【課題を解決するための手段】
【0012】
前記のような目的を達成するために、本発明の一実施例は、軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソームを有効成分として含む軟骨細胞への分化誘導または軟骨組織再生用組成物を提供する。
【0013】
本発明で使用される用語、「軟骨細胞に分化されている幹細胞」とは、
図1のように軟骨細胞に分化中の幹細胞を意味する。これから、軟骨細胞の遺伝情報、タンパク質、成長因子を含有しているエキソソームを分離することができる。
【0014】
具体的には、幹細胞が軟骨細胞に分化するとき、細胞の形状および特性が変化するが、このときエキソソームを分離するのである。したがって、通常の幹細胞からエキソソームを分離することと異なるとみることができる。
【0015】
本発明で使用される用語、「エキソソーム(exosome)」とは、様々な種類の細胞から分泌される膜構造の小胞体で、他の細胞および組織に結合して膜の構成要素、タンパク質、RNAを伝達するなど、様々な役割をすることが知られている。
【0016】
前記軟骨細胞に分化されている幹細胞由来のエキソソームは、幹細胞の基本的な特性を有することができ、軟骨分化の際の重要な成長因子、様々な生体活性タンパク質および遺伝子情報などを含有することができる。
【0017】
前記エキソソームは、当業界に知られているエキソソーム分離方法を用いて製造することができ、例えば、
1)幹細胞を増殖する段階;
2)前記増殖された幹細胞を軟骨細胞に分化させる段階;および
3)軟骨細胞に分化されている幹細胞からエキソソームを分離および精製する段階;を含む方法を用いることができる。
【0018】
前記「軟骨細胞への分化誘導」とは、幹細胞(stem cell)が軟骨細胞に分化(differentiation)されるように誘導することを意味することができる。
【0019】
前記「軟骨組織再生」とは、損傷した軟骨組織を復元したり、または不足している軟骨組織の生成を誘導して軟骨組織を再生(regeneration)することを意味することができる。
【0020】
前記軟骨細胞に分化されている幹細胞は、軟骨細胞に分化可能な成体幹細胞であってもよい。
【0021】
前記軟骨細胞に分化可能な成体幹細胞は、骨髄幹細胞、臍帯血幹細胞または脂肪由来幹細胞であってよく、例えば、脂肪由来幹細胞であってもよい。
【0022】
前記骨髄幹細胞、臍帯血幹細胞または脂肪由来幹細胞は、ヒト、動物または植物由来の幹細胞であってもよい。
【0023】
本発明による軟骨再生用組成物は、効果的な軟骨再生のための効能物質として軟骨細胞に分化する幹細胞由来のエキソソームを使用するという点で従来技術と差別性がある。分離、精製されたエキソソームに担持された細胞の増殖および分化に関する様々な成長因子によって効果的に持続可能な軟骨組織の再生がなされ、従来の自家軟骨細胞や成体幹細胞の体外細胞培養の問題点、繊維軟骨への再生、または細胞死滅による組織の石灰化などの問題を解決することができる。
【0024】
本発明による軟骨細胞に分化される期間中に分離された幹細胞由来のエキソソームは、幹細胞の特性を有するだけでなく、軟骨細胞への分化に関する活性因子だけを効果的に伝達し、副作用を最小化しながら、既存の幹細胞を用いた治療のような効果を期待することができる。
【0025】
本発明による軟骨細胞に分化される期間中に分離された幹細胞由来のエキソソームは細胞から分泌される生体膜小胞体である。また、細胞膜と類似の脂質構造を持っているので、体内に注入されたとき周りの細胞への吸収率に優れ、効能物質の迅速な伝達に軟骨組織の効果的な再生誘導が可能である。
【0026】
本発明の他の具体例は、前記軟骨細胞への分化誘導または軟骨組織再生用組成物を含む軟骨細胞への分化誘導用培地組成物を提供する。
【0027】
前記培地組成物は、エキソソームが1〜100μg/mLの濃度、具体的には1〜60μg/mLの濃度、例えば50μg/mLの濃度で含まれてもよいが、これに限定されない。
【0028】
前記軟骨細胞への分化誘導用培地組成物は、幹細胞を軟骨細胞に分化させるためにデキサメタゾン(dexamethasone)、インスリン(insulin)、アスコルビン酸(ascorbate)、軟骨形成成長因子であるIGF(Insulin−like Growth Factor)、およびTGF−β1(Transforming Growth Factorβ1)などの分化誘導物質をさらに含むことができるが、これに限定されない。
【0029】
本発明のさらなる具体例は、前記軟骨細胞への分化誘導または軟骨組織再生用組成物を含む軟骨組織再生用注射剤を提供する。
【0030】
前記注射剤は、リン酸緩衝食塩水(phosphate−buffered saline、PBS)をさらに含むことができる。すなわち、前記注射剤は、リン酸緩衝食塩水に軟骨細胞への分化誘導または軟骨組織再生用組成物を担持して使用することができる。
【0031】
前記注射剤は、リン酸緩衝食塩水の代わりにハイドロゲルを含むことができる。
【0032】
前記ハイドロゲルは、ヒアルロン酸、ゼラチン、アルギン酸塩、キトサン、フィブリン、エラスチン、コラーゲン、およびメチルセルロースから構成された群から選択されたいずれか1つ以上であってもよく、具体的にヒアルロン酸ハイドロゲルであってもよいが、これに限定されない。
【0033】
前記注射剤は、エキソソームが1〜1000μg/mLの濃度、具体的には10〜900μg/mLの濃度で、より具体的には10〜800μg/mLの濃度、例えば500μg/mLの濃度で含まれてもよいが、これに限定されない。
【0034】
前記注射剤は、ラット、マウス、家畜、人間などの哺乳動物の軟骨などの損傷部位に注射して投与することができる。
【0035】
本発明による軟骨再生用組成物は、注射剤組成物として体内注入が容易であるため、手術時間とコストの面で経済的であり、これにより患者の苦痛、後遺症と経済的負担を軽減してくれる。また、幹細胞が軟骨細胞に分化されるとき分離されたエキソソームには細胞外基質誘導体、細胞の増殖および分化に関連する様々の成長因子が含まれており、損傷した軟骨組織の効果的な再生誘導が可能である。したがって、一度の施術で長期的な効果を期待することができ、持続的な効果を得るために周期的に施術をしなければならなかった既存の問題点を克服することができる。
【0036】
本発明のさらなる具体例は、前記軟骨細胞への分化誘導または軟骨組織再生用組成物を含む軟骨疾患治療用薬剤学的組成物を提供する。
【0037】
本明細書で使用される用語、「軟骨疾患」は、軟骨組織の損傷に由来する軟骨疾患であってもよく、具体的には骨関節炎、変形性関節症、軟骨形成異常症、退行性関節炎、リウマチ性関節炎、骨軟化症、繊維性骨炎および無形成骨疾患から構成される群から選択されたものであってもよいが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書で使用される用語、「軟骨疾患の治療」は、軟骨疾患治療用組成物を関節内注射して、損傷した軟骨を再生することにより、軟骨組織の損傷が治療されることを意味することができる。
【0039】
前記具体例による薬学的組成物は、経口または非経口の様々な剤形であってもよい。製剤化する場合には、通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調製される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、一つ以上の化合物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調製される。また、単純な賦形剤以外にステアリン酸マグネシウム、タルクなどの潤滑剤も使用される。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、よく使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれてもよい。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。
【0040】
前記具体例による薬学的組成物は、非水性溶剤、懸濁溶剤としてはプロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用されてもよい。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用されてもよい。
【0041】
前記具体例による薬学的組成物の投与形態は、それらの薬学的に許容可能な塩の形態でも使用することができ、また、単独で、または他の薬学的活性化合物と結合だけでなく、適切な集合で使用することができる。前記塩としては、薬学的に許容されるものであれば特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ギ酸、酢酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などを使用することができる。
【0042】
前記具体例による薬学的組成物は、目的とするところにより、非経口投与や経口投与することができ、一日に体重1kgあたり0.1〜500mg、1〜100mgの量で投与されるように1〜数回に分けて投与することができる。特定患者への投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食事、投与時間、投与方法、排泄率、疾患の重症度等により変化されてもよい。
【0043】
前記具体例による薬学的組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形、軟膏、クリームなどの外用剤、坐剤、および滅菌注射溶液などをはじめ、薬剤学的製剤に適したいかなる形態でも剤形化して使用することができる。
【0044】
前記具体例による薬学的組成物は、ラット、マウス、家畜、人間などの哺乳動物に非経口、経口などの多様な経路で投与することができ、投与のすべての方式は予想されうるが、好ましくは、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内膜または脳血管内(intracerebroventricular)注射によって投与することができる。
【0045】
前記具体例による薬学的組成物は、幹細胞を軟骨細胞に分化させるためにデキサメタゾン(dexamethasone)、インスリン(insulin)、アスコルビン酸(ascorbate)、軟骨形成成長因子であるIGF(Insulin−like Growth Factor)およびTGF−β1(Transforming Growth Factorβ1)などの分化誘導物質をさらに含むことができるが、これに限定されない。
【0046】
本発明のさらなる具体例は、前記軟骨細胞への分化誘導または軟骨組織再生用組成物の治療的に有効な量を哺乳動物に投与する段階を含む軟骨疾患の治療方法を提供する。
【0047】
前記組成物は、前記軟骨細胞への分化誘導または軟骨組織再生用組成物を含む軟骨疾患治療用薬剤学的組成物であるか、前記軟骨細胞への分化誘導または軟骨組織再生用組成物を含む軟骨再生注射剤であってもよい。したがって、前記軟骨疾患治療用薬剤学的組成物または軟骨再生注射剤について記載された内容は、治療方法にも同様に適用することができる。
【0048】
前記哺乳動物は、軟骨疾患を患っている哺乳動物であってよく、例えば、軟骨疾患を患っているラット、マウス、家畜、人間などであってもよい。
【0049】
前記「治療的に有効な量」とは、哺乳動物において軟骨疾患治療的反応を示すのに十分な組成物の量を意味する。
【0050】
前記投与形態は、非経口投与と経口投与の形態を含むが、例えば、哺乳動物の軟骨などの損傷部位に注射して投与することができる。
【0051】
本発明の一実施例において、増殖する幹細胞由来のエキソソーム(ASC−EXO)および軟骨細胞に分化する幹細胞由来のエキソソーム(Chondro−EXO)のサイズを確認した結果、それぞれの平均サイズが約88.17nm、83.6nmであることを確認することができた(
図3a〜
図3d)。
【0052】
本発明の他の一実施例において、幹細胞を軟骨細胞に分化させる実験で、本発明による軟骨細胞に分化される幹細胞由来のエキソソーム(Chondro−EXO)を含有する培地組成物を処理した結果、本発明によるエキソソーム処理時の21日目から陽性対照群と類似のレベルで細胞間に凝縮現象が現れ、軟骨特異的基質の発現を確認することができた。しかし、増殖する幹細胞由来のエキソソーム(ASC−EXO)および陰性対照群では、このような分化特徴が発見されず、二つのグループの場合、増殖のみ行われることを確認した(
図5および6)。
【0053】
本発明のさらなる一実施例において、本発明による軟骨細胞に分化される幹細胞由来のエキソソーム(Chondro−EXO)を含む組成物は、生体内注入時の軟骨組織の再生効果に優れていることを確認した(
図7および8)。