)、サフラニンO染色(safranin−o staining)を用いて、細胞の分化がなされるか否かを分析した。
【0070】
その結果、軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソーム(Chondro−EXO)を処理時、軟骨細胞の特異的細胞外基質(extracellular matrix)が生成されたことを確認できた。アルシアンブルー染色(alcian blue staining)は、軟骨特異的基質のうち酸性粘液多糖類(acidic mucosubstance and acidic mucin)を青に染色させ(図6のA)、サフラニンO染色(safranin−o staining)は軟骨特異的基質のうちプロテオグリカン(proteoglycan)に赤く染色される(図6のB)。
【0071】
また、エキソソームを幹細胞に濃度別に処理したとき、それぞれの染色により軟骨特異的基質が生成されたことを確認することができ、低濃度(5μg/mL)のエキソソームが含まれた培地でも幹細胞が軟骨細胞に分化されたことを確認した。
【0072】
したがって、軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソームは幹細胞から軟骨細胞への分化誘導効果に優れていることが確認できた。
【0073】
<実施例5>軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソームを用いた生体内(in vivo)軟骨再生の評価
骨関節炎(osteoarthritis)モデルに通常使用されるDMM(Destabilization of the medial meniscus)関節炎誘発モデルマウス(mouse)を用いて、軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソームの実際の生体内軟骨組織再生効果を確認した。
【0074】
具体的には、マウスの膝周辺をきれいに脱毛した後、手術ツールを用いて、膝蓋骨の側面に沿って膝関節の部分を1cm程度切開した。関節包(joint capsule)の部分を露出させて切開した後、内側半月板(medial meniscus)に連結されている内側靭帯(medial meniscotibial ligament)を切り取り、関節包(joint capsule)と皮膚を順番に閉じた後、縫合糸で仕上げた。
【0075】
手術後、骨関節炎(osteoarthritis)が進行する5週目から10週目までエキソソームが含まれた組成物を週に1回ずつ関節腔内に注射した。エキソソーム組成物は、実施例1の軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソームをリン酸緩衝食塩水(phosphate−buffered saline、PBS)に担持して製造した。前記エキソソーム組成物は、エキソソームの最終濃度が500μg/mLであり、マウスの関節腔内に6μLずつ(マウス1匹基準 3μg/6μL)注入した。陰性対照群としては、リン酸緩衝食塩水(PBS)を使用した。11週後、サフラニンO染色(safranin−o staining)を用いて、軟骨組織が再生するか否かを確認した。
【0076】
その結果、陰性対照群に比べて軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソームが含まれた組成物の処理時に、軟骨特異的基質が多く合成され、軟骨表面(superficial zone)の損傷がなく自然軟骨と類似に再生されたことを確認した。再生された軟骨は、赤色に染色された。したがって、軟骨細胞に分化される幹細胞由来のエキソソームが含まれた組成物は、軟骨組織の再生効果に優れていることを確認した(図7)。
【0077】
また、骨関節炎を評価する基本的な組織病理学的観察であるマンキンスコア(Mankin score)を用いて、骨関節炎の際に誘発される軟骨の表面の損傷、軟骨細胞、染色性、軟骨と骨の境界であるタイドマーク(tide mark)の変化を基準に判断して点数を付与した。点数が高いほど骨関節炎の誘発程度、すなわち、軟骨の損傷程度が高いことを示し、マンキンスコアの結果を下記表1および表2に示した。
【0078】
【表1】
大腿顆(Femoral condyle)
【0079】
【表2】
脛骨プラトー(Tibial plateau)
【0080】
前記表の結果から分かるように、軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソームを含む組成物を注入したとき、軟骨の表面損傷および細胞過多性(hypercellularity)が低く、軟骨特異的基質の合成が高いと判断されてマンキンスコア(Mankin score)の減少が認められた(表1、表2および図8)。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4
図5
図6
図7
図8