(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
プロピレン系エラストマー(P1a)が、プロピレン由来の構成単位と、エチレン由来の構成単位と、炭素原子数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位とを含む請求項1に記載の積層シート。
プロピレン系重合体(P1)が、プロピレン系エラストマー(P1a)と共に、下記要件(b−1)および(b−2)を満たすプロピレン系重合体(P1b)も含む請求項1に記載の積層シート。
(b−1)示差走査熱量計(DSC)を用いて、再昇温法によって測定される融点(Tm)が120〜170℃である。
(b−2)メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重下)が0.1〜500g/10分である。
L1層および/またはL2層が、さらに、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、およびヒンダートアミン型光安定化剤からなる群より選択される一種類以上の安定剤を、各層の全質量に対して0.005〜5質量%含む請求項1に記載の積層シート。
示差走査熱量計(DSC)で測定される融点(Tm)が140〜170℃であるプロピレン系重合体(P3)を含んでなるL4層が、L2層のL1層とは反対側面に接触されてなる請求項1に記載の積層シート。
L4層が、さらに、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、およびヒンダートアミン型光安定化剤からなる群より選択される一種類以上の安定剤を、L4層の全質量に対して0.005〜5質量%含む請求項13に記載の積層シート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、優れた耐久性及び耐候性を有し、各層間の接着強度に優れ、環境にも優しく、コスト効率の高いポリオレフィン系樹脂を用いてなる積層シート、およびこの積層シートを用いてなる太陽電池用バックシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は以下の通りである。
【0008】
[1]密度が
890〜970kg/m
3であるエチレン系重合体(E1)50〜99質量部およびプロピレン系重合体(P1)1〜50質量部(ここで、成分(E1)と成分(P1)との合計を100質量部とする)を含んでなるL1層と、プロピレン系重合体(P2)50〜100質量部および密度が850kg/m
3以上、890kg/m
3未満であるエチレン系エラストマー(E2)0〜50質量部(ここで、成分(P2)と成分(E2)との合計を100質量部とする)を含んでなるL2層とが接触されてなる二層シートを含む積層シートであって、
プロピレン系重合体(P1)が、プロピレン由来の構成単位とエチレン由来の構成単位および/または炭素原子数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位とを含む下記要件(a−1)を満たすプロピレン系エラストマー(P1a)を含んでなることを特徴とする積層シート。
(a−1)示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融点(Tm)が120℃未満、あるいは融点(Tm)が観測されない。
【0009】
[2]L1層が、エチレン系重合体(E1)55〜95質量部およびプロピレン系重合体(P1)5〜45質量部を含んでなる[1]に記載の積層シート。
【0010】
[3]プロピレン系エラストマー(P1a)が下記要件(a−2)を満たす[1]に記載の積層シート。
(a−2)メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重下)が0.1〜500g/10分である。
【0011】
[4]プロピレン系エラストマー(P1a)が、プロピレン由来の構成単位51〜90モル%を含む[1]に記載の積層シート。
【0012】
[5]プロピレン系エラストマー(P1a)が、エチレン由来の構成単位7〜24モル%を含む[1]に記載の積層シート。
【0013】
[6]プロピレン系エラストマー(P1a)が、炭素原子数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位0〜25モル%を含む[1]に記載の積層シート。
【0014】
[7]プロピレン系エラストマー(P1a)が、プロピレン由来の構成単位と、エチレン由来の構成単位と、炭素原子数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位とを含む[1]に記載の積層シート。
【0015】
[8]プロピレン系重合体(P1)が、プロピレン系エラストマー(P1a)と共に、下記要件(b−1)および(b−2)を満たすプロピレン系重合体(P1b)も含む[1]に記載の積層シート。
(b−1)示差走査熱量計(DSC)を用いて、再昇温法によって測定される融点(Tm)が120〜170℃である。
(b−2)メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重下)が0.1〜500g/10分である。
【0016】
[9]L1層および/またはL2層が、さらに無機粒子を、各層の全質量に対して0.1〜30質量%含む[1]に記載の積層シート。
【0017】
[10]L1層および/またはL2層が、さらに、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、およびヒンダートアミン型光安定化剤からなる群より選択される一種類以上の安定剤を、各層の全質量に対して0.005〜5質量%含む[1]に記載の積層シート。
【0018】
[11]エンジニアリングプラスチックを含んでなるL3層が、L2層のL1層とは反対側面に接触されてなる[1]に記載の積層シート。
【0019】
[12]エンジニアリングプラスチックが、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはポリアミドである[11]に記載の積層シート。
【0020】
[13]示差走査熱量計(DSC)で測定される融点(Tm)が140〜170℃であるプロピレン系重合体(P3)を含んでなるL4層が、L2層のL1層とは反対側面に接触されてなる[1]に記載の積層シート。
【0021】
[14]L4層が、さらに、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、およびヒンダートアミン型光安定化剤からなる群より選択される一種類以上の安定剤を、L4層の全質量に対して0.005〜5質量%含む[
13]に記載の積層シート。
【0022】
[15][1]に記載の積層シートを用いてなる太陽電池バックシート。
【0023】
[16][15]に記載の太陽電池バックシートを用いた太陽電池。
【発明の効果】
【0024】
本発明の積層シートは、二層シートを構成する
層間の接着強度および耐熱性に優れ、またEVA、PET等の非ポリオレフィン系樹脂との接着性にも優れるので、各種の装フィルム、中間層用フィルムとして好適に用いられ、特に太陽電池バックシートに好適に利用される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、適宜図面を用いて詳しく説明する。なお、本明細書中において数字と数字の間に位置する記号「数値x〜数値y」は、x以上y以下の範囲を意味する。
【0027】
「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、一方で「フィルム」とは長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JISK6900)。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。また、積層フィルムおよび積層シートを「積層体」と呼ぶ場合もある。
【0028】
本発明の積層シートは、密度が
890〜970kg/m
3であるエチレン系重合体(E1)50〜99質量部およびプロピレン系重合体(P1)1〜50質量部(ここで、成分(E1)と成分(P1)との合計を100質量部とする)を含んでなるL1層と、プロピレン系重合体(P2)50〜100質量部および密度が850kg/m
3以上、890kg/m
3未満であるエチレン系エラストマー(E2)0〜50質量部(ここで、成分(P2)と成分(E2)との合計を100質量部とする)を含んでなるL2層とが接触されてなる二層シートを含む積層シートであある。本発明においては、成分(P1)と成分(P2)は同一ではないことが好ましい。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態である二層シートを示す図である。この
図1に示す二層シート30は、L1層10とL2層20とが接触されてなるシートである。この二層シート30は、その片面または両面にさらに別の層を有していてもよい。
【0030】
本発明の実施形態において好ましい積層シートとしては、例えば、エンジニアリングプラスチックを含んでなるL3層が、L2層のL1層とは反対側面に接触されてなる積層シート(第一の積層シート)、示差走査熱量計(DSC)で測定される融点(再昇温法)が140〜170℃であるプロピレン系重合体(P3)を含んでなるL4層が、L2層のL1層とは反対側面に接触されてなる積層シート(第二の積層シート)が挙げられる。
【0031】
以下、L1層、L2層、L3層、L4層、各層に任意に含有されていてもよい各種添加剤、およびこれら層からなる積層シートの順に詳説する。
【0032】
<L1層>
L1層は、エチレン系重合体(E1)50〜99質量部およびプロピレン系重合体(P1)1〜50質量部、好ましくはエチレン系重合体(E1)55〜95質量部およびプロピレン系重合体(P1)5〜45質量部、より好ましくはエチレン系重合体(E1)55〜90質量部およびプロピレン系重合体(P1)10〜45質量部を含んでなる。ここで、成分(E1)と成分(P1)との合計を100質量部とする。
【0033】
L1層に含まれるエチレン系重合体(E1)の密度は、890〜970kg/m
3であり、好ましくは890〜950kg/m
3、より好ましくは890〜930kg/m
3、特に好ましくは890〜920kg/m
3である。このエチレン系重合体(E1)の密度が低過ぎると、層間強度よりもL1層の材料強度が低くなり凝集破壊する問題が生じる場合がある。エチレン系重合体(E1)は、エチレン由来の構成単位のみから構成されたエチレン単独重合体であってもよいし、エチレン由来の構成単位70モル%以上と、炭素原子数3〜10のα−オレフィン由来の構成単位30モル%以下からなる共重合体であってもよい。エチレン系重合体(E1)の、190℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR)は、通常0.1〜30g/10分、好ましくは0.5〜20g/10分である。
【0034】
L1層に含まれるプロピレン系重合体(P1)は、下記要件(a−1)を満たすプロピレン系エラストマー(P1a)を含むものであれば特に限定されない。プロピレン系エラストマー(P1a)の要件(a−1)の融点(Tm)は、後述する実施例における通常法によって測定された値である。プロピレン系エラストマー(P1a)の融点(Tm)が120℃以上であると、エチレン系重合体(E1)との界面強度が低くなりL1層が凝集破壊する問題が生じる場合がある。さらに、プロピレン系エラストマー(P1a)は下記要件(a−2)も満たすことが好ましい。
(a−1)示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融点(Tm)が120℃未満、あるいは融点(Tm)が観測されない。
(a−2)メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重下)が0.1〜500g/10分である。
【0035】
プロピレン系エラストマー(P1a)は、プロピレン由来の構成単位と、エチレン由来の構成単位および/または炭素原子数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位とを含むプロピレン系共重合体であり、好ましくはプロピレン由来の構成単位と、エチレン由来の構成単位と、炭素原子数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位とを含むプロピレン系共重合体である。プロピレン系エラストマー(P1a)は、例えば、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・炭素原子数4〜20のα−オレフィン共重合体、プロピレン・エチレン・炭素原子数4〜20のα−オレフィン共重合体の何れであってもよい。炭素原子数4〜20のα−オレフィンの具体例としては、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンが挙げられる。これらのα−オレフィンは、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いられる。
【0036】
プロピレン系エラストマー(P1a)のプロピレン由来の構成単位の割合は、通常は51〜90モル%、好ましくは60〜89モル%、より好ましくは62〜88モル%、特に好ましくは62〜86モル%である。
【0037】
プロピレン系エラストマー(P1a)のエチレン由来の構成単位の割合は、通常は0〜24モル%、好ましくは7〜24モル%、より好ましくは8〜22モル%、特に好ましくは8〜20モル%、最も好ましくは8〜18モル%である。
【0038】
プロピレン系エラストマー(P1a)の炭素原子数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位の割合は、通常は0〜25モル%、より好ましくは0〜24モル%、特に好ましくは1〜23モル%、最も好ましくは2〜23モル%である。
【0039】
以上のプロピレン系エラストマー(P1a)の構成単位の各割合は、プロピレン由来の構成単位とエチレン由来の構成単位と炭素原子数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位との合計を100モル%とした場合の割合である。
【0040】
本発明においては、以上説明したプロピレン系エラストマー(P1a)をエチレン系重合体(E1)を主たる成分とするL1層に含ませるので、このL1層とプロピレン系重合体(P2)を主たる成分とするL2層との間の接着強度が向上する。
【0041】
L1層に含まれるプロピレン系重合体(P1)は、プロピレン系エラストマー(P1a)と共に、下記要件(b−1)および(b−2)を満たすプロピレン系重合体(P1b)も含むことも好ましい。プロピレン系重合体(P1b)の要件(b−1)の融点(Tm)は、後述する実施例における再昇温法によって測定された値である。
(b−1)示差走査熱量計(DSC)を用いて、再昇温法によって測定される融点(Tm)が120〜170℃である。
(b−2)メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重下)が0.1〜500g/10分である。
【0042】
プロピレン系重合体(P1b)は、前記要件(b−1)および(b−2)を満たすものであれば、ホモポリプロピレンであっても、プロピレン・炭素原子数2〜20のα−オレフィン(ただしプロピレンを除く)ランダム共重合体であっても、プロピレンブロック共重合体であってもよい。好ましくは,ホモポリプロピレン、またはプロピレンと炭素原子数2〜20(ただしプロピレンを除く)のα−オレフィンとのランダム共重合体である。プロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα−オレフィンの具体例としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンが挙げられる。プロピレン系重合体(P1b)がプロピレン・炭素原子数2〜20のα−オレフィン(ただしプロピレンを除く)ランダム共重合体である場合、炭素原子数2〜20のα−オレフィン由来の構成単位の割合は通常0.1〜8モル%、好ましくは0.2〜7.5モル%、より好ましくは0.3〜7モル%である。
【0043】
L1層に含まれるプロピレン系重合体(P1)は、以上説明したプロピレン系エラストマー(P1a)を少なくとも含み、好ましくはプロピレン系重合体(P1b)も含み、必要に応じてその他のプロピレン系重合体を含んでいてもよい。例えば、プロピレン系エラストマー(P1a)40〜100質量部、好ましくは50〜99質量部、より好ましくは60〜95質量部と、プロピレン系重合体(P1b)0〜60質量部、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは5〜40質量部(ここで、成分(P1a)と成分(P1b)との合計を100質量部とする)を含むプロピレン系樹脂組成物をプロピレン系重合体(P1)として好適に用いることができる。
【0044】
プロピレン系エラストマー(P1a)およびプロピレン系重合体P1b)は、積層シートの性能面からはその立体構造はアイソタクティック構造であってもシンジオタクティック構造であってもよい。ただし、重合体の製造のし易さや市販品を用いる場合の入手容易性の視点からは、その立体構造はアイソタクティック構造であることが好ましい。
【0045】
<L2層>
L2層は、プロピレン系重合体(P2)50〜100質量部およびエチレン系エラストマー(E2)0〜50質量部、好ましくはプロピレン系重合体(P2)51〜100質量部およびエチレン系エラストマー(E2)0〜49質量部、より好ましくはプロピレン系重合体(P2)55〜100質量部およびエチレン系エラストマー(E2)0〜45質量部を含んでなる。ここで、成分(P2)と成分(E2)との合計を100質量部とする。
【0046】
特に好ましいL2層は、エチレン系エラストマー(E2)を含み、その含有量はL2層全体に対して通常1〜45質量%、好ましくは5〜45質量%である。エチレン系エラストマー(E2)をプロピレン系重合体(P2)を主たる成分とするL2層に含ませると、このL2層とエチレン系重合体(E1)を主たる成分とするL1層との間の接着強度がさらに向上する。
【0047】
L2層に含まれるプロピレン系重合体(P2)の示差走査熱量計(DSC)を用いて後述する通常法によって測定される融点(再昇温法)は、通常120〜170℃、好ましくは130〜160℃である。このようなプロピレン系重合体(P2)としては、前記したプロピレン系重合体(P1b)を制限なく使用できる。このプロピレン系重合体(P2)と、先に説明したL1層のプロピレン系重合体(P1)として用いることができるプロピレン系重合体(P1b)とは、同じものであってもよいし、異なっていてもよい。
【0048】
L2層に含まれるエチレン系エラストマー(E2)の密度は、850kg/m
3以上、890kg/m
3未満である。また、エチレン系エラストマー(E2)のメルトフローレート(190℃、2.16kg荷重下)は、好ましくは0.1〜20g/10分である。
【0049】
エチレン系エラストマー(E2)は、好ましくは、エチレン由来の構成単位と、炭素原子数3〜20のα−オレフィン由来の構成単位とを含むエチレン系共重合体である。炭素原子数3〜20のα−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−ヘキサドデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテンが挙げられる。中でも、炭素原子数3〜10のα−オレフィンが好ましく、炭素原子数4〜8のα−オレフィンがより好ましい。特にプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。これらのα−オレフィンは、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いられる。
【0050】
エチレン系エラストマー(E2)において、エチレン由来の構成単位の割合は好ましくは80〜95モル%であり、炭素原子数3〜20のα−オレフィン由来の構成単位の割合は好ましくは5〜20モル%である。この割合は、エチレン由来の構成単位と炭素原子数3〜20のα−オレフィン由来の構成単位との合計を100モル%とした場合の割合である。
【0051】
<L3層>
本発明の好ましい実施形態の一つである第一の積層シートにおいては、エンジニアリングプラスチックを含んでなるL3層が、L2層のL1層とは反対側面に接触されている。
【0052】
エンジニアプラスチックとは、アクリル系重合体、塩化ビニル系重合体、塩化ビニリデン系重合体、芳香族ビニル系重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、及び液晶ポリエステルからなる群より選ばれる樹脂である。これらの中でも、耐湿熱性、加工性などの性能の観点及び経済性や入手容易性の点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、およびポリアミド系樹脂が好ましい。
【0053】
<L4層>
本発明の好ましい実施形態の一つである第二の積層シートにおいては、示差走査熱量計(DSC)で測定される融点(再昇温法)が140〜170℃であるプロピレン系重合体(P3)を含んでなるL4層が、L2層のL1層とは反対側面に接触されている。
【0054】
プロピレン系重合体(P3)の融点(再昇温法)は140〜170℃であるとともに、プロピレン系重合体(P1b)やプロピレン系重合体(P2)の融点(Tm)に比べて5℃以上、好ましくは10℃以上高い融点を示すことが好ましい。このようなプロピレン系重合体(P3)は、好ましくはプロピレン単独重合体である。例えば、公知のマグネシウム担持型チタン触媒と特定のドナーを組み合わせた触媒、あるいは国際公開第2005/19283号に記載された特定構造を持つシクロペンタジエニル・フルオレニル配位子からなる遷移金属錯体と共触媒からなるメタロセン触媒によって容易に調製できる。なお、以下の説明ではプロピレン系重合体(P3)を、高融点プロピレン系重合体と呼ぶ場合がある。
【0055】
<各種添加剤>
L1層および/またはL2層、好ましくはL1層のみまたはL1層およびL2層には、無機粒子を、各層の全質量に対して0.1〜30質量%含んでいてもよい。
【0056】
無機粒子としては、例えば、紫外線吸収能のある粒子、L1層およびL2層の主たる構成成分であるポリオレフィン系樹脂との屈折率差が大きな粒子、導電性を持つ粒子、難燃性の粒子、顔料を使用できる。これにより例えば、耐紫外線性、光反射性、白色性等の光学特性、帯電防止性を付与できる。無機粒子とは投影した等価換算円の直径による一次粒径として5nm以上のものをいう。無機粒子の平均粒度は、好ましくは0.1〜30μmである。平均粒度が0.1μm未満であると太陽光の反射能が十分でない場合が有り、30μmを超えるとポリオレフィン系樹脂の接着力を阻害する場合が有る。
【0057】
無機粒子の具体例としては、金、銀、銅、白金、パラジウム、レニウム、バナジウム、オスミウム、コバルト、鉄、亜鉛、ルテニウム、プラセオジウム、クロム、ニッケル、アルミニウム、ス
ズ、チタン、タンタル、ジルコニウム、アンチモン、インジウム、イットリウム、ランタニウム等の金属;酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セシウム、酸化アンチモン、酸化スズ、インジウム・スズ酸化物、酸化イットリウム、酸化ランタニウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、合成水酸化マグネシウム、天然系マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等の金属水酸化物;フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、氷晶石等の金属フッ化物;リン酸カルシウム等の金属リン酸塩;炭酸カルシウム等の炭酸塩;硫酸バリウム等の硫酸塩;タルク、カオリン、マイカ等の珪酸塩;が挙げられる。これらの無機粒子を混合して用いてもよい。
【0058】
本発明の積層シートを太陽電池バックシートに適用する場合、太陽電池が屋外で使用されることが多いことを鑑みれば、無機粒子として、紫外線吸収能を有する酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどの金属酸化物を用いた場合に無機粒子による耐紫外線性を活かして、長期に渡ってシートの劣化による伸度低下や着色を低減するという効果を発揮することができるので好ましい。さらには、高い反射特性を付与できるという点から、無機粒子としては酸化チタンを用いるのがより好ましく、耐紫外線性がより高いという点からはルチル型酸化チタンを用いるのがさらに好ましい。
【0059】
本発明においては、必要に応じて、L1層、L2層、L3層またはL4層中に、熱可塑性樹脂系フィルムに配合される公知の酸化防止剤、耐熱安定剤、染料、中和剤、変色防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、発泡剤、発泡助剤、架橋剤、架橋助剤、安定剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、充填剤、及び柔軟性を付与するエラストマー等を本発明の効果を阻害しない範囲において含有させてもよい。好ましくは、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、およびヒンダートアミン型光安定化剤からなる群より選択される一種類以上の安定剤を含む。添加剤を用いる場合、その添加量は各層の全質量に対して通常0.005〜5質量部、好ましくは0.01〜3質量部である。
【0060】
<積層シート>
既に述べたように、本発明の積層シートは、L1層とL2層が接触されてなる二層シートを必須構成シートとして含む積層シートである。本発明の積層シートを太陽電池バックシートとして用いる場合は、例えば、L1層のL2層とは反対側の面がEVA等の樹脂からなる封止材層と接する構成、すなわち、封止材層/L1層/L2層の構成をとる。本発明において「接触」とは、接触するように貼り合わせた構造であることを意味し、通常は接触された面と面の間には有意の接着力が伴われている。
【0061】
本発明の好ましい積層シートは、L2層のL1層とは反対側面にL3層が接触した層構成、すなわちL1層/L2層/L3層の層構成からなる第一の積層シート、L2層のL1層とは反対側面にL4層が接触した層構成、すなわちL1層/L2層/L4層の層構成からなる第二の積層シートが挙げられる。
【0062】
本発明においては、L1層とL2層の厚みの比率(L1層:L2層)は、通常10:90〜90:10、好ましくは20:80〜80:20、より好ましくは30:70〜70:30である。L1層とL2層が接触されてなる二層シートの全体の厚みは、通常20〜800μm、好ましくは50〜500μmである。第一の積層シートにおけるL3層の厚みは、通常10〜1000μm、好ましくは50〜500μmである。第二の積層シートにおけるL4層の厚みは、通常10〜2000μm、好ましくは50〜1000μmである。
【0063】
次に、本発明の積層シートの製造方法について例を挙げて説明する。本発明の積層シートにおいてL1層、L2層、必要に応じてL3層またはL4層を積層する方法としては、例えば、エチレン系重合体を主たる構成成分とするL1層用の原料、プロピレン系重合体を主たる構成成分とするL2層用の原料、さらに必要に応じて、エンジニアリングプラスチックを主たる構成成分とするL3層用の原料、高融点プロピレン系重合体を主たる構成成分とするL4層用の原料を、それぞれ別の押出機に供給し、各々溶融後にL1層、L2層、および必要に応じてL3層またはL4層をこの順に合流させて積層し、Tダイからシート状に押し出す工程を含んでシートに加工する方法(共押出法)、単膜で作成したシートに被覆層原料を押出機に投入して溶融押出して口金から押出しながらラミネートする方法(溶融ラミネート法)、各フィルムをそれぞれ別々に作成し、過熱されたロール群などにより熱圧着する方法(熱ラミネート法)、溶媒に溶解させたものを塗布・乾燥する方法(コーティング法)、およびこれらを組み合わせた方法を制限なく使用できる。これらのうち製造工程が短く、かつ層間の接着性が良好であるという点で共押出法が好ましい。
【0064】
例えば、L1層とL2層からなる二層シートを共押出法で作製する場合、L1層用の原料、L2層用の原料を、それぞれ別の押出機に供給し、各々融解する。次いで、マルチマニホールドダイ、フィードブロック、スタティックミキサー、ピノール等の部材や装置を用いて、L1層、L2層をこの順に合流、積層させて、Tダイからシート状に共押出する。各層の溶融粘度差が大きい場合は、積層ムラ抑制の観点からマルチマニホールドダイを用いることが好ましい。そして、Tダイから吐出した積層シートを、キャスティングドラム等の冷却体上に押出、冷却固化することにより、本発明の積層シートを得ることができる。
【0065】
得られた本発明の積層シートに本発明の効果が損なわれない範囲で、必要に応じて熱処理やエージングなどの加工処理を加えても良い。熱処理することによって、本発明の積層シートの熱寸法安定性を向上することができる。また、積層シートの密着性を向上させるために、コロナ処理、プラズマ処理を施してもよい。
【0066】
本発明の積層シートにおいては、L1層とL2層は共にエチレン系重合体とプロピレン系重合体から構成されるので両層表面は高い接着力を示しやすい表面構造を持つと考えられる。
【0067】
L2層と接するL4層を持つ第二の積層シートにおいては、L2層とL4層が共にプロピレン系重合体を含有するので、同様な理由によって高い接着力を示すと考えられる。
【0068】
L2層と接するL3層を持つ第一の積層シートにおいて、L3層として汎用のPET樹脂を用いる場合は、L2層とL3層をドライラミネーション法等の方法で積層することが好ましい。L2層とL3層が共にエチレン起因の骨格を持つので相互の相性に優れた積層体が得られることが期待される。
【0069】
既に述べたように、本発明の積層シートを太陽電池バックシート.として用いる場合は、L1層のL2層とは反対側の面が封止材層と接する、すなわち、封止材層/L1層/L2層の構成をとる。従来、封止材層用の原料樹脂としては、エチレン起因の骨格を有するポリマーである、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)や、エチレン・α-オレフィン共重合体が主に用いられてきた。本発明においては、L1層は、エチレン系重合体を主たる構成成分としているので封止材層とL1層の接着力は顕著に改善すると考えられる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例および比較例の対比を通じて、本発明の態様をより詳しく説明する。以下の実施例は、本発明の理解を容易とするために提供されるものであって、これらによって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。
【0071】
<使用した原材料の分析方法>
(1)密度:ASTM D1505に準拠し、23℃で測定した。
(2)メルトフローレート(MFR):ASTM D1238に準拠し、190℃または230℃、2.16kgfの条件で測定した。
(3)融点(通常法):23℃±2℃で72時間以上の状態調節を実施した後の試験体を用いて、−40℃まで冷却してから昇温速度10℃/minの条件下で測定したときに得られるDSC曲線を作成した。このときに得られた融解ピーク温度を融点(通常法)とした。
(4)融点(再昇温法):DSC測定装置内で10分間200℃保持した後、降温速度10℃/minで−20℃まで冷却し、−20℃で1分間保持し、再度昇温速度10℃/minの条件下で測定したときに得られるDSC曲線を作成した。このときに得られた融解ピークを融点(再昇温法)とした。
【0072】
<使用した原材料の入手又は調製法>
(1)エチレン系重合体
・エボリュー
TMSP2040((株)プライムポリマー製、エチレン・1−ヘキセン共重合体、密度:918kg/m
3、190℃下でのMFR:3.8g/10分)
・エボリュー
TMSP1540((株)プライムポリマー製、エチレン・1−ヘキセン共重合体、密度:913kg/m
3、190℃下でのMFR:3.8g/10分)
・タフマー
TMA-4085S(三井化学(株)製、エチレン・1−ブテン共重合体、1−ブテン含量:11モル%、密度:885kg/m
3、190℃下でのMFR:3.6g/10分)
【0073】
(2)プロピレン系重合体
・プライムポリプロ
TMF107((株)プライムポリマー製、プロピレン単独重合体、密度:900kg/m
3、230℃下でのMFR:7.0g/10分、融点(再昇温法):165℃)
・本出願人によって出願された国際公開第2009/84517号の実施例2と同じ方法によりプロピレン系重合体組成物を調製した。その結果、融点(再昇温法)が160℃、230℃下でのMFRが7.1g/10分であるプロピレン単独重合体(プロピレン系重合体(P1b)に相当)10質量%と、プロピレン起因骨格含量78モル%、エチレン起因骨格含量16モル%、1−ブテン起因骨格含量6モル%であり、融点(通常法)が観測されず、230℃下でのMFRが6.6g/10分であるプロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体(プロピレン系エラストマー(P1a)に相当)90質量%からなるプロピレン系重合体組成物を得た。以下、この組成物を「調製PP組成物」と略称する。
【0074】
[実施例1]
エボリュー
TMSP2040 60質量部と調製PP組成物40質量部のドライブレンド物(L1層用の樹脂)、プライムポリプロ
TMF107(L2層用の樹脂)を、リップ幅1mmのTダイを設置した共押出機(多層キャスト成形機、住友重機械モダン(株)製)のホッパーにそれぞれ投入した。そして、シリンダー温度を240℃、ダイス温度を250℃に設定し、Tダイから溶融混練物を共押出して、キャスト成形し、厚さ150μmのL1層と厚さ150μmのL2層からなる二層シートを得た。
【0075】
この二層シートのL1層とL2層の境目にカッターナイフで切れ込みを入れ、一部界面を剥離し、剥離試験機で層間の接着強度(層間強度)を測定した。一部界面剥離する際の強度(官能試験)を以下の基準で分類したところ、接着強度は◎であった。
【0076】
この二層シートに160℃下、10分間熱履歴を与え、室温まで徐冷した後、同じ剥離試験を行った結果、接着強度は〇であった。これらの結果を表1に示す。
【0077】
[剥離試験における層間強度の評価基準]
◎:層間強度が強過ぎて剥離試験を行うための一部剥離ができない。
〇:剥離試験を実施可能。層間強度が非常に高い。
△:剥離試験を実施可能で。層間強度が高い。
×:剥離試験を実施可能で。層間強度が低い。
【0078】
[実施例2〜9、比較例1〜6]
表1および表2に示す組成物(表中の数値の単位は質量部)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして二層シート作製し、評価した。これらの結果を表1および表2に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
表1および表2の結果から明らかなように、エチレン系重合体を主たる成分とするL1層に特定のプロピレン系重合体を含ませることによって、プロピレン系重合体を主たる成分とするL2層との熱処理後の層間強度を高めることが可能となる。この層間強度は、L2層に特定の性質を満たすエチレン系重合体を少量含ませることによって更に向上させることが可能となる。