特許第6577043号(P6577043)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6577043ボール−本体空洞内で流れを引き起すマルチポートボールバルブ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6577043
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】ボール−本体空洞内で流れを引き起すマルチポートボールバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/087 20060101AFI20190909BHJP
   F16K 5/06 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   F16K11/087 Z
   F16K5/06 E
   F16K5/06 C
   F16K5/06 L
【請求項の数】17
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-544650(P2017-544650)
(86)(22)【出願日】2016年2月10日
(65)【公表番号】特表2018-507991(P2018-507991A)
(43)【公表日】2018年3月22日
(86)【国際出願番号】IB2016000113
(87)【国際公開番号】WO2016132198
(87)【国際公開日】20160825
【審査請求日】2017年9月20日
(31)【優先権主張番号】62/117,508
(32)【優先日】2015年2月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517288885
【氏名又は名称】ベラン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VELAN INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キンダースリー,ピーター・ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ゼディック,カイル・フィリップ
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−124982(JP,A)
【文献】 中国実用新案第201363458(CN,Y)
【文献】 特開2000−018405(JP,A)
【文献】 特開2000−230647(JP,A)
【文献】 実開平03−020767(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/00−11/24
F16K 5/00− 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチポートボールバルブであって、
第1の軸に沿った本体入口ポートと、それぞれ異なった関係する軸に沿った少なくとも2つの本体出口ポートとを有する、本体空洞を含むバルブ本体を備え、前記本体出口ポートの軸は互いに予め定められた角度を成すとともに、前記本体入口ポートの軸に対して横切る角度を成し、前記マルチポートボールバルブはさらに、
前記本体空洞内に回転可能に配置された中空ボールを備え、前記中空ボールは、前記ボールの内部空間へのボール入口ポートを有し、前記ボール入口ポートの軸は、前記本体入口ポートの軸と一直線になっており、前記ボールは、本体出口ポートと選択的に位置合せされるように回転可能な横向きのボール出口ポートと、前記ボール入口ポートの反対側の切頭外面とをさらに有し、
前記中空ボールは、前記中空ボールの内部から前記切頭外面に通じる少なくとも1つの通路を含み、
前記中空ボールは少なくとも2つの通路を含み、各通路はテーパ状であり、前記少なくとも2つの通路は、実質的にサイズが等しく、かつ、円形軌跡に沿って配置されており、前記少なくとも2つの通路は、前記ボールの前記切頭外面に沿って前記ボール入口ポートの軸にまたがっている、マルチポートボールバルブ。
【請求項2】
各通路は、前記中空ボール内で終わる端部が、前記ボールの前記切頭外面で終わる他方の端部よりも大きいテーパ状であり、前記少なくとも2つのテーパ状通路の前記中空ボール内で終わる端部の合計面積は、前記ボール入口ポートの面積の1/2〜3/4である、請求項1に記載のマルチポートボールバルブ。
【請求項3】
前記少なくとも2つのテーパ状通路の各々の断面は弓形である、請求項1に記載のマルチポートボールバルブ。
【請求項4】
マルチポートボールバルブであって、
第1の軸に沿った本体入口ポートと、それぞれ異なった関係する軸に沿った少なくとも2つの本体出口ポートとを有する、本体空洞を含むバルブ本体を備え、前記本体出口ポートの軸は互いに予め定められた角度を成すとともに、前記本体入口ポートの軸に対して横切る角度を成し、前記マルチポートボールバルブはさらに、
前記本体空洞内に回転可能に配置された中空ボールを備え、前記中空ボールは、前記ボールの内部空間へのボール入口ポートを有し、前記ボール入口ポートの軸は、前記本体入口ポートの軸と一直線になっており、前記ボールは、本体出口ポートと選択的に位置合せされるように回転可能な横向きのボール出口ポートと、前記ボール入口ポートの反対側の切頭外面とをさらに有し、
前記中空ボールは、前記中空ボールの内部から前記切頭外面に通じる少なくとも1つの通路を含み、
前記中空ボールは、少なくとも3つの通路を含み、
前記通路のうちの第1と第2の通路はテーパ状であり、実質的に等しい第1のサイズを有し、円形軌跡に沿って配置され、かつ、前記ボールの前記切頭外面に沿って前記ボール入口ポートの軸にまたがっており、
前記通路のうちの第3の通路もテーパ状であり、前記切頭外面上で前記円形軌跡に沿って配置され、かつ、前記第1と第2の通路の間に位置している、マルチポートボールバルブ。
【請求項5】
前記第3のテーパ状通路の流体流入口面積は、前記第1と第2のテーパ状通路の流体流入口面積の約50%〜90%である、請求項4に記載のマルチポートボールバルブ。
【請求項6】
マルチポートボールバルブであって、
第1の軸に沿った本体入口ポートと、それぞれ異なった関係する軸に沿った少なくとも2つの本体出口ポートとを有する、本体空洞を含むバルブ本体を備え、前記本体出口ポートの軸は互いに予め定められた角度を成すとともに、前記本体入口ポートの軸に対して横切る角度を成し、前記マルチポートボールバルブはさらに、
前記本体空洞内に回転可能に配置された中空ボールを備え、前記中空ボールは、前記ボールの内部空間へのボール入口ポートを有し、前記ボール入口ポートの軸は、前記本体入口ポートの軸と一直線になっており、前記ボールは、本体出口ポートと選択的に位置合せされるように回転可能な横向きのボール出口ポートと、前記ボール入口ポートの反対側の切頭外面とをさらに有し、
前記中空ボールは、前記中空ボールの内部から前記切頭外面に通じる少なくとも1つの通路を含み、
各本体出口ポートに配置されたバルブシートをさらに備え、前記バルブシートは、複数のアパーチャを有する管状支持体構造内に収容された圧縮ベローズにより、それぞれ対応する本体出口ポートの方へ内向きに付勢され、
前記本体は湾曲内面を含み、前記湾曲内面は、前記ボールの前記切頭外面から間隔を空けて配置され、かつ、前記ボールの前記切頭外面に対向しており、前記湾曲内面は、前記中空ボールの前記少なくとも1つの通路から流れ出る流体を、前記管状支持体構造における前記アパーチャのうちの少なくともいくつかのアパーチャ内へ方向付けるように配置されている、マルチポートボールバルブ。
【請求項7】
前記管状支持体構造における前記複数のアパーチャは、前記複数のアパーチャの開口が、前記湾曲内面によって進路変更された前記ボール内の前記少なくとも1つの通路からの流体流路と位置合せされるように配置される、請求項に記載のマルチポートボールバルブ。
【請求項8】
前記湾曲内面は、前記ボール内の前記少なくとも1つの通路の内側縁部と一致する内径を有し、前記湾曲内面は、前記管状支持体構造の最大長さまで延在する外径を有し、その結果、前記ボールの前記切頭外面と平行な平面から見た場合、前記湾曲内面はドーナツ形である、請求項に記載のマルチポートボールバルブ。
【請求項9】
マルチポートボールバルブであって、
第1の軸に沿った本体入口ポートと、それぞれ異なった関係する軸に沿った少なくとも2つの本体出口ポートとを有する、本体空洞を含むバルブ本体を備え、前記本体出口ポートの軸は互いに予め定められた角度を成すとともに、前記本体入口ポートの軸に対して横切る角度を成し、前記マルチポートボールバルブはさらに、
前記本体空洞内に回転可能に配置された中空ボールを備え、前記中空ボールは、前記ボールの内部空間へのボール入口ポートを有し、前記ボール入口ポートの軸は、前記本体入口ポートの軸と一直線になっており、前記ボールは、本体出口ポートと選択的に位置合せされるように回転可能な横向きのボール出口ポートと、前記ボール入口ポートの反対側の切頭外面とをさらに有し、
前記中空ボールは、前記中空ボールの内部から前記切頭外面に通じる少なくとも1つの通路を含み、
前記ボール出口ポート内に形成された障害物をさらに備え、前記障害物は、前記ボール出口ポートからの流体の流れを部分的に妨害するせき止め部として機能する、マルチポートボールバルブ。
【請求項10】
前記障害物は弓形であり、前記障害物の高さは、前記ボール出口ポートの直径の1/10〜1/6であり、前記障害物の長さは、前記ボール出口ポートのおよそ60°〜120°の部分に延在し、前記ボール出口ポートから前記中空ボール内まで延在する前記障害物の幅は、前記ボール出口ポートの前記直径の1/50〜1/10である、請求項に記載のマルチポートボールバルブ。
【請求項11】
マルチポートボール切替バルブであって、
本体入口ポートと、それぞれ異なった関係する軸に沿った少なくとも2つの本体出口ポートとを有する、本体空洞を含むバルブ本体を備え、前記本体出口ポートの軸は、互いに予め定められた角度を成すとともに、前記本体入口ポートの軸に対して横切る角度を成し、前記マルチポートボール切替バルブはさらに、
前記本体空洞内に回転可能に配置された中空ボールを備え、前記中空ボールは、前記ボールの内部空間へのボール入口ポートを有し、前記ボール入口ポートの軸は、前記本体入口ポートの軸と一直線になっており、前記ボールは、本体出口ポートと選択的に位置合せされるように回転可能な横向きのボール出口ポートと、前記ボール入口ポートの反対側の切頭外面とをさらに有し、前記マルチポートボール切替バルブはさらに、
前記本体出口ポートの軸の各々に沿って同軸に配置された金属ベローズを備え、前記金属ベローズは、アパーチャを備えた管状支持体内で圧縮されており、前記金属ベローズの第1の端部は金属バルブシートに接しており、前記金属ベローズの第2の端部は前記アパーチャを備えた管状支持体に接しており、
前記中空ボールは、前記中空ボールの内部から前記切頭外面へ、かつ、前記管状支持体における少なくとも1つのアパーチャへ通じる少なくとも1つの通路を含む、マルチポートボール切替バルブ。
【請求項12】
前記ボールを貫通する前記通路は複数設けられ、前記通路の各々はテーパ状であるとともに、前記管状支持体のうちの対応する1つの管状支持体における、対応する少なくとも1つのアパーチャに位置合せされている、請求項1に記載のマルチポートボール切替バルブ。
【請求項13】
マルチポートボールバルブであって、
本体空洞を含むバルブ本体と、中空ボールとを備え、前記中空ボールは、ベンチュリテーパ状バルブ本体入口ポートからの流体を複数のバルブ出口ポートのうちの1つに切替えるように、前記本体空洞内で選択的に回転可能であり、
前記中空ボールは、当該中空ボールを貫通する少なくとも1つの穴を有し、前記少なくとも1つの穴は、前記入口ポートに対向して配置された1つの端部と、前記本体空洞に配置された別の端部とを有し、
前記バルブ本体は、内側に湾曲する凹面を有し、前記内側に湾曲する凹面は、前記中空ボールの前記少なくとも1つの穴に対向して配置され、前記マルチポートボールバルブはさらに、
前記バルブ出口ポートの各々に設けられたバルブシートを備え、前記バルブシートの各々は、アパーチャを備えた管状支持体内の対応する圧縮ベローズに接しており、前記アパーチャを備えた管状支持体は、前記バルブ本体の前記内側に湾曲する凹面と流体連通するアパーチャを備えた外面を有する、マルチポートボールバルブ。
【請求項14】
前記中空ボールは2つの貫通穴を含み、各貫通穴はテーパ状であり、前記2つの貫通穴は前記入口ポートにまたがるように配置されている、請求項1に記載のマルチポートボールバルブ。
【請求項15】
前記貫通穴の各々は、前記中空ボール内で終わる端部が、前記本体空洞で終わる他方の端部よりも大きいテーパ状である、請求項1に記載のマルチポートボールバルブ。
【請求項16】
前記貫通穴の各々の断面が弓形である、請求項1に記載のマルチポートボールバルブ。
【請求項17】
前記中空ボールは、少なくとも3つの貫通穴を含み、
前記貫通穴のうちの第1と第2の貫通穴はテーパ状であり、実質的に等しい第1のサイズを有し、円形軌跡に沿って配置され、かつ、前記入口ポートにまたがっており、
前記貫通穴のうちの第3の貫通穴もテーパ状であり、前記円形軌跡に沿って配置され、
かつ、前記第1と第2の貫通穴の間に位置している、請求項1に記載のマルチポートボールバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2015年2月18日に米国特許商標庁に出願された米国仮出願第62/117,508号の優先権を主張する。この米国仮出願第62/117,508号の全内容は、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
原油を精製する分野において、ディレードコーカと呼ばれるプロセスユニットは、精留塔と呼ばれる他のプロセスユニットのうちの1つから重質残油を再処理することによって、ガソリンの生産および他の高品位の生産物を増加させ、1日当たり何万ドルもの価値を追加する。ディレードコーカのプロセスユニットにおいて、重油は、まずヒータを通過し、次いで、特殊なマルチポート金属シートボール型ダイバータバルブ(本発明の1つの適用例である「切替バルブ」と呼ばれる)を通過する。
【0003】
切替バルブにより、加熱された重油の流れは、2つの大きなドラム内へ、または、第3のドラムバイパス接続へ進路変更される。加熱された油は、加熱後、ある期間(「ドウェル(dwell)」時間と呼ばれる)だけ、典型的には加熱後1/2時間〜2時間、液体のままである。次いで、油は固化し、主にカーボンの硬質形態である「石油コークス(petroleum coke)」と呼ばれるものになる。この固化は上記2つのドラム内で起り、そこからコークスが特殊装置で除去される。
【0004】
加熱された油は、ドウェル時間が経過する前にドラムに達することが重要である。そうすれば、ヒータ、管、または切替バルブにおいてではなく、ドラム内で固化が起る。重油の当該特性(すなわち固体状態への変化)は、切替バルブの設計上の問題を呈する。なぜなら、重油がドウェル時間よりも長く留まる可能性のある停滞領域または流れの遅い領域が、バルブ設計により生じてはならないからである。さもなければ、停滞またはほぼ停滞した重油が、上記領域において固体のコークスに変化し、バルブの操作を困難もしくは不可能にするか、またはそれの漏洩を引き起すであろう。このような問題により、費用のかかるプロセスユニットの停止を行なってバルブを一掃することが必要となる場合がある。
【0005】
この問題を解決するために、ボールバルブのいくつかの改良が試みられてきた。たとえば、米国特許第5,181,539号に記載のものがある。米国特許第5,181,539号は、ボール/本体空洞内の流れを可能にする多数のノッチを設けることを開示する。設けられた1つの穴は、径が小さく、かつ、駆動ソケットの底部に配置される必要がある。当該’539特許は、ボール/本体空洞内の流れを生じさせるであろう圧力差を引き起すために、ボールを貫通するテーパ部も必要とする。
【0006】
米国特許出願公開第2012/0012770号に開示された試みには、ストレートスルーバルブのボール表面を貫通する小さなドリル穴が設けられ、バルブ本体においてプラグシートと流体連通するメイン通路が配置されることが記載される。
【0007】
同様に、米国特許第1,177,968号には、バルブの閉止時にボールを通って流路の中身を排水するために、ストレートスルーバルブのボールの1つのチークを貫通する小さな穴を追加することが記載される。
【0008】
米国特許第3,036,600号は、ボールの回転開始時に小量の流体を通すために、ボールの貫通通路の上流端部近傍に多数の小さな穴を追加する。
【0009】
米国特許第3,270,772号は、潤滑剤を、水路内に加えるのではなく、ボールの外部表面を通ってボール内の隔てられたチャンバ内に加えるための、多数の小さな穴をボールバルブに含む。
【0010】
米国特許第3,333,813号は、ボール/本体空洞に排出口を付けるために、水路とバルブ本体との間の小さなベント孔をボールに設けたストレートスルーボールバルブを開示する。
【0011】
さらに、米国特許第3,464,449号は、穴を有するボールを開示する。この穴は、ボールの外面の一部から当該ボールの外面の別の部分まで延びる。この穴は、ボールの水路とは連通しない。
【0012】
さらに、米国特許第5,287,889号は、オン/オフバルブまたは切替バルブではなく、多数の小さな穴を有するスロットルバルブを開示する。これらの穴は、ボールが回転する際にさまざまな数の代替流路を提供し、流体を流出通路へ排出するが、流体の再循環を引き起さない。
【0013】
上記問題への他のアプローチは、米国特許第3,985,150号および第4,099,543号、ならびに米国特許出願公開第2008/0105845号に記載されている。
【0014】
上記の改良の試みのように、ボールを貫通する穴を追加した他のボールバルブは存在したが、本明細書における実施形態例の追加された穴は異なるものである。なぜなら、今回改良されたボールは形状が異なるからである。たとえば、今回改良されたボールは直線貫通通路ではなく90°貫通通路を備える。したがって、今までに検討も記載もされなかった位置および形状の穴が必要となる。たとえば、下記のいくつかの実施形態では、ボール空洞空間へ、および/またはボール空洞空間から、ボールを貫通するテーパ状(たとえば、円錐形)流路が用いられる。実施形態例では、概して、主流流体の直接の勢いをよりよく利用して、主流流体路からボール/本体空洞内に流体を押し入れるように(たとえば、主流流体からボール/本体空洞内に進路変更される比較的大きな体積流量を提供するように)、ボールが穿孔される。
【0015】
したがって、切替バルブのボールの周りおよび本体の空洞の油の停滞を低減させ、かつ、切替バルブにおける流動性を増加させるために、さらなる改良が求められる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
概要
切替バルブにおいて油が停滞するリスクのある主な領域は、(a)「ボール/本体空洞」として知られる、ボールの外径と本体の内径との間の空洞、および、(b)「ベローズOD領域」として知られる、金属ベローズ型シート後部シールの外径(OD:outside diameter)と、それらが置かれる管との間の空洞である。
【0017】
歴史的に、切替バルブにおいて停滞する可能性のあるこれらの領域において、油の入換えを保証するために、スチームパージが用いられてきた。このスチームパージの有効性は、使用されるスチームの量に依存する。都合の悪いことに、必要な量のスチームを加えることは処理面で望ましくない。なぜなら、それは望ましくない冷却効果を呈し、後に汚水として処分される必要があるからである。しかしながら、スチームを加えることは、本発明の少なくともいくつかの実施例までは、バルブの操作性を保証するための唯一の方法であるので、スチームを加えることは必要なことであった。スチーム供給はそれ自体に問題が生じる場合がある。他の場所での予期しない大口需要、供給システム機器の故障、操作者のミス、または他の問題により、必要とされる量および圧力のスチームが必ずしも入手可能とは限らない。
【0018】
上記理由により、油の停滞を防ぐために、ボール/本体空洞およびベローズOD領域のスチームパージを必要としない切替バルブ設計を開発することが大いに望まれる。新規なボールおよびベローズ保持領域を備えることによって改良されたバルブを提供すること、および、バルブ本体の2つの領域を改善することが、本発明の実施形態例の一目的である。ボールおよび内部部品の改良が簡単、かつ製造するのに経済的であることが、他の目的である。現在使用されている何百もの既存のバルブに組込み可能な改良を提供することも目的である。
【0019】
バルブ本体の空洞において停滞する可能性のある領域および流れの遅い領域を実質的にすべて除去することにより切替バルブの信頼性を向上することが、本発明の実施形態例の目的である。これは、改良されたボール、ベローズ型シートシール用の改良された支持管、作り変えられた上部カバー内面、およびバルブ本体の流入通路に追加されたベンチュリ型円錐形のうちの1つ以上を提供することによって、実施形態例で達成される。
【0020】
新たなボールは、ボールバルブを通って流れる流体の実質部分を強制的にボール/本体空洞内に流れ込ませ、ボール/本体空洞においてボールの周りおよびベローズのODの周りで循環させ、バルブボール/本体空洞内部で完全に再循環する油の流れを作り出すための、簡単で信頼できる方法を提供する。これは、ボールを貫通する、科学的に形作られて戦略的に配置された穴と、バルブの上部カバーの特殊に形作られた下面と、ベローズを取囲む管に戦略的に配置された大きな切抜き部と、バルブ本体へのベンチュリ入口と、を追加することによって、実施形態例で達成される。これらの特徴を追加することによって、ボール/本体空洞およびベローズOD領域内の停滞する可能性のある領域、および、これらの領域の望ましくないスチームパージを、実質的または完全に排除することができる。これにより、所望の目的が果たされる。
【0021】
発明の一目的は、ボール/本体空洞内、およびベローズの外径(OD)の周りで流体の入換えおよび流れを引き起すことである。
【0022】
マルチポートボールバルブの一実施形態例は、ボールを貫通する90°流路を含み、1つの本体流入口および2つまたは3つの本体流出口が設けられる。ボール内には、ボール内部から上に延びてボールの上面を貫通する、戦略的に配置された円錐形穴が含まれる。ベローズ型シートシールと、大きな切抜き部を備えるシートシール支持管とが使用され、湾曲した本体内面がバルブ本体の内部の流れを方向付ける。テーパ状バルブ本体流入口の助けにより、ボールを通って流れている流体の一部は、ボール内の円錐形穴を通ってバルブのボール/本体空洞内に流れ、そこからボール外径(OD)の外側へ、下方へ、および周りに、かつ、ベローズ型シートシールのODの周りに流れ、ボールの流入口において、ボール内を通る主流流体に再び合流する。
【0023】
この実施形態では、本体の空洞および金属ベローズ型シートシールの周りにおいて流体が迅速に入換えられることにより、流体の停滞が防止される。
【0024】
第1の方法は、ボールの上部の穴を提供する。ボール底部と本体との間には隙間が空けられる。ボール流入口および本体流入口の近傍において、ボールと本体との間の環状空間でベンチュリ吸引効果を生み出すために、本体ボアを縮径テーパ状とする。この方法を用れば、流れの一部が進路変更され、ボールの上部の穴を通ってボール/本体空洞に流入し、空洞内でボールの周りを下方へ流れ、かつ、ボールの底部で当該空洞から流出するであろう。切替バルブ本体流入口は、ボール流入口に向かってテーパ状となる本体ボアを有し得る。この方法では、本体空洞内を流すことを達成するために、ボール/本体空洞内の流れは、ボールボア内を流れる主流とは逆方向であろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】典型的に使用される、マルチポート金属シートボール型バルブの先行技術のボールおよびベローズチャンバを示す図である。
図1B】典型的に使用される、マルチポート金属シートボール型バルブの先行技術のボールおよびベローズチャンバを示す図である。
図2】典型的に使用される、マルチポート金属シートボール型バルブの先行技術のボールおよびベローズチャンバを示す図である。
図3A】典型的に使用される、マルチポート金属シートボール型バルブの先行技術のボールおよびベローズチャンバを示す図である。
図3B】典型的に使用される、マルチポート金属シートボール型バルブの先行技術のボールおよびベローズチャンバを示す図である。
図4A】切替バルブ用の新規かつ改良されたボールの第1の実施形態例の等角図である。
図4B図4Aに示す改良されたボールの底面図であり、改良されたボールの入口ポートを通して円錐形穴の方を見た図である。
図5図2のフランジ付き管状支持体およびシート支持体に追加された切抜き部を有する、改良されたフランジ付き管状支持体を備える金属ベローズの斜視図である。
図6A】第1の実施形態の改良されたボールと、改良された管状支持体と、バルブ本体の内部形状への改良とを含む改良された切替バルブの断面図であり、切替バルブにおいてボールの周りおよびベローズ外径の周りで新たに作り出された流れ循環を示す流れ矢印を含む。
図6B】線6B−6Bで表わされる方向の、図6Aに示す改良された切替バルブの断面図である。
図7】切替バルブ用の新規かつ改良されたボールの第2の実施形態例の等角図法である。
図8A】一体型駆動軸を備えない、第2の実施形態のボール構成の断面図である。
図8B】線8B−8Bで表わされる方向の、図8Aに示すボール構成の断面図である。
図9A】ボールの出口ポートで部分的せき止め部を有する、新規かつ改良されたボールの第3の実施形態例の等角図法である。
図9B図9Aに示す改良されたボールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施形態例の詳細な説明
図1A図1B図2図3Aおよび図3Bは、本明細書に記載の実施形態例によって改良される典型的なタイプの切替バルブを示す。
【0027】
図1Aおよび図1Bは、1970年代から、世界中の石油精製業者の切替バルブにおいて常に使用され続けてきた、改良されていないボールを表わす。図1Aは斜視図であり、切断線1B−1Bに沿った図1Bの断面図は、ボール(1)が流入ポート(2)と、それを貫通する90°方向転換流路(3)と、出口ポート(4)とを有することを示す。重油は流入ポート(2)でボール(1)に入り、この油はボール(1)内の流路(3)における方向転換によって90°進路変更し、次いで、出口ポート(4)を通って出る。
【0028】
図2は、ベローズ型シートシールとしても知られるシート後部シールとして機能する金属ベローズ(5)を示す。金属ベローズ(5)は、当該金属ベローズ(5)およびシート(この図には示されない)を支持するフランジ付き管状部材(6)内に存在する。ベローズ(5)の外径(OD)と管状支持体(6)の内径(ID: inside diameter)との間の行き止りの管状空間である「ベローズOD領域」(7)を見せる目的で、改良されていないフランジ付き管状支持体(6)は切取られ、ベローズの外径(OD)が表われている。ベローズOD領域(7)において、ベローズOD領域(7)内への供給を行なうパージ接続管(8)を通してスチームでベローズOD領域(7)をパージしなければ、油が停滞するであろう。
【0029】
図3Aは、切替バルブ本体(10)に取付けられた、改良されていないボール(1)を示す。流れ矢印(9)で示すように、重油は、バルブ本体(10)におけるバルブ流入ポート(「入口ポート」としても知られる)(11)でバルブに入り、ボール(1)の90°方向転換流路(3)によって進路変更し、次いで、第1のバルブ排出ポート(12)を出る。第1のバルブ排出ポート(12)において、ボール(1)に接する環状漏止め金属シート(13)が設けられる。環状漏止め金属シートは、圧縮されたベローズ型シートシール(25)にも接している。第2のバルブ排出ポート(15)が、バルブ本体(10)の周りにおいて第1のバルブ排出ポート(12)から180°の位置に配置され、第2の環状漏止め金属シート(16)およびベローズ型シートシール(17)がその位置に設けられる。図3Aに示すボール位置で、第2のバルブ排出ポート(15)は、ボール(1)の球状の外部表面(18)の一部によって閉鎖される。ベローズ型シート後部シール(25、17)は支持管(6A、6B)内に存在し、ベローズOD領域(7A、7B)が形成される。これらのベローズOD領域はスチームパージ接続部(26、27)以外は行き止りの空洞であることに留意することが重要である。図3Aの先行技術バルブは、ベローズのID表面のスチームパージを可能にする管状ライナー(301A、301B)も含む。
【0030】
ボールが図3Aおよび図3Bに示される位置にある限り、油は、バルブ流入ポート(11)で流入し続け、第1のバルブ排出ポート(12)で流出し続ける。油を進路変更させて第2のバルブ排出ポート(15)から排出することが望まれる場合、ボール(1)を180°回転させることにより、油を進路変更させて第2のバルブ排出ポート(15)から排出することができる。そうすると、第1の排出ポート(12)は、ボール(1)が回転された後、ボールの球面(18)によって閉鎖されることになる。工程での必要に応じて、およそ12時間〜18時間ごとにボールを180°回転させることにより、油を選択的に進路変更させて第1または第2のバルブ排出ポート(12、15)から排出することが可能である。
【0031】
図3Bは、図3Aに示す線3B−3Bに沿った断面図である。図3Bは、ボール/本体空洞(19)を詳細に示すために添付されている。ボール/本体空洞(19)がボール(1)と本体(10)の内側表面(20)との間にあること、かつ、ボール/本体空洞(19)が行き止りの空洞であることに留意することが重要である。それは、バルブを通って流れる油と流体連通しており、ボール(22)の底部と、流入ポート(11)における本体への流入部分(23)との間の環状空間(21)で接続される。ボール/本体空洞(19)は環状空間(21)を通って入る油で充填され得る。ボール/本体空洞(19)が行き止りのチャンバであるため、油がボール/本体空洞(19)に入った後、油は流れないであろう。流れない油が硬質コークスに変化しないようにするために、それらの領域の流れない油に動きを与えるために今まで必要とされてきたものは、スチームパージ接続部(26、27、28)を用いてスチームで激しくパージされるボール/本体空洞(19)および2つのベローズOD領域(7A、7B)であった。これらの空洞の容積が重要であるため、溜まった油を環状空間(21)を通して入換えて流し続けるためには、望ましくない大流量のパージスチームが必要である。
【0032】
なお、ポートが、本体の周りにおいて互いに180°間隔ではなく120°間隔で配置される場合、切替バルブは、図3Aおよび図3Bに示す2つの流出ポートではなく、代替的に3つの流出ポートを有し得る。その場合、各流出ポートは、図3Aに示されるのと同一の金属シートと、圧縮された金属ベローズ型シートシールと、管状支持体とを有するであろう。油を進路変更させるために、3つの等間隔の流出ポートのうちの1つと位置合せされるように、ボールは180°ではなく120°回転されるであろう。
【0033】
図4A図4B図5図6Aおよび図6Bは、第1の実施形態例の改良されたボール、本体上部カバーの改良された下面、ベローズ用の改良された管状支持体、および本体の新たなベンチュリ入口ポートを示す。
【0034】
ボールの改良は、ボールを貫通する新たな穴の追加を含む。新たな穴は、さまざまな数および形状であってもよく、新たな穴の正確な位置はさまざまであり得る。本明細書では好ましい円錐形が詳細に記載されるが、円錐形は、ボールの改良を提供する唯一の形ではない。好ましい穴の数は2つまたは3つであり得て、好ましいサイズについては説明する。上部カバーの下面は湾曲しているため、その領域において乱流を低減してスムーズな流れを作り出す。ベローズ用の管状支持体は、ベローズOD領域の後端に及ぶ油の循環を可能にするような戦略的な位置に、新たな切抜き部を有する。バルブ流入ポートは、従来の円筒状の流入ポートに追加された新たなベンチュリテーパを有する。これらの特徴は図示され、以下の段落でさらに詳細に記載される。
【0035】
図4Aおよび図4Bは、図1A図3Bに示すボール(1)の従来の設計に2つの新たなテーパ状(たとえば、円錐形)穴(30、31)が追加され、その結果、改良されたボール(32)となったものを示す。図4Aおよび図4Bは、それぞれ、「上面」斜視から、および、「底面」(入口ポート)から見た、改良されたボール(32)を示す。2つの新たな円錐形穴(30、31)は、円状に配置され、流路(29)の中心線にまたがっている。円錐形穴(30、31)は湾曲した断面領域を有し、90°流路(29)からボール(32)の上部切頭面(upper truncated surface)(33)の方へ、かつ、上部切頭面(33)を貫通して延在する。
【0036】
円錐形穴(30、31)の下部開口(30A、31A)は、90°流路(29)に沿ってボール(32)の内側表面に設けられた開口である。流路(29)における下部開口(30A、31A)の合計面積は、流路(29)の面積のおよそ1/2〜3/4であり、メイン流入流路(29)の軸に対する円錐形穴(30A、31A)の角度は、およそ5°〜30°であってもよい。したがって、下部開口(30A、31A)は、ボール(32)を通って流れる流体の実質部分を取込み、それをボールの切頭上面(33)の方へ方向付ける。図示のように、円錐形穴(30、31)の断面は、弓形であってもよい。
【0037】
図5は、図3Aに示すフランジ付き管状支持体(6A、6B)の改良例を示す。図5の各管状支持体(34)は、新たに追加された切抜き部またはアパーチャを含む。新たな切抜き部は、管状支持体(34)の上部に位置する上部切抜き部(35A)と、管状支持体(34)の底部に位置する底部切抜き部(35B)と、上部切抜き部(35A)の両側に位置する2つの上部周辺切抜き部(36A)と、底部切抜き部(35B)の両側に位置する2つの底部周辺切抜き部(36B)とを含む。図5に示す構成において、管状支持体(34)には合計6つの切抜き部が存在する。代替的には、切抜き部は他の数だけ存在してもよい。たとえば、管状支持体の切抜き部は、合計4つのみ(管状支持体の上部の切抜き部を2つ、および管状支持体の底部の切抜き部を2つのみ含む)であってもよい。
【0038】
新たな切抜き部によって、ボール/本体空洞(19)を通って下方へ移動する油は、上部切抜き部(35A、36A)に入り、下方へ、かつ、ベローズOD領域の周りに流れ、次いで、下部切抜き部(35B、36B)から出るであろう。切抜き部の効果は、ベローズODをボール/本体空洞に露出することにより、ベローズOD領域内の油が入換えられることを保証することである。切抜き部(35A、36A、35B、36B)の面積の合計は、ベローズOD領域の周りの油の流れを最大限にするために最大化されることが好ましく、管状支持体(34)の上部および下部の表面積のおよそ70%〜90%であってもよい。
【0039】
図6Aおよび図6Bは、改良されたボール(32)、バルブ本体(104)の上部カバー(37)の改良された下面(38)、および、バルブ本体(104)内に取付けられた、改良された管状支持体(34A、34B)のさらなる詳細を、バルブ本体(104)の改良されたテーパ状入口ポート(39)とともに示す。テーパ状入口ポート(39)により、本体入口ポート(106)からの流れは、ボール入口ポート(102)に入る前に抑制される。しかしながら、円錐形穴(30、31)の下部開口(30A、31A)は、近づいてくる油の主流Zに面する。その結果、それらは、流れ矢印XおよびYで示されるように油主流Zの一部を取込み、新たな円錐形穴(30、31)内の流れXおよび流れYを、ボール(32)の上部切頭面(33)を通してボール/本体空洞(101)内へ方向付ける。
【0040】
改良された下面(38)は、ボール(32)の切頭上面(33)に隣接するバルブ本体(104)の上部カバー(37)の湾曲下面である。湾曲下面(38)は、バルブ本体の上部に対して凹状であり、ボールの上部切頭面と平行な平面から見た場合ドーナツ形である。湾曲下面は、好ましくは、ボール内の円錐形穴の内側縁部と一致する内径と、金属ベローズの最大長さの方へ延在する外径とを有する。湾曲下面は、バルブ本体入口ポートの直径の1/3〜2/3の半径を有し得る。
【0041】
油の主流Zが本体入口ポート(106)およびボール入口ポート(102)に入り、ボール(32)内で90°方向転換する際、油の主流Zの動きは直線状であるので、油の流れXおよびYが生成される。その結果、主流Zの一部がボール(32)内で90°方向転換させられて出口ポート(105)から流出させられる間に、主流Zの実質部分が円錐形穴(30、31)を通ってボール/本体空洞(101)内へ進路変更する。上部カバー(37)の下面(38)は、ボール(32)の切頭上部の上方の空洞内の乱流を低減するような、新たな湾曲形状に形作られる。その結果、(a)油の流れを最終的にはボール(32)の周りで下方へ方向付け、(b)流れXおよびYをベローズOD領域(24A、24B)内に方向付ける、スムーズな流れパターンが作り出される。
【0042】
ボールの周りにおける油の可能な流れ方の例を、流れ矢印XおよびYで示す。流れXおよびYは、円錐形穴(30、31)を通って上に向けられ、本体上部の湾曲下面(38)によって方向転換し、ボール/本体空洞(101)を経由してボール(32)の周りで下方に進むとともに、湾曲下面(38)を経由して横向きに管状ベローズ支持体(34A、34B)の方へ進み、下方へ流れ続けて、図5に示す新たな切抜き部(35A、36A)を経由してベローズOD領域(24A、24B)内に入り、ベローズODの下方へ、およびその周りを流れ、新たな下部切抜き部(35B、36B)を通り、ボール(32)の底部の環状空間(103)を通り、ボール(32)内を流れている油の主流Zに再び合流する。この実施形態例では、ベローズのIDに沿った管状ライナーが除去されていることも、図6Aから分かるであろう。
【0043】
新たな穴(30、31)を通り、そこからボール(32)およびベローズ(24A、24B)を下ってそれらの周りを流れる油の流れの一部を引き起す推進力に加えて、ボール(32)の底部で環状空間(103)を通過して流れる油により、吸引サブ圧力効果が生じる。この吸引効果は、新たなテーパ状入口通路(39)によって高められ、環状空間(103)でベンチュリ効果を生み出す。(軸に対する)テーパ状入口通路(39)の角度は、バルブのサイズに応じておよそ3°〜20°であってもよい。テーパ状入口通路(39)のテーパ状領域は入口ポートの流体流入口から延在し、ボールの底部へ向かって、テーパ状入口通路(39)の流体流出口へ向かって、領域が縮小する。このテーパは、入口ポートの直径のおよそ75%〜95%に縮小された径を有し得る。
【0044】
ボール(32)を貫通する円錐形穴(30、31)を追加すること、湾曲本体表面(38)(この湾曲本体表面(38)において、流体が2つの新たな円錐形穴(30、31)を出る)を設けることを追加すること、切抜き部(35A、36A、35B、36B)を管状ベローズ支持管(34A、34B)の上部および底部に追加すること、および、バルブ本体(104)にテーパ状入口通路(39)を追加することが、別個に、かつ一緒に作用することにより、ボール/本体空洞(101)内の油は、ボールのODおよびベローズのODの上へ、外へ、下へ、および周りで、常に移動し続ける。これにより、それらの空洞における流体の入換えが保証される。
【0045】
図7は、改良されたボールの第2の実施形態を示す。ここでは、第3の新たな円錐形穴(40)がボール(42)に追加されている。この実施形態において、3つの円錐形穴(41a、41b、40)は、最大の開口面積を提供するように配置される。これにより、円錐形穴(41a、41b、40)は、ボール(42)を通って流れる、より多くの量の油を取込む。3つの円錐形穴(41a、41b、40)からの流体排出は、ベローズの位置に対して最適に位置付けられる。図7において、円錐形穴(41)のうちの2つは、当該ボールの出口ポート(43)の軸すなわち中心線にまたがっており、中央に位置する第3の穴(40)は、第1と第2の円錐形穴(41a、41b)の間に追加される。これにより、2箇所ではなく3箇所で、図6に示すように油がボール/本体空洞(101)内に排出される。
【0046】
2つではなく3つの流出口を本体に備え、3つのシートおよび3つのベローズが互いに120°間隔で配置される切替バルブの場合に、第3の円錐形穴(40)の追加は重要である。第3の円錐形穴によって3つの円錐形穴の位置決めが可能になり、その結果、バルブにおいて、各円錐形穴からの排出が3つのベローズのうちの1つに直接向けられる。3つの円錐形穴は、必ずしも同様の長さ寸法および幅寸法を有するわけではなく、利用可能な空間に適合するように、かつ、ボール(42)およびボール/本体空洞内部の流れパターンの詳細分析にしたがって、サイズおよび形状が異なってもよい。中空ボール(42)内の第3の円錐形穴(40)の流体流入口の面積は、第1および第2の円錐形穴(41a、41b)の流体流入口の面積のおよそ50%〜90%であってもよい。
【0047】
代替的には、円錐形穴の数は4〜6であってもよく、各場合において、円錐形穴は、利用可能な空間に適合し、かつ、切替バルブ内の油の再循環を最大限にするようなサイズであり得る。穴の数にかかわらず、油がバルブ内の環状空間(103)を通過して流れる際の望ましい吸引効果は、依然として存在する。
【0048】
図8Aおよび図8Bは、単純化のために、2つまたは3つの円錐形穴の代わりに大きな円錐形穴(41)を1つのみ有する、ボールバルブ用の共通の代替的なボールのスタイルを示す。ボールを図4および図7と同様のものとするために、追加の穴を加えてもよい。駆動軸がボールと一体化されていないため、このボールのスタイルはフローティングボールと呼ばれる。代わりに、ボールは、別体のバルブシャフト(図示せず)と係合するためのソケット、キー溝、またはスロットなど(45)を上面に有する。バルブシャフトは、ソケット/スロット(45)に嵌合してボールの回転を可能にするタングを含む。ボールは、ボール内への流れを供給するボール入口ポート(46)と、流れをボールから排出することを可能にするボール出口ポート(43)とを有する。図7に示すような一体型シャフトを備えるボールの代わりに、切替バルブには、代替的に、このフローティングボールが取り付けられてもよい。なぜなら、ボールを回転する方法は、本明細書で説明した実施形態例の重要な特徴に関係しないからである。
【0049】
図9Aおよび図9Bは、ボール(49)の出口ポート(47)における、流路内の部分的な障害物(44)の追加を示す。この障害物(44)により、ボール(49)内で障害物(44)の上流の圧力が増加する。これにより、入口ポート(48)からボール(49)を通り、円錐形穴(60)を通って吐き出される流れの一部の傾向が増す。障害物(44)は部分的せき止め部の形で示され、出口ポート(47)の直径のおよそ1/10〜1/6の高さを有してもよく、出口ポート(47)のおよそ60°〜120°にわたって延在してもよい。代替的には、障害物(44)は、下端縁が図示のような曲面ではなく直線であり、部分的せき止め部の高さが出口ポート(47)の直径のおよそ1/10〜1/4である円弧形状であってもよい。
【0050】
したがって、これらの改良されたボール、ベローズ支持管、および本体設計によって上述の目的が達成されることが、当業者ならば理解できるであろう。上述の目的とは、単純かつ製造するのに低コストでありながら、バルブ本体をスチームでパージすることを不要にするとともに、このような改良を既存の切替バルブに組込むことを容易にすることである。
【0051】
従来の設計に対する大幅な改良を達成するために、これらのボールバルブ設計例の上記改良された特徴を全部同時に使用することは必須ではないということを、理解すべきである。代わりに、いくつかの適用例において効果をもたらすように、上記の改良された設計特微のうちの、全部ではなく一部のさまざまな組合せを用いても良い。
【0052】
ボールに追加される新たな循環誘起穴、新たな湾曲本体上部カバーの形状、管状支持体の新たな切抜き部、および新たなベンチュリテーパ状本体流入口の、最も効果的で好ましい設計であると現在考えられるものに関して実施形態例を記載した。しかしながら、本発明は開示の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内において、それらの正確な数、サイズ、形状、位置および方向に関して、新たな循環誘起穴、本体形状、および部品の切抜き部の他の等価な構成をカバーするものであることを理解すべきである。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B