(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弁体は、前記天井部が前記弁室の天井面と摺接し、前記弁体部の下端部が前記弁室の底面と摺接し、前記リブが前記シール部材の内周側と摺接するように配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の流路切換弁。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0021】
[シール部材の実施形態1]
図1は、本発明に係るシール部材の実施形態1の全体構成を示したものである。
【0022】
図示するシール部材1は、主に、周方向に4個の貫通孔3a〜3dが同一間隔(90度間隔)で形成された円筒体2と、各貫通孔3a〜3dの周囲に沿って円筒体2の内周面2aから径方向内側へ向かって突設された内側リブ4a〜4dと、各貫通孔3a〜3dの周囲に沿って円筒体2の外周面2bから径方向外側へ向かって突設された外側リブ6a〜6dとを有している。
【0023】
シール部材1を構成する円筒体2と内側リブ4a〜4dと外側リブ6a〜6dとは一体に成形されている。このシール部材1は、例えば、天然ゴムの他にニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム(ACM)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム(FKM)、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)等の合成ゴム等の弾性材料から形成され、特に、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)から形成されることが好ましい。
【0024】
なお、円筒体2と内側リブ4a〜4dと外側リブ6a〜6dとは別体に形成してもよいが、例えばシール部材1を流路切換弁に組み込んだ際に弁室と各流出口との間の流体の漏洩を確実に抑制するため、内側リブ4a〜4dと外側リブ6a〜6dとは弾性材料から形成することが好ましい。一方、円筒体2は、弁室内での弁体の回転駆動に伴う当該シール部材1の変形を抑制するために、内側リブ4a〜4d及び外側リブ6a〜6dを形成する弾性材料よりも硬度の高い弾性材料もしくは弾性材料以外の樹脂材料等から形成してもよい。
【0025】
また、シール部材1の円筒体2の軸心方向上端部には、その上面から軸心L方向上側へ向かって4個の上側突起5a〜5dが突設されている。また、円筒体2の軸心方向下端部には、その下面から軸心L方向下側へ向かって4個の下側突起7a〜7dが突設されている。この上側突起5a〜5dと下側突起7a〜7dとはそれぞれ凸状を呈し、円筒体2の貫通孔3a〜3dの中心と周方向で同じ位置、すなわち周方向に同一間隔(90度間隔)で設けられている。
【0026】
なお、本実施形態1では、上側突起5a〜5dの軸心L方向での高さが下側突起7a〜7dの軸心L方向での高さよりも高く形成されているが、上側突起5a〜5dの軸心L方向での高さと下側突起7a〜7dの軸心L方向での高さとを同一に形成し、シール部材1を円筒体2の中心に対して点対称に形成してもよい。
【0027】
上記した実施形態1のシール部材1では、周方向に複数の貫通孔3a〜3dが形成された円筒体2と、各貫通孔3a〜3dの周囲に沿って円筒体2の内周面2a及び外周面2bから内側及び外側へ向かって突設された内側リブ4a〜4d及び外側リブ6a〜6dとからシール部材1が形成されることにより、例えばシール部材1を流路切換弁に組み付ける際に当該シール部材1の組立工数を削減することができる。また、内側リブ4a〜4dと外側リブ6a〜6dとが弾性材料から形成されることにより、例えばシール部材1が流路切換弁に組み込まれた際に弁室と各流出口との間の流体の漏洩を確実に抑制することができる。また、円筒体2と内側リブ4a〜4dと外側リブ6a〜6dとが一体に成形されていることにより、シール部材1の部品点数や製造工数を削減することができる。さらに、円筒体2の同形状の貫通孔3a〜3dや内側リブ4a〜4d、外側リブ6a〜6dが周方向に同一間隔で形成されることにより、例えばシール部材1が流路切換弁に組み込まれた際に弁室と各流出口との間の流体の漏洩を周方向で均等に且つ確実に抑制することができる。
【0028】
また、シール部材1を構成する円筒体2の軸心方向端部に、上側突起5a〜5dや下側突起7a〜7dが軸心L方向へ向かって突設されることにより、例えばシール部材1が流路切換弁に組み込まれた際に弁体の回転駆動に伴う当該シール部材1の弁室内での回転を抑止することができる。また、上側突起5a〜5dと下側突起7a〜7dとが周方向で円筒体2の貫通孔3a〜3dと同じ位置に設けられることにより、貫通孔3a〜3dが形成された位置での円筒体2の縦断面積を増加させることができ、貫通孔3a〜3dに起因するシール部材1の剛性の低下を効果的に抑制することができる。
【0029】
[シール部材の実施形態2]
図2は、本発明に係るシール部材の実施形態2の全体構成を示したものである。
図2に示す実施形態2のシール部材1Aは、
図1に示す実施形態1のシール部材1に対し、円筒体の軸心方向端部に突設した突起の構成が相違しており、その他の構成は
図1に示すシール部材1と同様である。したがって、
図1に示す実施形態1のシール部材1と同様の構成については同様の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0030】
シール部材1Aを構成する円筒体2Aの軸心方向上端部には、径方向外側へ向かって4個の上側突起5aA〜5dAが突設されている。また、円筒体2Aの軸心方向下端部には、径方向外側へ向かって4個の下側突起7aA〜7dA(下側突起7cAは不図示)が突設されている。上側突起5aA〜5dAはそれぞれ、円筒体2Aの上面から軸心方向下方へ延びる板状を呈し、下側突起7aA〜7dAはそれぞれ、円筒体2Aの下面から軸心方向上方へ延びる板状を呈し、上側突起5aA〜5dAと下側突起7aA〜7dAとはそれぞれ周方向に同一間隔(90度間隔)で且つ同じ位置に設けられている。また、上側突起5aA〜5dAと下側突起7aA〜7dAとはそれぞれ、円筒体2Aの貫通孔3aA〜3dAと周方向で異なる位置、すなわち軸心LA方向で視た際に円筒体2Aの隣り合う貫通孔3aA〜3dAの間に設けられている。
【0031】
ここで、上側突起5aA〜5dAと下側突起7aA〜7dAとは、軸心LA方向での長さや周方向での幅、径方向での長さ(円筒体2Aの外周面2bAからの突出量)が同一に形成され、シール部材1Aは円筒体2Aの中心に対して点対称に形成されている。また、上側突起5aA〜5dAと下側突起7aA〜7dAの径方向での高さは、円筒体2Aの貫通孔3aA〜3dAの周囲に沿って設けられた外側リブ6aA〜6dAの径方向での高さよりも高く形成されている。
【0032】
上記した実施形態2のシール部材1Aでは、上側突起5aA〜5dAと下側突起7aA〜7dAとが径方向外側へ向かって突設して形成されることにより、例えばシール部材1Aが流路切換弁に組み込まれた際に弁体の回転駆動に伴う当該シール部材1Aの弁室内での回転を抑止できると共に、シール部材1Aの軸心LA方向での高さを低減して当該シール部材1Aを小型化することができる。また、上側突起5aA〜5dA及び下側突起7aA〜7dAが、軸心LA方向で視た際に円筒体2Aに形成された貫通孔3aA〜3dAの間に設けられることにより、上側突起5aA〜5dA及び下側突起7aA〜7dAの軸心LA方向での長さを確保することができ、上側突起5aA〜5dA及び下側突起7aA〜7dAや円筒体2Aの強度を確保することができる。さらに、シール部材1Aが円筒体2Aの中心に対して点対称に形成されることにより、例えばシール部材を上下反転した姿勢で流路切換弁に組み付けることができ、欠陥品の発生を抑止できると共にその組立工程を簡素化することができる。
【0033】
[シール部材の実施形態3]
図3は、本発明に係るシール部材の実施形態3の全体構成を示したものである。
図3に示す実施形態3のシール部材1Bは、
図1に示す実施形態1のシール部材1に対し、円筒体の軸心方向上端部に突起ではなく、凹状の窪みを形成した構成が相違しており、その他の構成は
図1に示すシール部材1と同様である。したがって、
図1に示す実施形態1のシール部材1と同様の構成については同様の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0034】
シール部材1Bを構成する円筒体2Bの軸心方向上端部には、その上面から軸心LB方向下側へ向かって4個の上側窪み5aB〜5dBが形成されている。また、円筒体2Bの軸心方向下端部には、その下面から軸心LB方向下側へ向かって4個の下側突起7aB〜7dBが突設されている。上側窪み5aB〜5dBはそれぞれ凹状を呈し、下側突起7aB〜7dBはそれぞれ凸状を呈し、上側窪み5aB〜5dBと下側突起7aB〜7dBとはそれぞれ円筒体2Bの貫通孔3aB〜3dBの中心と周方向で同じ位置、すなわち周方向に同一間隔(90度間隔)で設けられている。すなわち、上側窪み5aB〜5dBと下側突起7aB〜7dBとはそれぞれ周方向に同一間隔(90度間隔)で且つ同じ位置に設けられている。
【0035】
上記した実施形態3のシール部材1Bでは、シール部材1Bを構成する円筒体2Bの軸心方向上端部に上側窪み5aB〜5dBが形成され、その軸心方向下端部に下側突起7aB〜7dBが軸心LB方向へ向かって突設されることにより、例えばシール部材1Bが流路切換弁に組み込まれた際に弁体の回転駆動に伴う当該シール部材1Bの弁室内での回転を抑止できると共に、シール部材1Bの軸心LB方向での高さの増加を抑制して当該シール部材1Bを小型化することができる。
【0036】
なお、上記した実施形態3では、円筒体2Bの軸心方向上端部のみに凹状の窪みを形成したが、例えば円筒体2Bの軸心方向下端部に凹状の窪みを形成してもよいし、円筒体2Bの軸心方向上端部と下端部の双方に凹状の窪みを形成してもよい。
【0037】
[シール部材の実施形態4]
図4は、本発明に係るシール部材1Cの実施形態4の全体構成を示したものである。
図4に示す実施形態4のシール部材1Cは、
図1に示す実施形態1のシール部材1に対し、円筒体の内周面の内側リブを省略した構成が相違しており、その他の構成は
図1に示すシール部材1と同様である。したがって、
図1に示す実施形態1のシール部材1と同様の構成については同様の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0038】
図示するシール部材1Cは、主に、周方向に4個の貫通孔3aC〜3dCが同一間隔(90度間隔)で形成された円筒体2Cと、各貫通孔3aC〜3dCの周囲に沿って円筒体2Cの外周面2bCから径方向外側へ向かって突設された外側リブ6aC〜6dCとを有している。シール部材1Cを構成する円筒体2Cと外側リブ6aC〜6dCとは一体に成形されている。
【0039】
また、シール部材1Cの円筒体2Cの軸心方向上端部には、その上面から軸心LC方向上側へ向かって4個の上側突起5aC〜5dCが突設されている。また、円筒体2Cの軸心方向下端部には、その下面から軸心LC方向下側へ向かって4個の下側突起7aC〜7dCが突設されている。この上側突起5aC〜5dCと下側突起7aC〜7dCとはそれぞれ凸状を呈し、円筒体2Cの貫通孔3aC〜3dCの中心と周方向で同じ位置、すなわち周方向に同一間隔(90度間隔)で設けられている。
【0040】
上記した実施形態4のシール部材1Cでは、円筒体2Cの内周面2aC側の内側リブを省略したことにより、当該シール部材1Cの形状を簡素化できると共に、シール部材1Cを成形する際の成形工程を格段に簡素化することができ、当該シール部材1Cの製造コストの高騰を抑制することができる。
【0041】
[シール部材の実施形態5]
図5は、本発明に係るシール部材1Dの実施形態5の全体構成を示したものである。
図5に示す実施形態5のシール部材1Dは、
図3に示す実施形態3のシール部材1Bに対し、円筒体の内周面の内側リブを省略した構成が相違しており、その他の構成は
図3に示すシール部材1Bと同様である。したがって、
図3に示す実施形態3のシール部材1Bと同様の構成については同様の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0042】
実施形態5のシール部材1Dでは、実施形態4のシール部材1Cと同様、円筒体2Dの内周面2aD側の内側リブを省略したことにより、当該シール部材1Dの形状を簡素化できると共に、シール部材1Dを成形する際の成形工程を格段に簡素化することができ、当該シール部材1Dの製造コストの高騰を抑制することができる。また、円筒体2Dの軸心方向上端部に上側窪み5aD〜5dDを形成し、かつ円筒体2Dの内周面2aD側の内側リブを省略したことにより、当該シール部材1Dを小型化かつ軽量化することができる。
【0043】
[流路切換弁の実施形態1]
次に、上記した実施形態1のシール部材1が組み込まれた流路切換弁の実施形態を
図6、7を参照して説明する。図示する流路切換弁10は、例えば自動車のエンジンルーム内等を流れる流体の流路を多方向に切り換える多方切換弁として使用されるものである。
【0044】
図示する流路切換弁10は、主に、弁室11を有する樹脂製の弁本体12と、弁本体12の上方に配置されたモータ(回転駆動装置)13と、弁本体12の弁室11内に配置される弁シートとしてのシール部材1と、モータ13の出力軸に連結される弁軸14aとシール部材1により囲まれる領域に収容される弁体部14bとからなる樹脂製の弁体14と、を備えている。
【0045】
弁本体12は段付き円筒状基体12aとカバー12bとを有し、円筒状基体12aの大径部12cの内部に弁室11が画成される。また、大径部12cの側部には、弁室11に開口する横向きの流出口11a、11bが90度置きで2個形成されると共に、それぞれの流出口11a、11bに連通する流出路15a、15bを有する導管継手16a、16bが一体に形成されている(
図7参照)。また、大径部12cの底部には弁室11に開口する縦向きの開口12eが形成され、該開口12eの内周面には段部が形成されている。また、円筒状基体12aの小径部12dの内部には、弁室11に連通し且つ該弁室11よりも小径の軸心L方向へ延びる収容室17が画成されている。
【0046】
弁本体12のカバー12bは、円筒状基体12aの大径部12cの開口12eと略同等の外径を有する嵌合部12fを有し、嵌合部12fの外周面は大径部12cの開口12eの内周面と相補的な形状を有している。カバー12bの嵌合部12fが円筒状基体12aの大径部12cの開口12eに嵌合され、開口12eの内周面と嵌合部12fの外周面とが当接した姿勢で円筒状基体12aとカバー12bとが超音波溶接等により溶着されて固着されることにより、円筒状基体12aと
カバー12bとで弁室11が画成される。また、嵌合部12fの略中心には、弁室11に開口する縦向きの流入口11cが形成されると共に、該流入口11cに連通する流入路15cを有する導管継手16cが一体に形成されている。
【0047】
弁本体12の内周面のうち弁室11を形成する天井面18の外縁から僅かに内側の部分には、軸心L方向上側へ向かって4個の凹部19a〜19dが形成されている。この凹部19a〜19dは周方向に同一間隔(90度間隔)で設けられ、この凹部19a〜19dのうち2個(凹部19a、19b)は、大径部12cの側部に形成された流出口11a、11bと周方向で同じ位置に配置されている。
【0048】
シール部材1は、上側突起5a〜5dが前記凹部19a〜19dにそれぞれ嵌合され、下側突起7a〜7dがカバー12bの嵌合部12fの上面と当接するように弁本体12の弁室11内に収容される。これにより、シール部材1の隣り合う貫通孔3a、3bと円筒状基体12aの大径部12cの流出口11a、11bとが略同じ位置で位置決めされ、弁本体12の弁室11と導管継手16a、16bの流出路15a、15bとがシール部材1の円筒体2の貫通孔3a、3b及び流出口11a、11bを介して連通される。なお、凹部19a〜19dの上面とカバー12bの嵌合部12fの上面との寸法は、シール部材1の上側突起5a〜5dの上面と円筒体2の下面との寸法に略一致するように設定され、天井面18とカバー12bの嵌合部12fの上面との寸法は、シール部材1の円筒体2の上下方向高さと略一致するように設定されている。これにより、シール部材1は軸心L方向で圧縮された状態で弁室11内に収容され、シール部材1の下側突起7a〜7dがカバー12bの嵌合部12fの上面に押圧されるため、弁室11内での弁体部14bの回転駆動に伴うシール部材1の回転が、前記凹部19a〜19dに嵌合された上側突起5a〜5d及び前記嵌合部12fの上面に押圧された下側突起7a〜7dの双方により抑止される。
【0049】
弁体14は、円筒状の弁体部14bの天井部の上面が天井面18と摺接し、下端部の下面がカバー12bの嵌合部12fの上面と摺接し、円筒状の側部の外周面がシール部材1の内側リブ4a〜4dの内周側と摺接するように配置されている。弁体14の弁体部14bの側部には、横向きの連通孔21a、21bが90度置きで2個形成されている。また、弁体部14bの天井部の略中心には軸心L方向上側に向かって弁軸14aが一体的に延設されている。弁軸14aは、円筒状基体12aの小径部12dの収容室17に回転摺動自在に配置されると共に、弁軸14aには、軸心L方向に2個の環状溝22a、22bが形成され、該環状溝22a、22bのそれぞれにOリング23a、23bが装着され、弁室11内の流体が上方に配置されたモータ13側へ漏洩しないようになっている。
【0050】
弁体14の弁体部14bは、モータ13の出力軸に連結された弁軸14aを介してモータ13の回転駆動に応じて軸心L周りで回転駆動され、横向きの連通孔21a、21bがシール部材1の円筒体2の貫通孔3a、3b及び弁本体12の円筒状基体12aの流出口11a、11bを介して導管継手16a、16bの流出路15a、15bと選択的に連通される。なお、弁体14の弁体部14bの下側開口21cは、常時、弁本体12のカバー12bの流入口11cを介して導管継手16cの流入路15cと連通している。
【0051】
ここで、弁体14の弁体部14bの側部の外周面と円筒状基体12aの大径部12cの内周面との間隔D(
図7参照)は、
図1に示すシール部材1の内側リブ4a〜4dの頂部と外側リブ6a〜6dの頂部との寸法よりも小さく、シール部材1の円筒体2の径方向の厚さよりも大きく設計されている。これにより、内側リブ4a〜4dと外側リブ6a〜6dとが弁体14の弁体部14bの側部の外周面と円筒状基体12aの大径部12cの内周面とで圧縮された姿勢、且つ、円筒体2が弁体14の弁体部14bの側部の外周面と円筒状基体12aの大径部12cの内周面とから離間した姿勢で、シール部材1が弁体14の弁体部14bの側部と円筒状基体12aの大径部12cとの間に介在配置される。よって、シール部材1に囲まれた領域に回転摺動自在に収容された弁体14の弁体部14bを弁室11内で円滑に回転駆動できると共に、弁体14の弁体部14bの側部の外周面とシール部材1の内側リブ4a〜4d及び円筒状基体12aの大径部12cの内周面とシール部材1の外側リブ6a〜6dが密着し、弁体14と弁本体12との間の流体の漏出を確実に抑止することができる。
【0052】
上記した流路切換弁10における温水や冷水等の流体の流れを概説する。例えば
図7に示す状態では、弁本体12のカバー12bの導管継手16cの流入路15cから流入した流体は、流入口11c及び弁体部14bの下側開口21cを介して弁室11に導入され、弁体部14bの側部の連通孔21a、21b、シール部材1の円筒体2の貫通孔3a、3b、及び弁本体12の円筒状基体12aの流出口11a、11bを介して導管継手16a、16bの流出路15a、15bの双方に導かれる。
【0053】
モータ13の駆動によって弁軸14aを介して例えば
図7に示す状態から時計回りに90度だけ弁体14を回転させると、弁体部14bの側部の連通孔21aがシール部材1の円筒体2の貫通孔3b及び弁本体12の円筒状基体12aの流出口11bと略同じ位置に到達するまで、弁体部14bがシール部材1の内側リブ4a〜4dの内周側と摺動しながら回転される。この状態では、弁本体12のカバー12bの導管継手16cの流入路15cから流入した流体は、流入口11c及び弁体部14bの下側開口21cを介して弁室11に導入され、弁体部14bの側部の連通孔21
a、シール部材1の円筒体2の貫通孔3b、及び弁本体12の円筒状基体12aの流出口11bを介して導管継手16bの流出路15bのみに導かれる。
【0054】
一方、モータ13の駆動によって弁軸14aを介して例えば
図7に示す状態から反時計回りに90度だけ弁体14を回転させると、弁体部14bの側部の連通孔21bがシール部材1の円筒体2の貫通孔3a及び弁本体12の円筒状基体12aの流出口11aと略同じ位置に到達するまで、弁体部14bがシール部材1の内側リブ4a〜4dの内周側と摺動しながら回転される。この状態では、弁本体12のカバー12bの導管継手16cの流入路15cから流入した流体は、流入口11c及び弁体部14bの下側開口21cを介して弁室11に導入され、弁体部14bの側部の連通孔21
b、シール部材1の円筒体2の貫通孔3a、及び弁本体12の円筒状基体12aの流出口11aを介して導管継手16aの流出路15aのみに導かれる。
【0055】
このように実施形態1の流路切換弁10では、モータ13の駆動によって弁体14の弁体部14bを適宜の位置まで回転させることによって、弁本体12のカバー12bの導管継手16cの流入路15cから流入した流体を適宜の導管継手の流出路に円滑に且つ確実に切り換えることができる。
【0056】
なお、実施形態1のシール部材1に代えて実施形態2のシール部材1
Aを流路切換弁に組み込むことができることは当然である。その場合には、弁室11を形成する弁本体12の円筒状基体12aの大径部12cの内周面のうち径方向の内周面の上端側や下端側に、シール部材1Aの円筒体2Aの軸心方向上端部や下端部に設けられた上側突起5aA〜5dAや下側突起7aA〜7dAが嵌合される凹部を形成すればよい。
【0057】
[流路切換弁の実施形態2]
次に、上記した実施形態3のシール部材1Bが組み込まれた流路切換弁の実施形態を
図8を参照して説明する。
【0058】
図8に示す実施形態2の流路切換弁10Bは、
図6に示す実施形態1の流路切換弁10に対し、主にシール部材1Bと弁本体12Bの内周面のうち弁室11Bを形成する天井面18Bの構成が相違しており、その他の構成は
図6に示す流路切換弁10と同様である。したがって、
図6に示す実施形態1の流路切換弁10と同様の構成については同様の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0059】
実施形態2の流路切換弁10Bでは、弁本体12Bの内周面のうち弁室11Bを形成する天井面18Bに、軸心LB方向下側へ向かって4個の凸部19aB〜19dBが形成されている。この凸部19aB〜19dBは周方向に同一間隔(90度間隔)で設けられ、この凸部19aB〜19dBのうち2個(凸部19aB、19bB)は、大径部12cBの側部に形成された流出口11aB、11bBと周方向で同じ位置に配置されている。
【0060】
シール部材1Bは、上側窪み5aB〜5dBに前記凸部19aB〜19dBがそれぞれ嵌合され、下側突起7aB〜7dBがカバー12bBの嵌合部12fBの上面と当接するように弁本体12Bの弁室11B内に収容される。
【0061】
これにより、上記した実施形態1の流路切換弁10と同様、シール部材1Bの隣り合う貫通孔3aB、3bBと円筒状基体12aBの大径部12cBの流出口11aB、11bBとが略同じ位置で位置決めされ、弁本体12Bの弁室11Bと導管継手16aB、16bBの流出路15aB、15bBとがシール部材1Bの円筒体2Bの貫通孔3aB、3bB及び流出口11aB、11bBを介して連通される。また、弁室11B内での弁体部14bBの回転駆動に伴うシール部材1Bの回転が、前記凸部19aB〜19dBが嵌合された上側窪み5aB〜5dBや前記嵌合部12fBの上面に押圧された下側突起7aB〜7dBにより抑止されることとなる。
【0062】
[流路切換弁の実施形態3]
次に、上記した実施形態4のシール部材1Cが組み込まれた流路切換弁の実施形態を
図9、10を参照して説明する。
【0063】
図9に示す実施形態3の流路切換弁10Cは、
図6に示す実施形態1の流路切換弁10に対し、主にシール部材1Cと弁体14Cの構成が相違しており、その他の構成は
図6に示す流路切換弁10と同様である。したがって、
図6に示す実施形態1の流路切換弁10と同様の構成については同様の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0064】
実施形態3の流路切換弁10Cでは、弁体14Cの弁体部14bCの側部に形成された横向きの連通孔21aC、21bCの周囲に沿ってその外周面から外側へ向かうリブ25aC、25bCが突設されると共に、弁体部14bCの中心に対して対称な位置にその外周面から外側へ向かうリブ25cC、25dCが突設されている。すなわち、
図10に示すように、弁体14Cの弁体部14bCの側部の外周面に、周方向に等間隔(90度間隔)で4個の略円形状のリブ25aC〜25dCが突設されている。
【0065】
弁体14Cは、
図10に示すように、弁体部14bCの天井部の上面が天井面18Cと摺接し、下端部の下面がカバー12bCの嵌合部12fCの上面と摺接し、側部の外周面に設けられたリブ25aC〜25dCがシール部材1Cの内周側と摺接するように配置されている。
【0066】
弁体14Cの弁体部14bCは、モータ13Cの出力軸に連結された弁軸14aCを介してモータ13Cの回転駆動に応じて軸心LC周りで回転駆動され、横向きの連通孔21aC、21bCがシール部材1Cの円筒体2Cの貫通孔3aC、3bC及び弁本体12Cの円筒状基体12aCの流出口11aC、11bCを介して導管継手16aC、16bCの流出路15aC、15bCと選択的に連通される。
【0067】
ここで、弁体14Cの弁体部14bCの側部の外周面に設けられたリブ25aC〜25dCの頂部と円筒状基体12aCの大径部12cCの内周面との間隔は、シール部材1Cの円筒体2Cの内周面2aCと外側リブ6aC〜6dCの頂部との寸法よりも小さく、シール部材1Cの円筒体2Cの径方向の厚さよりも大きく設計されている。これにより、シール部材1Cの円筒体2Cと外側リブ6aC〜6dCとが、弁体14Cの弁体部14bCの側部に設けられたリブ25aC〜25dCと円筒状基体12aCの大径部12cCの内周面とで圧縮された姿勢、且つ、円筒体2Cが弁体14Cの弁体部14bCの側部の外周面と円筒状基体12aCの大径部12cCの内周面とから離間した姿勢で、シール部材1Cが弁体14Cの弁体部14bCの側部と円筒状基体12aCの大径部12cCとの間に介在配置される。
【0068】
よって、上記した実施形態1の流路切換弁10と同様、シール部材1Cに囲まれた領域に回転摺動自在に収容された弁体14Cの弁体部14bCを弁室11C内で円滑に回転駆動できると共に、弁体14Cの弁体部14bCの側部の外周面に設けられたリブ25aC〜25dCとシール部材1Cの円筒体2Cの内周面2aC及び円筒状基体12aCの大径部12cCの内周面とシール部材1Cの外側リブ6aC〜6dCが密着し、内側リブを省略したシール部材1Cを使用する場合であっても、弁体14Cと弁本体12Cとの間の摺動抵抗を減らしつつ流体の漏出を確実に抑止することができる。
【0069】
なお、実施形態4のシール部材1Cに代えて実施形態5のシール部材1Dを流路切換弁に組み込むことができることは当然である。その場合には、弁本体12Cの内周面のうち弁室11Cを形成する天井面18Cに、シール部材1Dの軸心方向上端部に形成された上側窪み5aD〜5dDに嵌合される凸部を形成すればよい。
【0070】
なお、上記する実施形態1〜5のシール部材1〜1Dでは、円筒体の軸心方向上端部及び下端部の双方に突起や窪みが設けられるものとしたが、例えば弁体の回転に伴うシール部材の回転を防止できれば、円筒体の軸心方向上端部及び下端部の一方のみに突起や窪みを設けてもよい。
【0071】
また、上記する実施形態1〜3の流路切換弁では、当該流路切換弁の組立工程を簡素化するために弁室を形成する天井面のみにシール部材の上側突起が嵌合される凹部やシール部材の上側窪みに嵌合される凸部を形成したが、例えば弁体の回転に伴うシール部材の回転をより効果的に抑止するために、カバーの嵌合部の上面に下側突起が嵌合される凹部等を形成してもよい。
【0072】
上記した実施形態1〜5のシール部材1〜1Dは、自動車のエンジンルーム内等を流れる流体の流路を切り換える流路切換弁の他、様々な機器における流体用シール部材として採用することができる。
【0073】
なお、シール部材の円筒体に形成される貫通孔の形状や数、円筒体の軸心方向端部に形成される突起や窪みの形状や数等は、必要とされる流体の流量や流路の数、流路を切り換えるためのモータの駆動力や回転速度等に応じて適宜に変更できることは当然である。