特許第6577055号(P6577055)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6577055
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】表面被覆用組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20190909BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20190909BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20190909BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20190909BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20190909BHJP
   C08L 91/06 20060101ALI20190909BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20190909BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C09D201/00
   C09D7/65
   C09D7/61
   C08L83/04
   C08L91/06
   C08K3/013
【請求項の数】14
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-558388(P2017-558388)
(86)(22)【出願日】2015年5月8日
(65)【公表番号】特表2018-524413(P2018-524413A)
(43)【公表日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】EP2015060255
(87)【国際公開番号】WO2016180454
(87)【国際公開日】20161117
【審査請求日】2018年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】516170990
【氏名又は名称】シュトー・エスエー・ウント・コ・カーゲーアーアー
(74)【代理人】
【識別番号】100074675
【弁理士】
【氏名又は名称】柳川 泰男
(72)【発明者】
【氏名】ワイヤー、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】シャラー、クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ウェハ、ワルター
(72)【発明者】
【氏名】ゲルラッハ、ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】ブルゲス、ゲラルド
【審査官】 西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06919398(US,B1)
【文献】 特開2003−147258(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0153944(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 101/00−101/16
C08K 3/00−3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分を含む組成物:
水及び/又は有機溶媒;
ワックス(W);
シリコーンオイル(S);
バインダ(B);
全体量として8.0から55質量%の平均粒子径が0.1から1.0μmの範囲の一種もしくはそれ以上のピグメント(顔料)及び/又はフィラー(PF1);
全体量として5.0から40質量%の平均粒子径が1.0μmを越え、10μm迄の範囲の一種もしくはそれ以上のピグメント(顔料)及び/又はフィラー(PF2);
全体量として3.0から30質量%の平均粒子径が10μmを越え、40μm迄の範囲の一種もしくはそれ以上のピグメント(顔料)及び/又はフィラー(PF3);
但し、いずれの場合でも組成物の固形分量に対する相対値であって、またPF1、PF2、PF3は互いに異なるものであり、そして、EN ISO 4618−1に従うピグメント体積濃度は20%から65%の範囲にあって、また、組成物の固形分量に対する相対値として、バインダ(B)の量は10質量%から60質量%の範囲にあって、ワックス(W)の量は0.10質量%から10質量%の範囲にある。
【請求項2】
さらに構造体形成用充填材を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
構造体形成用充填材の平均粒子径が40μmを越える請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
構造体形成用充填材の含有量が、組成物の固形分量に対する相対値として、0.10質量%から3.0質量%の範囲にある請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
下記の関係式(I)を満たす請求項1乃至4の内のいずれかの項に記載の組成物:
1.5×PF1の平均粒子径<PF2の平均粒子径
<50×PF1の平均粒子径 −(I)。
【請求項6】
下記の関係式(II)を満たす請求項1乃至5の内のいずれかの項に記載の組成物:
1.5×PF2の平均粒子径<PF3の平均粒子径
<40×PF2の平均粒子径 −(II)。
【請求項7】
平均粒子径が0.10から1.0μmのピグメント及び/又はフィラーの相対量が、平均粒子径が1.0を越え、10μm迄の範囲のピグメント及び/又はフィラーの相対量よりも多く、かつ平均粒子径が1.0を越え、10μm迄の範囲のピグメント及び/又はフィラーの相対量が、平均粒子径が10を越え、40μm迄の範囲のピグメント及び/又はフィラーの相対量よりも多い請求項1乃至6の内のいずれかの項に記載の組成物、ただし、いずれの場合も組成物に対する相対量である。
【請求項8】
ワックスの水の1分間の平衡化後の静的な初期接触角が、バインダの水の1分間の平衡化後の静的な初期接触角よりも大きい請求項1乃至7の内のいずれかの項に記載の組成物。
【請求項9】
ワックスの水の1分間の平衡化後の静的な初期接触角が、バインダの水の1分間の平衡化後の静的な初期接触角よりも、少なくとも5°大きい請求項2に記載の組成物。
【請求項10】
上記組成物が成形用もしくは塗布用材料である請求項1乃至9の内のいずれかの項に記載の組成物。
【請求項11】
上記組成物が塗料もしくはレンダーである請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
下記の組成を含む基体表面に形成された被覆物:
ワックス(W);
シリコーンオイル(S);
バインダ(B);
全体量として8.0から55質量%の平均粒子径が0.1から1.0μmの一種もしくはそれ以上のピグメント(顔料)及び/又はフィラー(PF1);
全体量として5.0から40質量%の平均粒子径が1.0μmを越え、10μm迄の範囲の一種もしくはそれ以上のピグメント(顔料)及び/又はフィラー(PF2);
全体量として3.0から30質量%の平均粒子径が10μmを越え、40μm迄の範囲の一種もしくはそれ以上のピグメント(顔料)及び/又はフィラー(PF3);
但し、いずれの場合でも組成物の固形分量に対する相対値であって、またPF1、PF2、PF3は互いに異なるものであり、そして、EN ISO 4618−1に従うピグメント体積濃度は20%から65%の範囲にあって、また、組成物の固形分量に対する相対値として、バインダ(B)の量は10質量%から60質量%の範囲にあって、ワックス(W)の量は0.10質量%から10質量%の範囲にある。
【請求項13】
請求項1乃至9の内のいずれかの項に記載の組成物からなる成形用もしくは塗布用材料。
【請求項14】
請求項1乃至9の内のいずれかの項に記載の組成物からなる塗料もしくレンダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆用の組成物に関し、特に屋外の風雨に曝される表面の被覆用の組成物に関する。さらに本発明は、該組成物から得られる被覆にも関する。
【背景技術】
【0002】
屋外の表面の被覆は一般的に風雨に曝される。例えば、雨や結露などである。それらの表面は速やかに乾燥されることが望ましい。なぜならば、その表面に付いた湿気は、例えば、藻類、細菌、そして他の微生物の成長を促すからである。乾燥は通常、蒸発及び水分の流失により発生する。そして、それらの乾燥メカニズムの内の一つは被覆物(もしくは被覆層)のタイプに依存する。表面の乾燥性はまた、湿気管理とも呼ばれる。
【0003】
市販の被覆材料では、特許文献1に記載の原理の内の一つが一般的に利用されている。
【0004】
特許文献1には、相当の、あるいは(非常に)疎水性の被覆についての記載がある。このタイプの被覆では、水分は、その被覆の表面で高い接触角を示し、これにより水分は水滴となり、重力の作用により転げ落ちる。雨の場合には、その被覆は一般的に速やかに乾燥する。しかしながら、露の場合には凝縮して非常に小さな水滴となるため、流れ落ちにくくなる。
【0005】
一方、(超)親水性の被覆面の場合には、水分は非常に低い接触角を示し、被覆面で大きく拡がった領域を形成する。水分の体積や水滴の拡がりにもよるが、その表面に水膜が形成されることもある。そして、このため、蒸発が促進される。しかしながら、このような表面の乾燥は一般的に、雨や結露が一旦止んだ後に始まる。さらに、このタイプの被覆には、大量の水分が吸収される。これは、例えば、熱的な遮蔽が低下させるし、また微生物の成長が促進されるため好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP 0546421公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、降雨中、または結露しやすい環境のいずれの場合においても改良された再乾燥性を示すような優れた湿気管理を可能にする被覆用の組成物を提供することにある。本発明の組成物は、傾斜面、すなわち垂直表面でない表面の場合でも、優れた乾燥性を示す。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、下記の本発明に従う下記の成分を含む組成物により解決された。
【0009】
水及び/又は有機溶媒;
ワックス(W);
シリコーンオイル(S);
バインダ(B);
全体量として8.0から55質量%の平均粒子径が0.1から1.0μmの一種もしくはそれ以上のピグメント(顔料)及び/又はフィラー(PF1);
全体量として5.0から40質量%の平均粒子径が1.0μmを越え、10μm迄の一種もしくはそれ以上のピグメント(顔料)及び/又はフィラー(PF2);
全体量として3.0から30質量%の平均粒子径が10μmを越え、40μm迄の一種もしくはそれ以上のピグメント(顔料)及び/又はフィラー(PF3);
但し、いずれの場合でも組成物の固形分に対する相対値であり、またPF1、PF2、PF3は互いに異なるものである。
【0010】
ピグメントとフィラーのサイズが互いに異なることにより、当業者は、全ての粒子が(おおよそ)同サイズであって、例えば結晶性の塩と同様な球状充填の場合の粒子の配列では期待できないような、非常に不規則であって、高い摩擦係数を示す表面構造体の形成が予測できるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好ましい態様では、ピグメントとフィラーは通常、完全にバインダにより包み込まれており、そのため、その粒子表面における水との直接的な相互作用は発生しない。その結果、非常に驚くべきことに、本発明におけるピグメントとフィラーとの組み合わせによって摩擦係数の低下が実現する。すなわち、ピグメントとフィラーは被覆表面の一部を形成することなく、被覆表面の性質に影響を与えることになる。
【0012】
本発明におけるピグメント/フィラー組成物はまた、形成された被覆の表面エネルギーがピグメント/フィラーにより殆ど影響を受けないことに特徴がある。特に、ピグメントとフィラーの添加により予想されるような表面エネルギーの大きな上昇が発生しない。一方、本発明におけるピグメント/フィラー組成物の使用により、表面エネルギーの極性成分は大きく低下する。この点は、水滴の滑り落ち挙動に有利な影響を与える。
【0013】
上記の挙動はワックスとシリコーンオイルとの使用によりさらに向上する。ワックスとシリコーンオイルが表面の摩擦係数を低下させることは知られており、その結果、本発明のピグメントとフィラーとの組み合わせでは特に低い摩擦係数が得られる。
【0014】
さらに、理論的な考察の結果とは云えないが、本発明の組成物そして生成する被覆では、被覆表面において、ワックスとバインダが不規則に分布しているが、これはシリコーンオイルの添加の結果と考えられる。すなわち、シリコーン濃度の高い領域が観察されることから、上記の考えが支持されると思われる。
【0015】
被覆表面で形成された水滴は、ワックスが多い表面領域とシリコーンオイルが多い表面領域に同時に拡がるが、それらの表面領域は異なる表面エネルギーを持ち、その結果、異なる濡れ性を示す。推測によれば、それらの領域での異なる濡れ性により、水滴は被膜表面で異なる接触角を示すようになり、その結果、異なる濡れ性を示す表面の境界部分では低い表面張力が形成されるため、水滴が速やかに集まって、水分の流失が加速される。
【0016】
被覆表面における低い摩擦係数のために、重力による水滴の流失に必要なサイズが小さくなるため、乾燥性が更に向上する。従って、湿気管理、特に結露性における湿気管理が向上する。
【0017】
さらに、本発明の組成物を使用した場合には、汚れ粒子と被覆表面との間の化学的及び/又は物理的な相互作用が、特に従来技術により形成される被覆表面に比べると、顕著に低くなる。その結果、汚れの非極性粒子や極性粒子の付着が低減する。仮に、それらの粒子が付着した場合には、転げ落ちるか、流れ落ちる水滴によって、ずっと簡単に除かれる。なぜならば、被覆表面との相互作用が弱くなり、その結果として被覆表面から除かれやすくなるからである。
【0018】
本発明に従うフィラー組成物について次に詳しく説明する。
【0019】
平均粒子径が0.10μmから1.0μmのピグメント及び/又はフィラーの全体量は8.0から55質量%、好ましくは15から50質量%、さらに好ましくは20から40質量%である。なお、いずれの場合でも組成物中の固形分含有量に対する相対量である。このピグメント及び/又はフィラー組成物は、PF1であって、ピグメント及び/又はフィラーを含み、好ましくはPF1からなる。
【0020】
平均粒子径が0.10μmから1.0μmの一もしくは二以上のピグメント及び/又はフィラーは、好ましくは平均粒子径が0.15μmから0.80μmの範囲、好ましくは平均粒子径が0.20μmから0.60μmの範囲から選ばれることが好ましい。
【0021】
PF1は、モース硬さが、好ましくは少なくとも3.0、さらに好ましくは少なくとも3.5、そして特に好ましくは4.0である。
【0022】
PF1は、好ましくは金属酸化物もしくは金属硫化物、例えば、TiO2、ZnOもしくはZnS、及び/又は珪素質のフィラー、例えば、長石、石英、クリストバライト、珪藻土、そしてシリカであり、さらに好ましくは、金属酸化物もしくは金属硫化物、例えば、TiO2、ZnOもしくはZnSであり、特に好ましいのはTiO2である。
【0023】
平均粒子径が1.0μmを越え、10μmまでのピグメント及び/又はフィラーの全体量は5.0から40質量%、好ましくは6.5から35質量%、さらに好ましくは8から30質量%である。なお、いずれの場合でも組成物中の固形物含有量に対する相対量である。このピグメント及び/又はフィラー組成物(PF2)は、ピグメント及び/又はフィラーを含み、好ましくはピグメント及び/又はフィラーからなる。
【0024】
平均粒子径が1.0μmを越え、10μmまでの一もしくは二以上のピグメント及び/又はフィラー(PF2)は、好ましくは平均粒子径が1.5μmから9.0μmの範囲、さらに好ましいくは平均粒子径が2.0μmから8.0μmの範囲から選ばれる。
【0025】
PF2は、モース硬さが、好ましくは5.0未満、さらに好ましくは4.0未満、そして特に好ましくは3.0未満である。
【0026】
PF2は、好ましくは炭酸塩もしくは硫酸塩、例えば、アルカリ土類金属炭酸塩、カルサイト、チョーク、セッコウ、硫酸バリウム、及び/又は珪素質フィラーであり、特にシート状ケイ酸塩そして粘土質ケイ酸塩、例えば、タルク、カオリン、そして珪素質雲母、及び/又は酸化物もしくは水酸化物、例えば、Al(OH)3である。そして、PF2は、さらに好ましくは、炭酸塩もしくは硫酸塩、例えば、アルカリ金属炭酸塩、カルサイト、チョーク、セッコウ、硫酸バリウムであり、特に好ましいのは炭酸カルシウムである。
【0027】
平均粒子径が10μmを越え、40μmまでのピグメント及び/又はフィラーの全体量は3.0から30質量%、好ましくは5.0から25質量%、さらに好ましくは7.0から20質量%である。なお、いずれの場合でも組成物中の固形分含有量に対する相対量である。このピグメント及び/又はフィラー組成物(PF3)は、ピグメント及び/又はフィラーを含む。
【0028】
平均粒子径が10μmを越え、40μmまでの一もしくは二以上のピグメント及び/又はフィラーは(PF3)、好ましくは平均粒子径が10μmを越え、35μmまでの範囲、さらに好ましいのは平均粒子径が10μmを越え、30μmまでの範囲から選ばれる。
【0029】
PF3は通常、モース硬さが好ましくは5.0未満、さらに好ましくは4.0未満、そして特に好ましくは3.0未満である。
【0030】
PF3は、異方性物質、例えば、成層化合物粒子(ラメラ―粒子)もしくは板状粒子、すなわち、一方の軸径が、その軸に垂直な軸径よりも大きい異方性物質である。
【0031】
PF3は、好ましくは炭酸塩もしくは硫酸塩、例えば、アルカリ土類金属炭酸塩、カルサイト、チョーク、セッコウ、硫酸バリウム、及び/又は珪素質フィラーであり、特にシート状ケイ酸塩そして粘土質ケイ酸塩、例えば、タルク、カオリン、そして珪素質雲母、及び/又は酸化物もしくは水酸化物、例えば、Al(OH)3である。そして、PF3は、さらに好ましくは、シート状ケイ酸塩そして粘土質ケイ酸塩、例えば、タルク、カオリン、そして珪素質雲母アルカリ金属炭酸塩であり、特に好ましいのはタルクのようなシート状ケイ酸塩である。
【0032】
PF1、PF2そしてPF3は互いに異なるものである。PF1、PF2そしてPF3は通常、それらの化学組成及び/又は平均粒子径に関して互いに異なるものであり、そしてPF1、PF2そしてPF3は、それらの化学組成及び平均粒子径に関して互いに異なることが好ましい。
【0033】
本発明に従うピグメント/フィラーの組み合わせにより、本発明の組成物から形成される表面の摩擦係数がさらに低下する。さらに、前述したように、特に表面エネルギーの極性成分が大きく低減する。
【0034】
本発明の組成物は任意に構造体形成用充填材を含むことができる。構造体形成用充填材を用いることにより、被覆表面に微細な構造体が形成されることになり、これによって摩擦係数は僅かに高くなる。しかしながら、その高くなる程度が小さいため、水の流れ出し挙動にはあまり影響を与えない。平滑な表面では、排出する水は僅かな路程で流れ出すか、あるいは転げ落ちる。そこで、その路程に沿って水滴跡が残るかも知れない。上記のように形成された微細構造体により、流れ落ちる水は様々な路程の方向に向かうことになり、このため上記の水滴跡の生成は顕著に少なくなるか、あるいは拡がることになるため、清掃作業が不必要となることが多い。さらに、降雨状態あるいは結露状態で生成した水滴跡などは、流れ出すか、あるいは転げ落ちる水によって除去されやすくなる。
【0035】
なお、仮に流れ出し挙動が若干低下したとしても(また、仮に他の悪影響が発生したとしても)、このようなマイナス点は、自己清掃性能の向上により帳消しになる。
【0036】
構造体形成用充填材は、平均粒子径が、一般に40μmを越え、160μmまでの範囲、好ましくは40μmを越え、150μmまでの範囲、そしてさらに好ましくは50から100μmの範囲のものである。
【0037】
構造体形成用充填材を用いる場合には、嵩密度が通常は1.0kg/dm3未満、好ましくは0.60kg/dm3未満、そして最も好ましくは0.30kg/dm3未満の軽量の充填材が用いられる。このような軽量の充填材を使用することにより、前述の構造体は低い充填材質量で形成されることになる。さらに、塗布の際にも、軽量の充填材は浮遊するように、すなわち被覆表面に沿って移動するようになる。従って、所望により、前記の構造体は比較的少量の充填材の使用により形成されることになる。ただし、前記の構造体は高嵩密度の充填材の使用によっても形成することは可能である。
【0038】
平均粒子径が40μmを越え、160μm迄の範囲のピグメントとフィラーの合計量は、被覆形成用組成物の固形分に対する相対量として、通常は0.10質量%から6.0質量%の範囲、好ましくは0.20質量%から4.0質量%の範囲、さらに好ましくは0.50質量%から3.0質量%の範囲にある。
【0039】
平均粒子径が40μmを越え、160μm迄の範囲のピグメントとフィラーは全体として、構造体形成用充填材を含むか、あるいは構造体形成用充填材そのものであることが好ましい。
【0040】
構造体形成用充填材は、例えば、ガラスビーズ、特に半中空ガラスビーズもしくは中空ガラスビーズ、泡ガラス、特に、閉じた空間を持つ泡ガラス、パーライト構造のもの、特に閉じた空間を持つパーライト構造のもの、膨張処理したバーミキュライト、特に閉じた空間を持つように膨張処理したバーミキュライトであるが、好ましいのはガラスビーズであり、さらに好ましいのは、半中空のガラスビーズか、あるいは中空のガラスビーズであり、特に好ましいには中空のガラスビーズである。
【0041】
平均粒子径が0.10μmから1.0μmの範囲のピグメント及び/又はフィラーの重量割合は、平均粒子径が1.0μmを越え、10μm迄の範囲のピグメント及び/又はフィラーの重量割合よりも多いことが好ましく、また平均粒子径が1.0μmを越え、10μm迄の範囲のピグメント及び/又はフィラーの重量割合は、平均粒子径が10μmを越え、40μm迄の範囲のピグメント及び/又はフィラーの重量割合よりも多いことが好ましい。なお、いずれの場合も被覆形成用組成物に対する相対量である。
【0042】
好ましい関係は下記(I)のとおりである。
1.5×PF1の平均粒子径<PF2の平均粒子径
<50×PF1の平均粒子径 −(I)
【0043】
さらに好ましい関係は下記(IA)のとおりである。
4.0×PF1の平均粒子径<PF2の平均粒子径
<30×PF1の平均粒子径 −(IA)
【0044】
特に好ましい関係は下記(IB)のとおりである。
7.0×PF1の平均粒子径<PF2の平均粒子径
<20×PF1の平均粒子径 −(IB)
【0045】
好ましい関係は下記(II)のとおりである。
1.5×PF2の平均粒子径<PF3の平均粒子径
<40×PF2の平均粒子径 −(II)
【0046】
さらに好ましい関係は下記(IIA)のとおりである。
4.0×PF2の平均粒子径<PF3の平均粒子径
<30×PF2の平均粒子径 −(IIA)
【0047】
特に好ましい関係は下記(IIB)のとおりである。
7.0×PF2の平均粒子径<PF3の平均粒子径
<20×PF2の平均粒子径 −(IIB)
【0048】
好ましい関係は下記(III)のとおりである。
PF3の平均粒子径がもの<構造体形成用充填材の平均粒子径 −(III)
【0049】
さらに好ましい関係は下記(IIIA)のとおりである。
1.4×PF3の平均粒子径<構造体形成用充填材の平均粒子径
−(IIIA)
【0050】
特に好ましい関係は下記の(IIIB)である。
1.8×PF3の平均粒子径<構造体形成用充填材の平均粒子径
−(IIIB)
【0051】
本発明の組成物は、PF1、PF2、PF3のピグメントもしくはフィラー、そして構造体形成用充填材に加えて、他のピグメント及び/又はフィラーを含んでいてもよい。
【0052】
PF1、PF2、PF3の好ましいものとは異なるピグメントもしくはフィラーは、任意に含まれていてもよい構造体形成用充填材とも異なるものであって、その量は、組成物の固形分量に対する相対比として、15質量%未満であることが好ましく、さらには10質量%未満であることが好ましい。
【0053】
PF1、PF2、PF3との何れとも異なるピグメントもしくはフィラーは、任意に含まれていてもよい構造体形成用充填材のいずれとも異なるものであって、その量は、組成物の固形物量に対する相対比として、15質量%未満であることが好ましく、さらには10質量%未満であることが好ましい。
【0054】
本発明に従う組成物の、EN ISO 4618−1に従うピグメント体積濃度は、20%から65%の範囲にあることが好ましく、25%から60%の範囲にあることがさらに好ましく、30%から55%の範囲にあることが特に好ましい。
【0055】
本発明において、ワックスは通常、バインダよりも更に疎水的である。言い換えれば、ワックス(W)の水の1分間の平衡化後の静的な初期接触角は、バインダ(B)の水の1分間の平衡化後の静的な初期接触角よりも通常は大きい。
【0056】
従って、本発明において、ワックス(W)の水の1分間の平衡化後の静的な初期接触角は、バインダ(B)の水の1分間の平衡化後の静的な初期接触角よりも大きいことが好ましいが、その場合、ワックス(W)の水の1分間の平衡化後の静的な初期接触角は、バインダ(B)の水の1分間の平衡化後の静的な初期接触角よりも、少なくとも5°大きく、特に少なくとも10°大きいことが好ましい。
【0057】
静的な初期接触角の測定方法は、実験に関する記載中に示す。
【0058】
本発明において、「疎水性(的)」とは、水の1分間の平衡化後の静的な初期接触角が、>90°であることを意味する。
【0059】
本発明において、「親水性(的)」とは、水の1分間の平衡化後の静的な初期接触角が、≦90°であることを意味する。
【0060】
ワックスの水の1分間の平衡化後の静的な初期接触角は通常、90°よりも大きく、そしてバインダの水の1分間の平衡化後の静的な初期接触角は通常、≦90°であり、好ましくは≦80°であり、さらに好ましくは≦75°である。
【0061】
シリコーンオイルも同様に通常は、その水の1分間の平衡化後の静的な初期接触角が、バインダ(B)の水の1分間の平衡化後の静的な初期接触角よりも大きいことが好ましい。シリコーンオイル(S)の水の1分間の平衡化後の静的な初期接触角は、バインダ(B)の水の1分間の平衡化後の静的な初期接触角よりも大きいことが好ましいが、その場合、シリコーンオイル(S)の水の1分間の平衡化後の静的な初期接触角は、バインダ(B)の水の1分間の平衡化後の静的な初期接触角よりも、少なくとも5°大きく、特に少なくとも10°大きいことが好ましい。
【0062】
表面エネルギー(OFE)は、極性成分と分散性成分とからなる。
【0063】
バインダ(B)のOFEの極性成分は、2mN/mから20mN/mの範囲にあることが好ましく、4mN/mから15mN/mの範囲にあることがさらに好ましい。そして、バインダ(B)のOFEの分散性成分は、20mN/mから50mN/mの範囲にあることが好ましく、28mN/mから40mN/mの範囲にあることがさらに好ましい。
【0064】
バインダ(B)のOFEは、22mN/mから70mN/mの範囲にあることが好ましく、25mN/mから50mN/mの範囲にあることがさらに好ましく、そして30mN/mから45mN/mの範囲にあることが特に好ましい。
【0065】
バインダ(B)の表面エネルギーにおける極性成分と分散性成分との比は通常、10:90から50:50であり、好ましくは15:85から50:50である。
【0066】
上記のOFEの極性成分は、ワックス(W)及び/又はシリコーンオイル(S)の添加により低下する。
【0067】
ワックス(W)は、純水のバインダ(B)に比べると、上記OFEの極性成分を、少なくとも8パーセント、好ましくは少なくとも12%低下させる。
【0068】
ワックス(W)及び/又はシリコーンオイル(S)の添加によるバインダのOFEの極性成分の低下は、少なくとも2mN/mであることが好ましく、さらには少なくとも4mN/mであることが好ましく、特には、少なくとも6mN/mであることが好ましい。
【0069】
ワックス(W)の表面エネルギーにおける極性成分と分散性成分との比は通常、10:90から1:99であり、好ましくは8:92から1:99である。
【0070】
ワックス(W)の平均的なOFEの極性成分は、0.1mN/mから6mN/mの範囲にあることが好ましく、0.5mN/mから4mN/mの範囲にあることがさらに好ましい。
【0071】
ワックス(W)の平均的なOFEの分散性成分は、22mN/mから52mN/mの範囲にあることが好ましく、28mN/mから48mN/mの範囲にあることがさらに好ましい。
【0072】
ワックス(W)の平均的なOFEは、23mN/mから58mN/mの範囲にあることが好ましく、25mN/mから50mN/mの範囲にあることがさらに好ましく、特に29mN/mから38mN/mの範囲にあることが好ましい。
【0073】
シリコーンオイル(S)の表面エネルギーにおける極性成分と分散性成分との比は通常、8:92から1:99であり、好ましくは6:94から1:99である。
【0074】
シリコーンオイル(S)の平均的なOFEの極性成分は、0.1mN/mから5mN/mの範囲にあることが好ましく、0.5mN/mから3mN/mの範囲にあることがさらに好ましい。
【0075】
シリコーンオイル(S)の平均的なOFEの分散性成分は、25mN/mから50mN/mの範囲にあることが好ましく、30mN/mから45mN/mの範囲にあることがさらに好ましい。
【0076】
シリコーンオイル(S)の平均的なOFEは、20mN/mから70mN/mの範囲にあることが好ましく、26mN/mから50mN/mの範囲にあることがさらに好ましく、特に30mN/mから46mN/mの範囲にあることが好ましい。
【0077】
これまでに説明したように、シリコーンオイルとワックスの不均一な配置は、好ましいようであり、これによって、OFEの極性成分及び/又は分散性成分の異なるレベルによって表されるOFEの高い領域と低い領域とが表面に形成される。極性成分が特に広範囲に変動する。
【0078】
高いOFEの領域は通常、バインダのOFEに相当し、低いOFEの領域は、ワックスのOFEに相当する。
【0079】
組成物のOFEは、少なくとも五組の測定値(水/ジヨードメタン)の平均値であり、従って、高いOFEの領域と低いOFEの領域とのOFEの平均的な値(OFE平均値)を示す。
【0080】
本発明のフィラー組成物によって、組成物の表面エネルギーはさらに低下する。特に、表面エネルギーの極性成分は低下する。
【0081】
従って、上記組成物のOFEはバインダ(B)のOFEよりも、少なくとも1.5mN/m低いことが好ましく、さらには少なくとも3mN/m低いことが好ましく、特に少なくとも5mN/m低いことが好ましい。
【0082】
上記組成物のOFEの平均値の極性成分は、1mN/mから10mN/mの範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは1mN/mから6mN/mの範囲にあり、特に好ましいのは1mN/mから5mN/mの範囲にある。
【0083】
上記組成物のOFEの平均値の極性成分は、バインダ(B)のOFEの平均値の極性成分よりも、少なくとも1mN/m低いことが好ましく、バインダ(B)のOFEの平均値の極性成分よりも、少なくとも2mN/m低いことがさらに好ましい。特に好ましいのは、OFEの平均値の極性成分が、バインダ(B)のOFEの平均値の極性成分よりも、少なくとも3mN/m低いことである。
【0084】
上記組成物のOFEの平均値の分散性成分は、14mN/mから59mN/mの範囲にあって、さらに好ましいのは20mN/mから50mN/mの範囲にあり、特に好ましいのは25mN/mから40mN/mの範囲にある。
【0085】
上記組成物のOFEの平均値は、15mN/mから60mN/mの範囲にあって、さらに好ましいのは20mN/mから50mN/mの範囲にあり、特に好ましいのは23mN/mから35mN/mの範囲にある。
【0086】
上記組成物のOFEの平均値の分散性成分と上記組成物のOFEの平均値の極性成分との比は好ましくは、50:1から1:1であって、さらに好ましくは40:1から2:1であり、特に好ましいのは10:1から5:1である。
【0087】
上記組成物のOFEの平均値が低いのは、なかでもそのOFEの低い極性成分に起因する。シリコーンオイルとワックスがOFEを下げること、特にOFEの極性成分を下げることは知られていることである。しかしながら、表面エネルギーの極性成分は本発明のピグメント/フィラー組成物により更に低下することから、湿気管理機能は更に向上する。
【0088】
バインダ(B)は無水状態かつ溶媒を含まない再分散粉末として用いることができ、あるいは水性かつ/もしくは溶媒を含まない高分子物質の分散物であってもよい。一般的に用いられるのは、水性かつ/もしくは溶媒を含まない高分子物質の分散物である。非水溶媒は通常、有機溶媒である。
【0089】
上記の有機溶媒は、脂肪族もしくは芳香族の炭化水素であってよく、その例としては、トルエン、アルコール、エステル、そしてケトンが挙げられる。そのような溶媒はバインダや塗布材料の溶媒として知られている。
【0090】
本発明の組成物は通常、水性分散物あるいは溶媒を含む分散物として供給される。水や溶媒の合計量は通常、全組成物量に対する相対量として20質量%から60質量%である。
【0091】
添加される水あるいは有機溶媒の量は、当業者により、目的とする使用態様に応じて決定される。分散物の場合、水と上記の有機溶媒から構成される混合物における水の比率は、水と有機溶媒の合計量に対する相対量として50%を越えることが好ましい。
【0092】
好ましい態様では、水性分散物として供給される。このタイプの水性分散物は、少量の有機溶媒を含んでいても良く、例えば、反応性成分として含まれる。この場合、その比率は通常、組成物の全体量に対する相対量として、5質量%を越えることはない。
【0093】
上記のタイプの有機溶媒は、脂肪族もしくは芳香族の炭化水素であってよく、その例としては、トルエン、アルコール、エステル、してケトンが挙げられる。そのような溶媒はバインダや塗布材料の溶媒として知られている。
【0094】
バインダ(B)は通常、バインダ(B)の総量に対する相対量として、少なくとも60質量%の炭素分を含む。この種類のバインダは通常、有機モノマー、例えば、縮合あるいは付加反応により重合するような、C−C二重結合を含むモノマーである。
【0095】
好適なバインダあるいはバインダポリマーは、3から20の炭素原子を持つカルボン酸のビニルエステル、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドンとその誘導体、芳香族ビニル(例、スチレン)とその誘導体(例、スチレン誘導体)、ハロゲン化ビニル、エチレン性の不飽和カルボン酸(例、アクリル酸及び/又はメタクリル酸)、エチレン性の不飽和カルボン酸エステル(例、アルコール基中に1から12の炭素原子を含むアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル)、エチレン性不飽和カルボン酸アミドあるいはエチレン性不飽和カルボン酸無水物、アクリルアミドやアクリルニトリルのような酸エステルであって、上述のように重合体の分散物の形態のものである。水溶性アルキドポリマー、(メタ)アクリル酸/アルキドポリマー、ポリビニルアルコール、そしてそれらの混合物もまた、用いることができる。なかでも、(メタ)アクリレート、例えば、アクリレート、に基づくポリマー(重合体)及び/又はコポリマー(共重合体)、これらを以後、簡略化して「(コ)ポリマー」とも呼ぶが、は特に好ましい。本発明においては、(メタ)アクリレーとに基づく(コ)ポリマーは、例えば、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステル、即ち、(メタ)アクリレート、あるいはそれらの混合物である。本発明において、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸とは、メタクリル酸エステルもしくはメタクリル酸、そしてアクリル酸エステルもしくはアクリル酸、あるいはそれらの混合物を意味する。アクリル酸のホモポリマー、そして特にアクリル酸とそのエステルとのコポリマー、なかでもアルキルエステル、及び/又はメタクリル酸のホモポリマー、そして特にメタクリル酸とそのエステルとのコポリマー、なかでもアルキルエステルが好ましく用いられる。ここでは、上記のアクリル酸とアクリル酸エステルとの共重合体が特に好ましい。メタクリル酸及び/又はアクリル酸、そしてメタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステルから得られるもの、またはそのものを含むコポリマーが特に好都合に用いられる。それらのエステルのなかでも、(メタ)アクリル酸、特にアクリル酸の、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、及び/又はヘキシルエステル(例、2−エチルヘキシルエステル)などのアルキルエステルが特に好適に用いられる。
【0096】
好適なアクリル酸及びメタクリル酸のアルキルエステルの例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tーブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、そしてアクリル酸シクロヘキシルを挙げることができる。当然のことではあるが、これらのアルキルエステルは、単独でも、あるいは二種以上を組み合わせた形でも用いることができる。これに加えて、あるいはこれに代えて、官能基により官能化されたアクリル酸及び/又はメタクリル酸、例えば、ヒドロキシ基またはエポキシ基により官能化されたものも、同様に使用することができる。好適なヒドロキシ基を含む(メタ)アクリル酸エステルの例としては、メタクリル酸ヒドロオキシメチル、アクリル酸ヒドロオキシエチル、メタクリル酸ヒドロオキシプロピル、アクリル酸ヒドロオキシプロピル、メタクリル酸ヒドロオキシブチル、アクリル酸ヒドロオキシブチルが挙げられる。これらのアルキルエステルは、単独でも組み合わせても用いることができる。エポキシ基を含む(メタ)アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸グリシジルとアクリル酸グリシジルを挙げることができる。
【0097】
加うるに、不飽和モノカルボン酸とその無水物及び/又は、特に不飽和のジカルボン酸をアクリル酸、メタクリル酸及び/又はそれらのエステル、特に(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、の共重合成分として用いることができる。例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、そしてシトラコン酸、そしてそれらのC1−C12のアルコールとのエステルもまた、不飽和ジカルボン酸として好適に使用することができる。
【0098】
ここで、アクリル酸エステルの(コ)ポリマーに基づく水性バインダ分散物が特に好ましい。さらに、ビニルエステル(例、酢酸ビニル、スチレン、スチレンアクリレート、ブタジエン、フェニルアセチレン及び/又はアルキド樹脂系列、そしてそれらの共重合体もまた使用することができる。
【0099】
組成物の固形分量に対する相対量としてのバインダ(B)の比率は、10質量%から60質量%であることが好ましく、さらに好ましくは10質量%から50質量%である。特に好ましいのは、組成物の固形分量に対する相対量として12質量%から45質量%である。
【0100】
本発明の組成物は、さらに水ガラスのようなシリカ質のバインダを含むこともできる。水溶性の水ガラスまたは水ガラスの溶液(通常は水溶液)が水ガラスとしては好ましい。リチウム、ナトリウム、カリウムを含む水ガラス、そしてそれらの混合物が好ましく使用される。
【0101】
シリコーンオイル(S)は通常、主として非極性側鎖を持つことから、非極性である。
【0102】
主として非極性側鎖、例えば、C1からC20の炭化水素側鎖、を持つシリコーンオイル(S)が好ましい。例えば、C1からC20のアルキル側鎖を持つシリコーンオイル(S)が好ましく、特に5未満の炭素原子を持つアルキル側鎖をもつものが好ましい。
【0103】
特に好ましいのは、メチル、エチルもしくはプロピルの側鎖を持つ、分岐鎖もしくは直鎖のポリシロキサンである。
【0104】
「主として非極性の側鎖」、「主として炭化水素からなる側鎖」あるいは「主としてアルキルの側鎖」とは、シリコーンオイルの製造の際において何らかの極性側鎖を含む反応成分もしくはそれらの前駆体が用いられていないことを意味する。
【0105】
シリコーンオイル(S)の好ましい態様では、専ら上記の態様の一つに従う炭化水素側鎖、特にアルキル側鎖を含む。
【0106】
シリコーンオイル(S)は、アルコキシの側鎖を持たないことが好ましい。アルコキシの側鎖を持っていないことは、FTIRスペクトル(940cm-1から970cm-1)において対称的なSi−O−C伸縮振動が見られないことから確認することができる。
【0107】
シリコーンオイル(S)は、1000から20000g/モルの分子量を持つことが好ましく、さらに4000から10000g/モルの分子量を持つことが好ましい。
【0108】
シリコーンオイル(S)は、75から135mm2/sの粘度を持つことが好ましく、さらに85から125mm2/秒の粘度を持つことが好ましい。
【0109】
本発明の組成物は、上記の特性を持つシリコーンオイルあるいはその好ましい態様を持つもののみを含むことが好ましい。
【0110】
シリコーンオイルは、組成物中の固形分量に対する相対量として、0.01質量%から2.0質量%含まれることが好ましく、さらには0.10質量%から1.5質量%、特には0.15質量%から1.0質量%含まれることが好ましい。
【0111】
塗料材料として用いられる場合のシリコーンオイルは通常、流れ促進効果を持つ。しかしながら、本発明で用いられるシリコーンオイルは、流れ促進効果を示さないことが好ましい。
【0112】
ワックスは、その融点が50から150℃の範囲にあることが好ましく、さらには、70℃から140℃の温度範囲、そして特には、80℃から120℃の範囲にあることが好ましい。最も好ましいのは、90℃から100℃の範囲のものである。
【0113】
ワックスの例としては、みつろう、カルナバろう、そしてパラフィンワックスなどの天然のワックス、そしてポリアルキレンワックス、ポリアミド、酸化処理されたポリアルキレンワックス、エチレンとアクリル酸もしくはアクリル酸エステルとの低分子量の共重合体を挙げることができる。ポリエチレンあるいはポリアミドのパラフィンを含む混合物が非常に好ましく、最も好ましいのは、ポリエチレンワックスとパラフィンとの混合物である。なお、ワックスが一種以上用いられる場合には、前記の量と融点は、ワックス全体について適用される。
【0114】
ワックスの量は、組成物全体の固形成分に対する相対量として、0.10質量%から10質量%であることが好ましく、さらに好ましいのは0.2質量%から5質量%である。
【0115】
上記組成物はまた、組成物の固形成分量に対する相対量として、15.0質量%以下の、好ましくは10.0質量%以下の、例えば、流動化剤、分散剤、増粘剤、湿潤剤、塗膜結合補強剤、殺虫剤、除草剤、発泡抑制剤、繊維質材料、及びその他の一般的な添加剤を含んでいてもようい。
【0116】
塗布し、室温で48時間乾燥する場合には、塗布物の有機成分と無機成分との比は、1.50から0.60であることが好ましく、さらに好ましいのは1.30から0.80であり、特に好ましいのは1.25から0.90である。この比の測定は通常、湿潤膜厚200μmを基準としている。
【0117】
上記組成物は成形用材料あるいは塗布用材料であることが好ましく、特に好ましいのは、塗料あるいは彩色剤(レンダー)である。
【0118】
本発明はまた、基体表面に形成された下記組成の塗布物(もしくは塗布層)にもある。
【0119】
ワックス(W);
シリコーンオイル(S);
バインダ(B);
全体量が8.0質量%から55質量%の平均粒子径が0.1μmから1.0μmの一種もしくはそれ以上のピグメント(顔料)及び/又はフィラー(PF1);
全体量が5.0から40質量%の平均粒子径が1.0μmから10μmの一種もしくはそれ以上のピグメント(顔料)及び/又はフィラー(PF2);
全体量が3.0から30質量%の平均粒子径が10μmから40μmの一種もしくはそれ以上のピグメント(顔料)及び/又はフィラー(PF3);
但し、いずれの場合でも組成物の固形成分の質量基準であり、またPF1、PF2、PF3は互いに異なるものである。
【0120】
上記の基体上の塗布物は、本発明の組成物を用いることにより得ることができる。
【0121】
上記塗布物は、0.28以下の摩擦係数を持つことが好ましく、また0.24以下の摩擦係数を持つことが、さらに好ましい。特に好ましい摩擦係数は、0.20以下である。この摩擦係数の測定方法は、実験の記載部分に示す。
【0122】
このような低い摩擦係数のおかげで、本発明の組成物から得られる塗布物は、前述のように、非常に優れた湿気管理作用を示す。
【0123】
本発明の組成物の好ましい態様は同時に本発明の塗布物の好ましい態様に相当し、また、本発明の塗布物の好ましい態様は同時に本発明の組成物の好ましい態様に相当する。
【0124】
基体は壁であることが好ましく、特に、例えば、建物の外壁のような、気象条件に曝される外部表面であることが好ましい。
【0125】
本発明はさらに、本発明の組成物の成形用材料あるいは塗布用材料、例えば、塗料やレンダー、としての使用にも関する。
【0126】
本発明の組成物の好ましい態様は同時に本発明の上記使用の好ましい態様に相当し、また、本発明の上記使用の好ましい態様は同時に本発明の組成物の好ましい態様に相当する。
【0127】
本発明の表面被覆用組成物、そしてその使用により形成される被覆は、意外にも、湿気管理作用を向上させる。
【0128】
また、本発明の表面被覆用組成物によりもたらされる低い摩擦係数の結果、水滴を残すことのない特性が向上する。すなわち、形成された水滴は、仮に微小な水滴であっても、いかなる水滴跡や水滴の移動の跡を残すことなく、滑り落ちることになる。
【図面の簡単な説明】
【0129】
図1】本発明の組成物、但し、中空のガラスビーズが添加されている、の塗布物の表面の光学顕微鏡写真(倍率:20倍)を示す。
図2】本発明の組成物、但し、中空のガラスビーズが添加されている、の塗布物の表面の光学顕微鏡写真(倍率:10倍)を示す。
図3】表面の上および内部に残留している水の時系列での変化(質量/時)を示す。
図4】表面の上および内部に残留している水の時系列での変化(質量%/時)を示す。
【実施例】
【0130】
<測定方法>
<ワックスの融点>
ISO EN 11357−3
<接触角、表面エネルギー、及びその極性成分と分散性成分>
接触角の測定物質として、水とジヨードメタンを用いた。液滴の大きさは、いずれの場合も2μL乃至4μLである。
【0131】
ワックスの場合は、環境条件によっては直接測定ができない。何故ならば、ワックスは硬化につれて結晶化し、その結果測定が不可能となるか、あるいはワックスは柔らかすぎることもあるからである。このため、生成する固形成分に対する相対量として3.85質量%のワックスと96.15質量%の後記のバインダとの混合物を調製し、これを用いて被覆物を作製した。接触角の測定は、この被覆物の表面で行った。
【0132】
シリコーンオイルは通常、粘ちょうな液体であり、従って、通常はその表面についての直接的な測定は不可能である。このため、生成する固形成分に対する相対量として1.13質量%のシリコーンオイルと98.87質量%の後記のバインダとの混合物を調製し、これを用いて被覆物を作製した。接触角の測定は、この被覆物の表面で行った。
【0133】
バインダとしては、セラニーズ社からモウイリス(Mowilith) LDM 7724として入手したアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとから形成された共重合体の水性分散液(固形成分量:46質量%、ブルックフィールド粘度(DIN EN ISO 2555、スピンドル4番、20rpm、23℃での測定値):約7000mPa・sを用いた。
【0134】
静的な接触角は、23℃、相対湿度50%で2日間乾燥させたのち測定した。水滴あるいはジヨードメタン滴を落とし、60秒間経過したのち、測定を行った。
【0135】
接触角は、クルス社(Kruss)製のG1接触角測定器を用い、固体、液体、基体の三相接触線から決定した。各試料について、異なる点で、少なくとも五滴を使い、測定を行った。
【0136】
表面エネルギーの測定は、以下に述べるオーエンス・ベント・ラベル・ケルブレ(Owens, Wendt, Rabel and Kaelble)法(Kruss AGより入手)により実施した。
【0137】
オーエンス・ベント・ラベル・ケルブレ法によると、各相の表面張力は極性成分と分散性成分とに分割することができる。
【0138】
【0139】
オーエンスとベントは、界面張力についての彼等の下記の式:

に基づき、これをヤングの下記の式と組み合わせた。
【0140】
上記の二人は、上記の式システムを二つの液体での接触角と既知の表面張力の分散性成分と極性成分とを組み合わせることにより解いた。式3と式4とを組み合わせ、得られた式を、変換によって一般的な直線式に適用した。
【0141】
上記の適用により得られた式は次の通りである。

xに対するyをプロットする線形回帰により、ssPは、線の傾きmの二乗として与えられ、ssDは、縦軸の成分bの二乗として与えられる。
【0142】

表面エネルギーは、mN/mで与えられる。
【0143】
後述する例で使用された純粋な上記のバインダとワックス及び/又はシリコーンオイルの混合物について最初に検討する。
【0144】
上記の目的を達するために、第1表に示す組成物は、湿潤層厚さが200μmで、前述のようにして乾燥して製造し、その表面に水とジヨードメタンを滴下し、3分間の平衡化を行った後、接触角を測定して、表面エネルギー(OFE)とOFEの分散性成分(DA)と極性成分(PA)とを決定した。
【0145】
第1表に記載のPEワックスの量は、固形分が35質量%の水性分散液の量であり、バインダの量はいずれも、固形分量が46質量%の水性分散液の量である。シリコーンオイルは、純粋な化合物として存在していた。
【0146】

ワックス及び/又はシリコーンオイルの添加により、水の接触角が有意に大きくなることが分かる。
【0147】
<ピグメントの体積濃度>
ピグメントの体積濃度(EN ISO 4618−1)は塗膜中のピグメント/フィラーとバインダとの体積比を意味する。
【0148】
組成に含まれる添加剤は同様に計算に含められていない。溶媒と水は硬化膜には最早含まれていないことから、除外してある。ワックスとシリコーンオイルが使用されていても、計算に際しては考慮されていない。
【0149】
<シリコーンオイルの粘度>
DIN 53015
【0150】
<FTIR(対称Si−O−C伸縮振動の不存在)>
この測定は、標準的なATR補助用具を備えているパーキン−エルマースペクトル100FTIR分光器を用いて行った。94−970cm-1における対称Si−O−C伸縮振動の不存在は、アルコキシ側鎖の不存在を示している。
【0151】
<平均粒子径>
本発明においては、ピグメントとフィラーはそれらの平均粒子径を基礎として特徴付けられている。このことは粒子径分布を測定することによって明らかとなる。ここで、「dx」は粒子径が「d」よりも小さい粒子の%比率(x)を意味する。これは、「d20」との値は粒子全体の20質量%がその粒子径よりも小さいことを意味する。従って、「d50」は体積平均の中央値、即ち、全体量の50体積%がその粒子径よりも小さいことを意味する。本発明では、粒子径は、体積平均の中央値である「d50」により規定される。体積平均の中央値である「d50」を測定するために、英国のマルバーン・インスツルメント社(Malvern Instruments Limited)から供給されているマスターサイザー(Mastersizer)3000レーザー分散粒子径測定機を用いた。この測定方法と測定装置は当業者により知られており、フィラーやピグメントそして他の粒状物質の粒子径を測定するために一般的に使用されている。
【0152】
測定は水中で実施した。試料は、高速攪拌機と超音波を用いて分散させた。
【0153】
平均粒子径は「d50」に相当する。
【0154】
<嵩密度>
嵩密度は、ISO697に従って測定した。
【0155】
動的摩擦係数(μR)は、ISO8295:1995とASTM D1894−11に準じた方法で測定した。アイテック・スリップ(Aitek Slip)測定器を用いた。湿潤状態の膜厚が200μmである膜をレネッタ(Lenetta)・フィルムの上に形成し、室温で三日間乾燥した。三枚の試料(150×240mm2)を作製方向に切断し、23℃で熱的に制御された環境下で少なくとも16時間保持した。測定試験もまた、この温度にて行った。試料を、その被膜の作製方向がスライドの移動方向と一致するように測定台に載せた。スライドはステンレススチール製のものであり、その重さは1.00kgであった。このスライドを台の上を等速(127mm/分)で移動させ、その時間における力のプロファイルを記録した。このスライドを移動させるために必要な平均力をISO8295:1995のパラグラフ9.2に記載されているように測定した。そして、動的摩擦係数をISO8295:1995に記載された方法により下記のように計算した。
【0156】

μR = Ff/w・g

上記式において、Ffは動的摩擦力(単位:ニュートン)、wはスライドの重量(単位:キログラム)、そしてgは、重力定数の9.81m2/秒である。
【0157】
<実施例>
<使用された物質>
バインダ:セラニーズ社からモウイリス(Mowilith) LDM 7724として入手したアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとから形成された共重合体の水性分散液(固形成分量:46質量%、ブルックフィールド粘度(DIN EN ISO 2555、スピンドル4番、20rpm、23℃での測定値):約7000mPa・sを用いた。
【0158】
二酸化チタン:平均粒子径 = 0.25μm (PF1の試料)
炭酸カルシウム:平均粒子径 − 2.5μm (PF2の試料)
シート状シリケート:平均粒子径 − 25μm (PF3の試料)
クリスタバライト:平均粒子径 − 14μm (PF3の試料)
【0159】
中空ガラスビーズ:平均粒子径 = 50μm
ワックス:融点範囲が91℃から99℃で、密度が1.00g/cm3そして25−50mPa・秒(DIN53019 1.921s−1)のポリエチレンワックス。固形分含量が35質量%の分散物である。
シリコーンオイル:アルコキシ基を含まず、粘度が90mm/秒、そして分子量が6100g/モルであるジメチルポリシロキサン
【0160】
下記の各組成物を調整した。
R1:EP0546421に記載の組成II(疎水性の建築物外壁用塗料であって、顔料体積濃度が約80%のPVCを含むもの)
R2:市販の疎水性分散シリケート塗料で約82%のPVCを含むもの)
【0161】
【0162】
【0163】
本発明に従うフィラー組成物により摩擦係数が有意に低下していることが、EG2(0.12)とA3(0.17)との比較から明らかである。さらに、表面エネルギーの極性成分も本発明に従うピグメント/フィラー組成物により約半分に低下している。双方の組成物は、同量(36)のPVCを含み、同量のバインダ含有量である。それらは単に、EG2が本発明のピグメントの組み合わせを含んでいるのに対し、A3はその組み合わせを含まないという違いも持つに過ぎない。
【0164】
ガラスビーズを用いた例(EG1/EG3/EG4/EG5)では、確かに摩擦係数が増加している。しかしながら、ガラスビーズは、図1図2に見られるように、表面上に微小構造体を生成する。平滑な表面では、排出される水は、往々にして僅かな道程で排出される。そして、その道程に沿って堆積物が生成する可能性がある。ガラスビーズにより生成する微小構造体により、排出される水は様々な方向に進み、このため、そのような堆積物の生成が大きく低減する。
【0165】
本発明の組成物の再乾燥は下記の試験により測定した。
【0166】
上記の目的では、レネットフィルムの上に湿潤層厚さが200μmの試料を生成させ、室温で二日間乾燥させた。表面積は、414cm2であった。
このフィルムに35cm離れた位置から、約85g/m2の蒸留水を吹き付けた。30分間かけて再乾燥の様子を観察し、5分毎に質量を記録した。この試験は、標準的な23℃/50%RHの環境条件で実施した。
【0167】
【0168】
上記の表から明らかなように、本発明の組成物の再乾燥に関する挙動は、明らかに向上している。5分後と10分後の数値から分かるように、初期の乾燥速度の時点で有意に増加している。さらに、30分後の水の残量もまた有意に少なくなっている。
表面の上および内に残留している水の時系列での変化を、図3に(質量/時)の変化として、図4に(質量%/時)の変化として示す。
図1
図2
図3
図4